ニッカウイスキー 鶴 1990年代流通 43% 陶器ボトル
TSURU
Blended Whisky
1990's (1996's)
750ml 43%
グラス:国際企画テイスティンググラス
時期:開封後2ヶ月程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)
味:しっとりとした口当たり。軽い香ばしさにピーティーなほろ苦さ。樽感が少し軽いが、奥には香り同様の熟したようなフルーティーさ、シロップ系の甘みがあり、存在感のあるスモーキーさが余韻にかけて鼻孔に抜けていく。
経年か原酒由来か、多少香味が軽く香り立ちもエレガントとは言い難いところはあるが、全体的にはモルティーで熟成感も適度。スモーキーなフレーバーがらしさに通じており、これはこれで充分美味しい。
今は亡きニッカウイスキーのブレンデッドウイスキーのハイエンドクラス。白い陶器ボトルはノリタケ製。1976年、宮城峡蒸留所の二期工事完了を記念すると共に、竹鶴政孝存命中にリリースされたことから、同氏最後の作品(遺作)とも言われているリリースです。
時代の流れで多くのリリースが消えていくなか、1989年の酒税法改正、そしてその後のウイスキー冬の時代にも販売は継続。2006年には17年熟成表記に切り替わり、2015年のニッカショックで終売になるまでトータル約40年間販売されていた、ニッカのブレンデッドの看板にして、ロングセラーと言うべき商品かもしれません。
(終売後は蒸留所限定品として、ノンエイジ品が再度リリースされていますが、通常品ではないので別物という整理。ただし特別な銘柄であることは事実です。)
今回レビューする酒税法改正後の1990年代流通品は、後述する2000年代のものに比べると少し樽香が薄いと言いますか、仕上がりが軽い感じがしますが、それでも良くできたブレンデッドだと思います。
香味から余市モルト由来と思われる、しっかりとピーティーなフレーバーが感じられるのは勿論。モルト、グレーン共に最低熟成年数が他のグレードより長いものを使っているのでしょう。同時期にリリースされていたスーパーニッカプレミアムやザ・ブレンドらのミドルグレード以上のブレンデッドと比べても、香味の繋がりが良くバランスがとれているのです。
自分はこのブレンデッド鶴の、ニッカらしい主張の強いピートや酒質を、熟成感と樽感でまとめたような強い味わいがツボで、ブーム前の安かった時期は随分飲みました。
特に2000年代あたりの流通品は上記の特徴がピークに達していると言え、同じ17年熟成の響と比較して、華やかでオリエンタルな多層的なアロマの響と、スモーキーかつ力強い樽香を伴う鶴で、間違いなく本場スコットランドを凌駕する2つのタイプのブレンデッドウイスキーだったと感じています。
竹鶴との名称差が少ないことやジャンルの重複、ブランド戦略で影は薄かったですが、それ故近年の評価は至極全うと言えるものと思います。
ただどちらもすでに販売されていない状況には、冬の時代をどうにかしようと(特にニッカが)背伸びしすぎていた味わいだったのかなとも。久々に飲みましたが、懐かしくも、そして美味しいウイスキーでした。