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SYNDICATE 58/6
The Scotch Whisky
12 years old 
Classic Blend 65:35
1990's
750ml 40%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

香り:みたらしやカラメルソースを思わせる古酒っぽい甘さ、少しの油絵の具、ウッディなアクセントの混じるシェリー香。時間経過でエステリーな熟成香や、灰っぽさの混じる素朴な麦芽香も奥に感じられる。

味:香り同様にみたらしや醤油飴、キャラメリゼ、チョコレートクッキー。徐々にドライでウッディなタンニンも感じられるが、熟成期間やその他の要素から想定されるほどは強く主張しない。
余韻はカラメル系のオールドシェリー感、甘みと軽い刺激、ほのかに内陸系のピートを伴うべったりと口内に張り付くようなフィニッシュ。

まろやかでとろんとした甘みとほろ苦さ、濃いめの味わいに仕上げられたブレンデッド。樽由来の要素は濃いめだが、モルト比率が高く、奥には使われた原酒由来の多彩さ、複雑さも備えている。ストレート、またはロックで。

「1958年、とある6人のグループの1人が30年以上熟成された複数のウイスキー樽を、港町リースの倉庫で偶然発見。」
「その原酒は、モルトとグレーン合わせて20種類。6人は原酒を全て買い取り、自分達のためだけの、こだわりのプライベートウイスキーを作ったという。」
これがシンジケート58/6誕生のエピソードとして、日本で広く知られている内容のざっくりとした要約版です。

この他、作り手はインバーゴードン社の元会長とか、ボトルはブルゴーニュワインタイプのものが使われているとか、まあ色々ありますが。これらの情報の出元は、同銘柄が1991年から日本でも販売されるにあたり、輸入を手がけた商社が配布したPR資料のようです。(当時のブレンデッドウイスキー大全にも、同様の記載があります。)

今回テイスティングしたボトルは、まさにその日本流通が開始された当時のもの。構成原酒の内訳は、
(1)トーモア
(2)ダルモア
(3)バルブレア
(4)トマーティン
(5)ロングモーン
(6)グレングラッサ
(7)インチガワー
(8)グレンキース
(9)グレングラント
(10)キャパドニック
(11)ダフタウン
(12)グレンファークラス
(13)タムナヴーリン
(14)トミントール
(15)ブラドノック
(16)キンクレイス
(17)インヴァーリーヴン
(18)ブルイックラディ
(19)インヴァーゴードン
(20)ノースブリティッシュ

以上20種類。スペイサイド、ハイランドの内陸系モルトを主体とする構成で、ブレンド比率はモルト65%、グレーン35%のクラシックなタイプであることも売りの一つ。確かにピートの主張は穏やかで、香味はしっかりモルティーです。
そしてこれらの原酒を用いたレシピは、熟成年数こそ違えどオリジナルと同じものなのだとか。。。ってちょっと待て。

上記のレシピ、1990年代流通の12年熟成ブレンデッドならわかりますが、1958年で30年熟成となると、どう考えても入るはずがないものがチラホラ。
例えば、1959~1960年創業のトーモアが使われてるとか、タイムマシンを使わないかぎりありえないですし、グレンキースやタムナヴリン、キンクレイスなども同様。計算が合わない蒸留所がいくつもあります。
加えて、そもそも「ブレンデッド作ってください」と言わんばかりの原酒が偶然にも放置されているなんて、都合の言い話がありますか。
どーにも作為的というか、いじられた情報の匂いがします。 

そこでシンジケート58/6ブランドのオフィシャルサイトを見てみると、
・1958年、10樽のオークカスクで熟成されているブレンデッドウイスキーが、リースの倉庫で発見された。
・そのブレンドに使われている原酒は1954年に蒸留されたもので、レシピは1800年代のもの(おそらくモルトベースのクラシックなレシピであることを指している)。
・1966年、トータル12年熟成されたブレンデッドを6人のグループが買い取り、自分たちが楽しむために少量ボトリングされた。
。。。などなど、日本に伝わっている情報と異なる歴史がトップページに書かれていました。

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(ロイヤルマイルに展示されている、1966年にボトリングされたシンジケート58/6のオリジナルボトル。オリジナルは注ぎ口部分のデザインや肩ラベルが微妙に異なっており、12年熟成だったことも読み取れる。

この件について、誰が間違っていたのかという話は今更なので避けます。
当時の現地業者がいい加減な情報を日本に伝えたのかもしれないし、日本側で盛られた話かもしれないし、ただの翻訳ミスということもあり得ます。
あるいは現在の公式サイトが、都合よく多少の改変をしているかもしれません。
他方、オリジナルについてどっちの情報が正しいかというと、整合が取れてるのは公式サイトなのかなと感じます。

その他、現在のシンジケートは18のモルト原酒と4のグレーン原酒から構成されていることと、継ぎ足し継ぎ足しで作られるソレラシステムが採用されていること。最終的なマリッジは4年熟成のシェリー樽で、最長2年間行われることも書かれていました。 
確かに今回のボトル、とろんと濃い甘みがモルティーさの上に覆いかぶさるような構成で、言わばシェリーフィニッシュのようにも感じる飲み口。これがマリッジの効果とすれば納得です。
また、極少量でも1958年にブレンドされた原酒が現行品にも含まれているわけで、構成原酒が30年以上前から同じという情報はこの辺りからきているのかなと推察します。

というわけで、歴史を紐解いた結果ずいぶん長い内容になってしまいましたが、どうでもいいやんという話もありつつも、個人的にはだいぶスッキリ。

ちなみに現在流通しているシンジケート(Over 17 years)と12年の比較としては、シェリー感はリフィル系で、熟成したモルティーな味わいが主体。華やかでナッティー、ほのかにピートが香る。これはこれで結構旨く、現行品のブレンデッドの中ではアリだなと感じる構成だったりします。
これもそのうちレビューしたいですね。