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カテゴリ:★6

ミクターズ US-1 ストレートライウイスキー 42.4% シングルバレル

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MICHTER'S 
SINGLE BARREL US★1
KENTUCKY STRAIGHT RYE WHISKEY 
700ml 42.4% 

評価:★★★★★★(5-6)

香り:メローで赤みがかった果実香。洋梨のような甘みもあり、合わせてスパイシーでハーバルなアクセント、微かにゴム。溶剤的な要素もあるが、基本的にはメローな甘さが香り立つ。

味:マイルドで緩さのある口当たり。序盤は度数相応に柔らかく、ややボディは軽め。キャラメル系の甘みと熟成たチェリー、紅茶のタンニン。じわじわとウッディでビターな質感、軽い刺激が口内に広がる。

その日の体調や気温、あるいは飲み合わせによって、悪い部分が目立つ時と良い部分を拾う時があり、その複雑さが面白いウイスキーである。ライウイスキー区分らしくハーバルでスパイシー、ドライな個性に、ミクターズの製法由来かメローで赤みがかった果実香とマイルドな口当たり、熟成感が魅力。
なお、飲み方は少々贅沢だがハイボールか、カクテルベースとして使用するとノーマルなライウイスキーとは一味違う1杯を楽しめる。家飲み用お手軽カクテルのオススメは、コーラと1:1で割ったコークライ!

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先日紹介した、新生ミクターズブランドのライウイスキーが、今回レビューする1本。バーボンが美味しかったので、ライも続いてトライです。
ちなみに、ミクターズブランドの歴史や、現代の製法、こだわり等については、前回のミクターズ・US1・バーボンウイスキーのレビュー記事にまとめてあり、このライウイスキーも基本的なところは同じであるため詳細説明は省きます。

ミクターズUS1のポイントとしては、製法や原料等を指定した形で、アーリータイムズ(と噂される)蒸留所に外注し、その後自社で準備した良質な樽、熟成庫(ヒートサイクルウェアハウス)で4年以上熟成させた原酒を製品化したものが、このブランドということになります。※現在は5~7年の原酒がリリースされているとの情報もアリ。
ただしこれだけだと誤解されそうなので、ミクターズの名誉のためにあえて記載すると、アーリータイムズは有名な低価格帯バーボンの一つですが、噂や状況証拠がなければ結びつく事はないと言えるほど、ミクターズのクオリティは別格。上質なアメリカンウイスキーであり、それだけ独自の工夫が大きな違いをもたらしているのだと思われます。


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(※ミクターズ社が所有する、ヒートサイクルウェアハウスの一つ。温暖な環境を維持することで、通常より速く熟成が進むと考えられている。)

一方で、ミクターズのライウイスキーについてはいくつか不明点があり、バーボンのほうはスモールバッチなのに、なぜかライはシングルバレルだったり。あとは原料比率、マッシュビルも非公開だったり。
リリース側はこれらに関して情報を公開しておらず、また、関連が噂されているアーリータイムズも、ライウイスキーをリリースしていないことから予想が出来ません(US★1バーボンはアーリータイムズとマッシュビルが同じ)。

海外の愛好家サイトでは、ライが55-60%くらいではないかという予想。個人的にはもう少し高いのではとも感じますが、視点を変えて調べてみると、同蒸留所で2018年まで製造されていたオールドフォレスターが、ライウイスキーをリリースしているんですよね。マッシュビルはライ65%、モルト20%、コーン15%とのこと。同じマッシュビルである保証はありませんが、華やかさがありながら、独特の深みや複雑さがあるのはひょっとしてモルト比率の多さも関連しているってことか…?

