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長濱蒸溜所 アマハガン ワールドブレンド 小林さんちのメイドラゴン 47%

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AMAHAGAN
World Blended
The maid dragon of Kobayashi-san
700ml 47%

評価:★★★★★(5−6)

香り:注ぎたては鼻腔を刺激するドライな要素と、アプリコットやパイナップルを思わせる甘酸っぱさ。徐々にほろ苦いウッディネスに、アメリカンオークの華やかさとフレンチオーク系のバニラ香、複層的な樽香と微かなスモーキーさ。なんとも複雑なアロマ。

味:柔らかい口当たりから、グレーンのコクとソフトな甘さがあり、香り同様甘酸っぱさ、ややケミカルなパイン飴のようなフレーバーに乾いた麦芽、オールブラン。奥には白葡萄やナッツなどのフレーバーも。序盤はプレーンな味わいだが、それが複雑さを引き立てる。 余韻は口内をねっとりとした質感がコーティングし、序盤に感じられた甘酸っぱさが、スモーキーさとビターなウッディネス、ワインを思わせるタンニン、スパイシーなフィニッシュへと変わっていく。

AMAHAGAN系統の味わいをベースに、複数の原酒や樽の個性が混ざり合う、複雑なウイスキー。モルト:グレーン比率は6:4あたりか。特にハイランドモルトにワイン樽熟成のウイスキーとピートフレーバーが仕事をしているようだが、その複雑さ故、日によって、グラスによって、とにかく表情が変わるところがあり、なんとも奔放。これがブレンダーのコメントにある原作を意識した作りの結果か。
が、ハイボールにすると主張し合っていた個性が交わり、薄まり、すっきりとしてクリア、軽い酸味と麦芽風味ベースで非常に飲みやすい。

原作同様、序盤は深く考えずに楽しんでいくのが良いのかもしれない。酔った帰り道にドラゴンが居て、メイドになっていた??
冷静に考えてどういうことなん。。。いやこの可愛さなら良いのか。。。頭が。。。考えるな。。。感じるんだ。。。(何か盛られた模様

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ウイスキー界のコラボメーカー、長濱蒸溜所がリリースした、クール教信者作の漫画「小林さんちのメイドラゴン」とのタイアップリリース。原酒は長濱蒸溜所のモルト原酒と輸入ウイスキーのワールドブレンデッド。
先日は空挺ドラゴンズとのコラボリリースがありましたが、空挺ドラゴンズが肉料理に合うウイスキーをコンセプトとしたのに対して、今回のリリースは、原作の情景をイメージしてブレンドがされています。

メイドラゴンについては。。。異種族交流コメディ漫画なので、とりあえず見てくれとしか言えませんが。そのグラスの中身、何か混ぜられてないか?と、原作を知っている人なら若干疑ってしまうラベルに加え、裏ラベルのバーコードが竜形態のトールなのもこだわりを感じるポイント。
原酒の系統としては、ワイン樽原酒がかなりいい仕事というか、全体に厚みやフルーティーさ、そして余韻のビターなフレーバーを与えています。
また、長濱蒸溜所のモルトを熟成したものだけでなく、輸入ウイスキーを追加熟成したものを結構使っていると感じます。ピート原酒も存在は感じられつつフレーバーに幅が出る程度の塩梅で、万人向けながら複雑さを考察する楽しみもある1本です。

飲み方としては、テイスティングに記載した通りハイボールがオススメ。
深く考えると、え、それは良いのか見たいなツッコミどころや、色々深い設定がある原作ですが、そこまで考えなくても緩く、楽しく、可愛さも感じられるのがこのメイドラゴンが人気作となっている要因の一つだと思います。その意味でも、まずは軽く深く考えないでハイボールでグイっといってみるのがいいなと。




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さて、ここからちょっとマニアックな話。
今回のウイスキーですが、発売元であるBar レモンハートさんからテイスティングコメントの依頼を頂いており、去年の12月末の時点、ブレンドサンプルを頂いておりました。その時点のコメントは、販売ページや同社からのニュースリリース等で確認することが出来ますが、2つのコメントを比較すると、同じ要素はありつつも、異なるキャラクターを感じ取っていることが伝わるかと思います。

同じウイスキーをテイスティングしたとしても、コメントが完全に一致することはないのですが、よほど体調や環境の違い、年単位で時間が経過しない限り、味の方向性が大きくブレることはありません。
例えば、バーボン樽のウイスキーならばバーボン樽由来のオークフレーバーが、シェリー樽なら…という具合で、無から有は生まれないので、必ず同じ要素を拾うはずです。

