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厚岸蒸溜所 シングルモルト 雅 55% 免税店向けリリース

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THE AKKESHI “MIYABI”
Single Malt Japanese Whisky 
For Travel Retail 
700ml 55% 

評価:★★★★★★(6)

香り:スパイシーでスモーキーなトップノート、ビターオレンジや夏蜜柑などの爽やかでほろ苦いアロマ。微かに乳酸系の酸や香ばしさもあり、一本芯の通った複雑さを感じさせる。

味:度数を感じさせないねっとりとした口当たり。オレンジを思わせる甘酸っぱさとスモーキーさ、香ばしい麦芽風味。徐々にスパイシーで、口内をひりつかせる度数相応の刺激。ほろ苦く焦げたようなピートフレーバーに、ウッディな甘さが混ざり、長く続く。

やや若さはあるが、ミズナラ樽に由来するスパイシーさや柑橘の要素を主体に、奥には厚岸モルトの個性たる麦芽風味、ピートフレーバーを感じることが出来るはっきりとした作りのシングルモルト。
情報が公開されてないため、飲んだ印象からスペックを分析すると。フェノール値は30PPM程度、熟成年数は4年程度、キーモルトは和柑橘香る個性から北海道産ミズナラ樽原酒と思われる。比率を予想すると、ミズナラ樽7割、バーボン樽1〜2割、残りはシェリー樽、ワイン樽を隠し味といったところか。
ハイボールにするとスパイシーさが収まり、麦芽と樽由来の甘みが主体となって、実に飲みやすい。厚岸の酒質の良さが光る1本。

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北海道、釧路よりもさらに東、車で1時間程の場所にある、厚岸町の蒸留所。
麦、ピート、樽、水、酵母、全て地のものでウイスキーを造る、「厚岸オールスター」を掲げた取り組みを掲げ、その理想の実現に向けて着実に準備を進めていることは、改めて説明の必要はないかと思います。

その厚岸蒸溜所のリリースといえば、広く知られているのは2020年からリリースが始まっている二十四節気シリーズです。1年間を12ヶ月ではなく24の季節で区切る古来の整理の中で、それぞれの季節をイメージしたウイスキーをリリースしていくもので、限定品ながら厚岸蒸溜所のスタンダードなブランドとして位置付けられています。
言い換えると、厚岸蒸溜所のウイスキーを飲もうとすると、基本的には二十四節気シリーズのどれかということになるのですが・・・実はそれ以外にも、プライベートボトル、異なる市場や地域を限定したリリースなど、あまり知られていない限定品があります。

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※シングルモルト厚岸 ブレンダーズチョイス
AFトレード社がリリースしたシングルカスク。通常の複数樽ブレンドよりも、個性がはっきりとしており、麦芽風味や酒質の良いところを感じやすい。去年あたりからPBでシングルカスクリリースが国内向けにも出てきたので、機会があればぜひ飲んでみてほしい。

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※厚岸 ブレンデッドウイスキー 牡蠣の子守唄
厚岸町内だけのウイスキーとして2021年にリリース。基本的に厚岸町以外に流通していない地域限定品で、海外原酒と厚岸のモルトをブレンドし、厚岸町の名産品である牡蠣に合うスモーキーで麦芽風味の中にソルティーなフレーバーを感じるウイスキーとなっている。


さて、今回紹介する、シングルモルト厚岸“雅”は、国際線免税店向けに2022年にリリースされたシングルモルトです。
樽構成、原酒構成、諸々情報がオープンになっておらず、裏ラベル等への記載はおろか公式にも紹介ページがないため、謎のシングルモルトとなっており、実は私も全てを把握しているわけではありません。

蒸留所関係者に確認したところ、キーモルトが北海道ミズナラ樽に北海道産麦芽、つまりオール北海道熟成の原酒であることと、そしていくつかのバックストーリーがあることがわかりました。
同スペックの原酒は、オリエンタルな香味のあるものに加え、スパイシーで和柑橘系のフレーバーを感じられるものが多く、本シングルモルトからはその個性をはっきりと感じることが出来ます。厚岸蒸溜所の理想の実現に、着実に準備が整っていることを感じさせる味わいです。
一方、それ以外に香味から想定されるスペックはテイスティングで紹介しておりますので、ここから先は本リリースの背景にあるエピソードを紹介していきます。

