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富山スモーキーハイボール缶 8% HARRY CRANES Craft Highball 2020年リニューアル

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2019年に若鶴酒造から発売されたハイボール缶、「HARRY CRANES Craft Highball」
その特徴はなんといっても、スコットランドからの輸入原酒に加え、三郎丸蒸留所の原酒も用いたスモーキーな味わい。添加物等のない「純粋にウイスキーと水と炭酸だけの本格的なハイボール缶※」として、愛好家のシェアのみならず、富山県訪問時のお土産や旅行のお供としても人気の商品になっているそうです。
(※以前は角ハイボール缶の濃いめが同じ仕様でしたが、現在はレモンリキュールが添加されており、大手メーカー品ではブラックニッカ・クリアハイボール缶のみとなっています。また、スモーキーなフレーバーを持つものとしては、日本で唯一と言えます。)

そのハイボール缶が2020年12月に「富山スモーキーハイボール」としてリニューアル。
度数が9%→8%に下がったものの、容量が350mlから355mlに増え、それでいて価格(税抜)は390円から270円に大幅値下げ。
価格が下がったのは嬉しいのですが、度数も下がったということは原酒の構成が変わったのか・・・というか味はどうなのか。単純に考えれば、使っている原酒のクオリティが下がったのでは?とも邪推してしまいます。
今回はその変化について、旧仕様のものと飲み比べと関係者への聞き取りも交え、まとめていきます。

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結論から言えば、リニューアル前後で体感での味の変化はほとんどなく、傾向は同じでした。
クリアな飲み口から広がるしっかりとしたスモーキーさ。ピートフレーバーは若い原酒に見られる内陸系の根菜、土っぽさを伴いつつ、ほろ苦さの中にほのかな酸味。当たり前ですが、本当にしっかりとスモーキーなウイスキーのハイボールで、原酒由来のフレーバーと厚みで飲み応えも変わらず。リニューアル前との違いを探すほうが難しいくらいです。

しいて言えば、ゴクリと飲み込んだ後、9%のほうは若干アルコールが針葉樹っぽいフレーバーと共に鼻に強く抜けるように感じ、リニューアル後の8%はクリアでピートがダイレクトにくる。キレが良いと言うべきでしょうか。
ただしこの手のハイボール缶は単体でなく食中で使ったりしますから、何かと合わせて飲んでいたら、もうその違いは感じ取れない。それくらい軽微な違いだと言えます。

作り手である若鶴酒造の稲垣貴彦マネージャーに確認したところ、実は原酒や香味の傾向はほとんど同じ。というか、逆に自社原酒の比率は上がっている。使われている三郎丸の原酒が近年に近づいているので、雑味が減ったというのはあるかもしれないと。
また、度数については1%下がったのではなく、容量やら色々調整したら、9%前半から8%後半に下がったということで、実際は0.5%下がったかどうか。表記は小数点以下切り捨てなので、大きく変わったように見えるだけなのだとか。

じゃあ「なんで120円も下がったんですか?」という問いについては、
リニューアル前のものには、ラベルのデザイン費用等が含まれており、人気が出て継続販売となったことで、その分含めて値引きされた結果なのだとか。
つまり味のベクトルはそのまま、飲み応えのある本格的なスモーキーハイボール缶が270円ってことで、我々愛好家にとってはありがたい要素しかないリニューアルであったわけです。

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(比較のためとはいえ、一度に2缶ハイボール缶をハイペースで飲むのは、流石に酔いました(笑))

以前のレビューでも触れましたが、このハイボール缶。稲垣マネージャーが、家でイチからハイボール作るのがめんどくさいので、すぐに飲める美味しいハイボール缶が欲しいという、自身の要求というか拘りというか、無精を経緯として開発されたもの、という裏話があります。
言い換えると、自身の基準を満たせないものがリリースされるわけがないんですよね。だって自分が飲むためにも造ってるんですから(笑)。

ところが、この値下げが後押ししてか、想定以上の人気で4月27日に出荷規制が発表されています。
次の出荷は9月中とのこと。スエズで原酒が止まったか、あるいは他の商品製造スケジュールとの関連もあるのか。ハイボール缶の商機と言える夏場を逃すのはよほどというか、本当に想定外に注文が入ったんだなと考えられます。

なお、このハイボール缶「富山スモーキーハイボール」は富山県限定というわけではなく、関東圏では成城石井やKINOKUNIYAの一部店舗等(店舗によっては扱っていないところもあり)で販売されています。
手軽に楽しめる本格ハイボール缶かつ、スモーキーフレーバーたっぷりのハイボール。BAR飲み、外飲みしづらい状況だけに、見かけたらご自宅でちょっと本格的な味わいを楽しんでみてください。

