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テンプルトン ライ バレルストレングス 2020年リリース 56.55%

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TEMPLETON RYE 
BARREL STRENGTH 
LIMITED BOTTLED 2020 
750ml 56.55% 

評価:★★★★★★

香り:スパイシーでパワフル、チャーオーク特有のメープルシロップと、微かに溶剤や焦げた香りを含んだ色濃い甘さ。そこにシナモン、ジャスミン、ライウイスキーのハーバルな個性。オレンジ系のフレーバーティーのような、紅茶葉の渋みと人工的なニュアンスを伴う。

味:スムーズでメローな口当たりから、ハーバルな含み香や林檎を思わせる甘みの後で、甘酸っぱさ、徐々にハイトーンでスパイシーな刺激が口内に広がる。ライウイスキーらしいフレーバーに、度数相応の強さと粗さのある味わいと言える。余韻はスパイシーでほのかにビター。ウッディなタンニンが染み込むように長く続く。

完全に通好み。原料比率的にも香味的にも、一般的なバーボンウイスキーの中に含まれているライのニュアンスを濃縮した構成で、調整されていない香味故に少々アンバランスにも感じられる。ライウイスキーの個性とは何かを勉強するための1本としても良いだろう。
加水すると刺激はやわらぎ、ハーバルなアロマがふわりと広がるが、ボディはかなり軽くなる。個人的にはロックよりハイボールがお薦め。主張しすぎないチャーオークのフレーバーに、軽やかな口当たり。程よく残るライウイスキーの個性で度数を感じず、ぐいぐい飲めてしまう。カクテルベースとしても面白い。ただし元の度数は56%であるため、ストロング系よろしく思考停止に陥りやすいので注意。

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現代のバーボンウイスキーの原料構成は、基本的に大半がコーンであり、10~20%程度のライ麦、5~10%程度が大麦で、銘柄によっては小麦が一部使われるという構成が一般的です。
一方で、ライウイスキーは51%以上のライ麦から構成され、かつてはペンシルベニア州等を中心に造られていたものが、バーボンのカクテル需要が増えたことで徐々に淘汰されていったそうです。

しかし、昨今ライウイスキーを再評価する動きが業界・市場にあり、様々な銘柄がリリースされてきています。このテンプルトンライも同様で、実は2006年に誕生した比較的新しいブランドです。
マッシュビルはライ麦95%、大麦5%。大麦は糖化酵素を利用するためと割り切って考えれば、ほぼオールライウイスキー。昔の言葉を使えば、Pure Rye Whiskyということになるでしょうか。スタンダード品は4年熟成、度数40%と、万人向けとも言える仕様で販売されていますが、2018年から今回テイスティングしたバレルストレングスのハイプルーフ仕様が限定リリースされています。

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(テンプルトンライと言えば、ずんぐりとした形状のボトルデザインで知られているが、本国ではボトルデザインの変更等が発表されている。また、10年熟成品のリリースも発表されているが…)

バレルストレングスの熟成年数は非公開ですが、特段長期熟成という感じはなく、おそらくスタンダード品とほぼ同じ、5年前後というところでしょうか。ライ麦に由来する風味は、スタンダードの40%仕様のボトルとは比べ物にならず、力強くスパイシー、独特の癖のある風味を楽しむことが出来ます。
この個性は好みが分かれるところと思いますが、個人的な好みとしては現代のバーボンよろしく樽感が足りないので、ウイスキーエレメンツをエントリー。カクテルベース、ハイボールにするならそのままですが、ストレートやロックで楽しむなら、古き良き時代を思わせる濃厚さが琴線に響きます。

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さて、誤解してほしくないので前置きすると、テンプルトンライは好きな銘柄の一つです。今回のバレルストレングスも、個性的ですが充分好みの範囲です。
ただし、この銘柄を紹介するにあたっては、避けて通れないエピソードがあり、それを以下にまとめていきます。
日本のウイスキーメーカー、あるいはスコッチウイスキーにあっても対岸の火事ではない話です。

テンプルトンライのブランドを保有しているのは、アイオワ州にあるテンプルトン蒸溜所です。元々、同ウイスキーは禁酒法時代に同州の農民が造っていたもので、確かにアルカポネが愛飲していたというエピソードもあるようです。
一見すると、長い歴史があるように見える同ブランドですが、
・現在販売されているそれは2006年に復活した新しいブランドであること。
・マッシュビル等、禁酒法時代のものを再現しているわけではないこと。
という事実があります。

また、話をややこしくするのが、同蒸留所が蒸留プロセスを開始したのは2018年頃からであり、現在インディアナ州のMGP・ローレンスバーグ蒸溜所で蒸留・熟成された原酒を、アイオワ州の工場に運び、加水、ボトリングを行う生産プロセスが取られているということです。
つまり、現在販売されているテンプルトンライは、有体に言えば、単にライ比率が極端に高いウイスキー、ということになるのです。

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(2000年代のテンプルトン工場(左※1)、2017年に発表された蒸溜所拡張計画の完成予想図(右※2)。2000年代時点で蒸留設備はなく、拡張計画では手前側の建屋がビジターセンターとなり、奥に新たに蒸留棟と熟成庫が新設された。)

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(2018年から稼働を開始したテンプルトン蒸溜所のスチル。MGPで使われているコラム式連続式蒸留機ではなく、ポットスチルを用いた蒸溜が行われている。※3)