ではなぜ違うのか、くりりんのテイスティングがガバガバだから…ではなく。
半年前のブレンドサンプル時点では、使用する原酒は樽から払い出されておらず、その時点の原酒でレシピが作成されていること。そしてレシピ決定からボトリングまでの約半年間、原酒が追加の熟成を経ているためです。
そうなんです、上記テイスティング時点から、原酒が成長し、変化しているのです。

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(長濱蒸溜所 AZAI FACTORYこと旧七尾小学校で樽詰めを待つワイン樽の数々。)

サンプル時点では繋ぎになる原酒の熟成が弱く、スコッチグレーンか、あるいはグレーン多めのスコッチブレンデッドバルクの線の細さが、樽感やピートなど、各原酒の個性を支え切れていなかった印象を受けます。最終的には落ち着いて、AMAHAGAN系統の味わいが強く出てくるのですが、注ぎたてはそのちぐはぐさが強く出て、なんだか危ういなと、そんな第一印象でした。

このグラス内の変化が、これはこれでメイドラゴン原作のストーリー展開にマッチしているなと思えたわけですが。
一方で、製品版では約半年の追熟で樽感が増し、原酒の個性も強まっただけでなく、全体的に角が取れて繋がりも出ています。ピートフレーバー、ワイン樽原酒由来と思われるフルーティーさとビターなウッディネス、グレーンの甘さ、南ハイランドモルトの個性的なフルーティーさと麦芽風味、これらがまとまっていないようでまとまっている。原作を思わせるはちゃめちゃさ、にぎやかさがある、不思議なバランスのウイスキーへと成長していました。

どちらが好みかという話ではありませんが、ウイスキーの面白さ、ブレンダーの難しさを改めて感じたリリースとなりました。
いやその変化を感じられるのはコメント協力した人だけだろと言われたら、そこは記事から感じ取ってとしか言えないのですが(笑)。
コラボリリースだと、どうしても色眼鏡的に見られがちかと思いますが、長濱蒸溜所のコラボは規模の小さな蒸溜所とは思えないほどレシピに様々なパターンがあって本格的。ちゃんとストーリーがあって、ただラベルを貼っただけのコラボに終わらない点がポイントなのです。

最後に、これはレモンハートの古谷さんへの私信となりますが。この度は、貴重なサンプルウイスキーのテイスティングをさせて頂き、また、コメント協力という表舞台に立つ機会も頂き、誠にありがとうございました。次のリリースも楽しみにしております。

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メイドラゴンウイスキーのハイボールを、尾っぽの豚肉のチャーシューと。悪くない組み合わせです。ラベルデザインは、トールの背後が何パターンかあったらさらに面白かったですね。魅力的なキャラが多い原作なので。後、酒の席でシラフな小林さんなんて小林さんじゃない(笑)。

AMAHAGAN×空挺ドラゴンズ 作者対談イベント(6月25日 14:00~)

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先日レビューした長濱蒸溜所と漫画:空挺ドラゴンズのコラボリリース。
同作の作者である桑原太矩氏と、その関係者らによる本ウイスキーリリースを記念したトークイベントが、6月25日(日)に池袋のミクサライブ東京にて開催されます。

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『空挺ドラゴンズ』ウイスキー発売記念トークイベント
6月25日(日)14時00分~16時00分
参加費:1650円(オンライン参加は1100円)
池袋 ミクサライブ東京(〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-14-3)
https://online.mixalivetokyo.com/blogs/information/driftingdragons

【登壇者】
桑原太矩 『空挺ドラゴンズ』著者
吉平 Tady 直弘(追加ゲスト)  アニメ『空挺ドラゴンズ』監督
橘 もも(追加ゲスト)  小説版『空挺ドラゴンズ』著者
講談社・髙橋正敏 『空挺ドラゴンズ』初代担当
講談社・寺山晃司 『空挺ドラゴンズ』現担当


自分は元々この原作を読んでいて、かつ何かと繋がりのある蒸溜所の1つである長濱蒸溜所の関連ということ。
そして自分がレビューしたボトルの、ウイスキー側ではなく原作側の記念イベントであるということ。ウイスキー側がイベントを実施した事例は数多あるんですが、原作側(今回は講談社)が主導したイベントはあまりなかったと思うんですよね。
ファン層はどんな感じだろうか。長濱のコラボリリースは次もあるし、近場だし、ウイスキーに比べりゃ参加費安いし(※ココ重要)、参加してみるか~と、お買い上げありがとうございま~す。

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てな感じで参加申し込みをしたのですが。
概要を見直してみると、トークイベントの中身は書かれているものの、ウイスキー関連のイベントなら間違いなくあるはずの”酒類提供”に関する記載が無い。
え、なにこれ、ひょっとしてこれってトークだけ?
現地参加とオンライン参加の差額は、ひょっとしてライブ会場の箱代だけ?
うそやん、そんなことある?

