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シークレットスペイサイド 16年 2002-2019  モルトマン 54.2% #1633

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SECRET SPEYSIDE 
THE MALTMAN 
Aged 16 years 
Distilled 2002 
Bottled 2019 
Cask type Oloroso Sherry #1633 
Specially selected for Japan 
700ml 54.2% 

グラス:グレンケアン
場所:BAR ヒーロー
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライプルーンなどのダークフルーツ、チョコレートクリーム、微かに黒糖の甘さも含んだリッチな樽由来のアロマと共に、湿ったウッディネス、若干焦げたようなニュアンスとゴム感、鼻腔に強いアタックも感じるパワフルな香り立ち。

味:濃厚でこってりとしたシェリー樽のニュアンス。ドライプルーンにアーモンドチョコレート、カカオ、オランジェット。色濃い甘味のなかにビターでほろ苦い香味と、酒質由来の強いアタックが感じられる。余韻はウッディでヒリつくような刺激はあるものの、しっとりとした甘味が舌の上に長く残る。

アタックの強い酒質に、シーズニングオロロソシェリーを思わせる濃厚な甘味とウッディネスという、圧殺シーズニングの典型的キャラクターのひとつ。香木っぽさのあるタイプではなく、近年リリースの多かったロセスの短熟圧殺と似た系統のシェリー感で、葉巻との相性も悪くなさそうである。


最近一定数リリースのある、蒸留所不明のシークレットスペイサイド表記のウイスキー。「偉大なスペイサイドの蒸留所」ということなので、マッカランではと言われていますが。。。こってこての圧殺シーズニングシェリー味で蒸留所は判断しづらく、強いて言えばアタックの強さ以外に、これという酒質の特徴がないところが、マッカランと言われればそうなのかなという程度の判別しか出来ません。

例えば同じようなシェリー感のリリースがあったスペイサイドモルトだと、リベットはもっとドライで酒質が軽く、ロセスだと乾いた植物感が強く出そうですし、ファークラスは酒質は同じように刺激が強い一方で微かに混じる青っぽさが。。。といった限定的な消去法でしかありませんが。
あとは2017年ボトリングで同じモルトマンからリリースされたものとは、樽の系統、あるいは出元が違うのか、シェリー感が異なってプルーンやチョコレートのようなクリーミーな甘味が強いのも特徴だと言えます。

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(約2年前にリリースされたモルトマンのシークレットスペイサイド14年2002-2017。こちらは樽材の違い、スパニッシュオークのチャーが強めだったのか、色濃く樽由来のエキスや焦げ感も今回のリリースより強く感じられた。)

ここ数年で、ボトラーズからの濃厚シェリーのリリースに12年未満の短熟が増え、熟成年数の短さから仕上がりの粗いもの、奥行きの乏しいリリースが珍しくありません。
この流れは現地、米国、アジア。。。どの国でもそう大差はないわけですが、今回のボトルは多少荒さはあるものの最低これくらい欲しいという熟成感を備えており、こうしたリリースが未だ日本向けにあるというのは、値段はさておき相対的に見て救われたような気持ちにもなります。

しかし良質かつ熟成感のあるシェリー樽熟成の原酒は、本当に高価になりました。
来年の今ごろ、同じようなクオリティのものがどれ程の価格になっているのか。感覚が麻痺して適正がどこにあるのか最近わからなくなってきました(汗)

マッカラン 12年 43% 1990年代流通

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MACALLAN
Years 12 old
Matured in Sherry Wood
1980-1990's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人主催テイスティング会@YMC
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:黒蜜とドライプルーンを思わせる甘く濃厚なアロマ、ほのかにキャラメルアーモンドの香ばしさと苦味。しっとりとしたウッディネスと、奥にはツンとした刺激もある。

味:スムーズで引っかかりの少ない口当たり。香り同様に黒蜜を思わせる甘み。プルーンやイチヂクのドライフルーツ、キャラメリゼ、甘みとビターでウッディーな変化がある。
余韻は少しべたつく印象があるものの、ピリピリとスパイシーな刺激、ほろ苦く長く続く。

しっかり濃厚なシェリー感で、黒蜜やドライフルーツを思わせるスウィートな構成。加水で整ったボディと合わせてマイルドな味わい。 ★6と固定するには惜しいが、しかし7には届かない。


