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カテゴリ:江井ヶ嶋

ファーイーストピート 4th Batch ブレンデッドモルト 50%

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FAR EAST OF PEAT
FOURTH BATCH 
BLENDED MALT WHISKY 
EXTRA SELECTED 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:香ばしさと黒砂糖を思わせるほのかなシェリー感がトップノートにあり、合わせてハイランドタイプの麦芽香。奥にはスモーキーな個性があり、香りのボリュームに繋がっている。

味:香りで感じた麦芽風味と甘みがメイン。微かに柑橘やシェリー樽のウッディネス、乾いた植物感。じわじわと内陸ピートのスモーキーさ。地味だが通好みと言える構成。江井ヶ嶋のピートや三郎丸モルトは底支えで、強く主張はしないが余韻にかけて存在を感じられる。

三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルト、江井ヶ嶋のライトリーピーテッドモルト、そしてスコッチモルトのバッテッド。
比率的にはスコッチモルトが多いのだろう。熟成感と落ち着きのある個性でブレンドとしての完成度を高める狙いが見えつつも、最近流行りのキラキラ華やかオーキータイプではなく、麦芽風味主体の構成に仕上げてきた点が面白い。
加水するとスモーキーフレーバーが表に出てくる。飲み方はストレートからロック、ハイボールにはちょっと向かない。

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三郎丸蒸留所が進めるクラフト蒸留所との原酒交換でリリースされる、FAR EAST OF PEAT 第2弾。
今回は江井ヶ嶋蒸溜所とのコラボリリースにおける、ワールドブレンデッド仕様のブレンデッドモルトウイスキーです。

ジャパニーズ仕様であった3rd Batchは、三郎丸蒸留所のヘビーピーテッドモルトの個性が前面に出ており、ピーティーな味わいがメインとなっていました。
一方、この4th Batchではピートフレーバーは底支え的な使われ方で、メインに感じられるのはスコッチモルトの香味。裏ラベルのコメントに「スコッチモルトを吟味してブレンド。華やかで多層的な味わいを目指した」とあり、ピーティーな3rd Batchとは全く異なるコンセプトを感じる仕上がりとなっています。

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これはFAR EAST OF PEATの第1弾、長濱蒸留所とのコラボリリース、ワールドブレンド(上写真、赤ラベル)と同じ方向のレシピですね。
三郎丸というとヘビーピートですが、ブレンドは輸入原酒を用いることで、ピーティーなものからムーングロウのようにフルーティーなものまで幅広くリリースされていて、ジャパニーズとしてのリリースからガラリとキャラクターを変えています。

構成原酒にはおそらく10年以上熟成したスコッチモルトが使われており、中にはピーテッドタイプのものもあるのではないかと予想。樽構成もバーボン以外でシェリー樽原酒が使われるなど、複数の樽、複数のピート、複数の酒質、確かに多層的な香味が感じられます。
ただ、華やかかというと、ここはちょっとイメージと違う気もします。それこそ、華やかと言えばスコッチモルトのバーボン樽原酒にあるオーキーでドライ、キラキラ系の味わいだと思いますが、このブレンドは内陸系の麦芽風味を中心としてシェリー樽由来のフレーバー、そして国産原酒という構成なので、華やかというよりはモルティーでいぶし銀な感じなんですよね。

とはいえ、不味いと言う話ではなく、バランスも取れているブレンデッドモルトだと思います。
次のリリースがどの蒸留所との組み合わせかはわかりませんが、引き続きことなる2種類のレシピで、日本のウイスキーの可能性を探求していって頂きたいです。

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オマケ:
今回のコラボ企画では、当然ながら江井ヶ嶋蒸溜所からも三郎丸蒸留所の原酒を使ったリリースが予定されています。
リリース時期は4月中とのこと。江井ヶ嶋のクリームシェリー樽3年熟成ノンピートモルトと、三郎丸蒸留所のバーボン樽熟成ヘビーピーテッドモルトをバッティングした、ブレンデッドモルトです。

