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カテゴリ:長濱(長濱浪漫ビール)

シングルモルト 長濱 セカンドバッチ 50%

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SINGLE MALT NAGAHAMA 
THE SECOND BATCH 
Distilled 2017 to 2019 
Bottled 2023 
Cask type Sherry, Koval, Islay Quarter, Bourbon Quarter 
500ml 50% 

評価:★★★★★★(5→6)

香り:甘やかなウッディネス、複数のスパイスを思わせるアロマにりんごのカラメル煮や柑橘、カシスシロップ、微かに焦げた木材を思わせる要素を伴うリッチなアロマ。

味:とろりとした口当たり。黒かりんとうのような軽い香ばしさを伴う甘さと麦芽風味から、スパイシーな刺激と合わせて柑橘のジャムを思わせる甘酸っぱさ。余韻はウッディでビター、微かなピートを伴いジンジンと口内を刺激する長い余韻。

シェリー系の原酒を土台に、特にKOVALカスク由来のスパイシーさやアメリカンオークのフレーバーが合わさって、複雑な味わいが形成されている。ピーティーな原酒も少し使われており、香味の中で奥行きに通じているのが心憎い。
一方で、リリース直後の印象は各樽のフレーバーが馴染みきっておらず、濃厚さの中に複数の個性があるようでチグハグしたところもあったが、時間経過で馴染み一本筋の通った複雑さへと変化している。オススメはストレートを時間をかけて。

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長濱蒸溜所が2023年5月にリリースした、シングルモルト第2弾。
シェリー樽熟成原酒を軸に、KOVAL(バーボン)カスク、アイラクオーターカスク、バーボンクオーターカスクによる熟成原酒をバッティングしたシングルモルト。基本ノンピートですが、シェリー樽原酒についてはノンピートとピーテッド、それぞれの原酒が使われている。若い原酒ゆえに馴染みきってない印象はあったものの、今できる最大限の工夫をしたと感じた1本だったところ。
そろそろ第3弾のリリースも控えているので、ここで復習しておきたいと思います。
(え?そもそも1stのレビューがあがってないじゃないかって、細かいことを気にしてはいけない…)

シングルモルト長濱は、第1弾がバーボン樽やミズナラ樽原酒など、長濱蒸溜所にある様々な樽をベースにバッティングしたシングルモルト。
リリース直後もテイスティングしていますが、先日都内某BARでブラインドテイスティングをする機会があり、改めて飲んでみるとスパイシーかつしっかり柑橘系のフレーバーがあって、長濱かな?とは答えましたがTHE FIRSTとはわからなかった。時間経過によっていい意味でフレーバーが馴染み、大きく印象が変わっていたんですよね。
そして今回、久々にテイスティングしたTHE SECONDですが、これもやはりいい方向に変わっていると感じています。

長濱蒸溜所だけでなく、若いウイスキー全体に見られる傾向ですが、若い原酒で濃いめの樽感をバッティングしたシングルモルトやブレンデッドは、それがマリッジを経て馴染んだと感じてもボトリング後さらにもう一段、経年変化によってフレーバーが一体化する傾向があるように思います。
若い原酒の場合フレーバーの奥行き、複雑さが少なく、かつ味わいが強いため、どうしても原酒同士が馴染みにくいのでしょう。小さい子供たちだけ集めてもわちゃわちゃして落ち着かない小学校のクラスのようですが、成長すればある程度落ち着いてきますよね。

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そうした意味でTHE SECONDの変化は、恐らくKOVALカスク由来のスパイシーさ、焦げたようなウッディさ、そして若い原酒由来の酸といった要素が、シェリー樽由来の色濃い甘さの中に混じり、ただそれという単独の存在だけではなくなったという感じです。
例えば酸味が熟成樽由来の甘味と合わさったことで、ダークフルーツや柑橘を思わせるフレーバーへと変化している感じ。元々持っていたポテンシャルがしっかり発揮されてきています。

一方で、長濱らしさといえば、柔らかい麦芽風味とスパイス香、限定でリリースされるシングルカスク含めて、今まで飲んできた大体のリリースに共通して感じられる要素がこのボトルにもあります。そしてそれは、リリース直後でも時間が経っても一定の主張をするので、あー長濱だなと安心させてくれます。

そしてTHE SECONDでは、もう一つの特徴としてトンネル熟成庫の存在がピックアップされていました。
長濱蒸溜所は、長濱駅前にある長浜浪漫ビールに併設された蒸留棟で原酒の仕込みが行われているものの、熟成は使われなくなった旧道のトンネル、廃校となった小学校、そして2022年からは琵琶湖に浮かぶ竹生島でも行われています。

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※旧観音寺トンネルを活用した熟成庫。県内では心霊スポットとしても知られていたが、熟成庫となって天使がきたからか、噂もすっかり。

小学校、トンネル、異なる環境での熟成。トンネル熟成庫は1年を通じて気温が冷涼で、樽感が強く出る30度を超えることはまずない環境。樽感としてはスコットランドでの熟成に近くなり、一方でトンネル内は湿度が非常に高いことも特徴です。
どのような違いが出るかというと、度数が下がりやすくなると言われており、天然の加水が効くためか、まろやかな口当たりになると聞いています。

荒々しくも濃厚な原酒が育ちやすい温暖な熟成環境に比べ、穏やかでまろやかな原酒が育つなど違いが明確に表れていることが、それぞれの原酒をブレンドした際の複雑さに通じるわけです。
まだ若い原酒であるため真価を発揮するには多少時間が要りますが、その時間を含めて楽しむのもクラフトの味というヤツですね。
竹生島熟成とピーテッドがテーマの3rdリリースも楽しみにしています!

