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カテゴリ:ウイスキー関連の話

Redsack 電動ディスペンサーが思った以上に便利だった話

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最近AMAZON等で販売されている、
電動ディスペンサー
Redsack

https://amzn.asia/d/aey99y1

1〜999mlまで、設定した量の液体を注ぐことができるツール。電動ポアラー。
イメージとしては、ドリンクバーでグラスをセットしたらドリンクが注がれるパーツを、いろいろなボトルに後づけ出来るモノ、と言えば伝わるでしょうか。
結論から言えば、同じお酒を何杯も注ぐ、飲食店やイベント、蒸留所の試飲ブース、あるいは小瓶へのサンプル小分け用に、実に便利なガジェットでした。


ウイスキーやワインなど、お酒を定量注ぐためのツールとして販売されている本品ですが、自分は元々消毒用アルコールの移し替えに使おう思っていました。
我が家はコロナ禍前から一斗缶でドーバーパストリーゼを購入しており、手持ちから卓上まで、様々な場所の消毒ツールとして活用しているのですが、一斗缶から手軽に、サイズを問わずハンディボトルに移し替えが出来るガジェットがあったら良いなと。

が、思った以上に出番が少ない。いざ移し替える時も、付属のポンプで足りてしまう。
利用頻度が上がらず、このまま押入れの肥やしにしてしまうくらいなら。。。本来の用途で使おうと使ってみたところ、案外使いやすい。
これなら個人利用(特に、リッターサイズのボトルで家飲みされている方)もさることながら、イベントや蒸留所の試飲ブースなど、商用利用も充分いけるんじゃないかと。
とりあえず1ヶ月ほど使ってみて耐久性も問題ないようなので、記事にさせてもらいます。

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中身は本体、手入れ用クロス、充電ケーブル、本体をボトルに固定する口径別の栓✖️3、伸縮するステンレス製のホース。

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利用方法は至ってシンプル。
①ボトルに合わせて栓をセット。
②ホースを適当な長さに伸ばし、押し込むようにボトルにはめる。(ホースは12cm〜34cmまで伸縮するため、通常サイズのボトルなら大概対応する。)
③注ぎ口にあるレバーを起こすと電源が入る。
④注ぎたい量を➕➖ボタンで設定して使用する。

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リッターサイズのボトルで開封されているものがなかったので、サイズ別や銘柄別でそれぞれ試してみたものの、使用感は問題なし。
最近のウイスキーのボトルの場合は、栓は中サイズがフィット。ホースの長さも勿論問題なく調整して使用できる。

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注いでいる最中は、注いだ量がカウントされる。上の画像は40ml設定で使用しているところ。1、2、3、4、、、と液量がカウントされていき、途中で注ぐのを止めると注いだ量で止まる。
ガソリンスタンドでガソリンを車に入れている時の表示のような感じ…。30ml程度なら2-3秒で終わってしまうためあまり意味はないが、100ml、500mlと注ぐ場合は、経過を確認できるのでありがたい機能。

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注ぐ量の精度。ディスペンサーをセットした最初の1杯だけ、ホース内の空気が影響して誤差が出るが、後はほぼ一定(写真は20mlを連続して注いだもの)。つまり最初の1杯は2回注ぐ必要があって、2回目を途中で止めて適量で飲むか、設定より濃く作るか…これは酒飲みにとっては些細なことである。多分迷わず後者でしょうw

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氷を入れたグラスにウイスキーを設定量入れて、ソーダを注いでハイボールの出来上がり…。
実を言うと、自分は通常サイズのボトルの場合、15ml、30ml、40mlといった量は、手の感覚で注ぐことが出来てしまうため、ディスペンサーを使う前は、手で普通に注げば良いじゃんと思っていたところもありました。

しかし、使ってみると2杯目以降が段違いに楽なんです。酔ってきていても、何も考えずに決まった量を注いでくれる。当たり前のことだけど、これがなんて楽なことか。まして業務用の4000mlペットボトルとかガロンボトル等の重量物の場合、ディスペンサーは必須アイテムですね。
何よりイベントの時など、決まった量をなんども注がなければならない場合、700mlであってもボトルを持たなくて済むという、ただそれだけのことが、後々めちゃくちゃ効いてきます。

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最後に、これは使えるなと思ったのが、ワインのサーブ、そしてサンプル瓶への小分け。
まあ、上の画像にあるように、ワインディスペンサーとして売っているモノなわけですから、ワインのサーブに使えて当たり前といえばその通りですが(笑)。

このRedsackは、ホースを通ってサーブする際に空気を混ぜながら注ぐ機構になっているようです。
ワインのディスペンサーで、空気と触れさせることで香りを開かせるという機能を売りにするものがありますが、それと同様の効果が期待できます。ウイスキーについても、普通に注ぐよりも香りが開いている…ような気がします。
また、ボトルを傾けないで注げるため、澱を舞わせてしまうことなく注げるのも個人的にはポイント。
空気と混ぜることがプラスに働くかどうかはお酒次第と言えそうですが、ウイスキー以外にも普通に使えるなと。

そしてもう一つがサンプル瓶の小分け。
いやもうこれはありがたい。サンプル交換や共同購入で、決まった量を複数小分けにしないといけない場合、5個、10個と小瓶に同じ量を注ぐのは結構手間なのですが。このディスペンサーがあれば1発で解決。注ぐ量を設定して、レバーの倒し方だけ工夫してやれば流れ作業で小瓶に詰められる。
ニッチな紹介になりますが、小瓶で販売されてる酒販さんとか、このディスペンサーかなり使い勝手いいんじゃないでしょうか。

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なお、使った後のお手入れとしては、ステンレス製のホースは取り外して水洗いOK。
本体は洗えないのですが、ホースをつけたまま、ミネラルウォーターやお湯、ハイボールの後なら残った炭酸水を通してあげるくらいが良いかと思います。(衛生面が気になる方は消毒用アルコールを通しましょう。)
そして充電はUSBのtype-Cなので、パソコンだろうがiPhoneの充電器だろうが、なんでも対応。公式は500mlが100回注げる電力量。数回使った程度ではほとんどバッテリーは減らないので、自分の利用頻度なら、1ヶ月に20〜30%程度しか減らず。充電は2ヶ月に1度とかになりそうです。

というわけで、ほとんど期待していなかったというか、元々は消毒用アルコールの移し替え用と考えていたガジェットが、想定していなかった本来の使い方をしてみたら思ったよりも便利だったと言う話。
最近、1周回って角瓶やブラックニッカのハイボールが普段飲みや晩酌にちょうどいいと感じてきたところ。こんな便利グッズが手元にあるなら、いよいよリッターペットボトルの世界に踏み込んでも良いかな…なんて考えてしまいました。

【咲グラス】ウイスキーをストレートで楽しむための最適なグラスづくり

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ウイスキーのブラインドテイスティングで定期的に競い合い、ライバルとも言っていい関係にあるシズタニエンこと静谷和典氏から「オリジナルグラスが出来上がったので、使用感を教えて欲しい」と連絡頂き、そのサンプルを使わせいただきました。

