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厚岸 ブレンデッドウイスキー 小雪 48% 二十四節気シリーズ

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THE AKKESHI 
BLENDED WHISKY 
SYOUSETSU 
20th. Season in the 24 Sekki 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(5-6)

香り:トップノートはプレーンな甘さの後で、焼き芋のような香ばしさ、微かな焦げ感と土のアロマ。じわじわとスモーキーで、奥にはオレンジやカスタード、オークフレーバーが潜んでいる。

味:口当たりはスムーズで瑞々しい。グレーンや樽由来の甘みの後から、柑橘、シェリー樽のヒント、麦芽風味とピート香がバランス良く広がる。余韻にかけて軽やかなスパイシーさとミネラル、ほろ苦く穏やかにスモーキーなフィニッシュ。

ピート、麦芽、グレーン、樽、それぞれが過度に主張せず、バランスの良い印象を受けるブレンデッドウイスキー。熟成感が増してきた結果がはっきりと出ており、ストレート、ロック、ハイボール、様々な飲み方でも楽しめる。特にハイボールがオススメ!
ストレートでは少しボディが軽い印象を持ったが、これは使用している厚岸熟成グレーンの質によるところか。この時期の降っても積もらない小ぶりな雪の如く…。

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二十四節気シリーズ、折り返しの第13弾。
飲んだ最初の一言は「まとまってきたなぁ」と。第一印象でそう感じるほど、今回のリリースもまたそれぞれの原酒の個性、樽感がバランス良くまとまっており、それぞれの原酒の成長が感じられる仕上がりです。
樽構成はバーボン樽メインに、モルトはミズナラ樽や繋ぎのシェリー樽がそれぞれ1〜2割か。微かに赤みがかった色合いにも見えるので、ワイン樽も少量使われているかもしれません。

原酒構成はモルト6:グレーン4、あるいは5:5といった、比較的グレーン原酒が全体を慣らしている印象。ピートフレーバーもその分穏やかで、ノンピートモルトも一部使われてる感じですね。
以前リリースされたブレンデッド大寒もそうでしたが、最近の冬のブレンデッドリリースはあえてグレーンの比率を上げているのか、加水によって全体がさらに慣らされてまとまりが良く、一方で少し軽いというかしんとしているというか、ボリューミーな傾向にある春から夏にかけてのブレンドの対極にあるように感じます。

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(2023年5月にリリースされた、ブレンデッドウイスキーとしては前作となる厚岸“小満”。原酒が熟成を増してバランスの良さを感じるのは今作と同じだが、ブレンド比率と構成原酒の違いで小満の方が躍動感を感じる。)

こうしたタイプのウイスキーは、味のインパクトが少ない分、面白みがないという印象を受けるかもしれません。
ただ、真逆に強すぎる個性、強すぎる主張のものは、毎日付き合うのが疲れるモノです。ウイスキーの完成系は一つではなく、毎日飲んでも飽きがないくらいの、ちょっと地味なくらいの味わいも完成系の一つだと言えます。
ブレンデッドウイスキーの場合、特に大手製品のスタンダードグレードはまさにそんな感じですね。

じゃあ厚岸の限定リリースにそれを求めるか?というと、それもまた好み次第ですが。。。こういうブレンドを自前の原酒だけで作れるようになってきた、というのが蒸留所としても成長の証。
1ショットで途中加水も試しながら、あるいは別途ハイボールも飲んでも飲み疲れない。むしろグレーンがよく伸びて、ストレートとはまた違う印象もあるくらいです。
厚岸蒸溜所のウイスキーとして、入門の1本にしてみても良いと思います。

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(厚岸蒸溜所の裏手。早い秋の終わり、忍び寄る冬の気配…)

厚岸 シングルモルト 白露 55% 二十四節気シリーズ

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky 
"Hakuro" 15th season in the 24 "Sekki" 
700ml 55% 

評価:★★★★★(5)

香り:ビターでスモーキーなトップノート。焦げた樽感、根菜、スパイシーでウッディなアロマ。奥には麦芽やオレンジママレードの甘さも感じられ、複雑で強く広がる。

味:リッチでピーティーな口当たり。最初はねっとりと厚岸らしいコク、オレンジや黒砂糖を思わせる甘みが感じられるが、即座に柑橘の皮、ピート、濃く入れたほうじ茶、ビターなフレーバーがピートスモークと共に支配的に広がる。余韻はビターでスモーキー、土や根菜を思わせる要素とタンニンが混ざりあう。