三郎丸蒸留所 ニューポット2020 アイラピーテッド&ヘビリーピーテッド 60% +蒸留所からの意思表明

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SABUROMARU DISITILLERY 
ZEMON NEW POT 2020
Heavily Peated 52PPM 
Islay Peated 45PPM 
200ml 60% 

評価:無し(3年熟成未満のため)

ヘビリーピーテッド(52PPM):ボトル左
香り立ちはクリア。ニューポット香はあるが嫌味に感じるレベルではなく穏やか。甘みを帯びた麦芽香、微かに柑橘や皮つきパイナップル。ピート香は穏やかなスモーキーさから、徐々に焦げたようなニュアンスが開き、強く感じられる。
一方で、香りであまり目立たなかったピートフレーバーは、味わいでは序盤から広がる。コクと厚みのある麦芽風味と乳酸系の酸味。余韻はスモーキーで焚火の後の焦げた木材、土っぽさ。ほろ苦いピートフレーバーが長く続く。

アイラピーテッド(45PPM):ボトル右
はっきりと柑橘系の要素を伴うフレッシュな香り立ち。クリアでフルーティーな麦芽香に、微かな未熟要素。奥には強く主張しないが存在感のあるピートが香りの層を作っている。
味わいも同様に序盤は甘酸っぱくコクのある口当たりから、じわじわとほろ苦く香ばしい麦芽風味、ピートフレーバーが広がってくる。全体的に繋がりのある味わいで、余韻にかけてはピーティーでスモーキーだが焦げ感は控えめ、穏やかな塩気が舌の上に残る。

どちらの銘柄も未熟香は少なく、味わいも柔らかくコクがある。度数も60%を感じさせず、目をつぶって飲んだら若いモルトとは思うだろうが、ニューポットとは確信をもって答えられないかもしれない。それくらい新酒が本来持つだろう未熟要素、オフフレーバーが少なく、一方で原料や仕込み由来のフレーバーが双方ともしっかりと備わっている。

飲み比べると、内陸ピートで仕込まれたヘビリーピーテッドは、麦芽風味とピートがそれぞれ主張し合う構成。アイラピーテッドは、はっきりと柑橘系の要素にピートフレーバーが溶け込み、全体を繋ぐような一体感のある構成となっている。また、ピートフレーバーの違いも、前者には木材が焦げたようなスモーキーさが強く感じられるが、後者は焦げ感よりも煙的な要素が主体となって塩気も伴う。仕込みの時期の差もあるだろうが、香味の違いが興味深い。
2016年以前の姿を知っている人が飲めば、あの三郎丸の原酒なのかと驚愕することだろう。これらの原酒が熟成した姿、特にバーボン樽での数年後が楽しみで仕方ない。

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富山県、若鶴酒造の操業する三郎丸蒸留所が2020年の仕込みで造った、2種類のニューポット。
三郎丸蒸留所の酒質が2017年のリニューアルから大幅に改善し、特にマッシュタンを入れ替えた2018年からの伸びは、この蒸留所の過去を知っている愛好家は認識を改める時がきたと、以前ブログ記事にもさせて頂いたところです。

その後、以下の画像のように2019年にはポットスチルを入れ替え、世界発の鋳造ポットスチルであるZEMONが稼働。2020年には発酵槽の一つに木桶を導入。2019年の仕込みは、ポットスチルをはじめ蒸留設備の変更ということで調整に苦労されたようですが、2020年はそのノウハウを活かし、木桶による乳酸発酵と合わさって一層クリアでフルーティーさのあるニューメイクが生み出されています。

三郎丸蒸留所アップデート2018ー2020
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※1:2018年に導入された三宅製作所製のマッシュタン。従来に比べ、ピート香がさらに引き立つようになった。
※2:2019年に開発・導入された、鋳造製ポットスチルZEMON。従来のスチルに比べて様々に良い効果が期待できる。
※3:2020年に導入された木桶発酵槽。複数のタンクで発酵されたものを、最終的にこの木桶で乳酸発酵する。
※4:2020年から使用することとなった、アイラ島のピート。現在、国内でアイラピートを使った仕込みは他に例がない。