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長濱蒸溜所 アマハガン ワールドブレンド 小林さんちのメイドラゴン 47%

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AMAHAGAN
World Blended
The maid dragon of Kobayashi-san
700ml 47%

評価:★★★★★(5−6)

香り:注ぎたては鼻腔を刺激するドライな要素と、アプリコットやパイナップルを思わせる甘酸っぱさ。徐々にほろ苦いウッディネスに、アメリカンオークの華やかさとフレンチオーク系のバニラ香、複層的な樽香と微かなスモーキーさ。なんとも複雑なアロマ。

味:柔らかい口当たりから、グレーンのコクとソフトな甘さがあり、香り同様甘酸っぱさ、ややケミカルなパイン飴のようなフレーバーに乾いた麦芽、オールブラン。奥には白葡萄やナッツなどのフレーバーも。序盤はプレーンな味わいだが、それが複雑さを引き立てる。 余韻は口内をねっとりとした質感がコーティングし、序盤に感じられた甘酸っぱさが、スモーキーさとビターなウッディネス、ワインを思わせるタンニン、スパイシーなフィニッシュへと変わっていく。

AMAHAGAN系統の味わいをベースに、複数の原酒や樽の個性が混ざり合う、複雑なウイスキー。モルト:グレーン比率は6:4あたりか。特にハイランドモルトにワイン樽熟成のウイスキーとピートフレーバーが仕事をしているようだが、その複雑さ故、日によって、グラスによって、とにかく表情が変わるところがあり、なんとも奔放。これがブレンダーのコメントにある原作を意識した作りの結果か。
が、ハイボールにすると主張し合っていた個性が交わり、薄まり、すっきりとしてクリア、軽い酸味と麦芽風味ベースで非常に飲みやすい。

原作同様、序盤は深く考えずに楽しんでいくのが良いのかもしれない。酔った帰り道にドラゴンが居て、メイドになっていた??
冷静に考えてどういうことなん。。。いやこの可愛さなら良いのか。。。頭が。。。考えるな。。。感じるんだ。。。(何か盛られた模様

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ウイスキー界のコラボメーカー、長濱蒸溜所がリリースした、クール教信者作の漫画「小林さんちのメイドラゴン」とのタイアップリリース。原酒は長濱蒸溜所のモルト原酒と輸入ウイスキーのワールドブレンデッド。
先日は空挺ドラゴンズとのコラボリリースがありましたが、空挺ドラゴンズが肉料理に合うウイスキーをコンセプトとしたのに対して、今回のリリースは、原作の情景をイメージしてブレンドがされています。

メイドラゴンについては。。。異種族交流コメディ漫画なので、とりあえず見てくれとしか言えませんが。そのグラスの中身、何か混ぜられてないか?と、原作を知っている人なら若干疑ってしまうラベルに加え、裏ラベルのバーコードが竜形態のトールなのもこだわりを感じるポイント。
原酒の系統としては、ワイン樽原酒がかなりいい仕事というか、全体に厚みやフルーティーさ、そして余韻のビターなフレーバーを与えています。
また、長濱蒸溜所のモルトを熟成したものだけでなく、輸入ウイスキーを追加熟成したものを結構使っていると感じます。ピート原酒も存在は感じられつつフレーバーに幅が出る程度の塩梅で、万人向けながら複雑さを考察する楽しみもある1本です。

飲み方としては、テイスティングに記載した通りハイボールがオススメ。
深く考えると、え、それは良いのか見たいなツッコミどころや、色々深い設定がある原作ですが、そこまで考えなくても緩く、楽しく、可愛さも感じられるのがこのメイドラゴンが人気作となっている要因の一つだと思います。その意味でも、まずは軽く深く考えないでハイボールでグイっといってみるのがいいなと。




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さて、ここからちょっとマニアックな話。
今回のウイスキーですが、発売元であるBar レモンハートさんからテイスティングコメントの依頼を頂いており、去年の12月末の時点、ブレンドサンプルを頂いておりました。その時点のコメントは、販売ページや同社からのニュースリリース等で確認することが出来ますが、2つのコメントを比較すると、同じ要素はありつつも、異なるキャラクターを感じ取っていることが伝わるかと思います。

