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御岳 シングルモルト ジャパニーズウイスキー 2025 43%

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ONTAKE 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
First Fill Solera Sherry Butts 
Bottled 2025 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:黒糖かりんとうを思わせるやや焦げたような甘さと合わせ、ポップコーンのような香ばしさを感じるトップノート。合わせてドライプルーンやレーズンの色濃い果実香、微かにオレンジピールや針葉樹のようなハーバルさも感じられる。

味:滑らかでコクのある口当たり。シェリー樽由来のダークフルーツや天津甘栗の甘さ、飲み込むとウッディネスは紅茶のタンニンのようであり、ジンジンとした刺激を伴って染み込むように広がる。余韻も長く、完成度の高さが窺える。

さながらマッカランのような1本。熟成年数は5年前後だろうが、シェリー樽由来のリッチなフレーバー含めてバランスよくまとまったシングルモルト。濃厚でウッディなもの、やや淡い印象のもの、あるいはサルファリーなもの、成長個体差のある個性的なソレラシェリーカスクを合わせ加水で整えることで、全体的に厚みと複雑さを感じられる仕上がりとなっている。この蒸留所が目指す完成像の一つが見える1本でもる。

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※水割り、ロック、ハイボール。代表的な飲み方を全て試してみたが、シェリー樽熟成のウイスキーでありながらハイボールに合うのは、酒質の素性の良さ、香味の中に爽やかな柑橘やハーバルな要素があり、それらが全体をまとめてくれるからだろう。

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鹿児島、西酒造が2019年から操業する御岳蒸留所のシェリー樽リリース第二弾。もはや説明は不要と思いますが、この蒸留所の特徴はなんと言ってもシェリー樽。公式のWEBページにも記載されているように、シーズニングのシェリー樽ではなく全てボデガでシェリー酒の熟成に用いられていたソレラカスクを用いているというこだわりがあります。

それ以外にも蒸留所や熟成庫の設計、厳選した二条大麦と独自開発した酵母とこれまでのノウハウを活かしたウイスキーづくりで、世界が求める酒を作るというコンセプトを実現するにたるこだわりの数々。個人的に2019年の創業当時に飲んだニューメイクのクオリティに感動し、樽や製法のこだわりに圧倒されて以来、注目の蒸留所の一つとなっています。※蒸留所の情報は以下、2023年リリースの記事を参照ください。



そんな御岳蒸留所の一般市場向けリリースは、2019年の操業初期の原酒がソレラカスクで約3〜4年熟成を迎えたタイミングで払出し、2023年12月にリリースされた1stリリース。
その後はバーボン樽熟成原酒を使ってリリースされた2024 Editionと続いてきたところ。今回は香味から推察するに2023年のファーストリリースにも使われた原酒のさらに熟成年数を増したものを軸に構成したと思われる、シェリーカスクリリースが再び発売されています。

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※2024年リリースの御岳ピュアモルトジャパニーズウイスキー、バーボン樽熟成の1本。ウッディな中にオーキーなフルーツとビターな味わいが特徴。
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※2023年12月にリリースされたファーストリリースの御岳2023(左)との比較テイスティング。

2023年のリリースと比較して飲むと、香味の傾向は同じであるものの、熟成感、そして樽由来の香味の濃さが大きく異なっており、それは色合いから見ても感じられるところ。同じ43%でありながら御岳2023のほうが酒精感は強く、ややスパイシーな香味が強い印象を受けます。

もちろん上述の通り酒質の素性の良さ、ニューポッティーな香味の少ない柔らかい麦芽風味を感じさせる味わいから、ファーストリリースでもあからさまに若く荒々しい印象こそなかったものの、シェリーカスクの濃厚な味わいが全面に出ていることを期待していた愛好家側からすれば、ちょっとバランス寄りすぎると感じたような。誤解を恐れず言えば「思ってたんと違う」と感じた人も少なくなかったのでは。

一方で、こうして比較すると今作であれば、その期待に応えてくれるのではと。シェリー樽熟成のウイスキーとして確実にクオリティが上がっていると感じさせてくれます。
レビューを書くにあたって飲み始めましたが、気がつくとすごい減りましたね。シェリー樽熟成のウイスキーが辛くなる夏場にかかろうかというこの時期に、開封3日で写真の通り1/3くらい飲んでしまいました。

ソレラシェリーカスクはシーズニングのものに比べて個体差が大きく、その成長曲線が1樽1樽大きく異なることから一概に何年くらいとは言えませんが、今作のベースを5年前後熟成の原酒と考えると7−8年熟成で最初のピーク、その後は10年、12年、加水で整えるなら15年あたりまで順調に育ってくれそうな印象もあります。

