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カテゴリ:テイスティング考察

グランツ デュワーズ ジョニーウォーカー18年 ブレンデッド3種飲み比べ

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先日クラウドファンディングを通じて発売されたウイスキーの入門用書籍「BARとウイスキーの素敵バイブル」。
この書籍の中では、BARでのウイスキーの楽しみ方の一例として、3種類の銘柄の飲み比べを通じて、年数や樽の違い、あるいは地域やブレンドの違いを認識しやすくなり、ウイスキーの個性が捉えやすくなるという組み合わせを14パターン紹介しています。

本書で提案されている組み合わせは、入門書籍という位置付け上、比較的エントリーグレード寄りであり、飲み比べは必ずしもこの組み合わせである必要はありません。
例えば、シングルカスクのもので樽の違いを知るもよし、あるいは同じ銘柄という条件も加えて熟成年数の違いでの影響など、様々なウイスキーをチョイスすることでさらなる違いを楽しむこともできます。

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今回は、そうした飲み比べから1つ価格帯を上げて、18年前後のブレンデッドウイスキーに焦点を当ててみます。
現在販売されている同グレードのスコッチウイスキーは、
・ジョニーウォーカー18年
・デュワーズ18年
・グランツ18年
・バランタイン17年
・シーバスリーガル18年
・カティサーク18年

辺りが有名どころです。(あとマイナーどころですが、日本市場に在庫があるシンジケートが17年熟成です。)
この6種類、単品で飲んでみると熟成年数もあってそれなりなのですが、どの銘柄がどのようなキャラクター付けで作られているかは、ちゃんと飲み比べたことはなく。
先日BAR LIVETで飲んでいたところ、マスターとブラインドでのブレンデッドのキャラクターの捉え方の話題となり、ちょうどいいので、3種3択のブラインドテイスティングでブレンデッドを出題してもらいました。

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今回チョイスされた3銘柄を飲んで見た印象は
グランツ18年:まろやかな口当たりからバニラや麦芽系の香味が厚く、スウィートでコクのあるリッチな味わい。
デュワーズ18年:軽やかかつドライで華やかなウッディネス。薄めた蜂蜜を思わせるコクから、ほのかなピートフレーバー。
ジョニーウォーカー18年:木材の削りカスのようなウッディネス、軽いえぐみとドライアプリコットの酸味、余韻にかけて強いピーティーさ。

すべて熟成年数と度数は同じで、違いはそのキャラクターのみですが、構成原酒の違いでピート、麦芽風味、樽感などそれぞれ異なるベクトルがあり、飲み比べることでその違いが強調されてブラインドでも銘柄が分かりやすかったですね。
例えば、グランツはバルヴェニーやキニンヴィの柔らかい麦系の風味と、ポートワイン樽でのフィニッシュがもたらすコクのある甘み。デュワーズはアバフェルディの蜂蜜を思わせるコク、アメリカンコークの華やかさ。ジョニーはタリスカーあたりを思わせる存在感のあるピートフレーバーです。


ブレンデッドは普及価格帯のものもよく考えて作られているとは言え、熟成が短かったり、グレーンが強かったりする部分が時にマイナス要素となって、その銘柄のハウススタイルや目指そうとする香味は、むしろ18年クラスのワンランク上位グレードのほうが分かりやすく表現されていると感じています。

興味あります方、ブラインドかどうかは指定しませんが、今回のように3種の飲み比べをBARで挑戦してみてください。
きっとこれまでにない新たな気づきがあると思いますよ。

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(BAR LIVET は本日2月21日で5周年を迎えた。ちゃっかりオーナーより目だっているバーマンの小倉さん。2号店オープンやオリジナルボトル、そしてウィスクテイルなど、今後のさらなる発展が楽しみ。)

ブラインドテイスティングの考え方について

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今更書くまでもないと思いますが、自分はテイスティングスキル向上のため、率先してブラインドテイスティングを行うようにしています。

ブラインドテイスティングは、通常のテイスティングと何か異なる観点を持つわけではありません。ただしラベルからの情報がないので、このブランドならこれがあるという事前の予測と補正が出来ません。
結果、素の感想が出るのは、言い換えれば感じることが出来た要素と出来ない要素が確認できる、テイスティングのブレや穴を認識することが出来る機会とも言えるわけです。