で、調べました。
いきなり講談社に凸するのは気が引けるので、本リリースの販売を担当されている「WHISKY BAL」こと合同会社サカキさんに問い合わせたところ、サカキさんのサイトには、ちゃんと記載されていました。
どうやらイベントの主催側と販売側で持っている資格の関係で、主催側では酒類提供について記載できないようです。
なるほどよくわかりました、質問回答頂いたついでに、記事化しておきます。1600円でテイスティングセットとおつまみ付きトークショー、結果論ですが、お得でしたねw。

~~~以下、サイトから転載~~~~
【来場者サービス】
AMAHAGAN 空挺ドラゴンズver.の発売を記念いたしまして、弊社よりどちらか1セットをご提供させていただきます。こちらはトークショー中、お席にお持ち込みいただきご賞味いただけます。

『アルコールセット』
・空挺ウイスキー ハイボール(ハーフサイズ)
・空挺ウイスキー ストレート(15ml)
・じゃがスティック近江牛ステーキ味(長濱浪漫ビール)
・ミネラルウォーター

『ノンアルコールセット』
・キンキンに冷えた炭酸水
・じゃがスティック近江牛ステーキ味(長濱浪漫ビール)
・ミネラルウォーター

参考;http://whiskybal.co.jp/kodansha.html
~~~~~~~~~~~~~~

なるほど、肉に合うだから「じゃがスティック近江牛ステーキ味」か。
サイン用のボトル持って行った人は、おかわりで自分のボトルからついじゃダメなのかな?(笑)。

そんなわけで日曜日は、時間があったら池袋に行こうと思います。
なんか息子の習い事の検定試験の送迎が被っているようなので、自分が行くことになると…ひょっとしたら無駄になっちゃうかもですが。
まったく、妻子持ちの趣味活動は、こう言う時に辛いです。

長濱蒸溜所 アマハガン 空挺ドラゴンズVer. 47% ワールドブレンデッドウイスキー

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NAGAHAMA DISTILLERY 
AMAHAGAN 
World Blended Whisky 
空挺ドラゴンズ Ver. 
700ml 47% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:トップノートはスパイシーで、軽くナッツや麦芽シリアルを思わせる香ばしさが心地よい。奥にはオーク樽の華やかさ、微かにケミカルな甘さ、スモーキーさも感じられる。

味:香りに反して味わいはプレーンで軽めな仕上がり。口当たりはマイルドで、クレープ生地のような素朴さを感じるモルトやグレーン由来の甘さ。そこにほのかな酸味とコク、後半につれてじんわりと広がるウッディさとピートフレーバー。余韻はほろ苦く、ほのかにスモーキー。

いつものアマハガン味ではなく、系統の違うプレーン寄りな原酒構成が主として感じられる。香りにあるナッティーで華やかなアロマは、中長熟の原酒でなければ出てこないフレーバーであり、構成的には3年熟成程度の長濱モルトに、5〜10年程度の南ハイランドモルト、そして最長20年熟成程度の内陸原酒を含む幅広い年数のブレンドが仕事をしているのではないだろうか。 樽感はワイン樽やシェリー樽、そしてアイラクオーターカスクを連想する複数の要素があっさりめの複雑さを形成している。

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単体としては香りが好ましく、一方で味は面白味は少ないが飲みやすい、バランスの取れた仕上がりである。ハイボールにすると軽やかな酸味が伸び、さっぱりと飲み進めることができる。
なおブレンドレシピのテーマである肉料理とは、麦芽風味と穀物風味主体の味わいが、さながら炭水化物的なペアリングを見せる。

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Good!アフタヌーン誌で2016年から連載中の空挺ドラゴンズ。
アニメ化もされている人気作が、ウイスキー業界のコラボメーカー長濱蒸溜所と組んでリリースしたのが、今回レビューする「AMAHAGANワールドブレンデッドウイスキー 空挺ドラゴンズVer.」です。

