カテゴリ

カテゴリ:アイルサベイ

アーストン 10年 アイルサベイ 40% シーカスク & ランドカスク

カテゴリ:
IMG_1595

AERSTONE 
AILSA BAY DISTILLERY 
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
Aged 10 years 
700ml 40% 

SEACASK "SMOOTH AND EASY"

評価:★★★★★★(6)

香り:華やかでフルーティー。洋梨やすりおろし林檎を思わせるオーキーなアロマに、ナッツ、麦芽の白い部分の香り。微かに乾草のような乾いた植物感と土の香りがアクセントとして混じる。

味:口当たりは柔らかくスムーズだが、40%の度数以上にリッチでコクとしっかりと舌フレーバーがある。蜂蜜を思わせる甘み、麦芽風味が粘性をもってしっかりと舌の上に残りつつ、オークフレーバーのドライな華やかさが鼻孔に抜けていく。余韻は土っぽさと乾草のような乾いた植物感、微かにスモーキーでビターなフレーバー。序盤の甘みを引き締め、穏やかだが長く続く

アイルサベイ蒸留所の原酒を、同蒸留所の熟成庫で熟成させたもの。一言でグレンフィディック12年を思わせる構成だが、それ以上に厚みがあり、味わい深い。樽構成としては、バーボン樽だけでなく、リフィルシェリー樽の香味もアクセントになっているのだろう。グレンフィディックの華やかさにバルヴェニーの麦芽風味や甘みを足したような、両者の良いとこどりで今後が楽しみな酒質である。
コストパフォーマンスにも優れており文句のつけようがないが、SEA CASKに由来するフレーバーについては難しい。しいて言えば、味わいのコク、舌の上に残るそれが塩味の一要素と言えなくもないか・・・。このリリースに塩気を感じることが出来る感度の味覚を自分は持ち合わせていない。


LAND CASK "RICH AND SMOKY"
評価:★★★★★(5)

香り:やや酸の混じったスモーキーなトップノート。若い原酒特有のゴツゴツとした質感のあるピート香で、土系の香りと合わせて、焦げた木材、クレゾール、根菜的なニュアンスも混ざる。奥には麦芽とオーキーなアロマ、レモンやグレープフルーツを思わせる要素もあり、スワリングで主張が強くなる。

味:オイリーで柔らかいコクと甘み、燻した麦芽のほろ苦さとスモーキーさと、ほのかに柑橘系のフレーバーのアクセント。序盤はピートフレーバーと麦芽風味に分離感があるが、後半にかけて馴染む。余韻はスモーキーで微かに植物系のえぐみ、根菜っぽさを伴う。

アイルサベイ蒸留所の原酒を、グレンフィディック、バルヴェニー留所の熟成庫で熟成させたもの。
ピートフレーバーのしっかり備わったモルトで、樽構成含めて過去にリリースされたオフィシャルボトルと同じベクトル上にある1本で、おそらくピートレベルは20PPM程度。他社シングルモルトで類似の系統を挙げるなら、レダイグやポートシャーロット。根菜や焚火の煙、内陸ピートの強い主張に対し、酒質は柔らかく、麦芽の甘みがしっかりと広がる点も特徴と言える。なお、香りはこれらが合わさって複雑なアロマを感じられるが、味の面では少々分離感があるため、ストレートよりハイボール等がお薦め。

IMG_1593

IMG_1905

2007年に稼働した、ローランド地方・アイルサベイ蒸留所から10年熟成のシングルモルトリリース。海辺と内地山間部、2か所で異なる酒質のものを熟成させた、これまでにないコンセプトのウイスキーです。2018年頃に発売されていたのですが、マイナー蒸溜所ゆえに日本に入ってくるのが遅かったのでしょう、今年に入ってからようやく市場で見られるようになりました。

アイルサベイは、グレンフィディック、バルヴェニー、キニンヴィを有するグランツ社が、同社のグレーン蒸溜所であるガ―ヴァンの敷地内に建設した蒸留所です。
グランツ社は、その名を冠するブレンデッドウイスキー・グランツを中心としたブレンド銘柄を、バルヴェニーやキニンヴィ蒸留所の原酒を用いてリリースしていたところ。近年、シングルモルトとしてブランドを確立していたグレンフィディックに続き、バルヴェニーも需要が増えてきたことで、新たにブレンデッド用のモルト原酒を調達する必要が生じていました。

また、同社は傘下にピーティーな原酒を作る蒸留所が無く、ブレンドの幅を広げ、需要が増えているスモーキーなブレンデッドウイスキーのリリースに必要な原酒の確保も課題であったと言えます。
そこで建設・稼働させたのが、このアイルサベイ蒸留所でした。稼働後しばらくはリリースがありませんでしたが、2016年頃にピーティーなシングルモルトをリリース。しかしこれが魅力のある仕上がりだったかと言われれば…SPPMという酒質の甘さを示す指標など、面白いコンセプトはあるけど、やはりブレンド用かなと、あまり惹かれなかったことを覚えています。