ライが多いとドライでスパイシーさが強くなりがちなところ、その個性はしっかりと感じつつ樽由来のメローな甘さと熟成感、そして加水調整で、マイルドで飲みやすく仕上げられているのが、このミクターズ・ライUS★1の特徴でもあります。

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さて、ライウイスキーはカクテルのツールとしても注目されており、様々な飲み方が提案されてきています。王道のカクテル、マンハッタンやオールドファッションは勿論、最近ではコーヒーとの組み合わせも注目されていて、調べてみると様々なレシピがヒットします。
ハーバルでスパイシーな癖があり、香りが強い一方でボディが少し軽くドライになりがちなところを、カクテルで加えられるリキュールや果汁等が補って、パズルのピースのように相互補完し合う組み合わせが期待できるのでしょう。

ですが、BARはともかく家でカクテルとなると、リキュールやら道具やら、色々準備するものが多く、手軽にオススメとも言えません。。。
そこで今回、1ステップで作れる何か(つまり割るだけで良い組み合わせは無いか)を、色々試してみました。牛乳、オレンジジュース、コーヒー…様々試した中で、ある意味何の捻りもなく、ナンバーワンをかっさらったのが、コカ・コーラ。それも、通常のコークハイのような作り方ではなく、写真のようにライウイスキー1に対してコーラ1,さながらハーフロックを作る要領で混ぜたものになります。

これだとベースが濃くなるため、安価なウイスキーではアルコール感や未熟感が出て美味しくはなりません。

しかし、先に書いたようにミクターズのライウイスキーはマイルドで熟成感がしっかりある中に、ライウイスキーの香味も強く感じられる上質なライウイスキーです。多少濃く作っても違和感なく、むしろライのフレーバーを残しつつ、コーラのフレーバーが混ざり合って、いやこれ美味いやないかと。
名付けてコークハイならぬ、コークライです!
※既にこういうレシピがあったら申し訳ありません。

あまりに自然にすいすい飲めてしまうので、20%以上の度数があるモノと言うことを忘れてしまいそうになります。おおよそレディーに進める酒じゃないですが、レディーキラーの部類と言えるかも。
そして、どんどん何か違う組み合わせになっていくようで心苦しくありますが、ポテトチップスなどの揚げ菓子との相性が素晴らしくいい…ここはアメリカらしくプリングルス。背徳感というスパイスが加わって、堪らない組み合わせです。

普通のバーボンでも充分美味しくなりますが、ライのフレーバーがアクセントになったカクテル(というほど崇高なものではない)スタイルでも、是非試してみてください。
しかし本当に、飲みすぎ注意ですよ!

963 ミズナラウッドリザーブ 21年 福島県南酒販 46%

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963
FINE BLENDED WHISKY 
MIZUNARA WOOD RESERVE 
Released in 2021 
700ml 46% 

評価:★★★★★★(6)

香り:様々な樽香、重層的なウッディネスがグラスの中から立ち上がってくる。トップノートはキャラメルのような甘みとチャーオーク、サルファリーさ。スワリングしていると、干し柿、林檎のキャラメル煮、蒸かした栗、バニラ、いくつかのスパイス。複数の樽を経たことによる樽感の重なりが、この複雑さに繋がっている。

味:味はまろやかで熟成感があり、まずはシェリー樽を思わせる色濃い甘みとドライフルーツの酸味。そこに煮だした紅茶やビターなフレーバー、微かにニッキのようなスパイス、樹液っぽさと腐葉土、奥には古酒感を伴う。余韻は焦げ感のあるビターなウッディネスが強く主張し、複数の樽香が鼻腔に抜ける。

ベースとなったブレンドの原酒構成が、シェリー樽熟成タイプとバーボン樽熟成タイプの輸入ウイスキー。それを国内でバーボン樽に入れてマリッジし、その後さらにミズナラ樽の新樽(チャー済み)でフィニッシュをかけた…といったところだろうか。長期熟成スコッチ備わるフレーバー、国内で追加熟成させたことによる強い樽感、それをさらに上塗りするミズナラエキスという、一見してカオスのように見えて、熟成感と加水が橋渡しとなり、重層的な仕上がりとして楽しめるレベルにまとまっている。
ロックにするとこれらのフレーバーが馴染み、余韻の苦みも落ち着く。バランスがとれて口の中に入ってくる。

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先日福島県南酒販さんからリリースされた、963ブレンデッドウイスキーの限定商品。同ブランドでミズナラと言えば、約3年前に17年のブレンデッドモルトがリリース。これは愛好家が求めているミズナラフレーバーを疑似的に再現していた、今後のミズナラ樽の使い方に新しい可能性を感じさせる1本であったところ。
今回はその空き樽を使って仕込んでいたものかと思いきや、通常リリースしている21年を新樽のミズナラ樽で2年間追加熟成したものだそうです。