ブラインド推進派を公言しているのもあって、ウイスキー仲間やブログ読者の皆様から"挑戦状"をぶっこまれたり、個人開催のブラインドテイスティング会に誘ってもらったりと、様々な機会を頂いています。
その結果か、最近は正答率も上がり、やらかす機会も減ってきました。

同時に「テイスティングで何を意識しているか」、「ブラインドテイスティングのポイントは何か」ということも度々話題になります。 
そこで今回の記事では、そのテイスティングイメージを、ブラインドテイスティングの流れに合わせる形で記事にまとめてみます。
こうしたアプローチは個人個々、様々な考え方があるものと思いますので、これが正解と言うつもりはありません。
ただ、説明することで考えがまとまりますし、新しい考え方も取り入れてもっともっと上達していきたいなと。。。
皆様におかれましても、テイスティングに関する考え方のご意見を頂ければ幸いです。 


①テイスティングのポイント
ブラインドではいきなり銘柄や蒸留所を絞り込むようなことはせず、香味構成や、そこから得られるイメージから、以下の項目をそれぞれ個別に絞り込むところからスタートします。
これはオープンテイスティングでも共通する要素であり、地域に見合ったキャラクターはあるか、樽の構成はどうかなどを考えるのは、好みかそうでないか以外に少なからず意識するポイントだと思います。

・地域※
・熟成年数
・蒸留時期
・樽構成
・度数
・その他(加水の有無、特徴的な個性など)
※ブレンデッドと判断される場合は、使われている原酒のどの地域特性が一番強いか。
   
その際、ノージングで香味構成の全体像はおおよそ判断出来ますが、グラスの形状に加え、空間の"匂い"や"気温"などの影響も受けるため、実際に飲んで味わいと含み香から各情報を補正する必要があります。
一部、香りだけで判断できる蒸留所もいくつかあります。ですが、それはかなり狭義なもので、青リンゴとかピートとか、広義な要素から安易に絞り込むのは事故の元。そうやって決め付けて、時に邪推しながら他の項目を予想すると、大概やらかします(笑) 


②得られる情報の整理と捉え方
飲んだ際に得られる情報には、そのまま理解出来るものと、いくつかの要素を踏まえて予測したほうが精度が高まるものがあります。 
前者は"ざっくりとした樽構成"、"度数"、"加水の有無"、そして"酒質の整い具合"です。

樽構成の認識は、まずはシングルカスクで該当する樽構成のウイスキーを飲み、それぞれの樽の個性の傾向を理解しておくことが必要です。
その上で、バレルなのかホグスヘッドなのか、ファーストフィルなのかセカンド以降なのか、複数種類が使われているのかなどの詳細な分析は、後述する熟成の考え方をもとに深掘りすることになります。

度数の捉え方は、ウイスキーの粘性で見るとか、香味のアタックの強さで推定するとか、スタイルは様々あるようですが、自分は"飲み込んだときの喉や口奥のヒリつき具合"で判断しています。
ボトルによっては、度数が低くてもアタックの強さがあるボトルがあったりしますが、不思議と飲み込んだ後に感じる刺激は、度数と比較して一番ブレ幅が少ない印象です。

そして加水の有無については、例えば同じ度数でも度数落ちの43%と加水の43%では、香味の広がり方を始めキャラクターが異なるため、香味の中間での開き具合、口当たりで感じられる質感といった点で推定しています。


例えば、上はシングルカスクで度数落ちのウイスキー(青線)と、加水調整済みのウイスキー(赤線)の、香味の広がり方をイメージした図になります。
度数落ちは口当たりがシャープで、パッと香味が開くのですが、余韻にかけては長続きしない傾向があります。これは熟成によって酒質のボディが削られ、所謂線の細いタイプに仕上がっていることが多いためです。

一方で加水調整した場合は、口当たりの角が取れ、余韻の香味も残りやすくなりますが、効きすぎると中間の変化が消えてしまい、あまり香味が広がりません。
こののっぺりとしたような質感は、強制的に整地されたようにも感じるため、度数落ち=獣道、加水=整地・舗装した道路を、それぞれ歩くようなイメージを持っています。