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※御岳 5年 カスクストレングス 58% No,0062 for ウイスキートーク福岡2025

ちなみに、御岳蒸留所は一般向けリリースとしては今回レビューした43%加水のシリーズを展開している一方で、イベント限定で愛好家向けにカスクストレングスを販売しています。
直近だと6月のウイスキートーク福岡で5年熟成のものがリリースされ、現地参加されていた某氏のはからいでボトルを手に入れることができました。気になっていたボトルだけに、これは有り難かったです。

今回の2025リリースのシングルモルト御岳にも感じられる個性の一つ、濃厚でビターなシェリーカスクのフレーバーを、樽出しだからこその力強さ、説得力をもって感じられるのが特徴の一つ。
2023リリースのシングルモルト御岳の時はもう少し度数を上げたものをリリースしてほしいとレビューに触れましたが、そうそうこれこれ、こういうのですよ。
5年熟成のカスクということでちょっと荒さはありますが、蒸留所としても原酒としても、順調に成長していることを感じさせてくれると思います。
長くなってきたのでこのボトルはまた別途レビューを書きたいと思いますが、イベントで見かけて機会があれば、是非飲んでほしいですね。

シングルモルト 厚岸 立夏 二十四節気シリーズ 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky 
Bottled 2025 
7th. Season in the 24 Sekki 
700ml 55%  

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:焦げたようなビターなニュアンスを伴う、ウッディーでスモーキーなトップノート。香り立ちはシャープでシトラスやスパイシーな要素が主体だが、少量加水すると穏やかになり、柑橘や甘いオーク香も感じられる。

味:香りに反して味わいは柔らかく、ピートが溶け込んだよう。樽由来のキャラメルや焼き栗を思わせる香ばしい甘さ、微かな焦げ感と柑橘の綿を思わせるほろ苦いニュアンス。余韻にかけては塩味と、穏やかなピートフレーバーと共に、アーモンドナッツと杏子や柑橘を思わせる甘酸っぱいフルーティーさを伴い長く続く。

19作目となる二十四節気シリーズ。ここに来て今までの厚岸にはなかった、熟成由来のフルーティーなオークフレーバーが感じられるのが本作最大の特徴。 主にアメリカンオーク樽熟成の原酒に見られるフレーバーだが、熟成を経たミズナラ樽にも共通要素が出るため、構成原酒の平均熟成年数が上がったと予想(直近4-5年だったのが5-6年になった可能性)。
厚岸の柔らかい北海道産麦芽風味に穏やかなピートが柑橘系のニュアンスに通じ、それらと合わさった熟成樽由来の香味が杏やナッツなどの香味要素を形成している、また一段と成長した姿を見たリリース。どこかボウモアに通じる要素が感じられるのも興味深い。

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しばらくブログをさぼっていたら、二十四節気シリーズが折り返しどころか、3/4を終えていた件について。い、いや、ちゃんと飲んでるんですよ(汗)。

本作のキーモルトは北海道産の麦芽と北海道産ミズナラ樽を用いた原酒とのことですが、特徴的なのがテイスティングでも記載したフルーティーな香味、熟成感ですね。個人的にこのフルーティーさは近年のトレンド、バーボン樽由来の香味に通じる要素。そこにウッディな要素が重なってくるので、構成はノンピートのバーボン樽原酒を主体として、次点でミズナラ樽、シェリー樽、後は微かにワイン樽熟成原酒といったところでしょうか。

比率としては、5:3:1:1あたりと予想。あまりウッディな渋みはないので、ワイン樽はもっと控えめ、ごく少量かも。一方で比率とは別に全体の一体感を作り、まとめ上げているのが麦芽の柔らかく膨らみのある味わい、柑橘感を伴う風味とミズナラ樽のウッディネスというイメージで、その意味で本作のキーモルトがオール北海道産モルト原酒というのは味わいからも得心がいくところ。
ただ、裏ラベルを見ると麦芽の構成は、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、北海道産とあるので、左に行くほど量が多いと整理するなら、ミズナラ樽原酒がすべて北海道産ミズナラ樽と北海道産麦芽によるもの…というわけではないのかもしれませんが。

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と、そんな細かい…いや、ロマンのない話はさておき。
厚岸の二十四節気シリーズで、シングルモルトのリリースは
・立春(2024年2月)
・小暑(2024年8月)
・立夏(2025年5月)
と、約10ヵ月ぶりでした。また、前作が意欲作ともいえる厚岸蒸留所のポットスチルで仕込んだグレーン原酒を使ったシングルブレンデッド冬至のリリースで、今までとは異なる方向性だったこともあり今作はなおのことモルト原酒の熟成感の変化が際立っていると感じます。

