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宮城峡 マンサニージャウッドフィニッシュ 2018年リリース 48%

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NIKKA WHISKY
MIYAGIKYO 
SINGLE MALT 
MANZANILLA WOOD FINISH 
Bottled in 2018 
700ml 48% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:ジェイズバー
時期:不明
評価:★★★★(4ー5)

香り:ドライでかりんとうやアーモンドを思わせる香ばしい甘さがトップにあり、黒蜜と椎茸、デーツ、シェリーそのものが混じったようなアクセントから、ビターでサルファーなニュアンス。

味:ややベタつきのある口当たり。香り同様のシェリー感はチョコレートと椎茸出汁、微かにオランジェット。じわじわとウッディさが強く感じられる。若さはあまり目立たず、余韻はサルファリーさが漂うビターな風味。

宮城峡シェリー樽原酒らしい味と言えばらしい仕上がりだが、素性も香味も謎がある。マンサニージャの特徴?はさておき、何かシェリーそのものが混じったような仕上がりなのはフィニッシュの樽由来なのか。正直な話、良さを見つけづらい、閉口的一杯。

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2018年にリリースされた、シングルモルト余市・宮城峡の限定品(生産4000本のみ)。
今さら感のあるボトルですが、ちょうど2020年新作のアップルワイン樽熟成の情報が出始めているところであり、たまにはこういうのもいいかなと、レビューを投稿します。
なお、本リリースについては疑問点がいくつかあり、テイスティングで得られた情報からその点に関する考察、予想を以下にまとめます。

まずニュースリリース上でのメーカー公開情報。
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これだけ読むと気合いいれて樽調達してきたなぁ、と思うわけですが・・・ふと冷静になって、これがマンサニージャシェリーであることで、それって50年間も熟成できるのか?という疑問があります。

◼️疑問点(1)ソレラシステムの樽?
マンサニージャはフロール(酵母の膜)を形成して熟成させるため、基本あまり長期間熟成出来ない辛口シェリーです。
スタンダードなグレードでは平均5年程度とかそういうレベル。マンサニージャ・パサダという熟成タイプもありますが、フロールを維持出来る限界が10~15年とされていることもあり。。。
50年も熟成させたら、マンサニージャではなく違う分類のシェリー樽(アモンティリャードシェリーに近い?)になってしまうと考えられます。

まあ実際はソレラシステムで若い原酒を継ぎ足し、フロールを維持させながら熟成を継続するため、今回の樽もソレラ樽ということなのだと脳内保管。(後々、WMJの特集記事では、ニッカの佐久間チーフブレンダーがソレラシステムで使われていた樽だと説明されていましたのを発見しました。)
ただ、そうだとしてもマンサニージャで累計50年間以上ソレラを組み続けていられるのかは、自分のシェリー酒に関する知識ではわかりませんでした。

◼️疑問点(2)ベース原酒のレシピ
一方で、サルファリーさとシェリー樽原酒がそのまま混じったような椎茸っぽさのある、質が良いとは言い難い濃厚な味わいは、このウイスキーの大きな謎。
いやある意味で宮城峡らしいと言えばらしい樽感の一種なのですが、果たしてこれはベースになったシングルモルト由来か、フィニッシュで付与されたものなのかが疑問点なわけです。

公開されている情報では、ベースのウイスキーは通常のシングルモルト宮城峡と同じようなことが書かれています。
とすると、ノーマルな宮城峡にはここまでの濃厚さはありませんから、フィニッシュで付与された香味ということになります。
これがオロロソシーズニング樽でのフィニッシュなら違和感はないのですが、説明上はマンサニージャ。それもソレラで50年間使われ続けたという樽。この手の長期間使用樽は、1年そこいらならもっとクリアな感じになるはずで・・・。

例えば、殺菌のため硫黄を炊きつつ、樽輸送時に内部を保湿するために使われる保存液が残った状態で原酒突っ込んだりすれば、18ヶ月でこんな混ぜたような味と特徴的なウッディさ、サルファリーな感じになってもおかしくはない。あるいはベースの原酒が通常の宮城峡ではなく、シェリー樽比率多めで蒸留所で売ってるシェリー&スウィート的なモノだったとかなら、それはそれで違和感は無いんですけどね。

この香味が純粋に好みじゃない、という点はさておき、どーにも説明と中身が異なるというか、リンクしない1本でした。

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今日のオマケ:2020年3月発売予定の余市&宮城峡の限定リリース。アップルブランデーウッドフィニッシュについて。