空挺ドラゴンズは、空を飛ぶ龍を追い、それを捕って生計を立てる「龍捕り」の一団が主役の異世界冒険活劇。
同作における世界の雰囲気は、多くの人が知っている作品に例えるならラピュタに近い感じでしょうか。ストーリーは団員にまつわるエピソードと合わせて、龍を追うアドベンチャーパート、その龍を調理して食べる美食パートで展開されており、個性豊かな登場人物が織りなすストーリーを、異世界肉料理が彩る構成となっています。

今回のコラボは、長濱蒸溜所の屋久ブレンダーが原作のストーリー構成に倣って「肉料理に合う」ウイスキーとしてレシピを構成。
長濱蒸溜所のコラボリリースでは、過去に“まどろみバーメイド”でキャラクターに焦点を当てたレシピでのリリースが行われましたが、料理に合うというコンセプトは記憶している限り初めて。
いったいどんなレシピに仕上げてきたのか、どんな肉料理と合わせてみようか・・・と、作り手と原作、どちらも知っているだけに、ボトルを入手するまであれこれ予想する楽しさもありました。

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(長濱蒸溜所でのプライベートブレンド作成風景。原酒を確認する屋久ブレンダー。)

とは言え、一口に肉料理といっても、その肉の種類から調理法、味も薄味から濃いめまで千差万別です。
おそらく、屋久さんは長濱蒸溜所併設のレストランのメニューを使って検証しているはずだから(忙しくて自分で作ってる暇はないはずだ)、あれとあれと…なんて野暮な予想をすることもできるのですが、せっかくのコラボなだけに、原作の雰囲気は大事にしたい。

じゃあ原作の料理を再現しようとなるのですが、龍の肉を何で再現するかが問題です。
原作から考察すると、現実世界で海に住むクジラが空を飛ぶ龍の存在で、それを捕っていた漁師が龍捕りとして空を翔ける存在。龍から肉以外に油を捕ったり、香水に使われる成分が採られたりしているので、龍は鯨に近いと考察できますが、残念ながら 鯨肉は近場で手に入らないし、調理するにもちょっとハードルが高い。。。

悩んだ結果、第1話に登場する龍の尾身ステーキサンドを、牛のしっぽの付け根、お尻の部位であるイチボで代用することに。
原作の表現では、龍もその種類や形状によって鳥っぽいものや豚っぽいもの、いろいろな肉質があるような感じですし、うん、細かいことを気にしてはいけない!

というわけで、近所の肉屋で目的の肉を調達。
筋切りをして軽くたたき、下味をつけつつ肉の温度を常温に戻す。 牛脂をフライパンで溶かし表面を焼いたら一度休め、今度はじっくり火を入れていく…。
その間、グリルで硬めのカンパーニュをトースト。
仕上げにウイスキーでフランベ。原作はワインウォッカ、アニメだとグラッパだけど、ここはアレンジ。
厚めにカットして塩胡椒、レタス無用、パンにはさんで完成! 
はい、これは絶対美味しいやつ。

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一方で、肝心のウイスキーですが、結論から言えば今回作った再現料理とは良く合いました。
プレーン寄りでコクのある柔らかい味わい、主張しすぎないピートや樽感が、肉の旨味や下味に使ったスパイス、ニンニク、トーストの香ばしさと混ざり合う感じですね。
ハイボールなら、尚更組み合わせは選ばない。肉料理に合うというとヘビーピート仕様や、変化球でどっしり赤ワイン樽フィニッシュとかを予想しましたが、見事に外れ。それどころか、原酒の傾向、樽使い、これまでのアマハガンとは違う系統の仕上がりに驚かされました。

長濱蒸溜所のAMAHAGAN(アマハガン)は、国産原酒と輸入原酒のブレンドです。原酒の傾向は、今まではある程度決まっていて、メインにケミカルなフルーティーさが必ずあったところ。
今作は、乾いた麦芽風味にプレーン寄りなフレーバーが主体。馴染み深い“AMAHAGANらしさ”も若干香味の奥に感じられるのですが、明らかに主体は異なるウイスキー、異なる原酒の使い方をしている印象を受けます。
比率としては、今までと同様の原酒が1〜2、長濱原酒が2、異なる原酒が6〜7くらいではないでしょうか。おそらく15〜20年クラスの長期熟成を含むプレーンなブレンドが6〜7割と大多数を締めることで、ノーマルなアマハガンとは異なる仕上がりになっているように感じます。

