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長崎 五島つばき蒸溜所 GOTOGIN 元大手酒類メーカー関係者が挑む 物語のあるクラフトジン

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突然ですが、自分は離島が好きです。
本土の港町や田舎とは違う、さらにゆったりと流れていく時間。周囲を海に囲まれていることで、隔離された空間が作る独特の雰囲気、景色。本土では望めない、ロマンに溢れた釣り場の数々。
大学時代はリゾートバイトで伊豆諸島に1ヶ月以上住み込みでバイトしたり、季節を問わず毎月1回は釣りにいったり、最終的には地元漁師の家に住み着いてもいました。

なので、「離島」というだけで親近感が湧く、パブロフの犬な心理を持っているのがくりりんです。
そして先日ブログ記事で紹介した飛騨高山蒸溜所の製造顧問、元キリンのチーフブレンダーである鬼頭英明さんとやりとりをしていた際に長崎・五島での計画を聞き、離島!蒸留所!!素晴らしい!!!と、離島愛が発動。
手始めに実施中のクラウドファンディングを勝手に応援させて頂くことにしました。

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世界遺産の島に蒸溜所を立ち上げ、クラフトジンづくりに挑戦!
https://readyfor.jp/projects/88266
※クラウドファンディング期間;2月28日〜4月25日11時まで


五島つばき蒸溜所は、酒類関連企業でお酒の製造販売・マーケティング等に関わってきた三人が、お酒本来の豊かさを持った「物語のあるお酒を作りたい」として設立中のクラフトジンの蒸留所です。
クラウドファンディングは既に終盤、目標金額を大きく越えた支援が集まっており、期待の大きさも伺えます。

場所は長崎県、五島市福江島、半泊(はんとまり)集落。
創業は2022年9月ごろ、製品出荷は同年12月ごろ。
設備はドイツ・アーノルドホルスタイン社製のジン専用蒸溜器。
造るジンはその蒸溜所名の通り、島の名産品である“つばき”をボタニカルの軸とし、島に湧き出る超軟水の湧水、ジュニパー、柑橘類などを使って仕上げられる予定です。

鬼頭ブレンダー曰く、正統派路線のジンだが、素材の個性を活かして膨らみと自然な濃縮感、飲み飽きることのないバランスのとれた美味しさ(ユニーク&ハーモニー)を目指すとのこと。
パッケージは同五島出身のアニメーション美術監督、山本二三氏が手掛けられ、内外ともこだわり抜いた個性を感じられる、まさに嗜好品たるクラフトジンが期待できます。

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五島つばき蒸溜所の代表である門田さん、ブレンダーである鬼頭さん、そしてマーケティング担当の小元さん。立ち上げを進めるキーマン3名は、実は全員がキリンビール社のOBです。約30年間同社に勤め、ウイスキー、ビール、酎ハイとさまざまなジャンルの酒類製造販売等に関わられてきた実績があります。

人生お酒一筋と言っても過言ではないリカーマンな方々ですが、なぜ少量生産のクラフトジンという、これまでの大量生産品とは真逆のお酒造りを選ばれたのか。
それは、大量生産大量消費の時代にあって、お酒が持つ物語や豊かさが失われてきているのではないかという意識から、自分達の手で“物語のあるお酒“を作り、それを通じて自分達が惹かれた場所の時間、空気、風景を共有したい。お酒にただ酔うのではなく、物語を含めて楽しんで欲しいと考えるようになり、今回のプロジェクトを立ち上げられたのだそうです。

これはあくまで個人的な推測ですが。
キリンビールで鬼頭さんが開発され、品質管理にも関わられていた大ヒット商品に”氷結“があります。
誰でも、手軽に、いつでも一定品質のお酒をの楽しめるというコンセプト。例えば、現代ではストロングゼロに代表されるように、純粋に効率よく「酔う」ことを目的とした安価なお酒は、それが悪いとは言いませんが、お酒そのものの背後にある物語は希薄だと言えます。
それこそ、原料の産地の話であるとか、造り手の想いとか、そういう景色が見えるかというと難しいでしょう。

