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ロッホローモンド シグネチャー ブレンデッドウイスキー 40%

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LOCH LOMOND 
SIGNATURE 
SINGLE BLENDED SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)(!)

香り:柔らかく香る甘く焦げたオークのウッディさ。キャラメルと微かにケミカル、ボール紙、軽い刺激とスパイシーなアロマを伴う。

味:口当たりは緩く、序盤にのっぺりした質感から徐々に焦げたウッディネス。フレーバーとしてはグレーンの緩やかで柔らかい甘味、らしいフルーティーさと麦芽風味。余韻は焦げたオークのほろ苦さとバニラを伴って、ケミカルな甘さが残る。

スムーズで柔らかく、あまり若さも感じないが、ストレートだとややプレーンな香味が中心。一方で、濃いめのハイボールにすると、余韻にジェネリックトロピカル系のフレーバーがあって好ましい。シングルブレンデッドという造りがロッホローモンドらしい面白さだが、それ以上に、このクオリティで2000円ちょっとという市場価格を実現出来る、ロッホローモンドの強みが光る1本。

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モルト、グレーン、構成原酒全てがロッホローモンド蒸留所産の単一蒸留所ブレンデッド(シングルブレンド)。
スコッチウイスキーでブレンデッドと言えば、各地にある蒸留所から原酒を調達し、様々な原酒を用いて作成するのが一般的であるところ。このロッホローモンド名義のブレンデッドは、全ての原酒を単一蒸留所で製造し、ブレンドしていることが最大の特徴となっています。

ロッホローモンド蒸溜所には
・様々な酒質のモルトウイスキーを作るための、2種類の蒸留器。(うち、一つは複数タイプの酒質の生産が可能なローモンドスチル)
・グレーンウイスキー用の設備は通常の連続式蒸留機と、カフェスチル。
・年間10000丁の樽を補修、生産可能な樽工場。
・生産したウイスキーのボトリング設備。
と、無いのはモルティング設備くらいという、ウイスキー生産に必要な全てを自社で賄えるだけの機能を有しています。

そうした機能を活用し、同社はこれまで
モルトウイスキー:
・スタンダードなロッホローモンド
・フルーティーなインチマリン
・ピーティーなインチモーン

グレーンウイスキー:
・シングルグレーン
・ピーテッドグレーン

大きく分けて以上5系統のリリースを、それぞれのブランド名で実施していたところ。昨年から方針を変更し、ブランド大項目を全て「ロッホローモンド」に統一しています。

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今回のレビューアイテムであるロッホローモンド・シグネチャーは、現地では2019年に販売を開始したもので、日本に入荷していなかっただけで時系列は前後しますが、現在はモルト、グレーン、ブレンド、全てが「ロッホローモンド」としてリリースされているというわけです。(※現地法律上は問題なし)

わかりにくい、と感じるかもしれませんが、それは同社の販売戦略であって、とにかく「ロッホローモンド」を認知させる戦略という観点からすれば正しい方法です。
というか、このリリース事態がすごいことなのです。ただでさえ一定品質以上のモルトとグレーンを低価格に抑えて量産出来る蒸溜所は限られているにも関わらず、ロッホローモンドの原酒は5年、8年熟成でも若さが目立たず甘みや麦芽風味、フルーティーさのある個性が特徴的です。

また、今回のリリースではブレンドの後のマリッジが600丁から形成されるオロロソシェリー樽とリチャーアメリカンオーク樽でのソレラシステムが特徴とされています。ここで使われる樽は樽の保守管理に加え、リチャーを自社の樽工場で行っているもので、シェリー感よりもチャーした樽の香ばしさ、ウッディさが香味のアクセントになっています。
ともするとプレーンな香味になりがちな若い原酒のブレンドに、香味の変化、幅を与えているのです。
ウイスキー市場を陰に陽に支えるロッホローモンド。今後も意欲的なリリースに期待しています。



以下、雑談。
ウイスキーの値上がりが複数社から発表され、我々サラリーマンの懐を直撃している昨今ですが。
そんな中でも2000円台のリリースにこのロッホローモンドシグネチャーに加え、面白いリリースが複数登場しています。

