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LIQULコラム 5月号はブルイッラディ&ポートシャーロット レビュー

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酒育の会発行のフリーペーパー「LIQUL(リカル) 5月号」が発行されました。
もう前置きは不要かと思いますが、自分は昨年から、Re-オフィシャルスタンダードテイスティングというタイトルで、新たに発売した銘柄やリニューアルして味が良くなった銘柄等、オフィシャルボトルにおける注目銘柄の紹介記事を寄稿させてもらっています。

同誌は酒販店やBAR等協賛店舗での配布と合わせ、今年2月からWEBマガジンとしても展開されており、類似の内容(WEBマガジンのほうが字数制限が緩いので、内容が濃い場合もある)が、隔日程度の頻度で1記事ずつ更新されています。
そして先日5月9日、5月号向けに寄稿した記事がWEBマガジンのほうに掲載されましたので、記事中では書かなかった話等と合わせて紹介していきます。


Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.5
ブルックラディ”アイラバーレイ&ポートシャーロット10年”
(LIQUL本誌の内容は、上のWEB版を800文字程度に要約したものとなります。)

今回のピックアップは、アイラに島あってアイラ由来の個性と異なる特徴を持つ蒸留所、ブルックラディ

同蒸留所の日本名称は「ブルイックラディ」だったのですが、親会社であるレミーコアントローのブランド再編により、2018年頃から「ブルックラディ」に名前が変わっていました。
蒸留所は1995年からの休止、2001年の再稼働、そしてその後のラインナップ整理を経て、再稼働後の原酒は
・クラシックラディ(ブルックラディ):旧世代のキャラクターを引き継ぐノンピートタイプ
・ポートシャーロット:ヘビーピーテッドモルト
・オクトモア:世界最強のピーテッドモルト
主に以上のブランドに整理され、リリースされています。

”ブルイックラディ”時代は、休止前に仕込まれたライトピートタイプの原酒が一部で使われているなど、若干ピーティーな銘柄があったように記憶していますが(例えば、2000年代にリリースされた17年など)、再稼働から時間が経ち、原酒の熟成が進んできたことで、各ブランドの住み分けが一層はっきりしてきました。
クラシックラディは90年代のクリアトール時代に通じるベクトルで、懐かしい味わい。オクトモアは相変わらずぶっ飛んでいる(というかぶっ壊れている)。そしてこの数年内、上述の3ブランドのうち最も完成度を向上させたのが、ポートシャーロットだと感じています。

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(現行品のクラシックラディからイメージ出来る、クリアトール時代のラディ。洗練された印象のない素朴な麦芽系で、それが逆に良さでもあるが、個性に乏しい。まさにブレンド向けの原酒という時代の1本。)

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(2020年時点、ポートシャーロットのオフィシャルスタンダード。度数が50%あり、飲み応えもある。アイラバーレイ仕様もリリースされているが、こちらはまだ熟成10年未満の原酒で構成されている。)

今回の記事を書くきっかけは、なんといってもこのポートシャーロット10年。
2018年にリニューアルして10年表記になってから、これまでの若さが先に来る香味構成に熟成感が伴うようになり、内陸系のスモーキーさとこだわりの麦芽風味、それぞれに繋がりが生まれてバランス良く楽しめるようになっていました。
実はリカルの執筆を始めるに辺り、紹介しようと決めていたうちの1本でもあります。

一方、記事化にあたって最も表現で悩んだのは、「ピートフレーバーの違い」でした。
ブルックラディは麦芽風味にこだわり、アイラ島やオークニー島で契約農家による栽培を行うなど、ワインで言う”テロワール”をウイスキーでも表現することをブランドモデルに掲げています。
その麦芽由来のフレーバーは確かにしっかりとしており、それはノンピート仕様のブルックラディ・アイラバーレイやベアバーレイを飲むことで理解出来ると思います。

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(クラシックラディとは異なり、しっかりとした麦芽風味の主張、麦由来のフルーティーさが楽しめる、バーレイシリーズ。ブルックラディ再稼働計画のなかで、オーガニックで地場生産のモルトはプランの1つに掲げられていた。なおこのリリースはノンピート仕様のはずが、微かにピート香がするような。。。?)