また、もう一つ今までと違う樽感、原酒の仕上げ方も感じられました。
それはフィニッシュです。これまでもピートフレーバーは、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクでフィニッシュした原酒を使うことで、複雑さや奥行きを出す方法は取られてきたところ。一方で、ワインやシェリーについては、長濱原酒は温暖な環境で3年以上熟成させることから樽感が強くなりがちでしたが、今回のリリースでは樽感が控えめながらも複雑さがある。

確認したところ、輸入原酒をシェリー樽やワイン樽などに入れて短期間フィニッシュし、ボディが軽めの原酒に適度な厚みを持たせつつ、樽感をコントロールして使用しているのだそうです。
こうした手法で仕上げた原酒を使うのは、厳密には初めてではなく、今までのリリースでも多少なり使われてきたものとは思いますが、個人的には今回のコラボリリースで明確な違いを感じられました。

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(長濱蒸溜所の熟成庫、AZAI FACTORYで熟成されている樽の一部。管理シートを見るとAMAHAGANベースの表記があり、この輸入原酒の後熟仕様が今回のブレンドでも使用されていると予想。)

元々、AMAHAGANはシングルモルトをリリースする前段階で、ブレンド技術を高めることを目的の一つとした試験作でした。
それがあれよあれよと、とんでもない数がリリースされるに至ったわけですが。その要因の一つが
、今回のコラボリリースも該当する、プライベートボトル(PB)リリースです。

AMAHAGANの発表された2018年当時は、PBと言えばシングルカスクが基本。カスクサンプルを取り寄せて、その中から選んでリリースするのが一般的でした。
そんな中で、ブレンドで PBをやれないかと、ブレンドはカスク選定と違ってレシピでコンセプトを作れるので、様々なリリースができるはずだと長濱蒸溜所に相談して、結果2019年から何種類かリリースをさせてもらいましたが、ブレンドPBがここまで広まるとは思いませんでした。
それも長濱蒸溜所の懐の深さと、仕事の手広さ(主に社長)があってこその成長だと思います。

そうして多くのリリースを経験した長濱蒸溜所のブレンド力は、実績でいえばクラフト界隈随一。直近数年間の新規リース数だけでいえば、間違いなくウイスキー業界でトップクラスです。
今回のリリースでは、輸入原酒のフィニッシュという、長濱蒸溜所の新たな引き出しも見ることができました。

自分にコメントの依頼をいただいたモノだと、次は人気コメディ漫画の「小林さんちのメイドラゴン」とのコラボリリースが控えています。先日は、攻殻機動隊とのコラボも発表されていました。
いやどんだけリリースするねん、って感じもしますが、それぞれ単体としても面白いブレンドだと思いますし、原作に思い入れがあれば、なおさら楽しめるリリースだと思います。

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よし、龍(メイドラゴン)を獲って食べよう!

アマハガン✖️まどろみバーメイド コラボボトル 第2弾&第3弾

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NAGAHAMA DISTILLERY  
AMAHAGAN ✖️ まどろみバーメイド 
2nd 伊吹騎帆 World Malt Whisky 47%
3rd 陽乃崎日代子 World Spirtis 43%


昨日に続いて、今日もAMAHAGANです。
6月にリリースされた、まどろみバーメイドとのコラボボトル2種。まどろみバーメイドについては、今の時点では読んだことがある人には説明不要でしょうし、読まれたことがない方には、カクテルメインのバーテンダー漫画(女性なのでバーメイド)とだけ、理解して次に進んでもらえれば良いかなと。
そう、このブログの主役はお酒。サンプル頂いてテイスティングしてみたら、正統派&自由奔放でなかなか面白い構成だったのです。

漫画やアニメとのコラボは賛否両論あるモノですが、大前提として確立したブレンド技術の上で、それでいてジャパニーズウイスキーとして売るようなことさえしなければ、これもまた日本だからこそ作ることが出来る新しいお酒の形なのかなと考えています。(今やどちらもCOOL JAPANですし。)
今年2月、先立って第1弾としてリリースされたまどろみバーメイドコラボウイスキー「月川雪」も味的に悪くなく、何よりこのシリーズには共通してリリースとラベル(登場人物)に関連するレシピや背景情報があり、そこが納得感にも繋がっているのです。