同じウイスキーをテイスティングしたとしても、コメントが完全に一致することはないのですが、よほど体調や環境の違い、年単位で時間が経過しない限り、味の方向性が大きくブレることはありません。
例えば、バーボン樽のウイスキーならばバーボン樽由来のオークフレーバーが、シェリー樽なら…という具合で、無から有は生まれないので、必ず同じ要素を拾うはずです。

ではなぜ違うのか、くりりんのテイスティングがガバガバだから…ではなく。
半年前のブレンドサンプル時点では、使用する原酒は樽から払い出されておらず、その時点の原酒でレシピが作成されていること。そしてレシピ決定からボトリングまでの約半年間、原酒が追加の熟成を経ているためです。
そうなんです、上記テイスティング時点から、原酒が成長し、変化しているのです。

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(長濱蒸溜所 AZAI FACTORYこと旧七尾小学校で樽詰めを待つワイン樽の数々。)

サンプル時点では繋ぎになる原酒の熟成が弱く、スコッチグレーンか、あるいはグレーン多めのスコッチブレンデッドバルクの線の細さが、樽感やピートなど、各原酒の個性を支え切れていなかった印象を受けます。最終的には落ち着いて、AMAHAGAN系統の味わいが強く出てくるのですが、注ぎたてはそのちぐはぐさが強く出て、なんだか危ういなと、そんな第一印象でした。

このグラス内の変化が、これはこれでメイドラゴン原作のストーリー展開にマッチしているなと思えたわけですが。
一方で、製品版では約半年の追熟で樽感が増し、原酒の個性も強まっただけでなく、全体的に角が取れて繋がりも出ています。ピートフレーバー、ワイン樽原酒由来と思われるフルーティーさとビターなウッディネス、グレーンの甘さ、南ハイランドモルトの個性的なフルーティーさと麦芽風味、これらがまとまっていないようでまとまっている。原作を思わせるはちゃめちゃさ、にぎやかさがある、不思議なバランスのウイスキーへと成長していました。

どちらが好みかという話ではありませんが、ウイスキーの面白さ、ブレンダーの難しさを改めて感じたリリースとなりました。
いやその変化を感じられるのはコメント協力した人だけだろと言われたら、そこは記事から感じ取ってとしか言えないのですが(笑)。
コラボリリースだと、どうしても色眼鏡的に見られがちかと思いますが、長濱蒸溜所のコラボは規模の小さな蒸溜所とは思えないほどレシピに様々なパターンがあって本格的。ちゃんとストーリーがあって、ただラベルを貼っただけのコラボに終わらない点がポイントなのです。

最後に、これはレモンハートの古谷さんへの私信となりますが。この度は、貴重なサンプルウイスキーのテイスティングをさせて頂き、また、コメント協力という表舞台に立つ機会も頂き、誠にありがとうございました。次のリリースも楽しみにしております。

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メイドラゴンウイスキーのハイボールを、尾っぽの豚肉のチャーシューと。悪くない組み合わせです。ラベルデザインは、トールの背後が何パターンかあったらさらに面白かったですね。魅力的なキャラが多い原作なので。後、酒の席でシラフな小林さんなんて小林さんじゃない(笑)。

長濱蒸溜所 アマハガン 空挺ドラゴンズVer. 47% ワールドブレンデッドウイスキー

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NAGAHAMA DISTILLERY 
AMAHAGAN 
World Blended Whisky 
空挺ドラゴンズ Ver. 
700ml 47% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:トップノートはスパイシーで、軽くナッツや麦芽シリアルを思わせる香ばしさが心地よい。奥にはオーク樽の華やかさ、微かにケミカルな甘さ、スモーキーさも感じられる。

味:香りに反して味わいはプレーンで軽めな仕上がり。口当たりはマイルドで、クレープ生地のような素朴さを感じるモルトやグレーン由来の甘さ。そこにほのかな酸味とコク、後半につれてじんわりと広がるウッディさとピートフレーバー。余韻はほろ苦く、ほのかにスモーキー。

いつものアマハガン味ではなく、系統の違うプレーン寄りな原酒構成が主として感じられる。香りにあるナッティーで華やかなアロマは、中長熟の原酒でなければ出てこないフレーバーであり、構成的には3年熟成程度の長濱モルトに、5〜10年程度の南ハイランドモルト、そして最長20年熟成程度の内陸原酒を含む幅広い年数のブレンドが仕事をしているのではないだろうか。 樽感はワイン樽やシェリー樽、そしてアイラクオーターカスクを連想する複数の要素があっさりめの複雑さを形成している。

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単体としては香りが好ましく、一方で味は面白味は少ないが飲みやすい、バランスの取れた仕上がりである。ハイボールにすると軽やかな酸味が伸び、さっぱりと飲み進めることができる。
なおブレンドレシピのテーマである肉料理とは、麦芽風味と穀物風味主体の味わいが、さながら炭水化物的なペアリングを見せる。

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Good!アフタヌーン誌で2016年から連載中の空挺ドラゴンズ。
アニメ化もされている人気作が、ウイスキー業界のコラボメーカー長濱蒸溜所と組んでリリースしたのが、今回レビューする「AMAHAGANワールドブレンデッドウイスキー 空挺ドラゴンズVer.」です。