こうしたイメージを整理することは、熟成に伴う酒質の整い具合を判断する基準にもなります。
加水で無理やり整えたのか、熟成を経てバランスよく整ったのか。。。あるいはまだ若く元気いっぱいなのか(下図)。
近年ではカヴァランのように最初からクセの少ないクリアなニューメイクを作り、早熟でリリースするスタイルが増えている印象があります。
ですが長期間の熟成を経ないと得られない要素、質感はあり、次章ではそうしたウイスキーの熟成由来に関する項目を深掘りします。


③熟成がウイスキーに与える影響
さて、残る項目である"地域"と"熟成年数"
そして前章から引き継ぐ"樽構成の詳細なの推定"は、ブラインドテイスティングにおいて最も経験値が必要な領域であり、ウイスキーの熟成に関する知識が問われる、いわば応用問題です。

熟成年数を予想する際、ありがちな間違いとして「色が濃いから熟成も長い」という考えがあります。 
確かに、カラメル添加やウッドチップなどのイレギュラーを除けば、熟成しないと色はつかないため、目安の一つにはなります。
ですが、精度をあげるにはそこからもう一歩踏み込む必要があります。


上の図、C-①からC-③は、異なる地域に置かれた樽から原酒に溶け出る樽のエキスの量を、熟成年数を横軸にまとめたものです。 

例えば、C-①を台湾、C-②は日本、C-③はスコットランドとします。それぞれ気候が異なる中で、明確に違うのは気温です。
日本は最高気温で30度をゆうに越えますが、スコットランドは20度に届かない。台湾はもっと温暖ですね。
樽材は温度が高いと膨張してエキスを多く出すため、樽の出方は地域によって差が出ることになり。。。これは同じ日本やスコットランド国内でも、鹿児島と北海道で気候が違うように、南ハイランドと北ハイランド・オークニーでは同様に樽の出方が違う傾向があります。

この図で言えば、C-①で10年程度で到達する樽感は、C-③の環境では40年必要ということになり30年も差が出ます。 その時間差は基準とする環境次第ですが、実際そうした原酒が普通にあることは、説明は不要でしょう。 
この熟成期間との関係は樽の種類によっても異なり、例えばファーストフィル(茶線)とセカンドフィル(黄線)では以下のような違いとなって、原酒に現れる傾向があります。

(同じ熟成年数のスコッチモルトでも、樽の種類によって色合いは全く異なる。)


では熟成地域と年数を正しく判断する上で、もう一歩踏み込むとはどういうことか。それは"樽のエキス"に加え、"溶け出た樽材の量"を香味から判断することが一つ目のポイントになります。

先程からグラフに赤い点線がありますが、これが"溶け出る樽材の量"の熟成年数での変化とします。
樽が溶けるとはどういうことか。それを説明するには熟成の概要についても触れておく必要がある訳ですが、ウイスキーを熟成する際の樽を通じた影響は、ざっくり以下の図のように分類出来ます。

(ウイスキーを入れた樽の断面図。左が熟成開始時、右が熟成後)

①樽の呼吸を通じて原酒の一部成分が外に放出される。
②樽材が原酒の一部成分を吸収する。
③樽の呼吸を通じて外部の空気が取り込まれる。
④樽材からエキスが出る、樽材そのものが溶ける。

ここでのポイントは④です。
熟成によって得られる樽感は、樽の材質が持つ成分と、ワインやシェリーなど染み込んでいた成分(エキス)が原酒に溶け込むだけでなく、樽材そのものが溶け出て"樽由来の香味"を構成しているのです。
この樽材そのものが多く溶け出ることで、味わいのドライさ、ざらつきなどが変化してきます。

樽材が溶ける量は、樽詰め度数や地域差などで多少違いはあっても、エキスほど大きな差はないと感じています。
そのため、この2点に注目してウイスキーを整理すると、飲んでいるウイスキーがC-①から③のどれに該当するのかが見えてくることになります。
また、小さい樽であればあるほど貯蔵量に対する接触面積が増えることから樽材が溶ける量は多くなるため、バーボンバレルとホグスヘッドの違いなど、同一分類のカスクサイズの判断材料にもなります。(本編とはあまり関係がないですが、ミニ樽による長期熟成が難しい理由の一つでもあります。)