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酒は嗜好品の部類ですが、嗜好品は効率じゃなく、こだわりの積み重ねだと思うんです。
私は直接お話を伺っていますが、クラウドファンディングのページを見るだけで、五島つばき蒸溜所に関わるメンバーが文字通りクラフトディスティラーとして、1本1本自分達のこだわりを込めたお酒を作りたい、という想いが伝わってきます。

では、「物語のあるお酒」としてどのようなジンを作ろうとしているのか。
それは長崎・五島にある「風景のアロマ」
・土地のアロマ(テロワール)
・素材のアロマ(個々のボタニカルの特徴)
・造り手のアロマ(ブレンダーの技術)
3つの要素をもって、飲む人にこの土地の魅力や、個性、お酒としてのおいしさを届けたいと言うこと。

具体的には、
五島の象徴といえる名産品の椿の種を炒って、挽いた上で蒸溜することで、深みのあるアロマとボディを生み出し。
水は現地の超軟水を用いて、その他ボタニカルについても素材毎に最適な蒸溜条件を見極め、個別に製法を切り替えることで、各個性を可能な限り引き出す。
それらを技術と実績のあるブレンダーが、個性を活かしながら調和させるブレンド行程を経て、物語のあるお酒へと昇華させていく。

五島の地には世界遺産に指定されるキリスト教祈りの地としての歴史があり、キーマン3名が惹かれた環境があります。
想いだけではなく、物語を育む魅力と歴史がその土地にあり、それらを紡ぐ確かな技術と実績があるからこそ目指せる、こだわりのクラフトジンづくりが今まさに始まろうとしているのです。

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日本では数年前にジンブームが到来し、酒造や焼酎等スピリッツメーカーが、クラフトジン市場に参入したという動きがありました。
その際、大半のメーカーでは和的な要素であるとか、個性的なスピリッツであるとか、あるいは地元の名物として植物のみならず動物的な何かまで、ジンという自由度の高いお酒にあって多種多様な原料を使った商品開発が行われたわけですが、個人的にはどこを向いているのかわからない商品も多数生み出された、という印象を持っています。

勿論、中には素晴らしいクラフトジンもありました。宮城の欅とか、西酒造の尽とか良かったですね。また、大手メーカーも参入し、日本のお酒市場に新しい選択肢が加わったのは事実です。
ですが、物事には守破離という考え方がある中で、何を守るかも定まらないうちから、なんとなく作れるからというような独創的なジンが造られ、一方でどう飲むのがオススメかと聞いても考えられていなかったり…。物語があるようで無い、造り手の好みなのか消費者の好みなのか、どこを向いて作っているのかわからないクラフトジンが、少なからずあったのも事実です。

その後、コロナ禍となりクラフトジンの領域では活発な動きが聞こえてこなくなっていましたが、今回、上述のように確かな造り手と深い想いによる、こだわりのジン生産計画を目にし、これは楽しみだと素直にワクワクしました。
冒頭述べたように離島愛がトリガーとなっていますが、それ以上に五島つばき蒸留所とキーマン3名が生み出すクラフトジンが楽しみでなりません。

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同蒸溜所におけるクラウドファンディングのリターンは、初回限定生産ジンのセット(10000円)から、蒸溜所に支援者のネームプレートを掲載するプラン、さらには100万円でオリジナルジンの生産というぶっ飛んだプランまであります。
流石に自分の財布から100万円は出せませんが、このブログの読者で自分だけのオリジナルジンに興味があるという方、支援しちゃっても良いんですヨ?

勝手に取り上げて勝手に応援しているだけの本記事ですが、自分にとってはこれもお酒が紡いでくれた縁の一つです。
いずれ福江島の海岸で、昼間はジンソーダを、夕暮れ時からはストレートやロックで、ゆるゆるやりながら1日を終える・・・そんな休暇を過ごしてみたいものです。
まあ、夕マヅメ時はグラスより釣り竿持ってる可能性が大ですけどね(笑)

クラウドファンディングのラストスパート、そしてそこから始まる蒸溜所創業に向けた準備、ジンづくり。是非ともこだわりの結実したお酒が出来上がりますよう、応援しております!