今回のオリジナルグラスの構想、出発点はハイボールでウイスキーに慣れ親しんだ人たちに、さらにウイスキーを楽しんで貰うにはどうしたらいいか。
ウイスキーの個性を全面に打ち出したカクテル「ウイスクテイル」や、ウイスキーをストレートでフードとペアリングする「ウイスキーニコラシカ」など、バーマンならではのアイディアを形にしてきた静谷さんが、純粋にウイスキーそのものを、つまりウイスキー単体をストレートで楽しんでもらうためのツールとして打ち出したのが、オリジナルテイスティンググラス「SAKI(咲)グラス」でした。


咲(SAKI)グラス
製造:非公開(国内にて職人のハンドメイド)
設計・監修:静谷和典

※咲グラス先行販売サイト:https://ideamarket.yomiuri.co.jp/projects/whisky-glass2022
9月15日(木)午前0時から、100脚分が先行販売されます。(酒販店や百貨店等で通常販売も調整中とのこと。)

グラスの製作エピソードやこだわりの数々は、上記URL先のクラウドファンディングサイトにまとめられています。
自ら手吹でグラスを作った経験、既存テイスティンググラスの分析、3Dプリンタを使った試作の数々、そしてブランド化する上での戦略…コロナ禍という苦境の中、休業という普段は生まれなかった時間を使った挑戦。
素直に凄いなと、同年代でここまでやれるのかと、ただただ感服する内容となっています。

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さて、当ブログでは咲グラスの使用感や、色々使ってみた上で見えてきた特性、ウイスキーのジャンルとの相性に焦点を当ててまとめていきます。
エピソードをあらためて紹介するのも良いですが、どういう性能のグラスなのか、実際に使用した印象を知りたい人が大半だと思いますので。。。
で、どうだったかというと。ウイスキーの良い部分を引き出し、親しみやすくする。まさに「ストレートでウイスキーを楽しむ」というコンセプトの通りのグラスだったのです。

香り:開かせて馴染ませる。各要素を引き出しつつ、特にウイスキーそのものが持つ麦芽や樽由来の甘さを引き立てて馴染ませることで、アルコール感を和らげる。

味:口当たりの部分がフィットするようにアーチを描いており、ウイスキーが抵抗なく口の中に導かれる。それによって口当たりが良く、アルコール感も穏やかに感じられる。

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相性:長期熟成から短熟、バーボンからスコッチ、あるいはラムやコニャックなど、多くの銘柄、ジャンル、仕様にマッチするオールマイティさが最大の魅力。
強いて言えば、甘さよりもクリアでシャープなピート香を楽しみたいようなアイラモルトは開かせる香味の傾向が異なるため、違うグラスを選びたい。また、香りが強い酒類に向いているため、香りがそもそも立たないような安ウイスキーは期待できない。40%台のブレンデッドよりは45%以上ある比較的個性のはっきりしたリリース(シングルカスクなど)に適正がある。
例えば、ジャパニーズクラフトで10年未満の高度数ウイスキーに対し、非常に良い仕事をしてくれる。

その他:全体としては適度な大きさで、ステムは細く、軽く仕上がっており、手に持った際に違和感が少ない(重量、70〜80g)。一方で、ボウルやリムは某社最高級ワイングラスのような薄さではなく、例えばケースに入れて自然に持ち運べる程度の耐久性が見込めるのも特徴と言える。

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以上が一般に使われている、ノーマルなテイスティンググラス、グレンケアン、国際規格グラス等と比較しながら、色々と飲み比べてみた使用感、感想です。特に初心者向けと見た場合ほとんどダメ出しするところのない、非常に良いグラスでした。

タイトルにある「ウイスキーをストレートで…」ひいては、ハイボールからのステップアップでウイスキーの個性をストレートで楽しんでほしいというコンセプトに対して、飲み慣れない人が敏感に感じ取る要素、飲みにくさに繋がる粗さ、アルコール感を軽減し、日本人が美味しさの基準にするといっても過言ではない「甘さ」を引き出す点が、グラスの特性として特筆すべきところです。

また、現在長期熟成の原酒が枯渇し、リリースも高騰しています。そのため、ウイスキーとしてテイスティングする機会が増えているのは、20年熟成未満のスコッチやアイリッシュ、5〜10年程度のジャパニーズ。バーボンは元々長期熟成の流通量が少なかったですが、全体的に甘みが弱くなり、ドライな傾向にあります。その他、コニャックやラムなどが代替品として注目されていますが、これら今後の市場の主力商品とも言えるジャンルの良さを引き出す事も、咲グラスに期待できる特性です。
静谷さんはこれを科学的に分析して作ったわけではなく、さまざまな試行錯誤の中で、自身の経験を交えて導き出した。バーマンであり、マスターオブウイスキーだからこその経験と知識、そして直感による作品とも言えるわけです。

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形状を分析すると、グラスのボウル(底)部分が同じサイズのものより大きく広がって、それがポットスチルに見られる形状のように一旦すぼまることで、香りを広げるスペースが作られている。
このスペースでは、香りのポジティブな要素もネガティブな要素も増幅されますが、そこから口をつけるリムにかけて口径が広がり、スペースから距離がとられていることで、アルコール感が拡散し、まとまって鼻腔に届かないような構造であることが伺えます。

これが例えば、上の写真中央にある、卵の上部分をすっぱり切ったような… 自分がよく使っている木村硝子のテイスティンググラス0番や、さらに飲み口が窄まっている形状のものだと、香りの良い部分も悪い部分も、またアルコール要素が強く残って、飲み慣れた人向け、玄人向けのグラスになっていたのではないかと考えられます。

また、上の写真右側にある、Kyoto Fine Wine & Spirits さんのオリジナルグラスのような、液面から鼻腔までの面積と距離がある、大ぶりのグラスだったらどうなるか。
これはウイスキーの熟成感や奥行き、複雑さが試される構造になり、長期熟成ウイスキーは存分にその魅力を開かせる一方で、若いウイスキーには向かない形状になっていた。
つまり静谷さんが目指していた入門向けグラスとは異なるコンセプトになっていたわけで、こうして結果だけ見ると、これ以外に正解はないと思えるくらい、ダメ出しのしようがないグラスだったのです。

まあ、強いて言えば…香りを開かせる空間、変化の大きな形状が、最後の一口になるといつもの3割増しくらいでグラスを傾けないとウイスキーが口に入ってこない、というくらいでしょうか。。。口当たりについてはタリランド(写真左)のような構造で、ウイスキーがスッと口の中に入るのですが、機能面と造形面のバランスの問題で、難しい点なのです。
あんまり褒めすぎると、ステマ感が増してしまうのでイヤなんですけどね、正直このグラスには驚かされました。

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最近、ウイスキーグラスのリリースが増えてきて、さまざまな形状のものが誕生しています。
ただ、ウイスキーは1990年頃までは、ブレンデッドが中心の市場であり、そこから冬の時代を経て、2000年代に入ってシングルモルトが普及し始めた。
つまり飲みやすさ重視の時代から、個性を楽しむ時代が到来したのは直近10年程度のことであり、個性を楽しむ飲み方としてストレートが、ツールとしてテイスティンググラスが注目されるようになったのは、本当に最近のことなんですよね。

そしてその流れの中で、地域の特徴、品種の違い、テロワールと言われる要素を紐解くためにさまざまなグラスが造られたワインに倣って、多くのグラスが造られるようになっていくのは自然な流れであるように感じます。
ウイスキー業界におけるテイスティンググラスは過渡期にあり、今後はスタンダードなものから樽や度数、地域によってグラスの形状が確立していくのでは無いかと予想しています。

