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東京インターナショナル バーショー 2018 で遊んでました

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今日はTokyo International Bar Showに参加してきました。
かつてはウイスキーマガジンライブとして、1年に1度のウイスキー好きのお祭り・・・だったのですが、Bar Showとなってからは徐々にウイスキー色がフェードアウトしてる感のある本イベント。今年はタイトルから「ウイスキー」の文字が消えて、ウイスキー色がさらに薄いなんて話も聞くところ。。。とりあえず飲めるだけ飲んできましたので見ていただければ。まあ近年、日本全国でウイスキーフェス的イベントがどんどん増えている中、差別化という意味では正しいのかもしれません。 

記念ボトル狙いの方は早朝から並んでいるらしいのですが、興味の無い自分は開場ギリギリ到着コース。行列を尻目に写真パシャパシャ、スタートダッシュも必要有りません(笑)。
そんなわけで、今回はちょっと実況生放送気味に、回ったブースの情報を更新しながらイベントを楽しんでみました。


【ウイスク・イー】 
ベンリアックグループラインナップがなくなってしまったウイスクさん。しかしキルホーマンとアランに加え、今年は新商品のグレンアラヒーのサンプルが登場!
オフィシャルスタンダードの筆頭となるグレンアラヒー12年は、癖のない酒質にバーボンオーク系のフルーティーさが主体。そこにシェリーオーク由来のコクがバランスを取って上品な味わいで、シェリー樽の比率は全体の3割程度という話。。。には思えない構成(笑)。
ですが決して悪いワケではなく、むしろ今回のイベントで好評だったリリースでした。これはハイボールにしても美味しそうです!
この他、18年は突き抜けた樽感こそないものの、全体的にまとまったマイルドで呑みやすいバランス型、余韻にしみるウッディさが熟成を感じますね。
10年カスクストレングスはバニラと乾いた麦感、あるいは牧草、むせるように納屋の香り。スウィートでモルティ、余韻のオークフレーバーが心地よく感じます。
そして13時から数量限定で試飲が展開された25年は、ナッティーで湿ったオーク、アーモンドやはちみつを思わせる甘く香ばしいアロマ。ややドライながらスムーズな口当たりから、余韻にかけてオーキーなトロピカルフレーバーが広がっていきます。
グレンアラヒーのニューリリース、全般的に癖のないとっつきやすい味わいで、どれを飲んでも美味いシングルモルトです。

【ベンチャーウイスキー(イチローズモルト)】
今年も当然話題になるイチローズモルト。有料ですがWWA2018でワールドベストブレンデッドに輝いたモルト&グレーン ジャパニーズブレンデッドの試飲が出来ます。そのほかは通常ラインナップに加え、ヘビーピーテッドとノンピートのニューメイク。ラムカスクなどのサンプルが用意されています。 

2018年に仕込まれたばかりの原酒2種。イベントでは普段飲めないニューメイクなどを飲んで貰いたいと言うのは、ブースに居た吉川さんの話。
ノンピートは乾燥させた麦芽香と乳酸系の柔らかい酸味、日本酒のようなコクがあり、クセの少ない素直なニューメイク。
熟成に耐える酒質を作り出すため、発酵時間を変えるなど色々試行錯誤しているとのこと。70時間程度かと思っていたら、今は90時間以上発酵させてるんですね。この乳酸っぽさはそこからきてるのかという理解。
ピーテッドはそうした酒質の上にしっかりとピート、スモーキー。短熟でも仕上がる可能性がある素性のいい原酒です。
昨年のニューメイクとはまた違う仕上がりで、日々の進歩と研究の成果を感じます。

【株式会社都光酒販(ロッホローモンド、グレンスコシア、長濱蒸留所)】
個人的に近年のラインナップで成長著しいと感じるのがロッホローモンド蒸留所。インチマリンの衝撃は記憶に新しいところで、今後の展開に期待。グレンスコシアはオーキーでフルーティーな18年が良い感じですね。 
また台湾のナントウ蒸留所、スタンダードのシェリータイプとバーボンタイプを久しぶりにテイスティング。価格が強気なのは相変わらずとして、クオリティは年々上がっている印象。カヴァランもありますし、日本もうかうかしてられませんよ。

