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ダンカンテイラーが作っていたというブレンデッド。・・・というのは一旦忘れてください。
このボトルについては以前Whisky linkで簡単に紹介しており、記事を書くのは2度目になります。
当時、リリース元については伝聞のままあまり気にしていなかったのですが・・・今回記事にまとめるにあたり、ボトルの素性についても再度まとめなおしてみることにしました。

GLEN ALVA
100% SCOTCH WHISKY
EDWARD ARCHER & CO.LTD
1970’s
JAPAN TAX
760ml 43%

構成原酒:不明
評価:★★★★★(5)

味は良いとされるボトルで、確かに好まれている方も多いのですが、実は自分はこの手の味はあまり好みではありません。
状態の問題かなと、自分で2本、外で3本経験しましたが、もう一つピンとこない。ロックは適度なコクがあってカスタード系の甘さが際立ってスムーズ。ハイボールにすると「まぁ良いかな~」というレベルですが、あっさり系で物足りない。
乾いた甘さでピート感はなく、少し草っぽさや植物質なニュアンスがあるので、ラムやテキーラとか好きな人は好みかも。個性の出にくいブレンデットにおいて、逆にこうしたほかとは違うキャラクターがあるブレンドは貴重と言えるかもしれません。


このブレンドに使われた原酒は不明ですが、出元がダンカンテイラーであるというのがこれまでの定説でした。
しかし調べていくうちに、これはもはや酒販業界の一部を巻き込んだ(自分の書いた記事も少なからず影響を与えた)壮大な誤解なのではないかという気がしてきました。
新たな事実がわかればそれはそれで修正させていただきますが、現時点でこのGLEN ALVAはダンカンテイラーとは無関係と言えそうです。


以下、長くなりますので興味がある人だけ読み進めてください。
Glen Alvaの日本での流通時期は1970~1975年あたりでしょう。だいたいはJAPANTAX付きで、たまにないものも見ますが、それ以外のボトルを見たことがありません。同ボトルの販売元であるエドワード・アーチャー社は1977年を持って解散しており、同時期に終売になったと考えられます。
ではそれより古いボトルはどうかというと、BOWEN & MCKENCHNIE社からGlen Alvaとされる銘柄のリリースがあったようです。しかし同社は1954年で解散しているため、そこから消息不明。BOWEN社からEDWARD社が版権を買い取った・・・とも考えられますが、10年間の空白を埋められるリリース情報が見つからず。今回のGlen Alvaのこれは別物なんじゃないかと思います。
まあ仮に販売があったとして大勢に影響はありません。販売元は上述の通りですが、ダンカンテイラーのダの字も出てこない。そもそもダンカンテイラーの設立は1961年であるため、1960年以前のリリースが仮にあったとして、同社の製造とはなりません。EDWARD社がダンカンテイラーの子会社に当たるとか、関係があってブレンドを作ってもらっていたとかそういう繋がりの記録があれば別ですが、どうもそういう情報も見当たらないのです。

ここでEDWARD社側から探るのではなく、ダンカンテイラー社側から見ていきます。ダンカンテイラー系列のブランドにウイスキーガロアーがあります。ウイスキーガロアーを取り扱っていた現地メーカーが、Brands Development (Worldwide) Ltd.
このメーカーはバッテッドモルトやブレンデッドウイスキーもリリースしており、原酒の出元はウイスキーガロアー同様にダンカンテイラーと考えられます。
Brands Development (Worldwide) Ltd.のリリースしていたブレンデッド銘柄は、「Glendarroch range」「Scottish Glory Superior Blend」「Glen Alba」・・・。

ん?
Glen Alba?


ご参考:http://www.scotchwhisky.net/independent/brandsdevelopment.htm

ba?

もう一度Glen Alvaを見てみると、vが崩れた小文字で、bに見えなくもない...。
なるほどただの見間違えか、ってそれならそれで良かったのですが、ラベルに写る渓谷は、スコットランドのAlva市を流れるアルバ川にあるローカルスポット、"Alva glenの滝"と思われます。
Alva市がローカルすぎてろくな情報がない中、短いながら比較的登り応えのあるトレッキングスポットとして紹介されています。

ご参考:http://www.walkhighlands.co.uk/fife-stirling/alva-glen.shtml

ちなみにGlen Albaは庭園の名前で、ラベルに書かれた滝の景色とは無関係と考えられます。
もうここまで来るといっそすがすがしささえあるのですが、これはbとvの見間違えか、AlvaとAlbaで日本語読みが同じことからくる情報伝達での誤認なんじゃないでしょうか。
仮にそうなると、Glen Alvaのほうはどこぞの何とも出元もわからぬポッと出の零細ブレンデッドということになります。
いや、もちろんリリースの流れの中でvからbにスペルが変わったという可能性もあります。すべてはエドワード社とダンカンテイラー社の関係次第。

今回の考察はここでいったん終わりとしますが、本件について情報をお持ちの方、おりましたら是非教えてください。