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ティーチャーズ ハイランドクリーム 1980年代流通 特級表記 43%

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TEACHER'S 
HIGHLAND CREAM 
SCOTCH WHISKY 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際企画テイスティング 
時期:開封後数ヶ月 
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★(5)

香り:ウェハースやおこしのような乾いた甘さ、乾燥した穀物、ほのかにべっこう飴。土っぽさや根菜系のニュアンスを伴うピート香。粗さもあるが個性の立った香り立ち。

味:ややクリーミーな口当たり。モルティーさと穀物の甘味、ザラメ、微かにフローラルな要素もあるが、基本的には内陸系のモルティーさとグレーンの甘味。そこから粗さとほのかに根菜を思わせる要素を伴うピーティーなフレーバー。余韻はスモーキーでピリピリとした刺激、ドライなフィニッシュ。

クリームという名称とは裏腹に、比較的癖の強いブレンドである。全体的にはグレーン強めで若くピーティーなアードモアとマイルドな内陸系原酒といった組み合わせ。序盤はクリーミーだが後半は粗さが目立ち、加水するとややドライだがまとまりが良くなる。ストレートよりもハイボールで楽しみたい銘柄。

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ティーチャーズ、ハイランドクリーム量産型。
同ブランドは1972年にイギリスでの売り上げで100万ケースをはじめて達成し、その後の順調に拡大。1976年にアライド傘下となり販路が強化されると1980年代にはイギリス市場におけるシェア16%、第2位の売り上げを記録するだけでなく、アジア、アメリカ市場にも積極に展開するなど世界的なブランドとなっていた・・・今回のテイスティングアイテムはその時代のものです。
70年代のものとはラベルデザインが異なっており、90年代とはボトル形状からそもそも異なるため、時代判定しやすい銘柄だと思います。

ウイスキーというのはすぐに作れず、熟成期間を考えると仕上がるのに5年、10年といった時間がかかります。
一方で、拡張路線の予測など中々出来ないことから、元々の基準では商品の生産が間に合わず・・・グループ傘下のブレンド向け原酒で補填したり、あるいは選定基準が甘くなったりと、以前の味が維持されなくなることとなります。
結果、味が良くなるケースが無いわけではないものの、シェア増加と半比例するように”味が落ちる”という現象が起きます。

この辺はジャパニーズで現在進行形の現象なので、今さらではありますが、ティーチャーズ・ハイランドクリームも、まさに後者に該当した銘柄。60年代、70年代、そして今回の80年代と比較すると、マイルドでスモーキーな味わいのなかに、半端な熟成感による原酒の荒さが目立つようになってきます。
特に70年代からの変化は著しい。現行品のティーチャーズはこの点逆の意味で振りきれていて、若い原酒がガンガン使われているような構成ですが、熟成による減衰が少ないため、構成原酒であるアードモア由来のピーティーさが旧ボトル以上に際立っている。値段が値段だし、ハイボールで飲むならこういうのもアリかなと思える仕上がりで、一部コアなファンを獲得している銘柄ともなっています。

個人的には1970年代でギリギリ。1980~1990年代のティーチャーズは、その点ストレートではちょっと中途半端かなという評価。上位ブランドのティーチャーズ12年・ロイヤルハイランド共々ハイボール向けの作りと言え、そうなるとマイルドなスモーキーさが悪くない。肩肘張らずにガブっと飲んでしまうのが良いと思います。

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今日のオマケ:トルブレック・ウッドカッターズ・シラーズ 2017

ウイスキー仲間のH氏がオススメしていた銘柄。オーストラリアのシラーズ。今回のものはスタンダードグレードですが、上位グレードの商品は評論家含めて評価の高い、お墨付きなワイン。写真が悪く、ただ黒い液体になっていますが、実際は赤と紫を含む、フルボディなシラーズらしい色合い。
しっとりとした口当たりから、新世界産らしく濃い甘味は、ブルーベリージャムやベリー感。そこからスパイス、微かにカカオチョコレート、徐々に滑らかなタンニンが感じられ、嫌みのない濃厚さが楽しめる1本。

新世界のワインだと、濃い味わいに新樽の強い香りがついて、こってこての味わいになっているものもしばしばありますが、これは樽の違いかウッディさが過度に主張せず、滑らかなタンニンと合わせて、濃いなりにまとまりの良い仕上がりです。
ウイスキー好きが好むベリー系のフレーバーも健在。肉に合わせるとなお美味しい1本でした。