もう一つ、熟成を判断する材料となるのが酒質の変化です。
樽熟成による影響を通じて、ウイスキーは樽感を得る一方で、持って生まれた要素は良いも悪いも含めて徐々に失っていく。つまり、熟成は"何も足さない何も引かない"ではなく、"足し算と引き算の同時進行"であると言えます。

図中のB-1は元々酒質が強かったもの、B-2は酒質がそこまで強くないもの。例えばラガヴーリンとブナハーブンとすれば、伝わるでしょうか。
ブラインドテイスティングの場合、飲んだ際の口当たりの滑らかさや、香味の広がり方、ボディの強弱などから熟成年数を逆算してイメージする必要があるため、ウイスキーそのものの経験値がより強く求められることになります。

熟成による足し算と引き算の図をまとめると、上記のようにウイスキーによって様々な条件があることがわかります。

それを認識する為には、日頃から若いウイスキーも長期熟成も幅広く飲み、ウイスキーの香味分類以外に、このウイスキーはどういう素性や位置付けのものなのか、らしさはあるのかという点を意識しておくことが上達の近道なのかなと思うのです。


④シングルカスク以外のウイスキーのイメージ
シングルカスクに限定するなら前章までで話は終わりですが、ウイスキーはそれだけじゃ無いですし、もうちょっとだけ続くんじゃ、ということで。

ブレンデッドやシングルモルトウイスキーの場合、樽や原酒が複数種類使われることになるため、シングルカスクのものよりも個性が掴みづらくなる傾向があります。
バーボンバレルとバーボンホグスヘッドなど、近い種類の樽が複数混じって加水されていたりする単一系統タイプはまだマシですが。。。多数の樽が混じって味もそっけも無いグレーンまで大量に加わっているようなブレンデッドの場合、樽構成に関する難易度は一気に上がります。

酒質がちょっとブレるというか、異なる盛り上がり方をする箇所があるというのが同一系統複数樽のイメージ。

赤線は多種多様な原酒が使われたミドルエイジのブレンデッドスコッチ。青線はグレーン増し増しでベースもよくわからない安価なブレンデッドウイスキーのイメージ。

こうしたウイスキーで混ざり合った原酒を一つ一つ分解して分析するなど、今の自分では困難です。
なのでオフィシャルスタンダードのブレンデッドとかを、条件無しのブラインドで出されるほうが、加水も効きまくってるし樽も取りづらいで、正直辛いですね(汗)。

ただ、前章までにまとめた観点から見ると、アタリをつけて行くことは出来るため、後はどこまで深掘り出来るかということになります。
おそらく、ブラインドテイスティング推進派にとっては、課題の一つになることは間違いない領域です。


⑤テイスティングスキル向上のために
さて、上述のように、各項目を個別に考えて整理しろと言っても、取っ掛かりがなければナンノコッチャという話。
その最初のステップになるのが、樽由来の香味の理解です。
それがあると、酒質由来の香味が整理できるようになり、熟成感が。。。と繋がるわけですが、そのポイントになるのがシングルカスクのウイスキーを数多く飲むことだと考えています。 

例えるならオーケストラ。複数の樽や原酒を使ったシングルモルトやブレンデッドは、多くの個性があるため、何がどれ由来なのか紐解くことが困難です。オーケストラを初めて聴いた人が、後で「あの楽器の演奏良かったよね?」と言われても、話についていけないのと同様で、しかしソロパートに限れば話は別です。

日本では各メーカーやインポーターの努力で、様々なボトラーズリリースが流通していて、素性の明確なシングルカスクの調達には事欠きません。また、近年では単一種類の樽で構成されたオフィシャルシングルモルトも増えてきました。