ラベルデザインは、使われている原酒の色調をモチーフにしたもの。あまり意識していなかったのですが、江井ヶ嶋蒸留所って熟成されている原酒の半分くらいがシェリー樽らしく、蒸留所のスタイルと言える原酒の一つなんですよね。その原酒が、同じく蒸留所のスタイルと言える三郎丸のヘビーピーテッドと混ざり合う。
最近の江井ヶ嶋原酒は期待できますし、シェリー樽とバーボン樽のバッティングからも、FAR EAST OF PEAT`とは異なる仕上がりが期待できる。このリリースも楽しみにしています。

ファーイーストオブピート 3rd Batch 三郎丸×江井ヶ嶋 ブレンデッドモルト 50%

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FAR EAST OF PEAT
THIRD BATCH 
BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 
SABUROMARU × EIGASHIMA 
Cask type Bourbon Barrel 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:焦げた土と乾草、野焼きの後のような強いスモーキーさと煎餅のような香ばしさ。スワリングするとモルティーな甘み、バニラ、柑橘等のアロマ。奥には林檎を思わせる品の良い甘みもあって、微かにスパイシーな要素も感じられる。

味:香ばしい麦芽風味とピートフレーバーと柑橘感。口当たりはオイリーで厚みがある中に、乾いた麦芽の軽やかな風味が混ざり、香り同様のスモーキーさを鼻腔に感じさせつつ、柔らかい余韻へと繋がる。

三郎丸のヘビーピーテッドモルト(50PPM)と、江井ヶ嶋のライトリーピーテッド(10PPM)、共にバーボン樽熟成のバッティング。
香りでは強く存在感のあるスモーキーさが主体だが、味わいは乾煎りしたような麦芽の香ばしさ、モルティーで厚みのある味わいが第一に感じられる。全体としては三郎丸原酒のフレーバーが主体であるところ、その隙間を補うように江井ヶ嶋モルト由来の要素が感じられ、お互いの個性が共演したブレンデッドモルトである。
加水すると爽やかな柑橘感、グレープフルーツの綿のようなほろ苦さがあり、徐々にスモーキーに変化する。

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三郎丸蒸留所が日本各地の蒸留所と原酒を交換し、ブレンドすることでリリースする、ブレンデッドモルトウイスキー「FAR EAST OF PEAT」シリーズ。第1弾は長濱蒸溜所との原酒交換で、そして今作第2弾となる3rd Batch と 4th Batchは、兵庫県江井ヶ嶋蒸溜所との原酒交換によって実現したリリースとなります。

リリースにあたっては、三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーの提案で関係者によるスペース放送を実施させて頂きました。※当日資料、アーカイブ記事はこちら
平日の夜でしたが、250名を超える方々にご参加いただき、内容もスペース放送らしく適度なぶっちゃけがあり、そしてそれぞれの蒸留所のウイスキーに対する考え方や、リリースを紐解く内容でもあり…。
司会として関わらせてもらって光栄という以上に、一愛好家としてめちゃくちゃ勉強になる放送でした。


※三郎丸蒸留所 稲垣マネージャー、江井ヶ嶋酒造 中村蒸留所所長、T&T下野代表との対談用参考記事

今回のリリース、そして放送を通じて最も認識を改めたのは、江井ヶ嶋蒸溜所の原酒の変化でした。
三郎丸じゃないんかい、という突っ込みが聞こえてきそうですが。三郎丸についてはもう3~4年前にニューメイクの段階で認識を改めて、これは偉大な蒸溜所に届きうると、別途PBまで企画したところです。
個人的には認識を改める要素は三郎丸にはなく、むしろ今後2018年以降蒸留の原酒が、同蒸留所の評価をさらに高めていくものと確信しています。

