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オールドプルトニー 10年 2008-2019 信濃屋 Whisky KID 60.4%

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PULTENEY 
SIGNATORY VINTAGE 
For Whisky KID from Shinanoya, Tokyo 
Aged 10 years 
Distilled 2008 
Bottled 2019 
Cask type 1st fill bourbon barrel 
700ml 60.4% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:ジェイズバー
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(6)

香り:うっすらとバニラやオーク香の層があり、若干の酸、溶剤系の刺激を鼻孔に感じる。続いて干し草や微かにハーブ。レモン、焦げたようなスモーキーさがじんわりと広がる。

味:口当たりはブリニーで、とろりとしたおしろい系の麦芽風味と塩気、香りで感じた若さに通じる柑橘系の酸味から、ひりつくスパイシーな刺激があり。余韻にかけてほろ苦いピートフレーバー、ハイトーンなフィニッシュがはつらつとした若いモルトの個性を感じさせる。

ファーストフィルだが樽感はそれほどではなく淡い。樽にマスクされていないので味わいには若さに通じる要素が見られるが、麦芽風味と塩気、若干の溶剤っぽさに通じる刺激は、オフィシャルの加水リリースでは味わい難いプルトニーらしさ。尖った個性を楽しめる、ボトラーズに求めたい1本。

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(自分の写真があまりに貧相なので、ウイスキー仲間のMさんにお借りしました(笑))

信濃屋の新バイヤーである(あ)こと、秋本さんがカスクチョイスした、シグナトリーのプルトニー。ラベルに書かれたWhisky KIDは同氏の通称(ひょっとして蒸留所関係者からそう呼ばれた?)で、このプルトニーがバイヤーとしてのスコッチモルトのファーストリリースとなります。

KID、つまり”若手”ではありますが、TWDの活動等でこれまで度々テイスティングの勉強をお互いにしていたなかで、秋本さんのしっかりと原酒の特徴を捉えてくるテイスティングは、業界内でも高いレベルにあるものと感じています。
それ故、このリリースはまず間違いないと予想していた訳ですが、無理にハイエンドを追うのではなく、手にしやすい価格のなかで蒸留所ならではの個性が分かりやすく、そして通好みの美味しさのあるカスクをチョイスしてきたのは流石だなと思います。

やや若さは残っていますが、1st fill bourbon barrelにしては淡い樽感に、プルトニーらしい麦芽風味とスパイシーで若干溶剤的なニュアンスも伴う刺激。「そうそう、プルトニーの短熟原酒って、こんな感じだよなぁ」と。そして酒質由来の風味もそうなのですが、淡い樽感から蒸留所限定品を飲んでいるような印象を受けます。
それこそ、シグナトリーが蒸留所からある程度熟成した樽(例えば7~8年程度熟成したもの)を購入していたのでは?、と思えるような仕上がりです。


ボトラーズリリースの原酒は、樽使いだけでなく熟成環境が蒸留所と異なるケースがあり、オフィシャルと違うキャラクターとなってリリースされることがしばしばあります。
データ上の比較なので、必ずしも熟成環境に直結しないかもしれませんが、例えばプルトニーがある本土最北の地域(ウィック)。ここは夏が短く冬が長い、そして気温は短い夏場でも最高気温で16度前後、基本的には10度未満の時間帯が非常に長い地域とされています。
一方シグナトリーの熟成庫があるのは、南ハイランドのパース。ここは夏場で20度、平均最高気温で2度以上違う統計があるなど北ハイランドよりも温暖かつ、冬場はさらに寒く寒暖差もある地域とされています。

樽のエキスは温暖な時に蛇口が開き、寒冷な状態では閉まります。実際、プルトニーのシングルモルトは圧殺系のシェリーを除くと熟成年数に対して樽感が淡く、酒質由来の風味、刺激を感じやすい傾向があると感じており、今回のリリースはまさにその特徴にドンピシャだったわけです。
事実は違うかもしれません。単なる偶然かもしれません。が、専門性とは切り離されたところに愛好家としての愉悦はある。あーだこーだ楽しむ要素があるのが、良いウイスキーの条件であると思うなかで、今回のボトルはその条件にも合致したグッドリリースでした。
WHISKY KIDの次の1本、今後の展開にも期待しています。