また、同じく2020年にはアイラ島で産出するピートで仕込んだ麦芽の使用を開始したことが、三郎丸蒸留所における大きな転換点ともなりました。
現在、日本に輸入されるピーテッド麦芽に使われているピートは、全てスコットランド内陸産のものであり、アイラ島で産出するピートを使った仕込みは行わせていません。背景には大手スコッチメーカーがアイラ島産出のピートをほぼ全て押さえてしまっていることがあり、アイラモルトブームでありながら、アイラピートを使った仕込みが出来ないというジレンマが日本のウイスキーメーカーにありました。

ピートフレーバーは、使われたピートの産地によって微妙に異なることが、近年愛好家間でも知られてきています。植物の根などが多く混じる内陸系のピート、海藻などが海の要素が多く混じるアイラ島のピート。前者は燻製のような、あるいは焦げたようなスモーキーさ、後者はアイラモルト特有とも言われるヨードや薬品的な要素、また海辺を連想させる塩気や磯っぽさをウイスキーに付与すると考えられます。

三郎丸蒸留所は、年間の仕込みの量が大手に比べて遥かに少ないことから、アイラピート麦芽を必要分確保することが出来たのだそうです。今後、2021年以降は全ての仕込みがアイラピート麦芽に切り替わり、原酒を蒸留していくと計画されていることから、まさに蒸留所の転換点となったのがこの2020年の仕込みであり、ニューポットであるのです。

ご参考:三郎丸蒸留所における各年度の取り組みについては、以下Liqulの対談記事に詳しくまとめられています。


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昨年11月、三郎丸蒸留所からは3年熟成のシングルモルト”THE FOOL”がリリースされ、50PPMという強いピーティーさ、リニューアル前の酒質からの大きな変化、厚みのあるヘビーな味わいに、驚かされ将来に期待を抱いた愛好家も少なくなかったのではないかと思います。
しかし、歴代のニューメイクを飲んでいくと、その驚きは序章でしかないと感じるはずです。上記画像※1~※4にあるとおり、設備や材料のアップデートとノウハウの蓄積により、それぞれの年に2017年の蒸留を上回る原酒が誕生しているのです。

特にリニューアル後の集大成とも言える、2020年仕込みのニューメイクが成長した姿は確信をもって間違いないと言えるものです。
綺麗なニューメイクを作る蒸留所は多くありますが、これだけ麦芽由来のコクや厚みがあり、現時点から未熟要素の少ないニューメイクなら、日本の熟成環境で強く付与される樽感を受けとめて短期で仕上がるでしょうし。また、空調を効かせた冷温貯蔵庫もあることで、20年を超える長期間の熟成という選択肢もあります。

大手蒸留所は、その生産規模から小規模な仕込み、試験的な蒸留は行い辛いものがあります。例えば、不定期に少量しか手に入らないボデガ産のシェリーの古樽よりも、シーズニングで安定して大量に供給される疑似シェリー樽のほうが需要があるという話からも、その傾向が見えてくると思います。

故に、小回りの利くクラフトでは三郎丸蒸留所のような独自の個性をもった蒸留所や原酒が生まれてくる楽しみがあり。2020年仕込みで新たに登場したアイラピーテッドもその一つです。
日本初となるこの原酒がどのように成長していくか。リアルタイムで見ていくことが出来る幸運を噛みしめつつ、本レビューの結びとします。

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※以下、余談:ジャパニーズウイスキーの基準に対する三郎丸蒸留所からのメッセージについて
先日、日本洋酒酒造組合からジャパニーズウイスキーの基準となる、表示に関する自主基準が発表されました。
当ブログでも前回の記事で基準を紹介し、期待できる効果と懸念事項を解説させて頂いたところです。また、同基準に対していくつかのウイスキーメーカーからは賛同の声明が発表され、あるいはWEBサイトの商品説明が切り替わる等、業界としても動きが見られます。

その中で、大きな注目を集めたのが、若鶴酒造・三郎丸蒸留所が発表した声明「ジャパニーズウイスキーの基準に対する三郎丸蒸留所の方針と提案」です。同社の発表は愛好家を中心にシェア・リツイートされ、今後基準を運用していく上での重要な示唆であるとする意見が多く寄せられています。



内容をざっくりまとめると、
・若鶴酒造、三郎丸蒸留所は同基準を遵守する。
・しかし今後日本のウイスキー産業には、国産モルト原酒の多様性と、グレーン原酒の確保という課題が生じる。
・国産グレーン原酒を国内のウイスキーメーカーに提供する仕組みの確立を後押ししていただきたい。
・国産モルト原酒の多様性については、三郎丸蒸留所は他の蒸留所との原酒交換に応じる準備があり、今後積極的に推進していきたい。
と言うものです。