その中で、今回発表された咲グラスは、造り手と設計者の確かな知識、経験、技術によって作られる、ウイスキーの入門から応用まで幅広くカバーするオールマイティなテイスティンググラス。
グレンケアンに物足りなさを感じた人は、ぜひ一度手に取って、あるいは静谷さんのBAR(LI VET、Whisky Salon)で注文して、その違いを体感して頂けたらと思います。

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酒類の原料原産地表示制度がもたらす国産ウイスキーの課題と闇

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はじめに:今回の記事は、2017年に改正され、2022年4月から有効となっている改正食品表示法「原料原産地表示制度」の解説です。
長文かつ地味に難解な箇所もあるので、興味が無い方は、4月以降に変わった国内ウイスキーメーカー各社のラベル表記と、その意味を解説した記事として、記事中盤のラベル表記分析、それが内包する誤解の種や闇に関する箇所を読んで頂ければと思います。

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日本で作られるウイスキーの一部には、海外から輸入された原酒が使われていたこと。輸入ウイスキーやウイスキーではない酒類を、ジャパニーズウイスキー化して販売するロンダリングビジネスの存在…。

2016年、あるウイスキーのリリースがきっかけで表面化した、日本のウイスキー産業が内包する課題、ある種のグレーゾーンとそこから生じる”闇”は、その後、様々な議論や情報発信を経て基準が制定され、国産ウイスキーといっても一括りにはできないことが、愛好家の中では常識と言えるくらい認知度が高まったところです。
当ブログにおいても、最初期から問題提起、解決策の提案、メディアによる関連する情報発信の紹介、関連規約の紹介・解説等の情報発信を継続的に行ってきました。

一方、最近、国内メーカーが製造・販売するウイスキーの裏ラベルに「●●産」や、「国内製造」「英国製造」などの表記がみられるようになりました。
先の経緯を知る方だと、なるほどこれは2021年に定められたジャパニーズウイスキーの基準による表記か、と認識されるかもしれません。ですがこれは2017年に改正された食品表示法「加工食品の原料原産地表示」によるもので、この法律が効果を発揮するまでの経過措置期間が、酒類においては2022年3月31日までだったことから、4月以降に製造・出荷されたウイスキーについて法律に準じた表記がされるようになってきたものです。

同改正法はすべての食品、酒類に適用され、あくまで一定の整理に基づいて原料・原産地を明記しようという法律です。
後発となる洋酒酒造組合のジャパニーズウイスキーの基準は、同改正法との横並びはとられているものの、一般消費者へのわかりやすい説明を行う義務を定めた改正法と、ジャパニーズウイスキーのブランドを守り、高めるための独自基準とでは、全く別の概念となります。
結果、今年の4月以降酒類全般において今までは無かった原料、原産地等に関する情報が明らかになった一方で、ウイスキーだからこそ生じる問題点、分かりにくさが生まれつつあります。

一例としては以下の画像、左側のシングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士。富士御殿場蒸留所のモルト原酒とグレーン原酒のみをブレンドした製品ですが、国内製造(グレーンウイスキー)表記がどういう意味か、パッと理解できますでしょうか。

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そこで今回の記事では、改正食品表示法の運用を実際の表示例(各社のラベル)に基づいて紐解き、そうして新たに見えてきた情報、解釈の幅、誤解の種や新たな闇となる危険性を紹介しつつ、今後解決すべき課題を整理します。

前置きとして食品表示法の改正による、ウイスキーにおける原料原産地表示の概要を、以下の通り説明します。
同改正法では原料原産地表示以外に、事業者情報の記入など、他にも変更された箇所がありますが、本記事ではウイスキーの中身を見る上で最も大きな変更点と言える原料原産地表示についてまとめていきます。

※酒類の原料原産地表示に関する概要(ラベルに表記する情報)
  1. 原材料名での産地記入(●●産)は、その製品のもととなる原料の産地が表記される。。
  2. 原材料原産地名での●●製造は、その製品の内容について”実質的な変更をもたらす行為”が行われた国、地域が表記される。
  3. ●●産、または●●製造は、どちらか片方しか表記できない。また、●●産、●●製造が3地点以上になる場合、多く使われている順に2地点を記載し、それ以降をその他としてまとめても良い。
  4. ●●製造に紐づいて表記されるもの(モルトウイスキーorグレーンウイスキーorスピリッツ等ブレンドアルコール)は、製品内で最も比率が高いものだけ記載すればOK
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※参考資料
・食品表示法(酒類関連変更箇所概要):https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/pdf/0020002-131.pdf
・改正食品表示法Q&A:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/sakeqa/bessatsu_2909.pdf
・ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則:https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/whiskey.pdf
 ⇒本規則の解説記事はこちら
・酒税法及び関連法令通達:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/01.htm
・ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準:http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_06.pdf

以上。。。
といっても、文面を読んだだけではわかりにくいと思うので、各社のラベルから代表的なものを解説していきます。
企業の姿勢やブレンドの造り、実は結構色々なことがわかってきます。

なお、本記事は全てのメーカーのラベルを掲載したわけではありません。純粋にパターンが同じだったり、在庫と流通のタイミングの問題もありますが、中にはニッカウイスキー(アサヒビール)のように掲載していないケース※もあります。
表示したりしなかったり、あるいは全部表示したり…そして今まではウイスキーだと思ってたものが…だったり、各社本当にバラバラの状況も見えてくるのです。

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※2022年4月以降も掲載していないケース:
当該改正表示法では「できる限り新基準に基づいて原料原産地表示をすること」としつつも、2017年9月1日の改正法施行前から製造所に貯蔵されていた原酒や原料を使用する場合、産地情報を確認できない可能性もあることから、それが一部使用であっても●●産、●●製造の表記をしなくても良いとされている例外規定がある。
ニッカウイスキーの場合は、主としてベンネヴィス産原酒、ニューメイクの使い方によると推察。


■各社のラベルの原料原産地表示解説

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サントリーの響21年(左)とローヤル(右)。
これはお手本のような表記の整理です。
原材料名、モルト、グレーンは、ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則(以降は「表示規則」と記載)によって、通常のウイスキーはモルト、グレーン、アルコールの順番に記載することとなっているので、これまで通りです。

サントリーはオールド以上のブランドがジャパニーズウイスキーであることを明言されており、響もローヤルも、原料原産地はどちらも国産表記となります。
ただし響21年はモルトウイスキーが、ローヤルはグレーンウイスキーが割合として一番高いため、国内製造(モルトウイスキー、グレーンウイスキー)か、国内製造(グレーンウイスキー、モルトウイスキー)か、異なる順番で記載されています。
響は予想通りかもですが、ローヤルについては意外に感じる方もいるかも知れない新情報です。

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続いては同じサントリーからレッド、そしてサンフーズ社から御勅使。
安価なウイスキーに見られる、スピリッツがブレンドされいてるケースです。
レッドは原材料名はローヤル等と同じ、モルト、グレーンですが、原料原産地は国内製造(グレーンスピリッツ)のみの表記です。

ここで言うグレーンスピリッツは、酒税法に照らし、アルコール度数95%以上の穀物原料のブレンド用アルコールになると思われます。
おそらくモルト原酒、グレーン原酒も一部使われているのでしょうけれど、比率としてはグレーンスピリッツが一番高く。この場合、グレーンスピリッツ+グレーン原酒・モルト原酒+水(度数が高くなりすぎるので39%に調整)を加えた後、カラメル色素で色彩調整であることがわかります。