まず“雅”というネーミングは、同蒸留所の代表である樋田氏のご友人の名前から1文字を取ったもの。そしてこのウイスキーは、急逝されたご友人への追悼としてボトリングされたものだそうです。
ご友人はどちらかというと下戸であったそうですが、天国でハイボールを楽しんで貰えたら…と。そう、テイスティングでも触れましたが、本リリースはストレートよりハイボールの方が、酒質の良さ、麦芽や樽由来の甘さが引き立って、非常に親しみやすくなるのです。
ひょっとするとこのリリースの原酒構成には、立崎ブレンダーではなく樋田氏が関わられているのかもしれません。

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そして“雅”にまつわるもう一つのエピソードが、この商品名が既に他社の商標としてあり、リリースにあたってハードルとなったことにあります。
それはそうですよね、お酒の名前として違和感のない文字ですし…。
ですが、上述のリリース経緯と1度だけの発売ということで、特別に許可を頂けたのだそうです。義理と人情といいますか、相手の狙いが悪意でない以上、同じ心で対応する。
ウイスキー関連で、あるいは本業側では結構ギスギスした話を見ることも珍しくないのですが、久しぶりにスケールの大きさ、懐の広さを感じる話だなと思えるエピソードでした。

シングルモルト厚岸 雅はバックバーを含め国内市場ではあまり見かけませんが、もし見かけたら単なるウイスキーというより、自分の目指す夢を友人に伝える、そんな意味を持ったウイスキーとして見て貰えたらと思います。

厚岸蒸溜所 ブレンデッドウイスキー 大暑 2022年リリース 48%

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THE AKKESHI 
"TAISHO" 
Blended Whisky 
A Fusion of the Worldwide Whiskies 
12th season in the 24 Sekki 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(6)

香り:土っぽさと焦げ感を含むピート香、燻した麦芽、スモーキーさの中にグレーン由来の穀物系の甘さとスパイシーな刺激。それらに複数の樽に由来するバニラ、ニッキ、ハーブ、柑橘、緑茶葉…様々なアロマが混じり、湧き立つような複雑さがグラスの中で陽炎のように揺らめき立ち上っている。

味:甘く厚みのある麦芽風味、含み香と共に広がるスモーキーなピート香。そこにグレーン原酒の甘さと粘性、柑橘感、スパイス、微かにお香を思わせるミズナラ樽のニュアンスやワイン樽由来のベリー系のアクセント。これらが軽快な刺激を伴って感じられる。
余韻はピーティーでビター、ウッディな苦みと焦げ感からミズナラ樽由来の個性的な甘みとスパイシーさが鼻孔に抜け、どっしりとした余韻が長く続く。

複雑でボリューミーな香味構成。モルトとグレーンの比率は6:4程度と推察。樽はバーボン樽が一番比率として高そうだが、次点はミズナラの新樽で20~30%といったところか。該当するキャラクターが随所にあり、他にはワイン樽の個性もアクセントとして感じる。熟成グレーンのコクと粘性、ミズナラの独特のスパイシーさにハーブや和柑橘感が、ピーティーで多彩なフレーバーを繋いでいる。
なおハイボールにすると複雑さの要因だった樽感、ボリューミーさを支えていたグレーンの甘みが軽くなるためか、スモーキーフレーバーを残し、すっきりとした味わいに変化する。

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「THE AKKESHI BLEND」は、厚岸蒸溜所が自社蒸留したモルト原酒と、グレーンスピリッツで調達後、厚岸蒸溜所で3年以上熟成したグレーン原酒を使いリリースするブレンデッドウイスキー。二十四節気シリーズとしては8作目、ブレンドとモルトが交互にリリースされる同シリーズにおけるブレンデッドとしては4作目となります。

”大暑”は二十四節気では凡そ7月下旬から8月上旬にあたり、読んで字のごとくの時期です。
今年は本当に暑かった…ですが関東では適度に雨も降り、空梅雨なんて言われてましたが、結局そんな心配はなく。その後に続くのは立秋→処暑→白露。昨年リリースしてWWAで受賞した同じ厚岸ブレンドの”処暑”が出てくる。二十四節気シリーズは1年に4リリースされていて、このシリーズが1年を2周して徐々に季節が埋まってきたんだなと、感慨深くもなりました。

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今回のリリースの特徴は、一つは北海道産麦芽(りょうふう)と北海道産ミズナラ樽熟成原酒による柑橘感とスパイスを連想する香り、含み香。そしてもう一つが前述のミズナラ樽原酒やグレーン原酒等、構成原酒の熟成感が増してきたことによる、バランスの取れた複雑さにあると考えています。