空挺ドラゴンズは、空を飛ぶ龍を追い、それを捕って生計を立てる「龍捕り」の一団が主役の異世界冒険活劇。
同作における世界の雰囲気は、多くの人が知っている作品に例えるならラピュタに近い感じでしょうか。ストーリーは団員にまつわるエピソードと合わせて、龍を追うアドベンチャーパート、その龍を調理して食べる美食パートで展開されており、個性豊かな登場人物が織りなすストーリーを、異世界肉料理が彩る構成となっています。

今回のコラボは、長濱蒸溜所の屋久ブレンダーが原作のストーリー構成に倣って「肉料理に合う」ウイスキーとしてレシピを構成。
長濱蒸溜所のコラボリリースでは、過去に“まどろみバーメイド”でキャラクターに焦点を当てたレシピでのリリースが行われましたが、料理に合うというコンセプトは記憶している限り初めて。
いったいどんなレシピに仕上げてきたのか、どんな肉料理と合わせてみようか・・・と、作り手と原作、どちらも知っているだけに、ボトルを入手するまであれこれ予想する楽しさもありました。

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(長濱蒸溜所でのプライベートブレンド作成風景。原酒を確認する屋久ブレンダー。)

とは言え、一口に肉料理といっても、その肉の種類から調理法、味も薄味から濃いめまで千差万別です。
おそらく、屋久さんは長濱蒸溜所併設のレストランのメニューを使って検証しているはずだから(忙しくて自分で作ってる暇はないはずだ)、あれとあれと…なんて野暮な予想をすることもできるのですが、せっかくのコラボなだけに、原作の雰囲気は大事にしたい。

じゃあ原作の料理を再現しようとなるのですが、龍の肉を何で再現するかが問題です。
原作から考察すると、現実世界で海に住むクジラが空を飛ぶ龍の存在で、それを捕っていた漁師が龍捕りとして空を翔ける存在。龍から肉以外に油を捕ったり、香水に使われる成分が採られたりしているので、龍は鯨に近いと考察できますが、残念ながら 鯨肉は近場で手に入らないし、調理するにもちょっとハードルが高い。。。

悩んだ結果、第1話に登場する龍の尾身ステーキサンドを、牛のしっぽの付け根、お尻の部位であるイチボで代用することに。
原作の表現では、龍もその種類や形状によって鳥っぽいものや豚っぽいもの、いろいろな肉質があるような感じですし、うん、細かいことを気にしてはいけない!

というわけで、近所の肉屋で目的の肉を調達。
筋切りをして軽くたたき、下味をつけつつ肉の温度を常温に戻す。 牛脂をフライパンで溶かし表面を焼いたら一度休め、今度はじっくり火を入れていく…。
その間、グリルで硬めのカンパーニュをトースト。
仕上げにウイスキーでフランベ。原作はワインウォッカ、アニメだとグラッパだけど、ここはアレンジ。
厚めにカットして塩胡椒、レタス無用、パンにはさんで完成! 
はい、これは絶対美味しいやつ。

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一方で、肝心のウイスキーですが、結論から言えば今回作った再現料理とは良く合いました。
プレーン寄りでコクのある柔らかい味わい、主張しすぎないピートや樽感が、肉の旨味や下味に使ったスパイス、ニンニク、トーストの香ばしさと混ざり合う感じですね。
ハイボールなら、尚更組み合わせは選ばない。肉料理に合うというとヘビーピート仕様や、変化球でどっしり赤ワイン樽フィニッシュとかを予想しましたが、見事に外れ。それどころか、原酒の傾向、樽使い、これまでのアマハガンとは違う系統の仕上がりに驚かされました。

長濱蒸溜所のAMAHAGAN(アマハガン)は、国産原酒と輸入原酒のブレンドです。原酒の傾向は、今まではある程度決まっていて、メインにケミカルなフルーティーさが必ずあったところ。
今作は、乾いた麦芽風味にプレーン寄りなフレーバーが主体。馴染み深い“AMAHAGANらしさ”も若干香味の奥に感じられるのですが、明らかに主体は異なるウイスキー、異なる原酒の使い方をしている印象を受けます。
比率としては、今までと同様の原酒が1〜2、長濱原酒が2、異なる原酒が6〜7くらいではないでしょうか。おそらく15〜20年クラスの長期熟成を含むプレーンなブレンドが6〜7割と大多数を締めることで、ノーマルなアマハガンとは異なる仕上がりになっているように感じます。

また、もう一つ今までと違う樽感、原酒の仕上げ方も感じられました。
それはフィニッシュです。これまでもピートフレーバーは、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクでフィニッシュした原酒を使うことで、複雑さや奥行きを出す方法は取られてきたところ。一方で、ワインやシェリーについては、長濱原酒は温暖な環境で3年以上熟成させることから樽感が強くなりがちでしたが、今回のリリースでは樽感が控えめながらも複雑さがある。

