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キリン シングルグレーン 富士 46%

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KIRIN
SINGLE GRAIN WHISKEY 
FUJI 
The gift from Mt. Fuji 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後半年程度
評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライだが、エステリーでオレンジ系のアロマ、モンブランや渋皮煮を思わせるクリーミーな甘さと程よくビターなウッディネス。ほのかにえぐみもあるが、バランスよくまとまっている。

味:グレーンのメローなフレーバー、軽い穀物感を伴うスムーズながら重みのある口当たり。キャラメルソース、オレンジママレードや果実のペースト。フィナンシェや香り同様に栗の洋菓子を思わせるフレーバー。余韻は染み込むようなウッディさ、キャラメルソースを思わせる苦みがじんわりと染み込むように残る。

あくまでもグレーンウイスキーであるが、スコッチグレーンとバーボンの中間にあるようなフレーバーを持つ、複雑でリッチな構成。口内で広がる甘くビターな樽香、熟成によるフルーティーさ、グレーン由来の甘み、そして微かな植物感。独特の美味しさと個性を楽しめる。ストレート、またはお湯割りがオススメ。

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今年3月にキリンからリリースされた、グレーンタイプウイスキー2銘柄のうちの1つ。
低価格帯の「陸」は酒販のみならず、その辺のスーパーやコンビニでも見かける流通量でしたが、「富士」のほうはプレ値を除くと、発売当初は中々店頭で見かけませんでした。
そんなわけで、まずは試しに陸をテイスティング・・・すると、思った以上に良かった、というか面白かった。これはますます富士も試してみたいなと。後日、Amazon酒販で普通に売っていることに気が付き、ちょうどポイントもあったのでポチってみました。

結論から言えば、この富士も良かったです。
富士御殿場蒸留所では、ライト、ミディアム、ヘビーの3タイプのグレーン原酒を作り分けていることで知られていますが、富士はこの3種のグレーンをブレンドして造られています。
香味からは、重みのある穀物香を伴うフレーバーから、特にヘビータイプグレーンの味わいが真っ先に思い浮かぶ構成。ただし、熟成に使われた樽がバーボンバレル、つまり新樽から数えるとリフィル樽に当たることや、ライト、ミディアムタイプのクリーンで、エステリーな仕上がりの原酒も合わさって、バーボンに見られる強いウッディさやセメダイン系のニュアンスを控えめに、バランスよく仕上がっているのです。

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(今回のリリースを飲んで、まず思い浮かべたのはこの1樽。富士御殿場のヘビータイプグレーンと言えば、各ウイスキーイベントのキリンブースで、樽から直出しで提供されていた試飲サンプルを連想する愛好家も多いのではないだろうか。)

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(富士と陸の違いは、海外原酒を使っているかどうかに加えて、原酒の熟成感も大きい。陸が手を入れて飲むことを前提としているのに対して、富士はストレートで飲むことを前提としているようにも感じられる。また、同メーカーからリリースされている、富士山麓シグネチャーブレンドとの共通項もある。)

個人的に、グレーンウイスキーの味は嫌いではないのですが、時折ボトラーズからリリースされるスコッチタイプのものは、香味が単調であまり飲み進みません。
若いものは奥行きがなく薄っぺらい、熟成したものはソフトな口当たりから、コクとメローな甘さがあるものの単調さが否めない。グレーンはグレーンでもバーボンは香味にメリハリのあるものが多く、好んで飲みますが、スコッチタイプは途中で飲み飽きてしまうのです。
ホント、たまにハーフショットくらいで良いかなぁって。

ところが、この富士は違和感無く飲み進められます。
バーボンにも通じる穀物由来の風味の重さだけでなく、香味も多層的で、それでいて特徴でもあるメローな味わいもしっかり。グレーンウイスキーの中でも、バーボン、カナディアン、スコッチタイプの中間点、あるいは良いとこ取りと言えるような構成。シーグラム社の影響を強く受けたキリンらしさというか、同社のグレーン原酒の作り分けが生み出したオリジナル、文字通り”キリンシングルグレーン”だと感じる仕上がりなのです。