レシピの傾向も変わってきていて、確認したところ昨年は3年熟成の原酒をベースとしていたものの、そこから使われている原酒の最低熟成年数が1年増えたとのこと。粗さの強かった原酒の傾向が変わり、ブレンドのレシピ構成では2021年リリースのブレンデッド2作(雨水、処暑)に比べてまとまりのある方向にシフトしています。
ミズナラ熟成原酒の成長もその一つ。以前は目立たなかったオリエンタルな香味に通じる要素が香味の端々にあり、キーモルトたる働きをしています。

また、グレーンに関しては、個人的な経験から厚岸熟成グレーンの事例を紹介すると、昨年春、GLEN MUSCLE No,8 Five Spiritsのレシピ構成に関わらせてもらった際、ブレンドに使える原酒の選択肢に厚岸熟成グレーン(バーボン樽3年)がありました。ブレンドに欠かせないグレーンという1ピース、話題性としては間違いなく厚岸熟成グレーン一択です。
ですが最終的に使ったのは輸入スコッチグレーンの11年。なぜ使わなかったかと言うと、まだ熟成が短く香味がドライであり、グレーンとしての甘み、コクが弱いと感じたためでした。
一方でブレンドとしては前作となる“大寒”のリリースからは、グレーンに期待するフレーバーや特性も増してきたように感じます。たった1~2年の違いですが、日本の熟成環境では大きな違いとなり得るのです。

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ちなみに、前作”大寒”と香味の傾向を比較すると。原酒の成長というよりはブレンドの方向性の違いが大きく、冬から夏、静寂から躍動、表現する季節の違いと変化が楽しめるように思います。
大寒は1:1に近い比率でグレーンが使われていて、ややドライで静かな印象のある仕上がり。例えるなら雪が降った次の日の朝、朝日を浴びて一面白く染まった平野の景色を連想させる味わいに対して、大暑はグラスの中から陽炎のように湧き立つ個性、ボリュームのある味わいが、夏の暑さとリンクして感じられました。

冒頭述べたように、厚岸蒸溜所がリリースする二十四節気シリーズは1年間に4作品。シングルモルトとブレンデッドが2作品ずつリリースされており、来年は12本で折り返しを迎えます。つまり、順調にいけば後4年程でシリーズが完結するわけです。
それだけリリースを重ねる中で、今回のブレンドは蒸溜所としてもリリースとしても、一つ完成度の高さで階段を登った印象を受けました。

厚岸蒸溜所の熟成3年以上の原酒については、おそらくあと3~5年くらいで最初のピークを迎えるでしょう。一方で厚岸蒸溜所ではウイスキー造りにおいて毎年様々なアップデート、取り組みを行っている最中で、今なお蒸溜所そのものが発展途上です。
熟成環境は少し離れた海岸沿いの高台に第3、第4熟成庫が完成し、現在は第5貯蔵庫を建設中。それ以上に、今回使用されている北海道ミズナラ樽と北海道産麦芽りょうふうと組み合わさり、蒸溜所が目指す厚岸オールスターを形作る最後のピースと言える計画も、いよいよ佳境を迎えているところ。

コロナ禍の影響もあって多少遅れはあったようですが、きっと次のリリース前後で大きな発表があるのではないか。そして今回のリリースは、厚岸オールスターという蒸溜所が目指す理想像に組み込まれる、重要な要素、その一部を味わうことが出来る。マイルストーンな1本でもあるのです。

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※厚岸蒸溜所第3、第4、第5熟成庫(建設中)を見下ろすドローン写真。海沿いから内陸に入った場所にある蒸溜所から数キロ離れ、海沿いの高台に熟成庫が建設されている。画像引用:https://www.builder-net.jp/zisseki_kobetsu?id=7539

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※道端に落ちていたら、牛か馬の落とし物に見間違えそうだが、これが極めて重要な、最後の1ピースである。

厚岸蒸溜所 せいめい(清明) シングルモルトジャパニーズウイスキー 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky PEATED 
Bottled 2022 
"Seimei" Season
"Radiance of Pure Life"
700ml 55%

評価:★★★★★★(6)


香り:フレッシュで強いトップノート、序盤は鼻腔への刺激が酸と共にあるが、徐々に古酒感のあるどっしりとした甘さ、黒土、カカオ、微かにオレンジの要素があり、温度の上昇で前に出てくる。

味:厚岸蒸溜所の個性たる柔らかいコク、麦芽の甘み、柑橘を思わせる酸味と共に、徐々に存在感のあるピートフレーバー。微かな塩気。余韻は徐々にスパイシーで、ほろ苦いピートスモークがソルティーなニュアンスを伴って長く続く。

樽構成はほぼバーボン、シェリーとワインがアクセント、隠し味にミズナラと予想。厚岸らしいキャラクターとして麦芽由来の甘みとコク、フレーバーの幅の多彩さが若さを包み込む、バランスの良い仕上がり。
ハイボールにすると未熟感少なくクリアでコクのある味わいから、ピートフレーバーが鼻腔に抜けていく。過去リリースでは芒種に似ており、将来性も強く感じるGOODリリース!