一方で、サンフーズの御勅使は原材料名、モルト、グレーン、スピリッツで、原料原産地名は国内製造(スピリッツ)になります。
ウイスキーにブレンドされるスピリッツは、先のレッドに使われている穀類を原料としたものと、そうでないモノの2種類に分けられ、穀類原料のものは表示規則で原材料への表示義務がなく、一方で、表示されている場合は廃糖蜜ベースのモラセスアルコールが一般的です。
つまりレッドは穀類原料のスピリッツがメインなので、原材料名には記載がないが原料原産地名に記載があり。御勅使は上述の穀類ではないスピリッツがメインなので、どちらにもスピリッツ表記があることになります。

なお、酒税法上のウイスキーをざっくり整理すると、原酒10%で他ブレンドアルコールでもウイスキーとして成立するのはご存知かと思いますが。つまり上述2銘柄は、記載したスピリッツをモルトとグレーンの合計に対して過半数以上90%未満までブレンドしたもの、とも整理されます。
またどちらも国内製造表記ですが、これらのスピリッツは、アメリカや中国、ブラジル等から粗留アルコールという形で輸入され、それを大手のアルコールメーカーが連続式蒸留を行い、純粋アルコールとして流通させたものが一般的です。
海外からの輸入原料でありながら国内製造表記となっているのは、概要2.にある製品の内容に”実質的な変更”が行われた場所が国内であるため、国内製造表記に切り替わっているのです。

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ラベルがリニューアルしたばかり、キリンから陸と富士山麓。
これは同じ会社の製品ですが、原材料名の順番が違うもの。
シングルブレンデッドの富士の表記は本記事の上部の画像にある通りですが、輸入原酒を使っている陸と富士山麓は、原料原産地名に国内製造、英国製造の2か所の表記があり、どちらも一番多く使われているのはグレーンウイスキー。ただし、モルトウイスキーをブレンドしていない陸は、原材料名の表記がグレーン、モルトと、富士山麓の逆になっています。

陸も富士山麓も、グレーン系でアメリカンっぽい仕上がりの味わいなので、香味の面ではグレーンウイスキー表記に違和感はないわけですが…
「Kさん、富士山麓の裏ラベルの説明文に”世界”が加わったのいつだっけ」
「えっと、最近だね」
「キリンは、フォアローゼズをタンクで運んできて、国内工場でボトリングしてるんだってね」
「…そうだね」
「もう一つ質問いいかな」
「…なんだい?」
「米国関連の表記どうなった?」
「勘のいい客は嫌いだよ…」

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マルスのツインアルプスは、紛らわしい事例の1つ。
自前で蒸留したモルト原酒に、輸入したモルト原酒とグレーン原酒を用いてブレンドされています。
原材料は、前述の通りモルト、グレーンですが、原料原産地名は、英国、カナダ、国内と3か国が並んでいる一方で、国内製造の隣にグレーンウイスキーのみが表記されています。

これはグレーンウイスキーが100%でも、何より国産なのでもなく、使われている原料全体の中でグレーンウイスキーが一番多いという説明です。(※上記概要4.参照)
使われているだろうグレーンウイスキー、モルトウイスキーあるいはブレンデッドバルクも含めて産地としては英国産、カナダ産、国産の順に比率が高いという表記でもあり、その中で一番多いのはグレーンウイスキーですと。おそらくマルスの場合、国産はモルトウイスキーだと思いますが…。
このラベルは背景情報まで知らないと、誤解を招きそうな表記となっています。

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江井ヶ嶋酒造のブレンデッドのあかし(上左)と、シングルモルトのあかし(上右)。
こちらも紛らわしい事例で、よくあるパターンになりそうなもの。
一方で桜尾蒸溜所のブレンデッド戸河内(下4本)は、1種類でもいい原料原産地情報を、全ての原料毎に記載する表記を採用していて、対応は真逆となっています。

ブレンデッドのあかしは、説明文にもあるように自社蒸留のモルト原酒も使われていますが、輸入原酒のグレーンを最も多く使っているので、原料原産地表記は英国製造(グレーンウイスキー)のみ。
逆に、シングルモルトあかしは自社蒸留のモルト100%なので、国内製造(モルトウイスキー)となっています。
シングルモルトはシンプルで分かりやすいですが、ブレンデッドの方は説明文で補足されているものの、ちょっと分かりづらいですね。
戸河内のように書いてくれれば良かったのですが。。。

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原料原材料表記で、大括り化がされている事例もあります。それがイチローズモルトのモルト&グレーン、リーフシリーズのホワイトラベル。

裏ラベルには、世界5地域からの原酒を使っていることが表記されています。直近ロットの原料原産地表示は「英国製造、アイルランド製造、その他(グレーンウイスキー)」。
最近のホワイト、香味としてはほぼほぼグレーンで、若いグレーンやカナディアンの酸味と穀物感のあるフレーバーが目立っており、表記を見るにイギリス(スコットランド以外含まれる可能性も)とアイルランド産のグレーンウイスキーがメインということなのでしょう。
勿論、両国産のモルトウイスキーも、グレーンウイスキーの比率未満で含まれると言う表記でもありますが、香味的にはモルト2のグレーン8とか、そんな比率では…。

一方でここで初めて出てくるのが「その他」表記。つまり大括り化です。
これは、同改正法においては含まれる原材料の産地や原料原産地が3以上ある場合、比率の多い順に2地点を表記して残りは「その他」として良いとされているもの。ここではカナダ、アメリカ、日本はその他分類の比率であることがわかります。
香味的にも、まあ確かに…と言う感じではあり、違和感はないですね。

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最後に今年6月にリリースされた、厚岸シングルモルトの清明。
少し表記の仕方が違うタイプで、原材料が●●産であることを表記する方法をとっています。モルト:(大麦(イギリス、オーストラリア、北海道産))
嘉之助蒸溜所のシングルモルトも同様の表記が採用されてますね。この場合、改正食品表示法では全ての原産地を記載することになっており(※上記概要1.参照。大くくり化も一部認められている)、それに準じた表記となっています。

なお、概要3.でも触れた通り、この●●産表記と、原料原産地の●●製造表記は併記できないため、せいめいの裏ラベルに原料原産地表記はありません。そしてこの表記は、後で別メーカーの商品でも出てくるので頭の片隅に置いてもらえればと思います。


■原料原産地表示の解釈と誤認事例
同改正法の運用が本格的に始まったのは、経過措置期間が終わった2022年4月1日。
一見すると産地が見える化されたようでいて、実は正しく読み解くには改正法以外に、酒税法や表示規則の知識も最低限必要になり、誤解を生みそうな表示になっている商品があるなど、課題を残す状況も理解頂けたのではないかと思います。

なぜこんなことになっているかと言うと、輸入原酒と国産原酒という、2か所以上の産地・種類の原酒を混ぜてリリースされるのは、ウイスキーとブランデーくらいであり。かつこれだけ多くの銘柄、製造メーカーと需要が存在するのは、酒類においてはウイスキーのみであるためです。
ビールや日本酒、あるいは本格焼酎ならこうはなりません。甲類焼酎は、レッドのところで触れたスピリッツを加水したものが大半なので、原料と製造地域で類似の問題が発生しますが。