我々の身の回りでも見られる製法、というか商法ですね。
ところが、流石は訴訟大国アメリカ。当時ラベルに書かれていた内容である”アイオワ州で生産”、”禁酒法時代のレシピに基づいて”という実態との乖離から、消費者に誤認を与える虚偽広告として集団訴訟に発展したのです。結果、PRが行われていた2006年から2015年までの間にテンプルトンライを購入した消費者1人あたりに、3ドルから最大36ドルの補償が行われることで和解しています。※参照記事

大規模な蒸溜所に特定仕様の原酒をオーダーし、蒸溜設備を持たない様々なメーカーが商品をリリースする方法は、アメリカンウイスキー業界では割と当たり前だったりします。大型の連続式蒸留機の稼働コストはバカにならないので、効率主義というだけでは片づけられませんが。。。ブランドだけ売買されて、蒸溜所が今と昔で違うなんてのも日常茶飯事です。
とはいえ、確かにテンプルトンライの販売広告は、悪乗りしすぎた結果の一つということなのかもしれません。戦略とはいえ、過ぎたるは及ばざるが如し、何事にも超えてはならない一線はあります。

この訴訟をきっかけに、類似のケースとみられるブランドについての集団訴訟も計画されるなど、一部愛好家からはバカバカしいとまで言われる状況であるものの、アメリカンウイスキーのあり方について業界に一石を投じたのは事実です。ラベルやPR方法の見直しに加え、昨今のウイスキーブームを受けて自社で蒸留を開始するメーカーも増えてきている状況には、少なからずテンプルトンライ集団訴訟が関係していると考えられます。

ではこれがバーボン含め、アメリカンウイスキー全体の品質を上げることに繋がるのかと言われたら、それは「様子を見てみよう」としか言えません。
製造拠点が分散し、スモールバッチが増えることは単純に考えるとコストの増大に繋がります。また、昨今小規模な新興蒸留所によるクラフトバーボンが市場に出回り始めていますが、ノウハウの乏しい作り手によるウイスキーは、品質的に大手メーカー品に大きく劣るケースも珍しくありません。
果たしてアメリカンウイスキー業界の行く末は如何に。テンプルトン蒸溜所のウイスキーがリリースされるのは2022年。願わくば、一層高品質かつ、個性豊かなウイスキーが市場に増えることを願って、本記事の結びとします。

【画像引用】
※1 http://www.templetoniowa.com/Public/Business%20pages/Templeton%20Rye%20Distillery.htm
※2 https://thewhiskeywash.com/whiskey-styles/american-whiskey/templeton-rye-begins-construction-honest-goodness-distillery/
※3 https://templetondistillery.com/visit/

グレンマッスル No,7 NAGAHAMA BLEND 56.2% 発売情報とスペースの告知

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GLEN MUSCLE
No,7 "Episode 1/3" 
NAGAHAMA BLEND 
Peated Malt Japanese Whisky & Scotch Whiskies 
Aged 3 to 30 years old 
700ml 56.2% 

評価:★★★★★★(6)

香り:エステリーでスモーキー、焦げた木材、石炭のような香ばしさ、焦げ感を伴うピート香に、パイン飴のような人工的な要素も伴う黄色系のフルーティーな甘さと、鼻孔を刺激するドライなアタック。スワリングすると蜜入りの林檎、あるいは蜂蜜のような粘性をイメージする要素もあり、時間経過で馴染んでいく。

味:香りに反して柔らかい口当たりから広がる、骨格のはっきりした酒質。 アメリカンオークに由来するバニラ、黄色系フルーツ、そして酒質由来のエステリーさとフルーティーでケミカルな甘み。ピーティーでスモーキーな含み香。微かに海苔のような海藻を思わせる要素。余韻はオーキーな華やかさとほろ苦いピートフレーバー。麦芽風味の包み込むような柔らかさが、鼻孔に抜けるスモーキーさを残して穏やかに消えていく。

エステリーでフルーティーでスモーキーなブレンデッド。スモーキーフレーバーはライト~ミディアム程度で、強く主張せず香味の複雑さに繋がっている。注ぎたては少しばらつくような印象もあったが、グラスの中で加速的に馴染み、開いていく。多様な原酒を用いたカスクストレングスのブレンデッドの特徴とも言える変化であり、こうしたリリースの醍醐味と言える。
少量加水するとケミカルな甘さ、アメリカンオーク由来の熟した洋梨、微かにトロピカル要素を纏った香味がスモーキーフレーバーよりも前に出て、よりフルーティーな味わいへと変化する。

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長濱浪漫ビールから、2021年7月1日に発売される予定のグレンマッスル第7弾ブレンデッドウイスキー。グレンマッスルとは何か、についてはもう説明不要ですね。美味しいだけでなく、尖った面白さのあるウイスキーをコンセプトに、今回のリリースも監修・協力させて頂きました。

No,7の構成原酒は
・長濱蒸溜所で蒸留、3年熟成を経たピーテッドジャパニーズモルトウイスキー。
・スコットランドから調達した、20年熟成のグレーンウイスキー。
・同じくスコットランド産の10年~30年熟成のモルトウイスキー。
レシピを監修するにあたり、長濱蒸溜所から提供頂いた10種類以上の原酒の中からこれらを選定し、ブレンド比率を模索。表記や価格設定から、若い原酒やグレ―ンの比率が多いのではないかと思われるかもしれませんが、長濱モルトを軸に、20年熟成以上の原酒は全体の約半分。モルト比率も75%と、リッチな構成になっています。

※ご参考
本リリースの販売は、以下、長濱浪漫ビールオンラインショップにて行われます。
発売日:2021年7月1日 12:30~
価格:14850円(税込み)
ボトリング本数:200本
URL:長濱浪漫ビール オンラインショップ | (romanbeer.com)