自分の記事とも概ね同じ意見ですが、実際のウイスキー製造現場サイドからの声として、エピソードを交えて説明されたそれは、より説得力のあるものであったと感じます。
また、原酒の多様性確保に関し、国産グレーン原酒の懸念はクラフト1社だけではどうにもならないことですが、逆にクラフト側からの提案として「原酒の交換」が発表されたのは、重要な意思表明だと感じています。

日本のクラフト蒸留所は、小規模ながら大手とは異なる様々な個性の原酒が存在します。
三郎丸蒸留所については本記事でも紹介しているので割愛しますが、
厚岸蒸留所の、精緻な仕込みに北海道産麦芽がもたらすフルーティーな原酒。
安積蒸留所の、スコッチモルトを彷彿とさせるようなピーテッド原酒。
静岡蒸溜所の、軽井沢スチルと薪加熱方式というこれまでにない取り組みが生み出す原酒。
長濱蒸溜所の、麦芽の甘みと香ばしさが活かされた柔らかい味わいの原酒。
嘉之助蒸留所の、クリアで早期に仕上がる南国環境を彷彿とさせる原酒・・・。
個人的にぱっと思い浮かべるだけで、これだけ個性的なモルトがあります。

また、今や第二蒸留所まで稼働し世界規模のブランドととなった秩父は勿論。スペイサイド的な酒質を彷彿とさせるスタイルでリリースが楽しみな遊佐、樽や熟成環境に様々な工夫を凝らす信州、津貫。古参ながら苦戦していた江井ヶ島も設備をリニューアルして酒質が向上したという話も聞きます。1つ1つ紹介していくとキリがありません。
これらの原酒が交わり、ジャパニーズブレンデッドとしてリリースされる。まさに日本だからこそ実現できるブランドであり、夢のある、美味しさだけでなくワクワクするプランだと思います。


とはいえ、この手の話は”言うは易し”というヤツで、法律的な面も絡むことが懸念事項です。
なんだって前例のないことをするのはパワーがいるものですが、荒唐無稽な提案ではありません。例えば相互に等価設定で同量の原酒を樽で取引しあうような対応なら・・・。原酒交換が1件でも行われ、ノウハウが開示されれば後に続く蒸留所も増えてくるのではないかと思います。
また、今までは交換した原酒をどのように使われるのか等の不安もあり得たところ。整備された基準が、様々な意味で後押しになるのではないかとも感じます。

今回、声明を発表された若鶴酒造の稲垣マネージャーは、33歳と若いクラフトマンです。ですが蒸留所を見ても、本記事で説明したとおり老朽化した蒸留所を改修し、新しい技術を導入し、素晴らしい原酒を生み出すまで導いた行動力があります。
ならば、この提案もきっと早期に実現されるのではないかと思います。今後、三郎丸蒸留所から生み出される原酒だけでなく、発表された提案の実現に向けた動きについても、注目していきたいです。

欅 KEYAKI ジャパニーズクラフトジン MCG  42%

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KEYAKI 
JAPANESE CRAFT GIN 
DISTILLED IN MIYAGI 
Relese in 2020 
700ml 42%

トップノートはフレッシュでほのかにビターな和柑橘のニュアンス。合わせジュニパーベリー、ハーバルな要素と微かに針葉樹林の木香を思わせる爽やかなアロマ。口当たりは柔らかくクリア、香り同様に柑橘系のフレーバーが主体で、含み香としても鼻腔に抜ける。ハーブやスパイス、奥には葡萄を思わせる甘みがアクセントとなっており、爽やかでほろ苦い余韻の中でじんわりと舌の上に残るように感じられる。

クオリティの高いクラフトジン。ジントニックに特化した仕上がりとのことだが、常温ストレートでも十分楽しめる。ベーススピリッツ由来のネガティブな要素が少なく、柔らかい甘さのある口当たりに、柑橘とジュニパーベリー、ハーブの心落ち着くアロマ。冷凍ストレート、ロックやソーダ割ともに良好で、単体のみならず食中酒としても申し分ない。

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2020年5月、先日発売されたばかりの東北・宮城県初のクラフトジン。
作り手は、同県の日本酒「伯楽星」で知られる、新澤酒造店が起業したジン製造専門の蒸留所、MCG(MIyagi Craft Gin)。創業2018年6月から約2年間、100通り以上にも及ぶレシピの試行を経てようやくリリースとなったそうです。

