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カテゴリ:アイリッシュ

レッドブレスト 21年 シングルポットスチル 46%

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REDBREAST 
SINGLE POT STILL ISLISH WHISKY 
Aged 21 years 
Cask type Oloroso Sherry Butts & Bourbon Barrel 
700ml 46% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:ケミカルっぽさとバニラの甘さ、仄かに青みがかった植物感と品の良いシェリー感。ドライプルーン、や砂糖をまぶしたオレンジピール。奥にはオーキーなフレーバーとしてパイナップルを思わせるフルーティーさに洋菓子の香ばしさを伴う。

味:香り同様にウッディさとやや青みがかった植物感があり、そこから麦芽風味とバニラの甘さ、合わせてシェリー樽由来のダークフルーツと紅茶を思わせる程よいタンニン。スパイシーな刺激も若干感じられる。
余韻にかけてその渋みと共にケミカルなフルーティーさが広がり、好ましいフィニッシュへと繋がる。

アイリッシュらしい植物っぽさにバニラの甘味。シェリー感はくどくなく、むしろ余韻のケミカルさを伴うアイリッシュフルーツへの繋ぎとしてバランス良く備わっている。飲み疲れず多彩さもある。これはオフィシャルとして完成度の高い1本。

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レッドブレストは、アイリッシュのなかでも特にシェリー樽熟成の要素を感じさせるリリースが多い銘柄。シェリーの大手ルスタウと繋がりがあるのか関連するリリースもあります。ただ、個人的な好みを言えば、ハイプルーフのものは該当するシェリー感をくどいと感じるものが多く、苦手とは言わないまでもあまり自分の好みにヒットしない印象がありました。

一方、カスクストレングスの印象に引っ張られ、加水の通常リリースはイベントで試飲した以外は特段試さないまま現在に至っていました。
そんななか、ウイスキーサロンで「最近ハマってるボトルなんですよ」と薦められ、それならと頂いて見たところ、これがなかなか悪くない。。。っていうか美味しいアイリッシュウイスキーだったので認識を改めた次第なのです。

個人的に好印象と感じるのはアイリッシュらしいフルーティーさと、シェリー樽のバランスです。
近年、愛好家からアイリッシュに求められているのは、アイリッシュトロピカルと言うべきか、ジェネリックトロピカルと言うべきか、いずれにせよフルーティーさに分類されるもの。この手のフレーバーは、アイリッシュでは3回蒸留の銘柄に多く見られる傾向がありますが、こうしたフレーバーがなぜ備わるのかは正確には不明。蒸留設備か、あるいはアイリッシュに使われるグリーンモルト(未発芽の麦芽)が影響しているのかもしれません。

一方で、該当するフレーバーはシェリー感が強すぎると潰されてしまうし、かといって樽が効いていないと3回蒸留らしくドライな甘味の傾向になりやすい。
この21年はバーボン樽熟成の原酒がフルーティーさを、シェリー樽熟成の原酒が甘味や厚み、全体のバランスを取っているようで、お互いの良い部分を活かしあっているオフィシャルらしい高い完成度のバッティングだと感じました。

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今日のオマケ:クスダワインズ シラー 2015

ニュージーランド・クスダワインズの赤。日本人の醸造家が現地で作られており、非常に高い評価を受けているワイナリーです。ピノ・ノワールが有名ですが、シラーも世界レベルとのこと。ウイスキーでは秩父のフィニッシュにも使われたことがありますね。

言うても若いシラーなのでスパイシーさが強く、タンニンもギッチギチな味わいかな。。。なんて思ってましたが、これは驚かされました。
香りは淀みなく、冷涼感を伴う赤黒系のエレガントな果実香とスパイシーさのアクセント。味わいも濃厚ながら過剰な酸味はなく、タンニンは端正で、あざとさのないブルーベリーやクランベリーの甘酸っぱさ、程よいフレッシュさ。
新世界で完熟系ドカーンという香味ではなく、若さは香味のフレッシュなニュアンスにあるものの、全体の作りが非常に丁寧なのです。