※ご参考2
リリースに先立ち、メンバーによるtwitterスペースでのグレンマッスルNo,7に関する配信を行います。
開催日時:6月23日22:00~23:00
ホストアカウント:@koutetsuotoko
※スピーカーはメンバーに限りますが、質問時間は設定させて頂きます。DM等で質問頂いても問題ありません。


今回のリリースの特徴は、なんといっても3年熟成のジャパニーズウイスキーと、最長30年熟成のスコッチウイスキーという、異なる地域における熟成年数最大10倍違いの組み合わせです。情報がオープンになっている日本のリリースとしては、最も幅広い組み合わせのブレンドではないでしょうか。(非公開のものを含めるとわかりませんが。)
かつてはジョニーウォーカーブルーラベルや、フェイマスグラウスに見られたXX to XX years 表記を用いるのは、目指すブレンドの方向性示すため。原酒の組み合わせとしては、現時点では日本だからこそ実現できるものとも言えます。

中でもキーモルトである長濱モルトについては、我々から長濱蒸溜所に「是非使わせてほしい」と、お願いしていたもの。そのため、まず活かしたかったのは長濱モルトの個性です。多少若い要素はあるのですが、3年熟成とは思えない口当たりの柔らかさと、創業初期の原酒に比べて骨格のはっきりとした麦芽風味、柑橘、そしてじわじわと主張を強くするピートスモーク。熟成に使われた樽は、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクであり、まさに聖地からのギフトとして、ピートフレーバーをより複雑なものにしてくれている、将来が楽しみな原酒です。

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この原酒に対して何を合わせていくか。難しいのは、単に熟成年数が長い原酒を混ぜれば美味しくなるというわけではないことです。
例えばグレーン。前回のリリース(No,6 Nicebulk‼)で追いグレーンとして使った、38年熟成のグレーンも選択肢としてはあったのですが、この長熟グレーンはウッディなフレーバーが強く、色濃くメローな甘みもしっかりあるタイプで、少量でも全体のバランスに作用してしまいます。単体で飲んだり、”追い”で使うなら良いのですが、ブレンドの繋ぎとして必要な量を使うと、モルトの個性を潰してしまうだけでなく、ウッディさが目立って余韻が苦くなってしまうのです。

一方で、今回使用した20年熟成のグレーンは、単体ではそこまででもないのですが、適度にドライ、エステリーでフルーティーな甘みもあり、ウッディさも目立たない。潤滑油として実にいい仕事をしてくれました。
モルトも同様で、30年熟成のスコッチモルトは、ハイランドモルトの乾いた牧草や麦芽を思わせる垢抜けないキャラクターの中に、好ましいフルーティーさのある穏やかなタイプ。これも使いすぎるとメリハリのない味わいになってしまいます。あえて10年~30年という幅を持たせた組み合わせにしているのは、1番から9番まで4番打者を揃えるのではなく、逆に価格ありきで若い原酒を大量に使うのでもなく。適材適所で、主役を引き立てるために適切な分量で使っていくことが、多層的でバランスの取れた味わいを作るために必要だったのです。

こうして仕上がったブレンドを改めてテイスティングすると、3年の長濱原酒の個性を活かすというコンセプトもあるのですが、30年熟成を中心に、スコッチモルトにあるフルーティーな個性を長濱モルトの若さ、しっかりとした骨格で支えるような、2つのコンセプトが見えてくる味わいに仕上がったように感じています。
また、そこに合わさるスモーキーフレーバーも香味の複雑さに一役買っており、ブレンデッドウイスキーだからこそ造れる味わいの醍醐味に通じていると言えます。
若い原酒の良さ、長期熟成原酒の良さ、それぞれのネガ要素を打ち消して、良い部分を伸ばす。今回リリースするうえで、理想としたブレンド像に近づけることが出来たように思います。

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(左から、30年熟成スコッチモルト、38年熟成、20年熟成スコッチグレーン。ラベルは上の長濱3年も含め、テストプリントの名残。)

以上、今回も様々な原酒をテイスティングしましたが、ブレンドに使うだけではもったいないと感じた原酒が2つありました。
我々はその原酒をブレンドにおけるキーモルトとしつつ、あえてそのままでリリース出来ないかと考え…例によって長濱さんにワガママを言い(笑)。
サブタイトルとなっているNo,7 Episode 1/3は、グレンマッスルNo,7が3部作であり、今後は先の構成原酒を用いたリリースが2種類予定されていることを意味しています。リリース本数、時期についてはまだ正式に確定していませんが、飲み比べることでブレンドの奥深さと楽しさを一層感じて頂けるのではないかというのが、今回のGLEN MUSCLE No,7を通じた狙いでもあるのです。


最後に、今回のラベルは古典的なボトラーズリリースのデザインをイメージして仕上げました。
GLEN MUSCLEのラベルづくりは、方向性を決めるため、いくつか異なるデザインコンセプトで案を作り。そこから選ばれた案の中で複数パターン作り、何れも関係者間のアンケートで最終的なラベルを決定しています。
今作も方向性として案1,2,3と作ってみたのですが、一番手間のかかった案2が「バーボンっぽい」として一番不人気だったのが、いかにもデザインの世界らしいなぁと感じる出来事です(笑)。

そして最後はテストプリントを繰り返し、実際に張り付けて外観をチェック。前作は蒸留所側とのやり取りが不足し、これが不十分でアンバランスな感じになってしまいました。ボトルは曲面なので、貼り付けてみてみると微妙にバランスが変わるんです。
こうして調整しては印刷し(カラープリンタ無いので近所のコンビニで)、セットとなった今回のラベル。ポットスチルの画像は、勿論長濱蒸溜所のものです。内外とも悩んで、苦労して、形になったものを飲む喜び。評価は自画自賛しても仕方ないので参考程度に★6としていますが、こればかりは何物にも替えられない達成感がありますね。