確認したところ、輸入原酒をシェリー樽やワイン樽などに入れて短期間フィニッシュし、ボディが軽めの原酒に適度な厚みを持たせつつ、樽感をコントロールして使用しているのだそうです。
こうした手法で仕上げた原酒を使うのは、厳密には初めてではなく、今までのリリースでも多少なり使われてきたものとは思いますが、個人的には今回のコラボリリースで明確な違いを感じられました。

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(長濱蒸溜所の熟成庫、AZAI FACTORYで熟成されている樽の一部。管理シートを見るとAMAHAGANベースの表記があり、この輸入原酒の後熟仕様が今回のブレンドでも使用されていると予想。)

元々、AMAHAGANはシングルモルトをリリースする前段階で、ブレンド技術を高めることを目的の一つとした試験作でした。
それがあれよあれよと、とんでもない数がリリースされるに至ったわけですが。その要因の一つが
、今回のコラボリリースも該当する、プライベートボトル(PB)リリースです。

AMAHAGANの発表された2018年当時は、PBと言えばシングルカスクが基本。カスクサンプルを取り寄せて、その中から選んでリリースするのが一般的でした。
そんな中で、ブレンドで PBをやれないかと、ブレンドはカスク選定と違ってレシピでコンセプトを作れるので、様々なリリースができるはずだと長濱蒸溜所に相談して、結果2019年から何種類かリリースをさせてもらいましたが、ブレンドPBがここまで広まるとは思いませんでした。
それも長濱蒸溜所の懐の深さと、仕事の手広さ(主に社長)があってこその成長だと思います。

そうして多くのリリースを経験した長濱蒸溜所のブレンド力は、実績でいえばクラフト界隈随一。直近数年間の新規リース数だけでいえば、間違いなくウイスキー業界でトップクラスです。
今回のリリースでは、輸入原酒のフィニッシュという、長濱蒸溜所の新たな引き出しも見ることができました。

自分にコメントの依頼をいただいたモノだと、次は人気コメディ漫画の「小林さんちのメイドラゴン」とのコラボリリースが控えています。先日は、攻殻機動隊とのコラボも発表されていました。
いやどんだけリリースするねん、って感じもしますが、それぞれ単体としても面白いブレンドだと思いますし、原作に思い入れがあれば、なおさら楽しめるリリースだと思います。

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よし、龍(メイドラゴン)を獲って食べよう!

NAGAHAMA シェリーカスクブレンド for 乾杯会 56% Dream of Craft Distillery

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DREAM OF CRAFT DISTILLERY 
NAGAHAMA 
Sherry cask blend 
Blended Malt Japanese whisky & Scotch whisky 
For KANPAIKAI 
700ml 58% 

評価:★★★★★★(6)

香り:ドライプルーンやデーツなどのダークフルーツ、黒蜜やチョコレートを思わせる色濃い甘さ。合わせてハーブ、微かに焼き栗のような焦げたウッディさ、スパイシーな要素もあり、香りの複雑さに繋がっている。1:1程度に加水すると、華やかなフルーティーさが強く開く。

味:香り同様にリッチで色濃く甘酸っぱい味わいだが、そこにオレンジやパイナップルなどのシロップを思わせるケミカルで華やかなフレーバーが混ざる。余韻にかけては焼き芋のような樽香の香ばしさ、ほろ苦いウッディネスが全体を引き締めて長く続く。

長濱蒸溜所の原酒を含む、シェリー樽熟成のモルトウイスキーをレシピ全体で70%以上使用。
色合い同様にこってこてのシェリーカスクだが、一部使われているハイランドモルト由来のフルーティーさ、異なる樽感が全体の複雑さに繋がり、単調になりがちな若年圧殺シェリー系ウイスキーとは異なる仕上がりが特徴。
静謐な夜の琵琶湖と、湖面に浮かぶ満月のような陰のイメージを持つウイスキー。

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昨日レビューを投稿したワインカスクブレンドに引き続き、乾杯会向けリリースのブレンデッドモルトウイスキー2種のうちの1つ。こちらも当方がブレンダーを務めさせて頂きました。
見るからに濃厚そうな色合い、愛好家ホイホイとも言える外観。これは売れるでしょってなるボトルですが、実は想定外なことがあり、結果として良い方向に転がった、ある種“持っている”リリースでした。

リリースの主体となる乾杯会は、ウイスキー愛好家である鄭氏が立ち上げた、会員制組織にして酒販企業。ワインカスクブレンドの記事や、当該ボトルの販売ページでも紹介されているため、設立経緯等詳細な説明は割愛しますが、鄭氏自身は非常に熱心なウイスキー愛好家であり、自分の手で特別なリリースを愛好家に届けるという想いのもと活動しています。
その鄭氏から相談を受け、調整させて貰ったのが長濱蒸溜所の原酒をベースにブレンドしたブレンデッドモルト2種。昨日はワインカスクブレンドの構成エピソードに焦点を当てましたので、今回の記事では当然、このシェリーカスクブレンドにスポットライトを当てていきます。