そしてその日本のクラフト蒸留所ですが、昨年夏に訪問した長濱蒸留所。バーボン、シェリー、ミズナラなど各種原酒サンプルと共に、ひっそりと都光さんのブースに隣接する形で出展しています。
ニューメイクのヘビーピートが悪くない仕上がりだったので、後は樽と熟成場所ですねという話。色々試行錯誤している ようで、先日はソレラ出のフィノカスクが入っていたようですし、今後のリリースと蒸留所としての成長が楽しみです。

【田地商店(信濃屋食品)】
田地商店さんは信濃屋食品の関連会社で、現地から酒類を調達するインポーター。これまでのバーショーは信濃屋食品がウイスキー中心に出展していましたが、今年は田地商店が同社取り扱いのウイスキー以外のリキュールやカルヴァドスなどを展開しています。
カルヴァドスは昨日記事に投稿したアプルヴァル、有料試飲の1974とヴィクトール含め各種揃っています。 

スタッフ一押しがこのシャマレルのラム。モスカテルフィニッシュとシングルバレル。スタンダードなVSOPも良かったですね。
VSOPは、ヤギューチャレンジならぬクリリンチャレンジで熟成年数当てクイズ。ウイスキー的にはミドルエイジ以上かと思ったら、まさか4年熟成とは。。。そう、若さを感じさせない味なんです。
モスカテルカスクフィニッシュはラム系のブラウンシュガーやハーブのアロマ、コクと粘性のある甘みのある味わい。ウッディな余韻が心地よい。 
そしてシングルバレル。コクと深み、度数を感じさせないウッディさが長い余韻に繋がっています。あーこれはシガーが欲しくなります。 

また、同じラムで今回の出展の中で結構いいバランスとコスパだったのが、レイジドードー。3年、6年、12年の原酒のバッティングらしく適度な深みも感じるバランスのよさ。
トニックで割って、ビターズを垂らしてマジうま。後は塩とグレープフルーツソーダで何このスポーツ飲料的爽やかさw
これはレディーキラーです。田地さんは相変わらず悪い酒を扱われます(笑)。


【フードライナー】
昨年のバーショーで最も気合が入っていたとも言えるフードライナーさん。今年も気合入ってますね!
同社取り扱い、グラッパの有名ブランドであるベルタのほぼ全ラインナップを試飲できて、現地の情報まで聞くことが出来る、グラッパってあまり知られて無いですが、ウイスキー好きに琴線のあるジャンルだと思うんですよね。やはり今年もオススメのブースです。


【キリン】
ウイスキー関連の出展が縮小している中、逆に内容が充実してきていると感じるのがキリンさん。昨年のフェスなどで好評だった樽出しグレーン、今年もやってます。
スペックはバーボンバレルサイズのアメリカンホワイトオークの新樽で、2.5年熟成とのこと。
ヘビータイプのコクが強いグレーンで、ウッディで蜜のような甘みが強く美味い。というか、新樽熟成のグレーンってほぼバーボンに近いんじゃ。
実はスペックは後で知ったのですが、目立った若さもなく、とても2.5年とは思えない味わいですね。

キリンが正規輸入を手がけるジョニーウォーカーブースでは、ジョニーウォーカーが持つフレーバーの要素を加えるハイボール講座を実施。受講するとジョニーウォーカーの帽子(シルクハット)が貰えた粋な計らいも。頂いた帽子、今後のイベントで使う機会が増えそうです(笑)。

【サントリー】
先日発売されて話題となったエッセンスオブサントリーの有料試飲に加え、今年は限定の山崎原酒がエントリー。 
セミナーでは山崎シェリーカスクの2013と2016の比較テイスティングも出す大盤振る舞いだったみたいです。
ニューリリースとなるボウモアNo,1も試飲が出ています。
早速飲んでみると予想以上に軽い香り立ちで淡いスモーク、燃え尽きた灰、ほのかに柑橘、和紙のような紙っぽさ。若干のフローラル。口当たりも軽くスムーズ。余韻にかけてバーボンオークのフルーティーさ。
すごく呑みやすいですね。。。突き抜け感はないですが、バランスはいいと思います。 