オールドプルトニー 12年 2007-2019 ウィスキーショップ向け 50.2% #1471

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OLD PULTENEY 
AGED 12 YEARS 
Distilled 2007 
Bottled 2019 
Cask type Sherry #1471 
For THE WHISKY SHOP 
700ml 50.2% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ウッディで少し焦げたような木香と、どっしりと濃厚なシーズニングシェリー香。ドライプルーン、オランジェット、生チョコレートと微かにアーモンド、合わせて溶剤的なツンとした刺激もある。

味:リッチでスウィート。序盤はとろりとしているがすぐに強めのアタック。ウッディなニュアンスとともに色濃い甘味はダークフルーツケーキ、カカオ多めのチョコ、スパイシーな刺激とタンニンの苦味もある。
余韻はウッディでビター、香り同様に奥から刺激がシェリー樽由来のウッディさと甘味を突き抜けるように最後まで残る。

一言で、こってり濃厚シェリー系。香味に残る刺激がらしさである一方、基本的にはシーズニング味である。熟成年数と度数の下がり具合から推察するに、ホグスヘッド樽の中に保存用のシェリー液が一部残ったまま樽詰し、それで度数が下がってそのまま熟成したものではないだろうか。少量加水しても構成に大きな変化はなく、クリーミーなシェリー感が持続する。


イギリスのTHE WHISKY SHOPがボトリングした、プルトニーでは珍しい濃厚なシェリーカスクの1本。日本では同店舗から個人輸入する以外に購入方法はありませんが、だいたいリフィルでプレーンなタイプの樽感、あるいはバーボン樽での仕上がりが多いプルトニーでこのスペックはまさに限定品に相応しい特別感のあるリリース。コアなウイスキーバーや愛好家は、マストバイと言わんばかりに調達しているようです。

その構成は近年のシーズニングシェリーの濃厚なタイプが全面にあり、例えば先日のウルフバーン・ジャパンエクスクルーシブ3と共通するニュアンスが備わっています。まさに圧殺、まさに樽味、といったところですね。
色濃い甘味とウッディさがしっかりあるだけでなく、12年という熟成期間に違和感のない程度に残った酒質由来の刺激。この刺激は15年熟成くらいまでのプルトニーのカスクストレングスで見られるキャラクターのひとつで、今回のボトルで唯一のらしさと言えるかもしれません。
ただ、これだけでプルトニーと言えるかと問われれば非常に難しいところでもありますが・・・(汗)。

そういう意味で、この手の振り切ったボトルは評価が別れるリリースとも言えます。
酒質由来の香味を重視する方はバーボン樽やリフィル系の樽を好みますし、この手のシーズニングシェリー味が好みという人もいれば、ダメという人もいます。個人的には、本来12年熟成ででるであろう平均的なシェリー感、ウッディさに対して色濃いクリーミーさが時系列に合わないような、違うものが混じったような違和感があって、味よりもそれが気になるところです。

あとはこれが時間経過でどう変化するかですね。この手のシェリーはこなれるというか、酒質部分と馴染むような印象があるので、10年後とか一体感と麦っぽさが出てきて面白い変化が出てくるかもしれません。

オールドプルトニー 29年 1984-2014 GMリザーブラベル 57.8%

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PULTENEY
GORDON & MACPHAIL RESERVE
Aged 29 years
Distilled 1984
Bottled 2014
Cask type Refill Bourbon Barrel #10171
Exclusively Bottled for JIS
700ml 57.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7) (!)

香り:穏やかで熟成を感じる香り立ち。ほのかに溶剤的な要素を伴うバーボンオーク。麦芽やバニラの甘み、レモンピール、微かにハーブを思わせる爽やかさも。

味:コクのあるクリーミーな口当たり。刺激を伴う麦芽風味、バニラや洋梨の品の良い甘み。序盤はプルトニーらしいトーンの高いキャラクターから、余韻でドライパイナップル、黄色系のトロピカルフルーツ、オーク由来の華やかさが一気に開く。