ミズナラは他の樽材と同様、あるいはそれ以上にエキスが出やすい樽材だと言われています。なので長期熟成に用いるには、新樽ではなく何度か使い古したものが良いと、以前S社の方から伺ったことがあります。
なので今回のような新樽はフィニッシュに用いて少し落ち着かせるのが、定石と言える使い方の一つであるわけですが、それでも2年間、流石に色が濃いですね。キャラメルのような感じの色合いで、味わいもかなり濃厚に樹液を連想させるフレーバーがあります。

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(※2017~2018年にリリースされた963ブレンデッドモルト17年ミズナラウッドフィニッシュ。こちらはバーボン樽熟成の内陸モルトが主体であり、オーキーな華やかさとフルーティーさにミズナラ樽のスパイシーさが混じることで、S社からリリースされるミズナラ系の香味に似た仕上がりとなっていた。)

他方で、このウイスキーが単にエキスが濃いだけで終わらないのは、ベースのブレンドの個性にあります。
963ブレンデッドウイスキーは、スコットランドから輸入した原酒を、笹の川酒造の熟成庫で追加熟成して、それをブレンドすることで作られています。
今回は21年オーバーという長期熟成のバルクが用いられているわけですが、おそらく既に混ぜられているブレンデッドウイスキーバルクでシェリー樽タイプのものに、モルトウイスキーをブレンドしているのではないかと推察します。

香味の中に感じられるシェリー樽のフレーバーが、グレーン、モルト、どちらにも影響しているように感じられること。21年オーバーのバルクグレーン単体なら、もっとメローでバーボン系のフレーバーが強くなるのにそれが無い。一方で古酒感と表現されるような、オールドブレンデッドウイスキーのシェリー系銘柄で感じられるカラメル系のフレーバーが、全体の中で複雑さと奥行きに繋がっているのです。

日本とスコットランド、異なる環境がもたらす原酒への影響を活かして作られるブレンドは、少なくともスコットランド単独では作り得ない物だと感じています。
二つの地域が育てるウイスキー、それを活かすブレンド技術。日本側はまだ荒削りで原酒も足りませんが、時間が経って原酒が育ち、ノウハウが蓄積することで今後新しいジャンルとして確立していくことを期待したい。そんなことも感じたウイスキーでした。

ドラムラッド ラフコースト batch#1 エイジオブイノセンス 54.5%

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DRAMLAD 
The Age of Innocence 
Rouch Coast 
Islay Malt Whisky 
Cask type Red wine cask finish 
Bottled 2021 
Batch #1 
700ml 54.5% 

評価:★★★★★★(6)

香り:ピーティーでBBQのような強いスモーキーさと甘さの混じる香り立ち。やや根菜的なニュアンスと土っぽさ。甘酸っぱい果肉やソースを思わせるアロマもある。

味:口当たりはピーティーで粘性のある質感と、燻してほろ苦い麦芽風味。ピリッとした刺激もありつつ、甘酸っぱく赤みがかったニュアンスがアクセントに。余韻はスモーキーでドライ、舌の上にヨードを伴う粘性とウッディネス、ピートの土っぽさが残る。

主体は燻した麦芽とピートのリッチな味わい。赤ワイン樽後熟による甘酸っぱさ、べたつかない程度に粘度のある質感が、若さをカバーして程よいアクセントになっている。蒸留所は奥にある根菜っぽさやピートフレーバーの系統からラ〇ヴーリンと予想。
ハイボールにするとソルティーなフレーバーが引き立ち、ソーダの気泡と共にパチパチとピートスモークが燻製黒胡椒のように口の中を刺激していく。確かにこれはハイボールに合う1本。


ドラムラッドのセカンドリリース。Twitterのほうでは簡易レビューをUPしていましたが、記事にしていなかったのでこちらにも。
同社の3種のブランドラインナップの中では、エントリーグレードに位置付けられているエイジオブイノセンスの最初の1本。このグレードでは、若くても個性がわかりやすいものや、フィニッシュ等の面白さ、ウイスキーの魅力を気軽に楽しめるウイスキーをコンセプとしたシリーズです。