ただ若干パフュームにも振れそうな要素があったのは気になりました。んーこれが例の時代に逆戻りなんてならなければ良いのですが。


【アサヒビール】
ブラックニッカの新商品の試飲が出てるのかなと思ったら、意外なことになかった件。リキュール系主体でカクテルブースでした。ただウイスクイーでの取り扱いを終了した、ドロナック、ベンリアック、グレングラッサが6月からアサヒでの取り扱いになるみたいですね。
特に試飲はしませんでしたが、これが今後どのような形で展開されるのか注目です。

【ミリオン商事(EMILIO LUSTAU)】
グレンファークラスでおなじみのミリオンさん。同ブースではグレンファークラスに加えてルスタウのシェリー酒も提供中。ベネシアンドールからの樽出しが楽しめる粋なサービスも!
ナッツ、カラメル、ドライフルーツの酸味。スタンダードのオロロソですが、こうして飲むと香味が開き染み込むような旨さです。

このブースは学ぶことも飲むものも多く、ウイスキーそっちのけで今回一番長く居たかもしれません(笑)。
印象に残っているのが、シェリーブランデーのニューメイク(1回蒸留時点40%)と、同社シェリーブランデーリゼルバの飲み比べ。そしてヴェルモットのベースとフレーバー後の飲み比べ。
シェリーブランデーのニューメイクはウイスキーと違って要するにグラッパ系、香り立ちは多少ツンとしますが、味はフルーティー。
そしてベルモットは普通にベースで美味い。ハーブと柑橘、シロップの甘さ、これはいいリキュールですよ。

ブースにはシェリー委員会の日本代表を勤められる明比さんと、ルスタウのマスターブレンダーであるペレス氏もいらっしゃって、シェリー酒そのもののみならずウイスキー向けシェリー樽の件とか、いろいろ話を聞くことが出来たのも良かったです。
「次はこれを飲んでみろ」と、ペレス氏による本家本元のベネシアンドール?w
ちょうど先日ルスタウ・アルマセニスタのオールドボトルを購入したのですが、流通時期がわからなかったんで「これ知ってる?」と質問。それをきっかけに「よし俺がルスタウについて教えてやる」と言わんばかりにシェリー酒のみならず、シェリーブランデーや熟成による香味構成など、熱く語っていただきました。
これは貴重な経験だ。。。質問したボトルについても「シェリーは長く置くと澱がでるが、それは悪いものではない。度数も高いから問題ないよ」と太鼓判。むしろボトル持っていけば良かったかな(笑)。

【本坊酒造(マルスウイスキー)】
新商品のしなのたんぽぽと、ダブルセラーズ含め、通常ラインナップを出展。
しなのたんぽぽはバーボン樽や新樽系の風味とコクのある味わい。古酒がバランスとってますね。信州の長熟は樽が強い感があるので、むしろこのシリーズのようにブレンドで使うことで活きている気がします。
対してダブルセラーズはフレッシュで若いながら、スモーキーなニュアンスがいいアクセントに。対極にあるボトルですが、よくまとまってこういうウイスキーはハイボールで呑みたいです。

この他、ブースでいくつかサンプルを飲ませて貰っていると、「くりりんさん、次のウイスキートークは参加されるんですよね。現地で待ってますよ〜逃しませんよ〜」と、悪魔のささやきが。
お許しもらえるかなー。是非とも参加したいんですが。。。

【デュワーズ】
ブースとしては12年のハイボールをオススメしていましたが、各レンジの試飲もOK。15年は少々プレーンですが、18年のスムーズな口当たり、オーキーで華やかな熟成ハイランドモルトを思わせる余韻は、長く負担なく楽しめる美味しさです。

【ディアジオモエヘネシー】
MHDさんはラグジュアリーモルトのいつものラインナップ。今年は去年はアードベッグのVRがありましたが、今年は完全にカクテル系。
ウイスキーは200周年のラガヴーリン8年がスタンダード化に伴い積極的に展開。ハイボール美味しいです。
ラガヴーリン8年は今月発売、定価は6100円ってつまり16年と同価格帯なんですが、その辺の整理はどうなるんでしょう。今度教えてボブー!(笑)。

