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グレンロセス 36年 1986-2022 Wu Dram Clan 45.6% #2125

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GLENROTHES 
Wu Dram Clan 
Aged 36 years 
Distilled 1986/03 
Bottled 2022/11 
Cas type Bourbon Hogshead #2125 
700ml 45.6% 

評価:★★★★★★★(7)

トップノートははっきりとした華やかさ、アップルタルトや熟した黄桃から、ナッツ、かすかに干し草を思わせる枯れたウッディネスへと移る。
口当たりは軽やかだが、徐々にねっとりとした黄色系の果実、濃縮したオークフレーバーが麦芽風味の残滓を伴って広がる。余韻は華やか、黄色系果実を思わせる甘酸っぱさ、かすかに古典的内陸モルトを思わせる麦芽風味を伴い、染みこむように長く続く。

アメリカンホワイトオーク・ホグスヘッド樽で熟成した、長熟グレンロセスの真骨頂とも言える溢れんばかりの華やかさ、フルーティーさ、そして枯れたようなニュアンスが特徴の1本。度数は45%台まで落ちているが、枯れ感が強くならず、華やかさとフルーティーさを強調したような味わいは、この時代の酒質が麦芽風味が厚かったことと、樽から良い形で影響を受けた結果だろう。
香味の傾向としては、ボトラーズのブランドは違うが、Old&Rareのプラチナシリーズあたりに有りそうなクオリティ。選定者のこだわりを感じる1本である。

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1980〜90年代蒸留で、30年オーバーの熟成。という当たり前の事実を、年齢的な理由から認めたくない昨今。
そんなオッサンちっくな、時間の流れに取り残された心情だけなら良いのですが、もう一つ認めたくないのがボトラーズの原酒事情。
80年代は多くの蒸留所が閉鎖したように、スコッチ業界全体で生産量を調整していた時期にあたり、そこに現在の世界的なウイスキー需要増がダブルパンチとなって、原酒自体の入手が困難で価格も青天井状態…と、難儀な状況となっています。

しかし言うても冬の時代、谷間の世代の80年代。だったらオールドを買えば良いのではないか、という意見もあります。
確かに、1980年代のスコッチモルトは、黄金時代とされた60年代、71、72、76と当たり銘柄で話題になる70年代からすれば、閉鎖蒸留年以外であまり話題にならない世代です。(あるのはクライヌリッシュの82くらい。アイラはボウモア以外安定していますが…。)

個人的な感覚で言えば、80年代の内陸モルトは生産調整があったからか、出回った樽や麦芽品種の問題か、何か一つ原因というわけではないのでしょうが、麦感は出ているのですが果実味や華やかさ等に乏しく、特徴に欠ける原酒が多い、あまり勢いのない世代という印象でした。
また、グレンロセスに限れば、オフィシャルから蒸留年毎のリリースがあったこともあり、80年代のビンテージで10〜20年熟成品が珍しくありません。
味も当時は70年代に比べたら平凡だった結果、86年ビンテージなんて・・・といったら失礼ですが、少なくともブーム前からウイスキーを飲んでいたコアな愛好家にとっては、オールド買えばという意見も理解できてしまいます。

ですが今回のグレンロセスに限らず、80年代蒸留の30年熟成オーバーがここ数年ちらほら出て来ており、飲んでみると結構良いじゃん、みんな好きな味になってるじゃんと、あまり刺さらなかった10年前と比較して、その仕上がりの良さに驚かされます。
やはり長期熟成は偉大…というか、下地の酒質、麦芽風味があってこその熟成ですね。
今回のロセスも、ともすれば線が細く枯れ感が強くなりがちなところ、麦芽風味が残っていることで強い樽由来の要素を支え、勢いがなかったことが逆に染み込むような余韻に繋がった、この世代だからこその味わい。力強さはないがしみじみ美味い。

人間で言えば、トレンドを押さえた都会的なファッションに身を包んでいるが、中身は落ち着きのあるカッコ良いミドルエイジ。。。
同じ世代の生まれなだけに、思い入れもある80年代モルト。こんなところでダラダラ続いちゃいそうですが、書き出しはおじさん構文で始まったレビューですから、締めも同様に。
ではまた次のレビューで。

グレンロセス 23年 1996-2019 スウィートギャラリー(萌えボトル)2nd 53%

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GLENROTHES 
Sweet Gallery 
Aged 23 years 
Distilled 1996 
Bottled 2019 
Cask type Hogshead 
700ml 53% 