オージーな雰囲気も漂うガッツリ肉料理と合わせましたが、単品で飲んでも充分楽しめると思います。
世界で評価されるのも納得のクオリティでした。

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ザ・ホイッスラー 10年 アイリッシュシングルモルト 46%

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THE WHISTLER 
IRISH SINGLE MALT WHISKY 
Aged 10 years 
Cask type Refill Bourbon Casks
Oloroso Sherry Cask Finish 
700ml 46% 

グラス:リーデルテイスティング
場所:BAR ROYAL MILE 
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:シェリー樽由来の要素を感じさせる、色濃い甘さ、ウッディネスを感じる香り立ち。オランジェット、キャラメルラテ、やや渋味を連想する要素もあるが、全体的には穏やか。

味:マイルドで整った口当たり。デーツやブラウンシュガー、柔らかいウッディネスが広がり、続いてオーク由来の華やかさと、アイリッシュ系統のフルーティーさがじわじわと感じられる。
余韻は程よくウッディで、薄めたキャラメルの甘味とフルーティーさの残滓、仄かにオーキーなニュアンスが鼻腔に抜ける。

バランスよく、程よいシェリー感。香りはシェリー感メインだが、味ではスウィートな香味の奥にアイリッシュトロピカル。ケミカルな要素がうまく軽減され、加水で整った飲み口から負担なく味わう事ができる。無名だがレベルの高いシェリー系アイリッシュモルト。

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アイルランドの新興ウイスキーメーカー、ボアン蒸留所のリリースする1本。先日紹介した、ブルーノート7年の上位グレードという位置付けになります。
ブルーノートに光るものを感じていたので、是非その他のラインナップも飲んでみたいと思っていたところ、先月のウイスキーフェスに続いてBAR飲みの機会にも恵まれました。

このボトルをリリースししているボアン蒸留所は、2016年に創業したばかりでまだ自社蒸留の原酒を販売する体制が整っていません。そのため現時点では原酒を他社から購入し、それを自社で調達したシェリーの古樽等で2~3年程度後熟させてリリースするという手法をとっています。
ただ、運営母体となる会社がアイルランド最大のアルコール飲料メーカーで、蒸留所の規模や設備が整っているだけでなく。樽もボデガでシェリー酒を長期間熟成していた古樽を確保してスタンダードリリースに使うという、平均的なクラフトメーカーでは考えられない贅沢な仕様を実現しています。

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(ホイッスラーのスタンダードラインナップ3種。左から、ブレンデッド、シングルモルト7年、10年。すべてオロロソシェリーカスクでフィニッシュされているのが特徴。ブレンデッドはエントリーグレードとなる位置付けだが、同じ販売価格帯のなかで最もシェリー感が備わった1本と言えるリッチな味わい。)

先月のウイスキーフェスでの試飲中、これは良いんじゃないかと注目した1本が、ホイッスラー10年でした。
ベースとなった原酒はクーリー蒸留所のもの(以前のレビュー時は香味の推察でしたが、フェスで間違いないことを確認)を、リフィルバーボンバレルで8年間熟成。ボアン蒸留所でオロロソシェリーバットに移して2年間フィニッシュした構成で、シェリー樽由来の甘味やウッディネスのなかに、アイリッシュモルト+バーボンオークの華やかなフルーティーさが感じられる二つの樽の良いとこ取り。バランスよく、変化を楽しめる1本に仕上がっています。

7年のほうはシェリー感がリッチでコスパに優れた構成ではあるのですが、10年と比較するとどうしてもシェリー感に若干の粗さが気になってしまう。また、ベースの原酒由来のフルーティーさも存在感を増していて、価格なりの完成度の差は感じられます。
それこそ、このシェリー樽仕上げアイリッシュウイスキーは、同じ販売価格帯のアイリッシュと比較しても劣っていないというか、ありそうでなかったバランスのウイスキーで、素直に良くできているなと感じました。
しいて言えば10年熟成表記という点が、他社の15年、16年クラスと並べた時に見劣りしますが、味重視だという人は是非試してほしいですね。

