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ポートエレン 30年 1979-2010 Old & Rare 52.6%

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PORT ELLEN
OLD & RARE
Aged 30 years
Distilled 1979 Dec
Bottled 2010 Jun
Caske type Refill Hogshead
700ml 52.6%

グラス:テイスティンググラス
場所:KuMC @BAR サンドリエ O氏
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:スモーキーでシャープな香り立ち。塩気と乾燥した貝類、ピートの土っぽさ、蜂蜜レモンやグレープフルーツのワタ、ジンジャー、干し草のような樽由来の要素がアクセントとして一体になっている。

味:とろりとしたマイルドな口当たり、だが合わせてスパイシーな刺激もある。麦芽風味とバニラクリーム、ソルティクラッカー。ボディはミディアム程度でピーティーなフレーバーがじわじわと。余韻はドライでほろ苦く、柑橘のニュアンスと乾いたウッディネス。焦げたピーティーさを伴い長く続く。

香りのシャープさに対し、味はスパイシーな刺激こそあれど、マイルドな角の取れた口当たりが熟成を感じさせる。また、樽感は程よく、酒質との一体感がある。少量加水すると口当たりの柔らかさが引き立つ。


長熟カリラをスペイサイド寄りにしたような個性が、いかにも長期熟成のポートエレンらしさとして感じられる1本。リフィルのアメリカンオークと思しき樽構成は、レアモルトやオフィシャルのリミテッドリリースの樽をそのまま育てたシングルカスクというキャラクターでもあります。

ポートエレンの70年代後半の香味はシャープでスパイシー、80年代に比べてピーティーさは穏やかで、バランスのとれたものが多いように感じます。
今回のボトルにある柔らかさや、アクセントになっている樽感は熟成年数や樽の違いによるもので、なかでもレモンやグレープフルーツの黄色系の柑橘のニュアンスが樽由来の要素として多様さと、香味のバランスに繋がっています。
いやーいい樽、選ばれてますね。これは美味しいポートエレンだと思います。


そういえば話は変わりますが、ポートエレン再稼働のニュースは既に皆様ご存知とは思います。
しかしその熟成庫にはラガヴーリンの熟成に使われているそうで、蒸留を再開してもどこで熟成させるつもりなのか疑問に感じていたところ。(ディアジオなので本土の集中熟成庫がありますが。)
これは伝聞ベースの話ですが、そもそもポートエレンの内部は原酒の熟成スペースのみならず、倉庫や何らかの業務スペースで間貸しをしており、まずは今敷地を利用している事業者と調整を始める必要がある模様。そしてうまくまとまったら、蒸留所を改修して再稼働ということなのだそうです。

少なくとも2018年再稼働はないでしょうし、新生ポートエレンのニューポットが産まれるのは、まだまだ先になりそうですね。

ポートエレン 37年 1979-2017 リミテッドエディション17th 51.0%

カテゴリ:
PORT ELLEN
Limited Edition 17th
Aged 37 years
Distilled 1979
Bottled 2017
Cask type Refill American Oak Hogsheads & butts
700ml 51.0%

グラス:木村硝子テイスティング
場所:Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかい香り立ち。レモンピールのジャム、ほのかにグレープフルーツ、黄色系の柑橘感に魚粉のようなダシ感がアイラ要素を主張。オーク由来の品のいいドライさと干草、合わせて存在感のあるスモーキーフレーバーを伴う。

味:柔らかい口当たり、燻した麦芽とピートフレーバー。一瞬ソルティーなコクを感じるが、すぐに蜂蜜、熟した洋梨、香り同様の黄色い柑橘感。微かに湿ったような酸味。ボディはしっかりとしてバランスを取っている。
余韻はスパイシーでドライ、乾いた植物感、スモーキーで長く続く。 

オークフレーバー由来の要素と、この時期のポートエレンのピーティーでクリアな酒質の融合。ディアジオのリミテッドらしい丁寧な作りが、長期熟成ならではのバランスの良さと高い完成度に繋がっている。 


今回のスペシャルリリース最高価格にして、 モルトラインナップの中では最長熟成となるリリース。そのお値段たるや、初期リリースの10倍以上。っていうか当時は3万でも「高いけど希少だから仕方ないよね」と言われていたのに、17thまでリリースが続いて価格はあれですから、もうワケがわかりません。(補足:1stリリース約2〜3万円、17thリリース48万円・・・)

そのポートエレンもブローラ同様に再稼働に向けた調整を開始したことが宣言され、2018年のスペシャルリリースラインナップからも除外。閉鎖前の原酒としては、今作が最後のボトリングとも噂されています。

(約40年ぶりに稼働することとなったポートエレン。クリアでピーティーな味わいに期待したい。なお熟成庫にはラガヴーリンが詰まっているらしいが、熟成場所はどこに。。。Photo by T.Ishihara)

70年代のポートエレンの酒質はカリラと重複するところがあり、クリアで繊細、カスクストレングスではキレの良さ、なめし皮のようなニュアンスと、加水すると柔らかさが感じられる、少なくともラガヴーリンとは対極にある個性を持っていました。
しかし今回のボトルでもある70年代末期、特に80年代に入ってから1983年の閉鎖にかけてはピートと酒質が強く、キレと荒々しさを感じるボトルが見られます。
これが今回のボトルのように40年近い長期熟成に耐える要因の一つと考えられるわけですが、その他1980年代に閉鎖された蒸留所が、閉鎖間際は個性に乏しいプレーンな原酒を作っている傾向がある中、その流れに逆行する面白い事例だと思います。