毎年リリースされているシングルモルトのリミテッドエディション。今年はアップルブランデーを28年間熟成していた樽で6ヶ月間フィニッシュした、甘口タイプのウイスキーになるようです。

ニッカ味と言えば新樽風味ですが、2000年から2010年頃、シェリー樽原酒を使ったことがPRされている限定品のなかに(特に安価なものに)、シェリー?と、今回レビューしたリミテッド同様に疑問符がつく不思議な甘さのあるリリースがいくつかありました。
それはシェリー樽というより、実はアップルブランデーの樽由来なのでは?という仮説をたてたことがあったのですが、ニッカ関係者に確認するとブランデー樽は熟成に使っていない、という話だったのを覚えています。

今思えば、何らかのバルクだったのかもしれませんが、この疑問点はともかくアップルブランデー樽がもたらす味わいには純粋に興味があります。今年のリミテッドリリースがどんな仕上がりか、今から楽しみです。


※身内の法事調整と、仕事の重要な会議が重なっており、作業に集中するためブログ&ネット断ちをこの週末からしていました。一応区切りをつけることができたので、今日からまたマイペースに再開です。






シングルカスク 余市 10年 2008-2018 マイウイスキーづくり 59% #409288

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NIKKA WHISKY 
YOICHI 
SINGLE CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008.5.24 
Bottled 2018.9.21 
Cask type New American Oak Cask #409288 
700ml 59% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:―
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:焦げたチョコレートクッキーのような、ビターなトップノートと色濃い甘味。ウッディなアロマと合わせて焙煎した麦芽のような香ばしさ、微かに溶剤系のニュアンス。力強いアタック。

味:ウッディでスパイシー、パワフルな口当たり。チャーオーク由来のキャラメル系のメローな甘みの中で、オレンジやパイナップルの果汁を思わせるフレーバーがアクセントに。余韻は味わいの中で感じられた甘みを残しつつ、スパイシーで舌の上がざらつくような焦げ感を伴うウッディネスが長く続く。

樽感のしっかり溶け込んだウッディな味わいが主体。ビターな樽由来の香味構成に、余市らしい香ばしい麦芽風味と、フルーティーさに通じる酸がアクセントになっている。加水に負ける感じではないが、香りにワックスのような、味わいはビターオレンジのような、特に香りには異なる要素が加わる。


先日我が家に届いたマイウイスキーづくりの余市10年 Cask #411127。例によって購入できるだけ購入し、同様にウイスキー繋がりで違う年度のマイ余市を購入していた方々と、それぞれの余市をトレードしました。
こうして参加者同士で繋がりが生まれて、お互いのボトルをシェアできるのは参加者の特権というか、広義の意味で言えば樽オーナー制度ならではの楽しみだと思います。

今回のレビューアイテムは、北海道のSさんとトレードしたもの。自分のボトルよりも1年前の会のものです。
自分にとって節目の年だった、この2008年。企画そのものは知っていましたが、就職したばかりでとても平日休みをとれる状況になく・・・。2008年の余市は個人的に思い入れのあるボトルだったりします。

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(マイウイスキー余市の樽違い。同じ新樽で10年熟成だが、樽の状態、置かれた場所、あるいは熟成期間中の気候によって色合い、味わいが異なる。色合いだけで言えば中央と右2つはほぼ同じで、気持ち右側のほうが濃いような気もするが、香味はそれぞれ大きく異なる仕上がり。)

今回のボトルである、Cask #409288の特徴はビターなウッディネス。
ハイプルーフなカスクストレングスらしい、パワフルなアタックの強さ。フレーバーは焦がしカラメルのようなほろ苦さと舌の上でざらつくビターなウッディネスが主体としてあり、そこにチャーオークのメローな甘味、余市のニューメイクがもつ酸味が熟成によって変化した柑橘系のニュアンスがアクセントとなっています。

これが他の余市とどう異なるか。上写真の我が家で開封済みの同じ10年では、写真左の#411127はウッディーさが押さえ目な代わりにエステリーでフルーティーな果汁感があり。今回のレビューアイテムである#409288と、同じくらいの濃さを感じさせる色合いである#406599(右)は、仕込みが11月でボトリングも11月と熟成が最も短いが、熟成環境の違いか最も濃厚なウッディさとメローな味わいがメインにあります。
アルコール度数もほぼ同じですが、単に樽の強さだけでなく、アルコール感の感じ方、アタックの強さが異なるのも面白いです。