なお、こうしてフィニッシュに使ったシェリー樽は、現在ボアン蒸留所で作られている原酒を長期貯蔵するために使われると考えられ・・・。体制、販路、環境、贔屓目に見ても将来性抜群な蒸留所と言えるメーカーの製品なのです。
その評価は自社蒸留の原酒次第ではあり、まだ期待の域を出ませんが、同社の今後の製品に加え、5年後、10年後が今から楽しみです。

アイリッシュシングルモルト 16年 BAR ルビンズベース 2周年記念 50.4% #11457

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Single Malt Irish Whisky 
BAR Rubin's Vase 2nd Anniversary 
Aged 16 years 
Distilled 2002 Sep 
Boottled 2019 Jan 
Cask No, 11457 
700ml 50.4% 

グラス:グレンケアン
時期:開封後1ヶ月程度
場所:BAR Eclipse 
評価:★★★★★★(6)

香り:ややハイトーンでクリアな香り立ち。ドライな中にケミカルなニュアンス、華やかなオーク香、バニラやライチ、微かにハーブの青みがかった爽やかさが混じる。

味:とろりとした口当たりにドライな刺激が混じる。ライチやパイナップルシロップ、金柑のような若干の柑橘感、強くはないがケミカルなフルーティーさが感じられ、余韻にかけてウッディなほろ苦さと共に広がっていく。

某ティーリングのように炸裂するアイリッシュフルーツというタイプではないが、該当するも特徴が備わったボトル。熟成年数の関係か、完熟というタイプではなく、まだ固さを多少残したフルーツのよう。加水するとドライなウッディさは和らぐ一方で多少水っぽく、ギリギリのところでフルーティーさと樽感が混じり合う。

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先日レビューした上の写真左側のグレンマレイと同時にリリースされた、BARルビンズベースの2周年記念のもう1本。
マレイがオフィシャル直系を思わせる味わいでけっこう良かったのと、アイリッシュのほうも周囲から聞こえてくる評判が良かったので、遅くなりましたがこちらもレビューです。

店名の由来やラベルデザインの背景情報についてはマレイの記事の方でまとめさせて貰ったので、そちらを参照いただくとして。。。
純粋に中身の考察となりますが、樽はリフィルのホグスヘッド、勿論アメリカンオークでのもので、メーカーを考えるとボトラーズはドイツ系の某社さんかなと。蒸留所も不明ですが、この系統のフルーティーなタイプというと、ティーリング系列(ティーリング蒸留所ではない)で使われている蒸留所なのかなと推察しています。

その他の特徴としては、フルーティーではあるのですが、比較的クリアというかドライでもあるところ。
樽がリフィルかなと感じたのはこの点故で、ファーストフィルならもっとオーキーでウッディな仕上がりになっていてもおかしくなく。アイリッシュらしさも見れつつ、順を追って樽由来の要素も見れるバランスに仕上がってる点が面白い。ラベルに描かれた"ルビンの壺"は、壺と顔、どちらか片方ずつしか認識できないという人間の情報処理過程を応用したものですが、果たして我々はこのボトルから同時に2つの要素を認識できるのか。。。
なんて強引に考えてみるのも面白いリリースだと感じました。

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さて、これで2本の周年ボトルを紹介させて貰った訳ですが、最後の宿題はお店の訪問ですw
こっちのイベントばかり来ていただいて、なんともフェアじゃない状況。。。っていうか名古屋(愛知県)はルビンズベース以外にも行かなきゃならない店が多いのに、パパ業務もあって泊まりの機会が作れない!
ほーんと、親戚とか名古屋にほしいっすよ。
店主不幸な知人で申し訳ありませんが、改めまして2周年おめでとうございます!
(上の画像はマスターのFBからお借りしました。いずれ自分で撮影したものと差し替えたいですね。)

ザ・ホイッスラー 7年 ブルーノート 46%

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THE WHISTLER 
IRISH WHISKY 
Age 7 years 
THE BLUE NOTE 
Single Malt 
(Oloroso Sherry Cask Finish) 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:甘やかで軽い香ばしさを感じるアロマ。パウンドケーキやラムレーズンアイスのような甘味。仄かにアルコール感もある。時間経過でドライフルーツの要素が開く。