24節気シリーズの折り返し、第12弾。厚岸のリリースは総じて麦芽とピート、そしてミズナラ樽由来のフレーバーが軸になることが多い。今作はここにシェリー樽やワイン樽由来の個性が合わさった、系統の異なるウッディネスの二重奏とピート由来のビターなフレーバーが、複雑で濃厚に広がる。また、口当たりねっとりとした質感はラム樽由来だろうか。
ベースの酒質は熟成を経て間違いなく成長しているが、個人的には樽感の強さが本作は少々アンバランスに感じられた。ハイボールもややタンニン、渋みが濃く、フレーバーの複雑さを評価するか全体のバランスを評価するかで好みが分かれる印象。好きな人は間違いなく好き。

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3ヶ月に一度のペースでリリースされる、厚岸蒸溜所の二十四節気シリーズ。気がつけばファーストリリースから3年が経過。いやいや、24本って長いなーと思った2020年のその時から、気がつけば折り返しの12弾です。

原酒は3年ベースだったものが平均4年となり、熟成感や香味のまとまりが明らかに良くなってきた最近の厚岸リリース。今作も酒質の成長が感じられる味わいとなっています。
一方で今作、白露は樽由来の風味が強くてアンバランス、好みの分かれる部分があるなと感じさせる要素もありました。
樽構成比率は、北海道産を含むミズナラ樽が15%、シェリー樽15%、ワイン樽30%、バーボン樽30%、ラム樽10%あたりと予想。ピーティーな原酒の割合も多く、ウッディでビターな仕上がりはレビューの通りです。

発売した8月下旬に即開封、その後時間を置きながらじっくりテイスティングしていくものの、どうしても自分はこの苦味が気になってしまう。
特に今年は夏が長かった、というかこの記事を書いてる11月上旬であっても、半袖半ズボンで居られる気温が続いてますが、ようやく夜は涼しくなってきて、ふとアウトドアで飲んでみるとこれが悪くない。焚き火と紅葉、清涼な空気と厚岸 白露、是非そんな組み合わせを試して欲しいです。

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さて、二十四節気シリーズで積極的に3年、4年と言う若い原酒を使っている厚岸蒸溜所のリリースですが、勿論それを使わなければリリースなんて出来ないという原酒事情はさておき、もう一つはリフィルカスクを作るという目的があります。
元々寒暖差が大きく夏場は温暖な日本の気候、昨今は地球温暖化で北海道であっても30度越えは珍しくありません。

その環境において長期間の熟成を目指す場合、古樽の確保は厚岸に限らず各クラフト蒸留所の共通課題と言えます。
将来に向けて原酒を確保しておく必要があるのでは?こんなにリリースして大丈夫か?
たまにそんな疑問も見聞きしますが、いやいや将来に向けては原酒だけでなく、その時間で適正な熟成感をもたらす樽と熟成環境の確保が必要なんです。
30年経って蓋を開けたら全部激渋タンニン丸じゃ、とてもリリース出来ません。

また厚岸蒸溜所は目指す“厚岸オールスター”たる機能、原料が揃ってからが本当のスタート。現時点では、発表されていないモルティング設備と厚岸ピートのパーツが残っていますので、スタート地点まであと一歩といったところでしょうか。
ノンピート原酒は今作の白露にも使われているように、北海道産麦芽のりょうふう、ミズナラ樽、酵母で仕込まれたものがあるため、着実に準備は整っていますが、厚岸ピートについてはまだ準備段階なのです。

かつて再稼働したアードベッグが、10年計画でオフィシャルスタンダードを復活させましたが、それと同じように厚岸蒸溜所もそれくらいの時間が必要なのだと思います。
そう考えると、二十四節気シリーズに残されたあと12作、残り3年間を経た先が蒸留所としてはちょうど10年です。
今回のリリースで見られた酒質の成長と樽感のアンバランスさ、これが将来どのように実を結ぶか。次回作も今から楽しみです。

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厚岸蒸溜所 シングルモルト 雅 55% 免税店向けリリース

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THE AKKESHI “MIYABI”
Single Malt Japanese Whisky 
For Travel Retail 
700ml 55% 