【スコッチモルト販売】
ウイスキーはウルフバーンとコーヴァルを中心に出展。(何気にビールも面白かったという。。。そう、スコモルさんの事務所がある板橋のM's両隣では、なんだか怪しいこと一杯やってるんですよね(笑))
一連のウルフバーンのラインナップを飲んでみると、北ハイランドでスタンダードを取っていけるような、プレーンで丁寧な作りを感じさせる。
また某蒸留所から使用後のクオーターカスクを買い付けているようで、使われた原酒は淡くピーティー。これが意外にいいバランスで、今後も楽しみになりました。


【まとめ(帰宅後追記)】
全てのウイスキー関連のブースを紹介仕切れませんでしたが、気がつけばスタートからラストまで7時間。ぶっ通しで遊ばせて貰いました。普段はWEBで絡むウイスキー関連の知り合いとも会えましたし、充分楽しいイベントだったと思います。
イベントとしては昨年同様にバーショーという名前そのままにブースもエンターテイメント色が強く、バーカウンターを再現したような、かなり凝った造形のものも見られました。
一方ウイスキーはオフィシャルスタンダード中心。マニアックなリリースを求める方には、確かに需要に応えられないと感じるところはあります。ただウイスキー以外の酒類も含めて総合的に楽しむのであれば、上記のように面白さはありましたし、関係者との話の中で勉強になることも多々ありました。

なお一部の出展者からは「こういうイベント構成なら、逆にボトラーズとか持ってきても良かったかも」なんて話もあり、今年をきっかけにまたウイスキー関連の出展が増えるかもしれません。
昔からの参加者としては、やっぱりバーショーはウイスキーマガジンライブであって欲しいんですよね。
そんなわけで出展者の皆様、2日間連続での長丁場大変お疲れ様でした。個人的には今年のイベントもバッチリ楽しませて貰いましたし、来年も参加したいと思います。

ロングロウ 19年 1998-2017 シングルカスク ウィスク・イー向け 56%

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LONGLOW
SINGLE CASK
Aged 19 years
Distilled 1998
Bottled 2017
Cask type Refill Sherry Butt
An Exclusive Bottled for Whisky-e
700ml 56%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:持ち寄り会
時期:開封後1ヶ月以内
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:甘くどっしりとしたシェリー香、焦げたカラメルソースやみたらし醤油、コーヒーチョコレート。ピーティーなスモーキーさに加え、サルファリーな要素も混じっている。

味:パワフルでリッチな口当たり。キャラメルソースの甘みと焦げ感、ローストした麦芽風味。合わせてサルファリーなニュアンスも混じるが、全体的な濃さゆえすぐにかき消される。
余韻はドライでソルティ、ダシっぽさとピーティーなモルトスナックの香ばしさ、ほろ苦さを伴う複雑な余韻。

樽感が強いが、それ以上に酒質として際立った個性のあるヘビーな構成。今すぐ飲んでもロングロウとして愛好家から求められる要素はあると感じるが、10年、20年瓶熟させても面白そう。少量加水すると独特の麦系の風味に加えソルティな要素が判りやすくなるものの、硫黄要素も表面に出てくる。
それにしても、飲んでいて妙に食欲をそそられるのは自分だけだろうか。

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スプリングバンクのヘビーピーテッドタイプであり、コアな愛好者の多い銘柄でもあるロングロウ。
今回のリリースは、一言でアメリカンなグルメ。BBQのように大味でワイルドで、しっかりとしたタレ系の味付けの中に、素材由来の味わいも潜んでいる。そんな印象を持つシングルモルトです。

近年のロングロウでシェリーカスクというと、こうしたどっしりとした味付けのものが目立つようにも思います。
直近で近い熟成年数のリリースで、比較的色の薄かった18年にしてもやはりシェリー感が独特。出汁の混ざったカラメルというか、薄口醤油ダレというか。合わせて感じるサルファリーさが自分にとっては苦手な要素なので、毎日これを飲みたいとは思わないのですが、ハマる人はトコトンハマる、アイラとは違う中毒性があるのもわかります。