フレーバーを構成するボタニカルは、ジュニパー、フェンネルシードを除いて宮城県産で構成されており、ベースとなるスピリッツは、サトウキビを原料としたもの。恐らくロンドンドライジンタイプの製法で、蒸留用のスチルは最近流行りのハイブリットタイプでです。
蒸留の際、雑味の元となるヘッド、テールは分離してハーツのみを使っているとのことですが、肝心のカット比率は不明・・・これは後述の素材毎の蒸留で変えている部分があるためだと思いますが、飲んだ印象から雑味の少ない、狙い通りのスピリッツが作られていることは間違いありません。

昨今、クラフトジンブームの予兆があり、多くのメーカーでジンが作られている中で、飲み比べてみると「あれ?」と思う銘柄もいくつかあります。フレーバーは好みの問題もあるのでさておき、基礎とも言えるスピリッツが粗いと非常にもったいないんですよね。
その点欅は、より繊細な香りと味わいが抽出されるよう、ボタニカルを構成する素材毎に蒸留速度を変えるなど、ベースからフレーバーまでこだわった作りがされているのもポイントです。

【欅のボタニカル】
・ 柚子果皮 (大河原町産・柴田町産大島産)
・セリ  (名取産)  *完全有機農法
・茶葉  (石巻市桃生産) *日本最北限茶葉
・ぶどう果皮  (仙台市秋保産メルロー)
・ジュニパーベリー
・コリアンダーシード

フレーバーのトップにあるのは、レビューでも触れた和柑橘、つまり柚子ですね。
クリアで引っ掛かりの少ないスピリッツに、フレーバーがしっかり溶け込んでおり、前情報がなくても柚子が候補に上がるほど、明確な香味成分があります。
また、この柚子の比率が丁度良く、多くしすぎると柚子リキュールっぽくなってしまうところ。ジュニパー、フェンネルシードのジンらしさを付与する成分が混ざり、そして苦みやハーバルな爽やかさの中には、セリ、茶葉の成分が含まれて、馴染みのあるニュアンスに通じている。
作り手はこの「セリ」の使い方にかなり拘っているようで、普通のハーバルな感じと少し違うニュアンスが混じるのがその個性、オリジナル要素なのかもしれません。

また、個人的に「おっ」と思うのが全体のまろやかさと、余韻のほろ苦さの中に微かにある葡萄を思わせる甘み。
ウォッカのシロックほど露骨じゃない、もっと隠し味レベルですが、これが比較的トゲトゲしがちな上述のボタニカル由来のフレーバーをまとめ、繋ぎとなっているように感じられます。
ロンドンドライジンの王道的なフレーバー構成でありながら、それを部分部分で和の要素に置き換え、我々日本人にとってとっつきやすい仕上がりにも繋がっているのが、ジャパニーズクラフトの名に相応しい構成だと思いました。

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(MCGでの蒸留風景。近年、クラフトウイスキーシーンでも見られるハイブリットのポットスチルで蒸留されている。画像引用:さぶん酒店)

今回のボトルは、ウイスキー仲間のSさんから「飲んでほしい宮城県所縁の酒がある」として突然プレゼント頂いたものです。
Sさんの守備範囲から日本酒かと思っていたのですが、まさかのクラフトジン。正直なところ、いくつかジンのイベントに参加したり、生産者の方と話をしたりとクラフトジンに関する情報はそれなりに仕入れていましたが、先に述べた話と関連して、作り手に明確なビジョンがないケースが気になっていました。

ご当地由来のボタニカルを使えば面白いものが出来ると思った、飲み方や合わせる食材は特に考えていないけどジントニックかな?
といったような、とりあえずノーマルとは違うものを作れるから作ってみたという具合。勿論全てのメーカーに当てはまるケースではないのですが、その印象があったが故に、今回も「その手のリリースなのでは?」と警戒心が無かったと言えばウソになります。
なので、常温で一口飲んで素直に驚かされました。王道、基本は抑えながら、独自色も出せている。そうそう、こういうのだよ、こういうので良いんだよと、心の中で呟きながら、うきうきとソーダ割りの準備をし、食中酒でも楽しませてもらいました。

後々、作りのこだわりやフレーバーを調べてさらに納得。宮城県は自分の実家がある所縁の地。そこに良質かつ自分の好みなスピリッツが生まれたことが、純粋に嬉しいですね。
文面から伝わると思いますが、自分のハートは欅に鷲掴みにされてます。
今年の夏は暑くなりそうですし、さっそくお得な一升瓶仕様を購入です!
(補足:1.8リットルなのに、なぜか700mlとほとんど価格が変わらない。)
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今日のオマケ:GLEN MUSCLE 続報。
新型コロナウイルスの影響でどうなるか不安でしたが、オリジナルリリースであるグレンマッスルの第4弾、昨年末にカスク選定に関わらせてもらった1本が、6月第2週目を目途に発売予定です。
蒸留所はスペック等を見ればバレバレですが、まだ通関していないので一応伏せて・・・(笑)

