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安積蒸溜所 山桜 2017-2021 シングルモルトウイスキー 干支ラベル“虎” #17203

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ASAKA DISTILLERY 
YAMAZAKURA 
Aged 4 years 
Distilled 2017
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel #17203 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:アメリカンオーク由来のバニラ香。パイン飴に柑橘のワタ。合わせて東京沢庵を思わせる酸や、ウッディさには檜のような乾いた木材のアロマが混じる、膨らみのある香り立ち。しっかりとした個性を感じさせる。

味:口に含むととろりとした質感から蜂蜜、金柑、じわじわとほろ苦く柑橘のワタ。奥行きはそこまでないが、好ましい要素があり、余韻はオーキーなフルーティーさと缶詰シロップのような黄色い甘みを感じつつ、若干の粉っぽさが舌に残る。嫌な若さはなく、含み香に微かに日本酒のようなフレーバーが面白い。 

安積蒸留所のノンピート&バーボン樽熟成。50%に加水調整されているが、ボディは崩れておらず、蒸留所のスタンダードと言える個性を感じることができる。
少量加水するとさらにフルーティーに。トップノートにある篭ったような酸が引き伸ばされ、パイナップルやみかんの缶詰のシロップを思わせる甘酸っぱさ、そして麦芽由来の軽い香ばしさと好ましい変化がある。約4年熟成だが、最初の飲み頃と言え、今後の成長に加えて7〜8年程度で予想されるピークが楽しみ。

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福島県郡山市、笹の川酒造安積蒸留所が毎年リリースする予定となっている干支ラベルシリーズの2作目。同蒸留所は2016年に創業(再開)しており、その2年目の仕込みの原酒となります。
ラベルには今年の干支である虎と、毎年共通になっていくというウイスキーキャットが描かれている。昨年は牛、来年はウサギ、ちょっとした縁起物ですね。

これまでの安積蒸留所のノンピートモルトは、安積THE FIRST に加え、今作を含めてシングルカスクが4種類ほどリリースされています。
これらは全てバーボン樽原酒であることもあって、実は香味のベクトルは大きく変わりません。最大の特徴とも言えるのが、香味にある個性的な酸であり、樽感が淡いと麦芽風味が主体に、一方でバーボン樽由来の要素が強く混ざり合うと、フルーティーな味わいにつながってきています。

何を当たり前なことをと言われそうですが、一番プレーンだったのはTHE FIRST、逆に今回の虎ラベルは樽感が一番しっかりついているのではないかとも思います。
そのため、過去のリリースと今回のリリースを比較することで、熟成3年から4年にかけて、数ヶ月単位であっても起こっている、言わば成長期のモルトの変化を見ていただくこともできるのではないかと感じています。

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(ラダー社から2021年にリリースされた、同じ2017年蒸留のシングルカスク。こちらの方が麦芽風味がはっきりとして、樽感は控えめというかややドライ寄り。)

安積蒸留所についてはコロナ前は1年に1度、見学をさせて頂いており、当然ニューメイクの変化も現地で見てきました。1年目より2年目、2年目より3年目のほうが個性が際立っており、麦芽の甘みも出ていたのを覚えています。
2020年、2021年と訪問できていませんでしたが、先日ちょっと縁があって2021年仕込みのニューメイクをテイスティングさせてもらったところ、2019年に導入された木桶の効果か、蒸留所の個性はそのままに、麦芽風味の厚みやフルーティーさがニューメイク時点からさらに出ており、蒸留所として確実に進化を遂げていたことが印象深かったですね。

安積蒸留所は、これまで3年熟成以上のリリースだとバーボン樽原酒しかありませんが、今回の干支ラベルで熟成のピークに向けた期待値と、そのポテンシャルを充分感じ取れるのではないかと思います。
一方で、蒸留所としてはそれ以外にシェリー樽、ミズナラ樽、ワイン樽等多くの原酒も仕込んでおり、今後のリリースで個性と樽感がどのように結びついてくるかも楽しみです。中でも、ミズナラ樽との親和性は特に高いのではないかと期待しています。

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余談ですが、先日発生した最大震度6強の地震。蒸留所として人的被害はなかったとのことですが、少なからず設備への影響はあり、また事務所や居住環境についても大きな被害を受けたと聞いております。
日本にいる以上地震の発生は避けて通れませんが、東北に縁のある当方としては、東北地方にだけ集中してしまう現状に、不条理を感じざるを得ません。そうであってもなんで・・・と。