(スプリングバンク蒸留所はフロアモルティングを100%行う数少ない蒸留所。キルニングで使われるピートは写真奥の乾燥したタイプと手前の湿り気のあるタイプ、産地も異なる2種類が使われている。Photo by K67)

スプリングバンクとロングロウ、特にロングロウではその位置付け上ピートの個性が強く出ています。
かつてスプリングバンク蒸留所では、キャンベルタウン産の石炭やピートを用いた仕込みが行われていましたが、現在使われているピートは写真の乾燥タイプはトミントール、湿っているタイプはインヴァネス地区産という話。ただキャンベルタウンにもPeat bogはあるようなので、全く供給していないワケではないと思うのですが、需要と供給に対して他の地方のものも使わなければ生産が追いつかないということなのかもしれません。

ちなみに乾燥したピートに比べ、湿ったピートの方が強く煙が出る性質があります。つまりより強く燻すことが出来るということで、ピートを混ぜることで香味への影響を調整していると考えられます。
ロングロウは湿ったピートを多めに炊いて強く風味をつけているとか、スプリングバンクの方は乾燥タイプが多めとか、一口にピートと言っても色々あって、飲みながら考える楽しさがさらに増えますね。

グレンドロナック 22年 1993-2016 54.4% #1455 ウィスクイー向け

カテゴリ:
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GLENDRONACH
EXCLUSIVERY BOTTLED FOR WHISKY-E,LTD JAPAN
Aged 22 years
Distilled 1993
Bottled 2016
Cask type Oloroso Sherry Punchon #1455
700ml 54.4%

グラス:サントリーテスティング
量:30ml
時期:不明
場所:BAR飲み@LIVET
暫定評価:★★★★★★(6)

香り: 華やかさと淡いシェリー感のある香り立ち。キャラメリゼ、オレンジママレード、ほのかにドライアプリコットを思わせる酸味。時間経過で麦芽を思わせるアロマも感じられる。

味: 少し硬さを感じる口当たり。ブラウンシュガー、オレンジやリンゴのカラメル煮、そして麦芽風味、バニラの甘み。ボディにしっかりとした厚みがあり、樽由来の香味から麦感が広がるよう。
余韻はドライで染み込むようなタンニン、ウッディネス。スパイスを思わせる香味、ほろ苦さが序盤の甘みと共に残る。

シェリー系のニュアンスだけでなく、麦芽風味やアメリカンホワイトオーク由来のフレーバーなど、バランス型の1本。ともすれば濃厚シェリーに振れがちなドロナックにあって、酒質由来のフレーバーまで楽しめる中々無いタイプともいえる。熟成感も程よく。加水するとまろやかな口当たりに麦感が強く出てこれもGOOD。


ここ数年リリースの多い1990年代のグレンドロナック。ドロナックは1996年から2002年まで蒸留を休止しているので、1990年代ビンテージは貴重になりつつあります。
その樽構成は、2002年の再稼動後はバーボン樽などもありますが、この90年代はほぼシェリー系のリリースで、それでいてシェリーはシェリーでも、アメリカンホワイトオークだけでなくスパニッシュオーク樽もあれば、オロロソではないPX、リフィルのような淡いタイプ・・・まあとにかく様々なリリースが行われています。
ただまあ、総じてシェリー感の濃いものが多いですね。

一部では1993はグレンドロナックの当たり年なんていう評価もあるくらいですが、樽次第で当たりもあればそうでもないものもあるため、個人的には玉石混合の時期だなと。
その93ドロナックの中にあって、今回の1本はテイスティングの通りバランス型のシェリー感に加え、酒質由来の風味が刺々しくなく丸みを帯び、嫌味少なくバランス良くまとまっている。
どシェリーこそドロナック的なイメージがありますが、そのシェリー感を支える酒質の部分に良さが見出せるこのボトルから得られる経験は、その他のドロナックリリースを飲む上でも良い経験になると感じました。

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さて、グレンドロナックつながりで、合わせてご紹介。
1993前後のビンテージは、直近ではWHISKY HOOPから1993と1994、それぞれキャラクターの異なるボトルが会員向けに同時にリリースされ、愛好家から注目を集めています。