前回の更新でシェリー感に関する話が出たので、シェリー樽と言えば。。。の代表格であるオフィシャルマッカランです。
今回のボトルは蒸留をざっくり80年ごろとすると、マッカラン蒸留所のシェリー樽工場(1973〜)が稼働し、少なくともスタンダード用の樽の多くがシーズニングに切り替わったであろう時期のもの。
近年流通マッカランのはしりと言える時期のボトルと認識しています。

香味はウッディなスパニッシュ系のニュアンスが、濃さこそ違えど現行品12年シェリーオークに通じる、同系統の要素も感じます。当時のGM系のカラメルっぽいシェリー感でもなく、グレンドロナックのベリーっぽい感じでもない、黒蜜っぽさのあるマッカランのシーズニング味。
同じ時期の10年熟成と比較すると、そのシェリー感と酒質の乖離。言い換えれば酒質の荒さが少なくなって、飲み口はより一層マイルドになってますね。
マッカランは加水しない素の酒質が比較的パワフルなので、シェリー樽熟成と加水前提で最低12年以上。理想的には18年は熟成期間が欲しいと感じる点が、このキャラクターにあります。

(今回のボトルとほぼ同時期蒸留に当たる18年。香味の傾向は当然似ているが、余韻にかけての一体感、さらにスムーズでスウィートな口当たりに仕上がっている。万人が飲んで美味いと言うウイスキー。)

酒質の部分にフォーカスすると、現行品のマッカランが薄く軽いと言われる点は、シェリー感もさることながらボディが加水にどれだけ耐えられるかでもあります。
オフィシャルスタンダードのシェリー感は年代ごとに徐々に薄く、荒くなっているので、ついつい樽の問題だけと思いがち。確かにそれもそうなんですが、先入観を取っ払って飲んでみると、少なくとも1990年代以降のそれらは近いニュアンスが感じられる部分もあり、案外良くできているんです。

樽感に輪をかけて変わっているのはベースの部分です。短熟での仕上がりやすさを重視してるのか、軽く樽を受け止められない近年のそれ。先日完成したという新しい蒸留棟では、さらに軽くなったという声も聞きます。
今回のボトルは60年代より淡麗気味になりつつありますが、まだ加水を受け止めてまとまる厚みが、香味の広がりを後押ししているのです。

あれ?シェリーの話で始めたつもりが、いつの間にか酒質のボディの変化になってる。。。(笑)。


マッカラン10年 1980年代流通 40%

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MACALLAN
YEARS 10 OLD
1980's
750ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:黒砂糖と揚げドーナッツのような香ばしく甘いアロマ、トーンの高い鼻腔への刺激に続いて、奥にはアロエのような青い植物感、シロップの甘み。

味:若干荒さはあるがコクのある甘みを感じる口当たり。黒蜜、粉末カカオをまぶした生チョコレートやアーモンドの香ばしさとほろ苦さ。中間は平坦気味だがレーズンを思わせる甘酸っぱさと徐々にピリピリとした刺激も感じられる。
余韻はほろ苦く、程よくドライなウッディネス。カラメルソースや熟成したクリームシェリーを感じる深い甘みも伴って長く続く。

深い甘みのあるシェリー感が備わっているが、香りは度数以上に強いアタックがあり、若さゆえか酒質と樽は完全に融合しているわけではないと感じる。他方、樽の良さがそれを補ってバランスは悪くなく、全体を通しては深みのあるシェリー樽熟成モルトに仕上がっている。

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流通時期から見て、おそらくマッカランが1974年に自社のクーパレッジでスパニッシュオークの樽を作り始め、その樽が使われ始めた初期の頃の原酒と思しき1本。
タンダー がらしっかりとした 感は 、現行品シェリーカスクとの大きな違い。テイスティングの通り加水でありながら酒質の強さも感じる点は、 元々マッカランの酒質はフルボディでパワフル、それこそ加水であれば20年前後の熟成が望ましいキャラクターからすれば個性が出ているとも言えます。
それは多少荒くはありますが、黄金時代と呼ばれる60年代の片鱗も備わっています。

(1990年代後半から2000年代流通のマッカラン10年。ラベルがやや垢抜けた印象、味わいも多少洗練されシェリー感はライトになったが、まだ方向性は変らない。)