・アイリッシュウイスキー「バスカー」
・シングルモルト「グレングラント アルボラリス」
・シングルブレンデッドスコッチ「ロッホローモンド・シグネチャー」

これまで、2000円前後のスコッチウイスキーというと、バランタイン、ジョニーウォーカー、シーバスリーガル。。。などの有名ブランドの12年クラスが主流。
特にホワイトホース12年は、あまり知られていませんが昭和の洋酒ブーム時に発売された限定品をルーツとした、日本市場限定品。40年近く限定品としてリリースが継続されているベストセラーで、手軽に飲めるスモーキーなウイスキーの一つです。

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ここに殴り込みをかけてきたのが上述の3銘柄。
トロピカルフレーバーを”売り“にしたバスカーは、ブレンドは軽やかな飲み心地、先日発売されたシングルモルトが同じ価格帯でさらにしっかりとした味わいがある。
グレングラント アルボラリスは、10年、12年に通じるアメリカンオーク由来の華やかさがあり、ロッホローモンドは上述の通り。
全てハイボールにして飲むと、地域、樽、製法、それぞれ個性の違いが感じられ、いやいやウイスキー楽しいじゃ無いですかと思えるラインナップ。

これから暖かくなってきて、夏場のハイボール要員としてはなんぼあっても良いボトルですからね。今年は有名ブランド1つ、そして上記3銘柄をセットで充実した家飲みを楽しんでみてはいかがでしょうか。

厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 48% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI BLENDED WHISKY 
DAIKAN 
A Fusion of the World Best Whiskies 
24th. Season in the 24 ”Sekki” 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5−6)

香り:軽やかでスパイシー、ツンとした刺激から和柑橘を思わせる酸を感じるトップノート、ほのかに焦げたようなスモーキーさ。徐々にバタークッキーのような甘み、軽い香ばしさ、微かに赤みがかったドライフルーツも連想させる。

味:柔らかく瑞々しい口あたり。序盤は軽く平坦な印象を受けるが、じわじわとモルティーな甘み、柑橘や洋梨、ビターで土っぽいピートフレーバーが穏やかに広がっていく。
余韻はスパイシー、ピートフレーバーが染み込むように長く続く。

グレーン原酒を思わせるプレーンでスパイシーなニュアンスがトップにあり、そこから厚岸モルト由来の甘みや各種フレーバーが広がっていく。モルト比率は5割ほど、樽構成としてはバーボン樽メインで、複雑さはワイン樽やミズナラ樽といったところか。ピート香も控えめで体感10PPM未満、ノンピート原酒がメインであるようにも感じられる。
飲み方としてはストレート以外にはハイボールがおすすめ。軽やかですっきりとした中に、麦芽や樽由来の甘み、柔らかいスモーキーフレーバーを感じられる。

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厚岸蒸留所からリリースされる、二十四節気シリーズの第6弾。2022年2月下旬に発売されたブレンデッドウイスキーとなります。
厚岸蒸留所は一般的なクラフト蒸留所同様に、ブレンデッドウイスキーに必要なグレーン原酒を自社蒸留できていませんが、グレーンをスピリッツで輸入し、自社で3年以上熟成したものを用いているという拘りがあります。

さて、今回のブレンドは過去のリリースと大きく異なり、香味とも序盤が穏やかでピートフレーバーも強く主張しない。静謐とした雰囲気を感じさせる点が特徴だと言えます。
さながら、晴れた冬の日の空気というべきでしょうか。ベースにあるのは間違いなく厚岸蒸溜所のモルトウイスキーですが、地形の起伏、色、匂い、それらが雪によって白く塗りつぶされて平坦になった雪景色のよう。ツンと鼻を刺激する冬の寒さを感じさせつつ、グラスの中で静まり返っているのです。
おそらく過去作よりもグレーンの比率が多く(公式発表では過半数がモルトとのことですが、5:5ではないかと)、また過去作とは系統の違うグレーン原酒を用いているのではないかと推測されます。