評価:★★★★★★(6)

香り:スパイシーでスモーキーなトップノート、ビターオレンジや夏蜜柑などの爽やかでほろ苦いアロマ。微かに乳酸系の酸や香ばしさもあり、一本芯の通った複雑さを感じさせる。

味:度数を感じさせないねっとりとした口当たり。オレンジを思わせる甘酸っぱさとスモーキーさ、香ばしい麦芽風味。徐々にスパイシーで、口内をひりつかせる度数相応の刺激。ほろ苦く焦げたようなピートフレーバーに、ウッディな甘さが混ざり、長く続く。

やや若さはあるが、ミズナラ樽に由来するスパイシーさや柑橘の要素を主体に、奥には厚岸モルトの個性たる麦芽風味、ピートフレーバーを感じることが出来るはっきりとした作りのシングルモルト。
情報が公開されてないため、飲んだ印象からスペックを分析すると。フェノール値は30PPM程度、熟成年数は4年程度、キーモルトは和柑橘香る個性から北海道産ミズナラ樽原酒と思われる。比率を予想すると、ミズナラ樽7割、バーボン樽1〜2割、残りはシェリー樽、ワイン樽を隠し味といったところか。
ハイボールにするとスパイシーさが収まり、麦芽と樽由来の甘みが主体となって、実に飲みやすい。厚岸の酒質の良さが光る1本。

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北海道、釧路よりもさらに東、車で1時間程の場所にある、厚岸町の蒸留所。
麦、ピート、樽、水、酵母、全て地のものでウイスキーを造る、「厚岸オールスター」を掲げた取り組みを掲げ、その理想の実現に向けて着実に準備を進めていることは、改めて説明の必要はないかと思います。

その厚岸蒸溜所のリリースといえば、広く知られているのは2020年からリリースが始まっている二十四節気シリーズです。1年間を12ヶ月ではなく24の季節で区切る古来の整理の中で、それぞれの季節をイメージしたウイスキーをリリースしていくもので、限定品ながら厚岸蒸溜所のスタンダードなブランドとして位置付けられています。
言い換えると、厚岸蒸溜所のウイスキーを飲もうとすると、基本的には二十四節気シリーズのどれかということになるのですが・・・実はそれ以外にも、プライベートボトル、異なる市場や地域を限定したリリースなど、あまり知られていない限定品があります。

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※シングルモルト厚岸 ブレンダーズチョイス
AFトレード社がリリースしたシングルカスク。通常の複数樽ブレンドよりも、個性がはっきりとしており、麦芽風味や酒質の良いところを感じやすい。去年あたりからPBでシングルカスクリリースが国内向けにも出てきたので、機会があればぜひ飲んでみてほしい。

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※厚岸 ブレンデッドウイスキー 牡蠣の子守唄
厚岸町内だけのウイスキーとして2021年にリリース。基本的に厚岸町以外に流通していない地域限定品で、海外原酒と厚岸のモルトをブレンドし、厚岸町の名産品である牡蠣に合うスモーキーで麦芽風味の中にソルティーなフレーバーを感じるウイスキーとなっている。


さて、今回紹介する、シングルモルト厚岸“雅”は、国際線免税店向けに2022年にリリースされたシングルモルトです。
樽構成、原酒構成、諸々情報がオープンになっておらず、裏ラベル等への記載はおろか公式にも紹介ページがないため、謎のシングルモルトとなっており、実は私も全てを把握しているわけではありません。

蒸留所関係者に確認したところ、キーモルトが北海道ミズナラ樽に北海道産麦芽、つまりオール北海道熟成の原酒であることと、そしていくつかのバックストーリーがあることがわかりました。
同スペックの原酒は、オリエンタルな香味のあるものに加え、スパイシーで和柑橘系のフレーバーを感じられるものが多く、本シングルモルトからはその個性をはっきりと感じることが出来ます。厚岸蒸溜所の理想の実現に、着実に準備が整っていることを感じさせる味わいです。
一方、それ以外に香味から想定されるスペックはテイスティングで紹介しておりますので、ここから先は本リリースの背景にあるエピソードを紹介していきます。