グラス:グレンケアン
場所:BAR ヒーロー(立ち飲み屋喜楽)
時期:開封直後
評価:★★★★★★(6)

香り:オーキーでドライ。薄めた蜂蜜、レモンクリームや洋梨を思わせる甘やかな香りと共に、乾燥した牧草、い草のような植物っぽさに通じる癖のあるウッディネスが全面に感じられる。

味:スムーズでウッディ、バニラや洋梨のピューレ、香り同様の植物感。酒質はややライトで淡麗気味だが、徐々に口のなかでやわらかい果実系の甘味が広がる。
余韻はウッディでドライ、ハニージンジャー、微かなハーブ香を伴う。

某ボトラーズのリリースにしては、オフィシャル系統のロセスらしい個性を備えたリリース。華やかなオーキーさもあるが、樽由来の乾いたウッディネスが酒質由来の要素と合わさり独特の植物感と蜂蜜のような甘さが中心に感じられる。加水すると植物感が軽減されて洋梨を思わせる柔らかい甘さが立つが、味は多少水っぽさが出てしまう。

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バックバーに置くにはちょっと恥ずかしいウイスキーがコンセプトの、ファミリー企画プレゼンツ、スウィートギャラリーシリーズ。セカンドリリースを手掛けるイラストレーターは横田守氏です。
なんというか、同氏の得意ジャンルとも言えるけしからんエルフのお姉さんですね。某転生系スライムが「エ◯フ!」と興奮しそうなくらいにはけしからんです。

これまでウイスキーに関しては食欲というか、所謂物欲、収集欲の域を出ないジャンルでした。
それが漫画タイアップラベルに端を発し、いよいよ萌え系、アダルト系との組み合わせに進出しつつあるのは、同様の事例が既に多くのジャンルで見られるようになった日本においては、自然な流れなのかもしれません。
例えば自動車レースでは、痛車と呼ばれるカーペイントを採用しているチームが2000年代から登場し、一部は強豪チームにまで成長。新しいファン層を同業界として獲得しているというのは有名な話です。

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(スウィートギャラリーシリーズ第一弾。仙道ますみ氏の描いた、おさわり厳禁ラベル。リリース意図に反して意外にカウンターやバックバーに置きやすかったという声も。。。中身のモートラックはフルーティーで飲みやすく、完成度の高い1本。)

そうした流れをウイスキー業界も取り入れるべきかというと、一見ウイスキーと無関係なタイアップに頼らなければリリースを差別化出来ない現状に対する、複雑な心境を持つ方もいらっしゃるとは思います。
ただこの手のボトルは中身が残念だとラベルに頼った分蔑まれる結果にもなるため、実は諸刃之剣です。サンプル選定は厳しく行っているとの話で、今回のボトルも前作に引き続き悪いものではありません。

テイスティングの際、ウイスキー仲間に勝手に注文されており、グラスの中身を知らないブラインド状態でノージングしたのですが、「これロセスでしょ?」と言える程に、近年のオフィシャル系統のキャラクターが感じられたのが印象的。原酒の出本は"ここ"という噂は聞いていますが、それでホグスヘッドとの組み合わせであればもっと露骨にリキュールのような甘さや華やかさがあってもいい中で、第一印象はハウススタイルが強く感じられたわけです。
ただ開封直後もあって、多少の固さも感じられており、これが今後開いてくると上記のフレーバーが主張してくるかもしれません。

なお、今回のエルフさんラベル。イメージは「朝」。
そして既にスウィートギャラリーシリーズ第三弾発売が予定されているそうで、次回作のラベルイメージは「夜」。結構すごいとも聞いています。
すごい。。。ってなにがどういうことなの?という疑問はさておき、中身も朝と夜なら、次はシェリー系濃いめ、とかでしょうか。
見たいような見たくないような、次回に続くとして今日はこの辺りで。

グレンロセス 39年 1969-2008 GM 43%

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THE MACPHAIL'S COLLECTION
GLENROTHES
Aged 38-39years
Distilled 1969
Bottled 2008
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6ー7)

香り:濃厚でしっとりとした甘い香り立ち。カラメルソース、レーズンや微かにベリー系の要素も感じられる角のとれたウッディネス。古いウェアハウスのような落ち着いたアロマでもある。

