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酒類の原料原産地表示制度がもたらす国産ウイスキーの課題と闇

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はじめに:今回の記事は、2017年に改正され、2022年4月から有効となっている改正食品表示法「原料原産地表示制度」の解説です。
長文かつ地味に難解な箇所もあるので、興味が無い方は、4月以降に変わった国内ウイスキーメーカー各社のラベル表記と、その意味を解説した記事として、記事中盤のラベル表記分析、それが内包する誤解の種や闇に関する箇所を読んで頂ければと思います。

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日本で作られるウイスキーの一部には、海外から輸入された原酒が使われていたこと。輸入ウイスキーやウイスキーではない酒類を、ジャパニーズウイスキー化して販売するロンダリングビジネスの存在…。

2016年、あるウイスキーのリリースがきっかけで表面化した、日本のウイスキー産業が内包する課題、ある種のグレーゾーンとそこから生じる”闇”は、その後、様々な議論や情報発信を経て基準が制定され、国産ウイスキーといっても一括りにはできないことが、愛好家の中では常識と言えるくらい認知度が高まったところです。
当ブログにおいても、最初期から問題提起、解決策の提案、メディアによる関連する情報発信の紹介、関連規約の紹介・解説等の情報発信を継続的に行ってきました。

一方、最近、国内メーカーが製造・販売するウイスキーの裏ラベルに「●●産」や、「国内製造」「英国製造」などの表記がみられるようになりました。
先の経緯を知る方だと、なるほどこれは2021年に定められたジャパニーズウイスキーの基準による表記か、と認識されるかもしれません。ですがこれは2017年に改正された食品表示法「加工食品の原料原産地表示」によるもので、この法律が効果を発揮するまでの経過措置期間が、酒類においては2022年3月31日までだったことから、4月以降に製造・出荷されたウイスキーについて法律に準じた表記がされるようになってきたものです。

同改正法はすべての食品、酒類に適用され、あくまで一定の整理に基づいて原料・原産地を明記しようという法律です。
後発となる洋酒酒造組合のジャパニーズウイスキーの基準は、同改正法との横並びはとられているものの、一般消費者へのわかりやすい説明を行う義務を定めた改正法と、ジャパニーズウイスキーのブランドを守り、高めるための独自基準とでは、全く別の概念となります。
結果、今年の4月以降酒類全般において今までは無かった原料、原産地等に関する情報が明らかになった一方で、ウイスキーだからこそ生じる問題点、分かりにくさが生まれつつあります。

一例としては以下の画像、左側のシングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士。富士御殿場蒸留所のモルト原酒とグレーン原酒のみをブレンドした製品ですが、国内製造(グレーンウイスキー)表記がどういう意味か、パッと理解できますでしょうか。

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そこで今回の記事では、改正食品表示法の運用を実際の表示例(各社のラベル)に基づいて紐解き、そうして新たに見えてきた情報、解釈の幅、誤解の種や新たな闇となる危険性を紹介しつつ、今後解決すべき課題を整理します。

前置きとして食品表示法の改正による、ウイスキーにおける原料原産地表示の概要を、以下の通り説明します。
同改正法では原料原産地表示以外に、事業者情報の記入など、他にも変更された箇所がありますが、本記事ではウイスキーの中身を見る上で最も大きな変更点と言える原料原産地表示についてまとめていきます。

※酒類の原料原産地表示に関する概要(ラベルに表記する情報)
  1. 原材料名での産地記入(●●産)は、その製品のもととなる原料の産地が表記される。。
  2. 原材料原産地名での●●製造は、その製品の内容について”実質的な変更をもたらす行為”が行われた国、地域が表記される。
  3. ●●産、または●●製造は、どちらか片方しか表記できない。また、●●産、●●製造が3地点以上になる場合、多く使われている順に2地点を記載し、それ以降をその他としてまとめても良い。
  4. ●●製造に紐づいて表記されるもの(モルトウイスキーorグレーンウイスキーorスピリッツ等ブレンドアルコール)は、製品内で最も比率が高いものだけ記載すればOK
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※参考資料
・食品表示法(酒類関連変更箇所概要):https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/pdf/0020002-131.pdf
・改正食品表示法Q&A:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/sakeqa/bessatsu_2909.pdf
・ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則:https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/whiskey.pdf
 ⇒本規則の解説記事はこちら
・酒税法及び関連法令通達:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/01.htm
・ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準:http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_06.pdf

以上。。。
といっても、文面を読んだだけではわかりにくいと思うので、各社のラベルから代表的なものを解説していきます。
企業の姿勢やブレンドの造り、実は結構色々なことがわかってきます。

なお、本記事は全てのメーカーのラベルを掲載したわけではありません。純粋にパターンが同じだったり、在庫と流通のタイミングの問題もありますが、中にはニッカウイスキー(アサヒビール)のように掲載していないケース※もあります。
表示したりしなかったり、あるいは全部表示したり…そして今まではウイスキーだと思ってたものが…だったり、各社本当にバラバラの状況も見えてくるのです。

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※2022年4月以降も掲載していないケース:
当該改正表示法では「できる限り新基準に基づいて原料原産地表示をすること」としつつも、2017年9月1日の改正法施行前から製造所に貯蔵されていた原酒や原料を使用する場合、産地情報を確認できない可能性もあることから、それが一部使用であっても●●産、●●製造の表記をしなくても良いとされている例外規定がある。
ニッカウイスキーの場合は、主としてベンネヴィス産原酒、ニューメイクの使い方によると推察。


■各社のラベルの原料原産地表示解説

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サントリーの響21年(左)とローヤル(右)。
これはお手本のような表記の整理です。
原材料名、モルト、グレーンは、ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則(以降は「表示規則」と記載)によって、通常のウイスキーはモルト、グレーン、アルコールの順番に記載することとなっているので、これまで通りです。

サントリーはオールド以上のブランドがジャパニーズウイスキーであることを明言されており、響もローヤルも、原料原産地はどちらも国産表記となります。
ただし響21年はモルトウイスキーが、ローヤルはグレーンウイスキーが割合として一番高いため、国内製造(モルトウイスキー、グレーンウイスキー)か、国内製造(グレーンウイスキー、モルトウイスキー)か、異なる順番で記載されています。
響は予想通りかもですが、ローヤルについては意外に感じる方もいるかも知れない新情報です。

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続いては同じサントリーからレッド、そしてサンフーズ社から御勅使。
安価なウイスキーに見られる、スピリッツがブレンドされいてるケースです。
レッドは原材料名はローヤル等と同じ、モルト、グレーンですが、原料原産地は国内製造(グレーンスピリッツ)のみの表記です。

ここで言うグレーンスピリッツは、酒税法に照らし、アルコール度数95%以上の穀物原料のブレンド用アルコールになると思われます。
おそらくモルト原酒、グレーン原酒も一部使われているのでしょうけれど、比率としてはグレーンスピリッツが一番高く。この場合、グレーンスピリッツ+グレーン原酒・モルト原酒+水(度数が高くなりすぎるので39%に調整)を加えた後、カラメル色素で色彩調整であることがわかります。

