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厚岸 シングルモルトウイスキー 寒露 55% 2020年リリース

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THE AKKESHI 
Single Malt Whisky 
"KANRO" 
17th. Season in the 24"Sekki" 
Bottled 2020 
700ml 55% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後1週間以内
評価:★★★★★(5-6)

香り:焦げたようなスモーキーさに、原酒の若さに由来する酸は、熟していない果実を連想する。スワリングしていると焚き木の香りの奥にエステリーな要素、ニッキ、バタービスケットのような甘いアロマ、微かに酵母っぽい要素もあり、複雑。

味:口当たりはねっとりとした甘みとウッディな含み香、徐々に香り同様若い原酒由来の酸味、焦げたようにほろ苦いピートフレーバーが適度に広がる。後半は籾殻や乾いたウッディネス、微かにタイムのようなハーブ香。余韻は軽くスパイシーでスモーキーだが、序盤に感じられた甘みが口内に張り付くように長く残っている。

若さや粗さは多少あるが、度数ほどの口当たりの強さは感じない。樽由来の要素とバッティングで上手くまとめられている。豊富な樽由来の要素の中に酒質由来の要素もしっかり残っており、各要素ははつらつと、あるいは混然としてリッチで複雑な味わいが広がる。
加水すると樽由来のフレーバーが落ち着き、ややクリアでエステリー寄りの香味構成、酸味が前に出てニューポッティーな面も感じられる。3年間の熟成と考えると、その成長曲線は実に興味深く、更なる熟成を経て馴染んだ先にある可能性に、想いを馳せることが出来る仕上がり。

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2016年10月に創業した厚岸蒸留所からリリースされた、シングルモルトの700mlフルボトルの第一弾。過去、ニューボーンとして4種リリースされたファウンデーションリザーブや、3年熟成のサロルンカムイでの経験を活かし、バーボン、シェリー、ワイン、ミズナラの各樽で熟成されていたノンピート原酒、ピーテッド原酒をバッティングしたものです。

銘柄の由来は、1年間を24節気に分類すると、リリースの準備が完了した10月上中旬は17節気で”寒露”に当たることから。この24節気で有名なのは立春、夏至、大寒がありますね。今後同様の整理で1年間に3~4銘柄、シングルモルトとブレンデッドウイスキーをリリースしていく予定とのことで、それぞれの節気にどのような方向性のウイスキーが造られるのか、作り手の狙い含めて楽しみです。

さて今回のシングルモルト、熟成年数は3年以上となりますから、逆算すると仕込みの時期は2016年の創業初期から、翌年2017年の初夏あたりまでの原酒でしょうか。
厚岸蒸留所のピーテッドモルトは1年間の仕込みのプロセスの中で後半、蒸留所のオーバーホール前に仕込んでいるので、ノンピート原酒は2016年、2017年のものが、ピーテッド原酒は2016年のものが使われていると推察。ウイスキー造りの経験のなかった蒸留所オーナーの堅展実業にあって、蒸留器メーカーから技術者を呼ぶなどして、どのように原酒に厚みを出すのか、求める酒質を作るのか、苦労していた時期だったと記憶しています。

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(ウイスキーガロア誌10月号に掲載されていた、厚岸蒸留所の特集、および樋田氏のインタビュー記事。リリースの経緯やウイスキー造りの苦労等、充実した構成で、本リリースを飲みながら読むと、さらに味わいに深みが増すような気がする。)

今回のリリースは、上記ウイスキーガロア誌の記事では「厚岸の酒質はこれと明確に感じられるもの」と、樋田社長から語られています。
自分の理解で”厚岸のキャラクター”を整理すると、まずは香味のレイヤーの豊富さが特徴だと思います。複数種類の樽をバッティングしていることから、勿論香味の幅は増えますが、そうであっても3年熟成ながらしっかりとした樽香と、樽に負けないコクと甘みのある味わい、そして果実を思わせる酸味のクリアな広がりが、素性の良さとして分類できます。

それぞれの特徴について考察していくと、過去にカスクサンプルを頂いた際の記憶では、2016年蒸留に比べて2017年蒸留のほうが酒質が向上しており、ボディに厚みが出ていました。例えば2017年仕込みの原酒の比率が増えた結果、今回のリリースに感じられるコクのある味わいに繋がったのではないかと。
素性の良さについては、蒸留所の特徴として度々語られる見学も制限するこだわりの仕込み、衛生面の管理や発酵のノウハウが良い方向に作用しているのではないか。