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(厚岸蒸溜所からリリースされた、二十四節気シリーズのブレンデッド3種のラベル。ふと、このデザインは蒸留所から見える厚岸の景色、特に水平線の景色がモチーフではないかと思い当たった。)

このように第一印象を描くと、グレーン原酒でモルトの個性を塗り潰したような、薄っぺらく平坦なブレンドだと感じるかもしれませんが、如何に雪景色と言っても多少の変化があり、空気には地域の特色とも言える匂いが混じるように。ベースとなるモルトの香味に加えて、土の匂い、潮風、柑橘や白色果実、微かに赤みがかったドライフルーツ、徐々に複雑な印象を感じさせるのです。
樽の傾向としては、モルト、グレーンの熟成で最も比率が高いのはバーボン樽だと思いますが、複雑な印象に通じているのはワイン樽やミズナラ樽由来の香味ではないかと思われます。

なお、過去作との違いとしては、“雨水”が最も強くシェリー系の原酒のキャラクターを感じさせ、“処暑”は丸みを帯びつつもはっきりとしたピートフレーバーの主張があります。
それらを今回の“大寒”のレビュー同様に季節に置き換えるなら、雨水は春の空気が濃くなる時期であり、春の空気をシェリー樽原酒由来の甘く色濃いキャラクターで。
夏の処暑は暑さが峠を越した時期とされていますが、その名残として照りつける日差し、強い夕日がピートフレーバーで表現されているのではと。。。

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私のこじつけか、考えすぎかもしれませんが、これまでは感じなかったブレンドの傾向と季節の関係が、飲み比べることによって見えてきたようにも感じました。
現在のペースでリリースが進むと、次のリリースは約3ヶ月後にシングルモルト、その後ブレンデッドですから、時期的には9〜10月ごろでしょうか。既に寒露はリリースされているため、白露、秋分、霜降あたりになると思いますが、厚岸の季節がどのようにブレンドで表現されているかも、注目していきたいと思います。

厚岸蒸溜所 シングルモルト 立冬 55% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI 
RITTOU 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
19th Season in the 24 "Sekki" 
700ml 55%  

評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートはフレッシュで焦げたようなピート香。奥にはオレンジや若い木苺のような酸味、スパイシーなアロマがあり、時間経過でピートと馴染んでいく。開封後変化としては、ワイン樽由来の香味が開き、より果実香を感じやすくなる。

味:厚みがある厚岸らしい麦芽風味に続いて、若さを感じる酸、やや粒の荒さを感じさせるピートのほろ苦さ。微かに樽由来の赤系果実感があり、奥行きにつながっている。余韻はウッディでピリピリとスパイシーな刺激、ピーティーなフレーバーが強く残る。

構成原酒として公開されているミズナラ樽原酒やシェリー樽原酒という、色濃い原酒のイメージとは異なり、薄紅色がかった淡い色合い。あくまで香味は酒質メインだが、その奥行きに寄与するシェリー樽やワイン樽のアクセント、ミズナラ樽由来の要素は余韻でスパイシーなフレーバーとして感じられる。開封直後はこれらがはつらつと、それぞれ主張してくるが、開封後時間経過で馴染み、モルティーな甘みと複層的な樽由来の要素がまた違った表情を見せてくれる。

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厚岸蒸溜所シングルモルト 24節気シリーズ第5弾。りっとうです。
先日、2月下旬に大寒が発売され、さあレビューだと思ってブログ管理ページを見返したところ、立冬が下書き状態になっていて更新されていないことに気が付きました。。。
そういえば、Twitterやスペースでは取り上げましたが、ブログは最後の仕上げをしていなかったんですよね。大寒のレビュー前に、飲みなおして開封後変化も踏まえてレビューしていくことにします。

立冬の発売前情報では、北海道ミズナラ樽原酒をキーモルトとしたとあり、またシェリー樽原酒も多く使ったとのことで、どんなリッチな味わいになってくるか、非常に楽しみにしていました。
特に北海道ミズナラ樽原酒は個人的にかなり期待している原酒でもあるので、それがどんな仕上がりになったのか。
グラスに注ぐと、その色合いは薄紅色がかったライトゴールド。序盤は樽感がそれほど強く出ておらず、厚岸蒸溜所らしいコクと甘みのある麦芽風味、ピートも結構しっかり感じます。