ブレンド監修では、長濱浪漫ビールさんに今回も本当に色々わがままを言って、無理を聞いて頂きました。改めて皆様に感謝申し上げます。
そして7月1日の発売後は、愛好家各位が本リリースを手に取って頂ければ幸いですし、あるいはBAR等でのテイスティングで楽しんでいただけたら、関わらせて頂いた一人として嬉しい限りです。

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※補足:リリースの監修にあたり、メンバー全員が監修料や販売金額の一部といった報酬の類は一切受け取っていません。また、本ボトルに関しても、一般ユーザー同様通常価格で長濱浪漫ビールから購入しております。

フォアローゼズ シングルバレル 50% ”4輪の薔薇の真実” Liqul掲載記事紹介

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FOUR ROSES 
SINGLE BARREL 
Kentucky Straight Bourbon Whiskey 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:バニラやキャラメルに、華やかさの混じるウッディなトップノート。チェリー、林檎飴のフルーティーな甘さ。焦げた木材やパン酵母のような香りのアクセント。微かに溶剤系のスパイシーな刺激もあるが、全体的にはメローでリッチな構成。

味:飲み口は濃厚だが、度数に反して比較的マイルドで熟成感がある。新樽熟成に由来するキャラメル等のメローな甘みに混じる甘酸っぱさ、徐々にスパイシーな刺激、微かな香ばしさと焦げた木材のえぐみ。余韻は程よくウッディでドライ、スパイシーな刺激が心地よく続く。

まさに新樽熟成のバーボンらしさ。その中でもフォアローゼズのシングルバレルは華やかさ、フルーティーさ、そしてスパイシーな刺激が特徴的であり、他のバーボンと一線を画す個性として備わっている。これらはフォアローゼズのマッシュビルのライ麦比率の高さに由来すると考えられる一方で、7~9年というバーボンではミドルエイジ相当に当たる熟成を経たことと、50%への加水調整が全体をまろやかに、上手くまとめている。オススメはロックで。あるいは写真のようにアメリカンオークのウッドスティックを1週間程度沈めて、樽感を足してやるとなお良し。

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個人的に、バーボンウイスキーの現行品スタンダードラインナップの中で、一押しのブランドがフォアローゼズシングルバレルです。濃厚さ、甘さ、フルーティーさ。香味の複雑さと個性の強さとのバランス。特に5000円程度までという価格設定で考えたら、文句なくこの1本です。

その他の銘柄では、ノブクリーク・シングルバレル60%やエヴァンウィリアムズ12年等も候補。ただしノブクリークは比較するとえぐみが多少気になり、エヴァンウィリアムズ12年は近年香味の傾向が変わって、少々べたつくような質感が感じられること等から、熟成年数等に捕らわれず1杯の香味で考えると、やはり自分はフォアローゼズが一番好みです。(1万円台まで出すなら、現行品ではブラントンシングルバレルやスタッグJr等を推します)

■フォアローゼズ・シングルバレルの特徴
テイスティングノートでマッシュビル(原料比率)の話をしていますが、フォアローゼズ・シングルバレルは他のスタンダードなバーボンと異なり、ライ麦比率の高いレシピを用いていることが特徴としてあります。
一般的なバーボン。例えば上で候補として挙げたノブクリークは、コーン75%、ライ13%、モルト12%に対して、フォアローゼズ・シングルバレルはコーン65%、ライ35%、モルト5%と、明らかにライ麦の比率が高いのです。※補足:フォアローゼズは通常品のマッシュビルとして、コーン75%、ライ20%、モルト5%でも蒸留していますが、それでもライ麦比率が高い仕様です。

ラム麦比率が高いバーボンは、どのような特徴が表れるかと言うと、ライ麦パンのように香ばしさが強くなる…なんてことはなく。フルーティーでスパイシーな香味を感じやすくなる一方で、ドライな仕上がりにもなるという特徴があります。フォアローゼズ・シングルバレルに感じられる特徴ですね。
後は好みの問題ですが、ここにメローな新樽系の香味が熟成を経て上手く馴染むことで、飲み飽きない複雑さ、カドが取れて艶やかな甘みとフルーティーさが備わった、極上のバーボンに仕上がっていくわけです。

4輪の薔薇の真実とは?フォアローゼズ シングルバレル:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.12 | LIQUL - リカル -

そうした原酒は、シングルバレルの中でも”プライベートセレクション”などでリリースされる、ごく一部のカスクに備わっているものですが、通常品シングルバレル(本ボトル)もそのベクトル上にある、レプリカとして位置付ければ申し分ないクオリティがあります。
スタンダード品だからと侮るなかれフォアローゼズ。その楽しみ方含めて、詳しくは今月の酒育の会「Liqul」にコラム記事として掲載させてもらいました。一方で、本記事ではコラム上では書ききれなかった、フォアローゼズのブランドエピソードの考察”4輪の薔薇の真実”について、バトンを引き継いでまとめていきます。

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画像引用:エピソード|フォアローゼズについて|フォアローゼズ|キリン (kirin.co.jp)

フォアローゼズのブランドエピソードについて、ウイスキー愛好家なら一度は”ブランド創業者のプロポーズ説(上画像)”を聞いたことがあると思います。
ですが、”FOUR ROSES ”のルーツは諸説あるだけでなく、何より知られていないのがこれから記載する、創業者プロポーズ説に対する疑問と、プロポーズしたのは創業者じゃなかった話です。


