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UNCLE NEAREST 1856 
PREMIUM WHISKEY 
TENNESSEE WHISKEY 
(Aged 9 years)
750ml 100Proof 50% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス 
時期:開封直後 
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:注ぎたてはコーンフレークのような乾燥した穀物の甘味と軽い香ばしさがあり、そこから徐々にチャーオーク由来のバニラやキャラメルを思わせる甘さ、ドライオレンジ、新樽らしく焦げた木材のウッディネスもある。

味:マイルドで粘性のある口当たり、薄めたメープルシロップやオレンジママレード、軽い香ばしさ。甘さはそこまでしつこくないが、ウッディでほろ苦いニュアンスがフィニッシュにかけて引き締めていく。
余韻は口内を軽くスパイスの刺激、カカオ粉末を振ったチョコチップクッキー、軽い焦げ感、ビターでドライなウッディネスが余韻に蓄積していく。

甘味がジャックほどしつこくなく、熟成によってまろやかに整った口当たり。メローな中に独特の香ばしさが感じられる。ボディがしっかりしているためロックにしても氷に負けず、よく延びる点がポイント。他方で熟成が9年と長めであるためか、味に対して余韻のウッディさ、ドライさが蓄積していく点も特徴といえる。お好きな飲み方で。

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テネシーウイスキーの新銘柄、ジャックダニエル蒸留所の初代マスターディスティラーであるネイサン・ニアレスト・グリーン氏(通称:Uncle Nearest )のレシピを再現したウイスキー。
マッシュビルはテネシー州で収穫されたコーンとライ麦を90%、糖化用と思われるコーンモルトなるものを10%(詳細は不明、飲んだ印象はコーン80、ライ10、モルト10あたり)。
出来上がった原酒はメイプルチャコールによるメローイングを計3回14日間かけて施されるなど、11の独自プロセスを経てリリースされるというものです。

このウイスキーをリリースしている、アンクルニアレスト社が創業したのは2017年。
その1年前、ジャックダニエル社が創業150周年を迎えた2016年。ニューヨーク・タイムズが、ジャックダニエルの歴史に新しいストーリーとして、少年時代のジャックにウイスキー作りの手解きをした人物、”ネイサン・ニアレスト・グリーン”氏の存在を明らかにした記事を掲載します。
これまでのエピソードは、奉公先で牧師ダン・コール氏から教えられたとされていましたが、実際はその牧師の下にいたスタッフ(おそらくは奴隷)が教えていたというものでした。

ネイサン氏は黒人であり、後の解放奴隷でもありました。
同氏がテネシー州の今日に対して果たした功績に惹かれ、その生涯を調査していたのが、ニアレストグリーン財団の代表であり、後にアンクルニアレスト社を設立するFawn Weaver氏です。
調査の中で、ネイサン氏がウイスキー作りの手解きから蒸留所責任者まで、ジャックダニエルの歴史と深く関わっていたことが明らかになり(ジャックがアンクルニアレスト、最も親しい叔父と呼ぶくらいの間柄である)、当時のウイスキーレシピも発見されたことで、それを再現するという動きに繋がったようです。

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(ウイスキーマガジンの表紙を飾ったファウン・ウィーバー氏。彼女がなぜネイサン・ニアレスト・グリーンについて調査をしようと思ったのか。またその歴史の詳細は、日本サイトでも特集されている。該当記事はこちら。)

先に書いたようにアンクルニアレスト社の設立は2017年(蒸留所の設立は2019年)で、自社設備でのウイスキー蒸留はすでに始まっていますが、この銘柄は9年熟成。ベースとなる原酒はどこか異なる蒸留所の原酒に”独自のプロセス”を施している、ということになります。

 ここまでの流れを見ると、同社と繋がりが深いのはジャックダニエル社ですから、そこから原酒を買っているのかと思いきや、意外なことにジャックダニエルの原酒ではないそうです。 
明らかなのは、それ以外のテネシー州にある1~2の蒸留所という情報のみ。。。そうなると筆頭候補はジョージ・ディッケルでしょうか。
詳しい話がわからずもどかしいですが、最も重要な要素と言える"味"は悪くありません。むしろ近年のバーボンのなかでは良いほう。メローイングと熟成がもたらす口当たりのまろやかな味わいは、アメリカ市場において高い評価を受けているという話も納得です。
 
同社のラインナップは100proof仕様の1856、スモールバッチで93proofの1844、そしてシングルバレルの1820の3種類があり、今のところ日本に入って来ているのは1856のみですが、市場で存在感を示せれば追って残りの銘柄も入ってくるでしょう。
何より、2019年から作られている独自の原酒の出来が気になりますね。ジャックダニエルのルーツと言えるウイスキー、数年後にリリースされるその時を楽しみにしています。