これまでのリリースでは2016、2017年蒸留が主流だったところ、蒸留所としての成長が見られる2018年蒸留の原酒の比率が増えてきて、個性を感じやすくなっているのでは無いでしょうか。一方で、余韻にかけて徐々にウッディで、ワイン樽を思わせる個性も主張してきます。
このワイン樽は、ブルゴーニュ地方の赤ワイン樽とのこと。開封後はこのワイン樽由来の個性が少し浮ついて、ちぐはぐな印象もありましたが、時間経過で馴染んでバランスが取れてきているようでもあります。

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一方で、キーモルトとされるミズナラ樽原酒は、それが過半数を占めているというわけではないようで、ミズナラらしい独特の華やかなフレーバーというよりは、あくまで”全体の繋ぎ”と言う印象。むしろシェリー樽原酒やワイン樽原酒が、上述の麦芽風味に酸味と方向性の違う甘み、そしてウッディな苦味を付与して香味の複雑さを形成しています。

こうした原酒構成で言えば、今回のリリースは厚岸シングルモルトとして初めてリリースされた、サロルンカムイを彷彿とさせる要素もあります。同リリースは樽感が少々強めで、特にワイン樽原酒を強めに加えていたこともあり、麦芽風味主体というよりは樽感寄りの構成でしたが、それをベースからボリュームアップさせた感じだと言えるかもしれませんね。
全体的に原酒が若いため、馴染むの時間がかかるのは変わっていませんが、時間をかければ馴染むというのは原酒そのものにポテンシャルがあるということでもあります。

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原酒の成長もさることながら、蒸溜所、そして造り手の成長を感じるのがクラフト蒸溜所のリリースの面白さであり、魅力と言えます。
厚岸蒸溜所の情報については、これまでの記事等でまとめてきていますが、新たな原酒貯蔵庫を内地に調達するなど、この半年間で更なる動きを見せています。※上画像参照、厚岸蒸溜所Facebookより引用。

樽だけではなく熟成場所の違いもまた、原酒の成長に大きな影響を与える要素となり、原酒の種類が豊富にあるということは、後のリリースに様々な選択肢を与えてくれるものとなります。
例えば先日リリースされた大寒は、今までのリリースとは全く違う方向性のブレンドに仕上がっていました。これもまた、厚岸蒸溜所が操業5年少々という短い期間の中でも様々な原酒を仕込んできたからにほかなりません。
大寒については後日レビューさせて頂きますが、リリースを振り返るとそれぞれの違いもまた面白く、ウイスキーメーカーとしての成長も感じられます。新しいものだけでなく、定期的に過去作を振り返るのも、成長途中のクラフトの楽しみ方と言えるのかもしれません。

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江井ヶ嶋 ブレンデッドウイスキー シェリーカスクフィニッシュ 50%

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EIGASHIMA 
BLENDED WHISKY 
SHERRY CASK FINISH 
500ml 50% 

評価:★★★★★(5)

香り:トップノートはオロロソシェリーの甘いシーズニング香、合わせてメローなグレーン、穀物を思わせる要素も混ざり、全体的に柔らかい甘さが主体のアロマ。微かに焦がした杉板のような、古典的な日本家屋に通じる香りが混ざる。

味:まずシェリー樽由来の香味が広がる。ドライプルーンを思わせる近年系シェリーの甘み、奥にビターなカカオ、ウッディネス、微かにスパイスや針葉樹のアクセント。じわじわと舌先からタンニンが感じられ、余韻はシェリー樽の甘さが鼻腔に抜けるとともに、ピリッとした刺激が残る。

香味ともはっきりとシェリー樽の個性が感じられるブレンデッド。加水すると一瞬甘酸っぱいドライフルーツ、柑橘の皮、オランジェットなど香りを構成する要素が増すが、極短時間の変化であり、その後はドライなグレーン感が主体となる。他方で味わいはスムーズでマイルド、余韻は日本の熟成環境を思わせるウッディさが残る。輸入原酒とのブレンドとは言え、これが江井ヶ嶋のリリースである点に驚かされた。