しかしこうして様々な新樽熟成の余市を経験して思うのが、新樽熟成とその樽感を受け止めるだけのパワフルな酒質を作り出す余市の偉大さ。たまにピークをはずしているものもありますが、どれも一定レベル以上に仕上がる安定感があり・・・。
決して万人受けの酒ではないと思いますが、我々愛好家としてはこれで良いんだよこれで、と思える尊いウイスキーなのです。

シングルカスク 宮城峡 10年  2006-2016 マイウイスキー塾 56% #115323

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MIYAGIKYO 
NIKKA WHISKY 
SINGLE CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2006.06.10 
Bottled 2016.11.08 
Cask type Remade Hogshead #115323 
700ml 56% 

グラス:リーデル
場所:BAR Fingal 
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディでややエッジの立った香り立ち。使い込まれた木製家具、微かに溶剤的な刺激。カステラの茶色い部分、アーモンドやブランビスケットの甘みと、奥にはエステリーなニュアンスも伴う。

味:ほろ苦くウッディな口当たり。序盤はビターでざらつくようなウッディさ、アタックも強めだが、余韻にかけてオーキーなフルーティーさ。ファイバーパイナップルや洋梨を思わせるフルーティーさが混じる。

宮城峡の柔らかくも一本芯の通った素性の良い酒質に、新樽部分由来のウッディさと、多少溶剤的なニュアンスが混じり、フルーティーさを上書きしているやや個性的な仕上がり。一言で粗削りな木材感のある香味構成。余韻の戻り、少量加水したときの変化のなかで、オーキーなフルーティーさの片鱗を感じることができる。


宮城峡蒸留所で2002年から毎年開催されている、マイウイスキー塾で2006年に仕込まれたシングルカスク。BARフィンガルのマスター谷嶋さんが参加され、10年後に払いだされたものだそうです。

宮城峡の酒質はソフトで素直、微かなピーティーさの混じるハイランドタイプ(ニッカはローランドと言ってますが)。故にバーボンバレル系の樽との相性が良く、12~15年でフルーティーな美味しいモルトに仕上がる傾向があります。
一方、今回熟成に使われているリメード樽は、新樽と古樽(バーボン樽)を組み合わせるためか味のブレ幅が大きい傾向があり。
新樽部分の影響が強めに出ているのか、色合いはやや濃いめで、味わいもウッディ。ただ、甘味や香りはそこまで強くないが、日本的な木材感が目立つ構成なのです。

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異なる2つの木材を合わせるためか、その個性がどう作用したかで、仕上がりが変化しているようです。
例えば、今回のボトルの対極にあるような宮城峡マイウイスキーカスクが、以前レビューした2005年蒸留の#300250(上写真)。
こちらは新樽系統のウッディさがそこまで主張せず、スコッチモルトのバーボンバレル、あるいはバーボンホグスヘッドで長期熟成したような、綺麗に黄色い系統のフルーティーさが付与された仕上がりです。

先日、谷嶋さんも参加されているブラインドテイスティンググループの定例会で、極悪にもこのボトルを出題したところ。。。今回の宮城峡10年の話題が出ていました。
曰く、うちのカスクはこんな感じにはならなかったなあと。

マイウイスキーは10年と熟成期間が決まっているため、樽の状態、置かれた環境等で仕上がりは必ずしもピークのものとは限りませんし、フレーバーも一定にはなりません。
ですが、この誤差こそがマイウイスキーの魅力。今回のボトルのような粗さというか、余分なウッディさの残る方が手作り感があってマイウイスキーらしくも感じます。
それこそ、仮に自分のマイウイスキーが今回のような仕上がりでも、それは10年間の苦楽を思い返し、思いでと共に笑顔で楽しむことができる1本だと思います。

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今日のオマケ:トルブレック バロッサバレー ファクター2004
パーカーポイントで最高点の100点を始め、90点台後半を連発しているオーストラリアのシラーズ。2004年は97点という高得点を獲得したヴィンテージだそうです。(写真左のボトル。右側は以前オマケで書いたウッドカッターズ)

新しいヴィンテージのものは濃厚で、強すぎるため熟成前提のボトルですが、確かに美味しい。
新世界シラーズでありがちな、豊満で露骨なベリー系というタイプではなく、カカオ多めのチョコレートにブルーベリー等の黒系果実感。湿ったウッディネスにスパイス、微かにリコリスのようなニュアンス。全体的に落ち着きがあり、タンニンも熟成を経てしなやか。また、時間経過でじわじわと開く果実感に上質さもあります。