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カフェウォッカと冷凍フルーツの組み合わせは至高である

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カフェウォッカ

カフェウォッカ+フローズンフルーツ=アルティメット・ストロングスタイル
ちょっと色々調べたり聞いたりしないと書けない記事を準備しているのですが、時間がかかっているので息抜きに雑多な更新をします(笑)。

数年前から家飲みにちょっといいレモンサワーを作ることに拘っていて、ベースはウォッカの中でも特にお気に入りであるカフェウォッカを、ボトルごと冷凍庫で保管していました。
ある時、カフェウォッカの隣に置いてあった冷凍イチゴが目に入り、何の気なしに冷凍イチゴを氷替わりにして飲んでみたのです。ようするに、ウォッカのロック、氷が冷凍フルーツに置き換わったと思ってください。

結論から言うと、このカフェウォッカ&冷凍フルーツ(フローズンフルーツ)の飲み方が、めちゃくちゃツボってしまったのです。
ウォッカと言えば、フルーツを漬けた果実酒ならイメージがあるかもしれませんが、今回の飲み方は漬けないタイプです。香味の品が良いと言いますか。強すぎない自然なイチゴの香り、徐々に染み出てくる果実味、上質なウォッカ特有のクリアで柔らかい甘み。喉に滑り落ちていく冷涼感と、それが体温で加熱されてジワリと熱を帯びる感覚。。。

飲み終わったときにグラスに残った冷凍フルーツを口に含むと、半解凍となったそれがしゃりしゃりと冷たく、心地よく、程よい酸味と合わせて口の中をリセットしてくれるのです。だから次の杯に手が伸びてしまうわけですが、途中でちょっとソーダアップしても爽やかに楽しめる。
気が付いたら、カフェウォッカは1週間持たずに昇天していました。夏場の今なんて、もう最高に美味しい飲み方の一つだと断言できます。

どちらが良いとか悪いとかではなく、その日の気分の問題なのですが、ウイスキーばかり飲んでいると強めの樽感が煩わしく感じることもあります。
家飲みするお酒のローテーションとして、これは良いジャンルを見つけたと。ここからコンビニやスーパーでフローズンフルーツを探しては、あるいは近所の八百屋で旬のフルーツを買ってきては、様々な組み合わせを試していくこととなります。※勿論、レモンサワーの探求も続けています。

フローズンフルーツ&カフェウォッカ

近年、冷凍フルーツはコンビニでの取り扱いが増え、特にセブンイレブンやローソンなら大概。その他、トップバリューや西友、ハナマサなどでは1年を通じて購入できます。
ということで、ウォッカの銘柄も探索しつつ、様々なフローズンフルーツの組み合わせを試した結果…

ウォッカはカフェウォッカ一択です。
5000円未満で、これ以上のウォッカを見つけることは出来ませんでした。
ウォッカなんてただのアルコールじゃんと思われるかもしれません。実際、普通の1000~2000円のウォッカでも、そこそこ美味しくなります。
しかし、口当たりの柔らかさ、広がる原料由来の甘みは銘柄毎に違いがあり。特に余韻部分は安価なウォッカだとドライで刺激も強い、苦みが出るような感じで、使い方によってはアリだと思いますが、なるほどこういうことかと。カフェウォッカは、ほのかにフルーティーな要素が感じられるだけでなく、余韻のクリアさと自然なキレが特徴で、どう使っても美味いのです。

続いてお薦めの冷凍フルーツは、
・イチゴ
・マンゴー(コンビニ製品のは、アップルマンゴー)
・桃(白、黄)
・メロン(青肉、赤肉)

です。
今の時期は、売っている桃を買ってきて冷凍しておくと幸せになれます。熟れてお勤め品になっちゃってるやつとか良いですね。どうせカットして冷凍するので多少見栄えが悪くてもOK。
とにかくこうして色々試してみるのも楽しいんです。