まずはバーボン樽の傾向、シェリー樽の傾向、それと熟成年数をセットという感じで、それぞれの項目ごとに自分の基準をつくることがテイスティングスキル向上に繋がると考えます。
他には、自分でもブレンデッドを作ってみるとか。最近流通が増えてきているウッドスティックを使って樽の成分やそのものがどう溶け出るのかを経験してみるなど、理解を深めるツールは我々の周囲に数多くあると思います。
まだまだ自分も試行錯誤しながら、色々試していきたいですね。


⑥最後に
長々と書いてしまいました。ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
考えてる内容は一通り網羅したつもりですが、わかりにくい表現などは、今後何度も読み直して微修正を加えていくつもりです。

また、今回まとめたような考え方を全飲み手に強制するものではありません。
大事なのは自分に合うか合わないかという直感的なものであって、美味しく楽しく飲めればいいじゃないか、難しく考える必要ないという意見も当然あると思います。
かくいう自分も年中神経を尖らせてテイスティングをしているわけではないですし、お酒を主役にせず、ロックで飲みながら映画を見たり、潤滑油がわりに場の雰囲気まで楽しむような飲み方をするのも大好きです。

ただ、あくまで自分の目指すところとして、ウイスキーが個性を楽しむ酒であり、その個性がウイスキーの魅力であるならば、それを理解したいし余すところなく味わいたい。
そうすると、やはり精度の高いテイスティングスキルはあったほうがいい。レビューブログもやってますしね(笑)。
今日ここに書かせていただいた記事は、そんな自分の考え方のまとめにして、マイルストーンの一つなのです。


追記:本記事を書いていたところ、ブログ読者のWさんから、ブラインドテイスティングサンプルを頂きました。
タイミング良すぎでしょ(笑)
こんな記事書いて、「マイルストーンなのです(キリッ」で締めた直後に、いきなりやらかせない・・・。
いやいや、プレッシャーは最高。こういう時こそ、一層集中できるというもの。順次トライさせて頂きます!

テイスティングに関する連載 第2回 テイスティングの基本

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ACCETORYさんで不定期連載中の「自宅で嗜むテイスティング入門」
その第2回としてテイスティングの基本的な流れをまとめた記事を掲載しました。

自宅で嗜むテイスティング入門(2)
テイスティングの基本

<構成内容>
・ウイスキーのサーブと注ぐ量
・香味の判別として意識すべき要素
・テイスティングの基本的な流れ
・チェイサーと加水


前回は前置き的な内容から、テイスティングの際に準備したい最低限のツールを紹介し、テイスティンググラスを使ってウイスキーの個性を意識しながら飲んでみましょう、という記事を掲載しました。
ただ、何もわからないままで「個性を意識して飲め!」というのも、気合いで空を飛べレベルの根性論と変わらないワケで、今回はテイスティングの流れの中で意識すべき点をいくつか紹介しています。

最初はテイスティングの流れだけまとめる予定でしたが、いざ書き始めてみるとどんどん量が増えてしまい、若干冗長気味な部分もあってこのボリュームに(第一回3000文字、第2回3600文字・・・)。
チェイサーに関する部分とかは分けて書いても良かったかなあ、でもテイスティングのステップで水を飲まないのも不自然だし、色々葛藤して書いては削りをくりかえしました。
次回からは"樽"にフォーカスし、色合い、香味の違いなど、ウイスキーのテイスティングで重要となる要素を、代表的なボトルを紹介しながらまとめていきます。
第3回はバーボン樽、第4回はシェリー樽、第5回は新樽やその他とする予定。樽がひと段落したら、ピートや麦芽風味など原料由来の香味に触れていきますか。後はもう一歩踏み込むためのグラス選びなども、紹介していきたいですね。


自分の考えをこうして記事にまとめてみると、頭の中に構成はあっても、モヤっとした部分も少なからずあるため、「あれ、ここはどうだったかな」といい意味での復習や、教えることによって教えられるような、非常に良い経験になっています。
例えば今回はテイスティングにおいて、どれくらい口に含んでいるのかを、1回毎にグラス重量を計量して確認してみたのですが、1〜2mlと極少量で安定していたのは計って始めてわかったことでした。