ブルックラディは再稼働後から「生産からボトリングまでを一貫してアイラ島で行う唯一の蒸留所」ということもPRしてきました。
しかし、この”生産”にはモルティングが含まれておらず、ピートもアイラ島のものではありません。スコットランドの内陸にある設備で仕込まれた麦芽が、現在のブルックラディでは使われているのです。
そのため、ポートシャーロットは、アイラ産のピートが持つヨード系のフレーバーをほとんど持たないキャラクターとなります。

冒頭、「アイラ島にあってアイラらしくない」と書いたのは、まさにこのピート由来のフレーバーの違いにあります。
その土地の風土や気候、環境の違いを意味する”テロワール”をブランドのモデルとしながら、ウイスキーのフレーバーにおいて重要な役割を担うピートがアイラ島産ではないというのは、ちょっと整理が難しい。
ご存じの通り、単にピートフレーバーやスモーキーさといっても、ピートの成分によって得られるフレーバーは大きく異なるのです。

ただし、味が悪いという話ではなく、あくまでPRにおける整理の問題です。
これを香味の点から好意的に解釈したのが、コラム中に書いた、ヨード香は麦芽由来の風味を邪魔してしまうこともあるため、ブルックラディの素朴かつ熟成によってフルーティーさを纏う酒質由来のフレーバーとスモーキーさを両立させるため、内陸のピートを使っているという考察です。


率直に言えば、これはブルイックラディの「妥協」だったのではないかと思います。
理想的には一貫して、麦の生産、仕込みもアイラ島で全て行いたいが、ウイスキー産業が今ほど勢いづいていない再稼働当時の状況では、資金調達の難しさに加え、アイラ島の農家で指定の麦芽をつくってもらうという試みも、理解が得られず首を縦に振ってもらえない。
”ウイスキー・ドリーム”にも書かれていた時代背景の通り、ピートと麦芽を確保し、アイラ島で精麦することまではたどり着けなかったのではないかと考えられます。

しかしブルイックラディはその後現地の農家との関係を構築。現代のウイスキーブームを後押しに、ついに2023年までに精麦設備をオープンさせ、オールアイラ島産のウイスキー作りに着手する「一貫生産計画」を発表するに至っています。

親会社であるレミー・コアントローから発表された、ブルイックラディ蒸留所に関する投資計画のプレスリリース(2019年5月17日)

これが現地のピートも使った仕込みに繋がるのか、あるいはアイラ島で作られた麦芽の使用比率が全体の42%と増えてきたので、単なる生産効率化のためなのか、現時点で詳しいところはわかりません。
某蒸留所のマネージャーから伺った話では、アイラ島のピートの採掘権(採掘場所)はかなりいっぱいいっぱいで、まとまった量での新規参入は難しいという話もあります。

個人的に、このオールアイラ島産のモルトに興味がないわけではありません。今回のコラム記事で、苦手なのでついスルーしてしまったオクトモアも、アイラピートで仕込んだらどうなるのかなど、リリースの幅がさらに広がることは間違いありません。
しかし、ブランド全体としては、既に他の蒸留所で作られているモルトと似てきてしまうのではないか。ブルックラディ(ピーテッド)は今のフレーバーの系統で良いのではないかと思ったりもします。

先に述べたように、売り方の整理はありますが、バーレイシリーズで作られる麦由来の風味のしっかりした原酒、特にベアバーレイなどは大きな可能性を感じるものですし、ピーテッドタイプの原酒が熟成を経た先の姿もまた楽しみです。
何より、他のアイラモルトと異なるのは、再稼働後に誕生したポートシャーロット等のピーテッド銘柄には、1960~70年代の黄金時代の縛りがないことです。
例えばボウモアのトロピカルなフルーティーさといった、昔を意識するものがない、求められるのは常に成長し続ける今の姿です。
今後どのようなリリースが行われていくのかはわかりませんが、アイラ島のなかで独自のブランドを作り上げていく、そんな存在であり続けてほしいなと個人的な希望を書いて、この補完記事の結びとします。