昨年、展示会等で立崎さんから伺ったところでは、2024年の時点では平均熟成年数が4~5年程度であったところ、おそらくそこから熟成年数が伸びた原酒を今作は用いているのではないかと。それこそ平均で5~6年、こと上述のバーボン樽原酒についてはさらに長い6~7年のものも含まれているのではないかと予想。スコットランドの熟成環境では2年程度は微々たる期間かもしれませんが、日本や台湾などの温暖な気候のアジア圏においては大きな変化に繋がるには十分すぎる期間です。

今回のリリースではテイスティングで述べたように、原酒の一体感が増しただけでなく、これまでの厚岸には見られなかった熟成による風味、フルーティーさが感じられ、新しい魅力を感じさせてくれました。ちょっとボウモアっぽい感じが出ているのも面白いですね。厚岸蒸留所の代表である樋田さんはアイラ島のウイスキーに惚れ込み、特に60年代のボウモアに思い入れがあることで知られていますが、その方向に近づいたのが興味深い点でもあります。
3か月ごとに1作リリースされていく二十四節気シリーズ、つまり完結まであと1年と3か月。ここから1年でどんな姿を見せてくれるのか、立夏を飲んで一層楽しみになりました。

ニッカウイスキー フロンティア 48% 2025年ロット

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NIKKA WHISKY
FRONTIER 
Lot No,6/02E201432(2025年1月) 
500ml 48% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:ややドライ、若い原酒の刺激とともにキャラメルを思わせる甘さ、アーモンドや乾煎りした麦芽の香ばしさ、微かにリンゴのカラメル煮。奥からスモーキーなアロマも開いてくる。

味:とろりとした口当たり。序盤はのっぺりとして起伏に欠けるが、徐々に穀物由来の風味、内陸モルトの干草や洋ナシを思わせる甘さ、微かにケミカルな要素、ピートフレーバーと口内で広がりが感じられる。余韻はビターでスモーキー、スパイシーな刺激を伴う。

個人的にニッカらしさが光ると感じる1本。原酒比率はほぼ1:1(厳密には51%:49%)なのだろうが、グレーン由来のソフトでのっぺりとした質感から、若いモルト由来の風味が芽吹いてくる。キーモルトとしては余市のヘビーピート原酒とされているが、実際は輸入原酒と国産原酒、新樽やバーボン樽、リメード樽等様々な風味が合わさった複雑な様相。

おすすめは少量加水。若い原酒の要素や前面にある甘さが和らぎ、樽由来の果実味、奥にあるピート由来の要素が広がって、一体感のある味わいへと変化する。ただししゃばしゃばにもなりやすいため、1滴1滴とコントロールしていくことを推奨したい。

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先日本業のほうで1泊2日の出張。せっかくだから地元のBARにでも…と考えていたものの、緊急の仕事、翌日の準備とホテルから出る隙がなく。気分だけでもと、近くのセブンに売っていた今年ロットのフロンティアを買ってきてチビチビやりながら翌日の準備を進めることに。

あれ?去年一般向けは終売になったんじゃなかったでしたっけ…めっちゃ普通に売ってるんですが、という疑問はさておき。これなら2000円そこそこで買えるなかで、味も本格的だし、余って持ち帰るにしても通常ボトルよりかさばらない(笑)。
ただ、そうして飲み始めてみるともう一つ疑問が。そう、なんか味変わった?

2024年の初期ロットはもっとピートフレーバーが荒々しく、若いけど面白い、こういうのでいいんだよって感じの味わいでした。サンプル瓶も飲みましたし、その後自分でも1本買って飲みました。
それが、今回飲んだ2025年ロットについてはピートフレーバーが1~2歩後ろに下がり、その分のっぺりとした甘さ、内陸系の原酒のニュアンスが強くなったように感じたのです。
ロット差といえばそこまでかもしれませんが。。。過去にも同じように味が変わったケースがあるのと、またニッカのスタンダードリリースは余市、宮城峡、竹鶴を中心に現在進行形で熟成感が増して、樽の比率等も変わってきているので、多少なり違いが出ているのかもしれません。

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ちょうどいいので、改めてこのタイミングで2025年ロットの味わいについてと、私が知っている限りのフロンティアの開発経緯を紹介していきます。

フロンティアは、2022年に有効となった改正食品表示法による表記を意識したリリースです。
上の写真で
原材料名:モルト、グレーン
原料原産地名:英国製造、国内製造(モルトウイスキー)
として記載があります。この表記を特例を除いて義務づけたのが2017年の改正食品表示法の施行であり、猶予期間を経て、2022年に本格的に有効となった法律によるものです。

