ブローラ 37年 1977-2015 リミテッドエディション 14th 50.4%
LIMITED EDITION
Aged 37 years
Distilled 1977
Bottled 2015
One of only 2976 bottling
700ml 50.4%
グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1年程度
評価:★★★★★★★(7)
味:ややオイリーで粘性のある口当たりだが合わせてウッディでドライ。甘酸っぱいグレープフルーツに、麦感は粥のような甘味、白粉っぽさ。そして香り同様の癖を感じるピートフレーバーが渾然となって感じられる。
余韻はドライでビター、リフィル系の樽と焦げ感のあるピート由来の苦味が、若干の魚粉っぽさを伴いつつ、収斂するようにまとまり、最後はジンジンと舌を刺激するウッディネスが長く続く。
ディアジオのリミテッドらしい綺麗な造りだが、少々樽由来のドライさ、ウッディネスが香味とも主張が強い。口開けはもっと強かっただろう。他方で度数もあるため、奥から柑橘系の果実味や、しっかりと特徴的なフレーバーが広がる。このあたりは1970年代のブローラと言える香味である。
少量加水すると、ピートが穏やかになりバニラやおしろいっぽさ、酒質の軸にある香味が主体になるが、個人的にはピートが主張するストレートを推奨したい。
近年の販売価格を見ると、貴金属でも溶け込んでいるんじゃないか、と思ってしまうブローラのリリース。ですが、それは同蒸留所のレアリティが認められてのこと。
これまでの更新で、ブローラ誕生の経緯や香味の変移については度々触れてきていますので、今日の更新では視点を変えて経緯を考察し、そして再稼働に向けた近況にも触れつつまとめていきます。
元々、ブローラは旧クライヌリッシュ時代を含めると、1819年創業という非常に長い歴史がありますが、ピーティーで野性味ある味わいの原酒をブローラとするなら、それは1969年から、主に1970年代のわずか10年という、短い期間しか作られていません。
ブローラは、1960年代にDCL傘下の各蒸留所が設備の切り替えや大規模な増設工事を行った際、旧クライヌリッシュ蒸留所では老朽化に伴って新しい蒸留所をまるっと建設していたことから、需要がある間だけ手の空いた古い設備を使ってブレンド用のピーテッドモルトを代替する目的で原酒を仕込んでいたというものです。
(時系列等の詳細は、こちらの記事でまとめています。※ブローラ1975 プロヴェナンス)
こうして作られた原酒は、もし70年代以降もスコッチウイスキーの需要が増え続けていたなら、ブレンド用に消費されてしまったとも考えられますが、1980年代にウイスキー冬の時代が到来したことで原酒が過剰となり、蒸留所は閉鎖するものの急激な消費を免れた。
あるいは、1970年代のDCL傘下にアードベッグあたりがあったら、ブローラは作られなかったかもしれません。仮に稼働していても、1980年代閉鎖間際のような、ピートも個性も穏やかで、”野生の山猫”ではない”飼い猫”のような原酒を作っていた可能性もあります。
そう考えると、ブローラという存在は、いくつかの偶然があって現在に存在しているとも言えます。
そして1990年代から2000年代、シングルモルトに追い風が吹いてきたことを受けて、UD社が現在のスペシャルリリースにあたる、リミテッドリリースなどで、シングルモルトのブランド価値向上を図り始めます。
2003年に発売されたファーストリリースのブローラの日本流通価格が2万円程度。昨年のスペシャルリリースまでで全16作、最終的には20万円という価格にまで到達したのは、偶然のエピソードを長年の地道な営業努力で現在の地位に繋げた、販売戦略として見るべきところの多い事例ではないかとも思うのです。(飲み手としては、たまったものではありませんが・・・(汗)。)
さて、ブローラといえば、ポートエレンと共に再稼働に向けて動き出したニュースは周知のことと思います。
ポートエレンについては、敷地の一部が倉庫として使われているなど、設備の整備を行う前に”現在の利用者”と調整をしている最中で、まだ時間がかかるという話も聞いていました。しかしブローラはそうした調整が少なかったのか、本格的に整備と工事が進んでいる模様。アイラフェス前に現地を訪問していいた Bar Rosebankのマスターから、最新の写真(上)をお借りしました。
Google Map(写真下)で見ることができるほぼ同じアングルのストリートビュー画像と比較すると、かなり大規模に工事しているのが伺える1ショットです。
考えてみれば、元々古かった設備に加え、閉鎖してから35年も経ってるわけですから、総入れ換えくらいの工事は必要ですよね。また、敷地も拡張していることと、キルン塔が取り壊されずに移動していますが、これは新蒸留所で再活用するということなのかもしれません。
クライヌリッシュ蒸留所はブローラ時代も含めると今年で200周年を迎えます。バイセンテナリーボトルは20年熟成品で、すでに蒸留所ビジターセンターでも完売というほどの人気だとか。
新生ブローラの足音を聞くことができた現地の写真と、タイミングよく飲むことが出来たブローラの味わい。気持ちよく酔わせてもらいました。