まず“雅”というネーミングは、同蒸留所の代表である樋田氏のご友人の名前から1文字を取ったもの。そしてこのウイスキーは、急逝されたご友人への追悼としてボトリングされたものだそうです。
ご友人はどちらかというと下戸であったそうですが、天国でハイボールを楽しんで貰えたら…と。そう、テイスティングでも触れましたが、本リリースはストレートよりハイボールの方が、酒質の良さ、麦芽や樽由来の甘さが引き立って、非常に親しみやすくなるのです。
ひょっとするとこのリリースの原酒構成には、立崎ブレンダーではなく樋田氏が関わられているのかもしれません。

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そして“雅”にまつわるもう一つのエピソードが、この商品名が既に他社の商標としてあり、リリースにあたってハードルとなったことにあります。
それはそうですよね、お酒の名前として違和感のない文字ですし…。
ですが、上述のリリース経緯と1度だけの発売ということで、特別に許可を頂けたのだそうです。義理と人情といいますか、相手の狙いが悪意でない以上、同じ心で対応する。
ウイスキー関連で、あるいは本業側では結構ギスギスした話を見ることも珍しくないのですが、久しぶりにスケールの大きさ、懐の広さを感じる話だなと思えるエピソードでした。

シングルモルト厚岸 雅はバックバーを含め国内市場ではあまり見かけませんが、もし見かけたら単なるウイスキーというより、自分の目指す夢を友人に伝える、そんな意味を持ったウイスキーとして見て貰えたらと思います。

厚岸蒸溜所 ブレンデッドウイスキー 大暑 2022年リリース 48%

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THE AKKESHI 
"TAISHO" 
Blended Whisky 
A Fusion of the Worldwide Whiskies 
12th season in the 24 Sekki 
Bottled 2022 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(6)

香り:土っぽさと焦げ感を含むピート香、燻した麦芽、スモーキーさの中にグレーン由来の穀物系の甘さとスパイシーな刺激。それらに複数の樽に由来するバニラ、ニッキ、ハーブ、柑橘、緑茶葉…様々なアロマが混じり、湧き立つような複雑さがグラスの中で陽炎のように揺らめき立ち上っている。

味:甘く厚みのある麦芽風味、含み香と共に広がるスモーキーなピート香。そこにグレーン原酒の甘さと粘性、柑橘感、スパイス、微かにお香を思わせるミズナラ樽のニュアンスやワイン樽由来のベリー系のアクセント。これらが軽快な刺激を伴って感じられる。
余韻はピーティーでビター、ウッディな苦みと焦げ感からミズナラ樽由来の個性的な甘みとスパイシーさが鼻孔に抜け、どっしりとした余韻が長く続く。

複雑でボリューミーな香味構成。モルトとグレーンの比率は6:4程度と推察。樽はバーボン樽が一番比率として高そうだが、次点はミズナラの新樽で20~30%といったところか。該当するキャラクターが随所にあり、他にはワイン樽の個性もアクセントとして感じる。熟成グレーンのコクと粘性、ミズナラの独特のスパイシーさにハーブや和柑橘感が、ピーティーで多彩なフレーバーを繋いでいる。
なおハイボールにすると複雑さの要因だった樽感、ボリューミーさを支えていたグレーンの甘みが軽くなるためか、スモーキーフレーバーを残し、すっきりとした味わいに変化する。

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「THE AKKESHI BLEND」は、厚岸蒸溜所が自社蒸留したモルト原酒と、グレーンスピリッツで調達後、厚岸蒸溜所で3年以上熟成したグレーン原酒を使いリリースするブレンデッドウイスキー。二十四節気シリーズとしては8作目、ブレンドとモルトが交互にリリースされる同シリーズにおけるブレンデッドとしては4作目となります。

”大暑”は二十四節気では凡そ7月下旬から8月上旬にあたり、読んで字のごとくの時期です。
今年は本当に暑かった…ですが関東では適度に雨も降り、空梅雨なんて言われてましたが、結局そんな心配はなく。その後に続くのは立秋→処暑→白露。昨年リリースしてWWAで受賞した同じ厚岸ブレンドの”処暑”が出てくる。二十四節気シリーズは1年に4リリースされていて、このシリーズが1年を2周して徐々に季節が埋まってきたんだなと、感慨深くもなりました。

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今回のリリースの特徴は、一つは北海道産麦芽(りょうふう)と北海道産ミズナラ樽熟成原酒による柑橘感とスパイスを連想する香り、含み香。そしてもう一つが前述のミズナラ樽原酒やグレーン原酒等、構成原酒の熟成感が増してきたことによる、バランスの取れた複雑さにあると考えています。