味:マイルドな口当たり。こってりとしたカラメルソースを思わせる甘みから、中間は若干のウッディな渋味はあるが圧殺されて変化に乏しく、酒質そのものは大分軽い。余韻はダークフルーツやキャラメルソースの酸味と熟した果実、濃厚な甘み。タンニンが染み込むようにビターでウッディなフィニッシュ。

まさにGMシェリーという、カラメルソースのような味わいがこてこてのモルト。香りは素晴らしく文句なく★7ですが、味は元々の酒質の繊細さが加水で慣らされてるところに、樽由来の要素も加わって圧殺されて変化に乏しい。甘みも少々くどいが、シガーと合わせるにはちょうど良い。


今となっては懐かしいボトル。まさにこのボトルがリリースされた10年前は、このシリーズ含めGMのリリースは普通に店頭にあって、愛好家からは「え、GM加水なんて買うの?」「安パイすぎじゃね?」って言われるくらいの位置付けだったように記憶しています。

というのもGMの60年代蒸留で、ストラスアイラやグレングラントなどの長熟リリースは、大多数がカラメルをがっつり添加したような印象を受ける同じような味(通称・GMシェリー味※)がして、大きく外れない代わりに変化に乏しいのが、安定感という点で良さでもあり、弱点でもあったわけです。
※カラメルは味がしないため、実際はカラメル添加の影響というより、樽の処理や入手先に違いがあるのだと推察。

一方、このGMが大量にリリースしていたシェリー系の香味は、1980年代後半辺りの蒸留時期から急に数が減っており、今ではほとんど見なくなってしまいました。
そのため、最近飲み始めた人だとGMシェリー味と言われてもピンと来ないか、加水の緩いリフィルシェリーって方が該当してしまうかもしれません。

この樽使いの系統が1980年代を境に変わった背景を推察すると、自分の考えは以下の2点。
使用済みシェリー樽に、シェリー濃縮液をリンスする、パハレテ樽が1989年に禁止されたため、入手できなくなったという可能性。
そしてもう一つがこちらも1989年、クリーム・シェリーの業界最大手ジョン・ハーヴェイ社の製造拠点が、イギリスからポルトガルに移った(あとは需要が減った)ことで、スペインからの輸送・保管用の樽が不要となり、手に入らなくなったという可能性です。
今となっては真相は闇のなかですが、GM シェリー味の妙に甘みが強く、べたつくような特徴的な味わいという特徴と、近年見かけることが少なくなったという流通状況(樽が入手できなくなった)という条件から、どちらも矛盾はありません

この系統のリリースは個人的に、味はそこまで好みではないものの、時々無性に飲みたくなります。
特に今回のグレンロセスは、元々酒質が繊細で厚みがあるわけではないため、完全にGM味に上塗りされてしまっています。これがロングモーンとかだと余韻に酒質由来の熟したようなフルーティーさが出て、十分美味しいんんですけどね。
そんなわけで暫くは癒し系寝酒として楽しもうと思います。


以下、雑談。
今回のボトルは、先日仲間内での持ちより会用に開封した1本。遠方から来る友人が、この手の味を好きだったのでチョイス。懐かしく、スイスイ飲めるのでたまには悪くない。
その他、低温調理のローストビーフの差し入れがあるとのことだったので、赤ワインも1本。マルチアーノ・アボーナのバローロはベリーなどの果実香が素晴らしく、熟成を経て角も取れており、良い買い物だったなと思います。

気心知れた仲間との、雑な飲み会という位置付けでの招聘でしたが、気がつけばウイスキーも結構凄いラインナップ。
大いに飲み食いし、わいわい騒いで、充実した時間を過ごすことができました。
お酒が醸す人の繋がり。やはり良いですね。

グレンロセス 30年 1975-2006 オフィシャル 46%

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GLEN ROTHES
Limited Release
Aged 30 Years
Distilled 1975.8
Bottled 2006.4
Bottled No, 885/3708
700ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml以上
場所:自宅
時期:開封後3年程度
評価:★★★★★★☆(6→7)

香り:ナッティーでドライな香り立ち、焦がしたバニラやキャラメル、オーク、ハーブを思わせる爽やかさも混じる。
樽感が強くリッチなアロマだが開封後の経年でバランスが取れており、加水するとトーンの高い爽やかさと乾いた植物感。