■創業者プロポーズ説の疑問
それは、ブランド創業者であるポール・ジョーンズJr氏(1840-1895)が、生涯モルトヤm...じゃなかった、”生涯独身”だったということです。
ブランドエピソードが正しければ、同氏は絶世の美女と結ばれているはずです。プロポーズは成功したが、結局結婚に至らなかったという可能性は残りますが、そんな苦い記憶を果たして自社のブランドに使うでしょうか。

また、フォアローゼズのブランドが商標登録されるのは1888年ですが、プロポーズが行われた時期がはっきりしないのも理由の一つです。同氏の年齢は商標登録時で48歳。10年、20年寝かせるアイディアとは思えず、仮に5年以内だったとしても、40代です。現代ならともかく、当時としては結婚適齢期を逃した中で絶世の美女にアプローチをする。。。そして一時的には認められたものの、結局結婚に至らなかった。
いやいや、悲劇的すぎるでしょう(汗)。しかも同氏は1895年に亡くなられるのですから、なんというか救いがありません。

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※フォアローゼズ一族とも言える、ジョーンズ一族の家系図。

そうなると、フォアローゼズのルーツは他にあるのではないか。諸説ある中で、正史候補としてコラムで紹介したのが「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」です。
主役となるのは、フォアローゼズ創業者一族であり、ポール・ジョーンズJr氏の甥にあたる人物で、後に会社経営を引き継ぐローレンス・ラヴァレ・ジョーンズ氏(1860-1941)。この人物が、まさに意中の女性にプロポーズを行い、4輪の深紅の薔薇のコサージュで返事をもらった人物であることが、同蒸留所の歴史をまとめた著書”FourRoses”に、創業者一族へのインタビューを通じてまとめられています。

ローレンス氏の恋は一目惚れではなかったことや。奥手だったローレンス氏は何度もアプローチをかけ、最後に12輪の深紅の薔薇と共にプロポーズをしたことなど。広く知られているエピソードとは若干異なるのですが。それくらいの誇張は…まあ広報戦略の中ではよくあることです。
また、真紅の薔薇についても、なぜ12輪でプロポーズして、返事は4輪のコサージュだったのか。別途調べてみると、この薔薇の数にも意味があり、時代背景と合わせて表立って語られない、より情熱的で奥ゆかしい、そんなバックストーリーがあることがわかってきたのです。(詳しくはLiqulの記事を参照ください。)

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■ローレンス氏プロポーズ説の疑問
一方で、「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」にも疑問点があり、この話が正史だと断定しづらい要素となっています。
まず、ローレンス氏は若くして才気があり、会社を継いでいく人間として期待されていました。
ローレンス氏がプロポーズしたのは、1880年代中頃。(仮に1885年としましょう。)
”フォアローゼズ”が、ポール氏の手で商標登録されたのは1888年です。
これだけ見れば、結婚から商標登録まで約3年。今後会社を継ぐ甥っ子のエピソードを、世代交代後に向けて商標登録したと整理できるので、何ら違和感はありません。

ですが、ポール氏はローレンス氏の結婚に大反対していたのだそうです。
最終的に結婚は認められますが、会社分断の危機に発展するなど紆余曲折あり、ローレンス氏が意中の女性と結婚出来たのは1894年。プロポーズから10年弱の時間が経過していることになります。
著書FourRosesにまとめられた内容をそのまま記載するなら、これはひとえに、結婚して家庭を持つことで、ローレンス氏のビジネスマンとしての才能が潰れてしまうことを危惧したためだったとか。しかし、思い出してほしいのが、結婚に大反対しているはずのポール氏が、1888年にフォアローゼズを商標登録しているのです。

かたや反対、かたや商標登録。なんなの?人格破綻者なの?と思わず突っ込みたくなる所業。
日本人的感覚で強引に結びつけるなら、ポール氏は結婚を内心認めつつも、反骨精神か、あるいは本気度を見るために反対し、一方で将来会社を継ぐエースのために準備はしていたと。ドラマの脚本にありそうな、不器用な愛情らしきものがあるとしか解釈できません。
なお、ローレンス氏の結婚が認められた1894年の翌年、1895年にポール氏は55歳と言う若さで亡くなるのですが、原因は腎臓の炎症、ブライト病とされたものの、前兆はなく普通に仕事をしている最中だったそうです。なんとなくですが、TVドラマにありがちな景色が頭の中に再生されてくるようです。

以上のように、2人の関係のこじれについて、強引な解釈をする必要があることから100%この説が正しいとは言い切れないのですが、創業者一族へのインタビューや事実関係、時系列で考えると、少なくとも生涯独身の創業者がプロポーズしたというよりも、あるいは「メーカーのお祭りで踊った女性4人の胸元に薔薇のコサージュがあったから」という何の厚みもない説よりも、ローレンス氏のプロポーズ説は確度が高く、お酒を美味しくしてくれるエピソードとして歓迎できるものだと感じています。
正直なところ、この手のブランドエピソードは多少誇張や改変があるのが当たり前で、もう1世紀以上も前の話なのだから何でもいいという感情があるのも事実です。ただし、それがあることでお酒が美味しくなるなら。あるいは今回のように考察の余地があり、あれこれ考える楽しみが残るなら、支持すべきは間違いなく”ロマン”のあるほうでしょう。

フォアローゼズに限らず、これと知られているエピソードも、調べてみると実は違っていたり、疑問が残っていることは少なくありません。ウイスキー片手にその領域に踏み込んでみる楽しさは、さながら歴史学者になった気分です。一部地域に住む方々は、まだ大手を振って夜の街にとは言い難い状況。ならば夜のひと時を、時間の流れを遡って、あれこれ考えて楽しんでみてはいかがでしょうか。
趣味の時間として、充実のひと時をもたらしてくれることと思います。

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(禁酒法があけた1935年に登場する、フォアローゼズのPR広告。この時点でポール氏が舞踏会でプロポーズするエピソードが使われている。今ほど情報確度が高くなく、大らかだった時代の産物が、80年以上経った現代まで使われ続けているのは興味深い。)

厚岸 シングルモルトウイスキー 芒種 55% 2021年リリース

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THE AKKESHI 
"BOSHU" 
Single Malt Japanese Whisky 
9th. season in the 24"sekki" 
Bottled 2021 
700ml 55% 

評価:★★★★★★(6)(!!)