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逆に、合いそうで合わなかったのが冷凍葡萄。後は意外にも冷凍パイナップル。
冷凍葡萄は最初悪くなかったんですが、皮の部分から青っぽさというか苦みが出てしまい、香りも思ったほどよくならず。食べた際にも皮が口に引っ掛かる、半解凍状態の口当たりの悪さも手伝って、残念な組み合わせとなりました。
葡萄を原料としたウォッカであるシロックと、冷凍葡萄の組み合わせなんてオシャレじゃんと思ってたんですが。。。美味しそうなものと、美味しいものは必ずしもイコールじゃないってことですね。

また、パイナップルなんてド本命だと思っていたんですが、某711で購入してきたものは思ったよりも甘みが出ず、逆に芯に近い部分に当たると残念な結果に…。ただこれはシロップ漬けの缶詰パイナップルを使って、自分で冷凍パイナップルを自作したりすると美味しく仕上がるものもあるので、モノによりけりと言うことになります。

カフェウォッカレモンサワー
(オマケ:爽やかな香りが特徴の瀬戸内レモン。この皮の部分をカフェウォッカに沈め、フレーバーウォッカを自作。更に蜂蜜レモンを作り、これを隠し味に造る自家製レモンサワーが最高!)

ということで、あれ?良いウォッカが家にある生活、面白いんじゃない?となって、一時期家飲みはこればっかりになっていました。途中からヤバいと思って消費を抑えましたが、去年1年間で5~6本飲んだと思います。

世間一般ではストロング系チューハイ、アルコール飲料が流行っており、酒カス御用達飲料なんて言われたりしています。ストロング系飲料のベースは甲類アルコール、ウォッカ等で、そこにフレーバーを後付けして炭酸で割っているわけですが、冷静に考えると自分のハマってるこの飲み方、言わばストロング原液なのではないかと。(コスト、質とも全く違いますが)
つまり、カフェウォッカ+フローズンフルーツ=更なるストロングスタイル…アルティメットストロングスタイル!?

まだ暑い日々が続いていますが、そんな時に楽しむ爽やかなお酒を探している方、こんな飲み方は如何でしょうか。めちゃくちゃ飲みやすいので、くれぐれも飲みすぎには注意です!!

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オマケ2:ちょうど飲み切ってしまっていてカフェウォッカは使ってないですが、アイスボックスを使って、ジンやレモンで少しフレーバーを整えてからソーダで割っても…美味いんですよねぇ(酒カス)

欅 KEYAKI ジャパニーズクラフトジン MCG  42%

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KEYAKI 
JAPANESE CRAFT GIN 
DISTILLED IN MIYAGI 
Relese in 2020 
700ml 42%

トップノートはフレッシュでほのかにビターな和柑橘のニュアンス。合わせジュニパーベリー、ハーバルな要素と微かに針葉樹林の木香を思わせる爽やかなアロマ。口当たりは柔らかくクリア、香り同様に柑橘系のフレーバーが主体で、含み香としても鼻腔に抜ける。ハーブやスパイス、奥には葡萄を思わせる甘みがアクセントとなっており、爽やかでほろ苦い余韻の中でじんわりと舌の上に残るように感じられる。

クオリティの高いクラフトジン。ジントニックに特化した仕上がりとのことだが、常温ストレートでも十分楽しめる。ベーススピリッツ由来のネガティブな要素が少なく、柔らかい甘さのある口当たりに、柑橘とジュニパーベリー、ハーブの心落ち着くアロマ。冷凍ストレート、ロックやソーダ割ともに良好で、単体のみならず食中酒としても申し分ない。

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2020年5月、先日発売されたばかりの東北・宮城県初のクラフトジン。
作り手は、同県の日本酒「伯楽星」で知られる、新澤酒造店が起業したジン製造専門の蒸留所、MCG(MIyagi Craft Gin)。創業2018年6月から約2年間、100通り以上にも及ぶレシピの試行を経てようやくリリースとなったそうです。