話は変わりますが、今年に入りマッカランは新しい蒸留棟の工事を完了し、さらなる量産体制に入ったのは有名な話。これまで生産をしてきた旧蒸留棟は、今後稼働を休止するそうです。
この蒸留所は地上ではなく地下に作られ、遠目にはただの丘にしか見えないというユニークというか、未来的な外観。設備そのものも蒸留所とは思えないミュージアムのような配置となり、その生産量これまでの約1/3増で、約1500万リッターという原酒に対して、どれだけマッカランの象徴たるシェリー樽を確保できるかは疑問が残ります。

【参照】ウイスキーマガジンジャパン:マッカランの新しい蒸留所が完成(前編・後編)

樽の確保について、マッカランは相当力を入れているという話でもあるのですが、2000年代後半の肩張りボトルに変わってからシェリー感の変化は大きく、量産による影響が如実に現れている状況と言えます。ファインオークのように、バーボン樽を用いたり、ダブルカスクのように複数の樽材を用いるものが今後益々増え ていくのだとも思います。
加えて年々軽くなる酒質も、かつての厚みのある麦とシェリー樽が融合したようなキャラクターから見て、さらにライト化が進むのでしょう。
自分としてはそれを飲む前から否定するつもりはないですが、急激な変化に対して誰もが割り切れているかというと、難しいように思います。

先に触れましたが、マッカランは1970年代のシェリー樽自社生産開始など、生産工程の切り替えが、のちのリリースで一つの節目として語られることが多くあります。
そういう意味で、今回の新しい蒸留棟の完成は、マッカランが切り替わったという節目として将来的に語られていくのでしょう。例えるならブローラとクライヌリッシュのように、全く違うものなんだと割り切れるきっかけにもなるのではないかと考えています。

マッカラン 25年 1964-1989 アニバーサリーモルト 43%

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MACALLAN
The Anniversary Malt
25 years old
Distilled 1964
Bottled 1989
Cask type Sherry
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:BAR飲み@萌木の村 パーチ
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:華やかでしっとりとした香り立ち。ベリーや黒砂糖を思わせるふくよかな甘み、軽やかなナッツ、アーモンド、の香ばしさも混じるフルーティーさ。微かに古酒感。奥には土っぽさを伴う麦芽風味がどっしりとした存在感を発揮している。

味:スムーズでマイルドな口当たり。引っ掛かりのない上質な甘みは、ベリーやレーズンなどのダークフルーツソース、チョコレートケーキ、ほのかに黒蜜。柔らかいコクを感じる。
余韻は心地よくドライ、濃く入れた紅茶のタンニン、微かに土っぽいピート、華やかなシェリー香が鼻腔に抜ける。

マッカランがマッカランたる構成。端的に言えばシェリー濃いめでバランスが良いモルトということになるが、各要素一つ一つが整っていて、まるでビロードのよう。上質な味わい。


最近の更新で25年熟成のモルトウイスキーが続いていたので、オマケでもう一つ、マッカランのアニバーサリーモルトを。

1968年以前、まだマッカランがゴールデンプロミス種に麦芽品種を切り替える前、ゼファー種を使っていたとされる時代の仕込み。樽も自社製造が行われる前で、最近では所謂"リアルシェリー"と言われるボデガから排出された良質なシェリー樽が使われていた頃のもの。不味い訳がありません。
ただマッカランに限らず、各蒸留所で黄金を冠する麦芽品種が使われ始める前の時期が、モルトウイスキーの黄金時代と言われるのは、少々皮肉なことではあります。

この当時のオールドマッカランの特徴には、樽の良さに由来する芳醇なシェリー感や原料由来の麦芽風味もさることながら、その上に成り立つビロードのように滑らかな口当たりがあると感じています。
12年クラスはまだ荒さが残っているものの、18年あるいは25年となると、その滑らかさには一気に磨きがかかり、それは単に熟成を経てまろやかになったというよりは、整いつつあったものを加水でさらに整えたというイメージ。
例えるなら木材のカンナがけ。どんなものでも美しく仕上がるのではなく、木目のしっかりした木材であるからこそ、削り出した後で美しく仕上がるのです。

他方、そうして度数を下げたウイスキーは、シングルカスクのボトルに比べて経年によりヒネやすいという印象もあります。
今回のアニバーサリーモルトはというと、そうしたネガティブ要素は少なく、まさに前段の特徴がはっきりと感じられ、まろやかでコクのある味わいは極上の甘露。素晴らしい状態でした。