香味ともプルトニーらしさがありながら、長期熟成故の熟成感、樽由来の要素も備わっている。プルトニーにおける熟成のピークのひとつ。酒質と樽が自然なバランスを保っている、実にうまいウイスキー。 
私事ですが、1984年生まれの自分にとって「生まれ年のスコッチモルト」で、これというボトルに出会えないのがスコッチ業界のあまり嬉しくない事情の一つ。1984年に限らず、同世代である方々は同じ問題を抱えているわけですが、これはスコッチ業界の冬というより暗黒時代が背景にあります。

当時、消費量の落ち込みから多くの蒸留所が生産を縮小、そのいくつかは閉鎖、操業停止に追い込まれている話は言うまでも無く。製造行程においては麦の品種改良からか何らかの原因で原酒にコク、深みが無くなっていった点に加え、樽の使い方が安定せず、代表的な事例としてシェリー業界の動向から1960、70年代は手に入りやすかったシェリー酒の古樽が入手困難となり、熟成の浅い青臭い木香が漂うシェリー樽や、シェリー酒を直接混ぜたような質の悪い樽によるウイスキーも見られるなど、単に蒸留所が閉鎖されただけではない、ウイスキー全体として質、量ともに落ちた時代でした。

もちろんその中でもすべてが悪かったわけではなく、素晴らしいと思えるボトルに出会えることもあります。
特にあまりファーストフィルシェリー樽に頼っていなかったと考えられる蒸留所は、バーボン樽やリフィル樽へのシフトがスムーズで、大きな落差がないように感じます。
それが中々1984年ではなかったというだけですが、今回のプルトニーは樽感と酒質の熟成によるバランスが素晴らしく、ウイスキーとしての高い完成度を感じられるものでした。


プルトニーは加水されてしまうとらしさが大きく軽減されて、46%であっても去勢されたような印象を受けることがあります。
かつてGMがリリースしていた長期熟成の蒸留所ラベルはもとより、オフィシャルでは21年はなんとか、しかし30年、35年は美味しいけれどプルトニーじゃなくても良いだろうというくらい樽感が主体的で、加水は20年くらいまでだなあというのが個人的な印象です。

それが今回のボトルは高度数のカスクストレングスゆえボディに力があり、樽感をしっかり受け止めて、まずは酒質由来の要素を味わった後で樽由来の華やかさが余韻で広がる。絶妙なバランスを味わえる構成に、熟成のピークとはこういうことかと感じられます。
しいて言えば、スケールという点ではさほど大きくないのが"時代"とも言えそうですが、そこは重箱の隅。自分の生まれ年で、こうしたボトルに出会えたことが嬉しい1杯でした。

オールドプルトニー 28年 1977-2005 ダンカンテイラー 57.7%

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OLD PULTENEY
DUNCANTAYLOR
Aged 28 years
Distilled 1977
Bottled 2005
700ml 57.5%

グラス:木村硝子エールホワイトワイン
量:ハーフショット
時期:不明
場所:BAR飲み@Kitchen
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:柔らかい刺激を伴うスパイシーさ、バニラの甘みと洋梨、青リンゴを思わせる果実香、徐々にウッディ。華やかで充実している。

味:粘性のあるこなれた口当たり、麦芽風味とオーキーな華やかさ。バニラや洋梨を思わせる香り同様な果実味。ボディは適度な厚みがあり、余韻にかけてスパイシー、華やかでドライなフィニッシュ。

麦芽風味とプルトニーらしい少し溶剤を思わせるニュアンスがオーキーな樽感とうまく混じり合っている。
ダンカンテイラー系にありがちな、過剰なフルーティーさではない構成もポイント。


既に絶滅危惧種となって久しい、プルトニーの長期熟成シングルカスク。一時期はGMなどから1960年代がちらほらリリースがされていたものの、それも加水中心。こうした50%以上の度数を保ち、かつバーボンホグスヘッドタイプで樽由来のフルーティーさと酒質由来の香味のバランスが取れた構成は、2010年頃でも既に希少なリリースとなっていました。

オールドプルトニー蒸留所はスコットランド本土最北端地域にあり、年間を通した気温の低さからか、10〜20年程度の熟成ではまだまだ元気いっぱい、それほど樽感もつかないフレッシュで、溶剤っぽさの混じる味わいが特徴であるところ。
しかしボディはそれほど強くないのか、加水すると急におとなしくなり、また30年以上熟成した原酒ともなれば、長期熟成のスペイサイドモルトのごとく華やかで軽い味わいになっているボトルも珍しくないと感じています。