蒸留所外観

以下、LIQUL5月号繋がりで余談。
リカルでは毎号ピックアップ特集記事のテーマが決まっており、この5月号は「もっと洋酒を楽しむためのファーストステップ・ブランデー編」です。
そのフルーティーさ、奥深い独特の甘味、ウイスキー愛好家からも関心が寄せられているブランデージャンルの全体像を知るには、ぴったりな内容となっています。(1st Stepと言いつつ安易な入門記事ではない、蒸留方法から生産地域の特徴まで、幅広く網羅されている記事です。)

緊急事態宣言に伴う自粛生活で、夜の街に出歩けない日々が続いているとは思いますが、SNSでは7bookscoverなる取り組みが広まっていたりで、夜の時間で読書や勉強をされる方も少なくない模様。
まだまだ涼しさを感じる5月の夜。こちらの記事を、ブランデー片手に宅飲みのお供にいかがでしょうか。

シングルカスク 余市 10年 2007-2017 マイウイスキーづくり 60% &LIQUL連載記事紹介

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YOICHI 
NIKKA WHISKY 
SINGLE CASK MALT 
Aged 10 years 
Distilled 2007.04.14 
Bottled 2017.10.18 
Cask type New American Oak #408021 
700ml 60% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@テイスティングサンプル
暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:ウッディでハイトーンな刺激のあるパワフルなアロマ。熟したバナナやバニラ、キャラメルソースを思わせるチャーオーク。合わせてタールや葉巻を思わせる軽い酸味と焦げたような樽香を伴う。

味:口当たりはメローで甘酸っぱく、そしてパワフル。ドライオレンジやキャラメルソース。そこに燻した麦芽、やや焦げたようなウッディなフレーバーから、香り同様に葉巻を思わせる含み香がスパイシーなフィニッシュとともに長く続く。

フルーティーさよりも、樽由来のウッディさと、麦芽系の味わいが中心のカスク。新樽由来のエキスは濃厚で、ハイプルーフ由来の口当たりの強さを包み込むように感じられる。ただしそのウッディさのなかに、蒸留所のキルン見学で感じたような土や植物の焦げた香り、ピートに通じるニュアンスを含んでいる点がこのカスクの個性を構築している。

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先日、我が家に届いたマイウイスキーづくりの余市。同じようにマイウイスキーのボトルを所持している愛好家とボトル交換を実施したのですが、その際交換ボトルとは別にオマケでいただいたのが、#408021のテイスティングサンプルです。
飲んだ印象は、なんともらしい余市というもの。メローでビター、リッチな新樽感に、酒質由来の甘酸っぱさが混じるパワフルな味わい。甘味、酸味、苦味のバランスが良いですね。度数は60%とマイウイスキーボトルのなかでも特にハイプルーフ仕様故、強い刺激もありますが、新樽のエキスがオブラートのようにそれを包み込んでいます。

マイウイスキーの余市は、初期の頃は色々幅があったようですが、自分が参加した頃は新樽+10PPM以下の極ライトピート、あるいはノンピートで仕様が固定されていたと記憶しています(マイウイスキー上級編を除く)。一方、この2007年は多少ピートが強いのか、あるいは樽由来の要素がピートに類似する風味に繋がったのか、焦げた木材を思わせるビターな味わいの中に、タールや葉巻葉のようなニュアンスが混じる点が面白い仕上がりでした。

もっとフルーティーなものとか、スモーキーでソルティーなタイプを好まれる方のほうが多いと思いますが、自分はこの余市は結構好み。なんとも、通好みな余市だと思います。

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酒育の会 LIQUL
Re-オフィシャルスタンダードテイスティング(番外編)
特別なオフィシャルボトル - 2020.3.1公開

※LIQUL Twitter 開設してました(笑)

さて、ちょうど良いのでご紹介。
昨日公開された酒育の会ウェブマガジン「Liqul(リカル)」の連載記事は、番外編としてシングルモルト余市の紹介を踏まえつつ、特別なオフィシャルボトル「マイカスク」を味わうことの魅力について書いてみました。

オフィシャル余市は、2015年のリニューアル(というかニューリリース)の際、同価格帯だった余市10年に比べて明らかに若さが目立つ、旧NAS余市の実質的な値上げではないかなどかなり厳しい評価を受けたことは記憶に新しいと思います。
その後しばらく様子を見てみると、新樽熟成原酒に共通する樽感が、少し濃くなったようなロットが現れ、若さが多少控えめになったように感じられました。
(イベントで質問しても、ニッカ側はなにも変えていないというコメントでしたが・・・。気のせいかな?)