レシピの傾向も変わってきていて、確認したところ昨年は3年熟成の原酒をベースとしていたものの、そこから使われている原酒の最低熟成年数が1年増えたとのこと。粗さの強かった原酒の傾向が変わり、ブレンドのレシピ構成では2021年リリースのブレンデッド2作(雨水、処暑)に比べてまとまりのある方向にシフトしています。
ミズナラ熟成原酒の成長もその一つ。以前は目立たなかったオリエンタルな香味に通じる要素が香味の端々にあり、キーモルトたる働きをしています。

また、グレーンに関しては、個人的な経験から厚岸熟成グレーンの事例を紹介すると、昨年春、GLEN MUSCLE No,8 Five Spiritsのレシピ構成に関わらせてもらった際、ブレンドに使える原酒の選択肢に厚岸熟成グレーン(バーボン樽3年)がありました。ブレンドに欠かせないグレーンという1ピース、話題性としては間違いなく厚岸熟成グレーン一択です。
ですが最終的に使ったのは輸入スコッチグレーンの11年。なぜ使わなかったかと言うと、まだ熟成が短く香味がドライであり、グレーンとしての甘み、コクが弱いと感じたためでした。
一方でブレンドとしては前作となる“大寒”のリリースからは、グレーンに期待するフレーバーや特性も増してきたように感じます。たった1~2年の違いですが、日本の熟成環境では大きな違いとなり得るのです。

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ちなみに、前作”大寒”と香味の傾向を比較すると。原酒の成長というよりはブレンドの方向性の違いが大きく、冬から夏、静寂から躍動、表現する季節の違いと変化が楽しめるように思います。
大寒は1:1に近い比率でグレーンが使われていて、ややドライで静かな印象のある仕上がり。例えるなら雪が降った次の日の朝、朝日を浴びて一面白く染まった平野の景色を連想させる味わいに対して、大暑はグラスの中から陽炎のように湧き立つ個性、ボリュームのある味わいが、夏の暑さとリンクして感じられました。

冒頭述べたように、厚岸蒸溜所がリリースする二十四節気シリーズは1年間に4作品。シングルモルトとブレンデッドが2作品ずつリリースされており、来年は12本で折り返しを迎えます。つまり、順調にいけば後4年程でシリーズが完結するわけです。
それだけリリースを重ねる中で、今回のブレンドは蒸溜所としてもリリースとしても、一つ完成度の高さで階段を登った印象を受けました。

厚岸蒸溜所の熟成3年以上の原酒については、おそらくあと3~5年くらいで最初のピークを迎えるでしょう。一方で厚岸蒸溜所ではウイスキー造りにおいて毎年様々なアップデート、取り組みを行っている最中で、今なお蒸溜所そのものが発展途上です。
熟成環境は少し離れた海岸沿いの高台に第3、第4熟成庫が完成し、現在は第5貯蔵庫を建設中。それ以上に、今回使用されている北海道ミズナラ樽と北海道産麦芽りょうふうと組み合わさり、蒸溜所が目指す厚岸オールスターを形作る最後のピースと言える計画も、いよいよ佳境を迎えているところ。

コロナ禍の影響もあって多少遅れはあったようですが、きっと次のリリース前後で大きな発表があるのではないか。そして今回のリリースは、厚岸オールスターという蒸溜所が目指す理想像に組み込まれる、重要な要素、その一部を味わうことが出来る。マイルストーンな1本でもあるのです。

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※厚岸蒸溜所第3、第4、第5熟成庫(建設中)を見下ろすドローン写真。海沿いから内陸に入った場所にある蒸溜所から数キロ離れ、海沿いの高台に熟成庫が建設されている。画像引用:https://www.builder-net.jp/zisseki_kobetsu?id=7539

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※道端に落ちていたら、牛か馬の落とし物に見間違えそうだが、これが極めて重要な、最後の1ピースである。

厚岸蒸溜所 せいめい(清明) シングルモルトジャパニーズウイスキー 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Japanese Whisky PEATED 
Bottled 2022 
"Seimei" Season
"Radiance of Pure Life"
700ml 55%

評価:★★★★★★(6)