今回発売されたラフコーストは、今後シリーズ化していくという、アイラシングルモルトの1本。
テイスティングしてみると、仕上がりは悪くなく、そして確かに面白い。カスクフィニッシュの効き具合がちょうど良い塩梅で、全体のバランスに寄与しているだけでなく、蒸溜所のハウススタイルと思しき個性も感じられるのがポイントだと感じます。
若いモルトでもピーティーなものは、ピートにカバーされてある程度飲める仕上がりになります。しかしワインカスクはチャレンジ要素です。過去別ボトラーズから同じようなスペックのリリースは珍しくないものの、個人的にあんまりヒットしたことが無かった組み合わせだったので、今回も多少警戒していたわけです。

特にハイボールに合うというのは目から鱗でしたね。これが今回のリリースで一番面白いと感じたところと言えます。
ヤングアイラがハイボールに合うのは、別に今さら感のある話ですが、ワインカスクでハイボールというのは意外。公式コメントでは「真夏の深夜にゆっくり愉しむハイボール」とありましたが、実際に飲んでみると、ゆっくりどころかゴクゴクと秒で溶けるハイボールです(笑)。

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(シリーズタイトルとなっているRouch Coast(ラフコースト)は、”荒れる海岸”を意味する。写真は個人的にこのボトルの中身だと考えている蒸留所を、少し離れた先にある岬から撮影したもの。海は荒れてないけど…イメージして補完してください。)

ドラムラッドのリリースは、これまでのインポーターにはあまり見られなかった、選び手とリリースイメージを明確にしていることが、ブランド価値の一つとなっています。
選定者が信頼できるプロというのが、ここで生きてくるのか。あるいはこの人が大丈夫だと言って選んだんだから飲んでみようと思えるのか。確かに今回のリリースは、ドラムラッドじゃなかったら自分は飲まなかったでしょうし、公式解説あった通り面白い仕上がりでした。

そのドラムラッドさん、次のリリースは同じエイジオブイノセンスからリンクウッド2010-2021が9月15日に発売だそうです。
中身はホグスヘッド樽での熟成により、若いモルトながら甘く華やかに仕上がっていると聞いています。確かに、リンクウッドの酒質にホグスヘッドなら、少々ドライな感じでもオーキーなフレーバーに後押しされて、万人に愛されるスペイサイド地域らしさのあるリリースとなりそうですね。
コロナ禍故に中々飲みに行くことは出来ませんが、次回作も楽しみにしています。
参照:https://www.bar-times.com/contents/93040/

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ミクターズ US1 スモールバッチ バーボンウイスキー 45.7%

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MICHTER’S 
KENTUCKY STRAIGHT BOURBON WHISKEY 
SMALL BATCH 
US★1 
750ml 45.7% 

評価:★★★★★★(6)

香り:メローでスパイシーな香り立ち。ウッディで焦げ目のついたトーストを思わせる香ばしさ、キャラメル系の甘さの中に、オレンジや熟したプラムを思わせる果実香も混ざり、まさにバーボンらしいアロマ。

味:マイルドで濃厚、香り同様にメローな甘みとコク、オレンジを思わせる甘酸っぱさのアクセント。合わせて微かにイーストのような含み香が鼻腔に抜ける。余韻にかけてスパイシーでウッディ、徐々にタンニンが口内に仕込みんでじんわりとした刺激を伴い長く続く。

嫌味の少ない新樽のメローな甘さ、粘性のあるリッチなフレーバーに、適度な主張の残った口当たり。ロックにしても氷を受けてしっかり伸びてくれる。個人的に、バーボンらしいバーボンだと言える味わいの一つであり、安心感すらある。
前情報のない状態で飲んだ際、熟成は8年程度と感じたが、実際は5年程度とのこと。樽詰め度数や樽そのものの製法等、現在のミクターズブランド独自の工夫が効いているのだろう。近年のバーボンは樽感がドライ、あるいはえぐみが強く出ているものが散見される中で、この完成度の高さは得難い。ノンエイジ仕様と侮るなかれ、中身は大手上位グレード同等のクオリティを備えている。