過去リリースのとおり、グレンマッスルはブレンデッドウイスキーという位置付けです。そのため、シングルカスクリリースとなる今回は、”チームグレンマッスル向けプライベートボトル”という整理になりますが、基本的なコンセプトは変わりません。
ブランドコンセプトである「愛好家が求める味わいや、ちょっと尖った魅力のあるウイスキー」についても、十分満たしていると感じています。
(リリース形態も多少異なりますが、これまで同様に本件での監修料や、売り上げの一部をメンバーが受けとることはありません。)

今回のリリースは、現行のアイラモルトのなかで、個人的に大注目な蒸留所の1樽です。
100%アイラ仕様の原酒は生産量が限られるため、蒸留所がなかなかサンプルを出してくれないそうなのですが、その貴重な原酒の中から、求めていたスペックの1樽を頂けただけでなく、カスクナンバーが29(肉)という、マッスル御用達とも言える巡り合わせにも、ただただ感謝しかありません。
ボトルが手元にないため、香味についてはカスクサンプルからの変化がどうなるかが不確定要素ですが、サンプル時点ではバーボン樽とこの蒸留所の組み合わせらしい、好ましいフルーティーさが感じられる一樽でした。
販売方法については追って公開させていただきますので、よろしくお願いします。

グレンマッスル 3rdリリース 構成原酒 #274 三郎丸蒸留所 63%

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SABUROMARU 
GLEN MUSCLE No,3 KEY MALT 
Aged 2 years old 6 months 
Distilled 2017.8 
Bottled 2019.2 
Cask type Bourbon barrel #274 
200ml 63% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:-(!)

香り:注ぎたては焦げたオークの香ばしさ、立ち上るスモーキーなピート。キャラメルを思わせる甘さに、シトラス、あるいは皮ごと絞ったオレンジを思わせるフレッシュな柑橘香が混じる。徐々にシャープな内陸系のピート香と消毒用アルコールのようなアロマも目立ってくる。

味:スパイシーな刺激と合わせて、とろりとオイリーで粘性のある口当たり。焦げた木材や土、根菜を思わせる強いピート。柑橘系の要素もアクセントになっており、オークと麦芽由来の甘味と混ざり、香ばしさのなかに甘酸っぱさを伴う。
奥には仄かにニューポッティーさと煎餅のような香ばしさ、余韻は支配的なスモーキーさと、ハイプルーフらしい刺激を伴って長く続く。

若さに通じるニュアンスも顔を出してくるが、3年未満の熟成であることを考えれば当然というか、十分すぎる仕上がり。内陸系のピートと、適度なオークフレーバー。甘酸っぱさと香ばしさ、厚みのある酒質由来の香味。加水するとネガティブさに通じる未熟感のあるフレーバーが顔を出すが、熟成による伸び代は充分。
ニューボーン扱いのため評価は記載しないものの、素晴らしい可能性を持ったモルトである。

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先日紹介させていただいた、グレンマッスルNo,3 New Born Little Giant。明日4月13日正午の発売が予定されている訳ですが、同時に数量限定で発売される隠し球が、このグレンマッスル 3rd Release 構成原酒 ”三郎丸 Single Cask #274”です。

50PPMのヘビーピーテッド仕様の麦芽を原料に、三郎丸蒸留所で仕込み、蒸留した、正真正銘のジャパニーズウイスキー。そしてグレンマッスルNo,3の約50%を構成している、文字通りキーモルトです。
チームグレンマッスルメンバーが惚れた”三郎丸の可能性”を、そのままウイスキー好きに味わってもらいたいと希望し、少量ですがリリースしていただけることになりました。
販売はグレンマッスルと同じ、若鶴酒造オンラインショップにて行われるとのことです。


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三郎丸蒸留所(若鶴酒造)は、半世紀以上前からウイスキーを蒸留し、サンシャインウイスキーとして販売してきた歴史があります。
その後クラウドファンディング等を通じて愛好家の支援を受け、2016年から2017年にかけて大規模な改修工事を実施。老朽化した建物の改修、酒質の改善に必要な機器の導入等を行います。その様子は、関連するサイトや過去の記事を参照いただければと思います。