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先月初頭にリリースされた、厚岸24節気シリーズの第7弾。せいめい。
・・・7・・・7!?
特に驚くことでもないのかもしれませんが、もう1/4がリリースされたんですね。

ちょっとぼやきタイム入りますが、最近1週間があっという間なんですよ。
朝起きて、洗濯機回して、朝ごはん作って皿洗いして、洗濯物干してゴミ捨てして、会社行って会議出て、残業して23時くらいに帰ってたまにスペースやって1日が終わる。
そんなルーティンを繰り返してたら、気がついたら週末が来ていて、それを繰り返したら1ヶ月が終わっている。

このボトルも個人的には開封したばっかりというつもりなんですが、Twitterに速報レビュー掲載してから1ヶ月以上経ってるんですよ。これが加齢か・・・
って掲載が遅れた言い訳はこれくらいにして。

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(厚岸24節気シリーズ過去6作。厚岸から見る水平線、湿原の地平線を連想するブレンド3作に比べてシングルモルト4作は個性的なデザインにもなっている。)

今作のシングルモルト「晴明(せいめい)」は、蒸溜所側に確認したところ、
バーボン樽原酒 73%
シェリー樽原酒 13%
ワイン樽原酒 10%
ミズナラ樽原酒 2%
以上の原酒構成であるとのこと。
芒種に近いなと感じた印象は間違いではなく、むしろシェリーやワイン樽の比率が高いと思われる分、甘酸っぱさや柑橘系のフレーバーなど、いい意味での複雑さが増している構成。

そしてこれらがバランスよく感じられるのは、原酒の平均熟成年数が増えたことだけでなく、輸入麦芽だけでなく、北海道麦芽を使ったことで原酒のフレーバーの多彩さが全体を包み込んで、若い感じはありつつも、不思議と飲み進めることができてしまう。個性を楽しめるウイスキーとして仕上がっている点が一つ。

もう一つは、造り手のブレンドノウハウの向上もあると考えられます。
厚岸蒸留所は24節気シリーズを作り上げるにあたり、1リリースして1ブレンドレシピをつくってまたリリースするという、その場その場で手元に使える原酒を使う手順ではなく。
1年間のリリース計画を立て、その時点の原酒から成長を予想し、求める味に対して先にレシピを作り、原酒の成長を確認しつつ、必要に応じて若干レシピを変えていくようなスタイルをとっています。

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現時点で既に厚岸蒸溜所側には次回作だけでなく、シリーズ折り返し地点までの想定レシピが完成しているそうですが、この作り方は蒸留だけでなく熟成やブレンドの経験がないと出来ません。トライ&エラーを重ねながら、原酒だけでなく確実に蒸留所も成長してきている。。。ということを感じる仕上がりでもあるわけです。

北海道の熟成環境は、先日レビューした鹿児島、嘉之助蒸留所に比べると気温差が大きく、夏場を除いてはゆったりと熟成が進みます。
また、厚岸蒸留所では昨年夏から北海道内地ふらので試験熟成を行うなど、新しいチャレンジも始めており、話題は豊富ですが、熟成した原酒が真価を発揮するのはこれからであると。
そこに、先に触れたように作り手としての成長も合わさって、ますます完成度の高いリリースが増えてくるだろうと。
シリーズ次回作、今夏リリースのブレンデッドウイスキー大暑も楽しみにしております。

厚岸 ブレンデッドウイスキー 大寒 48% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI BLENDED WHISKY 
DAIKAN 
A Fusion of the World Best Whiskies 
24th. Season in the 24 ”Sekki” 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★(5−6)

香り:軽やかでスパイシー、ツンとした刺激から和柑橘を思わせる酸を感じるトップノート、ほのかに焦げたようなスモーキーさ。徐々にバタークッキーのような甘み、軽い香ばしさ、微かに赤みがかったドライフルーツも連想させる。