フレーバーを構成するボタニカルは、ジュニパー、フェンネルシードを除いて宮城県産で構成されており、ベースとなるスピリッツは、サトウキビを原料としたもの。恐らくロンドンドライジンタイプの製法で、蒸留用のスチルは最近流行りのハイブリットタイプでです。
蒸留の際、雑味の元となるヘッド、テールは分離してハーツのみを使っているとのことですが、肝心のカット比率は不明・・・これは後述の素材毎の蒸留で変えている部分があるためだと思いますが、飲んだ印象から雑味の少ない、狙い通りのスピリッツが作られていることは間違いありません。

昨今、クラフトジンブームの予兆があり、多くのメーカーでジンが作られている中で、飲み比べてみると「あれ?」と思う銘柄もいくつかあります。フレーバーは好みの問題もあるのでさておき、基礎とも言えるスピリッツが粗いと非常にもったいないんですよね。
その点欅は、より繊細な香りと味わいが抽出されるよう、ボタニカルを構成する素材毎に蒸留速度を変えるなど、ベースからフレーバーまでこだわった作りがされているのもポイントです。

【欅のボタニカル】
・ 柚子果皮 (大河原町産・柴田町産大島産)
・セリ  (名取産)  *完全有機農法
・茶葉  (石巻市桃生産) *日本最北限茶葉
・ぶどう果皮  (仙台市秋保産メルロー)
・ジュニパーベリー
・コリアンダーシード

フレーバーのトップにあるのは、レビューでも触れた和柑橘、つまり柚子ですね。
クリアで引っ掛かりの少ないスピリッツに、フレーバーがしっかり溶け込んでおり、前情報がなくても柚子が候補に上がるほど、明確な香味成分があります。
また、この柚子の比率が丁度良く、多くしすぎると柚子リキュールっぽくなってしまうところ。ジュニパー、フェンネルシードのジンらしさを付与する成分が混ざり、そして苦みやハーバルな爽やかさの中には、セリ、茶葉の成分が含まれて、馴染みのあるニュアンスに通じている。
作り手はこの「セリ」の使い方にかなり拘っているようで、普通のハーバルな感じと少し違うニュアンスが混じるのがその個性、オリジナル要素なのかもしれません。

また、個人的に「おっ」と思うのが全体のまろやかさと、余韻のほろ苦さの中に微かにある葡萄を思わせる甘み。
ウォッカのシロックほど露骨じゃない、もっと隠し味レベルですが、これが比較的トゲトゲしがちな上述のボタニカル由来のフレーバーをまとめ、繋ぎとなっているように感じられます。
ロンドンドライジンの王道的なフレーバー構成でありながら、それを部分部分で和の要素に置き換え、我々日本人にとってとっつきやすい仕上がりにも繋がっているのが、ジャパニーズクラフトの名に相応しい構成だと思いました。

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(MCGでの蒸留風景。近年、クラフトウイスキーシーンでも見られるハイブリットのポットスチルで蒸留されている。画像引用:さぶん酒店)

今回のボトルは、ウイスキー仲間のSさんから「飲んでほしい宮城県所縁の酒がある」として突然プレゼント頂いたものです。
Sさんの守備範囲から日本酒かと思っていたのですが、まさかのクラフトジン。正直なところ、いくつかジンのイベントに参加したり、生産者の方と話をしたりとクラフトジンに関する情報はそれなりに仕入れていましたが、先に述べた話と関連して、作り手に明確なビジョンがないケースが気になっていました。

ご当地由来のボタニカルを使えば面白いものが出来ると思った、飲み方や合わせる食材は特に考えていないけどジントニックかな?
といったような、とりあえずノーマルとは違うものを作れるから作ってみたという具合。勿論全てのメーカーに当てはまるケースではないのですが、その印象があったが故に、今回も「その手のリリースなのでは?」と警戒心が無かったと言えばウソになります。
なので、常温で一口飲んで素直に驚かされました。王道、基本は抑えながら、独自色も出せている。そうそう、こういうのだよ、こういうので良いんだよと、心の中で呟きながら、うきうきとソーダ割りの準備をし、食中酒でも楽しませてもらいました。