一方で、サンフーズの御勅使は原材料名、モルト、グレーン、スピリッツで、原料原産地名は国内製造(スピリッツ)になります。
ウイスキーにブレンドされるスピリッツは、先のレッドに使われている穀類を原料としたものと、そうでないモノの2種類に分けられ、穀類原料のものは表示規則で原材料への表示義務がなく、一方で、表示されている場合は廃糖蜜ベースのモラセスアルコールが一般的です。
つまりレッドは穀類原料のスピリッツがメインなので、原材料名には記載がないが原料原産地名に記載があり。御勅使は上述の穀類ではないスピリッツがメインなので、どちらにもスピリッツ表記があることになります。

なお、酒税法上のウイスキーをざっくり整理すると、原酒10%で他ブレンドアルコールでもウイスキーとして成立するのはご存知かと思いますが。つまり上述2銘柄は、記載したスピリッツをモルトとグレーンの合計に対して過半数以上90%未満までブレンドしたもの、とも整理されます。
またどちらも国内製造表記ですが、これらのスピリッツは、アメリカや中国、ブラジル等から粗留アルコールという形で輸入され、それを大手のアルコールメーカーが連続式蒸留を行い、純粋アルコールとして流通させたものが一般的です。
海外からの輸入原料でありながら国内製造表記となっているのは、概要2.にある製品の内容に”実質的な変更”が行われた場所が国内であるため、国内製造表記に切り替わっているのです。

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ラベルがリニューアルしたばかり、キリンから陸と富士山麓。
これは同じ会社の製品ですが、原材料名の順番が違うもの。
シングルブレンデッドの富士の表記は本記事の上部の画像にある通りですが、輸入原酒を使っている陸と富士山麓は、原料原産地名に国内製造、英国製造の2か所の表記があり、どちらも一番多く使われているのはグレーンウイスキー。ただし、モルトウイスキーをブレンドしていない陸は、原材料名の表記がグレーン、モルトと、富士山麓の逆になっています。

陸も富士山麓も、グレーン系でアメリカンっぽい仕上がりの味わいなので、香味の面ではグレーンウイスキー表記に違和感はないわけですが…
「Kさん、富士山麓の裏ラベルの説明文に”世界”が加わったのいつだっけ」
「えっと、最近だね」
「キリンは、フォアローゼズをタンクで運んできて、国内工場でボトリングしてるんだってね」
「…そうだね」
「もう一つ質問いいかな」
「…なんだい?」
「米国関連の表記どうなった?」
「勘のいい客は嫌いだよ…」

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マルスのツインアルプスは、紛らわしい事例の1つ。
自前で蒸留したモルト原酒に、輸入したモルト原酒とグレーン原酒を用いてブレンドされています。
原材料は、前述の通りモルト、グレーンですが、原料原産地名は、英国、カナダ、国内と3か国が並んでいる一方で、国内製造の隣にグレーンウイスキーのみが表記されています。

これはグレーンウイスキーが100%でも、何より国産なのでもなく、使われている原料全体の中でグレーンウイスキーが一番多いという説明です。(※上記概要4.参照)
使われているだろうグレーンウイスキー、モルトウイスキーあるいはブレンデッドバルクも含めて産地としては英国産、カナダ産、国産の順に比率が高いという表記でもあり、その中で一番多いのはグレーンウイスキーですと。おそらくマルスの場合、国産はモルトウイスキーだと思いますが…。
このラベルは背景情報まで知らないと、誤解を招きそうな表記となっています。

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江井ヶ嶋酒造のブレンデッドのあかし(上左)と、シングルモルトのあかし(上右)。
こちらも紛らわしい事例で、よくあるパターンになりそうなもの。
一方で桜尾蒸溜所のブレンデッド戸河内(下4本)は、1種類でもいい原料原産地情報を、全ての原料毎に記載する表記を採用していて、対応は真逆となっています。

ブレンデッドのあかしは、説明文にもあるように自社蒸留のモルト原酒も使われていますが、輸入原酒のグレーンを最も多く使っているので、原料原産地表記は英国製造(グレーンウイスキー)のみ。
逆に、シングルモルトあかしは自社蒸留のモルト100%なので、国内製造(モルトウイスキー)となっています。
シングルモルトはシンプルで分かりやすいですが、ブレンデッドの方は説明文で補足されているものの、ちょっと分かりづらいですね。
戸河内のように書いてくれれば良かったのですが。。。

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原料原材料表記で、大括り化がされている事例もあります。それがイチローズモルトのモルト&グレーン、リーフシリーズのホワイトラベル。

裏ラベルには、世界5地域からの原酒を使っていることが表記されています。直近ロットの原料原産地表示は「英国製造、アイルランド製造、その他(グレーンウイスキー)」。
最近のホワイト、香味としてはほぼほぼグレーンで、若いグレーンやカナディアンの酸味と穀物感のあるフレーバーが目立っており、表記を見るにイギリス(スコットランド以外含まれる可能性も)とアイルランド産のグレーンウイスキーがメインということなのでしょう。
勿論、両国産のモルトウイスキーも、グレーンウイスキーの比率未満で含まれると言う表記でもありますが、香味的にはモルト2のグレーン8とか、そんな比率では…。

一方でここで初めて出てくるのが「その他」表記。つまり大括り化です。
これは、同改正法においては含まれる原材料の産地や原料原産地が3以上ある場合、比率の多い順に2地点を表記して残りは「その他」として良いとされているもの。ここではカナダ、アメリカ、日本はその他分類の比率であることがわかります。
香味的にも、まあ確かに…と言う感じではあり、違和感はないですね。

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最後に今年6月にリリースされた、厚岸シングルモルトの清明。
少し表記の仕方が違うタイプで、原材料が●●産であることを表記する方法をとっています。モルト:(大麦(イギリス、オーストラリア、北海道産))
嘉之助蒸溜所のシングルモルトも同様の表記が採用されてますね。この場合、改正食品表示法では全ての原産地を記載することになっており(※上記概要1.参照。大くくり化も一部認められている)、それに準じた表記となっています。

なお、概要3.でも触れた通り、この●●産表記と、原料原産地の●●製造表記は併記できないため、せいめいの裏ラベルに原料原産地表記はありません。そしてこの表記は、後で別メーカーの商品でも出てくるので頭の片隅に置いてもらえればと思います。


■原料原産地表示の解釈と誤認事例
同改正法の運用が本格的に始まったのは、経過措置期間が終わった2022年4月1日。
一見すると産地が見える化されたようでいて、実は正しく読み解くには改正法以外に、酒税法や表示規則の知識も最低限必要になり、誤解を生みそうな表示になっている商品があるなど、課題を残す状況も理解頂けたのではないかと思います。

なぜこんなことになっているかと言うと、輸入原酒と国産原酒という、2か所以上の産地・種類の原酒を混ぜてリリースされるのは、ウイスキーとブランデーくらいであり。かつこれだけ多くの銘柄、製造メーカーと需要が存在するのは、酒類においてはウイスキーのみであるためです。
ビールや日本酒、あるいは本格焼酎ならこうはなりません。甲類焼酎は、レッドのところで触れたスピリッツを加水したものが大半なので、原料と製造地域で類似の問題が発生しますが。

