バランタイン 12年 ロイヤルブルー 1995〜2000年代前半 43%

Ballantine’s
ROYAL BLUE
12 YEARS OLD
SPECIAL RESERVE SCOTCH WHISKY
1995-2000’s
700ml 43%
評価:★★★★★★(5ー6)
香り:蜂蜜を思わせる厚みのある甘さ、麦芽香、すりおろした林檎、微かにカラメル。ドライオレンジや干し草を思わせる乾いたアクセント、微かなピートも奥から感じられる。
味:滑らかな口当たり。メインは麦芽由来の甘さでコクがあってふくよか。カルメ焼きを思わせる甘さやオレンジピールの砂糖漬け。余韻は序盤の甘さは引きずらない。じんわりと染み込むようなほろ苦さ、香ばしさを伴って長く続く。
香味とも内陸モルトの麦芽風味、ミルトンダフやグレントファースを思わせる要素が強く、グレーンも熟成したものを彷彿とさせる蜂蜜などの厚みのある甘さ。穏やかなピート香が底のほうにいて全体を引き立てているのもブレンドの妙として感じられる。17年クラスとは別のベクトルのスケール感があり、通常の12年と比較して確かに「全然違う」リッチなブレンデッド。
なお、ハイボールにすると炭酸が麦芽風味や熟成感を打ち消してしまうため、通常の12年との差はそこまで目立たない。ストレート、ロック、あるいは水割りで。

1995年から日本限定でリリースされたバランタイン。後継品にはバランタイン12年 ブルーがあり、スタンダードラインナップの12年であるゴールドシールと並行してトータル15年ほどリリースされ続けたあと、2011年にバランタイン12年ブルーに統合され、その後12年そのものが終売となっています。
12年には他にも免税店向けのピュアモルトとか色々なリリースがあるのですが、話をロイヤルブルー系列とゴールドシール系列に絞って解説すると。
元々バランタインは1960年代に12年がリリースされると共に、選び抜かれた原酒だけを使って(使ったとされる)少量生産された12年ゴールドシールもほぼ同時にリリースされていました。ファイネストや17年は比較的ピーティーな原酒が使われる傾向もありましたが、12年は内陸、スペイサイド系の原酒を主として使われていることが多く、初期の頃から一貫してまろやかな麦芽風味やフルーティーな味わいが特徴でした。
その後、1970年代以降ゴールドシールは一旦生産されなくなりノーマルな12年のリリースが続くことになりますが、1980年代後半にノーマルな12年が突如ゴールドシールとなってリニューアル。
ウイスキー冬の時代に入り、各社がデラックス表記から12年表記など年数でわかりやすい高級感を出してくる戦略にシフトしたなかで、差別化を図ろうとしたのでしょう。1990年代以降、スタンダードな12年はゴールドシール系列として展開されていくことになります。

※バランタイン12年1960年代流通(左)と、同時期流通のバランタイン12年ゴールドシール(右)。ゴールドシールの方がより熟成した原酒やモルト比率の高いレシピとなっているのか、複雑で芳醇な味わい、またピーティーでもあった。

※1980年代後半に突如ゴールドシールとなったバランタイン12年(写真は1990年代流通)。この頃は親会社の変遷からか、原酒の傾向が多少異なることも。
一方で、日本では現在でこそ低価格帯のブレンデッドウイスキーはハイボールという選択肢が確立していますが、2000年代以前はロックや水割りが主流だったこともあり、1990年代に入って消費が低迷する日本市場=水割り向きのレシピで打開!という戦略で、1995年に開発・発売されたのが、今回レビューをするロイヤルブルーになります。
当時のサントリーから発出されたプレスリリースがWEBに残っていたので引用すると、
同品は、選び抜かれた約五〇種類のモルト原酒を使い、名門ジョージ・バランタイン社マスターブレンダーのジャック・ガウディ氏が五〇年の経験を傾けてブレンドした商品。
「バランタイン」の基本的特徴である「華やかな香りとすっきりした味わい」をそのままに、熟成感、味の厚み・まろやかさ・香味をアップしている。 デザインもロイヤルブルーを基調としたエレガントでシックなものにした。
ロイヤルブルーは英国王室に由来する濃青色で、バランタイン社のイメージカラーでもある。 アルコール度数四三%、七〇〇ミリリットル入り、希望小売価格五〇〇〇円。荷姿一二本入り。ギフトパッケージ入りも同時発売(内容はすべて同一)。
テイスティングで感じた通り、味の厚みやまろやかさが通常の12年に比べて増しているのはコンセプトの一つであったようです。
その後、2003〜2004年ごろにバランタイン・ロイヤルブルーがバランタイン・ブルー12年(当時は17年以上と同じ丸瓶)にリニューアルしてリリース。
ちょうど私がウイスキーを飲み始めた頃だったのですが、12年ゴールドシールは2000円くらい、12年ブルーラベルは3500円くらいで販売されており、キャッチフレーズは確か「水で目覚める夢の香り」。同じ12年なのに見た目の高級感から段違いで、何が違うんだろう、美味そうだなぁ、でも高いなぁ…と、学生時代の自分にとっては垂涎の一本だったこともあって非常によく覚えています。
以上のように長らく2ブランドが展開されてきたバランタイン12年ですが、その後は冒頭述べたようにバランタイン・ブルーラベル12年に統一され(日本市場向けが世界標準になったのではなく、バランタイン12年が実質日本向け状態になった)、そのバランタイン・ブルー12年も原酒枯渇などを理由に2024年をもって半世紀を超える歴史に幕を閉じた…。ということになります。
まあ原酒枯渇というか、ハイボールで飲ませるなら12年じゃなくてもという趣旨のリニューアルなのだろうと思いますが。
余談ですが、今こうしてロイヤルブルーを飲んでみると、これは12年クラスのモノとしてはリッチで味わい深い、かなりしっかりとしたブレンドだぞと感じるところ。
ようやくここでレビューに添えていた漫画の伏線回収。今回レビューしたバランタイン12年ロイヤルブルーは、T&T TOYAMA およびモルトヤマの代表である下野さんがウイスキーにハマるきっかけになった一本であり、学生時代にBARで飲み比べをさせてもらって、その違いやおいしさに驚かれたのだとか。(詳細はモルトヤマ大学物語を参照)
下野さんとは同世代、ほぼ同じ時期に飲み始めていることを考えると、バランタインは通る道なんでしょうか。なおこの漫画を読んだ結果、ロイヤルブルーを見るたびに下野さんの顔が頭に浮かぶ呪いにかかってしまったので、読者の皆様にもお裾分けして、当初の予定と異なって12年の歴史解説記事になってしまったレビューの結びとします。
「ロイヤルブルー12年のほうが美味い!」