また今回のリリースは、2月にリリースされたサロルンカムイに比べてシェリーやワイン樽等に由来する甘み、ミズナラ樽由来の焦げ感やニッキ等のスパイスといった、樽由来の香味も濃くなっており、その分ピート香も穏やかに感じられます。特にワイン系の樽の影響が強いでしょうか。レシピの違いもあると思いますが、熟成期間として夏を超えた(あるいは夏にかかった)ことによる影響が、厚岸という土地が持つ特徴として香味の中に表れているように感じます。

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(厚岸蒸留所が2018年からリリースしてきた、200mlシリーズ。それぞれ異なる原酒で構成され、厚岸蒸留所の目指す姿のピースを一つずつ知ることが出来た。当ブログでのレビューはこちら。)

最近、創業開始から3年が経過し、他のクラフトディスティラリーからのシングルモルトリリースも増えてきています。
これらのリリースは、総じて仕上がりの粗さを内包しており、必ずしも完成度の高いものばかりではありません。ただ、ウイスキーにおいて3年熟成は旅の始まりのようなものです。例えば、子供の音楽の演奏会に行って、その技術にダメ出しする人は少ないでしょう。むしろ奏でる旋律の中にこれまでの努力を、その姿に将来への可能性を見ているのではないでしょうか。

20年、30年操業している蒸留所がリリースする3年モノと、操業期間5年未満の蒸留所がリリースする3年では位置づけが違います。では、この”寒露”を飲んで将来への可能性が見えたかと言えば、それはテイスティングの通りです。
蒸留所としては、オール厚岸産を目指して麦芽の生産、ピートの採掘、製麦プロセスの新設・・・様々な取り組みを行っています。原酒についても今はまだ各要素が強く主張し合っている部分はありますが、熟成を経て馴染んでいくことで、混然ではなく渾然一体となった味わいに仕上がっていくことでしょう。その蒸留所と原酒の成長過程を、今後のリリースを通じて楽しんでいければと思います。

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(厚岸シングルモルト、寒露(左)とサロルンカムイ(右)。色合いにほとんど違いは無いが、寒露のほうが濃く複雑な味わいに仕上がっている。)


以下、雑談。
皆様、ご無沙汰しております。
4か月間もブログを更新していませんでした。ブログを5年以上やってきて、1週間ほど更新がないときは何度かあったと思いますが、これほどの長期間は初めてです。
長い夏休みになりましたが、そろそろ再開します。

休止の理由はいくつかあるのですが、生活スタイルを見直すために一度ブログを完全に切り離してみたというところですね。
今このコロナ禍という状況において、自分にとって優先するべきは何だろうかと。また子供が小学校に上がり、行動範囲や遊びの内容も広がって、子供との時間を最も楽しめるだろう時期に入ったことも、時間の使い方を見直すきっかけになりました。
自分は不器用な人間で、やるなら徹底してやらないとスイッチが切り替わらないので、一度完全にブログ活動をOFFにしてみたわけです。

ウイスキー繋がりの知人のところには、コロナに感染したんじゃ、何か問題を抱えたんじゃ、あるいはウイスキーに愛想を尽かしてワインに行ったんじゃないかとか、色々と噂や安否確認の質問もあったようですが、自分は至って健康ですし、仕事もまあ残業が尽きない程度には順調ですし、可能な範囲でウイスキーも楽しんでいます。
ただ、今後これまでと同様の頻度で活動を再開するかと言うとそうではなく。更新は不定期で、記事も短くなると思います。

この5年間は、自分なりに全力で、かつ真摯にウイスキーを探求したつもりです。
得るものは多く、様々な繋がりも出来ました。蒸留所の方と直接やり取りをしたり、オリジナルウイスキーリリースにも関われたり、何の後ろ盾もない愛好家でもこういう風に世界が広がるんだなと。
一方で周囲には、自分以外にもウイスキーの発信をする愛好家が増えてきました。是非他の方の発信もご覧いただき、そのうえでたまに自分のブログやLiqulの記事も見て頂けたら嬉しいですね。
今後とも、くりりんのウイスキー置場をよろしくお願いします。

シングルモルト 厚岸 サロルンカムイ 2020年リリース 55%

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THE AKKESHI 
Single Malt Whisky 
"Sarorunkamuy" 
Lightly-Peated 
Bottled January 2020 
200ml 55% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:自宅
評価:★★★★★(5)