また、陸と富士、安価で良質なグレーンが手に入りやすくなったことで、ウイスキーライフに新たな選択肢が生まれたとも感じています。
先日公開された、Liqulの記事”Re-オフィシャルスタンダードテイスティングVol.9”でもまとめさせていただきましたが、その一つが「自分でブレンドを作る」ことです。

2020年のオフィシャルリリースを通じて、富士と陸に「これは面白い」と感じた理由でもあります。
ブレンドにおいてグレーンの存在を整理すると、陸はどちらかと言えば引き算寄りのグレーンですが、富士は足し算のグレーンです。
陸を多く入れるとまとまりやすい一方で、モルトの個性が薄まりドライな香味になっていきます。一方で、富士は少量ならモルトと調和しますが、多く入れるとモルトの風味と喧嘩してごちゃごちゃした味わいになってしまいます。

今回の2銘柄がターゲットとしているのは、ウイスキー初心者というよりも、ある程度ウイスキーに親しみ、自宅でウイスキーを複数本所有して楽しんでいるような消費者層です。
つまり趣味としてウイスキーを楽しんでいる愛好家であるわけですが、そうした方々は間違いなくシングルモルト、シングルカスクのウイスキーを持っているはずで、そこにキリンからのニューリリース2銘柄が加わることで、ブレンドの面白さ、奥深さ、そして難しさも楽しめるようになるのではないかと感じています。それこそ、先に触れたグレーンの使い分けでバランスが取れたときの味わいは、単に飲みやすいだけではない、異なる個性のウイスキーとなるほどです。

モルトに比べ、そこまで高額なリリースでもないので、是非色々な使い方でウイスキーを楽しんでほしいですね。

三郎丸 0 THE FOOL 3年 48% シングルモルト

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SABUROMARU ZERO
”THE FOOL”
Heavily Peated (50PPM)
Aged 3 years
Distilled 2017
Bottled 2020
Cask type Bourbon barrel
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★(5)

香り:甘く香ばしい、焚火の後のような落ち着きのあるピートスモーク。麦芽糖、あるいはもろみを思わせる香りが若さを感じさせるが嫌味な要素は少なく、どこか素朴である。微かにオレンジピールのほろ苦さ、柑橘感が混じり、アクセントになっている。

味:オイリーでスモーキー、麦芽由来の甘みに加えて柑橘の皮や綿を思わせるほろ苦さ、穏やかな酸味。加水で整えられており口当たりはスムーズで、じわじわとスパイシーな刺激もある。余韻はピーティーでビターなフィニッシュが長く続く。

麦、内陸系のピート、そして樽と原料由来の柑橘系のニュアンス。ここに若さに通じる若干の垢ぬけなさ、オフフレーバー要素が混じっている。複雑さはあまりないが、加水と複数樽のバッティングによってバランスがとれ、三郎丸蒸溜所の個性を楽しみやすく仕上がっている1本。
例えるならば、ピートのフレーバーの系統としてはブルイックラディやアードモア、酒質のオイリーさはラガヴーリンに似て、麦芽風味と垢抜けない要素が三郎丸。これをベースに熟成が進み、加水やバッティングで整っていくとすれば、将来を期待せずにはいられない。

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若鶴酒造・三郎丸蒸溜所、2017年のリニューアル後の原酒でリリースされた、初のシングルモルトウイスキー「三郎丸0”THE FOOL”」。この三郎丸0はカスクストレングス版が200本、48%の加水版が2000本リリースされ、今回のレビューアイテムは加水版となります。
(カスクストレングス版のレビューはこちら。)

カスクストレングス版は、若鶴酒造の酒販サイ「ALC」での販売開始から数十秒で完売したことで話題になりました。一方で、同酒造敷地内にある販売ブース・令和蔵でも販売され、こちらは来場者に本数がいきわたり、比較的穏やかに(とはいえ即完売)販売が行われたとのことです。

現地では製造関係者との交流に加え、試飲提供や車での来場者向けのドリンク、おつまみの提供等もあり、地元の蒸留所に期待する愛好家を中心に販売・交流が出来たというのは、いい雰囲気だなと感じました。
また、加水版についても普段若鶴酒造と付き合いのある問屋・酒販店に卸されており、発売後に店頭を探して無事購入できたという声も、SNS等で見かけます。