22年のオロロソシェリーパンチョン#320はリフィルアメリカンオークシェリーという感じの樽感。
香りのシェリー感は淡く、ツンとスパイシーでハーブの香気と酸味が混じる爽やかなウッディネス、ポップコーンやビスケットの香ばしさ。味わいはとろりとしたブラウンシュガーの甘み、余韻はウッディーでドライなフィニッシュ。
今回のウィスクイー向けと同じくパンチョン樽で淡いシェリー感ですが、アタックはこちらの方が強く感じます。(っていうかパンチョンで736本ってどういうことやねんw)

そして23年のオロロソシェリーバット#826は・・・アメリカンホワイトオーク、それも結構な古樽という印象。
古酒感のある落ち着いたシェリー感で、とろりとリッチな甘みのある香り立ち。味わいはダークフルーツケーキのようで甘みの中にシロップ漬けのドライフルーツ、そして余韻にしたがって熟したフルーツ、ブランデーのような香味がドライな舌触りとあわせて広がっていきます。 

キャラクターの異なるこの2本、どちらを好むかは飲み手次第とは言え、わかりやすく美味しいのは23年。近年この手香味を持ったシェリー系ってリリース少ないですし、個人的には頭一つ抜けた完成度と感じます。

先に書いたように、グレンドロナックの1990年代はリリースが集中しているだけにいつ迄リリースされるかわかりません。
樽次第で玉石混合なのは否めませんが、言い換えれば先に書いたようにさまざまなキャラクターが魅力でもあり、 こうした飲み比べが出来るのも今だからこそですね。

東京 インターナショナル バーショー2017(初日)に行ってみた

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先週は本当に仕事が忙しく、土曜日は起きられないか・・・と思ったのですが、目が冷めると午前10時。
準備すると開場時間にちょうど良い、ほんじゃまぁ行ってみますか~と東京ドームシティまで。
ウイスキーフェスといい、バーショーといい、イベント会場が自宅から近くて助かります(笑)。

この記事が公開されるのは、バーショー2日目の14日日曜日。2日連続の方も、今日が初参加という方もいらっしゃると思います。
昨年に比べてカクテルなどの"ライブ系の展示"が増え、ウイスキー要素は控えめだった気がしますが、その中でも「おっ」と思うものがいくつかありましたので、紹介させていただきます。

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まずは世界一を取って益々注目を集める、秩父蒸留所、イチローズモルトから。
ホワイトラベルなど通常商品に加え、2015年蒸留のニューポット、そしてシェリー樽とアメリカンホワイトオークIPA樽のカスクサンプルとブレンデッドウイスキーの3種が試飲できます。
ニューポットを飲むと発酵系の雑味が少ないだけでなく、アルコール感柔らかくコクのある甘みが感じられ、以前のようにツンとしたニュアンスの少ない、更に短期で仕上がりやすい酒質を感じます。
そして限定のカスクサンプル3種も中々。秩父らしい酒質をベースに、ブレンデッドはナッティーな香ばしさの後からオーク由来の華やかさ。シェリー樽は樽質の良さが感じられる、発売されたら秩父ファンによる争奪戦間違いなしというレベル。IPAカスクは以前リリースされた免税向けの毒々しいIPA感はなく、余韻にかけてじわじわと広がってくる感じでバランスの良いIPA感。
一緒に試飲していた某チャーハンBARのマスターと「気合入ってますねー」と唸ってしまいました。

続いて秩父蒸留所の隣、マルスウイスキー本坊酒造は出品数少なめながら、最近何かと話題のプレミアムジン和美人(WA-BI-GIN)が印象的でした。柚子、金柑の苦いニュアンスがある輪柑橘のアロマ、微かにシナモンのようなニュアンスもあり、これは「けせん(ニッケイ)」によるものだとか。
少しボディは軽めでしたが、爽やかで飲みやすいジンでした。