この日はスタンダードグレードのウッドカッターズとも飲み比べましたが、比較するとウッドカッターズの味わいがなんともあざとく、雑に感じられてしまう。。。熟成期間の違いもあるとはいえ、罪なワインです。
なおここに合わせるのは肉、こういうワインにはシンプルに赤身の肉に限ります。写真だけでもう雄弁に間違いないことが語られる説得力。
申し訳ないがウイスキーでは得られない至福のひととき、たしかな満足。。。

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シングルカスク 余市 10年 2009-2019 マイウイスキーづくり 59% #411127

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NIKKA WHISKY 
YOICHI
SINGLE CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2009.4.18 
Botteld 2019.8.29 
Cask type New American Oak Cask #411127 
700ml 59% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
場所:自宅
評価:★★★★★★★(7)(!)

香り:トップノートはエステリーで、すぐに松の樹皮を思わせるような無骨さのあるウッディさ、ローストアーモンド、チャーオーク由来のキャラメルの甘味。奥には林檎、オレンジママレード、ほのかに甘栗。スパイスのアクセント。

味:リッチな口当たりから、フルーティーな甘味がとろりと広がる。ボディはしっかりとして厚みがあり、リンゴのカラメル煮やみかん缶のシロップ。甘味だけでなく柔らかい酸味の後から、濃いめの紅茶を思わせるほろ苦さ、タンニンがアクセント。微かなピートと共に心地よいフィニッシュが長く続く。

厚みのあるボディとアタックの強い酒質に、新樽らしい樽感。焼き具合がそれほど強くないのか、エステリーかつフルーティーな要素がチャーオークフレーバーのなかに溶け込んでいる。余韻にかけては微かなピートフレーバーもあり、ただ樽感が濃いだけではない香味の多彩さが素晴らしい。少量加水良し。ロックも悪くはないが、チェイサーと共にストレートで楽しみたい特別な1本。


ニッカウイスキーがファン向けの企画として、宮城峡、余市でそれぞれ年10回程度開催しているウイスキーづくり体験会が、通称「マイウイスキー作り(宮城峡はマイウイスキー塾)」です。

参加のためには希望日程で抽選に申し込み、当選する必要があるのですが(日程が金曜日から1泊2日であるため、一般の会社員は金曜日に休暇を取得する必要があるのもハードル)。参加すると、それぞれの蒸留所でのウイスキー作りにおける主要な行程を体験出来ると共に、10年後には自分達で樽詰したウイスキーが1本(複数本必要な方は別途購入)贈られてくるという企画。元々人気はありましたが、近年のジャパニーズウイスキーブームもあって、倍率は30倍程度にまで増えていると聞きます。

今から10年前、本格的にウイスキーにハマった頃の自分は、日頃の感謝を込めた旅行のプレゼントとして父親を連れて参加。
それから10年の間、公私とも本当に色々ありましたが。。。まあ個人的な苦労話はさておき、ウイスキーの経験値としては、この1本を味わい尽くすための準備が充分できたのではないかと自負しています。

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(2009年、イベント当日に配布された、余市のニューメイク。厳密に言うと蒸留時期が半年ほど違うものだが、この飲み比べのために10年間飲まずにとっておいた。ボディが厚く、香ばしい麦芽風味に酸のしっかりあるタイプで、ピートレベルはライトピート。ここにアメリカンオークの新樽由来の風味が合わさることで、樽由来の甘味と苦味に加え、調理加工した柑橘類のような甘酸っぱさを伴う香味へと繋がったと考えられる。)

ベースとなっている原酒は上記の通り。樽は250リットルの新樽ですが、この樽の焼き具合(あるいはウイスキーと接する部分の木目の違い)と、倉庫内の熟成場所の違いからくる微妙な差が積み重なって、10年間で樽毎の大きな味わいの違いをもたらしています。

どれくらい異なるかというと、同じ年度の仕込みであっても、もっとガッツリ新樽のチャーオークフレーバーが効いたものがあれば、自分の樽のようにバランス寄りでフルーティーさを伴うタイプもある。あるいは、あまり樽感が乗り切らず、若々しいあタックの強さがメインに出ているものもある。
今回のボトルは、あと2年くらいは熟成させたかったという気持ちもありますが、現時点で普通に美味しいボトルですし、酒質とのバランスもとれています。