以下、余談というかトリビア。
ちょうど昨日ウイスキー仲間とのメッセンジャーで話題になったのですが、マッカランの名前の由来を"聖コロンバの丘"とする説があります。
この説はゲール語的にも立地的にも間違っているという話で、そのため最近は減ってきていますが、未だ引用している媒体も見られます。
他にもウイスキー関連では怪しい話はいくつもあり、マッカランでもう一つ言えばロールスロイスなる売り文句も。こうした話も、ウイスキーの素性と合わせて調べてみるとなかなか面白いです。

マッカラン 8年 ファインオーク 40% とマッカラン1878の話

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MACALLAN
Fine Oak
8 Years old
Carefully matured in a unique combination of Bourbon & Sherry oak Casks
700ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@借り物
時期:不明
評価:★★★★★(5)

香り:スパイシーでやや青さの残るオーク香。メレンゲクッキーのような甘み、柑橘や白粉系の麦芽香。時間経過でほのかにシェリー香も感じられる。

味:スムーズな口当たりからピリッとした刺激、薄めた蜂蜜、りんごジャムを塗ったパン、ほのかに青っぽさが鼻腔に抜ける。
余韻は乾いたウッディネスを感じつつ、スパイスの刺激とほろ苦いフィニッシュ。

とても40%加水とは思えないピリッとした刺激のある味わいが、いかにも現行マッカランらしい。樽感はバーボン樽主体、ほのかにシェリー樽。嫌味の少ない樽感に素直なモルティーさが、オールドになって化けるボトルとして期待できる。現状は1杯目のモルトとしてストレートで。ハイボールも中々。


ウイスキー仲間のHPさんから、意外と旨いから飲んでみ?と言われてお借りしている2010年ごろ流通の短熟マッカラン。
HPさんはコッテコテのどシェリー系は苦手で、このような華やかな樽感、バランス系のモルトを好む傾向があり、確かにこれは案外。。。というか、今はまだ刺々しさはあるのですが、全体を通しては将来性の高いボトルだと感じられました。

マッカランはご存知の通りロールスロイスなんて売り文句があって、滑らかで上質なウイスキーであるかの如く宣伝されていますが、実際はフルボディでパンチの強い酒質であることは、このブログでも度々触れてきたところです。
10〜20年くらいのバーボン樽熟成のシングルカスクなんて、舌の上でバッチバチですから。
他方、それがシェリー樽を受け止め、長期熟成に耐え、加水されて初めてバランスが取れる訳で、今回のボトルもまた40%まで加水されているとは思えないニュアンスや、飲みごたえも残っていました。

現状はストレート以外にブレンドのベースとしてグレーンを加えても過度に軽くならず、他のモルトともよく馴染みそうな素直さが魅力。20年くらい瓶熟させると、今オールドボトルとして評価されてる80-90年代流通の一部のハイランドモルトに近い素朴なキャラクターが得られるのではないかとも感じます。
考えてみると、40%加水のスペイサイドでこういうキャラクターは、現行品には中々ないですね。


以下は雑談。マッカランと言えば、数ヶ月前にスイスのホテルBARで1ショット100万円というマッカラン1878がオーダーされ、それがフェイクなのではないかと話題になったのは記憶に新しいと思います。
Swiss hotel's £7,000-a-dram Macallan turns out to be fake

このマッカラン、オックスフォード大学のラボでの検査の結果、やはり真っ赤なフェイク。
ラベルが作られたのは25年ほど前。中身は1970〜1972年に蒸留されたモルト60%、グレーン40%程度のブレンデッドウイスキーだったのだそうです。
まあそりゃそうですよ、多くの愛好家が疑問視したように、ラベルが綺麗すぎますし、何より100年以上経過していてここまでコルクが原型を留めているのはおかしいですから。せいぜい20〜30年くらい前だろうと感じていた、まさにその通りの結果でした。

確かフェイクだったらオーダーしたお客に返金するという話だったと記憶していますが、ホテル側はたまったものじゃないですね。
せめてラベルは本物だったらオブジェくらいにはなったかもしれませんが、どちらもフェイクとあっては救いようがない。。。

現在、中国市場においてオールドマッカランの人気がとてつもないことになっているそうで、今後さらにフェイクが量産されていくことは間違いありません。
中国国内にとどまるぶんには我々に被害はないですが、それが放出され始めたらどうなるか。
一部銘柄に関して、オールドボトルは自分で育てる時代が来ているのかもしれません。

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