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ジュラ 20年 ブティックウイスキー Batch.3 48.8% For 信濃屋

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JURA 
MASTER of MALT 
THAT BOUTIQUE-Y WHISKY 
Aged 20 years 
Distilled 1998 
Batch 3 
Cask type Hogshead #2150 
Exclusively for SHINANOYA 
500ml 48.8%

評価:★★★★★★(6)

香り:発酵したような乳酸系の香りがトップノートにあり、合わせて乾草を思わせるドライなウッディさと、土埃のようなほろ苦さ。スワリングすると発酵臭の奥から麦芽由来の甘み、白色系果実のフルーティーさ、微かに溶剤的な刺激も伴い、垢抜けないが複層的なアロマが感じられる。

味:香りに反して素直な麦芽風味主体のフレーバー構成で、何よりボディがしっかりとして厚みがある。微かにオーキーで、青りんご系の品の良いフルーティーさのアクセント。徐々に香りで感じた乳酸系の要素が鼻腔に抜け、余韻はほろ苦く、乾いた麦芽とウッディなフレーバーが長く残る。

ジュラらしさと言う点では、野暮ったく、垢抜けない点であろうか。決して洗練されていないが、そうしたフレーバーが合わさって嫌味ではない複雑さが魅力としてある。まさに地酒として求めているものの一つと言えるかもしれない。特徴的な香味としては、信濃屋公式のテイスティングコメントには「メスカル」とあるが、要素の一つに見られる乳酸、発酵したようなニュアンスがそれだろう。熟成したテキーラにも似たフレーバーだが、メインは麦芽風味、厚みのあるボディ、そしてホグスヘッドで熟成されたウイスキーの華やかさとフルーティーさが、ウイスキーであることを主張する。
テキーラ好きが飲んだらどのような反応をするだろうか。
 
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とあるイケメンからサンプルを頂いたので、レビューを書いてみました。この状況下ではBAR飲みも出来ないので、ありがたい限りですね。
ジュラ蒸留所については、1963年に操業を開始(再開)して以降は、ノンピートないしライトリーピーテッド仕様のモルトが仕込まれていましたが、2002年からピーティーなモルトがリリースされるようになり、2009年にはヘビーピーテッドもオフィシャルからリリースされています。

ボトラーズリリースを見てみると、1989年リリースのシグナトリー社のヘビーピーテッドがあり、少なくとも80年代からそうした原酒を仕込んでいたようです。
今回のリリースは、実質的にはほぼノンピートと言われる仕込みだと思われますが、フレーバーの中にピートに似た雑味のようなフレーバーが混ざっています。とある国内蒸留所でも見られる特徴なのですが、ノンピートとピートの仕込みを併用した際に、例えばスチルの洗浄をしっかり行わないまま仕込みを切り替えると、設備に染み込んだ成分がフレーバーとして移ることがあります。

それは明確にピートフレーバーと言う感じではないのですが、まさに今回のリリースに見られる個性のように、ちょっとビターで、土っぽくて…これはこれで悪くないアクセントに繋がったりするのです。スコットランドではクライヌリッシュ的製法というヤツですね(笑)。

jura

さて、ジュラ蒸留所の個性、あるいはその個性から見て今回のリリースはどうなのかと、問われると中々難しいです。
そもそも、アイラを除くアイランズモルト、アラン、ジュラ、スキャパ、タリスカー、トバモリー、ハイランドパークと言った蒸留所は、スコットランドの他の地域に比べてフレーバーの統一感がほとんどありません。それはひとえに”島”といっても、資本はバラバラで、東西南北(東にはないですがw)様々な場所にあることも考えられそうですが、もう一つそれを際立たせているのが、ジュラやトバモリー蒸留所のような、洗練されてない酒質にあると言えます。

例えば一般的な内陸モルトウイスキーの構成は、麦芽風味にオークフレーバーというシンプルな仕上がりのものが多いです。ジュラはここに発酵したような要素、酸味、土っぽさ、あるいは硫黄や鉄分のような、少しよどんだ要素が混じるなど、軽やかで綺麗な仕上がりとはならないのです。
麦芽の調達はポートエレンだし、発酵槽や糖化槽はステンレスなので、鋳鉄製のような影響はなさそう。昔のジュラはもっと素直な構成だったのですが、90年代くらいから変化しているような…やはり仕込む原酒の種類が増えた関係でしょうか。