じゃあウイスキーはもっと詳しく表記するようにすればいいじゃないかと言うと、これもまた難しい。ちょっとでも中身が変わったら、ラベルを全て替えなければならないのは事業者にとっては大きな負担ですし、世界的に原酒と原料が調達されている現代にあって、どこに線を引くのか、何より一般消費者はそこまでの情報を望んでいるのか、消費者と生産者、どちらの立場にも立って線を引くのが法律であるためです。

結果、他の酒類では起こりえない表記と整理の複雑さが生じることとなり、表示に解釈の幅もある運用から、誤解を招きかねない表記だけでなく、新たな闇につながりかねない事例も発生してきています。

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例えば、ファミリーマートで限定販売している、南アルプスワインアンドビバレッジ社製のハイボール缶。原材料名にウイスキー(国内製造)とありますが、同社は国内でウイスキーの蒸留を行っているわけではありません。

同社は以前「南アルプスから湧き出るウイスキー」と説明文に記載した隼天※というウイスキーをリリースしていたことから、なるほど南アルプスにはウイスキーが湧き出す源泉があるのかとかぶっ飛んだことを考えてしまいましたが、そんなトリコ(少年ジャンプ)みたいなことはなく。
※実際は、以下の通り「南アルプスから湧き出るウイスキーに 最適な源水で仕上げた」という説明文で、絶妙な個所で改行されていたことと、文章をどこで区切るかで意味が違ったことから生じた誤読。

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この缶ハイボールは、輸入スコッチバルクとスピリッツをブレンドして加水し、ハイボール用に調整した段階で、モルトでもグレーンでもなくウイスキーとなり、上述の概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」が行われた中間加工地点が国内と整理されたものです。

おそらく、当該ウイスキーを単体で原料原産地表示すると、
品目:ウイスキー
原料原産地名:グレーン、モルト、スピリッツ(国内製造)
でしょう。そして原材料としてのウイスキー(国内製造)となったものに、添加物とガスを加えて、最終的な品目がリキュール表記となったのではないかと考えられます。

以上の事例だけでも、改正法解釈の”実質的な変更をもたらす行為”については、蒸留なのかブレンドなのか加水なのか、解釈の幅があり得ることが分かるかと思います。
そして、そうした解釈の一つなのか、単なる誤表記か、最後は今回もまた事例の一つとなってしまうのが「松井酒造合名会社」のリリース各種です。

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左:マツイウイスキー 山陰 ブレンデッドウイスキー
原材料名:モルト・グレーン(国内製造)

中央:マツイピュアモルトウイスキー倉吉
右:マツイピュアモルトウイスキー倉吉シェリーカスク
原材料名:モルト(国内製造)

注目してしまうのが国内製造表記ですが、ポイントはそこから少しずれます。
この“原材料名”というのは、食品表示法でも表記規則でも、どちらの整理でも、モルト=大麦、グレーン=穀物となる、文字通り原材料です。モルトウイスキー、グレーンウイスキーの意味ではありません。
つまり、松井ウイスキーの山陰も、倉吉も、表記そのまの意味では、100%国産の精麦麦芽と穀物を使用したウイスキーということになります。(洋酒酒造組合側に、表記の整理を確認済み。) 

松井酒造は倉吉蒸留所にポットスチル等製造設備を2018年に導入・ウイスキーの自社製造を開始していたことから、ひょっとしたらひょっとするのか?
100%国産原料の国産モルトウイスキーとグレーンウイスキーを製造し、他社とは別格な極めて手頃な価格で提供するという、愛好家にとっての優良企業である可能性が微レ存か?

微粒子レベル級の期待を込めて、直接問い合わせをしてみたところ、製造担当者の方の回答は以下の通りでした。
  • 自社蒸留のモルトウイスキー原酒を一部使用している。だが全てを賄うことは出来ていない。
  • それ以外の原酒は、国内提携酒造から調達した国産原酒である。
  • マツイピュアモルトは、この2種類以上の国産原酒をブレンドしているため、ピュアモルトである。
  • 本社は過去にあった事例から、懐疑的な目を向けられることが多くあるが、現在は全て国内調達したウイスキーを使用している。故に裏ラベルも国内製造表記となる。
え、本当に100%国産なの?と、驚いてしまうと思いますが、慌ててはいけません、ここは冷静にいきましょう。

まず、使われているモルト原酒について、わかっていることから整理すると。
倉吉蒸留所は、輸入した麦芽を使ってウイスキーを仕込んでおり、計画としては発表されているものの、現時点で国産麦芽を使った仕込みは確認できていません。
仮に、国内提携酒造から調達した原酒というのが、モルト(国内製造)の本来の意味である、国産麦芽100%で作られた希少なモルト原酒であったとしても、自前の原酒が条件を満たさないため、このラベル表記は誤記である可能性が高いということになります。

グレーンについては、国内の大規模蒸溜所(富士御殿場や知多)からのグレーンウイスキーの安価多量提供のみならず、国産穀物で仕込んでいるグレーンウイスキーの存在は、各蒸留所関係者にヒアリングしても確認できません。
ですがグレーンスピリッツであれば、先に触れたような粗留アルコールを蒸留して造る国内製造グレーンスピリッツを提供してくれるメーカーがあるため、調達は不可能ではないことになります。しかし、純粋にグレーンウイスキーを指さないという消費者の誤解を誘うマナー違反に加え、国内製造の定義が”実質的な変更”によるもので国産穀物ではないことから、こちらも誤記、表示違反である可能性が極めて高いということになります。

そしてこれらは”国内提携酒造から調達した国産原酒”が、本来の意味での国産表記を満たすという前提に立っているものです。
ここから先は私見ですが、これまで個人的に関わってきた日本全国のクラフト蒸留所において話を聞く限り、松井酒造規模の大量リリースに対応できるだけの3年熟成以上のモルトウイスキーを提供してくれる蒸留所は、記憶にありません。ましてオール国産原料となると、なおのことです。
ラベルだけなら認識不足による単なる誤記となりますが、中の人の説明と合わせて考えると、そこにはもう一つ深くて暗い何かがあるように思えてならないのです。


■可能性の話:商品を製造して販売するA社と原酒を調達するB社
さて、以降はどこのメーカーの話でもありません。あくまで私の妄想であって、他産業(魚介とか食肉とか…)での過去の事例から、こういうことが出来てしまうのではないかという仮定の話になります。

現在、日本において各蒸留所で使われているブレンド用ウイスキーの外部調達は、蒸留所が直接行っているケースはまれで、大概は商社、輸入業者を介して行われています。
有名なところだとK物産さんとかですね。商社が調達可能なモルトウイスキーとグレーンウイスキー、その最低量と価格をリストアップし、蒸留所側に提示。蒸留所側が必要な量を発注する。
届いたウイスキーを使って、蒸留所側は商品を開発して販売するというのが、一般的な流れです。

ここで、
・商品を製造して販売するA社
・A社と繋がりが深く、実質的にA社の原料調達部隊であるB社
が居るとします。

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上のイラストのように、B社が輸入してきた原酒を、A社に対して「国産原酒」として展開。
A社は、B社の表記した仕様のままに、商品を「国産」として製品化し、販売した場合はどうでしょうか。