ティーチャーズ セレクト 40% サントリーブレンダーが手掛けたスコッチ

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TEACHER'S SELECT 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
PEATED FLAVOUR WITH RICH SWEETNESS
700ml 40%

香味とも若く刺々した酸味と、根菜っぽさのあるピートフレーバーが主体だが、味は多少グレーンが効いてマイルドな甘味もある。主体は若いアードモアなのだろう。モルティーでスモーキーな個性が思った以上に備わっている。

使われている原酒は5年前後といったところだろう。樽香は淡くプレーン。ストレートでは粗さが目立つものの、飲めないほどではない。むしろ1000円ちょっとのスコッチとしては、しっかりとモルト由来のピーティーな個性が備わっている点が評価出来る。
このウイスキーが本領を発揮するのはハイボール。ピートを含めた原酒の香味が全体的に軽くなり、ライト寄りに振れるものの、逆に粗さも目立たずグイグイ飲めて食中酒として使うには丁度良い。

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ティーチャーズの日本向け限定品。ティーチャーズはビーム社傘下のブレンデッド銘柄であり、2014年のサントリーによる買収でさらに結び付きがさらに強くなっていました。
セレクトは元々コンビニ限定で2018年から販売されていましたが、2019年4月から酒販店向けにも展開されることとなった銘柄です。

流石にコンビニの酒棚にあればリリースそのものは認識していましたが、「日本のブレンダーが手掛けた」という話は知らず。だったら飲んでみようかと。
最も、手掛けたといってもどの程度関わっているのか。。。確認したところ、チーフブレンダーを含むサントリーのブレンダー陣が本当にこの製品をブレンドしているのだそうです。
これって凄いことだと思うんですよね。日本向け製品とはいえ、ティーチャーズのような100年以上の歴史があり、スコッチウイスキーを代表するようなメージャー銘柄を、日本のブレンダーが手掛けるというのは初の事例ではないでしょうか。(確認したところサントリーとしては初とのこと。他社も無いでしょうから、公式には日本初ということに。)

良い原酒があっても、ブレンド次第ではどうにもなりません。まして制限の多い価格帯ではなおのこと。
近年、日本のウイスキーはスコットランドを越える高い評価を受けており、ブレンデッドウイスキーとブレンド技術もまた同様に評価されていたところ。自国向けボトルといっても、技術とそれが認められていなければ商売としては成り立たない仕事ですから、またひとつ日本のウイスキーメーカーが歴史を作ったように感じたのです。

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前置きが長くなりました。元々、現行品のティーチャーズ・ハイランドクリームは1000円程度の低価格ウイスキーですが、価格を考えると実に良く出来ている銘柄と言えます。
キーモルトであるアードモア由来のピーティーさが良い仕事をしており、スモーキーフレーバーをしっかりと感じられるのが最大の特徴。旧ラベルの方がマイルドとか、コクがあったとか、そういう意見もあるでしょうけれど、現行品は現行品で良くできています。

ハイランドクリームのモルト比率は45%で、40種類の異なる原酒が使われているそうですが、そのうちアードモアの若い原酒の比率は結構高いように思います。
また今回のセレクトも同じ系統の作りですが、ハイランドクリームのほうがその他ハイランド系の原酒が仕事をして若干多彩というか、セレクトのほうが奥行きが軽いというか、それはハイボールにするとより顕著に感じられます。
メーカーコメントの「ほのかなスモーキーさ、優しい甘み」は、ハイボールにしたときのコメントなんだろうなと。
飲みごたえはありませんが、広く受け入れられる要素は感じられる。使い勝手の良い1本です。飲み屋のハイボールとか、これで良いんだけどなー。


以下雑談。
最近、イベントとかでお会いする方々に「普段何飲まれてるんですか?」と聞かれることが何回かあったのですが、現行からオールドまで幅広く飲んでます。
それこそ、今回のような現行品の普及価格帯ブレンデッドもその一つ。以前は、失礼ながら「現行品なんて」と思っていた時代もあったのですが。。。
ハイボールだとウイスキーもグラスも冷やして作ると、香りのスモーキーさや味がぼやけず、それでいてスッキリとした仕上がりになるので、食中酒やお風呂上がりなど、案外良いなと使っているのです。

ティーチャーズ ハイランドクリーム 1950年代流通 43%

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TEACHERS 
HIGHLAND CREAM 
Perfection of Blended Scotch Whisky 
1950-1960's 
750ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週刊程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:蜂蜜入りの洋菓子を思わせる軽い穀物感を伴う、しっとりとしたスウィートなアロマ。古典的な麦芽香、古いウェアハウス、角のとれたスモーキーさが奥から開いてくる。