そのニッカらしい味わいを構成しているのが、これまでレビューしてきたマイウイスキーづくりボトルのような、新樽熟成の余市原酒です。オフィシャルスタンダードをテイスティングした流れで、新樽熟成のシングルカスクを飲むと、スタンダードにおける役割がわかりやすいと思います。あるいは蒸留所で販売されている、ウッディー&バニリックでも良いですね。こちら若さは強いものの、ニッカ味の残った良いリリースです。

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ただ、今回の記事の主目的は「オフィシャル余市美味しいor美味しくなった」ではなく、カスクオーナーとして自分にとって繋がりのある一樽を持ち、同じ時間を過ごした後に飲む1杯がもたらす”特別な瞬間”を紹介することにありました。
本来この企画はオフィシャル通常リリース、スタンダードクラスを中心に扱うものと位置付けているため、番外編としている理由はそこにあります。

記事では字数制限から省いてしまった内容があり、読み直して見ると目的がボケている。あるいは余市のレビューからラストの部分にかけて、自分が伝えたいことの繋がりの悪いように感じられ、手直ししたい気持ちがムクムクと沸いてきています。
どの記事にも大なり小なり反省点はあるのですが、これは改稿をお願いしようかな・・・。


記事中でも触れましたが、これまで年単位での熟成を前提としたオーナー制度は、国内ではニッカのマイウイスキーくらいしかなく、あとは直接蒸留所と交渉するか、スコットランドから買い付けるかくらいしかありませんでした。
それが、ここ数年で一部のクラフト蒸留所がカスク販売や共同オーナー制度はじめたことで、カスクオーナーになるハードルは大幅に下がりました。

自分が作った原酒が詰められるサービスというのはまだありませんが、長濱蒸留所のウイスキー塾や、三郎丸や安積のオーナー向け見学会など、特別なプログラムを通じてその蒸留所を深く知ることができる取り組みもあり。。。参加することで、蒸留所との繋がりが強く生まれ、まるで自分の分身がそこにあるように思えてくる。結果、ボトリング後の味わいを一層特別なものに高めてくれると思うのです。

ウイスキーを趣味とする我々愛好家にとって、そうして過ごす熟成期間もまた、充実したものになるのではないでしょうか。時を飲む贅沢があれば、時間をかける贅沢もある。
自分はクラフト蒸留所のいくつかで、共同オーナー制度を利用していますが、今からその特別なひとときが待ち遠しいですね。

LIQULコラム WEB掲載開始とアラン新商品のレビュー

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昨年から連載させてもらっている、酒育の会の広報誌「LIQUL(リカル)」。
元々は紙媒体&電子書籍として隔月配布・公開されていましたが、今年からWEBマガジンに媒体を移し、日替わりでライターの記事が投稿される形式になりました。

実は、媒体としては1月下旬頃から公開されていたのですが、すっかり見落としていたというこの不義理っぷり。
2月1日に公開された自分のコラムは、昨年入稿していたアラン特集。大幅リニューアルされた、アラン蒸留所のスタンダード銘柄の新旧比較と、新商品にフォーカスした内容となっています。

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酒育の会 ”Liqul”
Re-オフィシャルスタンダードテイスティングVol.4「アラン」
・アラン10年新旧比較テイスティング
・ニューリリース:バレルリザーブ 43% 
・ニューリリース:シェリーカスク 55.8%
コラムページ:https://liqul.com/entry/2526

2019年9月、アラン蒸留所は既存ラインナップの大幅リニューアルを発表。10年や18年等の熟成レンジは継続しますが、ご存じの通りラベルデザインが全く別物にシフトするという、大きな動きが起こっていました。
それらに対するレビューはコラムにまとめていますので、ここでは記事中に書かなかった雑感、執筆していて思ったことなどをメインに触れていきます。