そのため、オールドプルトニーの20年以上熟成した原酒においては、酒質と樽感のバランスが難しく。適度な厚みやプルトニーらしい癖を残しつつ、樽由来のフルーティーさが感じられるような、ピークのボトルがかねてより数が少なかったわけです。
自分の中でその筆頭とも言えるボトルが、同じダンカンテイラーから樽を買い付けた、小倉のBAR STAG 10周年記念ボトルであるオールドプルトニー1977。これは文句のつけようがない美味いプルトニーで、今回のボトルも通じるところがあり、懐かしい気持ちで楽しむことが出来ました。


ちなみに、以上のようなキャラクターから、オフィシャルの12年や17年あたりを飲んで好印象を持った方が、その後同年熟成のシングルカスクを飲むと、あまりに違うキャラクターに驚くかもしれません。
初めて飲んだ時、自分も面食らった一人であるわけですが、しかしそのバチバチとフレッシュな味わいが嫌ではなく、むしろ元気をもらうような気がしてすっかり気に入ってしまいました。

最近はボトラーズからの長期熟成リリース枯渇はもとより、オフィシャルでも以前から情報が出ていた17年や21年の終売がいよいよ動き出す模様。対して新規は免税向けのNA加水くらいしか通常リリースがないと、あまりポジティブな話を聞かないのですが・・・好きな蒸留所だけに、明るい話題が出てくることが待ち遠しいです。

余談:Bar Kitchen さんのバックバーから、ダンカンテイラーラインナップの一部。
プルトニーに限らずダンカンテイラーのこの辺りの長熟ボトルも随分見なくなりましたね。
ピアレス香だなんて言ったりしてましたが、無くなってみると当時のレベルの高さがよくわかります。

オールドプルトニー ダンカンズビィヘッド 免税向け 46%

カテゴリ:
OLD PULTENE
Duncansby Head Lighthouse
No Aged
1000ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:自宅
時期:不明
評価:★★★★★(5ー6)

香り:若干の若さを伴うツンとした刺激、乾いた木材、粉っぽさ。続いてレモンピールを思わせるほのかな酸味のある柑橘香、植物系のアロマもある。

味:香り同様に若さからくる若干の荒さを伴う口当たり。草っぽさを伴う麦芽風味、薄めた蜂蜜。ほのかにピーティー。
余韻はスパイシーでドライ。樽材由来の淡いオークフレーバーを伴う爽やかなフィニッシュ。

樽感が過度に主張せず、加水で飲みやすく仕上がったプレーンで素直なウイスキー。若いプルトニーらしく、少々荒さが残っているため、開封直後より少し時間を置いたほうがバランスが取れてくる。


これまでも何種類かリリースされてきた、オールドプルトニーの免税店向けリッターボトル。免税店向けですが、並行品として国内市場でも流通が見られます。
オールドプルトニーはスコットランド本土最北部の港町にある蒸留所で、海を見下ろすやや高台に位置することから、同地域に関連する地名、スポット等に関するシリーズとしてリリースが行われることが多く。今回のリリースは本土最北端にあるダンカンズビー岬の灯台をイメージしたものとなっています。
(オールドプルトニー蒸留所のウェアハウス。左手奥には北海が見える。Photo by K67)

イメージしているから何か特別なものがあるかというと、中身と名前に直接的な関係はない、観光地のお土産にありがちなタイプではありますが、今回のダンカンズビー・ライトハウスはこれまでリリースされてきた免税店向けのボトルの中では比較的バランスの良い仕上り。
時間をかけて飲んでいくと、いい部分が開いてきそうなタイプです。

樽構成はシェリー樽とバーボン樽とのことですが、香味から推察するにどちらもリフィルタイプの樽が使われているようで、特にシェリー系の樽感はあまり感じられません。加えてプルトニー蒸留所周辺はハイランド北部らしく寒冷な地域にあたり、樽材由来のフレーバーも強くは出づらい環境にあることからか、主体と思われるバーボン樽のオークフレーバーもそれほど強くは出ておらず、爽やかに広がっていく、若いプルトニーらしい構成となっています。

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