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「ミクターズ」というブランド名に反応してしまう方は、かなりウイスキー歴の長い方か、バーボン好きである可能性が高い。理由は後述しますが、そうでない方には、このバーボンは様々ある銘柄の一つ、ひょっとすると酒屋の棚の風景の一部としか映っていないのではないでしょうか。
ですが、このミクターズはバーボンというお酒の歴史や世界観を詰め込んだような、味わいだけでなく情報としても厚みのある一本なのです。

最近、家飲み頻度が増えたことで、該当するバーボンを飲みながら銘柄の由来や歴史を紐解くことにハマっています。記事にしたところでは、フォアローゼズのブランドエピソードの矛盾、テンプルトンライの集団訴訟とバーボン業界の転換点…スコッチとは違う性質のバックストーリーがあり、また日本に伝わっている情報も少ないので、飲みながら調べて考察するのが楽しいのです。
今日はこのミクターズについて、現在と昔、2つの視点に整理して情報をまとめていきます。

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※1:ミクターズ・シャイヴリー蒸溜所。外観は蒸溜所というよりオフィスのよう。

■現在のミクターズ
現在、ミクターズはケンタッキー州ルイビルにある、Michter’s Shively (ミクターズ・シャイヴリー)蒸溜所で造られています。この蒸溜所の正式な稼働開始は2015年からで、2019年には博物館やビジターセンターを兼ねたもう一つの蒸溜所:フォートネルソンが、同じくルイビルに完成するなど、ウイスキー需要増を追い風にして順調に事業を拡大しています。

今回テイスティングしたUS1バーボンウイスキーのマッシュビルは、コーン79%、ライ11%、モルト10%。特筆するレシピではないですが、しいて言えばアーリータイムズと同じである点が、後述する噂話を裏付けているように感じます。
それよりも注目すべき点は、ミクターズは「コスト度外視」を掲げ、ウイスキーの製造に様々なアイディアを採用していることにあります。
代表的なものをざっくりまとめると

・熟成に用いる樽は、一度トーストして樽材内部を加熱した後、焦げ目をつけるチャーを行う2段階作業。
→樽由来のフレーバーが上質に、豊かになる。
・業界基準よりも低い度数(103 proof)での樽詰め。
→熟成後の加水調整を最小限にとどめるので、香味の複雑さが増す。
・熟成庫にヒートサイクルを入れ、温暖な状況を維持する。
→熟成スピードの上昇。

以上の通り。それぞれコストが上がる要因となりますが、→に記載したように、香味に直結する効果が期待できます。
これら以外にも、樽の乾燥期間について18~36カ月と、通常のバーボンに比べて長期間の乾燥が行われたものを使用する。原料に最高級の穀物を使っているなどもありますが、程度が不明瞭だったため、可能な限り上質なものを使用しているくらいの認識にとどめます。
しかし結果として、5年程度熟成のバーボンでありながらテイスティングした印象は、一般的な8年熟成品以上の濃厚さ、完成度があります。独自の工夫が香味を高めているのだと、コスト度外視の方針は納得出来るものでした。

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※2:ミシガン州にあるミクターズ蒸溜所のヒートサイクルウェアハウス。同社は複数の貯蔵庫を複数地域に持っており、原酒保有量は175000バレルにもなると言われている。


■旧ミクターズ
ミクターズのルーツは、ラベルにも書かれた1753年、アメリカではじめてウイスキーを製造した公認蒸溜所であること。独立戦争時にも飲まれていたウイスキーだと言われています。
かつてのミクターズ蒸溜所は現在のルイビルではなくペンシルベニアにあり、1990年に経営不振で閉鎖されるまで(蒸溜は1989年まで)ウイスキーを生産していました。その後、この旧ミクターズ蒸溜所(別名:ボンバーガー蒸溜所)の1970年代蒸留の原酒の一部が、長期熟成を経てA.H.ハーシュとしてリリースされることになるのですが、これをきっかけとして同銘柄、同蒸溜所は伝説的とも言える評価を受けていくことになります。