今日はその辺りも踏まえて各リリースを紹介しつつ、第2弾と第3弾が同時に出た意図として、原作でも度々テーマとなるアレンジ(ツイスト)にも触れていきたいと思います。

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(コラボシリーズ第1弾としてリリースされた、主人公・月川雪をラベルに採用したAMAHAGAN。ワイン樽原酒2種類を使い、ふくよかに仕上げられたブレンデッドモルト。)

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AMAHAGAN✖️まどろみバーメイド
第2弾 伊吹騎帆 World Malt Whisky
700ml 47%


冒頭、2種類のリリースを正統派&自由奔放と書きましたが、この第2弾は正統派路線のブレンデッドモルトウイスキー。
AMAHAGANらしいケミカルなフルーティーさと乾いた麦芽風味、そこにシェリー樽由来のコクが繋ぎになって、決して比率は多くないでしょうが全体のバランスを整えています。

余韻はクリアでモルティーな香ばしさと甘みが残る感じですが、従来のアマハガンのPBだと黄色系のフルーツ、パイナップルといった感じの味わいが強調されるものが多いところ、これはほのかにビターなピートのアクセントと、モルティーな感じが強調されているように思います。
ひょっとすると、いくつかの原酒はこれまでのAMAHAGANに使われているものとは違う原酒を用いているのかもしれません。

ラベルに描かれているのは、まどろみバーメイドの主要登場人物3人のうちの1人、伊吹騎帆はホテルのBARで働くしっかりキッチリタイプのバーテンダー。公式コメントでは、面倒見の良い姉御肌の性格で、包み込むような優しさとシェリー樽の個性が...と解説されていますが、個人的には第1弾の月川雪の時のようなワイン樽原酒ではなく、後述する第3弾の陽乃崎日代子のスピリッツブレンドでもなく、あえて王道的なスコッチスタイルの樽構成、原酒構成で造るところに、その雰囲気、キャラクターが現れているようにも感じています。
そして根っからのオーセンティックBAR & ウイスキー愛好家の自分にとっては、この構成こそが逆に心落ち着く味わいでもあったりします。

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AMAHAGAN✖️まどろみバーメイド
第3弾 陽乃崎日代子 World Spirits 
700ml 43%


続いて第3弾が自由奔放なブレンドスピリッツ、陽乃崎日代子です。
なぜ香味の印象が自由奔放なのかというと、表記でSpiritsとあるように、これはAMAHAGANに使われる輸入原酒を含むウイスキーに、沖縄・新里酒造の熟成泡盛ベースのリキュール(ステンレスタンク3年の後、アメリカンオーク樽で7年以上熟成した泡盛に還元水飴を添加してリキュールとしたもの)をブレンドした、ウイスキーという枠に囚われていないお酒であるためです。

香りからして通常のAMAHAGANとは明らかに異なる構成。濃縮したオーキーさ、華やかさと泡盛系の個性を感じて、ウイスキーを思ってノージングすると「!?」となることは間違いないのですが、味わいはさらに奔放。
プレーンなモルティーさ。そこにのっぺりとした黄色系シロップの甘さと泡盛の癖、オーク感が混ざり、口当たりや質感はリキュールに近いというもの。
以前、新里酒造やヘリオス酒造がリリースした泡盛とウイスキー原酒のブレンドはもっと泡盛していて、これはなんか泡盛だねって素直に思えたのですが、今回のは言わばカクテルの原液であり、これをアマハガンブランドで作ってしまう自由さ、味わいからくる奔放さ、まさに自由奔放なお酒であるのです。

なお、これが原作にどう絡むかというと、同著の主要登場人物の1人、陽乃崎日代子は、パフォーマンスを行いながらカクテルを作るフレアバーテンダーを職業としており、公式コメントでは天真爛漫な性格と既存の枠に当てはまらないアイディア等からという位置付けがされています。
このレシピと登場人物の掛け合わせに違和感はないのですが、既存の枠に当てはまらないお酒のアレンジと言えば、主人公である月川雪の代名詞「ツイスト」であるところ。
陽乃崎日代子は設定上名家の出身で、そのしがらみから飛び出して自分の生き方を模索していたり。カクテルの技術は原作中でダメ出しされるところはあるものの、あざとく自分の個性をアピールするところなんかも、ああこのレシピはコイツだわと思えるポイントなのかもしれません。

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さて、最後に今回のリリースが2種類同時に出た狙いについて。
ことの発端は長濱蒸溜所社長が、新里酒造から泡盛を調達したところから始まります。コンセプトが決まって漫画著者・早川パオ氏にラベルを依頼したものの、それ以上にブレンドで苦労することになったのが「アレンジ」でした。

