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BARにとって、バックバーは店の象徴です。店主の趣向、考え方、あるいは心構えなど、その店の個性を雄弁に語りかけてきます。

お店によっては、バックバーを極力簡素にし、棚の中に全て仕舞ってしまうというところもあります。
これはこれで店主とのコミュニケーションから、ブラインド的に何が出てくるのかワクワクする時間を味わえるのですが。個人的には、お店に入った瞬間これでもかといわんばかりの圧倒的な物量で、見る人の心を虜にする完全開放型のバックバーが好み。
今回紹介するBAR キッチンは、そうしたバックバーに総本数1500本以上という全国でも有数の物量を誇るオーセンティックBAR。福岡県の歓楽街、中洲に程近い天神に店を構える、"南の聖地"の一つです。

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【BAR Kitchen】
住所:〒810-0073 福岡県福岡市中央区舞鶴1-8-26 グランパーク天神107
最寄り:天神駅から徒歩7分程度
TEL:092-791-5189
営業時間:16:00~3:00くらい
定休日:ほとんど無休
WEB(blog)
https://ameblo.jp/bar-kitchen/
※臨時定休日、イベントなどの情報はWEBをご覧ください。

百聞は一見にしかず、ご覧いただきましょう・・・と思ったら、バックバーがフレームに収まりきらない(汗)。 2枚目の写真は反対側の壁際ギリギリまで下がって撮影した1枚ですが、全14区画の区切りのうち、その半分しか入らないのです。
店内はテーブル席もある清潔感と開放感ある空間。カウンターは一般的なBARに比べて少しバックバーから距離があり、このボトル達を眺めるような感覚。ラインナップとしては、スコッチモルト、ジャパニーズ、バーボンなどのウイスキーを中心に、その他スピリッツ類新旧各種取り揃えたバックバー。セラーにはワイン、シェリーまで。そのスケールは一見の価値ありと言えます。

この巨大戦力を文字通り"バック"に、店を1人で切り盛りするのがマスターの岡さん。お酒全般に関する豊富な知識に加え、笑顔と九州人らしいホスピタリティに溢れるナイスガイです。
ウイスキーに関しては、ウイスキー文化研究所福岡支部も兼任されており、自身でセミナーを開催する以外に日本国内の各種ウイスキーイベントにも積極的に出没。ブース出展している事も多いため、お店に行った事は無くても会ったことがあるという愛好家は少なくないのではないでしょうか。

かく言う私も、facebookやイベントなどで繋がりはあるも、お店に伺えていないその1人でした(汗)。

「ご無沙汰しております、やっと来店出来ました。」
「いえいえ、お待ちしておりました。」
挨拶もそこそこに取り出されてくるボトル達。相手は上述の通り「戦いは数だよ!」を体現したような一団の指揮官です。(しかも現在進行形で増殖中です。)
この手のお店では流れに身を任せ、あの辺は?こういうのは?とざっくりとしたお願いをしつつ、そのチョイスを楽しんでいきます。

オープニングはまず緩くいきましょうか、と、懐かしいボトルになりつつあるマーレイマクデビットのクライゲラヒ1970、シグナトリー旧ボトルはハイランドパーク、カリラ、共に1976年蒸留。
近年の短〜中熟にはない、長期熟成ならではの華やかさ、舌触りが沁みますね。

折角ですからご当地ボトルなんてどうでしょう、と取り出される各種プライベートリリース達。
気になるところを幾つかチョイスしつつ、ウイスキー話、福岡トークに花を咲かせます。
中でも、モルトオデッセイ福岡のボウモア2001は、近年の紙っぽいニュアンスにグレープフルーツなどのフルーティーさがパッと広がる、この時期らしいキャラクターのある安心して飲める1本です。

続いて話題はバーボンへ。
ウチでは需要あまりないんで、バーボンロックの注文入ったら、この辺でガンガン作っちゃうんですよね〜と、90年代のスタンダードバーボンをいくつか取り出しつつ。中にはオールドヘブンヒル21年やヘンリーマッケンナ、旧ボトルエズラなどレアものも。
特にヘンリーマッケンナの60年代流通と思しき1本は、BAR飲みして惚れて買い求めた逸品なのだとか。

これまであまり意識して飲んでませんでしたが、この頃流通のバーボンって、ハイプルーフはもちろん、加水も緩くメローで美味しいんですよね。
高度数が続いた後の箸休めにぴったりです。
だいぶエンジンも温まりました。そろそろ本命にいきましょう。
BAR キッチンさんに来て、イチローズモルトを飲まないわけにはいきません。同店が聖地と呼ばれる由来の一つはここにあります。(写真のキングオブハーツのコメントは、別記事にて掲載済みですので割愛。)

先日の記事でも少し触れていますが、BARキッチンは"カードシリーズ全種一斉テイスティング会"という狂気の試みを行なった、世界でも唯一のBARです。
一部ボトルは既に空になっているものの、バックバー最上段に並ぶその姿はまさに壮観。その他のイチローズモルトシリーズの品揃えも豊富で、自身で樽買いしたオリジナルボトルもあります。この環境、飲まないわけにはいきませんね。

そうした情報からか、海外から訪れる愛好者も多いと聞きます。
この日も台湾から仕事で来られたという愛好者2名が、滞在期間の3日間連続でジャパニーズウイスキーを中心に舌鼓を打っていました。

さて、長くなりましたが、イチローズモルト繋がりで時事的な話を一つ。
毎年この時期、ウイスキートーク福岡が博多で開催されます。今年は6月17日に前日イベントとして津貫蒸留所の見学会、18日に本イベントが予定されています。

ウイスキートークでは限定ボトルの一つに「月と失われゆく動物」として、イベント実行委員会が選定したイチローズモルト(羽生または秩父)がボトリングされており、今年は通算7作目がリリース予定。
BARキッチンにはファーストリリースの"日本オオカミ"のみ在庫がありませんが、その他は写真の通りです。
ラベルを並べてみると、絶滅が危惧される動物のシルエットと合わせ、月が徐々に欠けていくのが特徴。今年のリリースはついに新月、そこに描かれる動物が何かは、イベントページでご確認ください(それともキッチンで当日開いてるかな・・・?)。

同イベント期間中も、BARキッチンは15時から営業中。しかもお手伝いさんを増強し、全国から参加される愛好者を受け入れる準備は万全の模様。
博多に宿泊される方は、イベント限定ボトルも合わせて楽しまれてはいかがでしょう。

今回の記事、読み直してみるとBARとしての規模に話が偏ってしまった感があります。
大は小を兼ねる。ボトルの数は多いに越したことはありませんが、やはり一番はマスターのキャラクター、人間性だと思います。
自分のように、博多に行ったら絶対行こう!という心になるのは、岡さんのウイスキー愛とそのキャラクターに惹かれたからに他なりません。
今回の訪問、非常に良い夜を過ごさせていただきました。
ありがとうございました!