ブームもあって何かと話題になりがちなジャパニーズウイスキーですが、こうしたクラフト蒸溜所のファーストリリースは、本来は地元のユーザーが、あるいはマニアックな愛好家が盛り上げていくレベルのものじゃないかなぁと思うのです。
それこそ、ブーム前のイチローズモルト・秩父蒸留所のファーストリリースはそんな感じでした。

その点で、今回の三郎丸0はネットはさておき、地元を優先した形の販売になっており、自分はこれで良いんじゃないかと感じています。

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前置きが長くなりました。
今回レビューする三郎丸0、THE FOOL は、2017年に蒸留された原酒をバーボン樽で3年熟成させ、複数樽バッティング、加水調整したものです。
三郎丸蒸留所のリニューアルにおける酒質の変化や、蒸留所に関する話はカスクストレングスのレビュー記事でまとめているので、今回は飲み比べ、両リリースの違いに触れていきたいと思います。

まず前提として、どちらも同じ樽からの原酒構成であるため、香味の要素は当然同じ傾向にあります。
そのため、カスクストレングスを飲まなければ三郎丸蒸留所の個性がわからないとか、そういう事はないです。加水版でも充分三郎丸蒸留所のキャラクターと、その可能性を感じられます。

ただ、加水の方が香味が落ち着いており、良い部分も多少勢いが弱まった反面、2017年蒸留の三郎丸原酒にある"旧世代の設備の影響"も控えめで、目立たなくなっているように思います。
カスクストレングス版は、ネガティブな要素も多少抱えているのですが、良い部分、魅力的な要素がそれ以上の勢いでカバーして、厚みのある酒質の一部にしてしまっているという感じです。
その点で、ウイスキーマニアが望むような面白さは、カスクストレングスの方が強く、加水版は普及品として広く蒸留所のキャラクターをPRすることに向いている。当たり前な構成かもしれませんが、よく考えられたリリースだなと思います。

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なお、三郎丸蒸溜所の2017年蒸留原酒としては、今後熟成を経ていくことでさらに美味いリリースが出てくることでしょう。
蒸留所によっては3年でピークかという酒質のところもありますが、樽感や時間の流れを受け止める酒質の厚みは、三郎丸蒸留所の個性のひとつであり、5年、7年、冷温環境なら10年以上熟成する中で洗練されて、ピーティーでリッチな味わいをさらに楽しめるようになると期待出来ます。
ニューボーンリリースから期待値高かったですが、今回のリリースで確信に変わりました。まさにこれは原石ですね。

また、2018年以降の原酒については設備の更新等から2017年仕込みよりも質が良く、とあるインポーターさんに2018~2020までのニューメイクを渡して感想を伺ったところ「ピートの効きは2018が一番強く、もっとも好みだった」という評価がありました。
自分も2020と2018がリニューアル後4年間の仕込みのなかでは好みであり、来年以降のリリースが今から楽しみでなりません。

三郎丸蒸留所にとって新しいスタートにして、節目の年となった2020年。新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態が世界を襲う、ままならない1年でもありましたが、リリースとしても、蒸留所のアップデートとしても、そして作り手に、それぞれ明るい話題もあり、門出の年ともなりました。
数年後、自分達はこの1年をどう振り替えるのか。成長した三郎丸蒸留の原酒を楽しみながら、出来れば笑顔で振り返りたい、そう思うのです。

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今日のオマケ:大吟醸 若鶴2020 金沢国税局酒類品評会優等賞受賞 仕込み25号
先日、ウイスキーとセットでALCから購入した若鶴の日本酒。
クラフトウイスキー蒸留所は、異なる酒類をメインにしているところも少なくないので、ウイスキー以外にも楽しみがあります。
若鶴酒造は勿論日本酒。これは吟醸香は品の良い程度で、柔らかい米の旨味とコクがメインとして楽しめるタイプ。単品で飲み飽きず、料理との相性もバッチリです。
ああ、今の時期ならぶりしゃぶとか、おでんとか、良いですよねぇ。。。