一方1997年、放棄されていたミクターズの商標権を、チャタムインポート社が取得。2000年からミクターズ名義のウイスキーのリリースが始まります。
当時の同社は蒸溜所を持っておらず、UD、ヘブンヒル、オールドフォレスター、ウィレット等、多くの蒸溜所から原酒を調達して、単一またはブレンドしたものをリリースしていました。また、中でもブラウンフォーマングループとの結びつきが強く、2015年に発売を開始したUS1は、アーリータイムズ蒸溜所の原酒に独自の工夫を施して熟成させたものだと、”うわさ”されています。

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※3:旧ミクターズ蒸溜所(ボンバーガー蒸溜所)外観

独自の蒸溜所を持たず、銘柄の商標権をもって買い付けた原酒をリリースするスタイルは、バーボンウイスキー業界では珍しいことではありません。
が、それを伝説的ブランドに成長していたミクターズでやったこと。また、旧ミクターズ蒸溜所の原酒と、復活したミクターズブランドの原酒は、例えば同じマッシュビルである等の関連性が無く、全く別物であったことから、愛好家の反発を受けたであろうことは想像に難くありません。

それでも、ブランドがこうして今日に至るまで継続し、蒸溜所も操業&拡張路線であるのは、リリースされた中身が良質であり、徐々にヘイトが落ち着いていったためであるのだとか。
バーボン版軽井沢、A.H.ハーシュが伝説的でカルト的な人気を持つこともあり、今のミクターズは本当のミクターズではないという火種もあるはありますが、やはり味というのは重要なファクターなんだなと感じさせられるエピソードです。


■再び現在のミクターズ
さて、ここで再び話を現在のミクターズに戻します。
今回テイスティングしたUS1バーボンウイスキーは、単に5年程度熟成のバーボンとしてだけ見ればやや割高であると言えますが、クオリティは上述の通りです。また、ルーツとしてのエピソードを知った上で味わうと、かつてのミクターズとの繋がりはないものの、その名前の上に胡坐をかくような造りはしていないと感じます。

ちなみにミクターズ・シャイヴリー蒸溜所の操業は2015年からであり、熟成年数を考えると、US1は新たに設立した蒸溜所の原酒への代替も可能なタイミングが来ています。
この点については、調べても原酒が置き換わったという話はなく。同社はどうやらプレミアムグレードの10年を、2026年頃を目安に置き換えることを優先し、原酒を確保しているようです。

ミクターズのブランドは、日本に輸入されてないものを含めるとかなりの数があり、一度に入れ替えとはならないでしょう。
ボトリング設備を有する蒸溜所を、ペンシルベニアではなくルイビルのブラウンフォーマン蒸溜所(アーリータイムズ蒸溜所)のすぐ近所に建設したことも、長期的に見て自社蒸留原酒と外注した原酒でのハイブリットを継続することを想定しているのかもしれません。

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※4 現在のミクターズウイスキーの10年グレード。原酒は不明だが、ヘブンヒル、オールドフォレスター、ユナイテッドディスティラリーが含まれていると噂されている。

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※5 ミクターズ・シャイヴリー蒸溜所のポットスチル。同蒸溜所は一般に公開されていないため情報が乏しいが、こちらの記事に計画と内装の情報が詳しくまとめられている。

なお、ミクターズのラベルにはポットスチルが書かれており、新しい蒸溜所においてもシンボルとなっています。
現在原酒を調達しているメーカーが噂通りだとすると、蒸留機の形状から大きく変わっていくことは明らかです。結果、現在の香味が維持されるのか、全く異なるスタイルが生まれるのか、それはまだ様子を見ていくしかありません。

しかしリリースに用いられた独自の工夫が産み出す結果を味わう限り、自分には現在のミクターズの方向性が間違っているとは思えないのです。その工夫は、今後のリリースにも使われていくわけですから。
現在のものも良いですが、未来のミクターズは、きっとさらに良いウイスキーになるのではないかと期待しつつ、今日の記事の結びとします。