これによってさまざまな食品、酒類の表記に変化が生まれ、また国産ウイスキーに関しては某社を中心に大きな闇を生じさせているのですが、それはさておき。
本リリースの表記に関して分析すると、英国製造と国内製造のモルトウイスキー、グレーンウイスキーをブレンドした中で、最も比率が多いのがモルトウイスキーであり、またモルトウイスキーとグレーンウイスキーを合わせた全体では英国製造のウイスキーが一番比率が高いですよ、という表記になります。

良く勘違いされるのが国内製造のところに(モルトウイスキー)があるので、国産モルトウイスキーが100%と理解されるケースですが、ここが紛らわしいんですよね。英国製造、国内製造と左側に書かれているほうが全体の比率としては高く、またグレーンも含まれているという点に注意が必要です。

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実はこれまでニッカウイスキー(アサヒビール)は、この法律の特例を用いることで、改正食品表示法によって求められる表記をラベルに記載してきませんでした。(上画像、セッション参照))
そんな中で、法律に合わせてモルトウイスキー表記ができるものを、今の市場の需要に合わせて2000円台でリリースしようとコンセプトを設定。
きっかけは「ありき」だった訳ですが、社内でプロジェクトが2021年に立ち上がり、苦節2年強、ブレンダーチームが何度も試作を繰り返して発売となった…と、原酒も価格も制限が厳しい中での開発は苦労の連続だった、という話を酒の席で聞いた記憶があります。

正直、これまでのニッカのリリースは、今あるブラックニッカや通常のシングルモルト余市、宮城峡にフィニッシュをかけて小手先のアレンジで話題を作っているような印象が否めませんでした。それも初期のころは目新しく、面白いと思うのですが、何度も何度も繰り返されると、そろそろ本腰入れて商品開発してくれませんかねと思ってしまうのは自然な流れ。

今回のフロンティアは、ニッカがやっとで1からブランドを立ち上げて新しいリリースを出してくれたというだけでなく。2000年代初頭、かつての竹鶴を思わせる価格帯で、当時同様に樽感を強めにしたリリースを持ってきた点に、竹鶴12年でウイスキーを飲み始めた自分としては感じ入るところがあるわけです。

発売直後から出荷調整なんてどうなってんねんと思いつつ、この味はそれこそ2015年のラインナップ大整理以前を思わせるクオリティだわと納得してしまう自分がいる。
無理して頑張りすぎちゃったかー、なんて理解してしまう愛好家の悲しい性。お願いなので、このまま各ブランドのクオリティを維持&向上させていってほしいものです。

フェイマスグラウス 1970年代中頃流通 43%

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THE FAMOUS GROUSE 
FINEST SCOTCH WHISKY 
1970's 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:ガトーショコラのようにほろ苦くも艶やかで甘いアロマ。シェリー樽由来の要素から、微かに土の香りと干し草、古典的な麦芽香があり、柔らかいスモーキーフレーバーも感じられる

味:まろやかな口当たり。カステラの茶色い部分、ママレードジャムのようなとろりとした甘みから、徐々にビターなピートフレーバーが存在感を増す。余韻はほろ苦くスモーキー、染み込むように長く続く。

シルクプリント時代のハイランドパーク12年を連想する麦芽風味と存在感のあるピートフレーバー、そしてシェリー樽を思わせるしっとりとした色濃い甘みが合わさったリッチな1本。グレーンも熟成したものが使われているのだろう。とてもスタンダード品とは思えないクオリティで、満足感の高い1本。

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おそらくハマヤ株式会社を通じた日本への流通品としては、最初期のころ、1975年ごろの流通と思われる1本。
1960年代、1970年代後半~1980年代、1980年代前半、1980年代後半、1990年代…。
これまで年代ごとの流通品のフェイマスグラウスをテイスティングしてきましたが、1980年代以降のころのそれに比べてしっかりとピートフレーバーやシェリー樽由来の個性があり、また60年代のそれと比較してもそん色ないクオリティが、今回のボトルには備わっていました。

確かに口当たりのとろりとした甘さ等グレーンを思わせる要素もありますが、余韻でしっかり染み込んでくるビターなピートフレーバーや、麦を思わせる要素、シェリー樽を思わせる艶やかな甘さなど、キーモルトを思わせる個性が充実しています。
フェイマスグラウスのキーモルトが一つといえばハイランドパーク。それもその辺のハイランドパークよりはるかにハイランドパークらしさを感じさせてくれる。それこそヘザーハニーの甘くビターなピートといわれると、非常に説得力のある要素だといえます。