■アラン10年新旧比較テイスティング
まずはオフィシャル・アランで最も飲まれているであろう、10年熟成の新ボトル。素直に旧より良くなったなと感じました。
よくよく考えると、アラン10年はこれで3世代目。リニューアルする毎に美味しくなってきたと感じます。生産が安定し、原酒が増え、蒸留所としての体力がついた結果・・・でしょうか。

旧ボトルは旧ボトルで価格を考えると良い出来でしたが、新ボトルはアメリカンオーク由来の少し粗いウッディさが軽減され、フルーティーさに繋がる良い部分はそのまま残っているような構成です。
色合いが若干濃くなったようなので、樽構成の比率で少しシェリー系統を増やしたのかもしれません。
比較テイスティングして悪くなってたらどう書こう・・・と一抹の不安を覚えていましたが、杞憂に終わって一安心。

ただ、上記コラム執筆時にテイスティングしたのはイギリス流通品で、日本向けではないもの。おそらく大差はないと思いますが、今流通が始まっているものを確認した上で、改めてレビューはまとめたいと考えています。

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■新商品3種について雑感
一方、新商品の位置付けとなるうちの
・バレルリザーブ 43%
・シェリーカスク 55.8%
これらも価格を考えたら全然良いですね。
バレルリザーブは昨年までリリースされていたロックランザの後継品と思われますが、10年同様に感じられたアメリカンオーク由来の粗さや、若さに通じる要素が少なくなり、加水も効いて品の良いフルーティーさだけ残ったような変化。構成原酒は7~8年熟成で多少単調ではあるものの、目立った若さはあまり感じませんでした。

全体が整えられている分、新10年よりもダイレクトにオーキーなニュアンスが感じられるのがポイント。同クラススペイサイドモルトの代替品としても、いい線いくんじゃないでしょうか。例えばグレンリベットとか、グラントとか・・・うかうかしていられないですよ。

また、シェリーカスクも同様に若い原酒で構成されていますが、ハイプルーフ故の粗さはあるのですが、シーズニングシェリー系の香味がしっかりあり。ライバルはアベラワーのアブナック、あるいは最近みなくなりましたが、グレンドロナックのカスクストレングスといったところ。
今価格を調べたら税込みで6000円前後ですか・・・近年の相場込みで考えたらかなり頑張っているボトルだと思います。
この手のボトルあるあるで、ロットを重ねる毎にシェリー感が薄くならないかが心配ですが、アランのコスパの良さを見せつけるようなリリースと言えそうです。

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一方で、テイスティングをしたものの、コラムに掲載しなかったのが、アラン・ボシーの後継品に当たると考えられる「アラン・クオーターカスク 56.2%」
位置付け的に新商品となるのですが、掲載しなかった理由は比較テイスティングで旧ボトルにあたるボシーのほうが美味しいと感じてしまったから・・・なんです。

ボシーも全てが美味しいわけではなく、2016年頃にリリースされたバッチ1は、樽感が荒く狙ったフルーティーさもそこまでおらず。
それが2018年頃から流通しているバッチ3はクオーターカスク由来のバニラやオークフレーバー、フルーティーさが、アランの麦芽風味にうまく馴染んでこれは良いリリースだと思える仕上がり。
逆にニューリリースのクオーターカスクは、ボシーのバッチ1に先祖がえりしてしまったような、そんな印象もあって、国内に入ってきたら追試が必要と保留したわけです。
もちろん好みの問題もあると思うのですが。。。

なおリニューアルしたなかで、18年や21年のアランは後発発表されたもの。コラムを書いた時点でモノがなく、これも是非テイスティングしたいボトルです。
旧ボトルとなる18年は、リニューアル前のロットを飲んでクオリティが上がっているとレビューを書いたばかりでしたし、逆に21年は物足りない印象でしたから、そこからどう変化しているのか楽しみですね。

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酒育の会「LIQUL」
”お酒を楽しむ人のカルチャーマガジン”

今回のコラムは、新ボトルが国内に出回り始めた頃の掲載(めちゃくちゃ見落としてしまっていましたが。。。)。書いておいてなんですが、自分も「そうそうこんな感じだった」と、思い返すことができるちょうど良いタイミングでした。