じゃあウイスキーはもっと詳しく表記するようにすればいいじゃないかと言うと、これもまた難しい。ちょっとでも中身が変わったら、ラベルを全て替えなければならないのは事業者にとっては大きな負担ですし、世界的に原酒と原料が調達されている現代にあって、どこに線を引くのか、何より一般消費者はそこまでの情報を望んでいるのか、消費者と生産者、どちらの立場にも立って線を引くのが法律であるためです。

結果、他の酒類では起こりえない表記と整理の複雑さが生じることとなり、表示に解釈の幅もある運用から、誤解を招きかねない表記だけでなく、新たな闇につながりかねない事例も発生してきています。

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例えば、ファミリーマートで限定販売している、南アルプスワインアンドビバレッジ社製のハイボール缶。原材料名にウイスキー(国内製造)とありますが、同社は国内でウイスキーの蒸留を行っているわけではありません。

同社は以前「南アルプスから湧き出るウイスキー」と説明文に記載した隼天※というウイスキーをリリースしていたことから、なるほど南アルプスにはウイスキーが湧き出す源泉があるのかとかぶっ飛んだことを考えてしまいましたが、そんなトリコ(少年ジャンプ)みたいなことはなく。
※実際は、以下の通り「南アルプスから湧き出るウイスキーに 最適な源水で仕上げた」という説明文で、絶妙な個所で改行されていたことと、文章をどこで区切るかで意味が違ったことから生じた誤読。

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この缶ハイボールは、輸入スコッチバルクとスピリッツをブレンドして加水し、ハイボール用に調整した段階で、モルトでもグレーンでもなくウイスキーとなり、上述の概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」が行われた中間加工地点が国内と整理されたものです。

おそらく、当該ウイスキーを単体で原料原産地表示すると、
品目:ウイスキー
原料原産地名:グレーン、モルト、スピリッツ(国内製造)
でしょう。そして原材料としてのウイスキー(国内製造)となったものに、添加物とガスを加えて、最終的な品目がリキュール表記となったのではないかと考えられます。

以上の事例だけでも、改正法解釈の”実質的な変更をもたらす行為”については、蒸留なのかブレンドなのか加水なのか、解釈の幅があり得ることが分かるかと思います。
そして、そうした解釈の一つなのか、単なる誤表記か、最後は今回もまた事例の一つとなってしまうのが「松井酒造合名会社」のリリース各種です。

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左:マツイウイスキー 山陰 ブレンデッドウイスキー
原材料名:モルト・グレーン(国内製造)

中央:マツイピュアモルトウイスキー倉吉
右:マツイピュアモルトウイスキー倉吉シェリーカスク
原材料名:モルト(国内製造)

注目してしまうのが国内製造表記ですが、ポイントはそこから少しずれます。
この“原材料名”というのは、食品表示法でも表記規則でも、どちらの整理でも、モルト=大麦、グレーン=穀物となる、文字通り原材料です。モルトウイスキー、グレーンウイスキーの意味ではありません。
つまり、松井ウイスキーの山陰も、倉吉も、表記そのまの意味では、100%国産の精麦麦芽と穀物を使用したウイスキーということになります。(洋酒酒造組合側に、表記の整理を確認済み。) 

松井酒造は倉吉蒸留所にポットスチル等製造設備を2018年に導入・ウイスキーの自社製造を開始していたことから、ひょっとしたらひょっとするのか?
100%国産原料の国産モルトウイスキーとグレーンウイスキーを製造し、他社とは別格な極めて手頃な価格で提供するという、愛好家にとっての優良企業である可能性が微レ存か?

微粒子レベル級の期待を込めて、直接問い合わせをしてみたところ、製造担当者の方の回答は以下の通りでした。
  • 自社蒸留のモルトウイスキー原酒を一部使用している。だが全てを賄うことは出来ていない。
  • それ以外の原酒は、国内提携酒造から調達した国産原酒である。
  • マツイピュアモルトは、この2種類以上の国産原酒をブレンドしているため、ピュアモルトである。
  • 本社は過去にあった事例から、懐疑的な目を向けられることが多くあるが、現在は全て国内調達したウイスキーを使用している。故に裏ラベルも国内製造表記となる。
え、本当に100%国産なの?と、驚いてしまうと思いますが、慌ててはいけません、ここは冷静にいきましょう。

まず、使われているモルト原酒について、わかっていることから整理すると。
倉吉蒸留所は、輸入した麦芽を使ってウイスキーを仕込んでおり、計画としては発表されているものの、現時点で国産麦芽を使った仕込みは確認できていません。
仮に、国内提携酒造から調達した原酒というのが、モルト(国内製造)の本来の意味である、国産麦芽100%で作られた希少なモルト原酒であったとしても、自前の原酒が条件を満たさないため、このラベル表記は誤記である可能性が高いということになります。

グレーンについては、国内の大規模蒸溜所(富士御殿場や知多)からのグレーンウイスキーの安価多量提供のみならず、国産穀物で仕込んでいるグレーンウイスキーの存在は、各蒸留所関係者にヒアリングしても確認できません。
ですがグレーンスピリッツであれば、先に触れたような粗留アルコールを蒸留して造る国内製造グレーンスピリッツを提供してくれるメーカーがあるため、調達は不可能ではないことになります。しかし、純粋にグレーンウイスキーを指さないという消費者の誤解を誘うマナー違反に加え、国内製造の定義が”実質的な変更”によるもので国産穀物ではないことから、こちらも誤記、表示違反である可能性が極めて高いということになります。

そしてこれらは”国内提携酒造から調達した国産原酒”が、本来の意味での国産表記を満たすという前提に立っているものです。
ここから先は私見ですが、これまで個人的に関わってきた日本全国のクラフト蒸留所において話を聞く限り、松井酒造規模の大量リリースに対応できるだけの3年熟成以上のモルトウイスキーを提供してくれる蒸留所は、記憶にありません。ましてオール国産原料となると、なおのことです。
ラベルだけなら認識不足による単なる誤記となりますが、中の人の説明と合わせて考えると、そこにはもう一つ深くて暗い何かがあるように思えてならないのです。


■可能性の話:商品を製造して販売するA社と原酒を調達するB社
さて、以降はどこのメーカーの話でもありません。あくまで私の妄想であって、他産業(魚介とか食肉とか…)での過去の事例から、こういうことが出来てしまうのではないかという仮定の話になります。

現在、日本において各蒸留所で使われているブレンド用ウイスキーの外部調達は、蒸留所が直接行っているケースはまれで、大概は商社、輸入業者を介して行われています。
有名なところだとK物産さんとかですね。商社が調達可能なモルトウイスキーとグレーンウイスキー、その最低量と価格をリストアップし、蒸留所側に提示。蒸留所側が必要な量を発注する。
届いたウイスキーを使って、蒸留所側は商品を開発して販売するというのが、一般的な流れです。

ここで、
・商品を製造して販売するA社
・A社と繋がりが深く、実質的にA社の原料調達部隊であるB社
が居るとします。

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上のイラストのように、B社が輸入してきた原酒を、A社に対して「国産原酒」として展開。
A社は、B社の表記した仕様のままに、商品を「国産」として製品化し、販売した場合はどうでしょうか。