記事のほうは2週間毎で1本くらい掲載出来ればいいかなと思っていましたが、1ヶ月間が空いてしまいました。
週刊漫画の連載とかホントスゲーなって思います。
ただ今回は諸々の手続きがあって遅れた部分もあるため、第3回以降はもう少し早く掲載できると思います。
皆様、ACCETORYさんの記事もよろしくお願いします。


テイスティングに関する記事の連載開始について

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WEBメディア「ACCETORY」で、テイスティングに関する記事を不定期連載することとなりました。


ウイスキーを深く知りたい方へ 自宅で嗜むテイスティング入門
https://accetory.jp/articles-452


先方からの依頼は「お酒に興味を持っている方や、ウイスキー初心者が勉強になるような記事」とのこと。幾つか候補を出したところ、テイスティングについてはどうかと、テーマの指定をいただきました。
ただ、テイスティングといっても基本的な作法を紹介するだけなら、専門書籍と大差ない内容になりますし、あまりにコアな内容は初心者向けと言い難く。
それならばと、テイスティングの作法だけでなく、感じられるフレーバー、要素、個性の中でも代表的なものを特集し、それを味わえるボトルを逆引き的に掲載する内容で連載していくことにしました。

第一回目の記事では、環境が整ってなければテイスティングも何もないので、テイスティングをする意義、揃えておきたいツールを紹介しました。
・テイスティングしようぜ。
・テイスティンググラス使ってみよう。
・グラスは専用のグラス拭きで拭こう。
って感じの内容です。

次回以降はテイスティングの基本的な流れ、意識すべき要素について紹介し、上述したフレーバーにフォーカスする流れです。
また、グラスについても形状によるフレーバーの違いや、温度、銘柄による使い分け等、徐々にマニアックな内容も含めていく予定です。


ブログでは前編後編等に分けて記事をUPしたことはありましたが、連載となるのは初めてのこと。
シリーズ全体の構成案をまとめるのと合わせて第一回の記事をUPするのに、依頼を受けてから約1ヶ月弱、随分時間をかけてしまいました。編集部の皆様、お待たせしてしまい申し訳ございません。
(最近ブログの方で1日1記事しかUP出来ていなかったのは、仕事が忙しいだけでなく、こちらの作業に時間を使っていたというのもあるのです。)

自分のテイスティングに関する考え方、捉え方はいつかまとめてみたいと思っていましたので、大変いい機会を頂きました。
もちろん私のテイスティングは完璧なものなどではなく、まだまだ未熟な部分は多いと思いますが、これまでの経験を文字にすることで、さらなるレベルアップに繋げていければと。そして最終的にはウイスキーではあまり見ない「テイスティングの手引き」としてまとめていければと考えています。

連載はこちらのペースで行うため、決まった日時にUPされるものではありませんが、2週間に1本くらいのペースで書いていく予定です。
皆様、ACCETORYでの記事もよろしくお願いいたします。

テイスティング雑談 脱初心者となるための条件

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「ウイスキー初心者」という単語があります。
グーグル検索を書けると446000件もヒットしますし、各種イベントやネット上の記事だけでなく、会話の端々で「自分はまだ初心者なので」という表現で使われる事もあります。
意味するところは個人のウイスキー飲酒歴やドリンカーとしての位置づけを指すことが多いのですが、謙遜して使っているケースも多い中で、実際どの段階まで行けば脱初心者と言えるのか。
今回は、自分の周囲に居る「ウイスキーに関する造詣が深い」方々に共通している能力から、自分なりの考えをまとめてみます。


●脱初心者の基準
ウイスキーだけでなく様々な分野において、知識と経験、それがある一定のラインを越えれば脱初心者である、ということに異論はないと思います。
しかしその一定のラインというのがあいまいで、だいたいの場合は自認となります。
音楽など目に見える技術に直結するものだと、これが出来たら(弾けたら)というようなものはありますが、ウイスキーにあるとすれば資格試験くらいです。しかし経験も伴わなければ条件とはいえませんし、じゃあ1000本くらい飲めば脱初心者なのかと言われれても、ただ飲めば良いってワケでもありません。
こうした背景を踏まえ、自分が考えている基準は以下の2点です。