Webマガジンとしてのリカルの連載は、各ライター毎にストックされている記事が日替わり、あるいは隔日で公開されていくこととなります。
それにしても、こうして多くのライターが活動するグループのなかにいると、恐縮してしまう気持ちだけでなく、昔ウスケバでみんなが色々な記事を投稿していた、ポータルサイトの雰囲気を感じて懐かしくもなります。思えばあそこから始まったんだよなぁと・・・。
このリカルの新しい媒体から、どんな出会いや繋がり、あるいは機会が生まれていくのか。今後の展開が楽しみです。
ライターの皆様、そして読者の皆様、今後ともよろしくお願いします。

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ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019秋 に参加してきた

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お酒を楽しむための様々な情報を発信している、酒育の会。同会主催で今日から10日間、「ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019」が、神田にて開催されています。

このイベント、テーマは近年ブームとなっている日本のウイスキーやクラフトジンなどの蒸留酒全般、所謂”ジャパニーズスピリッツ(一部スピリッツベースのリキュールを含む)”で、これらを試飲しつつ購入することも可能な販促会という感じ。
マルシェという位置付けらしく、ちょっとしたフリーマーケットのような雰囲気で、休日はVIPを招いてのゲストトークショーや、上記スピリッツを使ったカクテルの提供も予定されています。

自分は酒育の会発刊のフリーペーパーLIQULに関わらせて貰っていますし、何よりニューリリースの情報も抑えておきたい。参加&紹介しないわけにはいきませんね。
あとブース出展している蒸留所に、日頃情報共有していたり、あるいは個人的に注目しているところが多かったのもあり・・・。
早々に仕事を切り上げ、初日の会場に伺いました。
結果、平日と言うこともあってゆったりとした空気のなかで、色々お話を聞きながら試飲を楽しむことが出来ました。
そんなわけで、会場の様子をざっくりと紹介します。

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ジャパニーズスピリッツ・マルシェ2019秋
イベントページ:https://shuiku.jp/news/8005
入場料:無料
期間:2019年9月20日~9月29日
時間:11時~20時(29日は18時で閉会)
場所:マーチエキュート神田万世橋 1F S7スペース
東京都千代田区神田須田町1-25-4
※住所上は神田ですが、公共交通機関で近いのはお茶の水か秋葉原駅。
※会場前に目立つような看板が出ていません。わかりづらくて迷いましたw 秋葉原を背にして一番奥、御茶ノ水側のスペースで開催しています。

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(試飲ブース:上が無料、下が有料(100~2000円)。無料試飲はクラフトジンが充実していて、普段なかなか飲む機会のない各社のフレーバーを気軽に楽しめる。ウイスキーでもいくつか光るものあり。っていうか無料でこの充実度合いは。。。有料試飲もジャパニーズウイスキーを軸に、確かにレアなものが揃っている。クラフトアブサンも2種類スタンバイ!)

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(三郎丸蒸留所:自分イチオシクラフト蒸留所のひとつ。世界初、鋳造で作った新型蒸留器は問題なく機能しており、むしろ酒質は更に期待できるものとなった。ピーティーかつしっかりとした厚みがあり、将来を期待出来る味わい。今回は無料試飲ラインナップにその今年仕込みのニューメイクあり。是非進化を体感してほしい。)

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(長濱蒸留所:今回はアマハガン3種。同じブレンドがベースとは思えないほど、フィニッシュによる違いがしっかり出ている。先日発売されたばかりの第3弾ミズナラは、いい具合にニッキのようなスパイシーさが効いて、面白い仕上がりである。)

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(笹の川酒造、安積蒸留所:いよいよ今年3年熟成のリリースを控えた安積蒸留所。あまり市場に流通していない山桜の3銘柄に加え、1年6ヶ月熟成のニューボーンが試飲ラインナップに。ここも酒質は素直で癖も少なく、確実な成長が感じられる。)

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(小正醸造、嘉之助蒸留所はウイスキーではなく、今回はジンで出展。ほうじ茶と桜島小みかんジンがPRラインナップ。どちらも和の要素が強い面白いジンである。柑橘とジンの組み合わせはある意味オーソドックスだが、ほうじ茶の香ばしいフレーバーは意外に悪くない。むしろ美味しい。)