改修工事前の三郎丸蒸留所のウイスキーは、ボディに厚みがある点は良いとしてもオフフレーバーが強く、お世辞にも質が良いとは言い切れないものでした。
一方、工事を終えた2017年、新たに生まれた三郎丸のニューポットは品質が大きく改善され、厚みのあるボディはそのままに、ピーティーなフレーバーが溶け込んだ、将来性を秘めたものとなっていました。
当時、蒸留所を見学して受けた衝撃は鮮明に覚えています。そして、いつかこのウイスキーを使ってブレンドを作りたいと感じたことも・・・。

その後、三郎丸蒸留所の歩みとしては、2018年にマッシュタンを三宅製の最新式のものに交換し、ピートの馴染みがさらに良くなるなど酒質を向上。2019年には世界初の鋳造のポットスチルZEMONを導入。これにより、厚みのあるボディはそのまま、よりネガティブなフレーバーを軽減し、甘酸っぱさとスモーキーさの引き立つニューメイクが生まれています。また設備以外に糖化、発酵、蒸留、各行程において多くの調整があったことも触れておかねばなりません。
2020年は一部の発酵曹を木桶にするなど、更なる工夫が設備や素材の両面で行われており、その歩みは未だとどまらず。更なる進化を遂げようとしています。

三郎丸新旧ポットスチル
(三郎丸蒸留所のポットスチル。改修工事前のステンレス製のスチル・上と、改修後のネック部分が銅製に切り替わったもの・下。三郎丸のスチルは、ネックから冷却用コンデンサまでの距離が極めて短い配置であること(画像下、水滴の場所からコンデンサ)。コンデンサとワームタブの2つの冷却機構が、1つのスチルに連続して備わっていることが特徴で、これが重くボディのしっかりした酒質の要因のひとつであると推察される。)

今回、我々愛好家チームがレシピを模索するにあたり、複数の原酒をテイスティングするなかで「これは」と惚れ込んだのが、このCask No,274。グレンマッスルNo,3の裏ラベルに書かれた「2020年で3年熟成となる」という、2017年の改修後に仕込まれた三郎丸モルトです。
蒸留所の進化としてはまだ1歩目時点の原酒ですが、その1歩が限りなく大きかったことは先に書いた通りです。

熟成期間から当然多少の若さがあり、粗削りな部分はありますが、熟成に耐える厚みと削りしろの残された酒質。その酒質はジャパニーズウイスキーのなかでも特にピーティーでスモーキーなフレーバーが自然に溶け込んでいることから、原石と言えるウイスキーだと言えます。
プロスポーツのスカウトが、若手のなかに光り輝く逸材を見つけた時の気持ちは、こんな感じなのでしょうか。数年先を思うだけで実にワクワクしてきます。

ピートの産地の関係でヨード香はありませんが、その酒質は日本の中のアイラのような、ラガヴーリンを思わせるような・・・熟成を経ることで、まさに巨人と称される蒸留所に届きうるポテンシャルを秘めていると評価します
グレンマッスルNo,3のレシピは、原酒の魅力はそのままに、輸入原酒の力も使って若い部分を打ち消し、本来なら5年先にたどり着くようなシングルモルトとしての構成を表現することをテーマとしています。
このシングルカスクリリースでは、その原点たる味わい、大いなる可能性を楽しんでもらえたら幸いです。

パハレテ(パジャレテ) ソレラ1851 デ・ムリェール 21%

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PAJARETE 
SOLERA 1851 
A.DE MULLER 
Release in 2013 
750ml 21% 

香り:黒蜜やチョコブラウニーを思わせる濃厚かつ柔らかい甘さ。そこにレーズンやベリー系のドライフルーツ、無花果の甘露煮、杏子ジャム、あるいは黒糖梅酒等の果実を思わせる酸と、胡桃のようなほろ苦さが混ざり合う多層的なアロマ。

味:濃厚でとろりとした口当たり。ダークフルーツをカラメルソースで煮詰めたような、濃縮した甘酸っぱさ。一方でべたつき、しつこさはそこまでなく。その甘酸っぱさの奥からカカオのような苦味、角のとれたウッディさが感じられ、余韻としては必要以上に残らず穏やかに消えていく。

香味の系統としては熟成クリームシェリータイプだが、モスカテルを思わせる酸味も感じられる。角のとれた濃厚な甘酸っぱさを構成する多層的なアロマ。長期熟成マディラワインのようなゾクゾクとさせる高揚感、あるいは陶酔感を伴う仕上がりは、時間の産み出した贈り物。疑いなく素晴らしいデザートワイン。

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パハレテ(あるいはパクサレット)というと、使い古したシェリー樽をリフレッシュする手法に使われた、安価で質の落ちる甘口シェリータイプの酒精強化ワインシェリーサイドはわかりませんが、ウイスキー愛好家の間では特にその認識が強く、名前くらいは聞いたことがある、という人は多いと思います。