三郎丸0 THE FOOL 3年 カスクストレングス 63% シングルモルト

カテゴリ:
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SABUROMARU ZERO 
”THE FOOL” 
Cask Strength 
Heavily Peated (50PPM) 
Aged 3 years 
Distilled 2017 
Bottled 2020 
Cask type Bourbon barrel 
700ml 63% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:香り立ちはドライで酒精の刺激と香ばしいスモーキーさ。焚火や野焼きの後のような、土っぽさ、干し草の焦げた香りに、郷愁を感じさせる要素を伴う。合わせてエステリーで、グレープフルーツやドライオレンジを思わせる柑橘香、ほのかにオーキーなアクセント。奥にはニューポッティーな要素も微かにある。

味:コクと厚み、そしてボリュームのある口当たり。香ばしい麦芽風味とピートフレーバー、樽由来の甘味と酒質の甘酸っぱさが混じり、柑橘を思わせる風味が広がる。余韻はスモーキーでほろ苦いピートフレーバーの中に、微かに薬品シロップのような甘みと若干の未熟要素。ジンジンとした刺激を伴って長く続く。

度数が63%あるとは思えないアルコール感の穏やかさだが、芯はしっかりとしており、味にボリュームがあるため口の中での広がりに驚かされる。厚みのある酒質が内陸系のピート、麦芽、そして程よく付与された樽由来の風味をまとめ、熟成年数以上の仕上がりを思わせる。
勿論未熟な成分も感じられるが、過去の設備の残滓と言える要素であり、伸び代のひとつと言える。加水するとフレッシュな酒質の若さが前に出るが、すぐに馴染む。2つの世代を跨ぐウイスキーにして、可能性と将来性を感じさせる、門出の1本。

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富山県、若鶴酒造が操業する三郎丸蒸留所は、創業1952年と、日本のウイスキー蒸留所の中でも長い歴史を持つ、老舗の蒸留所です。
同蒸留所は、2016年から2017年にかけ、クラウドファンディングも活用した大規模リニューアルを実施したことでも知られています。そうして新たな環境で仕込まれた、新生・三郎丸としての原酒で3年熟成となる、三郎丸0”ゼロ”がついにリリースされました。

50PPMというこだわりのヘビーピート麦芽に由来する、ピーティーでしっかりと厚みや甘味のあるヘビーな酒質。これは他のジャパニーズモルトにはない個性と言えます。
今回のリリースは、同社酒販サイトALC限定で63%のカスクストレングス仕様(200本)と、通常リリースとなる48%の加水仕様(2000本)があり、どちらもバーボン樽で熟成した原酒のみをバッティングし、構成されています。
※()内はリリース本数。

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(三郎丸0カスクストレングス(左)と48%加水仕様(右)。ベースとなる原酒はどちらも同じ。外箱は富山県高岡市の伝統工芸品である高岡銅器から、銅をデザインに採用している。)

中身の説明に移る前に、三郎丸0THE FOOLの位置づけについて、裏面に書かれたメーカー説明文を補足します。
1つ目は、なぜ”ゼロ”なのか。
この手のリリースはファーストリリースであることを表記するのが一般的ですが、三郎丸は位置づけが少し異なります。
蒸留所責任者である稲垣さんに伺ったところ、2017年は厳密にはリニューアル過程の途中であり、旧世代の設備(ポットスチルの一部や、マッシュタン)が残って使われていました。進化の途中、リニューアル前後の三郎丸蒸留所を繋ぐ、1の前の”0”という意味があるそうです。

もう1つが、タイトルやラベルに描かれたタロット"THE FOOL"(愚者)について。
これは、裏ラベルでキーワードとして触れられていますが、単なる愚か者ということではなく、「思うところに従い、自由に進む者」という意味があるとのこと。
蒸留所のリニューアルやウイスキー造りは、稲垣さんが自分で考え、まさに愚者の意味する通り様々なアップデートや工夫を凝らして行われてきました。
そういえば、タロットカードとしての愚者の番号も「0」なんですよね。
若者の挑戦がどのような結末に繋がるのか、0から1へと繋がるのか。。。蒸留所としても作り手としても、分岐点となるリリースと言えます。