味:柔らかく瑞々しい口あたり。序盤は軽く平坦な印象を受けるが、じわじわとモルティーな甘み、柑橘や洋梨、ビターで土っぽいピートフレーバーが穏やかに広がっていく。
余韻はスパイシー、ピートフレーバーが染み込むように長く続く。

グレーン原酒を思わせるプレーンでスパイシーなニュアンスがトップにあり、そこから厚岸モルト由来の甘みや各種フレーバーが広がっていく。モルト比率は5割ほど、樽構成としてはバーボン樽メインで、複雑さはワイン樽やミズナラ樽といったところか。ピート香も控えめで体感10PPM未満、ノンピート原酒がメインであるようにも感じられる。
飲み方としてはストレート以外にはハイボールがおすすめ。軽やかですっきりとした中に、麦芽や樽由来の甘み、柔らかいスモーキーフレーバーを感じられる。

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厚岸蒸留所からリリースされる、二十四節気シリーズの第6弾。2022年2月下旬に発売されたブレンデッドウイスキーとなります。
厚岸蒸留所は一般的なクラフト蒸留所同様に、ブレンデッドウイスキーに必要なグレーン原酒を自社蒸留できていませんが、グレーンをスピリッツで輸入し、自社で3年以上熟成したものを用いているという拘りがあります。

さて、今回のブレンドは過去のリリースと大きく異なり、香味とも序盤が穏やかでピートフレーバーも強く主張しない。静謐とした雰囲気を感じさせる点が特徴だと言えます。
さながら、晴れた冬の日の空気というべきでしょうか。ベースにあるのは間違いなく厚岸蒸溜所のモルトウイスキーですが、地形の起伏、色、匂い、それらが雪によって白く塗りつぶされて平坦になった雪景色のよう。ツンと鼻を刺激する冬の寒さを感じさせつつ、グラスの中で静まり返っているのです。
おそらく過去作よりもグレーンの比率が多く(公式発表では過半数がモルトとのことですが、5:5ではないかと)、また過去作とは系統の違うグレーン原酒を用いているのではないかと推測されます。

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(厚岸蒸溜所からリリースされた、二十四節気シリーズのブレンデッド3種のラベル。ふと、このデザインは蒸留所から見える厚岸の景色、特に水平線の景色がモチーフではないかと思い当たった。)

このように第一印象を描くと、グレーン原酒でモルトの個性を塗り潰したような、薄っぺらく平坦なブレンドだと感じるかもしれませんが、如何に雪景色と言っても多少の変化があり、空気には地域の特色とも言える匂いが混じるように。ベースとなるモルトの香味に加えて、土の匂い、潮風、柑橘や白色果実、微かに赤みがかったドライフルーツ、徐々に複雑な印象を感じさせるのです。
樽の傾向としては、モルト、グレーンの熟成で最も比率が高いのはバーボン樽だと思いますが、複雑な印象に通じているのはワイン樽やミズナラ樽由来の香味ではないかと思われます。

なお、過去作との違いとしては、“雨水”が最も強くシェリー系の原酒のキャラクターを感じさせ、“処暑”は丸みを帯びつつもはっきりとしたピートフレーバーの主張があります。
それらを今回の“大寒”のレビュー同様に季節に置き換えるなら、雨水は春の空気が濃くなる時期であり、春の空気をシェリー樽原酒由来の甘く色濃いキャラクターで。
夏の処暑は暑さが峠を越した時期とされていますが、その名残として照りつける日差し、強い夕日がピートフレーバーで表現されているのではと。。。

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私のこじつけか、考えすぎかもしれませんが、これまでは感じなかったブレンドの傾向と季節の関係が、飲み比べることによって見えてきたようにも感じました。
現在のペースでリリースが進むと、次のリリースは約3ヶ月後にシングルモルト、その後ブレンデッドですから、時期的には9〜10月ごろでしょうか。既に寒露はリリースされているため、白露、秋分、霜降あたりになると思いますが、厚岸の季節がどのようにブレンドで表現されているかも、注目していきたいと思います。

厚岸蒸溜所 シングルモルト 立冬 55% 二十四節気シリーズ

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AKKESHI 
RITTOU 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
19th Season in the 24 "Sekki" 
700ml 55%  

評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートはフレッシュで焦げたようなピート香。奥にはオレンジや若い木苺のような酸味、スパイシーなアロマがあり、時間経過でピートと馴染んでいく。開封後変化としては、ワイン樽由来の香味が開き、より果実香を感じやすくなる。