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(養命酒は自社製造のジン、香の森とライトタイプな香の雫で出展。ストレートでは飲み口強く、独特な香味が特徴のこのジンが、市場でどのように受け入れられるか・・・。っていうかライトタイプとは思えない香の雫。)

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(いいちこで知られる大分の三和酒類さんが作る、ジンでもウォッカでもない、麹が特徴のオリジナルスピリッツTUMUGI。
麹麦を蒸すことで香りを強くし、スタンダードのKOJIは焼酎とも異なる強い麹香(まるで醤油や味噌のような)と、その奥にかぼすやレモンなどの柑橘のフレーバー、そして柔らかい口当たりが特徴。ボンタンを使って香味付けしたTSUMUGI BONTANは、逆に麹のニュアンスを抑えて爽やかな柑橘感とドライな口当たりが心地よい。樽熟品は4ヶ月熟成で適度な樽感とマイルドな口当たりが、ハーブを思わせる要素と共に感じられる。
作り手の考え方、こだわり、そして日本人向きの和の風味。。。今回の出品物のなかで最もツボに入った銘柄だった。オススメ!!)

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(出展はされてないが、試飲ブースにあった非常に興味深い出来のジャパニーズグラッパ葡萄恋露。シダックスが親会社というのが面白いが、それ以上に丁寧な作りのグラッパで、ホワイトタイプはスウィートで淀みなく、華やかな香り立ちに花のようなアロマが混じる。これは美味しい。そしてエロチズム/愛(謎))

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(有料試飲から、ニッカのオールドブレンデッド。飲んでみたかった一本だが、とてもジャパニーズとは思えない、スコッチ的なモルティーさとピートフレーバーに驚き。モルト比率の高いリッチな作りの1本でかなり美味しい、是非我が家にほしいw。)

今回のイベント。酒類関連のイベントとしてはかなり長い開催期間かつ、立地的にも開催時間的にも、特に都内勤務の方が仕事帰りに立寄りやすいのが魅力。
入場料無料ですし飲めてない銘柄もあるので、もう一度遊びにいきたいくらいです。
TUMUGIのような魅力的な銘柄を知ることが出来たのも、大きな収穫でした。

一方で、さすがに10日間ぶっ通しで関係者がブースに張り付くことは、特にクラフト系にあっては難しく、ウイスキーフェス等のように常に全てのブースに関係者がいるわけではないのは仕方のないところ。
とはいえ主催する酒育の会のメンバーは、谷嶋さんを初め相当知見のある方々ですので、逆にお酒に関する感想や、飲み方などのアドバイスなど、酒育の会だからこその質問をしてみても面白いと思います。
イベントは明日からまだ9日間残っているだけでなく、トークショーは明日からスタートです。お時間ある方は是非参加してみてください。

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【ブース出展企業】
三和酒類株式会社
小正醸造株式会社 嘉之助蒸溜所
笹の川酒造株式会社
養命酒製造株式会社
アサヒビール株式会社
キリンビール株式会社
本坊酒造株式会社
若鶴酒造株式会社 三郎丸蒸留所
長濱浪漫ビール株式会社 長濱蒸溜所
佐多宗二商店
Limone

ゲストトークショースケジュール】
9月21(土)14時~ ろっき氏
「アセトアルデヒド症候群」主宰、ジンに関する取材研究では国内屈指の専門家、ジンに関する自費出版多数

9/22(日) 14時~ 輿水精一氏 サントリー名誉チーフブレンダー
16時~ 鹿山博康氏 Bar BenFiddichオーナーバーテンダー (カクテルのご提供もあり)

9/23(月・祝) 14時~ 肥土伊知郎氏 ベンチャーウイスキー代表
終日  須藤銀雅氏 アトリエAirgead代表 ブースにてバー専用チョコレートなどのご提供

9/28(土) 14時~ 山岡秀雄氏 ウイスキー評論家・コレクター × 吉村宗之氏  ウイスキーアドバイザー
16時~ 須藤銀雅氏 アトリエAirgead代表 「チョコレートとお酒のマリアージュについて」