香り:トップノートはシリアルや乾煎りした麦芽の香ばしさと、焦げた木材、燻製を思わせるスモーキーさ。レモンピール、和柑橘、乳酸系のニューポッティーな要素も多少あるが、嫌な若さは少ない。オーク樽由来の甘いアロマと混ざって、穏やかに香る。

味:クリーミーで粘性があり、度数を感じさせない柔らかい口当たり。フレーバーの厚み、原料由来の要素の濃さが特徴として感じられる。ピーティーで柑橘の皮やグレープフルーツを思わせるほろ苦さと酸味、麦芽の甘みや香ばしさ、鼻孔に抜けるピートスモーク。オークフレーバーはそこまで目立たず、バランスよく仕上がっている。
余韻は塩味を伴うピーティーさ。軽い刺激を舌の奥に残し、若い原酒にありがちなくどさ、未熟感を感じさせず、麦芽由来の甘みと共にすっきりと消えていく。

これぞ厚岸モルトと言う個性を堪能できる1本。若い原酒の嫌味な要素が極めて少なく、それでいて原料由来の好ましい要素は厚く、濃く残している。コクと甘みのある麦芽風味と、そこに溶け込むスモーキーフレーバー。丁寧な仕事を思わせる作りであり、樽感もバーボン樽由来のオークフレーバーが主張しすぎない自然な仕上がり。磨けば光る”原石”というよりは、若くして光り輝く”神童”と例えるべきだろう。
4年程度と短熟でありながら、ストレートでも抵抗なく飲み続けられるが、少量加水すると若さがさらに目立たなくなり、原料由来の甘み、香ばしさ、フルーティーさが、ピートフレーバーと混ざりあっていく。ハイボールも良好。アイラ要素が無いので厳密には違うが、かつてのヤング・アードベッグを彷彿とさせる仕上がりで、漠然とした期待が確信に変わる1本。現時点で★7をつけようか真剣に悩んだ。

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「これだよ、こういうのだよ!」
一口飲んで、思わず口に出してしまうくらいにテンションが上がった1本が、5月28日に発売となった厚岸蒸溜所 24節気シリーズの第3弾、芒種(ぼうしゅ)です。
これまで厚岸蒸溜所からリリースされてきた3年以上熟成品は、バーボン樽だけでなくシェリー樽、ワイン樽、ミズナラ樽と様々な樽で熟成された原酒をバッティングすることで構成された、複雑な味わいが特徴。若さを気にせず飲める反面、厚岸蒸溜所の作り出す酒質そのもののポテンシャル、特に今回のリリースで感じられる”コクと甘みのある麦芽風味”は、感じ取りにくくもなっていました。

今回のリリースは一転して、バーボン樽(リフィルやホグスヘッド含む)が主体と思われる単一樽タイプの構成。ミズナラ等多少異なる樽も使われているかもしれませんが、9割がたアメリカンオークでしょう。原酒は3~4年熟成のノンピートとピーテッドのバッティングで、ピート系のほうが多めという印象で、香味ともしっかりピーティーですが主張は強すぎず、一部国産麦芽”りょうふう”で仕込んだ原酒も使っていると思われる、柔らかい甘みと柑橘系を思わせるフレーバーが全体の厚みに寄与しています。。
現時点で厚岸蒸溜所からシングルカスクのリリースは出ておらず、酒質の味わい、特徴を楽しみたいなら、「芒種」はまさにうってつけと言うわけです。

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近いリリースとしては、ニューボーンのNo,1やNo,2がありましたが、当時の原酒は今以上に若く、創業初期の原酒でもあったため、ハウススタイルは確立途中でした。
自分はニューメイクや3年前後熟成のカスクサンプルを飲む機会があったため、厚岸の酒質についてある程度理解し、この蒸溜所は凄いと確信を持っています。一方で、多くの愛好家はその点が未知数なまま、作り手のこだわり、立地条件、周囲の評価等、総合的な視点から、漠然とした期待を抱いていた部分もあるのではないかと思います。(これが悪いという話ではありません。)

今回のリリースは、先に触れたように、最も重要なファクターである酒質について焦点を当てて飲むことが出来るわけですが、それでいて若いから仕方ないだろと、開き直るような造りでもありません。これまでのリリースに見られる、少しでも良いものを、美味しいものをと言う作り手のこだわりが感じられつつ、酒質について漠然としていた部分が明確になる。厚岸蒸溜所の成長と凄さを、改めて感じて頂けるのではないかと思います。