B社が酒類製造免許を持っている場合は、先に説明した概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」で可能な解釈次第では、輸入原酒を国内製造化できる可能性があり、この場合はグレーゾーンですが合法的に国内製造表記が成立するかもしれません。例えば、上述のハイボール缶の時のような整理です。
ですが酒類製造免許は申請に製造設備を保有していることや、その後の製造実績等の必要があったりするので簡単にはいきません。安易な方法ですが、示し合わせた上での1:1取引なら、何らかの嘘をつく可能性もあります。

そして当該商品に対し、おかしいと消費者が感じたとしても、A社にあるのはB社が提供した「国産原酒」の情報のみです。また、消費者に対しては契約時の守秘義務の関係からと、別会社であるB社の情報をいちいち明かすことはないでしょう。

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食品表示法の改正には、食品を扱う事業者の責任の所在を明確にすることも趣旨としてあり、製造生産者の表記も追加修正されています。
そして法律であるので、某組合基準とは異なり違反金等の罰則規定も当然存在します。原産地の虚偽記載は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。法人である場合は、1億円以下の罰金。所管省庁による、立入検査等もあり得ます。
ですがこのケースでは、消費者等からB社の存在は見えず、仮に何かがあってばれたとしても、A社としては持ち得る情報で法令に合致した発信をしていたが、調達先(B社)に問題があったと、トカゲのしっぽ切りが出来てしまうのです。

先に触れたように、類似の事件は食品産業においては過去にあった事例であり、紙面とお茶の間を少しばかり賑わせてきたことは、皆様も記憶の片隅にあるのではないかと思います。
これまで、ウイスキーは各社の小さな事業の1つでしかありませんでしたが、今や日本酒を越える日本の主要輸出産業の1つであり、観光資源や地域産業復興のキーポイントとしても期待される、様々な産業と結びつくまでに成長してきています。
光りあるところに闇がある、光が強くなれば、闇もまた濃くなる。こうした考えのもと、見えない形で何かをしようとする人達が出てきてもおかしくないわけです。


■最後に:解決すべき課題と議論の必要性
今回、改正食品表示法について調べることにしたのは、先日キリンの富士シングルブレンデッドジャパニーズウイスキーに関して「この商品はシングルグレーンなんでしょうか?ラベルに国産グレーン表記しかないんですが」としてTwitterで質問を受け、正しく答えることが出来なかったことがきっかけでした。

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この質問は、酒造関係の知人が代わりに解説してくれたことでことなきを得ましたが。
少なくとも私も、質問をくれた方も、そして酒造関係の知人も、この表記は合法でも分かりにくいし誤解を生むという見解で一致しており。
じゃあ他の銘柄はどうだろうかと、色々調べてみたわけですが、思った以上に複雑で、情報量が多く、おかしな表記もある話だったことは、この記事を通して紹介した通りです。

加えて、別に特定企業を叩く意思は全くないし、私怨の類もないのですが、調べていく中で出てきてしまったマツイさんの名前。
マツイさんは、2016年に発生した業界と愛好家を巻き込んだ一連の騒動から、燃えてしまった火を消すのではなく、商売のターゲットを事情を知らないようなライト層、ウイスキー以外の酒類の愛好家、そして日本の情報を得にくいだろう海外層に定めている印象で、その点から見ても今回の表記がただの理解不足による誤記なのか、判断しかねる部分があります。
何故なら、所定の手続きを行い、内容を説明して所管の税務署等の許可を得たうえでリリースするのが酒類だからです。

私自身、以前からブログ等で記載している通り、また自分自身でもリリースに関わっているように、輸入原酒を使って自社原酒には無い個性を得て完成度の高いリリースをすることは、決して悪ではないと考えています。
電子機器、自動車、生活用品各種…オール国産でやっているのが珍しいくらいであるように、良いものは国内外問わず使う、その考え方はものづくりの一つの方針であり、それが結果として独自の強みになることも考えられます。
ただ、問題なのはそれを偽って使うこと、誤解を与えるような形で製品とすることです。

食品表示法の趣旨は、「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保する」ことにあります。
偽った説明の元で、合理的選択の機会を確保できるかと言われたら出来ないでしょう。また、誤解を生む表記についても同様であると言えます。
同改正法は、実際に効力を発揮してから間もないため、運用的には法律の趣旨に合致する解釈が、更なる議論を経て整備されていく段階かと思います。先に触れた、いくつかのラベルの表記がそうであり、単に表記を詳しくすればいいだけの問題でもありません。ここは様子をみていきたいところです。

各社の表記をもう1段階統一する、あるいは表記の解釈に関するガイドラインを作る。国内製造表記の実質的変更に関する事例や基準、消費者目線でのQ&Aの拡充があってもいいでしょうし、状況によっては原材料名と原料原産地表記に二重の記載を必要とする…など、知りたい人が必要な情報を、誤解なく正しく得られるようにする取り組みは、この法律の概念に基づき必要なのではないかと思います。
そして、闇になり得る事例、消費者から見えないところへの対応も…。
なんというか、法律や政策というのは、あちらを立てればこちらが立たず、必ず何か想定外が生まれる。バランスが本当に難しいですね。
本記事がこれらの議論の呼び水となり、そして皆様の理解の一助となることに繋がれば幸いです。

長濱ウイスキーラボ ブレンディングセミナーで楽しむブレンドウイスキーの魅力

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長濱浪漫ビール(長濱蒸溜所)から、ゴールデンウイーク5月3日~5日の企画として、AZAI FACTORYでのブレンディング体験教室が告知されています。

先日紹介した発刻、祥瑞、グレンマッスル各種、そして現在進行形のいくつかの企画…。長濱蒸溜所関係者を除けば、長濱蒸溜所でのブレンドに最も関わっているのが自分です(たぶん)。
その経験から断言すると、ウイスキー愛好家がシングルカスクでオリジナルボトルを選定するのは浪漫である一方、ブレンドで自分だけのウイスキーを造るのは、浪漫以上に楽しさがある、最高の贅沢の1つ。はっきり言って、めっちゃ楽しいですよ。


長濱蒸溜所 AZAI FACTORY ブレンディング体験教室
5月3日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000127
5月4日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000128
5月5日:https://shop.romanbeer.com/view/item/000000000129

◇スケジュール
13時  長浜浪漫ビール集合
14時  ブレンディングセミナー開始
15時半 終了・小学校セラー見学
16時  長濱浪漫ビール着・懇親会


今回のブレンドセミナーは、滋賀県・長浜にある旧七尾小学校(廃校)を活用したAZAI FACTORYで行われます。
この設備は、校舎をウイスキーの熟成スペースに活用しつつ、理科室でブレンドセミナーを行う等、長濱蒸溜所の分室的な位置づけで2021年から整備が進められているもの。蒸留所からはkm単位で離れた場所にあることもあって通常は見学コースに含まれていないため、同蒸留所の熟成環境を見学できる機会でもありますね。

また、蒸留所に戻ってからの懇親会も、長濱蒸溜所見学における魅力の一つと言えるイベントであり、激しくお薦めです(笑)。
スケジュールとしては13時蒸留所集合、懇親会を経て19時ごろ解散であるとしても、東京から日帰りで参加出来るのもポイントです。

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※長濱蒸溜所 AZAI FACTORY 内部。どこか馴染みのある小学校の各種設備の中で熟成中のウイスキー。自分の小学校時代を思い出す懐かしさだけでない、ウイスキーに対する興味や高揚感、言葉で表せない不思議な感覚が湧き上がってくる。