味:スムーズでメローな口当たり。薄めたキャラメルソースやカステラの茶色い部分。微かにオランジェットのしっとりとした酸味、麦由来の風味が徐々にピーティーなほろ苦さへと変わり、存在感を増していく。余韻はスモーキーで内陸の土っぽいピーティーさ、染み込むように長く続く。

しっかりと原酒由来の個性が備わった、モルティーでスモーキーなブレンデッド。麦芽風味は素朴ながら厚みがあり、ピートフレーバーと混ざり合う余韻が素晴らしい。ハイボールも実に旨い。

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ティーチャーズをリリースするウィリアム・ティーチャー・サンズ社は、1957年(別資料では1962年)にグレンドロナックを買収。1970年代にかけて生産量を増やし、1976年にアライド社の傘下に入ったことで販路を広げ、世界的なブランドに成長します。

今回のボトルは、そのグレンドロナック蒸留所の買収が行われたかどうかという時期のアメリカ流通品。確定しているキーモルトは、同社が1897年に創業したアードモアで、これは現代まで変わらずティーチャーズのフレーバーの軸となっている原酒です。
一方モルト比率は現行品のハイランドクリームが45%で、30種類の異なる原酒が使われているとのことですが、かつてはクラシックスタイルの65%だったとする説もあります。香味から推察するに、1960年代以前は65%、原酒の種類は30も使っていないのではないかと思います。

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(このティーチャーズ、ラベル裏にはアードモア蒸留所のイラストが書かれており、結び付きの強さを感じさせる。なによりこういう渋い工夫には心惹かれる。)

ティーチャーズに限らず、当時流通していたブレンデッドを飲むと、特に自社で蒸留所を持っているブランドは、そのモルトの個性が強く出ているものが多いように思います。
当たり前じゃんと思うかもしれませんが、現行品よりも明確に強いという意味です。
これは当時の原酒の方が、今より個性が強かったということに加え、流通や製造規模の関係から、今ほど使われている原酒の種類が多くなかった。ブレンドレシピが多少異なっているのではないかと思うのです。

原酒の種類は混ぜれば混ぜるほど、元の個性を捉えづらくなっていく傾向があります。
そして例えばバランタインやホワイトホース、ジョニーウォーカー等、1960年代にかけて流通したブレンデッドは素晴らしいものが多いのですが、このティーチャーズも同様。(1950年代は戦争の影響が原酒に出たのか、微妙なものもいくつかアリ。)
共通するのは存在感はあるが過度に主張しない、モルティーさとスモーキーフレーバーのバランス。このバランスがグレーンを加えたブレンドの魅力であり、これぞスコッチウイスキーと言えるブレンデッド達。見かけたら是非飲んで欲しい1本です。

ティーチャーズ ハイランドクリーム 1970年代流通 特級表記 43%

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TEACHER'S
HIGHLAND CREAM
1970's
760ml 43%

グラス:SK2
時期:不明
場所:自宅@小瓶購入 Dornoch
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:ザラメやべっこう飴のような甘いアロマ。表面的にはうっすらと熟成したエステリーなモルティーさを感じるが、枯れた草、奥には焦げたトースト、じわじわとスモーキーなニュアンスも感じられる。

味:古酒感を伴う乾煎りした麦芽風味、蜂蜜や鼈甲飴を思わせるコクのある口当たり、合わせて香り同様にピーティーなほろ苦さが土っぽさと合わせて広がってくる。
余韻はほろ苦くスモーキー、ピリッとした刺激を伴い、染み込むように長く続く。

適度な厚みがありながら、マイルドで負担なくスイスイとのめてしまうハイランドタイプのブレンデッド。ピートフレーバーもしっかり備わっていて、現行品に通じるスタイルを感じさせるが、酒質の違いは明確。ハイボールも無難に美味い。

通称「スコッチの教師」とも呼ばれるメジャーブランドの一つ。ティーチャーズ・ハイランドクリーム(以下、ティーチャーズ)のブランド名が登録されたのが1884年とのことで、100年以上を遡る歴史のある銘柄であり、現在はアードモアをベースとしたスモーキーなブレンデッドとして知られています。