一方、江井ヶ嶋蒸溜所については、今更取り繕う気もありませんが、今回のコラボの話を昨年初めて聞いた時は「大丈夫なのか?」くらいに思っていました。
いやだって、江井ヶ嶋蒸留所のこれまでの原酒って正直地ウイスキーそのものというか、雑味が多く厚みがない、良さを感じる要素がまるで無いわけではないものの、それを探し出すのが難しいと言うのが本音のところで・・・。

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ただ、構成原酒に加え、カスクサンプルやT&Tのニューメイクもテイスティングし、あれ、江井ヶ嶋良くなったんじゃない?と。
2019年以降は設備が入れ変わってるのでその影響かと思いましたが、どうも今回のリリースに使われた2018年時点から全然違う。
放送を通じて中村所長に確認したところ、造り方の見直し、設備の清掃徹底や保守管理、老朽化した配管などの入れ替えは、中村所長が蒸留所に着任した2016年から行なっていたそうで、成る程そういうことかと、認識を改めるに至ったのです。

個人的な整理ですが
・地ウイスキー = 酒造等がありあわせの設備で造った、特にコンセプトのないもの。
・クラフトウイスキー = こういうウイスキーを造りたいという想いを持って、設備の設計調達や製法の工夫を行ったもの。
であると考えています。
その整理で見るならば、現在の三郎丸蒸留所はまごうことなきクラフトであり、江井ヶ嶋蒸溜所もまた、クラフトウイスキーへ転換したことは間違いないと言えます。

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さて、今回のリリースに用いられたものを含めて、三郎丸原酒はどっしりとした厚みのある風味、スモーキーフレーバーが特徴であり、ある意味造り手の若々しさとも言うべき強い主張が個性でもあります。

リニューアル直後、一部旧時代の設備が残った2017年に比べ、マッシュタンが新しくなった2018年蒸留の原酒はネガティブな雑味要素が少なくなり、ピーティーなフレーバーが一層強く感じられるようになりました。
ただ、2019年に比べて2018年はまだ旧世代の残滓とも言うべき針葉樹やオリーブオイルのような若干のオフフレーバーを残しており、また3年熟成時点ではピートフレーバーも荒々しく、単体ではちょっと暴走気味(造り手談)であるところも否めませんでした。

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一方、江井ヶ嶋蒸留所の酒質は、元々がライトで厚みがあまりなく、それでいて苦味やえぐみのような、マイナス方向での雑味が全体にかぶさってくるような傾向がありました。

ですが先に書いたように近年蒸溜の原酒やニューメイクを飲んでみると、軽やかな風味はそのままに、以前は厚みが出ず雑味があった中盤から後半にかけては品のいい麦芽風味と柔らかいコクが感じられるのです。
今回のブレンドに用いられた、三郎丸蒸留所と交換したバーボン熟成したものは蜂蜜レモンや和柑橘、そして穏やかなスモーキーフレーバーへと続いていきます。


力強く奔放な三郎丸、柔らかく穏やかな江井ヶ嶋。使われた比率は2:1程度。
凸凹が組み合わさるような、例えるなら、蕎麦打ちで粗挽き粉に更科粉をブレンドして、食感と舌触りを良くするようなイメージでしょうか。
加水することでさらに香味の広がりが生まれ、両蒸留所の個性を味わうことができます。
それは未完成だからこその面白さと将来性であり…。2人の造り手によるクラフトウイスキーの共演を、是非楽しんでほしいですね。

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江井ヶ嶋 ブレンデッドウイスキー シェリーカスクフィニッシュ 50%

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EIGASHIMA 
BLENDED WHISKY 
SHERRY CASK FINISH 
500ml 50% 

評価:★★★★★(5)

香り:トップノートはオロロソシェリーの甘いシーズニング香、合わせてメローなグレーン、穀物を思わせる要素も混ざり、全体的に柔らかい甘さが主体のアロマ。微かに焦がした杉板のような、古典的な日本家屋に通じる香りが混ざる。

味:まずシェリー樽由来の香味が広がる。ドライプルーンを思わせる近年系シェリーの甘み、奥にビターなカカオ、ウッディネス、微かにスパイスや針葉樹のアクセント。じわじわと舌先からタンニンが感じられ、余韻はシェリー樽の甘さが鼻腔に抜けるとともに、ピリッとした刺激が残る。