※蒸留所の特徴や設備、リニューアル・アプデートがもたらした酒質の変化等については、LIQULの対談記事(ジャパニーズクラフトウイスキーの現在~VOL.1 三郎丸蒸留所編~)で、詳しくまとめられています。今回のリリース、あるいは若鶴のウイスキーを飲みながら、ご一読いただければ幸いです。





前置きが長くなりましたが、ここから中身の話です。
三郎丸0 THE FOOL カスクストレングスは、これぞ2017年の三郎丸という前述の個性が全面にあり、バーボン樽由来の香味は引き立て役。ネガティブな要素も多少ありますが、それも含めてまとまりの良さが特徴の一つです。
加水版はまだ飲めていませんが、カスクストレングスを加水した感じでは、若さが多少出るものの、目立って崩れる印象はないため、方向性は同じと推察しています。

酒質の懐の深さと言うべきでしょうか。フレーバーの傾向としては、何度かリリースされたニューボーン等から大きく変わっていませんが、複数の原酒がバッティングされたことで味わいに厚みが出ています。GLEN MUSCLE  No,3でブレンドしたときも感じましたが、キャラは強いのにチームを壊さない。キーモルトとしても申し分ない特性を備えていると感じます。

一方で、リニューアル前となる2016年以前の原酒は、特徴的な厚みやオイリーさはプラス要素でしたが、設備の問題で未熟香に繋がる成分、オフフレーバーが多かっただけでなく、50PPMで仕込まれたはずのピート香が蒸留後は抜けているという症状もありました。一部愛好家からは酷評される仕上がりで、ニューメイクに至っては体が嚥下を拒否するレベルだったことも。
それがリニューアルを経て、ステンレス製だったポットスチルが改造され、形状はほぼそのまま銅の触媒効果が得られるようになり。また、酵母や仕込みも見直されたことで、現在の味わいに通じる下地が作られることとなります。

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(リニューアル前後の三郎丸。画像右上にあるマッシュタンは、裏ラベルにも書かれた"縦長のマッシュタン"。麦芽粉砕比率は前代未聞の4.5:4.5:1。2017時点では継続して使われており、2018年に三宅製作所製の導入で半世紀に及ぶ役目を終えた。)

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(三郎丸蒸留所の設備や原料の遍歴まとめ。2018年以降も、段階的に様々な改修が行われている。つまり作り手も新しい環境へのアジャストが求められ、難しい5年間だったことが伺える。)

発酵臭や硫黄香といったネガティブ要素が大幅に軽減され、強みと言える厚みのある麦芽風味とピートフレーバー、オイリーな酒質が残ったのが、2017年のニューメイクです。
伝統の中でも良い部分を受け継ぎ、まさに過去と未来を繋ぐ中間点にある存在と言っても間違いないと思います。

2018年以降のものに比べると、まだ未熟要素が目立ちますが、熟成によって消えるか馴染むかする程度。何より、新たな旅を始めたばかりの蒸留所の第一歩に、これ以上を求めるのも酷というものでしょう。
実際、酒質的にも樽感的にも、熟成の余地は残されていますし、同蒸留所には冷温熟成庫があるため、日本の環境下でありながら20年以上の熟成が見込める点は、他のクラフト蒸留所にはない大きな強みだと思います。

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(原酒の受け皿となる樽も、バーボンだけでなくボデガ払い出しの長熟シェリー樽や、PX樽、ミズナラ樽、ワイン樽・・・などなど数多くある。いくつか利かせてもらったが、これから先が楽しみになる成長具合だった。)

自分はリニューアル以降、毎年蒸留所を訪問し、酒質の変化を見てきました。
大きな変化があった2017年、期待が確信に変わったのがマッシュタンを変更した2018年。2019年はポットスチルの交換や、乳酸発酵への取り組みもあって特に苦労があったそうですが、2020年はその甲斐あって、蒸留所改修プランの集大成ともいうべき原酒が生まれています。