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まず、基本的な仕様はワインカスクブレンドと同じで、「和の雰囲気があるラベル、フルーティーで濃厚なブレンデッドモルト(無加水)」です。
ラベルは和のイメージを出すべく、日本画家の外山諒氏に依頼し、日本画で作成。ワインカスクブレンドが朝(陽)に対して、シェリーカスクブレンドは夜(陰)としました。
構成原酒については、長濱蒸溜所を代表する、国際的な酒類コンペで高く評価されているシェリー樽原酒を使用出来るよう、長濱蒸溜所の伊藤社長と屋久ブレンダーにリクエスト。。。

そして、ブレンドが難しかったワインカスクブレンドに対して、シェリーカスクブレンドは完成系として目指す明確なイメージがあったこともあり、特に悩むことなくレシピは決まりました。
その完成系とは何か。ブレンドコンセプトは「静謐な夜の琵琶湖と、湖面に浮かぶ満月のような陰のイメージを持つウイスキー」となっていますが、具体的な“味”のイメージとして目指す理想は、例えばグレンファークラス1987ブラックジョージ等のフルーティーさのある濃厚シェリー系ウイスキーです。

シェリー樽熟成のシングルカスクリリースには、スパニッシュオーク樽の熟成であっても、ダークフルーツの色濃い甘さとウッディな味わいの中に、アメリカンオークを思わせる黄色系のフルーティーさが混じるものがあります。個人的にはそれが当たりであり、好きなシェリー系の一つ。
なぜそんな仕上がりとなるかはさておき、今回は該当する特徴を、シェリーオクタブ熟成長濱モルトの濃厚なシェリー感、シェリー樽熟成スコッチモルトや輸入ハイランドモルトのフルーティーさ、それぞれ複数のモルトをブレンドすることで再現しようとしたわけです。

結果は、レプリカ…くらいには出来たのではないでしょうか。
そもそも熟成年数から全く異なるため、あれだけの完成度は出せませんが、シェリー樽由来の濃厚な味わいの中に潜むフルーティーさ、さながら夜の湖面に浮かぶ月、雲間から差し込む月光のようなイメージに共感してもらえたら嬉しいです。

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なお、冒頭述べたように、ちょっとした想定外な出来事や嬉しい誤算もありました。まず一つは色合い、そしてシェリー樽由来のフレーバーの濃さです。
実は今回ピックアップいただいた原酒のサンプルは、レシピを検討した6月時点ではワインだけでなくシェリー樽原酒もややドライ寄りで、色もそこまで濃くありませんでした。
それこそ、今年1月に仕込んだ発刻と祥瑞の時に使用したものからすると、半分とはいかないまでも2/3くらいの濃さ。
濃ければ良いってわけじゃ無いんですが、今回は濃厚なシェリー感をプレーン寄りのハイランドモルトで引き算して整えるつもりだったので、出来れば濃い方が良かったのです。

また、もう一つ計算外が、ピックアップ頂いたスコッチウイスキーの中に、5年熟成表記だが12年以上に感じられる熟成感と豊かな味わいのシェリー系ウイスキーがあり、経緯を聞くと12年熟成のシェリー系モルトに誤って5年が少量混じってしまったバルクなのだと。
長濱蒸溜所のシェリー樽熟成原酒との相性もバッチリで、これは間違いないとレシピを組んで完成…

と一息ついた矢先、混ざった5年はブレンデッドウイスキー(モルト&グレーン)で、今回のコンセプトであるブレンデッドモルトウイスキーには使えないことが判明。急遽別な原酒を追加でピックアップして貰いましたが、届いた原酒はシェリー感の淡いタイプ。
シェリー感とフルーティーさのバランスを考えて、シェリー系のウイスキーを70%までブレンドしましたが、レシピ作成当時の味わいは今よりずっとバランス寄りで、色合いも夜や陰陽のイメージとしてはちょっと薄い。リクエストに100%応えられたか、自信を持てない感じだったのです。

ただしこの後、“持っている”出来事、嬉しい誤算が起こります。
実はレシピを検討した時点で、構成原酒はまだ樽に入った状態。その後ブレンドされるまで約5ヶ月間、月にして6月から11月、最も樽感に影響が出る夏場を挟んだことで、原酒が色濃くリッチに熟成。
その変化は「ブレンド完了しましたよ!」と、届いた画像を見て、思わず「樽違うの使いました?」と聞いてしまった程です。

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一方で、色は良いが味はどうか、変に苦くなってないか、テイスティングするまで不安が残りましたが、結果として全てが良い方向に落ち着いてくれて、いやー鄭さん持ってるなぁと一安心。
ひょっとして長濱の屋久ブレンダーは、ブレンド時期までの変化を考えて、今回の原酒をピックアップされたのだろうか?
それは皆様の想像にお任せしますが、結果が伴うのがプロの仕事ということで。改めて素晴らしい原酒を選んで、提供してくださったことに感謝ですね。