B社が酒類製造免許を持っている場合は、先に説明した概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」で可能な解釈次第では、輸入原酒を国内製造化できる可能性があり、この場合はグレーゾーンですが合法的に国内製造表記が成立するかもしれません。例えば、上述のハイボール缶の時のような整理です。
ですが酒類製造免許は申請に製造設備を保有していることや、その後の製造実績等の必要があったりするので簡単にはいきません。安易な方法ですが、示し合わせた上での1:1取引なら、何らかの嘘をつく可能性もあります。

そして当該商品に対し、おかしいと消費者が感じたとしても、A社にあるのはB社が提供した「国産原酒」の情報のみです。また、消費者に対しては契約時の守秘義務の関係からと、別会社であるB社の情報をいちいち明かすことはないでしょう。

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食品表示法の改正には、食品を扱う事業者の責任の所在を明確にすることも趣旨としてあり、製造生産者の表記も追加修正されています。
そして法律であるので、某組合基準とは異なり違反金等の罰則規定も当然存在します。原産地の虚偽記載は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。法人である場合は、1億円以下の罰金。所管省庁による、立入検査等もあり得ます。
ですがこのケースでは、消費者等からB社の存在は見えず、仮に何かがあってばれたとしても、A社としては持ち得る情報で法令に合致した発信をしていたが、調達先(B社)に問題があったと、トカゲのしっぽ切りが出来てしまうのです。

先に触れたように、類似の事件は食品産業においては過去にあった事例であり、紙面とお茶の間を少しばかり賑わせてきたことは、皆様も記憶の片隅にあるのではないかと思います。
これまで、ウイスキーは各社の小さな事業の1つでしかありませんでしたが、今や日本酒を越える日本の主要輸出産業の1つであり、観光資源や地域産業復興のキーポイントとしても期待される、様々な産業と結びつくまでに成長してきています。
光りあるところに闇がある、光が強くなれば、闇もまた濃くなる。こうした考えのもと、見えない形で何かをしようとする人達が出てきてもおかしくないわけです。


■最後に:解決すべき課題と議論の必要性
今回、改正食品表示法について調べることにしたのは、先日キリンの富士シングルブレンデッドジャパニーズウイスキーに関して「この商品はシングルグレーンなんでしょうか?ラベルに国産グレーン表記しかないんですが」としてTwitterで質問を受け、正しく答えることが出来なかったことがきっかけでした。

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この質問は、酒造関係の知人が代わりに解説してくれたことでことなきを得ましたが。
少なくとも私も、質問をくれた方も、そして酒造関係の知人も、この表記は合法でも分かりにくいし誤解を生むという見解で一致しており。
じゃあ他の銘柄はどうだろうかと、色々調べてみたわけですが、思った以上に複雑で、情報量が多く、おかしな表記もある話だったことは、この記事を通して紹介した通りです。

加えて、別に特定企業を叩く意思は全くないし、私怨の類もないのですが、調べていく中で出てきてしまったマツイさんの名前。
マツイさんは、2016年に発生した業界と愛好家を巻き込んだ一連の騒動から、燃えてしまった火を消すのではなく、商売のターゲットを事情を知らないようなライト層、ウイスキー以外の酒類の愛好家、そして日本の情報を得にくいだろう海外層に定めている印象で、その点から見ても今回の表記がただの理解不足による誤記なのか、判断しかねる部分があります。
何故なら、所定の手続きを行い、内容を説明して所管の税務署等の許可を得たうえでリリースするのが酒類だからです。

私自身、以前からブログ等で記載している通り、また自分自身でもリリースに関わっているように、輸入原酒を使って自社原酒には無い個性を得て完成度の高いリリースをすることは、決して悪ではないと考えています。
電子機器、自動車、生活用品各種…オール国産でやっているのが珍しいくらいであるように、良いものは国内外問わず使う、その考え方はものづくりの一つの方針であり、それが結果として独自の強みになることも考えられます。
ただ、問題なのはそれを偽って使うこと、誤解を与えるような形で製品とすることです。

食品表示法の趣旨は、「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保する」ことにあります。
偽った説明の元で、合理的選択の機会を確保できるかと言われたら出来ないでしょう。また、誤解を生む表記についても同様であると言えます。
同改正法は、実際に効力を発揮してから間もないため、運用的には法律の趣旨に合致する解釈が、更なる議論を経て整備されていく段階かと思います。先に触れた、いくつかのラベルの表記がそうであり、単に表記を詳しくすればいいだけの問題でもありません。ここは様子をみていきたいところです。

各社の表記をもう1段階統一する、あるいは表記の解釈に関するガイドラインを作る。国内製造表記の実質的変更に関する事例や基準、消費者目線でのQ&Aの拡充があってもいいでしょうし、状況によっては原材料名と原料原産地表記に二重の記載を必要とする…など、知りたい人が必要な情報を、誤解なく正しく得られるようにする取り組みは、この法律の概念に基づき必要なのではないかと思います。
そして、闇になり得る事例、消費者から見えないところへの対応も…。
なんというか、法律や政策というのは、あちらを立てればこちらが立たず、必ず何か想定外が生まれる。バランスが本当に難しいですね。
本記事がこれらの議論の呼び水となり、そして皆様の理解の一助となることに繋がれば幸いです。

長崎 五島つばき蒸溜所 GOTOGIN 元大手酒類メーカー関係者が挑む 物語のあるクラフトジン

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突然ですが、自分は離島が好きです。
本土の港町や田舎とは違う、さらにゆったりと流れていく時間。周囲を海に囲まれていることで、隔離された空間が作る独特の雰囲気、景色。本土では望めない、ロマンに溢れた釣り場の数々。
大学時代はリゾートバイトで伊豆諸島に1ヶ月以上住み込みでバイトしたり、季節を問わず毎月1回は釣りにいったり、最終的には地元漁師の家に住み着いてもいました。

なので、「離島」というだけで親近感が湧く、パブロフの犬な心理を持っているのがくりりんです。
そして先日ブログ記事で紹介した飛騨高山蒸溜所の製造顧問、元キリンのチーフブレンダーである鬼頭英明さんとやりとりをしていた際に長崎・五島での計画を聞き、離島!蒸留所!!素晴らしい!!!と、離島愛が発動。
手始めに実施中のクラウドファンディングを勝手に応援させて頂くことにしました。

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世界遺産の島に蒸溜所を立ち上げ、クラフトジンづくりに挑戦!
https://readyfor.jp/projects/88266
※クラウドファンディング期間;2月28日〜4月25日11時まで


五島つばき蒸溜所は、酒類関連企業でお酒の製造販売・マーケティング等に関わってきた三人が、お酒本来の豊かさを持った「物語のあるお酒を作りたい」として設立中のクラフトジンの蒸留所です。
クラウドファンディングは既に終盤、目標金額を大きく越えた支援が集まっており、期待の大きさも伺えます。

場所は長崎県、五島市福江島、半泊(はんとまり)集落。
創業は2022年9月ごろ、製品出荷は同年12月ごろ。
設備はドイツ・アーノルドホルスタイン社製のジン専用蒸溜器。
造るジンはその蒸溜所名の通り、島の名産品である“つばき”をボタニカルの軸とし、島に湧き出る超軟水の湧水、ジュニパー、柑橘類などを使って仕上げられる予定です。

