ニッカウイスキー フロンティア 48% 2025年ロット

NIKKA WHISKY
FRONTIER
Lot No,6/02E201432(2025年1月)
500ml 48%
評価:★★★★★(5-6)
香り:ややドライ、若い原酒の刺激とともにキャラメルを思わせる甘さ、アーモンドや乾煎りした麦芽の香ばしさ、微かにリンゴのカラメル煮。奥からスモーキーなアロマも開いてくる。
味:とろりとした口当たり。序盤はのっぺりとして起伏に欠けるが、徐々に穀物由来の風味、内陸モルトの干草や洋ナシを思わせる甘さ、微かにケミカルな要素、ピートフレーバーと口内で広がりが感じられる。余韻はビターでスモーキー、スパイシーな刺激を伴う。
個人的にニッカらしさが光ると感じる1本。原酒比率はほぼ1:1(厳密には51%:49%)なのだろうが、グレーン由来のソフトでのっぺりとした質感から、若いモルト由来の風味が芽吹いてくる。キーモルトとしては余市のヘビーピート原酒とされているが、実際は輸入原酒と国産原酒、新樽やバーボン樽、リメード樽等様々な風味が合わさった複雑な様相。
おすすめは少量加水。若い原酒の要素や前面にある甘さが和らぎ、樽由来の果実味、奥にあるピート由来の要素が広がって、一体感のある味わいへと変化する。ただししゃばしゃばにもなりやすいため、1滴1滴とコントロールしていくことを推奨したい。

先日本業のほうで1泊2日の出張。せっかくだから地元のBARにでも…と考えていたものの、緊急の仕事、翌日の準備とホテルから出る隙がなく。気分だけでもと、近くのセブンに売っていた今年ロットのフロンティアを買ってきてチビチビやりながら翌日の準備を進めることに。
あれ?去年一般向けは終売になったんじゃなかったでしたっけ…めっちゃ普通に売ってるんですが、という疑問はさておき。これなら2000円そこそこで買えるなかで、味も本格的だし、余って持ち帰るにしても通常ボトルよりかさばらない(笑)。
ただ、そうして飲み始めてみるともう一つ疑問が。そう、なんか味変わった?
2024年の初期ロットはもっとピートフレーバーが荒々しく、若いけど面白い、こういうのでいいんだよって感じの味わいでした。サンプル瓶も飲みましたし、その後自分でも1本買って飲みました。
それが、今回飲んだ2025年ロットについてはピートフレーバーが1~2歩後ろに下がり、その分のっぺりとした甘さ、内陸系の原酒のニュアンスが強くなったように感じたのです。
ロット差といえばそこまでかもしれませんが。。。過去にも同じように味が変わったケースがあるのと、またニッカのスタンダードリリースは余市、宮城峡、竹鶴を中心に現在進行形で熟成感が増して、樽の比率等も変わってきているので、多少なり違いが出ているのかもしれません。

ちょうどいいので、改めてこのタイミングで2025年ロットの味わいについてと、私が知っている限りのフロンティアの開発経緯を紹介していきます。
フロンティアは、2022年に有効となった改正食品表示法による表記を意識したリリースです。
上の写真で
原材料名:モルト、グレーン
原料原産地名:英国製造、国内製造(モルトウイスキー)
として記載があります。この表記を特例を除いて義務づけたのが2017年の改正食品表示法の施行であり、猶予期間を経て、2022年に本格的に有効となった法律によるものです。
これによってさまざまな食品、酒類の表記に変化が生まれ、また国産ウイスキーに関しては某社を中心に大きな闇を生じさせているのですが、それはさておき。
本リリースの表記に関して分析すると、英国製造と国内製造のモルトウイスキー、グレーンウイスキーをブレンドした中で、最も比率が多いのがモルトウイスキーであり、またモルトウイスキーとグレーンウイスキーを合わせた全体では英国製造のウイスキーが一番比率が高いですよ、という表記になります。
良く勘違いされるのが国内製造のところに(モルトウイスキー)があるので、国産モルトウイスキーが100%と理解されるケースですが、ここが紛らわしいんですよね。英国製造、国内製造と左側に書かれているほうが全体の比率としては高く、またグレーンも含まれているという点に注意が必要です。

実はこれまでニッカウイスキー(アサヒビール)は、この法律の特例を用いることで、改正食品表示法によって求められる表記をラベルに記載してきませんでした。(上画像、セッション参照))
そんな中で、法律に合わせてモルトウイスキー表記ができるものを、今の市場の需要に合わせて2000円台でリリースしようとコンセプトを設定。
きっかけは「ありき」だった訳ですが、社内でプロジェクトが2021年に立ち上がり、苦節2年強、ブレンダーチームが何度も試作を繰り返して発売となった…と、原酒も価格も制限が厳しい中での開発は苦労の連続だった、という話を酒の席で聞いた記憶があります。
正直、これまでのニッカのリリースは、今あるブラックニッカや通常のシングルモルト余市、宮城峡にフィニッシュをかけて小手先のアレンジで話題を作っているような印象が否めませんでした。それも初期のころは目新しく、面白いと思うのですが、何度も何度も繰り返されると、そろそろ本腰入れて商品開発してくれませんかねと思ってしまうのは自然な流れ。
今回のフロンティアは、ニッカがやっとで1からブランドを立ち上げて新しいリリースを出してくれたというだけでなく。2000年代初頭、かつての竹鶴を思わせる価格帯で、当時同様に樽感を強めにしたリリースを持ってきた点に、竹鶴12年でウイスキーを飲み始めた自分としては感じ入るところがあるわけです。
発売直後から出荷調整なんてどうなってんねんと思いつつ、この味はそれこそ2015年のラインナップ大整理以前を思わせるクオリティだわと納得してしまう自分がいる。
無理して頑張りすぎちゃったかー、なんて理解してしまう愛好家の悲しい性。お願いなので、このまま各ブランドのクオリティを維持&向上させていってほしいものです。