なお、完成したワインカスクブレンドとシェリーカスクブレンドですが、発売時期が同じだったこともあり、ラベルの原画を描き起こしていただいた外山氏の日本画個展(2022年12月15日〜21日)に展示していただきました。
ウイスキーと日本画のコラボ。実は外山さんとは以前別なブランドでリリースを計画していたことがあったのですが、それは色々あってうまく形にならず、今回それを実現出来たのは非常に感慨深くもありました。
改めまして、この機会をいただいた乾杯会の鄭氏に、この場を借りて感謝致します。
そしてこのボトルを手にして頂いた皆様。美味しさとウイスキー愛に国境はないことを感じさせる、同氏の情熱が結実した味わいを楽しんでもらえたら幸いです。

NAGAHAMA ワインカスクブレンド for 乾杯会 58% Dream of Craft Distillery 

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DREAM OF CRAFT DISTILLERY 
NAGAHAMA 
Wine cask blend 
Blended Malt Japanese whisky & Scotch whisky 
For KANPAIKAI 
700ml 58%

評価:★★★★★★(6)

香り:白ワインやシャンパンを思わせる爽やかな酸と、ブリオッシュ香にも似たアロマ。乾いた麦芽、ドライアップルやグレープフルーツ。奥からケミカルなニュアンスを伴う華やかでフルーティーな香り立ち。時間経過で麦芽由来の甘さが一層感じられる。

味:柑橘を思わせる酸と麦芽の柔らかい甘み。濃縮感のあるフレーバーで、ほのかに乾草や土っぽさのあるピートフレーバーがアクセント。度数を感じさせない口当たりから、飲みこんだ後でトロピカルなフルーティーさが盛り上がるように広がり、麦芽風味と共に口内に染み込んで長く続く。

長濱蒸溜所の赤ワイン樽熟成原酒と白ワイン樽原酒をレシピ全体で過半数以上使用しており、ワイン樽由来の個性と長濱の麦芽風味、らしさを感じることが出来る仕上がり。ブレンドした複数種類のハイランドモルト由来の、系統の異なる麦芽風味と干し草のニュアンスが牧歌的な雰囲気を感じさせ、余韻にかけては近年流行りのフルーティーさが広がる。ブレンドコンセプトは朝靄を纏う伊吹山に、柔らかく差し込む朝日のような、陽のイメージを持つウイスキー。それぞれのフレーバーが、コンセプトの各要素に紐づくようにブレンドされている(自画自賛)。

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先日、ウイスキーが縁で相談をいただき、プライベートボトル2種のブレンダーを務めさせていただきました。
蒸溜所は滋賀県は長濱蒸溜所。ジャンルは国産原酒とスコッチモルトウイスキーを用いたブレンデッドモルトウイスキー。勝手知ったる…というのは失礼かもしれませんが、グレンマッスルやお酒の美術館の発刻、祥瑞など、これまで度々同様のリリースに関わらせて貰っている蒸留所です。

既にウイスキーは発売され、販売分は完売しております。有難い限りです。
勿論、これまで同様に当方が本売り上げやブレンダー料等を受け取ることはありませんが、自分が関わらせて貰ったウイスキーが完売するというのは、どこか安心してしまうものです。
今後はBAR等飲食店で、あるいは手元にあるボトルを飲んでいただく段階にあるわけですが、ブレンダーとして本レシピに込めたイメージや、今回のレシピ作成の際の苦労話など、商品情報を深掘りする形で当ブログに掲載させていただきます。

クノアュサ・3

まず本リリースの主体である乾杯会について。
本ボトルの国内向け販売を頂いた、長濱浪漫ビールや信濃屋で紹介されている通り、乾杯会は愛好家、鄭冲氏が立ち上げた、会員制組織かつ酒販企業となります。

発起人である鄭氏は10年以上日本に住まれている中国出身の非常に熱心なウイスキー愛好家で、日本において北から南までBAR巡り、イベント参加、蒸留所訪問をし、新旧問わず様々なウイスキーを飲んで勉強されています。
一方で、世界的にウイスキー需要が高まる中で、愛好家間では通常リリースと異なる特別なウイスキーを飲みたいという要望が増えつつあります。自分たちの手でそうしたウイスキーを届けたいと考え、会員制組織を立ち上げての今回のリリースを企画や、各クラフトウイスキー蒸溜所での樽購入、さらに六本木でウイスキーBARの共同オーナーとなってウイスキーを提供する場所も整えるなど、一般的なウイスキー愛好家としての枠組みを超えた活動も行っています。

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※鄭氏が共同オーナーとなっている、六本木のBAR莨樽(ろうたる)。2022年8月オープン。新旧問わず様々なボトルが揃っている。

そんな中で鄭氏から相談を受けて調整させていただいたのが、今回のリリースとなります。
頂いた条件は以下の3点。
・ラベルは日本を象徴するような和的なイメージ。
・蒸溜所を代表する原酒を使いたい。一つはシェリー系を希望。
・グレーンは使わずブレンデッドモルトで無加水、フルーティーな味わいで2種類。