香り:フレッシュで強いトップノート、序盤は鼻腔への刺激が酸と共にあるが、徐々に古酒感のあるどっしりとした甘さ、黒土、カカオ、微かにオレンジの要素があり、温度の上昇で前に出てくる。

味:厚岸蒸溜所の個性たる柔らかいコク、麦芽の甘み、柑橘を思わせる酸味と共に、徐々に存在感のあるピートフレーバー。微かな塩気。余韻は徐々にスパイシーで、ほろ苦いピートスモークがソルティーなニュアンスを伴って長く続く。

樽構成はほぼバーボン、シェリーとワインがアクセント、隠し味にミズナラと予想。厚岸らしいキャラクターとして麦芽由来の甘みとコク、フレーバーの幅の多彩さが若さを包み込む、バランスの良い仕上がり。
ハイボールにすると未熟感少なくクリアでコクのある味わいから、ピートフレーバーが鼻腔に抜けていく。過去リリースでは芒種に似ており、将来性も強く感じるGOODリリース!

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先月初頭にリリースされた、厚岸24節気シリーズの第7弾。せいめい。
・・・7・・・7!?
特に驚くことでもないのかもしれませんが、もう1/4がリリースされたんですね。

ちょっとぼやきタイム入りますが、最近1週間があっという間なんですよ。
朝起きて、洗濯機回して、朝ごはん作って皿洗いして、洗濯物干してゴミ捨てして、会社行って会議出て、残業して23時くらいに帰ってたまにスペースやって1日が終わる。
そんなルーティンを繰り返してたら、気がついたら週末が来ていて、それを繰り返したら1ヶ月が終わっている。

このボトルも個人的には開封したばっかりというつもりなんですが、Twitterに速報レビュー掲載してから1ヶ月以上経ってるんですよ。これが加齢か・・・
って掲載が遅れた言い訳はこれくらいにして。

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(厚岸24節気シリーズ過去6作。厚岸から見る水平線、湿原の地平線を連想するブレンド3作に比べてシングルモルト4作は個性的なデザインにもなっている。)

今作のシングルモルト「晴明(せいめい)」は、蒸溜所側に確認したところ、
バーボン樽原酒 73%
シェリー樽原酒 13%
ワイン樽原酒 10%
ミズナラ樽原酒 2%
以上の原酒構成であるとのこと。
芒種に近いなと感じた印象は間違いではなく、むしろシェリーやワイン樽の比率が高いと思われる分、甘酸っぱさや柑橘系のフレーバーなど、いい意味での複雑さが増している構成。

そしてこれらがバランスよく感じられるのは、原酒の平均熟成年数が増えたことだけでなく、輸入麦芽だけでなく、北海道麦芽を使ったことで原酒のフレーバーの多彩さが全体を包み込んで、若い感じはありつつも、不思議と飲み進めることができてしまう。個性を楽しめるウイスキーとして仕上がっている点が一つ。

もう一つは、造り手のブレンドノウハウの向上もあると考えられます。
厚岸蒸留所は24節気シリーズを作り上げるにあたり、1リリースして1ブレンドレシピをつくってまたリリースするという、その場その場で手元に使える原酒を使う手順ではなく。
1年間のリリース計画を立て、その時点の原酒から成長を予想し、求める味に対して先にレシピを作り、原酒の成長を確認しつつ、必要に応じて若干レシピを変えていくようなスタイルをとっています。

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現時点で既に厚岸蒸溜所側には次回作だけでなく、シリーズ折り返し地点までの想定レシピが完成しているそうですが、この作り方は蒸留だけでなく熟成やブレンドの経験がないと出来ません。トライ&エラーを重ねながら、原酒だけでなく確実に蒸留所も成長してきている。。。ということを感じる仕上がりでもあるわけです。

北海道の熟成環境は、先日レビューした鹿児島、嘉之助蒸留所に比べると気温差が大きく、夏場を除いてはゆったりと熟成が進みます。
また、厚岸蒸留所では昨年夏から北海道内地ふらので試験熟成を行うなど、新しいチャレンジも始めており、話題は豊富ですが、熟成した原酒が真価を発揮するのはこれからであると。
そこに、先に触れたように作り手としての成長も合わさって、ますます完成度の高いリリースが増えてくるだろうと。
シリーズ次回作、今夏リリースのブレンデッドウイスキー大暑も楽しみにしております。

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