つまり、今後リリースされる銘柄は、ますます酒質のクオリティが高くなっていくと予想できるのです。それは将来的にあの偉大な、巨人と称される蒸留所に届きうるまでとも。。。
勿論規模では比較にならないでしょうが、そもそもターゲット領域が違う話です。小規模だからこそ、実現できるアイデアもあります。(例えば良質な樽の確保や、アイラピート麦芽とか)
ああ、リアルタイムでこうした蒸留所の成長を感じられることの、なんと贅沢な楽しみ方でしょう。

4年前、飯田橋の居酒屋で稲垣さんから聞いた、無謀とも思えた蒸留所の再建プラン。今にして思えば、それはまさに"愚者"に描かれた若者の旅立ちだったのかもしれません。
愚者のタロットは、崖の上を歩く姿が書かれています。崖から落ちてしまうのか、あるいは踏みとどまって旅を続けていくのか。後者の可能性をニューメイクで感じ、シングルモルトがリリースされた今はもう疑いの余地はありません。
今後もファンの一人として、三郎丸蒸留所の成長・成熟を見ていけたら良いなと思います。

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改めて三郎丸0のリリース、おめでとうございます!

グレンアラヒー 12年 48% 2020年ロット

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GLEN ALLACHIE 
Aged 12 years 
SLEYSIDE SINGLE MALT SCOTCH WHISKY
Release 2018 (Lot of 2020) 
700ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後2か月程度
評価:★★★★★(5ー6)


香り:ツンと鼻腔を刺激する硬質感のある香り立ち。黒砂糖やかりんとうのシェリー樽由来の色濃いアロマ、スワリングするとバナナや焼き芋を思わせる焦げ感のあるオーク香も混じってくる。

味:はっきりとシェリー樽のニュアンスに、とろりとした厚みのある樽感と麦由来の甘さ。若い原酒の酸味もあるが、すぐにオーキーな華やかさが開き、それらが混ざり合ってパチパチと軽やかな刺激とカカオを思わせるほろ苦さを伴うフィニッシュへと繋がる。

若い要素の垣間見れるモルトで、厚みと強さのある酒質を樽感でカバーしたような構成。シェリー系のフレーバーの濃さ、バーボン樽由来の華やかさが備わっており、粗削りだがリッチな仕上がりである。オススメは少量加水。硬質感がやわらぎ、2系統の樽それぞれに由来する香味が混ざり合った柔らかい甘さ、スムーズな口当たりへと変化する。これからのシーズンにオススメな、デイリーユースの1本。

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いつの間にかシェリー系リリースへとシフトしていた、グレンアラヒー12年の現行ボトル。
2018年のリリース初期から2019年のロットでは、色は下の写真の通り、10年、12年、18年と大きい違いのない、琥珀色ベースの色合いでしたが、2020年頃のロットから1st fillのシェリー樽比率が増えたのか、外観は全くの別物となっています。(Whisk-eさんのWEB画像も差し替えられました。)

当然フレーバーも変化しており、旧ロットの「若さの残る麦芽風味からバーボン樽由来の華やかさ」という構成が、後半の華やかさはそのままに、前半がシェリー系の色濃い甘みとビターなフレーバーに上塗りされています。
元々聞いていた情報では、グレンアラヒー12年のシェリー樽比率は30%とのことです。そこから全体の割合が変わったというよりは、内訳がリフィルのオロロソ主体から、1st fill PXシェリー樽主体となったのではないかと推察。ロット差というには大きな違いですが、総じて好ましい変化だと思います。

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このボトルは、LIQULのオフィシャル銘柄紹介記事(Vol.6 進化するグレンアラヒー)を書くにあたり、18年との比較テイスティング用に購入したものでしたが、思いっきりアテが外れました(笑)。
元々、18年をメインに持ってくるつもりで、その発展途上にあるボトルとして12年を使う予定だったのですが・・・箱を開封してびっくり、何この色、予定と違う、さあどうするか。