後々、作りのこだわりやフレーバーを調べてさらに納得。宮城県は自分の実家がある所縁の地。そこに良質かつ自分の好みなスピリッツが生まれたことが、純粋に嬉しいですね。
文面から伝わると思いますが、自分のハートは欅に鷲掴みにされてます。
今年の夏は暑くなりそうですし、さっそくお得な一升瓶仕様を購入です!
(補足:1.8リットルなのに、なぜか700mlとほとんど価格が変わらない。)
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キルホーマッソーPR用5

今日のオマケ:GLEN MUSCLE 続報。
新型コロナウイルスの影響でどうなるか不安でしたが、オリジナルリリースであるグレンマッスルの第4弾、昨年末にカスク選定に関わらせてもらった1本が、6月第2週目を目途に発売予定です。
蒸留所はスペック等を見ればバレバレですが、まだ通関していないので一応伏せて・・・(笑)

過去リリースのとおり、グレンマッスルはブレンデッドウイスキーという位置付けです。そのため、シングルカスクリリースとなる今回は、”チームグレンマッスル向けプライベートボトル”という整理になりますが、基本的なコンセプトは変わりません。
ブランドコンセプトである「愛好家が求める味わいや、ちょっと尖った魅力のあるウイスキー」についても、十分満たしていると感じています。
(リリース形態も多少異なりますが、これまで同様に本件での監修料や、売り上げの一部をメンバーが受けとることはありません。)

今回のリリースは、現行のアイラモルトのなかで、個人的に大注目な蒸留所の1樽です。
100%アイラ仕様の原酒は生産量が限られるため、蒸留所がなかなかサンプルを出してくれないそうなのですが、その貴重な原酒の中から、求めていたスペックの1樽を頂けただけでなく、カスクナンバーが29(肉)という、マッスル御用達とも言える巡り合わせにも、ただただ感謝しかありません。
ボトルが手元にないため、香味についてはカスクサンプルからの変化がどうなるかが不確定要素ですが、サンプル時点ではバーボン樽とこの蒸留所の組み合わせらしい、好ましいフルーティーさが感じられる一樽でした。
販売方法については追って公開させていただきますので、よろしくお願いします。

パハレテ(パジャレテ) ソレラ1851 デ・ムリェール 21%

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PAJARETE 
SOLERA 1851 
A.DE MULLER 
Release in 2013 
750ml 21% 

香り:黒蜜やチョコブラウニーを思わせる濃厚かつ柔らかい甘さ。そこにレーズンやベリー系のドライフルーツ、無花果の甘露煮、杏子ジャム、あるいは黒糖梅酒等の果実を思わせる酸と、胡桃のようなほろ苦さが混ざり合う多層的なアロマ。

味:濃厚でとろりとした口当たり。ダークフルーツをカラメルソースで煮詰めたような、濃縮した甘酸っぱさ。一方でべたつき、しつこさはそこまでなく。その甘酸っぱさの奥からカカオのような苦味、角のとれたウッディさが感じられ、余韻としては必要以上に残らず穏やかに消えていく。

香味の系統としては熟成クリームシェリータイプだが、モスカテルを思わせる酸味も感じられる。角のとれた濃厚な甘酸っぱさを構成する多層的なアロマ。長期熟成マディラワインのようなゾクゾクとさせる高揚感、あるいは陶酔感を伴う仕上がりは、時間の産み出した贈り物。疑いなく素晴らしいデザートワイン。

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パハレテ(あるいはパクサレット)というと、使い古したシェリー樽をリフレッシュする手法に使われた、安価で質の落ちる甘口シェリータイプの酒精強化ワインシェリーサイドはわかりませんが、ウイスキー愛好家の間では特にその認識が強く、名前くらいは聞いたことがある、という人は多いと思います。