味:厚みがある厚岸らしい麦芽風味に続いて、若さを感じる酸、やや粒の荒さを感じさせるピートのほろ苦さ。微かに樽由来の赤系果実感があり、奥行きにつながっている。余韻はウッディでピリピリとスパイシーな刺激、ピーティーなフレーバーが強く残る。

構成原酒として公開されているミズナラ樽原酒やシェリー樽原酒という、色濃い原酒のイメージとは異なり、薄紅色がかった淡い色合い。あくまで香味は酒質メインだが、その奥行きに寄与するシェリー樽やワイン樽のアクセント、ミズナラ樽由来の要素は余韻でスパイシーなフレーバーとして感じられる。開封直後はこれらがはつらつと、それぞれ主張してくるが、開封後時間経過で馴染み、モルティーな甘みと複層的な樽由来の要素がまた違った表情を見せてくれる。

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厚岸蒸溜所シングルモルト 24節気シリーズ第5弾。りっとうです。
先日、2月下旬に大寒が発売され、さあレビューだと思ってブログ管理ページを見返したところ、立冬が下書き状態になっていて更新されていないことに気が付きました。。。
そういえば、Twitterやスペースでは取り上げましたが、ブログは最後の仕上げをしていなかったんですよね。大寒のレビュー前に、飲みなおして開封後変化も踏まえてレビューしていくことにします。

立冬の発売前情報では、北海道ミズナラ樽原酒をキーモルトとしたとあり、またシェリー樽原酒も多く使ったとのことで、どんなリッチな味わいになってくるか、非常に楽しみにしていました。
特に北海道ミズナラ樽原酒は個人的にかなり期待している原酒でもあるので、それがどんな仕上がりになったのか。
グラスに注ぐと、その色合いは薄紅色がかったライトゴールド。序盤は樽感がそれほど強く出ておらず、厚岸蒸溜所らしいコクと甘みのある麦芽風味、ピートも結構しっかり感じます。

これまでのリリースでは2016、2017年蒸留が主流だったところ、蒸留所としての成長が見られる2018年蒸留の原酒の比率が増えてきて、個性を感じやすくなっているのでは無いでしょうか。一方で、余韻にかけて徐々にウッディで、ワイン樽を思わせる個性も主張してきます。
このワイン樽は、ブルゴーニュ地方の赤ワイン樽とのこと。開封後はこのワイン樽由来の個性が少し浮ついて、ちぐはぐな印象もありましたが、時間経過で馴染んでバランスが取れてきているようでもあります。

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一方で、キーモルトとされるミズナラ樽原酒は、それが過半数を占めているというわけではないようで、ミズナラらしい独特の華やかなフレーバーというよりは、あくまで”全体の繋ぎ”と言う印象。むしろシェリー樽原酒やワイン樽原酒が、上述の麦芽風味に酸味と方向性の違う甘み、そしてウッディな苦味を付与して香味の複雑さを形成しています。

こうした原酒構成で言えば、今回のリリースは厚岸シングルモルトとして初めてリリースされた、サロルンカムイを彷彿とさせる要素もあります。同リリースは樽感が少々強めで、特にワイン樽原酒を強めに加えていたこともあり、麦芽風味主体というよりは樽感寄りの構成でしたが、それをベースからボリュームアップさせた感じだと言えるかもしれませんね。
全体的に原酒が若いため、馴染むの時間がかかるのは変わっていませんが、時間をかければ馴染むというのは原酒そのものにポテンシャルがあるということでもあります。

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原酒の成長もさることながら、蒸溜所、そして造り手の成長を感じるのがクラフト蒸溜所のリリースの面白さであり、魅力と言えます。
厚岸蒸溜所の情報については、これまでの記事等でまとめてきていますが、新たな原酒貯蔵庫を内地に調達するなど、この半年間で更なる動きを見せています。※上画像参照、厚岸蒸溜所Facebookより引用。

樽だけではなく熟成場所の違いもまた、原酒の成長に大きな影響を与える要素となり、原酒の種類が豊富にあるということは、後のリリースに様々な選択肢を与えてくれるものとなります。
例えば先日リリースされた大寒は、今までのリリースとは全く違う方向性のブレンドに仕上がっていました。これもまた、厚岸蒸溜所が操業5年少々という短い期間の中でも様々な原酒を仕込んできたからにほかなりません。
大寒については後日レビューさせて頂きますが、リリースを振り返るとそれぞれの違いもまた面白く、ウイスキーメーカーとしての成長も感じられます。新しいものだけでなく、定期的に過去作を振り返るのも、成長途中のクラフトの楽しみ方と言えるのかもしれません。

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