鬼頭ブレンダー曰く、正統派路線のジンだが、素材の個性を活かして膨らみと自然な濃縮感、飲み飽きることのないバランスのとれた美味しさ(ユニーク&ハーモニー)を目指すとのこと。
パッケージは同五島出身のアニメーション美術監督、山本二三氏が手掛けられ、内外ともこだわり抜いた個性を感じられる、まさに嗜好品たるクラフトジンが期待できます。

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五島つばき蒸溜所の代表である門田さん、ブレンダーである鬼頭さん、そしてマーケティング担当の小元さん。立ち上げを進めるキーマン3名は、実は全員がキリンビール社のOBです。約30年間同社に勤め、ウイスキー、ビール、酎ハイとさまざまなジャンルの酒類製造販売等に関わられてきた実績があります。

人生お酒一筋と言っても過言ではないリカーマンな方々ですが、なぜ少量生産のクラフトジンという、これまでの大量生産品とは真逆のお酒造りを選ばれたのか。
それは、大量生産大量消費の時代にあって、お酒が持つ物語や豊かさが失われてきているのではないかという意識から、自分達の手で“物語のあるお酒“を作り、それを通じて自分達が惹かれた場所の時間、空気、風景を共有したい。お酒にただ酔うのではなく、物語を含めて楽しんで欲しいと考えるようになり、今回のプロジェクトを立ち上げられたのだそうです。

これはあくまで個人的な推測ですが。
キリンビールで鬼頭さんが開発され、品質管理にも関わられていた大ヒット商品に”氷結“があります。
誰でも、手軽に、いつでも一定品質のお酒をの楽しめるというコンセプト。例えば、現代ではストロングゼロに代表されるように、純粋に効率よく「酔う」ことを目的とした安価なお酒は、それが悪いとは言いませんが、お酒そのものの背後にある物語は希薄だと言えます。
それこそ、原料の産地の話であるとか、造り手の想いとか、そういう景色が見えるかというと難しいでしょう。

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酒は嗜好品の部類ですが、嗜好品は効率じゃなく、こだわりの積み重ねだと思うんです。
私は直接お話を伺っていますが、クラウドファンディングのページを見るだけで、五島つばき蒸溜所に関わるメンバーが文字通りクラフトディスティラーとして、1本1本自分達のこだわりを込めたお酒を作りたい、という想いが伝わってきます。

では、「物語のあるお酒」としてどのようなジンを作ろうとしているのか。
それは長崎・五島にある「風景のアロマ」
・土地のアロマ(テロワール)
・素材のアロマ(個々のボタニカルの特徴)
・造り手のアロマ(ブレンダーの技術)
3つの要素をもって、飲む人にこの土地の魅力や、個性、お酒としてのおいしさを届けたいと言うこと。

具体的には、
五島の象徴といえる名産品の椿の種を炒って、挽いた上で蒸溜することで、深みのあるアロマとボディを生み出し。
水は現地の超軟水を用いて、その他ボタニカルについても素材毎に最適な蒸溜条件を見極め、個別に製法を切り替えることで、各個性を可能な限り引き出す。
それらを技術と実績のあるブレンダーが、個性を活かしながら調和させるブレンド行程を経て、物語のあるお酒へと昇華させていく。

五島の地には世界遺産に指定されるキリスト教祈りの地としての歴史があり、キーマン3名が惹かれた環境があります。
想いだけではなく、物語を育む魅力と歴史がその土地にあり、それらを紡ぐ確かな技術と実績があるからこそ目指せる、こだわりのクラフトジンづくりが今まさに始まろうとしているのです。

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日本では数年前にジンブームが到来し、酒造や焼酎等スピリッツメーカーが、クラフトジン市場に参入したという動きがありました。
その際、大半のメーカーでは和的な要素であるとか、個性的なスピリッツであるとか、あるいは地元の名物として植物のみならず動物的な何かまで、ジンという自由度の高いお酒にあって多種多様な原料を使った商品開発が行われたわけですが、個人的にはどこを向いているのかわからない商品も多数生み出された、という印象を持っています。

勿論、中には素晴らしいクラフトジンもありました。宮城の欅とか、西酒造の尽とか良かったですね。また、大手メーカーも参入し、日本のお酒市場に新しい選択肢が加わったのは事実です。
ですが、物事には守破離という考え方がある中で、何を守るかも定まらないうちから、なんとなく作れるからというような独創的なジンが造られ、一方でどう飲むのがオススメかと聞いても考えられていなかったり…。物語があるようで無い、造り手の好みなのか消費者の好みなのか、どこを向いて作っているのかわからないクラフトジンが、少なからずあったのも事実です。

その後、コロナ禍となりクラフトジンの領域では活発な動きが聞こえてこなくなっていましたが、今回、上述のように確かな造り手と深い想いによる、こだわりのジン生産計画を目にし、これは楽しみだと素直にワクワクしました。
冒頭述べたように離島愛がトリガーとなっていますが、それ以上に五島つばき蒸留所とキーマン3名が生み出すクラフトジンが楽しみでなりません。

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同蒸溜所におけるクラウドファンディングのリターンは、初回限定生産ジンのセット(10000円)から、蒸溜所に支援者のネームプレートを掲載するプラン、さらには100万円でオリジナルジンの生産というぶっ飛んだプランまであります。
流石に自分の財布から100万円は出せませんが、このブログの読者で自分だけのオリジナルジンに興味があるという方、支援しちゃっても良いんですヨ?

勝手に取り上げて勝手に応援しているだけの本記事ですが、自分にとってはこれもお酒が紡いでくれた縁の一つです。
いずれ福江島の海岸で、昼間はジンソーダを、夕暮れ時からはストレートやロックで、ゆるゆるやりながら1日を終える・・・そんな休暇を過ごしてみたいものです。
まあ、夕マヅメ時はグラスより釣り竿持ってる可能性が大ですけどね(笑)

クラウドファンディングのラストスパート、そしてそこから始まる蒸溜所創業に向けた準備、ジンづくり。是非ともこだわりの結実したお酒が出来上がりますよう、応援しております!

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飛騨高山蒸溜所 ロゴとプロジェクト体制を発表 クラファンはネクストゴールへ

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2022年3月25日、クラウドファンディングの立ち上げと共に、廃校を活用したウイスキー蒸留計画を本格的に始動させた岐阜県、舩坂酒造・飛騨高山蒸溜所。
クラウドファンディングは1日経たずに目標金額を達成し、約1週間で2000万円以上を集めなお支援が集まり続けている状況。そんな中、蒸留所予定地である旧高根小学校で、蒸留所のロゴの発表とプロジェクトチームメンバーによる記者会見が行われ、更に話題となっています。

※記者会見の様子はこちら(Youtube Live配信のアーカイブ)
https://www.youtube.com/watch?v=_Geu9vUb4SM

記者会見にはプロジェクトメンバーに加え、高山市長、旧高根小学校の校長先生ら学校関係者も参加されており、特に校長先生の気持ちがこもったお話は、LIVEで聞いていて思わず込み上げてくるものがありました。
会見の様子は上記URL先でアーカイブを視聴することが出来ますので、本記事で興味を持たれた方は是非ご参照ください。