画像引用:
※1、※4:Facebook ミクターズ公式アカウント
※2:https://thebourbonculture.com/whiskey-info/michters-distillery-past-present-and-future/
※3:https://en.wikipedia.org/wiki/Bomberger%27s_Distillery
※5:https://www.distillerytrail.com/blog/michters-distillery-joe-magliocco-talks-doubling-capacity-1000000-gallons/

執筆時参照情報:
・https://thebourbonculture.com/whiskey-info/michters-distillery-past-present-and-future/

・http://michters.com/
・https://www.distillerytrail.com/blog/michters-distillery-joe-magliocco-talks-doubling-capacity-1000000-gallons/
・https://www.distillerytrail.com/blog/michters-distillery-announces-opening-date-for-whiskey-row-fort-nelson-distillery/

厚岸蒸溜所 処暑

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AKKESHI 
SHOSHO 
Blended Whisky 
A Fusion of the World Whiskies 
Bottled 2021 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:フレッシュな主張のあるピーティーさ、香ばしいモルト由来のアロマの中に、シェリー樽を思わせる黒糖系の甘みとウッディネスがアクセントとなって感じられる。微かに酸や赤系の要素があり、使われた樽の個性を香りから推察できる。若さの中に複数の樽感、複雑さのあるアロマ。

味: 香りと異なり、味わいは麦芽由来の厚みのある甘みがスモーキーフレーバーを伴って広がる。合わせてオーク由来のバニラやシェリー樽のキャラメルが、塩気と若い原酒の酸味を伴う。
麦芽風味とピートフレーバーを軸に、いくつかの樽の要素を感じられる。余韻は軽くスパイシーでほろ苦く、ほのかに椎茸っぽさを伴うウッディネスが、じんわりと口内に刺激を伴って長く続く。

原酒の熟成年数は3~4年。スモーキーフレーバーはミディアムで20PPM程度。ブレンド比率はモルト6:グレーン4あたりのモルティーな構成と思われる。モルトはバーボン樽熟成のピーテッド原酒とノンピート原酒を軸に、シェリー樽、ワイン樽原酒を繋ぎとして加えたレシピと予想。前作までのブレンドに比べてバランスがとれているだけでなく、ピーティーなフレーバーの中にハウススタイルと言えるコクのある甘みや香ばしさが楽しめる。

オススメの飲み方としてはハイボール。ロックのように温度が変化していくレシピよりは、冷やすなら冷やす、炭酸も強めをきっちり加えて仕上げたほうが伸びる印象。ウイスキーとしてだけでなく、蒸留所全体の成長を感じる1本である。

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8月下旬にリリースされた、厚岸蒸留所ウイスキー・厚岸24節気シリーズの第4弾。まさに「処暑の候」と北国からの便り(ボトル)を運んできたのか、東京も急に涼しくなって、あー夏が終わるなぁとセンチな気持ちになりながらテイスティングしています。

厚岸蒸留所は、シングルモルトとブレンドを交互にリリースするスタイルで、ブレンドとしては第2弾、3月にリリースされた「雨水」の次と言うことになります。
双方に共通する厚岸蒸留所のこだわりは、可能な限り自家製の原酒を用いるということ。連続式蒸留器を持たない厚岸蒸留所はグレーン原酒を作れませんが(ポットスチルでもやれますが、現実的ではない)、スピリッツで海外からグレーンを輸入し、それを厚岸蒸留所で3年以上熟成させたグレーンを使っています。

その為、ラベルの「A Fusion of the World Whiskies」表記は厚岸熟成グレーンに由来しているもので、4月に施行されたジャパニーズウイスキーの基準を鑑み、本リリースから追記されたものと考えられます。
ちなみに一般的にクラフト蒸留所でブレンデッドウイスキーを作る場合は、熟成したグレーンをバルクとして輸入して活用しています。さながらプロ野球で言うところの「助っ人」。ですが厚岸蒸留所の通常リリースは、あえてそれをせず、自前で原酒を育てるところにこだわりがあります。