ただ、パハレテを用いたシーズニング(浸けておくだけでなく、蒸気圧で樽材に無理矢理注入する手法)は、1988年にウイスキー業界で禁止され。またシェリー側でも消費傾向として甘口ワインの需要が減ったことや、1999年の法改正でパハレテそのものが独立した区分とはならず、マラガワインなどの一部に組み込まれたことなどからブランドとしても衰退。少なくとも、近年の日本市場ではほとんど見られません。

一方で古くは19世紀、甘口のデザートワインが流行した中でパハレテも純粋に飲み物としてシェアを獲得しており、特にこの時代のものは、熟成を前提とする高品質なデザートワインだったという説があります。
もちろん、様々なグレードがあったと思われ、特に20世紀に入ると、我々が聞くような安価なバルクワインや、果ては輸入したブドウを乾燥させて仕込んだワインに工業用アルコールで酒精強化したような、どうにもクオリティの低いものが登場してくるようです。
安価で濃厚で・・・使い勝手が良かったのでしょう。ウイスキー業界で活用されるようになると、シェリー樽のシーズニングだけでなく、ウイスキーにも直接添加されるようになります。

参考①:Whisky science "Pajarete and Wine treatment"

参考②:シェリー樽の長い旅

ではパハレテはどういう味だったのか。モノとしては、オロロソやPXにシェリーベースの葡萄シロップ、あるいはカラメルを混ぜた、甘口タイプの酒精強化ワインとされ・・・レシピの上では、クリームシェリーに近いものと考えられます。
ウイスキーのオールドボトルの風味に少なからず影響を与えたワイン。。。勉強を兼ねて、可能であれば当時のものになるべく近いものを飲んでみたい。そう考えていたところ、思わぬ出物を見つけて買い付けたという訳です。


今回の1本は、1851年創業のワイナリー「A.DE MULLER(デ ムリエール)」が、創業年に組んだソレラから払い出した長期熟成品。同ワイナリーの酒精強化ワインは、過去に信濃屋がプライベートリリースを行ったこともあるため、記憶にある方がいらっしゃるかもしれません。
平均熟成年数等は不明ですが、現地情報を調べると継続してリリースされているモノではなく、2010年頃の限定品だった模様。
先に述べたように1800年代は甘口デザートワインが人気だった時期です。そこでソレラを組んでリリースを始め、その後消費低迷や法改正等を受けて大量に払いだされることはなく。残された原酒の熟成がひっそりと続いていた。。。とすれば、平均熟成年数はかなり長熟になるのではないかと思います。

また1851年というと、含まれている原酒の最長は約160年にもなり、マディラも顔負けな熟成期間。加えて、1878年から始まるフィロキセラ災禍の前の仕込みともなります。メーカー情報では、主な品種はモスカテルとグルナッシュとのことですが、1世紀以上前の情報がどれだけ正確に残ってるかは、良い意味でも悪い意味でもいい加減な国スペイン故に不明。フィロキセラによって絶滅してしまったブドウ品種も、少量ながら含まれているかもしれないというロマンがあります。

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(今回のワインにも感じられた、ノージングで思わず鳥肌がたってしまうような陶酔感を含む熟成香は、長期熟成のマディラ等にも共通する要素。この感覚をどう伝えたら良いか表現が悩ましくあるとともに、いったいなにがこの香味を作り上げているのか・・・、まさに熟成の神秘。)

飲んだ印象としては、濃厚な甘さはあるものの、単にベタ甘いだけでなく長期熟成を感じさせる角のとれた酸味やオーク由来のウッディさ、香味を構成するレイヤーが多彩。質の悪いシェリーとは思えないクオリティが感じられます。何より、上記でも触れた熟成由来と思われる、陶酔感を感じさせるアロマが素晴らしい。先に書いた、19世紀のパハレテが高品質なデザートワインだったという話も、今回のボトルを飲む限り違和感はありません。
現行品のメーカーハイエンドな長熟甘口シェリーと比較しても、遜色ない出来に驚かされました。

開封直後は少し篭ったような感じもありましたが、1週間程度でもう全開。癒しと幸せを感じるナイトキャップです。
パーカーポイント96点、海外レビュアーの評価には「笑顔で死ぬことを可能にする酒」という最高級にぶっとんだ評価。貴重なボトルとの巡り合わせに感謝しつつ、次は葉巻と合わせてゆったりと楽しみたいと思います。

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