香り:干し草や木材が焦げたようなスモーキーな香りに、若い原酒の乳酸やレモングラスのような柑橘香から、バニラや蒸した穀物のような甘さ、ほのかに黒砂糖。ニッキを思わせるスパイス香がピートと合わせて感じられる。

味: やや酸を感じる若いモルティーさから、クリーミーでピーティーな口当たり。ホワイトペッパーを思わせるスパイスとオークのバニラ、ローストした麦芽のほろ苦さにレモンバウムのような駄菓子的な柑橘感が続く。 
余韻で鼻腔に抜けていくミズナラのスパイシーかつウッディさをアクセント、土っぽさと焦げたようなピーティーなフレーバーが長く続く。

強くはないが主体的に感じられるピート香と、ミズナラ樽のスパイシーさを軸に複数の樽感とが若さを中和し、バランスよく仕上げてある。ピートはヨード等のアイラタイプではなく、スモーキーで木材が焦げたようなほろ苦さ。ボディにあるコクのある甘味、余韻にかけて鼻腔に抜けるミズナラ香が良いアクセントになっている。加水すると燻した麦芽のスモーキーさと、若い原酒の酸が目立つ。これまでリリースされてきた厚岸ウイスキーの集大成。ヒンナ。

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ファン待望、厚岸蒸留所初のシングルモルトリリース。3年以上熟成した2016年蒸留のノンピート、ピーテッド原酒をブレンドしたもので、樽はバーボン、シェリー、ワイン、そしてバッティングの軸になる原酒は、北海道産のミズナラ樽で熟成させたピーテッド原酒を使用した、こだわりの1本です。

厚岸蒸留所は目標のひとつにオール北海道産のウイスキーを掲げており、このファーストリリースはゴールではなく始まりとして、軸になる原酒を北海道産ミズナラ樽のものにしたのではないかと推察します。
その中身は3年熟成のシングルモルトであるため、多少なり若さは見られます。
ただ、他のクラフト同様に現時点ではこれ以上の熟成年数のものはない訳ですから、若さをもってNGとする評価は、無い物ねだりというか違うモノ飲んでくださいとしか言えません。その上でこのリリースの見所はというと、複数の原酒の織り成すバランス、そしてこれまでリリースされてきた、ニューボーン4作との"繋がり"にあると感じました。

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(厚岸蒸留所リリースの系譜。過去4作のニューボーンは、それぞれに意味や位置付けがあるが、サロルンカムイはこれらの集大成であるように感じられた。また3年未満でSpirit表記だったものが、いよいよ今作でSingle Malt表記となったのも感慨深い。過去4作のレビューはこちら

これまでリリースされたニューボーンは、上の写真の通り
・1st:ノンピート原酒(バーボン樽)
・2nd:ピーテッド原酒(バーボン樽)
・3rd:ノンピート原酒(ミズナラ樽)
・4th:ブレンデッドウイスキー(バーボン、ワイン、シェリー樽)※ほぼノンピート
以上の構成でリリースされてきました。
1stはまずベースとなるプレーンな厚岸蒸留所の酒質を、2ndと3rdは将来のシングルモルトとしてのリリースを見据えた同蒸留所のスタイルを、そして4thはブレンデッドウイスキーとして同蒸留所の方向性、ワインやシェリー樽等の過去使ってこなかった様々な樽を用いるスタイルとして。
いずれもそれぞれが、将来の厚岸ウイスキーを見据えたマイルストーン的な意味を持っていました。

一方、サロルンカムイのフレーバーを紐解いていくと、その先はこれらすべてのニューボーンにたどり着くように感じます。
軸となっているミズナラ樽の原酒は言わずもがな、熟成を経たピーテッドモルトや、ノンピートのバーボン樽原酒のキャラクターが随所にあり、特にピートフレーバーはノンピート原酒とのバッティングでライトに整えられて全体のなかでアクセントになっている。

また、比率としては少ないものの、ミズナラとピートという厚岸蒸留所がシングルモルトの主要要素に考えるフレーバーを潰さず、ブレンデッドウイスキーで言うグレーン、蕎麦で言う小麦粉的な繋ぎの役割を果たして全体の一体感を産み出している、シェリー樽やワイン樽由来のコクのある甘味の存在。
これは何の裏付けもない考察ですが、まるでニューボーンで表現された個性をパズルのピースに、足りない部分を補ってひとつの形に仕上げた集大成であるように思えました。