味:スウィートな口当たり。ピリピリとスパイシーだが合わせてかりんとうやチョコレートシリアルを思わせる軽い香ばしさのある甘味が、徐々にカカオを思わせるビターなウッディネスへと切り替わっていく。戻りには微かにアイリッシュらしいケミカルさと、オーキーなニュアンスもある。

7年と若い熟成年数だが、若さはあまり感じない、むしろシェリー感がほどよくあるバランスの良い仕上がり。コスパの良い1本と言って差し支えないだろう。加水するとシェリー系の甘さが開くと共に、マイルドな口当たりに。


5年間バーボン樽で熟成したあと、長期間シェリー酒の熟成に使われた樽で2年間フィニッシュした、短期間の熟成ながらそれなりに仕上がっているアイリッシュシングルモルト。ホイッスラーは作り手が口笛の名手であることからつけられたのだとか。
また、ブルーノートとは、正式にはブルーノートスケールで、JAZZ等で使用される長音階のうち一部が半音下がっているような音階のこと。シェリー樽フィニッシュによって通常のバーボン樽熟成のそれとは異なる音階(フレーバー)となったウイスキーを例えたネーミングのようです。

一方、ブルーノートの「ブルー」は、哀調や孤独感、憂鬱などを表現するブルースの語源でもあるため、シェリー樽熟成のウイスキーが果たしてその表現に適切かというと。。。ちょっと違和感はあります。
まあバーボン樽で華やかな仕上がりよりは、色濃い甘味を帯びたそれは、現在のブルー(青)が持つ意味である、落ち着いた雰囲気を纏っていると言っても過言ではないのですが。何れにせよテイスティングのとおり7年間の熟成とは思えない未熟感の少なさと、シェリー樽のフレーバーが浮わつかないバランスのとれた仕上がりは、若いなりに完成度の高い1本だと思います。

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(ボアン蒸留所外観。ガラス張りで解放感のあるショールームのよう。蒸留所のオーナーは、アイルランド最大のアルコール飲料会社のオーナーでもあるとのこと。画像引用:https://casksaway.ie/2019/01/19/boann-distillery/)

このウイスキーの製造元であるボアン蒸留所は、2016年に完成したばかりの新しい蒸留所です。そのため、今回レビューする7年熟成のシングルモルトは自前の原酒というわけではなく、時系列から推察すると、5年熟成の原酒を別な蒸留所から調達し、自社貯蔵庫で2年間シェリー樽で追加熟成させたものではないかと。
他にリリースされてる10年熟成のシングルモルトやカスクストレングスも同様にシェリー樽フィニッシュですので、シェリー樽熟成からが同社のアレンジであり、ベースとなる原酒が異なるのでしょう。

植物っぽさやケミカル感のあまり目立たない素直な印象のある酒質で、買い付け先はクーリーあたりと推察。
一方で、追加熟成に使われたオロロソシェリー樽は、実際にシェリー酒を長期間熟成していた樽である(つまり、ソレラの古樽?)ということがPRされていますが、何年程度のものなのかは明らかにされていません。
1960年代のシェリーカスクを思わせるような、深みのあるシェリー感とフルーティーな味わいがある訳ではないものの、旧ボトルのマッカランのシェリーを思わせる黒糖感が付与されており、生臭さもサルファリーさもないので、そう悪くないものだと感じます。

この蒸留所の真価を問うのは実際の原酒がリリースされてからになります。とはいえ、現時点で良質な樽を調達出来るコネクションや、資本力があるというのは強みだと思います。
また蒸留と合わせてビールの醸造も行っているとのことで、その気になれば自前のビアカスク熟成も出来るのでは。関連企業による流通網の確保も問題ないでしょうし、蒸留所の将来が楽しみな1杯でした。

ブッシュミルズ 28年 1989-2018 メインモルト向け 48.6%

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IRISH SINGLE MALT WHISKY 
BUSHMILLS 
For Bar Main Malt 
AGED 28 YEARS 
Distilled 1989 
Bottled 2018 
700ml 48.6% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:Bar Main Malt 
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:濃厚なオークのニュアンス。黄桃やリンゴのコンポートを思わせるフルーティーさに加え、甘栗の香ばしさや薄めたキャラメルソース。若干青みがかったスパイシーさも感じる。

