グレングラント 31年 1969-2000 ウイスキーエクスチェンジ 56.9%
GLEN GRANT
The Whisky Excahnge
Aged 31 years
Distilled 1969
Bottled 2000
Matured in Sherry cask
Bottle No, 145/240
700ml 56.9%
グラス:不明
場所:BAR ROYAL MAIL
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★★(8ー9)
香り:濃厚な紅茶を思わせるような、しっとりとしたウッディネス。生チョコレート、ベリーやダークフルーツのソース。甘酸っぱいアロマが溶け込み、高級な洋菓子を思わせるような香り立ちにうっとりとさせられる。
味:とろりとして濃厚な口当たり。香り同様に古典的なシェリー樽由来の艶ややかで色濃い甘味に、熟したベリー系のニュアンス、皮付きの黒葡萄。余韻にかけてはタンニンを感じるものの、しなやかで過度に主張せず、リッチな甘味を引き締めて長く続く。
濃厚シェリー系の絶滅危惧種。実にリッチな味わい。シェリー感に赤系の果実風味が混じり、タンニンもこなれていてビロードのようにしなやかである。グレングラントでなくてもだいたい同じ味になるだろうが、度数があることから口内での広がりも申し分ない。これぞ真に愛好家が求めている圧殺味。
マスターの意味深な言葉と共に出された1杯。まあこの時期のどシェリーですから、色々覚悟してテイスティングに挑んだわけですが、文句なく素晴らしいオールドシェリーの一つでした。(なかなか良いお値段でしたが、確かに今の相場でこのボトルがでたら、どうなるかわからなかったですw)
モノはロンドンのウイスキーショップ、The Whisky Exchange がボトリングしたオリジナルリリース。
2000年なのでまだシングルモルトブームは火の粉レベル。ですが時期的には60年代の長期熟成原酒を30年熟成程度のピークで楽しめるという、ボトリングにおける当たり年。故に、当時からある程度評価はされていたとおは思いますが、同時期の長熟リリース群にあっては、頭一つ抜けたくらいの認知度だったのではないでしょうか。
味の傾向は、有名どころで例えるとグレンドロナックの1970~1972年あたりのリミテッドにあるような濃厚なシェリー感が主体。
一方、今回テイスティングしているなかで、近年増えているシーズニングの圧殺系にも、一部通じるところがあるなと思えました。
昔はよかった、という話ばかりをしても仕方ありませんので、話はずれてしまいますが現行のシェリー感についても触れていきたいと思います。
そのシェリー感は、言わばこの古典的な圧殺シェリーのレプリカ。復刻版というべきでしょうか。
本質的には違うもので、共通するのは濃厚でしっとりと甘いという点。経年変化でこの古典的なシェリー感になることは無いでしょうけれど、シーズニングシェリービジネスの黎明期に見られる「シェリーを直接混ぜたような質の悪いシーズニング」に比べて、近年のそれは確実に安定してきたと感じています。
蒸留所関係者から聞いた話では、ボデガ払い出しの古樽よりも、シーズニングのほうが価格が高いというシーンも見られるそうです。
今回の時代のシェリー樽事情については明確な文献が残されていませんので、推測でしかありません。ただ、当時の状況から、蒸留所がボデガから直接買い付けたもの以外に、「ボデガの古樽(アメリカンオーク)が輸送用の樽に回され、最終的には消費地であるイギリスのブレンド工場で、当時のトレンドだった甘口シェリーのブレンド保管用に使われたもの」に、かなりの数があったのではというのが持論としてあります。
その樽は特にボトラーズを中心に流通し、今回のような濃厚な味わいのリリースに繋がったと。
それらは、法規制や消費傾向の変化から製造環境が代わり1980年代には消えてしまったものですが、その分需要が増えたのがボデガ側でのシーズニングシェリー樽ビジネスです。
紆余曲折を経て、何をどうやったら求められるシェリー樽に仕上がるのか、というノウハウが積み上がり、少しずつ、かつての味に近づいてきているのではないか。
今年のエッセンスオブサントリーでリリースされた、新樽のスパニッシュオークは衝撃的でしたし、先に書いた通り2000年前後に仕込まれた原酒にも、安定した味わいのリリースが多く見られます。
これから先の時代は、偶然生まれたものではなく、意図的に作られたものを楽しむ時代となるのかもしれません。
いつかまた、このグレングラント1969にあるようなシェリー感を、ちょっと背伸びすればのめるようなくらいになってくれると良いなと思いを込めて、本記事の結びとします。