■蒸留所のロゴについて
蒸留所のロゴは、東京オリンピック・パラリンピック2020のロゴを作成した野老朝雄氏が手掛け、注目を集めました。
ロゴデザインは、飛騨の”飛”をベースに、地元や世界との繋がりをイメージされたとのこと。また、将棋の駒である飛車としての意味もあり、縦横に動く駒による”繋がり”、勢いのある様や、将来的には竜と成って世界に羽ばたいてほしい、そんな意味も込められているそうです。

蒸留所のロゴはまさに蒸留所の顔です。
しっかりとコンセプトを込めて作る必要があるのはわかりますが、それにしてもすごい人に依頼したなと思ったのは私だけではないと思います。
有巣社長曰く、「たまたま知り合いだった」とのことですが、後述するプロジェクトメンバーにしても、はいよろしくと組める人達ではありません。それだけ、このプロジェクトが時間をかけて組成され、綿密な計画の元で動いていることがわかります。

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■飛騨高山蒸溜所プロジェクトメンバー


・プロジェクト実行者:有巣弘城(舩坂酒造)

・ロゴデザイン担当:野老朝雄

・製造顧問:鬼頭英明(元富士御殿場蒸留所チーフブレンダー、現五島つばき蒸溜所)

・総合アドバイザー:稲垣貴彦(若鶴酒造、三郎丸蒸留所)

・海外及びデジタル戦略(EC):中山雄介(元Amazon、楽天、現合同会社オープンゲートCEO)

・蒸溜所設計兼クリエイティブディレクター:平本知樹(株式会社woo 代表、空間デザイン専門家)

・販売兼マーケティングアドバイザー:下野孔明(T&T TOYAMA、モルトヤマ)

・蒸溜器製造:老子祥平(老子製作所)

※製造スタッフは、有巣さんを中心とした舩坂酒造のメンバーが担当します。

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いやぁ、どうですかこれ。
経験者や人材の限られたウイスキー業界において、ここまでスペシャリストを集めた立ち上げは前例がないと思います。
また、ここに記載されていない協力者も複数あります。地元の繋がりで言えば、例えばクラウドファンディングで木桶発酵槽のネーミングライツを購入した某地元企業など、更に広がります。その期待は、クラファンのリターンで実績のある三郎丸原酒のカスクオーナーより、まだ設備もない飛騨高山蒸溜所のほうに応募が集まったことからも明らかです。

ウイスキーは製造にかかるノウハウがある程度公開されており、外注した設備の導入が行われれば原酒を造ることは出来る状況にあります(勿論その出来の良し悪しはありますが)。しかし問題はそこから先で、それを管理し、ブレンドし、製品として国内外に販売していかなければなりません。

おそらく今後、多くのクラフト蒸留所で製造→販売→消費に至るまでの間にある”死の谷”を越えられるかが課題になってくるわけですが、それは現時点で事業化計画としてどれだけ明確なプランを打ち出せているか。具体的な体制が作れているかが重要になります。
その点、飛騨高山蒸溜所の体制は他のクラフトに比べて強力過ぎて、記者会見を見なければ現実味が無いとも思えてしまうほどです。改めて、有巣社長の人脈というか、繋がりの強さを感じた記者会見となりました。

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記者会見中は関連する質問が無く、どのようなウイスキーを目指すのかという点が深堀りされませんでした。個人的に伺ったところ、ZEMONの特徴を活かした、ふくよかでフルーティーなウイスキーを造っていきたいとのこと。
また、自分自身の力だけでなく、地元やプロジェクトメンバーの力を合わせて、飛騨高山から世界へ発信していけるようなウイスキーを造れればと、語られていたのが印象的でした。

飛騨高山蒸溜所は、その強力な体制に反して将来的に目指すウイスキーのビジョンが、他のクラフト蒸留所に比べると控えめなのかもしれません。例えば、三郎丸蒸留所のようにアードベッグ1974を目指すとか、厚岸蒸溜所のアイラモルト、あるいは嘉之助蒸留所の焼酎樽を用いた独自の個性とかですね。

ですが蒸留所予定地となっている旧高根小学校周辺の緑豊かな土地と、豊富で綺麗な水、秘境という言葉がしっくりくる場所は、熟成環境としても適しているように感じます。
何より、舩坂酒造の醸造に関する技術に加え、製造、ブレンド、販売において実績のある方々が加わったこの蒸留所が造るウイスキーは、間違いないだろうと確信すら覚えます。
じっくり焦らず、ウイスキーが熟成するのを待つように、この蒸留所が稼働し、原酒が生み出され、それと共にブランドが育っていくのも一つの形なのかなと思えてきます。

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※飛騨高山蒸溜所のクラウドファンディングが発表された3月25日は、15年前に旧高根小学校が閉校した翌日だった。止まっていた時間が動き出す、その一助となれたことがとても誇らしい。


■クラウドファンディングのネクストゴール
以上のように、蒸留所としての体制を発表した飛騨高山蒸溜所ですが、合わせてクラウドファンディングにおけるネクストゴール(3500万円で達成)を発表されています。
それが、同校庭(蒸溜所敷地内)に、桜並木を復活させるというものです。

※飛騨高山蒸溜所 クラウドファンディングページ
https://www.makuake.com/project/whisky-hida/

蒸留所となる旧高根小学校敷地内にはかつては多くの桜が植えられており、春になると満開の桜が子供たちを迎えていたそうです。現在その桜は学校前にかかる橋の建て替え工事に伴って無くなってしまっており、資料として写真が残されているのみ。これをもう一度復活させたいという、なんともクラファンらしい取り組みが計画されています。

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そんなのウイスキーと関係ないやん、と思われるかもしれませんが、飛騨高山蒸溜所ではウイスキーの蒸留だけでなく、校庭を活用したキャンプやアウトドア等、蒸留所そのものを体験型として、ウイスキーだけでなく飛騨高山の環境を楽しむことをコンセプトに設定しています。
流石にキャンプをする夏に桜の花はありませんが、同地域で桜が咲く5月頃に、花と新緑を愛でながら蒸溜所で熟成したウイスキーを1杯なんて最高ですよね。

なにより、同蒸留所のウイスキー事業は地域に活力を与えること、地域のプライドとなるブランドを創出することを目標としています。であるならば、その第一歩として、失われた桜の木が再びこの地に復活するというのは、心情的にも後押しとなる取り組みだと感じます。

現在の支援額は約3100万円(当記事公開時)。その主たるリターンの1つとして当初予定していた一口カスクオーナー制度は、応募が殺到したことで追加に追加を重ね、第3弾にまでなりました。
有巣社長に伺ったところ、もうこれ以上の追加はないそうです。
地元の期待を背にして、愛好家の期待にも後押しされ、動き出す飛騨高山蒸溜所のウイスキー事業。一応援者として、そしてクラウドファンディングの支援者として、その想いが形になる日が待ち遠しいです。


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※蒸留所となる旧高根小学校に残されている、当時の生徒たちによるお別れの落書き。これらは改修工事においては保護し、蒸留所となった後も残していくとのこと。

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※蒸留所の裏手、山から流れ出ている伏流水。高山市内を流れる清流も美しく、この豊かな水を使ってウイスキー造りは行われる。

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※高山の街並みと飛騨高山蒸溜所を創業する舩坂酒造。こちらは高山市内にあり、アクセスも良い。歴史を感じさせる外観、有巣社長の手により様々な商品開発や見学設備が整えられており、蒸留所見学と合わせて訪れたい。