ただし飲んでみると樽感はわかりやすく、若い中にも好ましい要素があり、5000円以内という価格帯を考えれば十分勝負できる構成。同価格帯で濃厚なシェリー系のリリースが減る中で、”はっきりとしたシェリー感”と言う新たな武器を得たように感じて、これはこれで個別に取り上げていくボトルだと。急遽記事の構成を変更し、タイトルも「進化するグレンアラヒー」としました。

GALL-MALT-15YO

一方、今回ブログを書くにあたり改めて飲んでみて、当時は気づかなかったことが1つ。2020年ロットからの12年の変化は、新たにリリースされたPX&オロロソシェリー樽100%の15年も意識したマイナーチェンジだったのではないか、ということです。

2018年、グレンアラヒーのシングルモルトがリリースされた当時は12年の次が18年で、シェリー感がそこまで主張しない18年と同じベクトル上にあるバッティングだと感じていました。その後、シェリー100%15年が登場したことで、15年や18年に続くブランドのエントリーグレードとして、双方の特徴を持つようにブレンドを調整したのではないかと。
実際、15年で主に使われているPXシェリー樽の特徴が、12年でもフレーバーの柱の一つとなっています。

そして何より、このような方針変更を、しれっとやってしまえることも、特筆すべきポイントだと思います。
グレンアラヒーは1960年代にマッキンレーのブレンド向け原酒を作るために創業した蒸留所で、以降位置づけは変わらず近年に至ったわけですが、オフィシャル通常リリースの、それもボリュームゾーンである12年にこうした変化が出来るということは、原酒のストックが潤沢だからこそでしょう。薄くなることはよくある話ですが、濃くなるのはなかなかありません。
あるいは、ハウススタイルを模索している最中ということなのかもしれません。オフィシャルの通常ラインナップと言うと、フレーバーが安定してブレ幅が少ないイメージがありますが、こういう変化からあれこれ考えるのも面白いですね。

ロングモーン 18年 ダブルカスクマチュアード 48% シークレットスペイサイド

カテゴリ:
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LONGMORN 
18 YEARS OLD 
DOUBLE CAKS MATURED
Cask type American Oak Barrels and Hogsheads 
700ml 48% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1か月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでオーキー、ドライな香り立ち。奥にはメレンゲクッキーのような甘さ、砂糖をまぶしたオレンジやパイナップルなどのドライフルーツ。スワリングしていると洋梨を思わせる品の良いフルーティーさも感じられる。

味:口当たりはスムーズで、乾いた麦芽風味から粘性のある黄色い果実風味が広がる。まるでクラッカーの上に洋梨のジャムやリンゴのコンポートを載せて食べたよう。余韻にかけてはウッディで軽いスパイシーさ。オーキーな華やかさと黄色いフルーツがバニラ香を伴って鼻腔に抜け、ドライな質感の中にねっとりとしたオークフレーバーが舌の上に残るように長く続く。

スペックからの予想を裏切らない構成。香味ともアメリカンホワイトオーク系、オーキーな華やさが主体で、近年のロングモーンらしくボディは軽めだが、線が細いというわけではなく樽感の中に麦芽由来の甘みもほのかに感じられる。少量加水すると濃縮感のあった中盤以降のオークフレーバーが伸びて、スムーズに楽しめる。ハイボールも美味しいが、これじゃなくても良いかもしれない(汗)。
また、キーモルトとしての位置づけから、シーバスリーガル・アルティスあたりとの飲み比べも面白そう。

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日本では2020年9月に、本国では7月にペルノリカールから発売されたシークレットスペイサイドシリーズ。同シリーズはシーバスブラザース社傘下の蒸留所の中でも、これまでシングルモルトのオフィシャルリリースが積極的にはされてこなかった
・キャパドニック
・ロングモーン
・グレンキース
・ブレイズオブグレンリベット
スペイサイド地域の4蒸留所から構成される、シングルモルトブランドです。

要するにシーバスリーガルのキーモルトでもあるこのシリーズ。バランタインからも同じようなシリーズが出ていますし、有名ブレンドの構成原酒やブレンデッド向けだった蒸留所からシングルモルトがリリースされるのは、最近のトレンドとなってきているようです。
※シークレットスペイサイドのラインナップ詳細は、ブランドサイトニュースリリースを確認いただければと思います。