難しい状況の中ではありますが、全国のクラフト蒸留所を見ても、安積蒸留所はいい意味で個性的であり、厚みと膨らみのある若い酒質を作ることができていると感じています。
がんばれと、軽々しく言うのも気が引けるところですが、それでも頑張っていただきたい。引き続き良いウイスキーを作っていただきたい、そう強く願っています。

安積蒸留所 山桜 ブレンデッドモルトジャパニーズウイスキー 50% シェリーウッドリザーブ

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ASAKA DISTILLERY 
YAMAZAKURA 
BLENDED  MALT JAPANESE WHISKY 
SHERRY WOOD RESERVE 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6ー7)

香り:ウッディで甘くフルーティーな香り立ち。麦芽や胡桃の乾いた要素に、アプリコットジャムや林檎のカラメル煮を思わせるしっとりと甘いアロマ。微かにスパイシーな要素が混じり、さながら洋菓子にトッピングされたシナモンやマサラを連想する。

味:リッチでコクのある口当たり。林檎ジャムや洋梨の果肉の甘み、栗の渋皮煮、紅茶を思わせるタンニン。微かに乾いた麦芽のようなアクセント。樽由来の要素がしっかりあり、それが果実の果肉を思わせるフルーティーさと、程よい渋みとなって口の中に広がる。
余韻はオーキーで華やか、スパイシーな刺激。黄色系のフルーティーさが戻り香となって長く続いていく。

まるで熟成庫の中にいるような木香と、しっとりとして熟成感のある甘いアロマが特徴的。追熟に使われたシェリーカスクは2〜3回使われたものか、全体を馴染ませている反面、シェリー感としては控えめで基本はバーボン樽由来の濃いオークフレーバーが主体。
構成原酒はおそらく2種類。一つは「かねてより弊社が貯蔵熟成しておりました原酒(背面ラベル記載)」で、10年程度の熟成を思わせるフルーティーさ。もう一つが4〜5年熟成と思しき安積蒸溜所のスパイシーで骨格のはっきりとした原酒。これらが混ざり合い、複層的な仕上がりを感じさせる。個人的にかなり好みな味わい。

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安積蒸留所を操業する笹の川酒造が、第二熟成庫の建設を記念してリリースした1本。440本限定。
本製品は安積名義ですがブレンデッドジャパニーズの区分であり、安積蒸留所の原酒に加え、背面ラベルに記載の通り「同社が貯蔵してきた原酒(国産)」がブレンドされ、シェリーカスクで18カ月のマリッジを経ているのが特徴となります。

本リリースについてはこれ以上明確な情報がなく、同社山口代表の言葉をそのまま伝えれば「シークレットリリースについて公式に情報を発信できませんが、そこも含めて予想しながら楽しんで頂きたい。」と。
また「愛好家がそれぞれの視点から予想を発信することは止めない」とのことなので、当方もいち愛好家として、本リリースの構成原酒等に関する予想を、以下にまとめていきます。

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予想の結論から言えば、構成原酒は
・安積蒸留所ノンピートモルト バーボン樽 4年程度熟成原酒
・秩父蒸留所ノンピートモルト(安積蒸溜所熟成) バーボン樽 10年程度熟成原酒
この2種類を1:1程度か秩父側多めの比率でバッティングして、リフィルシェリー樽でマリッジ。シェリー感は明示的にこれという色濃いものは出ていませんが、繋ぎとなるような品の良い甘さが付与された上で、50%に加水調整したものではないかと。

フレーバーとしては、秩父蒸溜所が昨年リリースした秩父 THE FIRST TENに似た、熟成を経たことで得られるフルーティーさと濃いオーキーさがあり。そこにほのかな酸味、骨格のはっきりしたスパイシーさと麦芽風味…これは安積蒸溜所のノンピート原酒でリリースされた、安積 THE FIRSTの延長線上にある個性。
既存のリリースからも感じることが出来る個性が、混ざり合ったブレンデッドモルトであると考えています。

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また、今回のリリースの特徴であり、そのヒントではないかと思うのが、シングルモルトではないのに安積(#あずみじゃないよあさかだよ)名義となっていることです。
笹の川酒造のウイスキー貯蔵庫には、蒸溜所の操業前から秩父蒸留所の原酒が10樽ほど保管されており、私の記憶が確かなら、該当原酒は蒸溜所を見学した2018年時点で8年熟成だったはずです。