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※ 舩坂酒造の代表的な銘柄である大吟醸 四ツ星
綺麗で洗練された品の良い香り。白色系果実の華やかさ、穏やかな酸。軽く程よい粘性が舌にからみ、雑味の無い旨みを感じるすっきりとした余韻。造り手自信の一本という評価も納得。

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※舩坂酒造、飛騨高山蒸溜所を操業するアリスグループは、高山市内に2軒の旅館を経営している。本陣平野屋花兆庵、本陣平野屋別館。どちらも気持ちのこもったおもてなしが素晴らしいと評判。蒸溜所見学の際は合わせて利用してみては。

飛騨高山蒸溜所の挑戦 ~クラフトウイスキーで狙う地域産業と観光業活性化~

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岐阜県高山市、いわゆる飛騨高山と呼ばれ、知られる地域に、岐阜県初の蒸留所建設計画が始動しました。
同計画の開始にあたり、クラウドファンディングが3月25日から開始。リターンには酵母別のニューメイクや、1口カスクオーナー等、魅力的なプランがあり、目標額は開始から数分で達成。ロケットスタートを決めて、今なお伸び続けている状態にあります。(ブログ公開時点で約1600万円)

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クラウドファンディングページ:
https://www.makuake.com/project/whisky-hida/


飛騨高山蒸溜所については、そのオーナーとなる舩坂酒造の有巣社長と以前から繋がりがあり、今回の計画についても事前に伺っていたところ。クラファンの実施に当たっては、応援コメントを含めてちょっとだけ協力させてもらっていました。

概要だけ列記しますと
・蒸溜所名は飛騨高山蒸溜所。現地にある廃校を改修して蒸溜所とする。
・ウイスキーのタイプはノンピートモルトがメイン。いずれ地元産の麦芽も使用したい。
・蒸留設備は、三郎丸蒸留所に導入されている国産の鋳造ポットスチルZEMON…もとい、製造者である老子製作所が、これまでの稼働データをもとに改修したZEMON(改)を軸とした設備。
・操業にあたってはT&T TOYAMAの稲垣氏と下野氏がコンサルを、そして元キリンのチーフブレンダーだった鬼頭氏が製造をサポートする。
・リニューアルした廃校は、ウイスキー製造のみならず、各種ウイスキー関連の「学び」を得る場として活用する、
・舩坂酒造を傘下とするアリスグループは市内に旅館を2軒営業するなど、旅館業としても現地と繋がりが深く、ウイスキーツアーの充実を狙う。
・高山市とも協力し、クラフトウイスキーによる地域産業の再興も推進する。(クラファンには、高山市長からのコメント有り)


という感じでですね…。
これまでウイスキー関連でのクラウドファンディングは色々ありましたが、ここまで調整されていて、実績と具体性のあるプランは見たことがありません。もし興味のある方は上記リンク先で、詳細を確認頂ければと思います。

有巣さんは自分と同世代、同い年。蒸留所のコンサルティングを手掛けるT&T TOYAMAの2人も同世代なんですが・・・本当に同じ時間を生きてきた人なんだろうかと、複雑な想いも感じてしまいました。
え、これ手を入れるところなんかあるの?と、プラン概要を見て突っ込んでしまったほどです。

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一方で、蒸留所の創業者となる企業については、ウイスキー愛好家の方々にはなじみがないと思うので補足をさせて頂きます。蒸溜所のオーナーとなり、創業者となるのは、同地で200年以上の歴史を持つ酒造「舩坂酒造」と旅館業を営むアリスグループです。

同社は元々高山市で飲食・旅館業を中心としていた企業ですが、代表である有巣氏は、紆余曲折あって2009年から事業承継した舩坂酒造を立て直し、地域の魅力を形成する一つの要素として飛騨高山の日本酒を盛り上げていこうと様々な取り組みを進められてきました。
※当時の詳細については、こちらの特集記事にまとめられています。

そんな中、飛騨高山にもっと魅力と活気のある産業を呼び込みたい。
観光資源の充実はもとより、地元産のモノが世界にから求められるような、飛騨高山のプライドとなる商品を造りたい。
新しいプランを模索していた際、若鶴酒造で三郎丸蒸留所が造るウイスキーに出会い、その可能性に感銘を受けたのだそうです。

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こうして始まったのが、今回の飛騨高山におけるウイスキー蒸留計画となります。
私自身、クラウドファンディングに寄稿させて頂いた応援コメントの通り、今回計画されている内容は実現性が高いと考えています。ZEMONにしても、廃校を用いたウイスキー造りにしても、協力体制が見込める先駆者の存在があり、サポートする人材と自社が持つ観光業等の基盤があり、決して無謀な計画とは思えません。

「ウイスキーは情熱があれば造ることはできる。しかし魅力的な商品を開発し、販路を開拓できるかは別次元の問題である。」というのは某蒸留所社長の言葉ですが、今回はコンサルティングを引き受けているT&T TOYAMAによる市場との繋ぎも期待できるだけでなく、製造面でのサポート体制も充実していると言えます。

また、先に触れたように同社は旅館業も営み、観光業という点で地域と深く関わっています。
モデルケースは秩父でしょうか。魅力的なウイスキーがあり、酒があり、環境があり、観光資源があり、日本中、世界中から人が集まり、地域経済の循環と外部からの流入が起こり、新しい産業が生まれ好循環サイクルにつながる。。。
その期待値は、クラウドファンディングの支援が集まるスピードを見れば明らかです。

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一部の愛好家の間では、既に創業が待ち焦がれる飛騨高山蒸溜所。それは三郎丸での実績から、ZEMONによって造られるまろやかで厚みのある酒質が、ノンピートスタイルでどのようなウイスキーに仕上がるかという期待に加え、同じポットスチル等設備を用いて、異なる環境で造られるウイスキーが、将来両者にもたらす相乗効果も期待されているということでもあります。

作り手の技量としては、舩坂酒造は日本酒業界では高い評価を受ける酒造の1つです。大吟醸四つ星等、同酒造の代表的な銘柄を飲みましたが、流行りの吟醸マシマシあるいはフルーティー系というよりは、雑味も少なく丁寧なつくりが伺える堅実な酒という感じで、高い技量も伺えました。
そしてウイスキー蒸留については、記載の通り心強いサポートが見込めるというのもあります。

こうした諸条件から、体制的にも製法的にも期待できると言える飛騨高山蒸溜所。
現時点でクラウドファンディングのリターンプランは、カスクオーナー制度と、ネタ枠だと思っていた木製発酵槽の名づけプランが24時間経たずに売り切れてしまいましたが、幸いなことに、愛好家向けプランとも言える1口カスクオーナー制度は一定数の枠がある状態です。

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飛騨高山の地は山間にあって、蒸留所が操業する廃校は更に山の奥のダムの傍という、隠れ家的な場所にあります。スコットランドで例えると、スペイサイド地域を思わせるような環境とも言えるわけですが、そこでZEMONで蒸留される厚みのある原酒が、熟成を経ていくことで仕上がる味わいが楽しみであるのは勿論。
今回のプランで面白いと思うのが、舩坂酒造のメンバーが三郎丸蒸留所でウイスキー研修を受けた際に蒸留した原酒を、飛騨高山蒸溜所に移して熟成するというもの。ノンピートとピーテッド、2つのプランがあるということで、三郎丸ファンにとっても激しく興味を惹かれるのではないかと思います。