今回のリリース2種は、それぞれを混ぜてユーザーが「アレンジ」を楽しめるようにブレンドレシピが調整されています。
上の画像のようにラベルまたは箱を2つ合わせると、伊吹騎帆がサーブしたブレンデッドモルトに、陽乃崎日代子がワールドスピリッツを加えている構図になるわけですが、著者に長濱蒸溜所から出たお題は「単体でも成立し、混ぜても飲めることが一目でわかるもの」というざっくりしたもので。
その後、長濱蒸溜所の伊藤社長曰く「想像以上の作品が出てきて焦った。めちゃくちゃ気合い入ってた」というのが今回のラベル画像となります。で、泡盛とウイスキーです。しかも異なる2種類のレシピとのブレンドを想定するのですから、屋久さん、大変だったろうなぁ…(遠い目

ただ、この2種に感じた口当たりから余韻までの変化を形で表すと、第2弾が凸、第3弾が凹という感じで。案外喧嘩しないんじゃないかなとは思っていました。
実際ブレンドしてみると、第3弾のワールドスピリッツにあったのっぺりとした甘さが、第2弾にあるシャープな麦感とフルーティーさに合わさってくる。泡盛リキュールにあったであろう濃いめのオークフレーバーや癖もアクセント程度となって、これは確かに面白いかもしれないなと。原作を思い起こしつつ、2粒で3度美味しい、そんな味わいを素直に楽しませてもらいました。


余談:新里酒造がなぜ大量の泡盛リキュールを持っていたかというと、以前リリースした新里ウイスキー(泡盛と輸入原酒のブレンド)用に仕込んでいたものと思われます。
このリリース、コロナの影響もあったと思いますが、自分の記憶では初動以降はあまり話題にならなかったというか、店頭で見かけなかった印象があり。。。
ウイスキーは熱意があれば作ることができる。しかし問題は売ることが出来るかだ。という言葉が思い起こされました。
アレンジも大事ですが、それはやはり守破離の守。カクテル同様に基本となる技術があって、そしてそれが対外的に評価されてから、ですね。

アマハガン ハンドフィル 蒸溜所限定品 62% ”Recommend for Highball”

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AMAHAGAN 
World Blended 
Edition Hand-filled 
”Recommend for Highball”
Cask type Sherry 
Bottled 2022 
500ml 62% 

評価:★★★★★(5)

香り:ツンとして鼻腔に強い刺激を伴うクリアなトップノート。薄めたキャラメル、焦げたオーク、ほのかにドライプルーンのような甘さも感じられる。

味:香り同様にピリピリとした刺激が口内にありつつ、味はしっかりと樽由来の甘み、ケミカルな要素があり、焦げたキャラメルのほろ苦さ、ほのかにグラッシーでニッキのようなスパイシーさが余韻に繋がる。

蒸留所限定ブレンドの一つ。ブレンドの主体は5年程度と思われる若い内陸原酒で、香味とも刺激は残るが、それ以外に樽や原料由来の甘さ、ウッデイネス、各種フレーバーはそう悪いものではなく、未熟香もほぼ感じられない。そのため、推奨されているハイボールにするときれいに伸びて、軽やかな飲み口からチャーした樽の風味をアクセントに、余韻にかけてドライフルーツの甘みが程よく感じられる。
何より購入までの行程で楽しめる、エンターテイメントとしての魅力が素晴らしい。各クラフトもこうした取り組みをもっと実施してほしい。

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長濱蒸溜所で販売されている、蒸留所来訪者向けのオリジナルAMAHAGAN(アマハガン)。
アマハガンについての説明は不要かと思いますので割愛しますが、既製品のそれと異なるレシピでブレンドしたものをオクタブサイズのカスクに詰め、蒸留所内で追加熟成している商品です。
今回、ウイスキー仲間からお土産としていただいたのでレビューを掲載します。

ロットや原酒の切り替わりで名称も変わっていますが、今回のは”Recommend for Highball”
ベースとなるブレンドは、比較的若い輸入モルト原酒に長濱のモルトをバッティングし、プレーンでアタックが強く、それでいて品の良いフルーティーさを感じる構成。ストレートだとアタックが多少強く感じられますが、ロックやハイボールなら、そうした刺激が落ち着いて穏やかに楽しめるというレシピとなっています。