香味ともはっきりとシェリー樽の個性が感じられるブレンデッド。加水すると一瞬甘酸っぱいドライフルーツ、柑橘の皮、オランジェットなど香りを構成する要素が増すが、極短時間の変化であり、その後はドライなグレーン感が主体となる。他方で味わいはスムーズでマイルド、余韻は日本の熟成環境を思わせるウッディさが残る。輸入原酒とのブレンドとは言え、これが江井ヶ嶋のリリースである点に驚かされた。

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江井ヶ嶋酒造からリリースされている、江井ヶ嶋蒸溜所のモルト原酒と、輸入原酒(モルト、グレーン)をブレンドし、オロロソシェリー樽でフィニッシュした通常リリース。
同社のウイスキーブランドと言えばホワイトオークとあかしですが、2019年に蒸溜所名義をホワイトオーク蒸蒸溜所から江井ヶ嶋蒸溜所とし、新たに“江井ヶ嶋”ブランドを最上位に位置付けてリリースを行う、ブランド戦略の見直しが行われました。

そうしてリリースされたうちの1つが、このブレンデッドウイスキーです。
しかしこれまで江井ヶ嶋のモルト原酒は、雑に作っているのが見えるというか、悪い意味で地ウイスキー的というか、「風味が薄っぺらいわりに原料由来とは傾向の異なる雑味が多く、樽感のなじみも悪い。」
はっきり言っていい印象はなく、この蒸留所、立地以外何が良いのかわからない、というのが本音でしたね。
(同じように感じていた愛好家の皆様、江井ヶ嶋の皆様は怒らないので、黙って拍手ボタンを押しましょう。)

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他方で、昨年から2018年蒸留のカスクサンプル、直近のニューメイクを飲ませていただく機会があり、あれ、悪い要素が消えてる。。。っていうか別物じゃん、と評価を改めていたところに、先日のスペース放送です。
事前打ち合わせ含めて詳しい話を聞き、江井ヶ嶋蒸溜所のウイスキーは、同社が1919年にウイスキー販売を始めて100年経った今からやっと“始まる”のだと、確信に至りました。

字面的な印象で言えば「地ウイスキーからクラフトウイスキーへ」と言いますか。
この改革の立役者である中村蒸留所所長が着任された2016年以降、江井ヶ嶋蒸溜所では意識とプライドをもった仕込みが行われているだけでなく。2019年の改修工事前から、老朽化した配管やタンクの交換など、今まではおざなりにされていた設備の保守管理・清掃も徹底されるようになったと言う話を聞き、原酒の香味の変化にも納得しました。
やはりモノづくりは細かいことの積み重ね、基礎をおろそかにしてはならないと言うことですね。

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(2月3日のスペース放送。中村蒸留所所長の「お前ら、そんなウイスキー作ってて家族に恥ずかしくないんか、一緒に飲みたいウイスキー造ってるって言えるんか」という話は、胸の内に込み上げてくるものがあった。)

そんなわけで、じゃあ新時代の江井ヶ嶋のウイスキーを飲んでみようと。スペース放送にあたって購入していた一つが、このブレンデッドウイスキーです。
輸入原酒を使っているため、江井ヶ嶋モルト100%の香味ではありませんが、例え輸入原酒を一部使おうとも香味の仕上げに設備の影響は少なからずありますし、何より造り手の意識が低いと、よくわからないものが仕上がってくるのは説明するまでもありません。

傾向としてはフィニッシュに使われたシーズニングシェリー樽の、近年の市場で良く見る香味を主体。ですが、バランス良く仕上がってます。
江井ヶ嶋蒸留所は実はシェリー樽の保有比率が高い(全体の半分以上)そうで、これはある意味で江井ヶ嶋のハウススタイルと言えるのかもしれません。
何より、ちゃんとユーザーが求めている味に向き合っている気がしますね。フラットに見ればようやく他社と横並びのスタートラインの立ったとも言えますが、お、中々悪くないじゃんとも、思わされる一本でした。
引き続き注目していきたいと思います。