その時点で今回のリリースに通じるフルーティーさが既にあったわけですが、2021年までマリッジ期間の18か月を含め3年強の熟成を経たとすれば、今回のリリースの構成原酒として違和感はなく。
何より蒸溜所は異なるとしても、ウイスキーの熟成で重要なファクターである”熟成環境”が、ほとんどの期間を安積蒸留所の環境下にある原酒なら、安積名義としてリリースするブレンデッドモルトウイスキーであっても同様に違和感のない構成であると言えます。

以上のようにいくつかの状況材料と、こうだったら良いなと言う願望が混ざった予想となっていますが、少なくともブレンドされている原酒の片方は10年前後の熟成期間を彷彿とさせるものであることは違いなく。そうなると、国内蒸留所でそれだけの原酒があって、しかも笹の川酒造が”かねてから熟成させていた”となる蒸溜所は、おのずと限られているわけです。

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(建設中の安積蒸留所の第二熟成庫。画像引用:笹の川酒造安積蒸留所公式Twitter

さて、ここからは仮定の話の上で、自分の願望というか、笹の川酒造とイチローズモルトの繋がりについて紹介します。

今や世界的なブランドとなったイチローズモルト。その設立前、肥土伊知郎氏が東亜酒造・羽生蒸留所の原酒を引き取った際、笹の川酒造がその保管場所を提供したという話は有名です。
ただしこれは微妙に事実と異なっており、日本の酒税法の関係から原酒を買い取ったのは笹の川酒造であり、イチローズモルト(ベンチャーウイスキー)の体制が整うまでは、笹の川酒造がイチローズモルトのリリースを代行していたのです。

ウイスキーブームの昨今なら、こうしたビジネスも受け入れられるでしょうが、当時は2000年代前半、ウイスキー冬の時代真っ只中。ほぼ同時期、余市蒸留所ですら1年間創業を休止した時期があったほどで、日本のウイスキー産業は明日もわからぬ状況でした。
そんな中大量の原酒を買い取り、血縁があるわけでもない1人の人間のチャレンジに協力する。なんて男気のある話だろうかと、思い返すたびに感じます。

さらに、笹の川酒造に保管されていた秩父蒸留所の原酒10樽。これは確か2010年頃に蒸留されたもので、ブームの到来はまだ先であり、蒸留所として製品がリリースされる前の頃のもの。
原酒を購入した経緯もまた、両者の繋がりの強さ、冬の時代を共に超えていこうという助けの手であるように感じます。

一方で、笹の川酒造が安積蒸留所として2016年にウイスキー事業を再開するにあたっては、秩父蒸留所と伊知郎さんが協力したのは言うまでもありません。
今回のリリースの構成原酒を秩父と安積とすれば、それは単なるブレンデッドとは言えない、熟成期間以上に、長く強い繋がりが産んだウイスキーであると言えます。個人的には待望の1本ですね。
単純に日本のブレンデッドモルトとして飲んでも美味しい1本ですが、是非そのバックストーリー含めて考察し、楽しんで貰えたらと思います。

963 ミズナラウッドリザーブ 21年 福島県南酒販 46%

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963
FINE BLENDED WHISKY 
MIZUNARA WOOD RESERVE 
Released in 2021 
700ml 46% 

評価:★★★★★★(6)

香り:様々な樽香、重層的なウッディネスがグラスの中から立ち上がってくる。トップノートはキャラメルのような甘みとチャーオーク、サルファリーさ。スワリングしていると、干し柿、林檎のキャラメル煮、蒸かした栗、バニラ、いくつかのスパイス。複数の樽を経たことによる樽感の重なりが、この複雑さに繋がっている。

味:味はまろやかで熟成感があり、まずはシェリー樽を思わせる色濃い甘みとドライフルーツの酸味。そこに煮だした紅茶やビターなフレーバー、微かにニッキのようなスパイス、樹液っぽさと腐葉土、奥には古酒感を伴う。余韻は焦げ感のあるビターなウッディネスが強く主張し、複数の樽香が鼻腔に抜ける。

ベースとなったブレンドの原酒構成が、シェリー樽熟成タイプとバーボン樽熟成タイプの輸入ウイスキー。それを国内でバーボン樽に入れてマリッジし、その後さらにミズナラ樽の新樽(チャー済み)でフィニッシュをかけた…といったところだろうか。長期熟成スコッチ備わるフレーバー、国内で追加熟成させたことによる強い樽感、それをさらに上塗りするミズナラエキスという、一見してカオスのように見えて、熟成感と加水が橋渡しとなり、重層的な仕上がりとして楽しめるレベルにまとまっている。
ロックにするとこれらのフレーバーが馴染み、余韻の苦みも落ち着く。バランスがとれて口の中に入ってくる。