こうして要素の多いウイスキーは、言い換えれば繊細と言えるかもしれませんし、安定もしにくい傾向があります。今回のリリースは好ましいフレーバーが主体で、垢抜けなさは全体のアクセントに。水清ければ魚棲まず。どちらの存在もバランス次第でウイスキーのフレーバーの厚みになるのです。一口目は「あれ?」と思うかもしれませんが、なんだか飲めてしまい、もう1杯飲んでも良いかなと手が伸びる。
最近ジュラ蒸留所の20年熟成クラスのボトラーズリリースが多いので、月並みですが比較テイスティングするのも面白いかと思います。

アイルオブジュラ 19年 1996-2016 チーフタンズ 50%

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ISLE OF JURA
Chieftain's
Aged 19 Years
Distilled 1996
Bottled 2016
Cask type Bourbon Barrel
700ml 50%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:個人宅(持ち寄り会@マッスルKさん)
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:クリーンで透明感のある香り立ち、徐々にオーキーでカスタードやバナナを思わせる甘いアロマ、乾いた麦芽。淡いスモーキーさも感じる。

味:ややドライな口当たりから徐々にスパイシー、バタークッキーやワッフルを思わせる甘み。じわじわと灰っぽさのあるピートが、若干の草っぽさと煮た林檎などのオーキーなフルーティーさと合わせて余韻にかけて盛り上がってくる。
ボディはミディアムから少し軽め、フィニッシュは甘みが長く残る。

非常に優等生で、良い意味で近年のジュラらしくない綺麗なジュラ。バーボンバレルだがホグスヘッドのように樽感に引っかかりがなく、度数以上にスイスイ飲める柔らかさからストレートで十分楽しめる。他方、加水するとボディが嘘のように弱くなる一面も。


「このジュラは美味しかった、どこで飲んだか覚えてないけど試してみれくれよ。」
などと意味不明な供述で推薦を受けたボトルであり、当然「何を言ってるのかわからんw」と返していたところ、「ボトルで買っておいたぜ!」とマッスル氏の男気を見せられました(笑)。

とは言えジュラか・・・近年モノだとオフィシャルベースなら荒さもありそうだし、バーボン樽って事はフルーティーでもドライで仕上がりは単調気味でだろうな。。。と、先入観増し増しで、様子見のハーフショットだったのですが、一口飲んで「!」となり、「も、もうちょっともらって良い?」と1ショットに切り替える、という家飲みならではのやりとりもありました。
樽の質はもとより、度数50%という仕様や味わいから少量の加水が行われていると推察。それがバーボン樽のフレーバーを整え、酒質と絶妙なバランスが取れた結果ではないかと考えます。

個人的にジュラは好きな蒸留所の一つです。
オフィシャルのオールドや、ボトラーズの長期熟成品はウイスキー好きのツボにくるモノがあると思っています。スティルマンズやOMCなど魅力的なボトルも結構ありました。
ただ近年のモノはボディが軽くなり、草っぽさや酸味が強く、ピートもパッとしない、そんな印象があった中で上手く仕上がったボトルに出会うと嬉しくなりますね。

今回のボトル以外で最近「おっ」と思ったボトルを合わせて紹介すると、それはシグナトリーのジュラ1989ヘビリーピーテッド。一昨年は25年、去年末には写真の26年がリリースされており、どちらもパワフルでエステリーなフルーティーさと強いピートが一体となって、ほのかに感じられる草っぽさも良いアクセントになっています。
ジュラのオフィシャルでもヘビーピートはリリースされていますが、それとは違うボトラーズだからこその楽しみと完成度。
チーフタンズ1996とは対極にある構成が、これもジュラの魅力の一つとして楽しめると思います。

ジュラ 21年 ピュアモルト オフィシャル (おそらく1980年代流通)

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ISLE OF JURA
Pure Malt
Aged 21 Years
1980's? 
??% 750ml