元々、ポートエレン閉鎖の経緯は、ウイスキー不況における生産調整とグループ全体の効率化のためだったと言われています。
生産量のバランスの関係で、アイラ島の傘下蒸留所を一つ休止しなければならず、精麦工場を持つポートエレンは精麦に専念させて、ラガヴーリンとカリラを残したという話。この精麦工場における大規模なドラム式麦芽乾燥用設備が稼働し始めたのは1974年ごろ。以後、同工場はカリラやラガヴーリンにも麦芽を提供しているワケですが、上述の酒質の変化は、閉鎖前の時期は仕様を分けず、全体の仕込みの量を見ながら他と同じ麦芽を用いていたためではないかと推測しています。

仮にそうだとして、今はウイスキーブーム真っ只中。ブレンド以外にシングルモルト需要も非常に高い。調整が不要となった再稼働後のポートエレンは、果たしてどんな原酒を作っていくのか。
再稼働に向けては関係者間の調整に加え、各種工事もあって数年。少なくとも今すぐ再稼働とはいかないという話も伝え聞くところですが、ブローラ同様にその報せが届くことを楽しみに待ちたいと思います。

ポートエレン 32年 1982 モルツオブスコットランド ダイヤモンド 57.9%

カテゴリ:
PORTELLEN
MALTS OF SCOTLAND
Aged 32 Years
Distilled 1982
Bottled 2014
Cask type Bourbon Hogshead
700ml 57.3%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:個人宅(マッスルKさん)
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:スパイシーでピーティー、バタークッキーを思わせる甘み、奥には麦芽香。徐々にグレープフルーツ、林檎を思わせるエステリーなフルーティーさもあり、時間経過で強く感じられた。

味:オイリーでピーティーな口当たり。序盤は乾いた麦芽風味やナッツ、昆布出汁、磯っぽさ、出汁をとったスープのようなクリアなニュアンスから、後半は蜂蜜やエステリーさが香り同様に盛り上がるように広がる。
余韻はスパイシーでキレが良く、乾いたウッディネスやスモーキーフレーバーを伴う。

やや荒削り感はあるが、バーボンホグス樽由来のフルーティーさに、クリアで出汁っぽさと1980年代のポートエレンらしい強いピートフレーバー。シングルカスクだからこそのはっきりとした樽感と強い個性を楽しめる、ボトラーズに求めているような1本。


ドイツのボトラーズ。モルトオブスコットランド(MOS)のハイグレードモデルである、ダイヤモンドシリーズ。最近はアメージンングカスクやエンジェルシリーズなど、新しいハイエンドクラスが展開されていますが、調べてみると海外では2016年にポートエレン等がリリースされていた模様。
MOS全体としてはこれまでも様々なリリースがあったところですが、自分の中では多くは安定しているが、たまに「ドイツらしい」妙なリリースがあるというイメージです。

その筆頭がダイヤモンドシリーズでリリースされた、グレンゴイン1972でした。ウイスキーエクスチェンジなどドイツ系のボトラーズは「不自然にフルーティー」だったり、リキュール系のフレーバーがあるようなウイスキーをリリースすることがあり、グレンゴイン1972も海外評価は高かったものの、ブラインドで飲んだ時はコニャックなんだかよくわからないようなシロモノで、びっくりしたのを覚えています。

そのため、このポートエレンをウイスキー仲間のマッスルKさんから勧められた時は、思わず警戒してしまったところ。しかし飲んでみるとこれが中々。テイスティングの通り、1980年代のポートエレンらしい強いピートフレーバーがあり、樽でやや強引にバランスをとったような印象はありつつも、開封後の変化で良い具合にまとまり、麦芽風味も開いています。
この辺りのビンテージのポートエレンは近年もたまにリリースがありますが、過去のボトルから総じてアタックが強い印象があり、長期熟成や瓶熟(但し加水を除く)に向いているのかもしれません。

(1983年の閉鎖以降、精麦工場として稼働しているポートエレン。敷地内のウェアハウスはラガヴーリンなどの熟成に使われている。蒸留所として稼働はしていないが、立ち上る煙に哀愁が
漂う。。。Photo by T.Ishihara)

ポートエレン蒸留所はウイスキー業界の不況の中で、需要と供給のバランスを取るために閉鎖された背景があります。
現ディアジオ社(当時のDCL)はカリラかポートエレンかで天秤にかけたそうですが、ジョニーウォーカーなどの主軸だったカリラを生かすのは、確かに納得の処置でもあります。

ではその味わいはというと、決して悪くない、むしろ良いボトルが多いです。個人的に今すぐ飲んでバランスが取れているのは1970年代後半あたりで、キレの良い口当たりにピート、そして塩気、ボトルによってはスペイサイドのような柔らかい麦感もあり、単に閉鎖蒸留所としてだけでなく、人気があるのも頷けます。
他方、このMOSのリリースは当時国内流通価格で10万円を越えており、モノを見たときは「とんでも無いことになってるな〜」と感じたわけですが、今にして見ればポートエレンで10万円越えはザラ。
ますます高嶺の花となってしまい、飲めるうちに飲んでおかなければならない酒になってしまいました。

貴重なボトルをありがとうございました!

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