これまでの記事でも度々触れていますが、こうした取り組みの先には、同蒸留所の目指すウイスキー、厚岸オールスターがあるものと思われます。モルトウイスキーは麦芽、ピート、どちらも厚岸で調達してモルティングし、蒸留は勿論、厚岸で採れた木材を使った樽で熟成させる。
既にモルティング設備については建設中で、ピートも試験的な採掘が行われている訳ですが、
その次はグレーンも北海道産のトウモロコシや小麦を用いて自社で製造し、まさにオール北海道産、オール厚岸産のブレンドウイスキーを目指しているのではないかと。そしてそのマイルストーンとして、可能な限り厚岸産をそろえてブレンドを作っているのではないかと予想してしまうのです。

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さて、この厚岸「処暑」ですが、厚岸ウイスキーの前作・芒種ではっきりと感じられた特徴である麦芽のコクのある甘み、風味の柔らかさが、今回のブレンドでも感じられます。
このフレーバーは、元々厚岸蒸留所の個性として紹介されており、私自身もいくつかのサンプルで共通するニュアンスを感じたことはありました。ですが、過去リリースされた商品からは、まだ原酒が若すぎたことや樽感の強さで、感じにくくなっていた部分もあったと言えます。

今作では、まず上述の厚岸熟成グレーンの熟成年数が約1年程度伸びたことで、全体のバランスが向上したというのが一つ。
レシピとしては、前作「芒種」がバーボン樽熟成の原酒の個性を前面に出したものであったところ。同様にバーボン樽熟成のキャラクターを中心に、アクセントとしてシェリー樽、ワイン樽熟成原酒を用いていることから、バランスの向上と共に、酒質由来の風味が隠されることなく感じられるという点が最大の特徴だと感じられました。

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(今年リリースされた雨水と処暑を飲み比べ。右が雨水、左が処暑。)

その違いは雨水と飲み比べることで顕著に感じられます。どちらのブレンドも、バーボン樽、シェリー樽、ワイン樽で熟成された原酒を主に使っており、グレーンも同じものが使われています。ピートフレーバーもまた、やはり同じくらいの強さだと感じます。
大きな違いは、先に触れた通りグレーンの熟成と、雨水はシェリー樽やワイン樽が主な香味の一つとして前面に出ているのに対し、処暑は香味の繋ぎ、抑えめにしているという点。色合いを見ても、樽の比率の違いが一目瞭然です。

雨水の樽構成を予想すると、おそらく3種ともほぼ同じくらいの量が使われていると思われます。他方で、処暑についてはグレーン、シェリー、ワインで6:2:2、あるいは7:2:1くらいの比率ではないかと予想。樽由来のフレーバーが強い雨水はロックで、処暑はハイボールが合うという傾向もあります。
どちらも若いなりに、蒸溜所の個性、目指すところ、そしてブレンダーの工夫を感じられる仕上がりですが、あえて優劣をつけるなら、処暑のほうがレベルが上がっているようにも感じられるのです

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厚岸蒸溜所のウイスキーは日本のみならず世界的に注目されており、リリースされるたびに入手困難となる状況です。ただし中身については原酒の制限から蒸溜所同様にまだ発展途上であり、そのため24節気シリーズもリリース毎に完成度が上がり、美味しくなってきています。

禾乃登(こくものすなわちみのる)。
9月2日~9月6日ごろ、まさに今。24節気の処暑の後半に該当する季節です。
裏ラベルに書かれている通り、北海道の大麦が収穫のときを迎えており、すなわちそれは厚岸蒸留所で現在仕込みが行われている、北海道産麦芽によるウイスキーへと繋がります。
閉鎖蒸留所とは異なり、次がある。そしてそれは蒸留所の目指す未来の形から、香味は粗削りでも、ワクワクさせてくれるものです。購入できなかった方も、まずはBARや小分けで販売しているショップを活用しつつ、その次を楽しみに待っていくのが良いのではないかと思います。

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※2021年の厚岸産大麦の収穫風景(左)と、採掘中の厚岸町内のピート(右)。将来の厚岸ウイスキーがどうなるのか、様々な取り組みの結びつく先に期待したい。写真引用:県展実業株式会社 厚岸蒸溜所 Facebook https://www.facebook.com/akkeshi.distillery

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