1960年代以前に流通したティーチャーズは、トールボトルに自社で発明したとされる木の頭をつけたコルクキャップを用いていましたが、今回テイスティングした1970年代からは、現行品のルーツとなる平べったいボトルデザインとスクリューキャップになり、時代と共にアレンジされていくも現在まで使われ続けています。
また、1970年代はラベル中央にBOTTLED IN SCOTLAND と赤字で書かれているのも特徴。ラベルデザイン、キャップ形状などで流通時期のわかりやすいブランドでもあります。

1970年代のティーチャーズ・サンズ社は、1962年にグレンドロナック蒸留所を買収し、アードモアと共にキーモルトとしていた時代にあたります。グレンドロナックと言えばシェリー樽熟成のイメージが強いと思いますが、ブレンドに使われているのは複数回使われた樽によるプレーンなタイプの原酒でしょう。アードモアと合わせて、モルティーでスモーキーな風味が主体の構成となっています。
派手さはないですが、この手の味わいはオールドブレンデッドの良さをしみじみ感じさせてくれます。

一方、1960年代流通のティーチャーズと比較すると、グレーン感が強くなった印象も受けるのがこの時代からの特徴。1968年に上位グレードとなるティーチャーズ・ロイヤルハイランド12年のリリース、1976年にはアライドグループの一員となって国際的な販路と原酒供給のバックホーンを得るなど、拡張路線をとっていた時期でもあり、少なからず原酒の比率も変わっていたのではないかと推測しています。

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(ティーチャーズ 1960年代以前 アメリカ流通品。ラベルの裏面にはキーモルトかつティーチャーズ・サンズ社が創業のアードモア蒸留所が描かれている。)

今回のボトルは、これまでも何度か利用している50ml Whisky Shop Dornochさんで購入しました。
こちらのショップは現行品のみならず、オールドボトルの販売も50mlから行なっており、今回はブログ掲載用にテイスティングを載せていなかった銘柄を何種類か購入。以前飲んだけど、写真もテイスティングもとってないボトルって結構あるんですよね(笑)。
50mlあるとストレート飲んで、少量でハイボールも飲めて、復習や購入前の予習にはちょうど良い感じです。

ティーチャーズ ロイヤルハイランド 12年 1980年代後期流通

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TEACHER’S 
Royal highland 
12 years old 
1980’s 
43% 1liter 
評価:★★★★★(5) 

香り:ドライなピートフレーバー、燻した麦芽、青リンゴ、微かにカラメルを思わせる甘さ。穏やかなグレーン風味。

味:とろりとした口当たり。シリアル、ホットケーキシロップや青みがかった瓜の甘みから、穀物系のエグミ、徐々に土っぽいピートフレーバーでスモーキーな風味が開いてくる。かみごたえのある味わい。余韻はピーティーでビター。あっさりしている。

 
ティーチャーズロイヤルハイランドはグレンドロナックの比率が高く、とろりとした甘味豊なブレンデッド・・・らしいのですが、シェリー感の濃淡については流通時期によるところが大きく、かつ現在のドロナックを象徴するようなこってりシェリーのボトルは、まだ出会ったことがありません。
どちらかというとバランス系のブレンデッドであり、特に1980年代についてはその傾向が強いです。
 
今回のボトルは、その1980年代の後期あるいは1990年頃の本国向け。日本国内向けの正規輸入もあり、比較的見かけるオールドボトルの一つ。
ドロナックというよりアードモアを思わせるピートフレーバーの存在感があり、甘味は平均的。ボディもそこまで薄くなく、微かに近年系ブレンドにありがちなえぐみも感じますが、全体的にはバランスの良い味に仕上がっています。
 
一方、今回のボトルと同じラベルデザインでも、古いものだと1970年代後期~1980年頃の760ml仕様まであるため、初期と後期ではさすがに味に違いが見られます。
数年前に1本開けて飲んだものは、1980年代初期から中期と思われる750mlの従価特級表記で、今回のボトルよりは甘味とコクを強く感じました。
ドロナックといってもシングルモルトにはこってりタイプと淡いタイプの2パターンありましたし、アードモアもありますから、ブレンド比率による違いもあったのでしょう。ティーチャーズは、作られたブレンドの味が変わらないことで「スコッチの先生」と呼ばれたブレンダーに由来を持つ銘柄とはいえ、時代時代の流れには逆らえなかったようです。
 
ちなみに、1970年代中ごろよりさらに古いボトルとなると、シール材が銀色、青地だった12年表記も銀色と、メタリックな色合いが強くなります。このボトルもまた国内流通はありましたが、数が少なかったためか現在はほとんど見かけません。見かけたら飲んでみたいボトルの一つです。

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