その後、アイルサベイ蒸留所については特に調べることもなく、アイルサベイ=ピーテッドモルトだと早合点してしまっていたのですが。。。今回のレビューを書くにあたり、前回から5年越しで蒸留所の全容を把握。グランツ社の原酒調達にかかるロードマップと、アイルサベイ蒸留所の真の姿をようやく認識にするに至りました。

現在のアイルサベイは、16基のポットスチルを持つローランド最大規模の蒸留所。スチルはバルヴェニー蒸留所と同様の形状をしており、ブレンドに用いられる原酒の代替を目的の一つとしています。また、仕込み工程全体では、バルヴェニータイプのモルト以外の原酒を仕込むことも可能なように設計されており、ピーテッドモルトは千重の一重でしかなかったということになります。

aerstone_web

今回のレビューアイテムであるアーストン10年のSEA CASKとLAND CASKは、この2種類をテイスティングすることで、先に触れたアイルサベイ蒸留所のハウススタイルと可能性を味わうことが出来る、実に面白いリリースとなっています。

SEA CASKが、数PPM程度で華やかな風味を主体とするスペイサイドタイプの原酒であるのに対し、内地で熟成させているLAND CASKが20PPM程度でスモーキーさの際立った仕上がりなのは、海=アイラ、アイランズ=ピーティーと言うスコッチモルトに対する一般的な認識からすれば、「逆じゃない?」と思えなくもありません。
ですが、アイルサベイ蒸留所は下の地図でも明らかなように元々海辺に建設されていることや、バルヴェニー蒸留所の原酒を代替する目的があります。つまりアイルサベイ蒸留所で仕込み、熟成させているスタンダードなモルトなのだとすれば、このリリースの位置づけもなるほどと思えてきます。

一方で、精麦設備を持つバルヴェニー蒸留所では、1年間のうち、内陸のピートを焚いて麦芽を仕込んでいる期間があります。これを用いることで、これまでグレンフィディック、バルヴェニー両蒸留所では、少量ながらピーテッドモルトのリリースも行われてきました。
アイルサベイ蒸留所で用いられているピート麦芽が、バルヴェニー蒸留所で仕込まれているとすれば、熟成されているLAND CASK=ピーテッドモルトと言うのも、わからなくもありません。
…公式ページに説明がないので、あくまで個人的な推測ですが(汗)。

aerstone_warehouse

両リリースをテイスティングすることで見えてくる共通する特徴は、コクのある甘み、麦芽風味。SPPMという指標を用いて管理されているほど、蒸溜所としてこの点を意識しているように感じます。
そして今回のリリースだけで判断はできないものの、狙い通りの酒質に仕上がっていというか、それ以上のものを生み出してくる可能性もあると言えます。

実際、SEA CASKはアメリカンオークに由来する華やかさと、蒸溜所の特徴である麦芽由来のフレーバーが合わさって、蜂蜜のような甘みや、洋梨や林檎を思わせるフルーティーな個性。樽構成の違いからか、少し乾草のようなフレーバーも混ざりますが、ドライ寄りなフレーバーが強くなった現行品ではなく、20~30年前流通のグレンフィディックやバルヴェニー蒸留所のモルトを思わせる、40%加水とは思えないフレーバーの厚みが魅力です。正直3000円台のシングルモルト現行品で、このクオリティは素晴らしいです。

一方でLAND CASKはちょっと若いというか、単体では麦芽の甘みに対してピートフレーバーの分離感があるため、現時点では個性を楽しむという飲み方に。ただ、SEA CASKと比較したり、ハイボールにしたり、あるいはそもそもの目的であるブレンドに使われていくなら、力を発揮するでしょう。
ピートと麦芽、その2つの個性の間を他の原酒やグレーンが埋めて凸凹が合わさるようなイメージですね。実際LANⅮとSEA CASKに10年熟成のグレーンを適当にブレンドして遊んでみましたが、悪くありませんでした。既にグランツからピーテッドがリリースされているので、構成原酒としてセットで飲んでみるのも良いと思います。


海の塩気と陸の土っぽさ、みたいな熟成環境によるフレーバーの違いを感じるのがリリースの狙いかと思いきや、構成している原酒のコンセプトから違うという奇襲を受けた本リリース。
というか、SEA CASKのほうに塩気を感じられるかというと、そもそも熟成期間を通じて人間が感知できるだけの塩分量(塩味の認識闘値:1リットルあたり0.585gとして、海水の塩分濃度3.4%から計算すると…)が樽の中に入り込むには無理があります。加えて熟成環境以外の要素として、ピートも極少量で、加水も衛生面で基準値を満たした水が使われているという条件下では、ちょっと一般人の味覚嗅覚では困難なのではないかと考えられるわけです。