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※AZAI FACTORYでの見学、ブレンド後は、長濱蒸溜所の見学と併設レストランでの食事。小規模であるため見学自体は小一時間で終了するが、食事は出来立て地ビールや長濱ハイボールと近江牛等を使った地元メニューで、通常訪問時でもついつい長居してしまう。


■長濱ブレンディングセミナーについて
これまで長濱蒸溜所は、現地以外に東京やオンラインでもブレンドセミナーを開催してきました。

なぜ長濱がブレンドかというと、同社のブレンデッドモルトウイスキーのAMAHAGANは、元々ブレンドの技術やノウハウを得るためにと位置付けられて発売されたところ。
様々なブレンドにトライし、リリースを重ねるうちに世界的なコンペでも評価され、まさに看板商品にもなったわけですが、そうした経緯からブレンドの可能性や面白さをもっと知ってほしい、そのためには実際に経験してもらうのが一番と考えたからなんですよね。

今回の記事はむしろこちらがメイン。過去のブレンディングセミナーの様子をまとめ、セミナーがどんなイメージで行われるのか、そしてどのようなウイスキーが出来るのかを紹介していきます。

※ご参考:自分のウイスキー仲間2名も、長濱ブレンドセミナーの記事や動画をUPしています。
ブログ:長濱蒸溜所のブレンド体験セミナーへ参加してきました @K67
https://k67malts.wordpress.com/2022/01/24/nagahama_blend_semi/

動画:ウイスキーのブレンド体験してきた【長濱ウイスキーラボ】@ランプちゃん
https://youtu.be/KlUGlm9WfEY

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長浜ウイスキーラボでのブレンディングセミナーは、同蒸留所の屋久ブレンダーが講師となって、蒸留所側で用意した6種類の原酒を使ったブレンドを実体験するだけでなく、作成したブレンドはお土産として持ち帰って楽しむことが出来ます。

セミナーでの基本的な原酒構成は、
・ハイランドモルト5年(ノンピート)
・ハイランドモルト8年(ノンピート)
・ハイランドモルト8年(ピーテッド)
・スコッチグレーン
ここに、長濱蒸溜所のモルト原酒(ワイン樽やシェリー樽など)と、その日のスペシャルウイスキーが1つ加わって、6種類の原酒が準備されています。
スペシャルウイスキーは何が出てくるのかわかりませんが、自分の時は約30年熟成のスコッチウイスキー。他には1982年蒸留のグレーンウイスキー等もあったようです。


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ブレンドするためには、そしてどんなレシピを作るかを考えるには、まず各原酒の個性を知らなければなりません。
セミナーの初めは、屋久ブレンダーからの説明を聞きつつ、用意されている各原酒をテイスティングするところから始まります。少量といっても6種類ありますので、この時点で飲みすぎないように注意です。なぜなら、この後ブレンドが始まると、試作品の確認としてさらに飲むことになるからです(笑)。

一通り試飲が終わったら、配られているスポイトを使ってグラスから原酒を吸い取って、自分のイメージするブレンドを作っていきます。(足りなくなった原酒は、その都度足してもらえます)
ウイスキー原酒には、混ざりやすい原酒、混ざりにくい原酒、その個性によって様々なタイプがあります。長濱蒸溜所が用意している原酒は比較的混ざりやすいモノが多く、難易度としては入門向けに抑えられていると言えますが、それでも基本は抑えないと取っ散らかったブレンドが出来てしまいます。

その基本はセミナーで屋久ブレンダーから説明があると思いますので、ここでは省略しますが、他にも味に深みや奥行きを出すためには、同じ方向の香味の原酒だけではなく、あえて真逆の香味のモノを少量使ってみるとか、グレーンウイスキーについてもその熟成感と香味に応じて使う量を調整したりとか。。。

例えば、ピートが苦手だからと、フルーティー系の原酒だけで仕上げようとするより、ほんの少しだけピート原酒を加えたほうが、フルーティーさが引き立ったり。モルティーなウイスキーを作ろうとする場合でも、100%モルトにするより、5~10%はグレーンを使ったほうが、口当たりの滑らかさと香味の膨らみがギャップとなって、逆に味わい深いウイスキーに仕上がるのです。

6種類の原酒でのブレンドでも、組み合わせはとてつもない数となります。きっと夢中になって作って飲んでを繰り返した結果、ウイスキーが出来上がるのが先か、自分が出来上がるのが先か、そんな状況になるんじゃないかと思います。

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冒頭書いたように、ブレンディングセミナーの最後は、作成した自分のレシピでお土産用のブレンドを作ってもらうことが出来ます。
ブレンドしたばかりのウイスキーは完全には馴染んでおらず、日を置いて飲んでみると、また違った表情を見せてくれるのがブレンドの奥深さであり、難しさでもあります。そこまで経験して、セミナーが完了するとも言えますね。

そして過去には、セミナーで参加者が作ったレシピをベースにしたウェビナーエディションがAMAHAGANからリリースさたりもしましたが、作成したウイスキーを参加者同士で交換してみると更に面白さが広がります。

私も上述の知人2名と、自分の作品を交換してテイスティングしてみました。
K67さんはモルティーでバランス寄りのブレンドだけど、ピートの扱いに苦労したんだろうなーとか。ランプさんはマイルドでメロー、随分グレーン寄りのブレンドにしたんだなとか。単に味わいだけでなく、原酒や工程を知っているからこそイメージできる景色があります。
イベント参加にあたっては小瓶を用意しておいて、懇親会で知り合った方々とブレンド交換をしてみるのも良いかもしれません。

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今回の記事は、別に長濱蒸溜所から依頼を受けて書ているわけではなく、純粋にこの企画が楽しいと感じての紹介になります。
最近は各種シングルモルトのリリースに加え、キリンの陸など、ブレンドに必要なハイプルーフの原酒が手に入りやすくなりました。ウイスキーの楽しみ方はもっと自由であっていいと、度々ブログやツイッターで発信してきた自分としては追い風を感じる状況ですが、その楽しみ方の1つ、ブレンドについて学べるセミナーは貴重な機会です。

今回のイベントでは、日々進化を続ける長濱蒸溜所について知ることが出来るのは勿論、ウイスキーそのものについても、ブレンドの奥深さを経験して新しい楽しみ方を見つけることが出来ると期待しています。
視野が広がるというと大げさかもしれませんが、きっとウイスキーライフの充実に一役買ってくれると思いますよ!