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この他、ジャパニーズメーカーとしては、サントリーウイスキーからはマッカラン12年ダブルカスクの大々的なPRに、メーカーズマークのカクテルブース。山崎を始め各蒸留所の原酒サンプルなどがバウチャー1枚からテイスティング可能。蒸留所に行かないと飲めないものがテイスティング出来るのが嬉しい。なお6月に発売されるというプレミアムジンROKUの試飲はなかったようです。
キリンウイスキーは新商品のシグネチャーブレンド、蒸留所限定品だったシングルモルト・ワインカスクフィニッシュ12年、スモールバッチシリーズからシングルモルト17年、グレーン25年(この3種はバウチャー必要)がテイスティングアイテム。加えて田中氏以下、ブレンダーチームがブースにスタンバイし、積極的にコミュニケーションをとられていたのも印象的でした。


ニッカウイスキーは5月と6月にそれぞれ発売するクロスオーバー、カフェジン、カフェウォッカの先行試飲が可能。ウイスキー側のカウンターには制作に関わられた森ブレンダー以下、開発チームがスタンバイ。ジンとウォッカはそれ単体の試飲だけでなく、海外から招聘(?)したバーマンによる各種オリジナルカクテルを飲むことが出来ました。
この3種、自分は過去の記事に記載したとおり総じて好印象だったわけですが、会場での反応も上々だった模様です。発売が楽しみですね!

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続いてはウイスキーショップ・インポーター関係の出展の紹介。
まずは精力的にプライベートボトルをリリースし、注目を集める信濃屋さんのブースから。試飲の充実度としては、信濃屋と後述する株式会社フードライナーが非常にがんばっていた印象でした。

信濃屋さんは直近発売のPB5種(カリラ、ブナハーブン、ベンネヴィス、ポートシャーロット、スペイサイドシングルモルト和)を含む新旧リリースで構成。
近年では非常に貴重となった、長期熟成の1970年代蒸留として注目を集めた"和NAGOMI"は、和み・・・というほどゆるくなく、樽感主体で硬さとスパイシーさのある構成でしたが、長期熟成らしいフルーティーさ、華やかさも備わっており、ボディもそこまで軽くない。今後の変化に期待したいです。
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そんな信濃屋PBニューリリースの中で最も印象に残ったのが、モルトマンのベンネヴィス19年。
カスクタイプはシェリーバットなので、ともすると濃厚なシェリー感をイメージするかもしれませんが、飲んでみるとシェリー感というより、バニラ、クッキー、焼き林檎や桃を思わせる甘みとフルーティーさ。ベンネヴィスのリリースに見られる紙や植物っぽい癖もあまり感じられない、樽由来の香味と熟成感でコスパに優れた1本に仕上がっています。(是非試飲してみてください。)

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ウイスキーではありませんが、大手グラッパメーカー、ベルタ社の正規輸入元である株式会社フードライナーのブースは、今回最も気合の入ったブースの一つと言えます。
同社が取り扱うベルタグラッパ通常ラインナップほぼ全てが無料試飲アイテムであるだけでなく、京都からK6の西田氏も参加。K6のオリジナルグラッパの試飲(特別価格での販売も有り)に、同氏によるカクテル、グラッパ業界の裏話も楽しめます。

近年、ウイスキーの高騰、原酒枯渇などからコニャック、カルヴァドス、ラムなどの他のスピリッツにも注目していたところ。10種類を越えるスタンダードからフラグシップまでのグラッパを一度に試飲出来たのは、これだけで参加した価値があると言える、素晴らしい体験になりました。
長期熟成のグラッパの濃厚な甘さ、樽由来のほろ苦さはウイスキーに共通するところもありますね。新樽以外に複数タイプの樽を使ったオルトレ イル ヴァッロは、甘さとナッティーな香ばしさ、樽由来のタンニンがウイスキー好きの琴線に触れそうな構成。フラグシップに当たるパオロ・ベルタ1996は食後酒としては極上、イベントの締めにもうってつけです。

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ウイスクイーのブース。ウイスキーはキルホーマンのみでしたが、ニューポットと麦芽(ノンピートとピーテッド)の試食が出来たのは、イベントならではの出し物として楽しませてもらいました。
ニューポットは創業当時と比較してもあまり違いの無い、嫌味の少ないクリーンなピーテッドタイプ。「ニューポットから美味しくないとおいしいウイスキーにはならない」、とスタッフの方のコメントがあり、確かにこれなら短熟でリリースするにはうってつけだなと。
飲みつかれた身体には中々ヘビーな試飲になるかもですが、キルホーマン、アイラ好きの方は是非。