本企画に小指の先くらい突っ込ませてもらった当方としても、飛騨高山蒸溜所の状況はもとより、これらの原酒の成長については可能な範囲でフォローできればと思いますが、例えば一口オーナーで高山に集って、ウイスキー祭り(あるいはオフ会)的な催しなんてやったら最高に楽しそうですよね。

夢のある話は、さらに夢が広がっていくもの。
ただそれを夢で終わらせないためにも、有巣さんをはじめ舩坂酒造の皆様には形になるエールを送りたい。
日本のクラフトウイスキー、世界が注目する領域に新しい挑戦が形になることを願って、本記事の結びとします。

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ジャパニーズボトラーズメーカー T&T TOYAMA の現在を探る

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北陸のウイスキー専門店モルトヤマの下野孔明氏。
そして若鶴酒造・三郎丸蒸留所の稲垣貴彦氏が設立した、ジャパニーズボトラーズメーカー T&T TOYAMA。

これまで日本にはボトラーズといっても貯蔵庫を国内に保有するメーカーはなく、熟成済みの原酒を買い付けてボトリングする、インポーターブランドが主流でした。
そこでT&T TOYAMAは独自の熟成庫建設を計画し、 2021年4月から6月にかけクラウドファンディングも実施。結果、約4000万円という資金を集めたのは記憶に新しいと思います。

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勿論、土地代含めてこの規模の貯蔵庫が4000万円で建つわけがなく・・・。原酒の調達だってタダではありません。銀行からの融資や各種助成金の活用など、ブランド立ち上げに向けて両名がこなしたタスクは膨大だったと推察されます。

その熟成庫建設に関しては、下野氏のFacebookで進捗報告が行われていましたが、率直に言って自分達で情報を取りに行かないと進展が見えないもどかしさはありました。
しかし同社WEBページが整備され、先日WEBメディア(nippon.com)による特集記事で詳しい情報も発信されました。
さらに、T&T TOYAMAの活動としては、来年創業が予定される岐阜県・飛騨高山蒸溜所のコンサルティングも発表されるなど、具体的な動きが見えてきたところ。
同クラウドファンディング支援者として、また2人をよく知る1人として、現時点のまとめ記事を掲載させて頂きます。

※浮田泰幸氏によるT&T TOYAMA の特集記事。同ブランドについて、国産ウイスキーの現状と合わせて詳しくまとめられている。


■T&T TOYAMA 公式ページのオープン
2021年9月に公式ページがオープンし、ブランドの概要やコンセプトが発信されるようになりました。
情報量的にはまだこれからという感じはありますが、クラウドファンディングのリターンであった支援者の名前も掲載されており、個人的に知っている人も多いことから、ちょっとした同窓会名簿のようでもあります。

※T&T TOYAMA 公式WEBページ
https://tt-toyama.jp

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■南砺波での熟成庫建設
2021年10月に建設が始まったT&T TOYAMAのシンボルとも言える熟成庫。3月時点で屋根がついて、いよいよ完成に向けて形が見えてきたという状況です。
この熟成庫の特徴は、写真の通り木造であるということ。既存の蒸溜所に見られる石造りや倉庫を改造したものとは異なり、断熱性と調湿性に優れる直行集積材(CLT)材を用いることで、他の熟成環境との違いが期待できることにあります。

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熟成庫の仕様:木造、ラック式(最大貯蔵樽数、5000樽)

また、並行して原酒の調達も行われており、熟成庫が完成する今春に向けて国内蒸留所から数十樽の確保が完了しているとのこと。
同地区にある三四郎樽工房による焙煎バーボン樽の調達など、熟成環境以外に原酒に影響を与える要素もあり、オフィシャルブランドとの仕上がりの違いも注目です。
ウッドショック、コロナによる資材調達の遅れ、業界では様々な影響を聞くところですが、秋にはクラウドファンディングリターンの一つ、現地で完成記念のパーティーも予定されていることから、是非予定通り完成してほしいです。


■蒸留所運営のコンサルティング事業
今年に入って発表された新しい取り組みです。
T&T TOYAMAが蒸留所の設立、立ち上げから、ウイスキー製造、販売、マーケティングをサポートするという事業。
確かにT&T TOYAMAは、三郎丸蒸留所でウイスキー製造に関わる稲垣氏、モルトヤマとしてウイスキーの販売に関わる下野氏が立ち上げたメーカーであり、むしろこの2人だから可能な企画だと言えるわけです。

多くの蒸留所が立ち上がる現在の日本において、実体験に基づく知識と販売網は強みですし、何よりT&Tとして原酒の購入も出来るのは双方にメリットがある話だと思います。これはスコッチ業界において、ボトラーズメーカーが果たしてきた役割に共通するところがあります。
また、コンサルティングにあたって提供されるツールの一つに、「独自の樽管理アプリ」というのも面白いですね。

今年1月ごろ、稲垣さんが「アプリ作ったんですよ!」と電話口で言っていたのを思い出しましたが、自社向けかなと思っていたところ、なるほどこれに繋がる動きだったのかと。
これが実現したらクラフトメーカー樽管理コストの削減にも、管理の効率化にも繋がるので、完成したアプリの運用を早く見てみたいです。

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コンサルティング第一号としては、先日計画が公開された岐阜県・飛騨高山蒸溜所がサポートを受けることが発表されています。(※上画像、記事参照)

同蒸留所には三郎丸蒸留所が開発した国産鋳造ポットスチルZEMONの導入も決まっていて、ヘビーピートの三郎丸に、ノンピートの飛騨高山蒸溜所、という同じポットスチルから造られる異なる原酒の飲み比べも実現します。
三郎丸蒸留所は原酒交換によるブレンドも実施していますので、ZEMONブレンドなんてのも実現するんじゃないかと期待してしまいますが、それ以上にT&T TOYAMA の2人が関わって、特に製造面はポットスチルの開発者でありユーザーでもある稲垣さんがサポートするとなれば、間違いないものが出来るだろうと期待してしまいます。

なお飛騨高山蒸溜所を創業する舩坂酒造の有巣さんとは、個人的に三郎丸とは別の蒸留所に関連して交流があるので、同蒸留所については追って本ブログでも紹介していきたいと思います。

■結びに
コロナ禍で東京在住の当方はなかなか2人に直接会えませんが、電話やメッセンジャー等で情報交換をさせて頂くと、とにかく公開されている以上に様々な活動や企画を動かされていることが伝わってきます。
私を含めて3人とも80年代生まれ、ほぼ同世代でありながらここまでのことが出来るのかと、刺激にもなり、自分と比較してどんどん先に行ってしまう2人の凄さを身に染みて感じてしまいます。

新しい取り組みは必ずしも歓迎されるばかりではなく、前例主義の日本では難しい調整も増えるでしょうし、出る杭はなんとやらという諺もあります。
ですが、そうした苦労があった先にある未来を、私は見てみたいですし、その為にも引き続き応援していきたいと思っています。

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