あかし 3年 2015-2018 日本酒カスク ゴーストシリーズ 61.5%

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AKASHI 
Aged 3 years 
Akashi Sake Cask Mtasured 
Distilled 2015 
Bottled 2018 
Cask type American Oak #101520 
500ml 61.5% 

グラス:シュピゲラウテイスティンググラス
時期:開封後半年程度
場所:BAR Harry's 高岡
暫定評価:★★★★(4→ - )

香り:小麦の焼き菓子、香木感のある粉っぽさのある華やかなオーク香。合わせて日本酒の古酒っぽさ、発酵した酸とアーモンドやくるみ、徐々に酸が強く、湿った布のようなアロマも混じってくる。

味:アタックの強い口当たり。はちみつ檸檬のような粘性と酸味、皮に混じる渋みはスパイシーさもあって和生姜のようなヒリつくニュアンスに、粗さを感じさせる。
余韻はドライでウッディ、発酵した酸、ニューポッティーな未熟感が粗さとなって若さを感じさせる。ハイトーンな刺激を残して長く続く。

樽が非常に強く出ており、粉っぽいオーク香に日本酒の古酒のようなヒネと発酵したような酸味。これが若い原酒をコーティングしており一見すると面白いのだが、酒質そのものが未熟なのだろう。一口二口と飲んでいく毎に、短熟故に取りきれなかった粗さと未熟な要素が口内、食道、胃を支配し、ボディーブローのように効いてくる。

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ジャパニーズウイスキーに関する情報のバイブルとも言える著書、ウイスキーライジング。その発売を記念して、小学舘プロダクションから限定500本リリースされたもの。
ウイスキーライジングの著者にして、ウイスキー情報発信サイト、Nonjattaを執筆するステファン氏がカスクを選定する、ゴーストシリーズの第9弾という位置付けでもあります。

この日本酒カスクは加水の50%仕様のものが別途リリースされており、仲間内でちょっとした話題になっていたボトルでした。
それは良い評価か、悪い評価かというと別れており、やはり自分で飲んで確かめなければ・・・と。結果、自分は後者のほう。
古酒に見られるヒネやキャップ臭など、後天的に付与されたネガ要素を除けば、大概のウイスキーで受け付けない、ということはないのですが、これは受け付けない類のもの。久々に、完璧に好みに合わないボトルに出会ってしまいました。


まず、日本酒カスクという新しい可能性の追求という意味では、このボトルが持つ意味は大きいと言えます。樽熟成する日本酒は珍しいですが、貴醸酒などもありますし、何より日本独自の文化である日本酒とウイスキーの組み合わせというのが、ワインカスクフィニッシュ同様の可能性、新しいブランドの確立を期待させるのです。
実際今回のリリースも樽感は面白く、ノージングのみでの第一印象は温暖な熟成環境からか3年の割りに強く出たオーク香があって、そこまで悪い印象はありませんでした。

しかし樽由来というよりも、酒質の部分で悪さをしているところが大きい。その比率は樽が3、酒質が7。
国内外問わずこれまで多くの蒸留所のニューメイクを飲んできましたが、中でも一部のクラフト系ニューメイクに感じられた若さ故の粗さ、蒸留で取りきれなかった未熟なニュアンス、渋味や辛味、あるいは発酵した野菜のような硫黄系のオフフレーバー。これが強い樽香の裏に潜んでいて、飲んでいると後から効いてくるのです。
これが、ダメな人と悪くないという人を分ける要因であると推察します。

そんなわけで、序盤は★4ー5くらいかなと思った評価は、後半にかけてネガティブな要素が目立ったため評価なしと、時間軸を分けての評価というイメージでまとめさせてもらいました。
今回のリリース、説明を良くみると日本酒?(粘性のある甘味と古酒系の酸味から貴醸酒樽?)と樽は、江井ヶ嶋のものではないようです。
どうせなら同じ酒造で作られた樽の組み合わせとかもみてみたいなと思います。