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江井ヶ嶋酒造からリリースされている、江井ヶ嶋蒸溜所のモルト原酒と、輸入原酒(モルト、グレーン)をブレンドし、オロロソシェリー樽でフィニッシュした通常リリース。
同社のウイスキーブランドと言えばホワイトオークとあかしですが、2019年に蒸溜所名義をホワイトオーク蒸蒸溜所から江井ヶ嶋蒸溜所とし、新たに“江井ヶ嶋”ブランドを最上位に位置付けてリリースを行う、ブランド戦略の見直しが行われました。

そうしてリリースされたうちの1つが、このブレンデッドウイスキーです。
しかしこれまで江井ヶ嶋のモルト原酒は、雑に作っているのが見えるというか、悪い意味で地ウイスキー的というか、「風味が薄っぺらいわりに原料由来とは傾向の異なる雑味が多く、樽感のなじみも悪い。」
はっきり言っていい印象はなく、この蒸留所、立地以外何が良いのかわからない、というのが本音でしたね。
(同じように感じていた愛好家の皆様、江井ヶ嶋の皆様は怒らないので、黙って拍手ボタンを押しましょう。)

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他方で、昨年から2018年蒸留のカスクサンプル、直近のニューメイクを飲ませていただく機会があり、あれ、悪い要素が消えてる。。。っていうか別物じゃん、と評価を改めていたところに、先日のスペース放送です。
事前打ち合わせ含めて詳しい話を聞き、江井ヶ嶋蒸溜所のウイスキーは、同社が1919年にウイスキー販売を始めて100年経った今からやっと“始まる”のだと、確信に至りました。

字面的な印象で言えば「地ウイスキーからクラフトウイスキーへ」と言いますか。
この改革の立役者である中村蒸留所所長が着任された2016年以降、江井ヶ嶋蒸溜所では意識とプライドをもった仕込みが行われているだけでなく。2019年の改修工事前から、老朽化した配管やタンクの交換など、今まではおざなりにされていた設備の保守管理・清掃も徹底されるようになったと言う話を聞き、原酒の香味の変化にも納得しました。
やはりモノづくりは細かいことの積み重ね、基礎をおろそかにしてはならないと言うことですね。

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(2月3日のスペース放送。中村蒸留所所長の「お前ら、そんなウイスキー作ってて家族に恥ずかしくないんか、一緒に飲みたいウイスキー造ってるって言えるんか」という話は、胸の内に込み上げてくるものがあった。)

そんなわけで、じゃあ新時代の江井ヶ嶋のウイスキーを飲んでみようと。スペース放送にあたって購入していた一つが、このブレンデッドウイスキーです。
輸入原酒を使っているため、江井ヶ嶋モルト100%の香味ではありませんが、例え輸入原酒を一部使おうとも香味の仕上げに設備の影響は少なからずありますし、何より造り手の意識が低いと、よくわからないものが仕上がってくるのは説明するまでもありません。

傾向としてはフィニッシュに使われたシーズニングシェリー樽の、近年の市場で良く見る香味を主体。ですが、バランス良く仕上がってます。
江井ヶ嶋蒸留所は実はシェリー樽の保有比率が高い(全体の半分以上)そうで、これはある意味で江井ヶ嶋のハウススタイルと言えるのかもしれません。
何より、ちゃんとユーザーが求めている味に向き合っている気がしますね。フラットに見ればようやく他社と横並びのスタートラインの立ったとも言えますが、お、中々悪くないじゃんとも、思わされる一本でした。
引き続き注目していきたいと思います。

バランタイン17年

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BALLANTINE'S
AGED 17 YEARS 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
Lot 2020~
750ml 40% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:ややドライで穏やかな香り立ち。洋梨や林檎等の白色果実を思わせる華やかでフルーティーなオーク香、乾燥した乾草や穀物のような軽く乾いたウッディネス。