【予想スペック】
蒸留年:1963年頃
ボトリング:1984年頃
度数:48%前後か

グラス:木村硝子 古酒
量:30ml以上
場所:個人宅(Whisky link イベント)
時期:開封直後、開封2週間後
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:黒砂糖やカラメル、すりつぶしたレーズンを思わせる甘い香り立ち、土っぽいアロマ、ほのかにウッディーなえぐみ。シェリーは古酒感のあるオールドシェリー。グラスの残り香は葡萄やドライベリーの果実香で非常に充実している。

味:甘酸っぱくリッチでやや粘性のある口当たり。香り同様にレーズンや黒砂糖を思わせるシェリー感、ほのかにカカオチョコ、続いてピリピリとしたスパイシーさが舌の上に感じられる。鼻抜けは濃く入れた紅茶を思わせる
余韻はダークフルーツケーキ、黒土っぽいピートフレーバーとウッディーなタンニン、油絵の具のようなクセも僅かに混じる。


Whisky linkイベントにて、Gさんの持ち込みボトル。
オフィシャルで、このラベルで、21年モノという時点であまりにも謎が多いボトルです。
誰も知らない、見たことも無いボトル。度数、蒸留年、リリース時期、一切が不明で、ネットにも書籍にも情報が見当たりません。ラムのような色の濃さに加え、年数表記の21年がシールで貼られていたというボトルの状況などから、飲む前はフェイク疑惑もありました。

中身はリッチなオールド系のシェリー感が主体で、普通に美味しいシェリー系モルト。少なくとも1960年代蒸留で20年熟成相当のモルトウイスキーが入っていることは間違いないと感じます。
シェリーの強さゆえ蒸留所の個性がわかりにくい、断言できない部分もあるのですが、味の後半から余韻でジュラを思わせる土っぽさ、乾煎りした麦芽のような風味があり、今のところこのボトルを飲んだ多くの飲み手(某テイスター含む)から「ジュラと思われる」認定がされています。

こういうボトルの謎を紐解く作業は、オールド好きの心を鷲掴みにする魅力があります。
まず、使われているボトルやラベルは、通称ジュラッパチと呼ばれるジュラ8年、1970年代に流通したオフィシャルボトルのメタルスクリュータイプ。実際シールを剥がせば8年表記が出てくるので、流通時期は1970年代~1980年代初頭と見て間違いなさそうです。
続いて中身をジュラ蒸留所の原酒と仮定すると、ジュラは1963年に再稼動するまで、50年以上閉鎖されていて、蒸留設備そのものも残骸状態だったという話。過去ストックからのボトリングはなく、1963-1984の21年が濃厚であるということになります。
ジュラに関しては一部酒屋等の情報で1958年再稼動の記載がありますが、公式に1963年再稼動とある以上、蒸留設備の再建が始まった年を誤記したとか、何かの間違いかなと。ただ、1984年ボトリングだとオフィシャルリリースがジュラ8年ではなく、ジュラ10年に切り替わっていると思うので、時間軸に違和感が無いわけではありません。
まあ例えばオフィシャルリリースが切り替わった後で、残っていたラベルを使ったとかも十分ありえる話です。向こうは本当におおらか(いい加減)なので(笑)。


ジュラ蒸留所にとって21年という年数は、記念すべき要素があるものです。
それは同蒸留所1810年の創業から21年後に名称をアイルオブジュラとした経緯があり、例えば再稼動から21年という節目を祝して最初の年の原酒をボトリングしたのではないか。
また、1963-1984というスペックであれば、1984年はジュラ島でほぼ執筆されたという小説「1984年」の年号そのものが到来する特別な年であり、仮説の裏づけには多少なるかなーと感じます。
蒸留所によっては、記念ついででこういう遊び心的なボトリングをすることがあるため、上述のような背景から、島民や関係者限定で配布した記念ウイスキーとか、可能性はあるんじゃないかなと思います。

貴重で素晴らしく面白いモルトウイスキーでした。このミステリアスさがオールドボトルの魅力ですね!

※シールを剥がしたところ、古いシールであったためか表側の塗装が剥げてしまいました。
ボトル単体写真を撮り損ねてしまったため、はがす前のラベルは写りこみを参照ください。

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