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先日福島県南酒販さんからリリースされた、963ブレンデッドウイスキーの限定商品。同ブランドでミズナラと言えば、約3年前に17年のブレンデッドモルトがリリース。これは愛好家が求めているミズナラフレーバーを疑似的に再現していた、今後のミズナラ樽の使い方に新しい可能性を感じさせる1本であったところ。
今回はその空き樽を使って仕込んでいたものかと思いきや、通常リリースしている21年を新樽のミズナラ樽で2年間追加熟成したものだそうです。

ミズナラは他の樽材と同様、あるいはそれ以上にエキスが出やすい樽材だと言われています。なので長期熟成に用いるには、新樽ではなく何度か使い古したものが良いと、以前S社の方から伺ったことがあります。
なので今回のような新樽はフィニッシュに用いて少し落ち着かせるのが、定石と言える使い方の一つであるわけですが、それでも2年間、流石に色が濃いですね。キャラメルのような感じの色合いで、味わいもかなり濃厚に樹液を連想させるフレーバーがあります。

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(※2017~2018年にリリースされた963ブレンデッドモルト17年ミズナラウッドフィニッシュ。こちらはバーボン樽熟成の内陸モルトが主体であり、オーキーな華やかさとフルーティーさにミズナラ樽のスパイシーさが混じることで、S社からリリースされるミズナラ系の香味に似た仕上がりとなっていた。)

他方で、このウイスキーが単にエキスが濃いだけで終わらないのは、ベースのブレンドの個性にあります。
963ブレンデッドウイスキーは、スコットランドから輸入した原酒を、笹の川酒造の熟成庫で追加熟成して、それをブレンドすることで作られています。
今回は21年オーバーという長期熟成のバルクが用いられているわけですが、おそらく既に混ぜられているブレンデッドウイスキーバルクでシェリー樽タイプのものに、モルトウイスキーをブレンドしているのではないかと推察します。

香味の中に感じられるシェリー樽のフレーバーが、グレーン、モルト、どちらにも影響しているように感じられること。21年オーバーのバルクグレーン単体なら、もっとメローでバーボン系のフレーバーが強くなるのにそれが無い。一方で古酒感と表現されるような、オールドブレンデッドウイスキーのシェリー系銘柄で感じられるカラメル系のフレーバーが、全体の中で複雑さと奥行きに繋がっているのです。

日本とスコットランド、異なる環境がもたらす原酒への影響を活かして作られるブレンドは、少なくともスコットランド単独では作り得ない物だと感じています。
二つの地域が育てるウイスキー、それを活かすブレンド技術。日本側はまだ荒削りで原酒も足りませんが、時間が経って原酒が育ち、ノウハウが蓄積することで今後新しいジャンルとして確立していくことを期待したい。そんなことも感じたウイスキーでした。

安積蒸溜所 山桜 ザ・ファースト ピーテッド 50% 笹の川酒造

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ASAKA PEATED 
"The First" 
YAMAZAKURA 
JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 
Phenol 50PPM
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)(!)

原酒構成の主体ばバーボン樽熟成のそれ。未熟香の少なさから若さは目立たず、適度にコクのある口当たりからフレッシュなスモーキーさ、柑橘系のアクセント。フルーティーというよりも、酸味や柑橘の皮を思わせるほろ苦さがあり、余韻に残るピートフレーバーには、バーボン樽由来のオーキーさと、モルトの甘み、香ばしさが混ざる。

香味の傾向は、アードベッグかカリラにラフロイグを足したようなイメージ。勿論ピートフレーバーの傾向が違うので、余韻にかけてはヨードや磯っぽさではなく、焚き木や野焼きの後のようなスモーキーさが主張してくる。その点、ピートはポートシャーロットタイプと言えるかもしれないが、酒質そのものの傾向が異なっており、クリアで柔らかい麦芽風味としっかりとした酸が特徴。嫌なところは少なく若さがプラスに働いて、いい意味でフレッシュなフレーバーを楽しめる。