味:コクがあってクリーミー、スムーズな口当たり。オーキーで華やかな含み香、グレーン由来の蜜のような甘さ、熟成したモルトの甘酸っぱさがアクセントにあり、微かなスモーキーさとほろ苦いウッディネスがじんわりと残る。

穏やかでバランスの整った味わい。アメリカンオークで熟成された内陸モルトらしい、華やかでフルーティーな香味と、グレーンのコクのある甘みが混ざり合い、近年のトレンドとも言えるキャラクターを形成している。
面白みは少ないが、実に飲みやすい。飲む温度によってキャラクターに変化があり、20度以上ではグレーンがオークフレーバーを後押ししながら前に出て、クリーミーな質感が強調される。一方で、20度未満だと線が細く爽やかな味わいとなり、ロックやハイボール等、冷やして飲むことでも強みが発揮される。繊細なバランスの上に構築された、ガラス細工のようなブレンドながら、飲み方とシーンを選ばない、ブレンダーの技が光る1本。

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ザ・スコッチことブレンデッドスコッチウイスキーを代表する銘柄の一つである、バランタイン17年。
ジョニーウォーカー、シーバスリーガルと並んで、日本では”ど定番”とも言えるブレンデッドスコッチウイスキーですが、そのためか現行品をちゃんとテイスティングしたことがあるという人は少ないようにも感じます。

バランタインというと、マニアな愛好家ほど、赤青紋章、赤白紋章と、オールドボトルをイメージしてしまうかと思います。
実際、現行品とオールドのバランタインと比べると、モルト由来の香味はライトになり、それをグレーンの甘さで補っているところや、60~70年代のものと比較するとスモーキーフレーバーもかなり控えめで、癖が無いというか、面白みがないというか・・・愛好家の琴線を刺激する個性は強くありません。

ですが、軸となっているグレンバーギーに由来する華やかさや、近年のトレンドの一つと言えるオーキーなフレーバーは昔のリリース以上に際立っており、まさに王道と言える構成。じっくりテイスティングすれば、ミルトンダフやトファースに由来する麦芽風味が感じられるだけでなく、こうしたモルトの香味をまとめ、どう飲んでも崩れないバランスの良い味わいは、他有名ブレンドとは異なる造りと言えます。
ジョニーウォーカーが力のブレンドなら、バランタインは技のブレンドです。その場を壊さない、わき役としての働きから、飲み手の経験値に応じて表情も変わる。時代によって原酒の違いはあっても、ブレンダーの技は変わらない。現行品であっても楽しめるウイスキーなのです。


酒育の会 Liqul 
Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.13
バランタイン17年 ブレンドの奥深さと”魔法の7柱の真相”

https://liqul.com/entry/5700

そんなわけで、先日公開されたLiqulのコラム 「Re-オフィシャルスタンダードテイスティング」では、バランタイン17年を取り上げてみました。
前半部分はバランタイン17年の個性や楽しみ方についてということで、あまり捻った内容にはなっていませんが、重要なのは後半部分です。

バランタイン17年と言えば、”The Scotch”に加えてもう一つ、”魔法の7柱(Ballantine's magnificent seven)"という構成原酒に関する通称があり、主観ですが、日本においては後者のほうがメディア、専門書等で多く使われている表現だと感じます。
魔法の7柱は、バランタイン17年が誕生した1937年からの構成原酒とされ、まさにバランタインのルーツという位置づけなのですが、実際はどうだったのでしょうか。本当に7蒸溜所の原酒がキーモルトとして使われていたのか。当時の状況を、各蒸溜所の操業期間や市場動向などを参照しつつ、考察した記事となっています。

要点だけまとめると、
・1937年当初、バランタイン17年は、”魔法の7柱”を用いてリリースされていなかった。
・主に使われたのは、グレンバーギーとミルトンダフ。
・残る5蒸留所は、1950年代のブランド拡張時期に結びつき、実際に7蒸溜所がキーモルトとして使われたのは1968年~1980年代後半まで。
・魔法の7柱のうち、バルブレア、プルトニーの操業期間が考察の鍵。
・1987年以降はブランドが他社に移行。構成原酒が変化。