人によってはこの存在感のあるビターなフレーバーに慣れない場合もあるかもしれません。近年のスモーキーさを強調するような乾燥したピートフレーバーや、柑橘系の要素を主張するものとは異なる、オールドボトルにたびたび見られる特徴。
だがそれがいい。近年の都会的で洗練された華やかなスコッチもよいですが、こうした泥臭さを残す地酒的な味わいもまた、スコッチの魅力なのです。

ストラスミル 36年 1988-2024 ホグスヘッド 46.6% BAR Eclipse first 10周年記念

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STRATHMILL
BAR Eclipse first 10th Anniversary
Aged 36 years
Disitlled 1988
Bottled 2024
Cask type Hogshead
For Kanpaikai
700ml 46.6%

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:林檎や白葡萄、ハーブの爽やかなトップノート。続いてナッツ、干藁や穀物を思わせる要素、微かにオリーブのようなアクセント。繊細でありながら豊かな広がりを感じるアロマ。

味:若干のオイリーさを伴う柔らかく甘い口当たり。続いて軽い香ばしさ、華やかなオーク香が含み香として感じられ、香り同様の干藁や穀物系のフレーバーが牧歌的な印象に通じている。 余韻は軽やかなウッディネス、ドライで微かに青みがかった白色果実とホワイトペッパーのスパイシーな刺激を伴う。

香味の要素だけ見れば、まさにストラスミルのハウススタイルをそのまま体現したような一本。
トップノートにある爽やかな果実味と軽やかな香ばしさは、洗練された都会的な印象に通じる一方で、踏み込むとそこには牧歌的な、あるいは多少粗雑なところがあり、それが親しみ易さ、味わい深さに通じている。ああ、この肩肘張らない感じはエクリプスの雰囲気を想起する。林檎を思わせる白色果実がトップにあるのも心憎い、10周年記念の一本。

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乾杯会から5月30日発売されるストラスミル。
シードル(林檎)王子こと藤井さんがオーナーである、神田のBAR Eclipse first(エクリプス)の開業10周年を記念した一本です。

エクリプスは2015年にウイスキーとシードルの専門店として開業したBAR。藤井さん自身がウイスキーコニサーであるとともに、シードルについても本場フランスで多くの醸造所を巡るだけでなく、2021年には地元群馬県に自身でシードル醸造所(吹上シードリー)を立ち上げ、理想とするシードルの製造&販売を開始するなど、この10年間でいちバーマンの枠を遥かに超えた活動をされてきたところ。
今回のリリースは、そんな藤井さんらしさが全面に感じられる、10周年を記念するにふさわしいボトルとなっています。

というのも、藤井さん=麦と林檎であるのは上述の説明からご理解いただけると思いますが。
林檎系のフレーバーがあるウイスキー銘柄としてはグレンキースが有名、しかしそのグレンキースと合わせて、近しい個性を持つとされているのがストラスミルです。
ストラスミルについてはJ&Bの構成原酒で、あとは花と動物シリーズからリリースがある程度、オフィシャルリリースがほとんどないこともあって、あまり知られていない銘柄。あえて有名なほうではない、マイナーどころを攻めてくるの、らしい感じがしますね(笑)。

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※2014年のスペシャルリリースにラインナップされたストラスミル25年。こちらは1970年代の原酒で構成されており、1980年代よりも骨太な印象を受けるが軸となる香味要素は変わらない。

1980年代のストラスミルらしい軽やかさ、そして自然な林檎感のあるチョイス。かつてディアジオからスペシャルリリースとして発売されたストラスミル25年に通じる要素もあり、ボトラーズによってアレンジされたボトルではない、ハウススタイルが感じられるのも本ボトルの特徴。
ラベルの女性が手にしているのは、シードル醸造所のある群馬の品種、ぐんま名月でしょうか?
りんごを皮ごと丸齧りしたような、そんな瑞々しくも華やかで、故にちょっと雑味も混じる味わいなウイスキーです。

藤井さんとは他にも何かと繋がることが多く、古くはウイ文主催のテイスティング大会で偶然隣同士だったり…それをお互い知らずに川口のビアパブで出会ったり…その後も、神田の駅でホーム飲みしたり、イベントではキングオブキングスや、共同リリースやらあれこれ。
今回も乾杯会さんを通じたリリースにあたり、本ボトルのコメント、紹介文を書かせて頂きました! 
改めまして、10周年おめでとうございます。

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※2019年の4周年記念の際、プレゼントしたオリジナルラベルのウイスキー。このデザイン、どこかで見たことがあるような…(笑)


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