他方で環境の違いが温度や湿度にあると考えるなら、アイルサベイ蒸留所はバルヴェニー蒸留所に比べて若干ながら温暖な環境が予想されるため、例えば樽由来のフレーバーが強く出る等の効果も期待できます。結果として、SEA CASKでは予想以上の完成度と、LAND CASKでは面白さと可能性を楽しむことが出来たので、このリリースは先入観を持たず、あくまで今後グランツの主要原酒となるアイルサベイ蒸留所の2つのキャラクターとして楽しむのがお薦めです。

アイルサベイ NA 48.9% オフィシャルボトル

カテゴリ:
 
AILSA BAY
Single malt scotch whisky
(No Aged)
PPPM 21
SPPM 11
700ml 48.9%

グラス:SK2、創吉テイスティング
量:100ml程度(シェア購入)
場所:自宅
時期:開封後2週間程度
評価:★★★★(4)

香り:ピーティーで若い酸味の混じる麦芽香、ハッカ、スワリングしていると淡い消毒臭、時間経過でシロップの甘みと根菜のアクやエグみを思わせる植物感が開いてくる。樽感は淡く、奥行きや複雑さはあまり感じない。

味:水っぽい飲み口からエッジの立った口当たり。じわじわと土っぽいピーティーさ、根菜、ニガリを思わせるえぐみと苦味に加え、ビスケットを思わせる甘みが感じられる。
余韻はピーティーで植物系の苦味が強くなっていく。香り同様、若さをピートで補っている印象で、熟成感は弱く酒質もプレーンであり複雑さもあまり感じれない。まだ若く、分離感のある味わいだ。


ウィリアムグラント社が、2007年に新設した第4蒸留所、アイルサベイ。そのファーストリリースです。
本蒸留所はグレンフィデックの兄弟蒸留所に当たり、その他にもバルヴェニー、そしてキニンヴィが有名です。
中でもキニンヴィは、原酒がほぼ100%ブレンド用であるため、飲めない蒸留所として知られているわけですが、グラント社はここにきてもう一つ、シングルモルトマニア注目の蒸留所を追加してきたわけです。
「どうせまた飲めない蒸留所だろ」とあまり意識もしていませんでしたが、どうやら昨今のブームを受けてシングルモルトも展開されていくようで、ウイスキー仲間との海外直接購入であっさり飲む機会に恵まれてしまいました。

アイルサベイ蒸留所は、ウィリアムグラント社がローランドに所有するグレーン工場、ガーヴァン蒸留所の敷地内に建設されており、位置づけ的にはローランドモルトに分類されます。また、ガーヴァン敷地内の建設場所はレディバーン蒸留所の跡地でもあり、閉鎖、グレーン蒸留所も含めると、アイルサベイはウィリアムグラント社の第6蒸留所であるとも言えます。
ローランドモルトとしては珍しくピーテッドタイプで仕込まれており、ピートレベルはブルイックラディ(ポートシャーロット)とほぼ同じ21PPM。もう一つの指標となるSPPM(Sweet Parts Per Million)は独自の表現方法で、甘味のレベルを意味するようです。
SPPMは比較対象がないため、現時点であまり意味はないですが、今後同社の製品に統一して使用されるなら面白い試みだと思います。


前置きが長くなってしまいましたが、今回のボトルは、そもそも最長で8年熟成というところ。味に奥行きがなく単調気味な構成となっています。
同蒸留所では、ニューメイクスピリッツを、一度ハドソンベイバーボンと呼ばれる25~100リットル程度の小さい樽に詰め、6~9ヶ月間熟成させて味を濃縮させ、その後ボトリングまでの期間をファーストフィルかセカンドフィルのバーボンバレルで熟成するという、一般的に行われている熟成方法とは逆の工夫もされているようです。しかし今回のボトルでは、メーカーコメントほどの樽感は感じられず、全体的に淡い仕上がりとなっているところ。土っぽいピーティーさと植物系のニュアンスの混じる根菜のような風味が主体で、若さはピートで中和されてなんとか飲めるかなというレベルの仕上がりです。他の蒸留所で例えるなら、近年の若いレダイグに似ている部分があるかなという印象も持ちました。

ハイボールにすると消毒液のようなアロマが強く立ってきます。飲み口はすっきり、その中に香ばしさも感じられ、やっぱりピーティーなモルトは炭酸との相性が良いんだなと思う反面、これじゃなくても良いように思うのは・・・。
今回はファーストリリースですし、旨さというより際立った個性を楽しむボトルだなと整理。面白い原酒がラインナップに加わったと思います。ブレンドの観点では原酒の幅が増えるのは良いことですし、今後のアイルサベイ並びにウィリアムグラント社の展開が楽しみです。

このページのトップヘ

見出し画像
×