とはいえ、一口に凄さといっても伝わりにくいかもしれませんので、一例を示すと、
厚岸蒸溜所ではウイスキー造りの仕込みで
・粉砕比率を常に均一化するため、徹底した管理を行う。(普通にやっていると、若干ぶれます)
・発酵の際に、麦芽の量に対して自分たちが目指す酒質に最適なお湯の量と温度を調べ、管理する。
蒸溜以外の行程にも重きを置き、毎年見直しながらウイスキー造りを行っているそうです。今後はここに、自社で精麦した北海道産の麦芽とピートが加わるなど、その拘りは原料にも及んでいくわけですが、丁寧な仕事の積み重ねが、原料由来の風味を引き出しているのだと感じています。

このように全ての香味には理由があり、ゼロから勝手に生まれるものではありません。ですが、理由があるといってもそれがわからないモノもあります。今回のリリースで言えば、味の中にある塩気、しょっぱさです。厚岸蒸溜所のリリースの中で、これだけ塩気を感じるのは初めてではないでしょうか。
厚岸蒸溜所は太平洋を望む高台にあり、潮風が強く届く場所にあります。海辺にある蒸溜所は、熟成途中に樽の呼吸で空気中の塩分が吸収され、味わいに塩気が混ざるという説はありますが、本当にそうなのかという点については疑問があり、実は明確な答えが出ていません。

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※蒸溜所から見下ろす冬の厚岸湾。蒸溜所まで届く潮風が、今回のウイスキーのフレーバーに繋がったのだろうか。画像引用:厚岸蒸溜所Facebookより。

外気には塩気を含む成分があるでしょう、ですがそれが普段空気の入れ替えをしないウェアハウスの中で、ほぼ密閉状態にある樽の中にまで香味に影響するほど入り込むのかということです。
例えば、スコットランドではグレンモーレンジ蒸溜所は海辺にありますが、香味に塩気が混じるとは聞いたことがありません。逆にフレーバーに塩気があると言われるタリスカーは、蒸溜所こそスカイ島の海辺にありますが、熟成場所は本土の集中熟成庫であり、おおよそ香味に影響を及ぼすほど樽の中に塩分が入り込む環境とは言い難いのです。

この疑問については、ピートに含まれるフレーバーが塩気に繋がっているのではないかという説を自分は支持しています。特にアイラ島のピートですね。一方で、厚岸蒸溜所のモルトに使われたピートは、スコットランド本土内陸産だと聞いているため、それだけ塩分を含んだものかはわかりません。やはり気候が影響しているのか…厚岸蒸溜所の将来は間違いないと思えるリリースでしたが、同時に新たな謎も抱いてしましました。
ですが、こうした要素があるからこそウイスキーは面白いし、ワクワクさせてくれるんですよね。

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※厚岸でのウイスキー用麦芽りょうふう栽培風景。画像引用:ウイスキー大麦 豊作願い種まき 厚岸の試験栽培 6ヘクタールに拡大:北海道新聞 どうしん電子版 https://www.hokkaido-np.co.jp/article/543015

24節気において芒種は、”米や麦芽の種蒔き”に最適な時期という位置づけが裏ラベルにて触れられています。ピートフレーバーに含まれた土の香りと、酒質由来の麦芽の甘みは、まさにそうした景色をイメージさせるものであり。スモーキーさと爽やかな樽香は、夏が近づく今の時期にマッチしたリリースだと思います。それこそ月並みな表現ですが、愛好家という顔を赤くした蛍も寄ってくることでしょう。

前作「雨水」では、蒸溜所が目指す厚岸オールスターへのマイルストーンとして楽しみが増えたところですが、「芒種」では原酒や樽使いが限定されたことで見えてくる、ウイスキーそのもの将来の姿があります。3〜4年熟成の原酒でありながら、これだけのものに仕上がる酒質の良さ。後5年もしたらどれだけのものがリリースされるのか。。。今までのリリースで感じた以上に、厚岸蒸溜所の今後に期待せざるを得ないのです。

アマハガン ウェビナーエディション 47% 長濱蒸溜所 ワールドブレンデッド

カテゴリ:
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AMAHAGAN 
World Blended 
Webinar Edition 
Malt & Grain 
Released in 2021 
700ml 47%  

評価:★★★★★★(6)

香り:バニラやメレンゲクッキーを思わせる甘く香ばしいオーク香に、構成するモルト原酒に由来するケミカルな要素と植物っぽさを伴うトップノート。奥にはパイナップルシロップ、アーモンドスライス等のフルーティーさ、ナッティーなアロマ。スワリングするとメープルを思わせるメローな甘みも微かに感じられる。

味:スムーズで甘酸っぱくモルティーな香味構成。硬さの残る白桃、パイナップル系のケミカルなフレーバーに、ナッツや麦芽の香ばしさ。それらを長熟グレーンのとろりとメローな甘み、ビターなウッディネスが包み込んでいく。
余韻はほろ苦くスパイシーで、ピリピリとした刺激の中にオークフレーバーがアクセントとなって長く続く。

アマハガン通常品と同系統の原酒が、ブレンドの軸に使われているであろう香味構成。そこに熟成年数が長く、グレーンをはじめ異なるキャラクターの原酒も使われていることで、ブレンドながら全体的にスケールが大きく、変化に富んだ仕上がりとなっている。
フルーティーさは近年の愛好家が好む要素が主体的である反面、構成原酒の一つであるハイランドモルトに由来する”癖”も感じられる。少量加水すると、一瞬植物系のフレーバーが強まった後、オーキーな華やかさや麦芽由来の軽い香ばしさ、そしてフルーツシロップを思わせる甘みがと、好ましい要素が開いてくる。ハイボールも悪くなく、飲み方を選ばない1本。

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長濱蒸溜所がリリースする、ブレンデットウイスキー「AMAHAGAN」。同蒸溜所が調達した輸入原酒に、長濱蒸溜所で蒸留・熟成したジャパニーズ原酒をブレンドしたワールド仕様のハウスウイスキーで、今回のリリースはその特別版となります。