また、そのブレンドをオクタブのシェリーカスクで追加熟成。シェリーカスクというと色合いの濃さと香味への強い影響を予想されるかもしれませんが、樽事態はそれなりに使い古されているので、リチャーした樽材由来の香ばしく焦げたようなウッディさがある反面、シェリー樽でイメージする感じは前面に出ない、程よく付与された仕上がりとなっています。

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このシリーズの面白いところは、単に蒸留所限定品というだけではなく、その購入方法、手順にあります。

元々スコットランドの蒸溜所では、ハンドフィル、またの名をバリンチとして、蒸留所のビジターセンターで購入者が樽から直接ボトリングし、蒸留所限定のウイスキーを購入できるシステムがあります。
そのシステムを、日本の酒税法下でできる範囲で踏襲したのが、このAMAHAGAN Hand Filledになります。
写真付きで購入までの流れを紹介していきます。

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①購入希望者は蒸溜所側の購入履歴ノート、ラベルにその日の日付、購入者の名前等を記載。

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②500mlのボトルに樽から直接ウイスキーを詰める。

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③最後に、ラベルを貼って、キャップに封をして、お買い上げ。

というのが一連の流れ。
既に課税した限定ウイスキーが樽に詰められていて、それを量り売りで販売しているということではあるのですが、記帳、ラベルサイン、ボトリングという本来済ませておける作業、実施する必要のない管理(記帳)を、あえて購入時にお客さんの手で行うことで、特別感が得られるのです。
だって、蒸留所を見学しにきて、そこのオリジナルウイスキーがあるだけでも嬉しいのに、一連の流れを経験したなんて、普通に楽しすぎるでしょう。まさにエンターテイメントです。

なお、樽の中身は完全に払い出さず、少量残った状態で次のロットやレシピに加えている、所謂ソレラシステム的な運用がされており、ウナギのたれのように徐々に味わいが複雑に、奥行きを持っていくことも期待できます。
長濱蒸留所でハンドフィルの販売が始まったのは2020年あたりから。そこから何度もロットが切り替わる息の長い企画となっており、その成長や限定レシピの登場がファンの間では蒸留所訪問時の楽しみの一つとなっています。
中には成熟したハンドフィルを買うために、定期的に蒸留所を訪れる猛者もいるそうです。

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(ブレンドの熟成状態を確認する屋久ブレンダー。今回のロットが終わりそうなので、次のブレンドをどうしようか…とレシピを模索されている。Photo by C)

現在、日本各地にウイスキー蒸留所が創業し、その数は将来60カ所を超えるとも言われています。
そんな中で、大きくはピートの有無、樽感の違いでしか味わいに変化をつけることが出来ないウイスキーは、香味だけで60種類も明確な違いや注目されるブランドを作れるかと言ったら、それはかなり難しいと考えます。

勿論そうした努力は必要で、高品質でこだわりのウイスキーを作るという1点でブランドを確立できれば良いですが。
例えば地域観光と結びつけるローカル色や、体験型のエンターテイメント色、あるいは横のつながりで他のメーカーとの連携など、ウイスキーの味以外で愛好家を惹きつける取り組みが今後一層必要になってくるのではないかと思います。
値段と香味は大体同じだったら、あるいは多少高くても、買うのは思い入れがあるところ。となるのが人(オタ)の心情というものです。

その点、長濱蒸留所は本当にそこを上手く掴んでくるんですよね。
社長がアイディアマンで、良いと思ったものはガンガン取り込む、意思決定から実行までがめちゃくちゃ早いというのもあります。このハンドフィルだけでなく、先日の長濱フェスもまさにその一例です。あれの企画って動き出したの。。。(ry
現場はめちゃくちゃ大変だと思いますが、でもそれは間違いなくファン獲得につながって、ブランド向上につながって、5年後、10年後の自分達を後押しする原動力になるのです。
長濱蒸留所だけでなく、多くのクラフト蒸留所でウイスキー以外の要素も含めて様々なアイデアが実行されて、愛好家を増やしてくれれば良いなと思います。

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オマケ:7月17日(日)、社長の企画思いつきで開催された長濱ウイスキーフェスでは、蒸留所前でひたすら焼き鳥を焼く同氏の姿があり。イベント後は各社との繋がりや原酒調達のため、スコットランドに旅立ったという。改めて記載すると、同氏は長濱浪漫ビールの社長であり、全国規模の酒販店リカーマウンテンの社長でもある。

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