味:口当たりはリッチで度数以上の存在感。香り同様にナッティーな香ばしさとほろ苦い麦芽風味、淡い内陸系のピートフレーバー、雷おこし。じわじわとオーキーなフルーティーさ、鼻抜けに干し藁のような乾いた植物感。
余韻はウッディーで心地よくドライ、スパイシー。うっすらとキャラメル、アーモンドや胡桃を思わせるほろ苦さが長く続く。
加水すると序盤が柔らかい広がりになり、後半にかけてグレープフルーツのワタを思わせるフレーバーも感じられる。


グレンロセスのオフィシャル限定リリース。個人的に開封直後は「うーん」と思ってしまったボトルです。
決して悪くは無いのですが、テイスティングコメントの中でも書いてあるように、ナッティーでドライな印象が非常に強く、長期熟成のロセスに求めるフルーティーさとは違う傾向にびっくりしてしまいました。
こりゃあかんなぁと放置プレイして経過すること2年少々、存在すら忘れていたモノを久々にテイスティングすると強いドライさが軽減され、味の奥にはオーキーなフルーティーさも出てきて、こいつはイケるじゃないかと認識を改めて現在に至ります。
構成としては樽感が比較的強いものの、リフィルシェリー系の樽にいくつかバッティングされているようで、明確にこれとこれという指定は難しいです。

最近でこそグレンロセスはビンテージ表記のボトルではなくNAや複数年数バッティングをリリースしていて、いっぱしにオフィシャルモルトの一角という感じですが、古くはブレンデッドウイスキーにおけるトップドレッシングとして評価され、シングルモルトはあまりリリースされてきませんでした。
そうした中で、近年はボトラーズリリースが活発となり、オフィシャルとしてもBBR社が丸瓶にサンプルラベルという独特のデザインでリリースを始めたことで、様々なビンテージを飲むことができるようになりました。
個人的にグレンロセスの1960年代から1970年代蒸留は、オフィシャルにしてもボトラーズにしても安定して旨いという印象が強いです。

ただ酒質的にそこまで強いわけではないので、30年を越えるシングルカスクでは樽負けしている「樽材をしゃぶっているような味」のモノも少なくありません。何本か抱えて飲みましたが、嫌いじゃないけど親友にはなれないような、微妙な距離感が最後まで残る感じでした。
では最近リリースされているオフィシャルはどうかというと、えぐみが強かったり、妙に若かったりとやや迷走気味なボトルもありますね。ただ10年~20年の熟成で、近年にしては上質なシェリーカスクのリリースがあったりで底力を感じる蒸留所でもあり、今後もそうしたリリースが続くことを期待したいです。

グレンロセス 1998-2015 スパニッシュオークホグスヘッド 52.1%

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信濃屋がリリース予定の日本向けオフィシャルプライベートボトリング、グレンロセス1998。
色からしてバリバリ濃厚な近年蒸留のシェリーカスクなのですが、サンプルを飲んでみて「なるほどこれは良いな」と、良い意味でびっくりしました。
先日の京都ウイスキーフェスティバルでは、信濃屋ブースに試飲ボトルもあったようなので、飲まれた方もいらっしゃるのではないかと思います。(週末の秩父祭にもブースが出されるようなので、ひょっとしたらそこにあるかもしれません。)
 
その香味は、つい先日発売された山崎シェリーカスク2016と同じ系統の味がする、プルーンやレーズンチョコレートの甘み、香木を思わせるウッディーさを備えた濃厚なシェリー風味。中間の多彩さはシングルカスクである以上やや単調ではありますが、不足を感じるほどではありません。
余韻はドライでタンニンの渋み、カカオやダークチョコレートを思わせるビターな甘さが長く残ります。
 
グレンロセスでスパニッシュオークシェリー樽は珍しい仕様とのことで、確かに直近でリリースされてきた中でも、系統の違う仕上がりだと感じます。
狙ったのか偶然か、グレンロセスは比較するのにおあつらえ向きとも言える、同じくシェリー樽熟成で濃厚な1本がキングスバリーからリリースされたグレンロセス2004-2015 シェリーパンチョン樽熟成。
近年蒸留の濃厚シェリー系としては悪くない、むしろ良い出来として先日投稿していますが、こちらはアメリカンオーク樽という話で、どちらも非常に濃厚なシェリー系ながら、比較して飲むとその差がはっきりとわかるように思います。
 
近年のシェリー系に復活の息吹を感じている中で、さらにまたレベルの高いボトルが1本。
こういう動きがさらに加速してほしいなと感じています。
 

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