ただ、パハレテを用いたシーズニング(浸けておくだけでなく、蒸気圧で樽材に無理矢理注入する手法)は、1988年にウイスキー業界で禁止され。またシェリー側でも消費傾向として甘口ワインの需要が減ったことや、1999年の法改正でパハレテそのものが独立した区分とはならず、マラガワインなどの一部に組み込まれたことなどからブランドとしても衰退。少なくとも、近年の日本市場ではほとんど見られません。

一方で古くは19世紀、甘口のデザートワインが流行した中でパハレテも純粋に飲み物としてシェアを獲得しており、特にこの時代のものは、熟成を前提とする高品質なデザートワインだったという説があります。
もちろん、様々なグレードがあったと思われ、特に20世紀に入ると、我々が聞くような安価なバルクワインや、果ては輸入したブドウを乾燥させて仕込んだワインに工業用アルコールで酒精強化したような、どうにもクオリティの低いものが登場してくるようです。
安価で濃厚で・・・使い勝手が良かったのでしょう。ウイスキー業界で活用されるようになると、シェリー樽のシーズニングだけでなく、ウイスキーにも直接添加されるようになります。

参考①:Whisky science "Pajarete and Wine treatment"

参考②:シェリー樽の長い旅

ではパハレテはどういう味だったのか。モノとしては、オロロソやPXにシェリーベースの葡萄シロップ、あるいはカラメルを混ぜた、甘口タイプの酒精強化ワインとされ・・・レシピの上では、クリームシェリーに近いものと考えられます。
ウイスキーのオールドボトルの風味に少なからず影響を与えたワイン。。。勉強を兼ねて、可能であれば当時のものになるべく近いものを飲んでみたい。そう考えていたところ、思わぬ出物を見つけて買い付けたという訳です。


今回の1本は、1851年創業のワイナリー「A.DE MULLER(デ ムリエール)」が、創業年に組んだソレラから払い出した長期熟成品。同ワイナリーの酒精強化ワインは、過去に信濃屋がプライベートリリースを行ったこともあるため、記憶にある方がいらっしゃるかもしれません。
平均熟成年数等は不明ですが、現地情報を調べると継続してリリースされているモノではなく、2010年頃の限定品だった模様。
先に述べたように1800年代は甘口デザートワインが人気だった時期です。そこでソレラを組んでリリースを始め、その後消費低迷や法改正等を受けて大量に払いだされることはなく。残された原酒の熟成がひっそりと続いていた。。。とすれば、平均熟成年数はかなり長熟になるのではないかと思います。

また1851年というと、含まれている原酒の最長は約160年にもなり、マディラも顔負けな熟成期間。加えて、1878年から始まるフィロキセラ災禍の前の仕込みともなります。メーカー情報では、主な品種はモスカテルとグルナッシュとのことですが、1世紀以上前の情報がどれだけ正確に残ってるかは、良い意味でも悪い意味でもいい加減な国スペイン故に不明。フィロキセラによって絶滅してしまったブドウ品種も、少量ながら含まれているかもしれないというロマンがあります。

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(今回のワインにも感じられた、ノージングで思わず鳥肌がたってしまうような陶酔感を含む熟成香は、長期熟成のマディラ等にも共通する要素。この感覚をどう伝えたら良いか表現が悩ましくあるとともに、いったいなにがこの香味を作り上げているのか・・・、まさに熟成の神秘。)

飲んだ印象としては、濃厚な甘さはあるものの、単にベタ甘いだけでなく長期熟成を感じさせる角のとれた酸味やオーク由来のウッディさ、香味を構成するレイヤーが多彩。質の悪いシェリーとは思えないクオリティが感じられます。何より、上記でも触れた熟成由来と思われる、陶酔感を感じさせるアロマが素晴らしい。先に書いた、19世紀のパハレテが高品質なデザートワインだったという話も、今回のボトルを飲む限り違和感はありません。
現行品のメーカーハイエンドな長熟甘口シェリーと比較しても、遜色ない出来に驚かされました。