酒育の会 Liqul(リカル)での連載について

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お酒に関する正しい知識や、趣味としてのお酒の楽しみ方を発信するため、イベントやセミナー等の各種活動を行っている一般社団法人酒育の会。
同会が奇数月に発刊している機関誌「リカル」に、2019年7月号からウイスキー関連の記事を連載させていただくことになりました。

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酒育の会 LIQUAL (リカル)
※最新刊ならびにバックナンバーについては上記URL参照。ウイスキーだけでなく、コニャック、テキーラ、ラム、ワイン等様々なお酒やBAR飲みのスタイルなどが特集されています。7月号はアルマニャック特集で、7/1以降WEB公開予定。


連載に当たっては、テーマも含めて自由に決めて良いという条件を頂いており、会の目的とも照らして"オフィシャルスタンダードの再認識"にしました。
ブログを書き始めてから、特にここ1~2年は意識的にオフィシャルスタンダードも飲むようになったのですが、最近そのオフィシャルが美味しくなったという声を、自分だけでなく周囲の愛好家からも聞きます。
この機会に再勉強も兼ねて、良いと思ったリリースや、従来に比べて好ましい変化のあった蒸留所のラインナップを紹介していく企画を考えたワケです。

文字数に制限があるため、細かい部分の解説やテイスティングコメント、スコアリング等はブログで補足する整理。書くのは良い部分をざっくり程度となるため、テイスティングレビューというよりコラムに近い構成になりますが、内容やラインナップに共感して貰えたら嬉しいですね。

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記念すべき連載一回目。掲載は巻末のほうかと思いきや、隣のページは吉村さんで、しかも一番開きやすいセンター部分。例えるならプロ入り1年目のピッチャーが、ブルペンでエースと一緒に投球練習をするような心境。。。になりましたが、自分の記事がこうして紙媒体に掲載されるのは本当に感慨深いです。(プロになったこともピッチャー経験もありませんがw)

チョイスしたのは、アバフェルディ12年とロッホローモンド系列の12年クラスで、ロッホローモンドやインチマリンを想定。
アバフェルディは今も昔も普通に美味しいハイランドモルトで、コスパも素晴らしいだけでなく、上位グレードとの共通点もある佳酒であることから。そして同じハイランド地方から、かつてはダンボールと呼ばれて珍味扱いされていた蒸留所ですが、近年好ましい変化が見られたロッホローモンドを。
どちらも記事化に当たって、外せないオフィシャルボトルだと思っていました。

一方オフィシャルスタンダードと言っても幅広く、もうひとつ基準に考えているのが、1本5000円台までの価格で販売されている、エントリーグレードであるということ。
例えば同じオフィシャルでも、スプリングバンクの10年は近年文句なく良くなったボトルのひとつですが、今回使わなかったのは8000円弱という価格が他のミドルグレードと同じ区分で整理出来てしまうためです。
同価格帯からカダム15年とか、ノッカンドゥ18年とかも。。。本当は使いたいんですけどね。5000~10000円のクラス、あるいはそれ以上の価格帯にも注目の銘柄は多く、そのうち各価格帯から1本ずつという形式にシフトしても面白いかもしれません。
他方、このあたりを制限しても候補は多いので、どれを取り上げるか悩むことにはなりそうです。


今回の話は、年に2回招聘頂いている、非公開のブラインドテイスティング会をきっかけとして、同会代表の谷嶋さんから頂きました。
これまで酒育の会と特段接点のなかった自分ですが、今までの経験を微力でも同会の理念に役立てられればと思います。
先に述べたように、最初はオフィシャルで最近注目している美味しい銘柄、面白い銘柄を中心に。その上で来年からは、日本のリユース市場に一定数以上在庫があるオールドボトルについても別特集で掲載していければと考えており、企画案は提出済みです。

なお、本著述については会社の許可をとった上で実施しています。今後は許可範囲内で、自分の時間のなかで無理なく参加させていただくつもりです。
そのため、締め切り前は執筆を優先するためブログの更新が止まるかもしれませんが。。。そこは察して頂ければ幸いです。(笑)
リカルでのくりりんも、よろしくお願いします!

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