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安積蒸留所(笹の川酒造)が、2016年の再稼働後、2017年から仕込んでいた最初のピーテッドモルトで、3年熟成を迎えた原酒をバッティングした1本です。
2021年に入って最初に我が家に迎えた1本で、これは美味い、いや上手いと言うべきでしょうか。正直、驚かされました。

スコッチのピーテッドモルトに置き換えるなら、8年程度の熟成を思わせるクオリティ。勿論、香味の中に熟成の短さを感じる部分が全くないわけではないですが、大半は嫌な若さではなく、ピートフレーバーに勢いがあることで、はっきりとしたスモーキーさを味わえる点がポイントです。
また、加水ですが程よく骨格が残った口当たりで、樽感、酒質的にもまだ成長の余地を感じる仕上がり。3年でこれは十分すぎる完成度と言えますし、あと5年後のリリースが今から楽しみです。

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当ブログの読者の皆様に前置きは不要と思いますが、安積蒸溜所のある福島県郡山市は、個人的に所縁があることもあって、2016年の蒸留所再稼働初期から成長を見させてもらってきました。
ニューメイクも、ニューボーンも、蒸留所見学でのカスクサンプルも・・・。

直近だと、2019年にリリースされた、安積蒸留所の3年熟成第一弾・ノンピート仕様のASAKA "The First"(写真右)は、控えめな樽感の中に、酒質の素性の良さを感じることが出来る仕上がり。現時点では完成と言えるレベルではないものの、問題を先送りした「将来に期待」ではない、純粋に成長を期待させる1本でした。
そうした経験値から、今回のリリースについても安積蒸溜所のキャラクターなら・・・と、ある程度予測をしていたわけですが、正直このピーテッドはそれを大幅に上回っていたのです。

酒質の素性の良さ、安積らしい柔らかい麦芽風味の中に酸味の立つような味わいが、ピートフレーバーと合わさって、どこかスコットランド的なキャラクターも感じます。良い熟成の傾向ですね。
こうして評価すると「いやいや、くりりんさんは安積推しだから、甘くつけてるんじゃないの?」と、そんな読者の声が聞こえてきそうですが、本音で思ってなきゃここまでストレートには書きませんから(笑)。行間読んで、行間。

ただ、飲んでいてあれ?と思ったのが、3年前に安積ピーテッドのニューメイクを飲んだ印象は、カリラとラガ、それこそ「ラフロイグっぽい感じじゃない」とまで3年前の自分は言い切ってるんですよね(汗)。
それが今回のコメントですから、当時の自分には猛省を促したい。。。でも再度ニューメイクを飲んでも、今回のリリースで感じたようなラフっぽさはないので、原酒の成長って面白いなと。
こういう成長をリアルタイムで経験できるのも、今の時代を生きる我々愛好家の特権ですよね。

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ちなみに、他のクラフトのピーテッドはどうかというと、最近リリースされた津貫、静岡含めて全蒸溜所の3年熟成前後の通常リリースは全て飲んでいますし、カスクもいくつか頂いていますが、2016-17年蒸留ならシングルカスクは厚岸、通常リリースなら安積が一番好みでした。

比較対象として、手元にあった3年熟成のキルホーマン100%アイラ 1st Release 50%と比べても、安積のほうが酒質の素直さというか、素性の良さを感じます。
ここに2018年は設備をバージョンアップした三郎丸、麦芽の粉砕比率などを見直した長濱も入ってくるので、日本のクラフトの成長はまさにこれからで、目が離せません。

一方、今回の安積ピーテッドは複数樽のバッティングで、加水調整もされています。樽毎の違いから、必ずしもすべてが良い熟成ということはなく、作り手の調整によってカバーされている要素もあるでしょう。若い原酒は特にそうした違いが大きい印象があります。
それでも、良い原酒が無ければこうしたリリースにはなりません。若い原酒の制限があるなかで、まさに”上手く”作ったなと感じるわけです。

安積蒸留所については、蒸溜所そのものの認知度というか、蒸溜所の印象としてノンピートのほうが強いのではないでしょうか。ピーテッドについてはあまり知られていないと思いますが、今回のリリースは是非どこかで飲んでみてほしいですね。
安積の蒸留所に関する印象が変わることは、間違いないと思います。

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【今日のオマケ】
笹の川酒造 純米吟醸 搾りたて生 初しぼり。
年末年始のお供でした。華やかでリンゴや洋梨のような吟醸香のフルーティーさ、クリーミーで柔らかい口当たり、仄かにヨーグルトの酸、玄米のような苦みが微かに。
しつこすぎない吟醸香とフルーティーさ、バランスが良く、すいすい飲めて1本すぐに空きました。