ウイスキー仲間からは概ね好評で、交換で使った分を除いても既に2本目に突入している消費速度(笑)。こういう原酒に育ってくれた、巡り合わせに感謝したい。
何より、自分の分身とも思える樽が、自分が生きている環境とは異なる場所に存在して、現在進行形で成長しているという感覚は、なかなか特別感のあるものでした。
現在は当時と異なり、クラフト蒸留所のビジネスで共同オーナー制度等も珍しくなくなりましたが、ニッカさんにも是非継続してほしい、魅力溢れる企画だと思います。
また、いつか参加してみたいですね。

ザ ニッカ テーラード 2019年リリース 43%

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THE NIKKA 
NIKKA WHISKY 
"Tailored" 
Tailor-designed to perfection 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプルTさん
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:ウッディでメローなチャーオーク香。オレンジピール、松の樹皮のような無骨なウッディネス。香ばしくビターな要素も感じさせるが、奥には溶剤系のヒリつくようなアルコール感を伴う。

味:口当たりはメローでビター、とろりとした質感に続いてスパイシーな刺激。香り同様に新樽系のニュアンスの裏に、オークのバニラ、蜂蜜や穀物を思わせるグレーンの甘味、続いて若いモルティーさも感じられる。
余韻は焦げたような苦味とピートフレーバーを伴う、スパイシーなフィニッシュ。

トップノートにあるニッカ味とも言えるチャーオーク系の要素、余市モルトのモルティーさが強く、度数以上にパワフルなブレンド。一見するとまとまっているように感じるが、奥にはヒリつくようなアタックや、若い原酒の個性も見えてくる。加水すると樽感は控えめになるが、全体的に繋がりが良くなって飲み口もマイルド、バランスが良くなる点は評価ポイント。


2019年4月、ザ・ニッカ12年が終売になり、それと同時にリリースされた代替品とも言えるNAS仕様のブレンデッド。テイラード。
12年からNAS仕様となったことで、若くなるのではとか、発売前は憶測的な意見が少なからずあったのですが。。。
飲んでみて、それは事実だったなと言う部分と、幅広い熟成年数からくる原酒の個性を上手く使っているな、という2つの印象を受けました。

全体の構成は、モルト比率高めで骨格のしっかりとした香味。旧12年で感じられた味わいのベクトルは維持されており、熟成された原酒の雰囲気も漂うため、まったくの別物というワケではありません。
この辺りに本社側の決定に対するブレンダーの意地というか、ニッカの個性は斯くあるべし、というレシピの方向性が伝わってくるようです。

ただ、使用している原酒の熟成年数を落としたからか、旧12年に比べて全体の香味を繋いでいるコク、粘性を伴う甘味が控えめになり。。。モルトのほうも黄色系統のオーキーなフルーティーさがトーンダウンし、逆にバニラ系の甘味や若くて勢いのある風味が強く出ている部分があります。
この辺りが、古い原酒のウッディさだけでなく、比較的若い原酒に樽感を強く付与したような、長短混じり合う要素。どちらが悪いという話ではありませんが、例えば、12年熟成の原酒のみと、6~20年までをブレンドして平均12年では同じもののにならないように、同じベクトルだけれど違うものに仕上がって当然なんですよね。

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(テイラードを飲んでいて、最も目立つ香味の傾向が、蒸留所限定のウッディ&バニリックのそれ。12年では新樽以外に宮城峡のバーボン樽系統の原酒、同様に蒸留所限定に例えるとフルーティー&リッチタイプの香味が良い仕事をしていたが。。。)

公式情報ではモルト原酒のなかで軸になっているのが、ピーティーな余市モルト、宮城峡のシェリー樽原酒という書きぶり。確かに余市の要素は、余韻にかけてビターなピートフレーバーやアタックの強さで分かりやすいと感じます。

一方で、宮城峡のシェリー樽というのは若干の疑問が。。。ニッカのシェリー樽原酒といえば、硫黄香が代表的キャラクターと言える構成ですが、その要素が感じられない。ということは、リフィルか、最近の仕込みの若い原酒か。
使ってるのは事実で、ほんのりシェリーっぽいニュアンスはありますが、目立つほどの量とは言えず。各個性の繋ぎになる役割は、上記新樽のエキスが担っているように思える作りです。

なお加水したりロックにしたり、もうひとつ繋ぎになる(全体をおとなしくする)要素を加えていくと、バランスがよくなりまとまりも出るので、そういう飲み方を前提としているのかもしれません。
テイラード(仕立て屋による作品)の名を冠するには少し手助けが必要ですが、古きを押さえつつ新しさも備えた、今のジャパニーズウイスキー業界のトレンドとも言える味わいだと思います。

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