ということで、”魔法の7柱”は1950-60年代、ハイラムウォーカー社が輸出を拡大する際、原酒確保のために傘下とした5蒸溜所の情報が、元々あった2蒸留所と合わさって”構成原酒”として誇張(あるいは誤解)されて伝わったのではないかと。
つまり「魔法の7柱なんて最初はなかったんだよ!(ナッ、ナンダッテー)」と、ブランドエピソードの核心部分に踏み込んだ内容となっています。

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(バランタイン魔法の7柱が使われていた時代の17年、1960年代から1980年代初頭のラベル遍歴。一番右のボトルは1980年代後半、アライド社時代のものであるため、レシピ、フレーバー共に異なる。)

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ちなみに、”魔法の7柱”を誰が最初に使ったかと言うと、1942年設立の輸出管理団体SWA:Scotch Whisky Associationであるとされています(ただし、時期不明)。また、それを誰が日本国内に広めたかというと、調べた限り60年代から80年代にかけては、正規代理店であった明治屋の広告※上記参照 には該当する記述が見られず・・・。初めて情報が出てくるのは、1988年から正規代理店となるサントリー・アライド社の発信のようです。
参照:https://www.suntory.co.jp/whisky/Ballantine/chp-06-e.html

現在の市場を見てみると、”魔法の7柱”は欧州等他国でほとんどPRに使われていないこともあり、いわゆるマッカランにおける“ロールスロイス”と同じようなモノだったと考えられます。
サントリーが正規代理店になった当時、既にアードベッグが創業を休止していたりと、キーモルトは変わっていた時代なのですが…。(アライド社時代、公式ページのキーモルトには、ラフロイグの表記があった。)
それでも広まった魔法の7柱。語呂が良かったということもあるとはいえ、これぞ広報戦略だなと、考えさせられますね。

バランタイン構成原酒シリーズ

なお、現行品17年の公式ページからは”魔法の7柱”という表現は消えており、あくまで歴史上の1ピースという整理。キーモルトはグレンバーギー、ミルトンダフ、グレントファース、スキャパの4蒸溜所となっています。
紛らわしいのが「レシピは創業時からほとんど変わっていない」という説明ですが、このレシピというのは構成原酒比率ではなく、モルト:グレーン比率とかなんでしょう。このグレーン原酒についても、リリース初期に使われた原酒は不明で、1955年からはダンバードン蒸留所のものが使われていたところ。同蒸留所は2002年に閉鎖・解体され、現在はペルノリカール傘下、ストラスクライド蒸溜所の原酒を軸にしているようです。

これら構成原酒については、2018年から写真の3蒸留所のシングルモルトがバランタイン名義でリリースされたり、その前には〇〇〇エディション17年、という形で4蒸溜所の原酒を強調したレシピがリリースされるなど、ブランドがペルノリカール社傘下となってからは、新しい世代のバランタインをPRする試みが行われています。
ただ、新しい時代といっても、先に記載した通りグレンバーギー、ミルトンダフはバランタイン17年をブランド設立当初から構成してきた最重要原酒であり、実は核の部分は1937年から変わっていなかったりもします。量産分を補うため、トファースとスキャパが追加されていると考えると、実にシンプルです。

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余談ですが、バランタイン・シングルモルトシリーズからスキャパ蒸溜所の原酒がリリースされなかったのは、同蒸留所が1994年から2004年まで操業を休止していたため(原酒そのものは、1996年からハイランドパークのスタッフが年間6週間のみアルバイトで操業しており、ブレンドに用いる量は最低限確保されていた)、シングルモルトに回すほどストックが無かったためと考えられます。後継品も出ていることから、少なくともシリーズの人気が出なかったことが原因…と言うわけではないでしょう。

休止の影響を受けた時代は2021年で終わりを告げ、来年以降は17年向けに確保できる原酒の量も増えてくることになります。バランタインは昨年17年以上のグレードでラベルチェンジを行ったところですが、また2022年以降どんな動きがあるのか。
香味だけでなく、現行の王道を行くスタイルを形成するブレンダーの技を意識して飲んでみると、面白いかもしれません。

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