ラベルを彩るのは、漫画レモンハートで知られ主要キャラの面々。原酒の構成は
・長濱蒸溜所のモルト原酒
・熟成年数の異なるハイランドモルト3種
・2001年蒸留のスペイサイドモルト
・長期熟成のグレーン原酒
の6種類という情報が公開されています。
ブレンドは2020年9月に長濱蒸溜所が開催したセミナー「NAGAHAMA BLEND CHALLENGE」において、セミナー参加者に加え、講師を務めた静谷さんが手掛けたレシピを長濱蒸溜所で微調整したもの。
商品名のWebinarはネットでのセミナー等の意味であり、コンセプトである「愛好家の、愛好家による、愛好家のためのウイスキー」の通り、セミナーを通じて愛好家が作り出した味わいをリリースに繋げた訳ですね。

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私はこのセミナーに参加していないので、当日作られたレシピも、使われた原酒の素性についても、公開されてる以上の情報はありません。ですが、流石に”わからない”では記事として面白みもないので、今回はテイスティングを通じて、香味からレシピを紐解いて、こうではないかと言う予想を以下にまとめてみます。
まず、ブレンド構成はノーマルなアマハガンに共通する香味と、そこにはない香味の2系統に分類出来、それらが混ざり合うことで複雑で厚みのある味わいを作り出していると感じました。

前者の香味を形成しているのは、(つまりノーマルなアマハガンと共通する系統の原酒が)、長濱モルトとハイランドモルト3種、2系統の原酒です。
軽い香ばしさの混じる麦芽風味が主体である長濱モルトに、ややケミカルなニュアンスに加え、特徴的な癖を伴うフルーティさ。ハイランドモルト表記で、この香味をもったブレンド用原酒を年数違いで構築出来るのは。。。あの近代的な蒸留所でしょう。
8年、10年、18年。外箱に書かれているレモンハートのマスターがブレンドする原酒がまさにそれと言われても違和感なく。例えばノーマル品には同じ蒸留所産のもう少し若い原酒も使われているところ。8年クラスがメインにあり、今回のレシピではその分10年、18年クラスの比率が増えているのではと。

一方で、ブレンド全体のバランスに寄与しつつ、通常リリースにない香味の幅、複雑さにつながっているのは、2001年蒸留のスペイサイドモルトと、長期熟成のグレーン原酒、2つの仕事と考えます。
グレーン原酒は香味に感じられるとろりとした甘みと、熟成の長さを感じるビターなウッディネス。これは以前グレンマッスルNo,2のリリースで、似たような個性の原酒を使わせてもらった経験から、20年程度の熟成を予想。個性の違いが出にくいグレーン原酒なので蒸留所はハッキリとわかりませんが、ノースブリティッシュあたりではないでしょうか。(輸入なのでブレンドグレーン表記かもしれませんが。)

そして2001年蒸留のスペイサイドモルトは、淡麗寄りながら麦芽風味があり、多少スパイシーな酒質をブレンドの中から紐解きました。中間ではハイランドモルト由来のフルーティーさを邪魔せず、軽やかなスパイシーさで存在感を出してくるようなイメージです。
ブレンド向けとされる蒸溜所の中だと、ダフタウンなどのライトで柔らかいタイプ。。。ではなく、淡いようで主張する時はする、ベンリネス、キース、ブレイバルあたりを連想します。
その上でブレンドレシピはこれまでの経験から、長濱2、ハイランド4-5、スペイサイド1、グレーン2-3とか。
こうしてブレンドを紐解いて、あれこれ考えるテイスティングは楽しいですね。なお答えは分からないので、今度こっそり聞いてみますw

※ウェビナーエディション、くりりんの予想レシピ ()は比率
・長濱蒸溜所のモルト原酒:ノンピート、バーボン樽の2~3年熟成(20)
・熟成年数の異なるハイランドモルト3種:南ハイランドの某近代的蒸留所、8年、10年、18年熟成(40~50)
・2001年蒸留のスペイサイドモルト:ベンリネス、グレンキース、ブレイバルのどれかと予想(10)
・長期熟成のグレーン原酒:ノースブリティッシュまたはブレンデッドグレーン20年(20~30)




考察ついでに余談ですが、今回のリリースにはBARレモンハートの主要キャラクターが描かれ、今までのアマハガンとは異なるラベルデザインが採用されています。
これはリカーマウンテンさんとレモンハートのファミリー企画さんが共同で開始された、飲食店応援プロジェクトが関係しているのではないかと思われます。
こちらはイラスト販売益でオリジナルボトルを作成し、それを日本の飲食店に配布すると言う壮大なプロジェクト。ウイスキー業界としては初の試みではないでしょうか。既に中身のウイスキーの仕込みは完了し、イラストの価格次第で配布本数が決まる、という発信もSNSで見かけました。

長々書いてしまいましたが、今回のブレンドは長濱蒸溜所が作るアマハガンブランドに共通する“らしさ”がありつつも、そこに新しい個性、味わいが加わった面白いリリースだと思います。
愛好家のための〜というコンセプトは、まさに自分が関わらせて貰っているGLEN MUSCLEや、先日の三郎丸蒸溜所との原酒交換、蒸溜所で行われている泊りがけでのウイスキーづくり体験企画なども同じベクトルにあるものと言えます。そうしたウイスキー作りの方向性が長濱蒸溜所にあるからこそ、さまざまな企画に積極的に挑戦されているのかもしれません。
上記企画に加え、次のリリースも楽しみにしております。

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