長崎 五島つばき蒸溜所 GOTOGIN 元大手酒類メーカー関係者が挑む 物語のあるクラフトジン

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突然ですが、自分は離島が好きです。
本土の港町や田舎とは違う、さらにゆったりと流れていく時間。周囲を海に囲まれていることで、隔離された空間が作る独特の雰囲気、景色。本土では望めない、ロマンに溢れた釣り場の数々。
大学時代はリゾートバイトで伊豆諸島に1ヶ月以上住み込みでバイトしたり、季節を問わず毎月1回は釣りにいったり、最終的には地元漁師の家に住み着いてもいました。

なので、「離島」というだけで親近感が湧く、パブロフの犬な心理を持っているのがくりりんです。
そして先日ブログ記事で紹介した飛騨高山蒸溜所の製造顧問、元キリンのチーフブレンダーである鬼頭英明さんとやりとりをしていた際に長崎・五島での計画を聞き、離島!蒸留所!!素晴らしい!!!と、離島愛が発動。
手始めに実施中のクラウドファンディングを勝手に応援させて頂くことにしました。

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世界遺産の島に蒸溜所を立ち上げ、クラフトジンづくりに挑戦!
https://readyfor.jp/projects/88266
※クラウドファンディング期間;2月28日〜4月25日11時まで


五島つばき蒸溜所は、酒類関連企業でお酒の製造販売・マーケティング等に関わってきた三人が、お酒本来の豊かさを持った「物語のあるお酒を作りたい」として設立中のクラフトジンの蒸留所です。
クラウドファンディングは既に終盤、目標金額を大きく越えた支援が集まっており、期待の大きさも伺えます。

場所は長崎県、五島市福江島、半泊(はんとまり)集落。
創業は2022年9月ごろ、製品出荷は同年12月ごろ。
設備はドイツ・アーノルドホルスタイン社製のジン専用蒸溜器。
造るジンはその蒸溜所名の通り、島の名産品である“つばき”をボタニカルの軸とし、島に湧き出る超軟水の湧水、ジュニパー、柑橘類などを使って仕上げられる予定です。

鬼頭ブレンダー曰く、正統派路線のジンだが、素材の個性を活かして膨らみと自然な濃縮感、飲み飽きることのないバランスのとれた美味しさ(ユニーク&ハーモニー)を目指すとのこと。
パッケージは同五島出身のアニメーション美術監督、山本二三氏が手掛けられ、内外ともこだわり抜いた個性を感じられる、まさに嗜好品たるクラフトジンが期待できます。

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五島つばき蒸溜所の代表である門田さん、ブレンダーである鬼頭さん、そしてマーケティング担当の小元さん。立ち上げを進めるキーマン3名は、実は全員がキリンビール社のOBです。約30年間同社に勤め、ウイスキー、ビール、酎ハイとさまざまなジャンルの酒類製造販売等に関わられてきた実績があります。

人生お酒一筋と言っても過言ではないリカーマンな方々ですが、なぜ少量生産のクラフトジンという、これまでの大量生産品とは真逆のお酒造りを選ばれたのか。
それは、大量生産大量消費の時代にあって、お酒が持つ物語や豊かさが失われてきているのではないかという意識から、自分達の手で“物語のあるお酒“を作り、それを通じて自分達が惹かれた場所の時間、空気、風景を共有したい。お酒にただ酔うのではなく、物語を含めて楽しんで欲しいと考えるようになり、今回のプロジェクトを立ち上げられたのだそうです。

これはあくまで個人的な推測ですが。
キリンビールで鬼頭さんが開発され、品質管理にも関わられていた大ヒット商品に”氷結“があります。
誰でも、手軽に、いつでも一定品質のお酒をの楽しめるというコンセプト。例えば、現代ではストロングゼロに代表されるように、純粋に効率よく「酔う」ことを目的とした安価なお酒は、それが悪いとは言いませんが、お酒そのものの背後にある物語は希薄だと言えます。
それこそ、原料の産地の話であるとか、造り手の想いとか、そういう景色が見えるかというと難しいでしょう。

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酒は嗜好品の部類ですが、嗜好品は効率じゃなく、こだわりの積み重ねだと思うんです。
私は直接お話を伺っていますが、クラウドファンディングのページを見るだけで、五島つばき蒸溜所に関わるメンバーが文字通りクラフトディスティラーとして、1本1本自分達のこだわりを込めたお酒を作りたい、という想いが伝わってきます。

では、「物語のあるお酒」としてどのようなジンを作ろうとしているのか。
それは長崎・五島にある「風景のアロマ」
・土地のアロマ(テロワール)
・素材のアロマ(個々のボタニカルの特徴)
・造り手のアロマ(ブレンダーの技術)
3つの要素をもって、飲む人にこの土地の魅力や、個性、お酒としてのおいしさを届けたいと言うこと。

具体的には、
五島の象徴といえる名産品の椿の種を炒って、挽いた上で蒸溜することで、深みのあるアロマとボディを生み出し。
水は現地の超軟水を用いて、その他ボタニカルについても素材毎に最適な蒸溜条件を見極め、個別に製法を切り替えることで、各個性を可能な限り引き出す。
それらを技術と実績のあるブレンダーが、個性を活かしながら調和させるブレンド行程を経て、物語のあるお酒へと昇華させていく。

五島の地には世界遺産に指定されるキリスト教祈りの地としての歴史があり、キーマン3名が惹かれた環境があります。
想いだけではなく、物語を育む魅力と歴史がその土地にあり、それらを紡ぐ確かな技術と実績があるからこそ目指せる、こだわりのクラフトジンづくりが今まさに始まろうとしているのです。

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日本では数年前にジンブームが到来し、酒造や焼酎等スピリッツメーカーが、クラフトジン市場に参入したという動きがありました。
その際、大半のメーカーでは和的な要素であるとか、個性的なスピリッツであるとか、あるいは地元の名物として植物のみならず動物的な何かまで、ジンという自由度の高いお酒にあって多種多様な原料を使った商品開発が行われたわけですが、個人的にはどこを向いているのかわからない商品も多数生み出された、という印象を持っています。

勿論、中には素晴らしいクラフトジンもありました。宮城の欅とか、西酒造の尽とか良かったですね。また、大手メーカーも参入し、日本のお酒市場に新しい選択肢が加わったのは事実です。
ですが、物事には守破離という考え方がある中で、何を守るかも定まらないうちから、なんとなく作れるからというような独創的なジンが造られ、一方でどう飲むのがオススメかと聞いても考えられていなかったり…。物語があるようで無い、造り手の好みなのか消費者の好みなのか、どこを向いて作っているのかわからないクラフトジンが、少なからずあったのも事実です。

その後、コロナ禍となりクラフトジンの領域では活発な動きが聞こえてこなくなっていましたが、今回、上述のように確かな造り手と深い想いによる、こだわりのジン生産計画を目にし、これは楽しみだと素直にワクワクしました。
冒頭述べたように離島愛がトリガーとなっていますが、それ以上に五島つばき蒸留所とキーマン3名が生み出すクラフトジンが楽しみでなりません。

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同蒸溜所におけるクラウドファンディングのリターンは、初回限定生産ジンのセット(10000円)から、蒸溜所に支援者のネームプレートを掲載するプラン、さらには100万円でオリジナルジンの生産というぶっ飛んだプランまであります。
流石に自分の財布から100万円は出せませんが、このブログの読者で自分だけのオリジナルジンに興味があるという方、支援しちゃっても良いんですヨ?

勝手に取り上げて勝手に応援しているだけの本記事ですが、自分にとってはこれもお酒が紡いでくれた縁の一つです。
いずれ福江島の海岸で、昼間はジンソーダを、夕暮れ時からはストレートやロックで、ゆるゆるやりながら1日を終える・・・そんな休暇を過ごしてみたいものです。
まあ、夕マヅメ時はグラスより釣り竿持ってる可能性が大ですけどね(笑)

クラウドファンディングのラストスパート、そしてそこから始まる蒸溜所創業に向けた準備、ジンづくり。是非ともこだわりの結実したお酒が出来上がりますよう、応援しております!

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