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最後に、ディアジオのブースから、アードベッグのVRを紹介。
確かアードベッグのプレミアムテイスティング会で公開されていたモノだったと記憶していますが、ブースにも出展されていました。
これ、すごいです。正直1回では楽しみきれないほどの完成度で、何度でも見てみたいほど。
慣れない人は、そのままヘッドマウントの映像としてみてしまうかもしれませんが、360度全方位が映像として展開されるため、ひたすら顔を動かして蒸留所の周囲、中、全てを見渡すことが出来ます。
酔ってしまわない程度に、くるくるまわってみてください!(笑)

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(イベントのラストは、メインステージで「We Love Bar Show!!」)

さて、長くなってきたのでここらで筆を置こうと思います。
これまで紹介したブース以外に、京都の空気をそのまま持ってきたような季の美の出展ブース(レシピを構成する各フレーバーにフォーカスした原酒テイスティングも可能)、ディアジオ社のカクテルライブなど、見て楽しめる展示が多く、お酒を飲むだけではないエンターテイメント的な展示会として、1日かけて楽しむことが出来ました。

ちなみに、今回個人的に最も注目していた新生ソサイエティブースは、社会的地位によって何かが変わるアベラワーなど、4種類の試飲アイテムがバウチャー1~2枚(会員は無料)。
日本支部が設立され、これから大々的にPRしていく・・・という感じはない、少しさびしい内容。
アベラワーはソサイエティらしいトーンの高い、硬めの味わい。3.291のボウモアはシェリーカスクで、結構サルファリー。ウイスキー愛好家に大きな衝撃を与えた"投光照明石油掘削装置ムーンプール"こと29.206が無かったのは残念でした。
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では、本日はこれにて。
本日イベントに参加される皆様、飲み過ぎ注意でバーショーを楽しんできてください!

グレングラント40年 1970年蒸留 2010年ボトリング インプレッシブカスク

カテゴリ:
GLENGRANT
Impressive Cask
Aged 40 Years
Distilled 1970
Bottled 2010
46.1% 700ml

グラス:創吉テイスティンググラス
量:所有ボトル
場所:自宅
時期:開栓後2年程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:熟成感のあるエステリーで華やかなオーク香、蜂蜜、ホットケーキ、ナッツ、そして甘酸っぱく充実したフルーティーさ。
杏、熟したパイナップル、煮た林檎、黄桃の缶詰、微かなシナモンスパイス。徐々に麦芽を思わせる香りもあり、実に充実している。

味:粘性もあるリッチな口当たり。蜂蜜、麦芽、洋梨や杏ジャムを思わせる濃い甘みのフルーティーさと紅茶の風味、ナッツの香ばしさもある。
余韻にかけてはオーキーでドライ、ウッディーな苦味にトロピカルな戻りも感じる華やかで長いフィニッシュ。


ウイスクイーが展開しているボトラーズブランドのインプレッシブカスク、その最上級グレードとしてリリースされたプラチナシリーズです。1970年蒸留で40年熟成、第一弾のグレンリベットに続いて2010年末ごろにリリースされたボトルになります。
久々に飲んでみましたがやはり旨い。長期熟成で相応に樽感は強いものの、46%まで落ちながら厚みのあるボディでギリギリバランスが取れています。
旨みの濃い濃厚な味わい、香りも華やかかつリッチなフルーティーさで、個性という点では「スペイサイドの長期熟成のひとつ」という包括的な到達点にたどり着いてしまっていますが、こういうウイスキーこそボトラーズリリースの醍醐味だったよなと、懐かしくもあります。
 
思い返すと、グレングラントはボトラーズリリースを支えた偉大な蒸留所の一つと言えます。主要なボトラーズからは1960年代、70年代のリリースが大量にあり、シェリー系にしろバーボン系にしろ、それがほぼ間違いなく旨かった。冷静に考えるとこれって凄いことです。
最近のボトルではオフィシャルの16年が中々良い出来であるものの、その差はいかんともしがたく。当分はストックボトルのお世話にならざるを得ませんが、いずれまた21年、25年、長期熟成のボトルリリースが増えていくことを期待したいです。

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