①ボトルのスペック(蒸留所、熟成年数、流通時期、度数、樽など)で、香味の予測が出来るようになる。
②好きと嫌い、良いと悪いの区別が出来るようになる。


①ボトルのスペックで香味の予測が出来るようになる。
誤解を招くかもしれないので最初に断りを入れると「飲まなくてもわかるようになる」と述べている訳ではありません。飲んできた経験と学んだ知識が結びついて整理された結果、得られる副産物が「予測」です。
ウイスキー飲み始めのころはボトルを見て「どんな味なんだろう」と、まさに右も左もわからない状況にあります。
それが、オフィシャルも、ボトラーズも、オールドボトルも飲み、ただ飲むだけでなく蒸留所やウイスキーを構成する要素について経験し、知識も得ていくと、自然と予測できる範囲が広がっていきます。
この範囲が全蒸留所とは言いませんが、少なくとも主要な銘柄の半分から1/3くらい予測がつくレベルになっていると、知識と経験が一定のラインを越えていると言えるのではないでしょうか。

BARや酒屋、ウイスキー仲間とのコミュニケーションで困ることが少なくなり、ブラインドテイスティングをやっても正解にたどり着くプロセスが明確化してきます。
他方で、知識と経験が増えてくると「このボトルはこういう香味」と、知らず知らずにそれを探しに言ってしまい、別な要素について盲目的になることもしばしば見られるように思います。 以前の記事で述べた「情報を飲んでいる」という状況になりがちなのは、知らないことが多い初心者より、この時点のほうが多いのかもしれません。
見えるが故の難しさと言うやつですね。

②好きと嫌い、良いと悪いの区別が出来るようになる。
何にしてもそうですが、まず人間は本能的に物事を整理します。
その代表的なものが、純粋に「好き」か「嫌い」か、という整理です。
それに対して、様々な情報から理論的に判断するのが「良い」と「悪い」になります。
ウイスキーを飲み始めたばかりの方は、好きか嫌いかは判断できても、何が良いのか悪いのか、知識と経験が伴わないため区別ができません。
 
①と同じ内容になってきますが、ウイスキーについての知識と、様々な香味に関する経験が結びつくことで、好きか嫌いかという基準以外に、こうだから良い、こうだから悪いという、もう一つの評価基準の構築に繋がっていきます。
例えば「このウイスキーはスモーキーで苦手だけど、この蒸留所のハウススタイルはしっかりと出ていて、シングルモルトとしては良いものだと思う。」とかですね。

話は少々脱線しますが、このブログでは、この2軸のハイブリットによってボトルの評価がされています。
当初は「良い、悪い」で評価しようか考えていましたが、個人ブログである以上、書き手の気持ちが見えないのもつまらないし、「好き嫌い」を完全に無視するのも不可能です。
よって、良い悪いはベースの4点として固定し、よほど完成度の高いものはその点でも加点しますが、基本的には好き嫌いで加点するようにしています。


●脱初心者の後は?
脱初心者の条件として自分が考えている2点をまとめましたが、通常なら初心者というランクがあれば、中級、上級とさらなる上位クラスもあるのだと思います。
しかし、ウイスキーが嗜好品である以上、進む道は飲み手の数だけあり、こだわりも当然あります。そのため、ある一定以上の能力があるウイスキードリンカーを細分化したり比較したりする評価軸は、意味が無いと考えています。

脱初心者の条件などと大それた事をまとめていると、そこまでいって初めて色々なことを試して良いというように読めてしまうかもしれません。しかし実際はそうではなく、自分の好きなようにやっていて、気がついたら「そういう領域にいた」という話。多少効率の良いやり方はあるんでしょうけど、趣味に効率を求める必要も無く、最初から自分の思う道を進むべきと考えます。
ひたすら飲みまくるもよし、知識を深めていくも良し、既存の枠から飛び出して美味しさを追求するも良し、楽しみ方は人それぞれであるわけですから、それは書道や茶道のごとく、自分なりの考えを突き詰めていく世界になります。
そこに明確なゴールはありませんし、誰が正しいわけでもない、すべては当人の考え方次第です。
ある種の美学、とも言えるかもしれませんね。

なんだかえらそうに語ってしまいましたが今回はこの辺で。

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