あかし 10年 60% オールドシェリーバット#5164 江井ヶ嶋酒造

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WHITE OAK
AKASHI
Shingle Malt Whisky
Aged 10 Years
Old Sherry Butt #5164
500ml 60%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@サンプル購入
時期:不明
暫定評価:★★★★(4-5)

香り:焼けたゴムのようなビターなウッディネス。カカオ、焦げたキャラメル、度数らしく鼻腔への刺激も伴う。奥からハーブを思わせる薬草香と、発酵したような酸味もほのかに感じられる。

味:香りよりもスウィートで粘性を伴う一方、舌の上を刺激する強いアタックも感じる。ブラウンシュガー、ゴム感、ウッディなえぐみ。
余韻はハイトーンでヒリヒリとした刺激が非常に強く。あわせてサルファリー、カカオ90%チョコレートを食べた後のような粉っぽさや苦味を感じるウッディネスが長く続く。

それほど支配的ではない樽感に、あかしらしいアルコール感の強いアタックや薬草感。加えてクラフト的な熟成感とも言えるえぐみ、ウッディーさを伴う"地"的な個性豊富な1本。1:1程度まで加水すると、サルファリーさや刺激がある程度収まり、スムーズでシロップの甘みを伴ってバランスが一気に改善する。ストレートで一口飲んだ後は、加水しながら調整していくのがオススメ。




江井ヶ嶋酒造が久しぶりにリリースした、二桁熟成年数のシングルカスクウイスキー。中身についてはテイスティングを参照いただくとして、話のメインは樽についてです。

今回のスペックはオールドシェリーバットなる表記で、濃厚なシェリー感を期待してしまいますが、香味からシェリー酒の熟成が長い樽とも、あるいは1st fillとも言いがたく、オールドの意味は単に古いか、何度か使った古樽なのかなと推測。
江井ヶ嶋では単一樽で15年以上熟成させたシングルモルトがリリースされたことはなく、そのローテーションと樽感から、今回の樽は2回目か3回目の使用ではないかと考えられます。

この点については、ウイスキーテイスターの山岡さんが蒸留所で調べられた情報をFacebookで公開されています。
それによると、この樽はシェリー樽ではなくスパニッシュオークのブランデー樽。かつて江井ヶ嶋酒造がスペインからブランデーを輸入した際、入れ物としてセットで届いた樽で、少なくとも1度ウイスキーの熟成に使ったリフィルカスクとのこと。
ではなぜシェリー樽を名乗っているのかというと、考えられることは一つ。このスペインのブランデーが"シェリーブランデー"であり、シェリー(ブランデー)バットでの熟成だからと思われます。
シェリーブランデーは酒精強化前のワインを蒸留するため、香味はブランデー寄りですが、熟成はシェリー酒同様にソレラで行われる銘柄もあり、樽としての魅力は非常に感じます。

しかし仮に上記の通りとしても、表記の適正さについて新たな疑問が生まれるわけで。。。現在ジャパニーズウイスキーの基準について議論が進められているという話を聞きますが、輸入原酒の使用可否以上に表記の統一についてこそ、整備が必要と感じる次第です。

ちなみに、今回の樽と同じスパニッシュブランデー樽が使われたとされるボトルが、2010年に発売されたあかし12年です。
当時の説明文には「スパニッシュオークでの熟成」が記載されており、シェリーとは書かれていなかったものの、自分を含めて結構な人がスパニッシュオークシェリー樽と勘違い(汗)。

ピーティーでキャラメルのような甘みと熟成感、これまでリリースされてきたシングルモルトあかしの中で一番旨いボトルだと思うのですが、このボトルは硫黄感がなく今回とは異なる仕上がり。
ここで空いた樽もまた、今回のように10年以上熟成の原酒を育んでいる最中なのでしょうか。

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