開封直後は少し篭ったような感じもありましたが、1週間程度でもう全開。癒しと幸せを感じるナイトキャップです。
パーカーポイント96点、海外レビュアーの評価には「笑顔で死ぬことを可能にする酒」という最高級にぶっとんだ評価。貴重なボトルとの巡り合わせに感謝しつつ、次は葉巻と合わせてゆったりと楽しみたいと思います。

クエルボ リゼルヴァ デ ラ ファミリア 40%

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Jose Cuervo 
Reserva 
DE LA FAMILLIA 
EXTRA ANEJO 
Release 2011
700ml 40% 

グラス:テイスティンググラス名称不明
場所:BAR Fingal
時期:不明
参考評価:★★★★★★★(7)

柔らかい香り立ち。テキーラ独特の植物感と柔らかい酸、メープルシロップを思わせる甘さ、オレンジママレードのような柑橘を思わせる要素も潜んでいる。
口当たりは実にマイルドで、アルコール感を感じさせない。バニラやキャラメルナッツの甘味、柔らかいウッディネスと溶け込むような焦げ感が、長期熟成を思わせる奥行きと多彩さを構成している。また、香りで感じられたテキーラの個性、角のとれた酸味と若干の植物感も含み香として鼻孔に抜けていく。

ウイスキー好きに飲んでもらいたいテキーラ。度数やテキーラの特性上パンチはそれほどでもないが、長期熟成のグレーンやカナディアンと比べて遜色なく、むしろ奥行きなどでは本ボトルに分がある。また、ブランドエピソードがもたらす特別感も無視できない。

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先日、テキーラの代表的銘柄であるクエルボ1800のオールドボトルを紹介しましたが、このクエルボの現行品で、気になっていた銘柄が同社の最上位グレード「リゼルヴァ・デ・ラ・ファミリア」。どこかで飲めればと思っていたところに、Fingalのバックバーで見かけたので注文してみました。

元々同銘柄は生産者の一族、クエルボ家が内々に楽しむために作っていたプライベート仕様。それが創業200周年を記念して1995年以降通常ラインナップに加わったものです。
外箱のデザインはメキシカンアーティストが毎年手掛け、ボトリングのコルク封も手作業で行うなどハンドメイド仕様と様々なこだわりがあるようですが・・・重要なのはやはり味です。

樹齢10年以上のアガヴェを原料とし(麦と違って、テキーラの原料となる竜舌蘭は成熟するまで最低でも6~8年かかる)、使用する樽はアメリカンオークとフレンチオーク。
原酒の熟成期間は最低3年以上のエクストラアネホに、最長で30年以上熟成させた原酒も含めて幅広いレンジをブレンドしているとのこと。2~3年でも十分な熟成期間となるテキーラにあっては、30年ともなると相当長期熟成な部類に入ります。
それがどれくらい使われているかはわかりませんが、長期熟成100%だから旨いわけではないのはウイスキーも同じ。飲みやすくあるもののやや単調ぎみになりがちな熟成テキーラにあって、原料の品質だけでなく熟成と原酒の幅が、ブレンドにおける重要な役割を担っているのだと感じます。

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(同レゼルバ・ファミリアの現行品(右)は、2017から蝋封が緑系の色に変化している。左はシルバーテキーラの最高峰プラティノ。未熟成であるためテキーラの風味が強く感じられるが、飲み口は柔らかくスムーズ。)

また何より、熟成に使われている樽や長期熟成によって得られる香味にウイスキーとの共通点も感じられることから、これはウイスキー好きに飲んでほしい一本。
類似はやはりグレーンやカナディアン系統ですが、長熟のブレンデッドらしさもどことなく。。。香味と個性のバランス、そして熟成感は双方に共通する魅力も備えており、新しいジャンルへの繋ぎになってくれるのではないかと思います。

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後日談:同じクエルボ・リゼルヴァ・デ・ラ・ファミリアの2003年流通品をテイスティング。
少し抜けた印象がありましたが、上述の複雑さに加えてスパイシーさが強く面白い味わいでした。この頃は特にロット差が大きかったとのことで、いかにも向こうの作りだなぁという感じです(笑)。




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