最近、年末年始のお供となりつつある、安積蒸留所を操業する笹の川酒造仕込みの日本酒です。
個人的に笹の川の日本酒は、スタンダード品だと「ああ、一般的な日本酒ってこうだよね」と感じる、ちょっともっさりしたような米感のあるタイプだと整理しているのですが、こういう限定品は洗練された、フルーティーさと吟醸香のバランスが取れた1本に仕上がっているのが多いですね。
蒸溜所見学に行くと売店で試飲も可能です。コロナ禍で見学は難しいかもしれませんが、機械があればウイスキーと合わせて日本酒も是非。

安積蒸留所 ザ・ファースト 山桜 3年 50%

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YAMAZAKURA 
JAPANESE SINGLE MALT WHISKY 
ASAKA "The First"
Aged 3 years 
Distilled 2016
Bottled 2019
700ml 50%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:自宅
評価:★★★★(4-5)

香り:レモンタルトを思わせる酸と軽やかに香ばしい麦芽香主体。微かに酵母香、焦げたオークのアクセント。あまり複雑さはないがフレッシュで嫌味の少ないアロマ。

味: 若々しく、レモングラスや微かに乳酸っぽさも伴うニューポッティーな含み香。口当たりはとろりとした甘みから柑橘類を皮ごとかじったような酸味と渋み、麦芽由来のほろ苦さがある。
余韻はアメリカンオークのバニラ、微かな焦げ感。序盤に感じた酸味と共にざらざらとした粗さが若干ある。オーキーな華やかさは今後熟成を経て開いていくことが期待される。

樽感はほどほどで、ところどころ粗さを残した酒質。まだ完成品とは言い難い、スタートラインのモルト。それ故現時点での評価は本ブログの基準点の範囲となるが、これをもって将来を悲観するような出来ではないことは明記したい。
この蒸留所の特徴とも言える、酸味に類するフレーバーやコクのある味わいは健在で、オフフレーバーも目立たない。今後の成長を安心して見ていける、素性の良い原酒である。なお加水するとオーク香が多少開くだけでなく、粗さが落ち着いてぐっと飲みやすくなる点も、将来が期待できる要素である。

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2016年、試験蒸留期間を経て稼働した福島県郡山市の安積蒸留所。スコッチの基準でウイスキーを名乗れる、3年熟成の条件を満たしたシングルモルトがいよいよリリースされました。
蒸留所を操業するのは、かつて羽生蒸留所の原酒の引き取り先として、資金を肩代わりし熟成庫を提供した笹の川酒造。その安積蒸留所のウイスキー作り開始にあたっては、イチローズモルトが逆にスタッフの研修先となったり、肥土さんがアドバイスをされるなど、両社の繋がりが創ったウイスキーでもあります。

安積蒸留所の原酒は、ミディアムボディというか、そこまで癖の強いタイプではなく、初期からオフフレーバーも少ない仕上がりでした。
ただし基準(3年熟成)を満たしたといっても、スコッチタイプの原酒が3年でピークに仕上がる訳がなく。。。安積蒸留所の熟成環境なら最低でも5年、最初のピークとしては7~8年は見たいという印象。とはいえウイスキーを名乗れる基準を満たしてのリリースであるため、他のリリースと同様の整理のもと、当ブログの評価分類に加えることとします。

樽構成はラベルに記載がありませんが、ファーストフィルのバーボン樽を軸に据えに、リフィル(ウイスキーカスク含む)や新樽等を加えたような、いずれにせよアメリカンオークの樽がほとんどを締めると思われるバッティング。シェリーは使われていないか、使われていても1樽とかリフィルとか、全体に対して少量ではという感じですね。

アメリカンオークがメインとなると、華やかで黄色いフルーツやバニラっぽさのあるオークフレーバーを連想しますが、さすがに熟成期間からそこまで強く効いておらず、まだ蕾というか種から芽吹いたレベル。該当するフレーバーの兆しがないわけではなく、オーキーな要素が所々に溶け込んでいて、今後の熟成を経て開いていくという感じです。
それこそ7~8年熟成させれば、温暖な日本での熟成らしいリッチなウッディさとオークフレーバー、アプリコット系の甘酸っぱさが混じるような味わいになるのではと期待しています。