ラベルについては筆字で漢字2文字ドーンみたいな、某S社さんを想起させるデザインは使いたくなかったため、日本文化の一つ、日本画をラベルに取り入れることを提案。
以前から交流させて頂いている、若手日本画家の外山諒さんを紹介し、ラベルを担当頂くこととなりました。

続いて原酒については、長濱蒸溜所を代表する原酒といったら、WWAや IWSCなどの国際酒類コンペで高い評価を受けているワイン樽熟成原酒とシェリー樽熟成原酒しかないだろうと、伊藤社長、及び同蒸溜所ブレンダーの屋久さんにイメージを伝え、原酒をピックアップしていただきました。
ラベルOK、原酒OK、スケジュールも決まってここまではトントン拍子で進み(長濱蒸溜所は本当に仕事が早いw)、さあ後は私の仕事だと、いざブレンドとなってサンプルを手に取って…ここから先が困難でした。

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ご存じの方も多いと思いますが、昨今、世界的なウイスキー需要増から輸入原酒の価格は上昇傾向にあるだけでなく、手に入る原酒も長期熟成のモノが手に入らなくなってきています。
グレーンなら比較的なんとかなりますが、それでも以前の2倍、モノによっては3倍近い価格まで高騰しています。

その結果、以前PBをブレンドした時は使えた長期熟成の輸入ハイランドモルトがサンプルに入っておらず、今までは無かった蒸留所構成から全く異なるハイランドモルトがピックアップされているなど、長濱でのブレンドならこの方向で安パイ…という想定は早くも崩壊。新しい挑戦となってしまいました。
また、今回特集しているワインカスクブレンドでは、長濱蒸溜所の赤ワイン樽熟成原酒が思ったよりも色が出ていないドライなタイプであったことも想定外でした。

色合いに関しては、じゃあシェリー系が黒、ワイン系が白、黒と白の太極図、夜と朝の陰陽でまとめようと、すぐにアイディアが浮かんだのですが、問題は味です。
なにせ、今回の条件は「グレーンは使わずブレンデッドモルトで無加水、フルーティーな味わい」。
自分はよくブレンドを”蕎麦”に例えて説明していますが、繋ぎとなる要素があったほうがまとまりやすくバランスよく仕上がることは明白です。その繋ぎとなる要素には、グレーン以外に、シェリー感やワイン感等の色濃い甘さ、ウッディなエキス、加水も該当し、若い原酒が多いブレンドであればあるほどその重要性は増します。
また、ピーテッド原酒を使ってごまかすことが出来ないことも、ハードルを高くしました。大げさに言うわけではありませんが、針の穴を通すようなコントロール、繊細なバランスでこれらの原酒をまとめ切らなければなりませんでした。

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そこで、今回は麦芽風味を軸にバランスをとることとしました。
長濱のワイン樽原酒が持つ柔らかい甘さの麦芽風味。
ミドルエイジのハイランドモルトの1つが持つ、牧歌的な雰囲気を持つ麦芽風味。
もう一つ、比較的若いハイランドモルトが持つ、フルーティーで乾いた香味を感じさせる麦芽風味。
これらの麦芽風味を大黒柱として、ワイン樽原酒は白ワイン樽を加えてもらい、色、甘さではなくフルーティーさを後押しする方向で。またピート要素、シェリー樽要素も微かに加え、全体の複雑さを増す。

試作品の最初のイメージでは、田舎街の朝、周囲に漂う草木や田んぼの香り、朝靄の漂う適度な湿度と清々しさ、そこに差し込む朝日のキラキラとした光。これらが長濱蒸溜所周辺の景色と共に、ウイスキーから感じられる各要素と紐づいて感じられました。
このイメージを、シェリーカスクブレンドのものと合わせて外山さんに伝えて原画を描いて頂いたのが、箱とラベルに印刷された作品となります。ここは流石プロですね。どちらもイメージやウイスキーの雰囲気にピッタリ合っており、プロの仕事の凄さを感じられるコラボとなったのです。

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※長濱蒸溜所 伊藤社長を挟んで、左:乾杯会 鄭氏。右:莨樽共同オーナー 郭氏。

依頼主にして発起人である鄭氏もワインカスクブレンドのほうが好みであると話されており、頂いたリクエストと期待を裏切らずに済んだと、国内販売完売と合わせて胸をなでおろしました。
以上のように、期せずして新しい挑戦もあった今回のブレンダー協力ですが、計画通りのところもあり、偶然もありで、しかしながらどちらのリリースもコンセプトが明確でラベルとの関連性もあり、手前味噌ですが、良いリリースになったのではないかと感じています。

さて、ここから先は、飲んだ人達の感想を聞きながら、自分の作品を愛でることが出来る、ブレンダーとしての特権、楽しみとなる時間です。ここまでひっくるめて一つの趣味、なんて贅沢で恵まれた時間でしょうか。
改めまして、お声がけ頂いた鄭さん、今回のリリースに協力頂いた関係者各位、そしてこのウイスキーを手に取って下さった方々に感謝申し上げて、記事の結びとします。
ありがとうございました。

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