味:オーキーで粘性のあるリッチな口当たり。天津甘栗、キャラメルナッツ、黄桃の缶詰のとろりとした甘味。徐々に若干ケミカルなフルーティーさも混じってくる。 
余韻はドライで程よいウッディネス、紅茶を思わせるタンニンと、ややハイトーンだがオーキーな華やかさも伴う充実した長いフィニッシュ。

熟成した70年代蒸留のスペイサイドモルトのようなフレーバーと、アイリッシュのフルーティーさが混じりあった仕上がり。樽はリフィルシェリーホグスヘッドだろうか、全体的には樽由来のニュアンスが支配的だが、加水するとケミカルなフルーティーさが分かりやすくなる。

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BARメインモルト向け”となった”、ブッシュミルズ。そして、人類には早すぎたアイリッシュ。
近年のアイリッシュウイスキーと言えば、ジェネリックトロピカルとも例えられるケミカルなフルーティーさが特徴であり、特に長期熟成であるほど純粋なトロピカルフレーバーが期待されている傾向があります。
1988-1989年蒸溜などはその最たるところ。実際、昨年信濃屋からリリースされたジャポニズムや、TWA等各種ボトラーズからのリリースは、まさに該当するフルーティーさで多くの飲み手を虜にしました。

そのフレーバーを基準とするなら、この1989は些か異端な仕上がり。
余韻にかけて該当する要素は若干あるのですが、メインに感じられるのは樽由来のウッディなフルーティーさ。スペイサイド寄りのハイランドモルトを、アメリカンオークのリフィルシェリーホグスヘッドで長期熟成したような構成で、それも結構良い樽感が序盤を支配。酒質由来の要素と混ざりながらフィニッシュへと繋がる構成です。
もしブラインドで系統を拾い間違えると、ベンリアックやロングモーン、あるいはグレングラントあたりの同樽長熟、と答えるかもしれません。

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メインモルトはウイスキー好きの聖地として知られるBARのひとつであり、かつてはプライベートボトルBBI(ベンリアックバカ一代)のリリースや、ベンリアックの全リミテッドリリースが揃っていることでも有名でした。

それはひとえに、長熟ベンリアックにあったトロピカルなフルーティーさに、マスターである後藤さんが心奪われていたため。そして近年、その心は一部共通するフレーバーをもたらすアイリッシュへと移っており、バックバーは日に日にアイリッシュが増殖している状況。既に3/4以上が同ジャンルとなっていて、その他のウイスキーは背後の棚。いよいよアイルランドに制覇されようかという勢いです。(当人いわく、ベンリアックとは離婚調停中とのことw)

後「これな、他の89アイリッシュに比べると地味やねん。だから一般に売らんで抱えたんや。」
く「充分旨いじゃないですか。でも確かにアイリッシュというよりは、スコッチモルトの長熟っぽいですね。」
後「他の89アイリッシュと比べたらな。某メガネのとかめっちゃトロピカルやろ。」
く「確かに。でも我々が失われたトロピカルフレーバーを求めるように、この樽感も失われつつある味わいだと思いますよ。」
後「つまり我々人類には早すぎたんやな(笑)」

カウンター越しの会話。後藤さんのこれまでの好みから考えると、この原酒から感じるものはあったと思うのです。それも恐らくはポジティブな方向で。
それでもフープ経由等で一般にリリースしなかったのは、アイリッシュの今流行りの枠のなかで比較はしてほしくないという、親心のようなものがあったのか、あるいは愛ゆえの独占欲か。

そしてアイリッシュでありながらスペイサイドスコッチの長熟のような個性も備える今回の原酒は、スコットランドとアイルランドの交叉点にあるBAR メインモルトを象徴するボトルかもしれません。
現在の同店を体現したような味わい、神戸にお越しの際は是非お楽しみください。

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(2年半前のメインモルトのバックバー。この時アイリッシュはまだ半分に満たなかった。)

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