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(安積蒸留所のポットスチルとニューメイク。同蒸留所の原酒や環境等については、2年目時点での比較記事を参照頂きたい。なお、2019年までの仕込みに用いたマッシュタンはステンレスだが、2020年に向けて木桶を導入して更なる進化を目指す模様。)

一方、ここで違和感を覚えたのが、ファーストリリースの樽の強さです。
安積蒸留所は、東北の盆地の中心部分という、夏暑く冬寒い、寒暖差の激しい地域にあります。
そのため、これまで複数リリースされた1年熟成程度のニューボーンには、新樽やシェリー樽のものなど今回のリリースより樽感の強いものが普通にありました。 そうした原酒を活かしたバッティングも、恐らくできたはずです。
ですが、裏ラベルにも書かれている「安積蒸留所の風味の傾向」を主とするため、一部そうした樽は使いつつも、あえてそう仕上げなかったのではないかと感じました。

では風味の傾向とは何か。今回、原酒の成長を確認する意味も兼ねて、ファーストリリースのコメントと、ほぼ同じ時期のニューポットのコメントを比較して、残っているフレーバーとなくなったフレーバを整理してみました。同時に比較をしたわけではありませんが、「安積蒸留所の風味の傾向」を形成する、熟成によって変化した、酒質由来と樽由来の要素を可視化する整理ができたのではないかと思います。

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※2016年蒸留原酒、ニューポット時点でのテイスティングコメント
香り:酸味が強く、ドライなアルコール感と微かに発酵臭を伴うアロマ。加水すると乾燥させた麦芽、おかき、無糖のシリアルを思わせる香ばしさを感じる。  

味:軽くスパイシーな口当たり、最初はニューポットらしい乳酸系で微かに発酵したような酸味、口の中で転がすとオイリーで香ばしい麦芽風味が主体的に。 余韻は麦芽系のフレーバーが後を引きつつあっさりとしているボディはミドル程度、加水するとバランスがとれて口当たりは柔らかくまろやかに。 

また、過去のコメントではフルーティーなタイプというより、田舎料理のような素朴さがあるというコメントも。
今回のボトルのテイスティングをするにあたり、あえて過去の記事は見直していません。ファーストをテイスティングをした後で改めて両コメントを見直して、強く共通する部分は太字で、あまり感じられなくなった部分を取り消し線で表記。
未熟成によるネガな要素が熟成によって軽減されたことは勿論、酒質部分は「酸、香ばしさ、コク(オイリーというよりはとろみ)のある麦芽由来の風味」この点が共通項として残る要素となります。

つまりこれが、安積蒸留所の風味の傾向なのではないかと思うのです。
あくまで自分の個人的な整理、考察でしかないため後日機会があれば蒸留所関係者に話は聞いてみたい。とはいえ、もしこれから飲まれる方は、ベースにある要素を意識しつつ飲んで貰えると、その傾向が分かりやすいのではないかと思います。
なお当時から加水でのバランスも評価していますが、見直すまですっかり忘れてました(汗)。


さて、今回リリースされた安積蒸留所の3年熟成品を筆頭に、新たに開業したクラフト蒸留所のシングルモルトウイスキー・リリースラッシュがこれから始まります。
その際、香味を「若い」と感じることは間違いなくあると思いますがこの場合の「若い」は、それ以上の原酒が蒸留所に存在しえないのだから当然であって、無い袖は振れないもの。だから悪いという話ではありません。

まず大事なのは”ちゃんとウイスキーである”ということ。理想的には”その蒸留所の個性を認識できる”こと。この辺は人間も同じですよね。
3年熟成時点で、明確にピークを見据えていけるスタートラインにある、というのがこの時点のリリースで認識されるべき一つのポイントだと思います。
当たり前のように思えるかもしれませんが、そうではないモノも当然あるのです。
そして成長を楽しみながら、次を思い描く。その点で、安積The Firstは十分に条件を満たしたリリースだと感じています。

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(ウイスキーフェスティバル2019会場、笹の川酒造ブースにて。出荷前の安積ファーストと山口社長。)
こうして"安積"の名を冠するウイスキーが目の前にあるということ、元郡山市民としては感慨深いものがあります。
3年前の夏、初めて蒸留所を見学させて貰った日から今日まではあっという間でしたが、先日の台風災害対応を始め、蒸留所としては様々な苦労があったことと思います。
改めて蒸留所の皆様、ファーストリリース、おめでとうございます!

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