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(シークレットスペイサイドシリーズ。ロングモーンは18年、23年、25年の3種類がリリースされている。)

しかし全て18年熟成以上という中長熟ラインナップというだけでなく、一応限定品扱いとはいえ閉鎖蒸留所であるキャパドニック蒸留所の原酒を、ピーテッドとノンピートの2パターンでリリースしてくるとは思いませんでした。
それだけ原酒のストックが潤沢で、代替の蒸留所もあるということなのでしょうか。とはいえ、世界的なウイスキーブームの中で閉鎖蒸留所の原酒というのはある日突然入手困難になるものです。BAR等をやられている方は、将来用にストックされても面白いかもしれませんね。

改めまして今日のレビューアイテムは同シリーズから、みんな大好きなロングモーン18年です。
ロングモーンは数年前に16年が終売となり、新たにリリースされたNAS仕様のディスティラーズチョイスを海外から取り寄せてテイスティングして・・・率直に言えば残念な気持ちになったという記憶のある蒸留所です。(その後16年も新たにリリースされていたようですが、こちらは未確認。)

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(ロングモーン・ディスティラーズチョイス。若く、そして樽の乗りも熟成期間相応というシングルモルトだった。)

近年の同蒸留所の傾向としては、酒質がライトかつドライになっており、これは他のスペイサイドの蒸留所にも見られる変化ですが、ロングモーンの変化は特に大きかったように思います。
一方で、今回の18年はどうかと言うと、これは悪くない、むしろ良いです。
アメリカンホワイトオーク主体の、華やかでドライ、黄色系のフルーティーさがあるタイプ。樽の分析とかはする必要なく、近年のロングモーンの酒質にバーボン樽とホグスヘッド樽で熟成させたらこうなるよね、というどちらの意味でも期待を裏切らない仕上がりとなっています。

この手のフレーバーはボトラーズに多かったタイプですが、最近はオフィシャルでも増えてきました。市場で人気の味に合わせてきたというところでしょうか。また、18年にしては樽感が濃厚な部分もあり、20年以上熟成した原酒も一部使われているのではないかと推察します。幅広く原酒を使ってバランスをとれるのは、オフィシャルの強みですね。

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さて、この香味の系統だと、ライバル筆頭候補は相変わらずグレンモーレンジ18年です。
中身のレベルは同格。となると気になるのは価格です。
その他、近い熟成年数かつクオリティのシングルモルトも含めて市場価格を比較してみると・・・

・ノッカンドゥ21年 43% 9000~10000円程度
・グレンモーレンジ18年 43% 10000円程度※
・ロングモーン18年 48% 11000~13000円程度※
・グレンバーギー18年 40% 12000円程度
・ベンリアック20年 43% 12000円程度
・グレングラント18年 43% 14000円程度※
※はオークフレーバーが特に強く出ているタイプ。

となって、後はネームバリューや、蒸留所が持つ話題性等も考えたら、これは良いところにまとめてきたとも思います。
No,1候補グレンモーレンジ18年は健在ですが、度数を考えたら5%高いロングモーンも充分選択肢に入る。昨年、アラン18年がシェリー系にシフトして、ライバル不在になったジャンルでしたが、これは強力な対抗馬の登場です。

また、ロングモーンで18~20年熟成、同じようなフレーバー構成でボトラーズからリリースされたら・・・今この価格じゃ買えないです。
1990年代以前、ブレンデッド優先の時代に芽吹き、2000年代にかけてコアユーザーのニーズを満たし、地位を築いたボトラーズリリースですが、昨今はオフィシャルが強力ライバルとなりつつあります。

いやだって、こんなオフィシャル出されたら、これでいいやって思っちゃうじゃないですか。

行列に並んで食べられるかもわからない、人気料理店のこだわりの1品料理より、毎日食べられるチェーンレストランの上位メニューと言う選択肢。自分のような探求側の人間がその思考で良いのかと思いつつも、流石ペルノさん、いい仕事してますねぇ、としみじみ思わされた1本でした。

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