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先日アランについて紹介した際、ボトラーズからは良く出る傾向にあると書いたバーボン樽熟成。ちょっと前にリリースされたその系統で、評価の高かったのが、このBBRのオルトモアでした。
味の傾向は大多数のバーボン樽熟成のスペイ・ハイランド系モルトと同じです。ただ、熟成のバランスが良いというか、完成度が高いというか、つきぬけはしませんが「あぁ、旨い」と飲める、そんなモルトに仕上がっています。
 
AULTMORE
BERRY BROS & RUDD LTD
(Specially bottled for Yoshinoya & Campbeltoun Loch)
Aged 21 Years
Distilled 1992
Bottled 2014
52.7% 700ml

評価:★★★★★★★(7)
 
"青りんごと蜂蜜、そして麦芽の甘く爽やかな香り立ち、微かに乾いた木のアロマ。スワリングすると天津甘栗を思わせる焦げた甘いオーク香も出てくる。
まろやかでコクのある口当たりからドライフルーツの濃い甘さ、バニラクリームとビスケット、後半に白桃のシロップ漬け。刺激は少なくスイスイと飲めるだけでなく、後半に広がりがある
フィニッシュはオークの香りと蜂蜜の甘さ、微かにグレープフルーツのワタの苦味、優しくドライで染みこむように残る。"


バーボン樽熟成の傾向としては、樽が小さいためど樽材の影響が強くなりがちで、ドライだったり、木香やアルコール感が強かったり、ギスギスした味わいになりがちです。しかしこのオルトモアは上述の通り非常にバランスが良く、オーク由来のドライさも、甘さも、全てが良いところに落ち着いています。

先日カヴァランのピーテッドのコメントの中で少し触れましたが、原酒は熟成させればさせるほどカドが取れて丸みを帯びてきますが、例外を除けば度数も下がりパワーも落ちていきます。
一方で、樽の影響は通常の熟成環境であれば経年と共に強くなっていきます。
これはシェリー樽にしろバーボン樽にしろ同じことですが、ただ熟成させれば良いわけではなく、樽の影響と原酒の変化に「適切な妥協点」を見つけるかが、熟成のピークの見極めなんだと考えています。

原酒の変化は入れられた樽の素性も少なからず影響を与えると考えられます。例えば木目が良い部分に当たったとか、樽の組み方の関係で他の樽より通気性が若干良かったとか。
そういう様々な要素の積み重ねが熟成期間中に作用して、たまたま今回のように21年の経過でこうした原酒が出来た。
味の要素はちょっと良いバーボン樽熟成のモルトという感じですが、この熟成のバランスは評価に値しますね。

原酒を選ばれたよしのやさん、キャンベルタウンさんには感服の一言です。
 

余談:
自分がテイスティングでたまに使う「桃のシロップ漬け」は、いわゆる桃の缶詰です。
白桃缶も黄桃缶も、それぞれウイスキーに共通する香味があると感じています。