大谷ウイスキー 新潟亀田蒸溜所 No.1 Zodiac Sign Series “Pisces” 50%

OHTANI WHISKY
NIIGATA KAMEDA DISTILLERY
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
No,1 The Zodiac Sign Series “Pisces”
700ml 50%
評価:★★★★★(5)
香り:林檎や枇杷、品の良いフルーティーさを伴うトップノート。微かに青さを残した干し草やナッツ、軽やかにエステリーなアロマ。
味: 口当たりは軽やかな刺激、微かにニューメイク寄りの風味もあるが、乾いた麦芽と白色果実の風味、 余韻はウッディな木材の香りが鼻腔に抜け、おがくずのほろ苦さ、微かにオーキーな甘みを残して全体の香味がストンと消えていく。
バーボン樽熟成のノンピート原酒を主体に、パロコロタドシェリー樽とシェリーブランデー樽熟成の原酒等を加えた3年熟成程度のリリース。とはいえシェリー感はあまりなく、基本的にはバーボン樽由来のフレーバーがメイン、バーボン8、その他2くらいか、ボディの厚さ、香味の複雑さを補うためにシェリー樽系の原酒を加えたのだろう。品の良い甘さとエステリーさが好ましい一方、1ショット飲むと途中で余韻にかけての単調さを感じてしまう。まだ熟成の余地を残した仕上がりと言えるが、余韻の長いウイスキーとしてはもう一声欲しい。

創業2021年、新潟亀田蒸溜所のシングルモルト。亀田蒸溜所からはこれまでもイベントなどでニューボーンが販売されていたり、またPBでシングルカスクの3年前後のものが限定販売されるなどしてきたところ。今作はオフィシャルスタンダードラインナップとしては初めてとなる、JWの基準に基づくシングルモルトとなります。
本シリーズについては公式にあまり情報が出ていませんので、知ってる限りの補足と予想を記載していきます。
大谷シングルモルトの“大谷”は、某野球で理解の及ばない活躍をしている選手のことではなく、新潟亀田蒸留所を操業する企業がハンコの”大谷”(※本記事最下部参照)という企業名からきていること。
ゾディアックシリーズについては、12星座にあてがわれた誕生月(期間)を厚岸の二十四節気のようにリリース時期とかけた、星座シリーズなのだと考えられます。
またラベルに描かれた女性は星座をイメージしたキャラクターとのことで、確かに髪を結んでいる飾りに魚座のロゴが描かれています。一説では奥様ではという話もありましたが、そこは未確認なので、ここではただのイメージキャラということにしておきます。
ただ、頬を赤らめて視点がやや定まっていない感じ、そこに魚座の配置が酔っ払ってポワポワしてしまっている漫画の描写に見えてしまうのは気のせいでしょうか、なんとも特徴的なラベルですよね。
一方でこのラベルについては、新潟でなぜ星座なのかとか、この女性は魚座の何をイメージしてデザインされたのかとか、疑問は残るところ。今後この点が亀田蒸溜所から、あるいは代表の堂田さんから解説されてくるであろうことを期待しています。

※新潟亀田蒸溜所のポットスチル。初留と再留とで形状が異なっているのが特徴の一つ。

※糖化時の清澄麦汁を確認する設備。配管を一部可視化して光の通り具合を確認している。

※現在の熟成庫が完成する前、倉庫を改修したスペースで熟成中の原酒をテイスティング。カスクストレングスのものはエステリーでよりフルーティー、甘さと余韻の長さを兼ね備えていた。

※コンテナを熟成庫として使用することで、高温環境での熟成を実施。ニューボーンリリースやフィニッシュなど短期間で仕上げることを想定した原酒を一時的に保管している。やりすぎるとエキス分が過剰になるが適度に使うには効果的。今回のリリースにはコンテナ熟成の原酒も一部使われていると予想。
新潟亀田蒸溜所には過去2回訪問させていただいており、そこで見聞きし、経験してきた様々な要素から、蒸留所としてのポテンシャルとそのウイスキー作りは間違いないと確信しておりました。
清澄麦汁によるこだわりの糖化、プレス酵母をいち早く用いた発酵、そして冷温、常温、高温と温度環境にこだわった異なる熟成環境も整えたところ。
現地では、ピートにしろノンピートにしろ、これで3年程度!?という素晴らしい原酒をいくつもテイスティングさせてもらっており、この蒸留所の将来性は間違いないと、確信すらしていました。
だからこそ、率直に言えばこのファーストリリースは「あれ?」と思ってしまった訳です。
おそらく、設備の使い方、カットポイントや酵母の使い方など色々模索していた初期の原酒を中心にバッティングしているからだと思いますが。 余韻の長いウイスキーを目指したにも関わらずボディや余韻がストンと軽い。自分がテイスティングさせてもらった様々な樽出し原酒の風味に対して、後半の味がスッキリとしているというか、広がりや伸びがない、大谷(野球)にかけるなら伸びのない棒球なのです。
香味から若さや嫌味な要素が目立たず、伸び代も十分ありますが、いやいや亀田ならもっとできたでしょ…と思ってしまうのです。
同蒸留所では熟成環境が昨年にかけて整ってきただけでなく、その造りも2年目以降に酵母の使い方などで大きな変革が起こっていて、重ねて言いますが本当に期待している蒸留所の一つ。今作はその意味で最初の一歩というより次以降のリリースに、いい意味でのギャップを与えてくれるものと期待しています。
特にピート原酒、ノンピートで3年だとバーボンオクタブ系の原酒ですかね。次あたりでとてつもない巻き返しがあるのでは…。大谷なら、大谷(堂田)さんなら…きっとやってくれるはず!

追記:...なんとなくフェアじゃないというか、自分の気持ちが収まらないので、後日新潟亀田蒸溜所がいかに凄くて期待できるのか、記事にしたいと思います。