集大成というと、これをもって厚岸蒸留所の旅が完結するかのような表現にもなってしまいますが、むしろここからが本当の始まり。北海道産の原料を使った仕込みはまだまだこれからですし、熟成していく原酒のピークの見極め、厚岸産牡蠣とのペアリング。。。何より創業時に掲げられた、アイラモルトを目指すという理想も残されています。厚岸蒸留所の独自色は、まさにこれから育とうという段階にあります。
ですが、まずこの段階で3年モノとしてリリースできるベストなシングルモルトを作ってきたのかなと。その意味で、集大成であると感じたのです。


記念すべきファーストリリースに銘打たれた"サロルンカムイ"は、アイヌ語でタンチョウヅルを体現する神、湿地にいる神を意味する言葉であり、ボトルもそのイメージに合わせて白と赤のカラーリングとしてあります。
厚岸蒸留所は別寒辺牛湿原に隣接する土地に建てられているだけでなく、今後国産ピートの採掘も行われる予定であることから、湿原の神様との関わりは切ってもきれないものです。
お酒を神様に捧げるのは八百万の神が住まう日本的な発想ですが、ウイスキーが神秘を内包するものである以上、厚岸蒸留所の今後に一層の加護があればと思えてなりません。

月並みですが、樋田社長並びに厚岸蒸留所の皆様、3年熟成となるシングルモルトのリリース本当におめでとうございます。
この約2年間のニューボーンのリリースやイベントでの原酒のテイスティング等を通じ、ファーストリリースに向けた濃密な準備期間を経験できました。
今後のリリースも楽しみにしております。

厚岸 ニューボーン 第4弾 ブレンデッドウイスキー 48%

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AKKESHI 
NEW BORN 2019 
FOUNDATION #4
Malt and Grain Spirit 
Bottled July 2019 
200ml 48%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封直後
評価:ー

香り:ツンとした刺激。ウッディでほのかに焦げ感のあるオーク。レモングラスや柑橘の柔らかい酸と、微かにニッキ、バニラや蒸かした穀物を思わせる甘さも伴う。

:口に含むとケーキシロップのような色の濃い甘味と焦げたウッディさが感じられた後で、すぐに若い原酒由来のレモンなどの黄色い柑橘を思わせる酸味、徐々に和生姜。ボディはミディアム程度、樽感で多少底上げされており、スパイシーさと共にほうじ茶や土っぽいほろ苦さを感じるフィニッシュへと繋がる。

全体的に若い構成で、余韻にかけて粗さもある。端的に言えばそうしたブレンドだが、これまでのニューボーンと異なり若いなりにバランスの良さ、フレーバーの繋がりも見られる。グレーンやシェリー樽由来の甘味が全体を整えているのが、若い原酒主体だからこそそれが分かりやすい。少量加水するとまとまり、バランスが良くなるとともに奥に潜んだピートが微かに感じられる。

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厚岸蒸留所の今を伝える、ニューボーンFOUNDATIONSシリーズの最終リリース。
これまでモルトスピリッツとしてノンピート、ピーテッド、そして北海道産の樽材を活用するミズナラ樽熟成のリリースがありましたが。これらはすべてその場限りで仕上げたようなものではなく、今後同蒸留所がリリースするウイスキー(ハウススタイル)の種とも言える、先を見据えたものでした。

一方で、今回リリースされた第4弾は、モルトではなくブレンデッドです。
これまで熟成させてきた14ヶ月から30ヶ月熟成のモルト原酒に、スコットランドから輸入した未熟成のグレーン原酒を、モルト同様に厚岸の地で熟成させてブレンドしたという、作り手の拘りが見える意欲作。
ラベルに「新しい試み」と書かれている通り、未熟成のグレーンを熟成させて使うことと、ニューボーンジャンルでブレンデッドのリリースは、自分が知る限り前例がありません。
(設備の限られるクラフト蒸留所が、グレーンを外部調達するのは当然とも言えるプロセスですが、基本的には熟成したものが調達される。)

つまり今回のリリースも、これまでの3作と同様に、厚岸蒸留所の現在を表現しつつ、将来目指す姿を見据えたものなのかもしれません。
またウイスキー業界全体を見ると、ブレンデッドよりもシングルモルトのほうが価格帯、ブランド力が高い傾向があります。そのなかで、ニューボーン第4弾にシェリー樽熟成のモルトではなく、オール厚岸熟成のブレンデッドが企画された点に、作り手のウイスキーへの考え方というか、目標というか、ある種の愛を見たようにも感じます。

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さて、前置きが長くなりましたが、厚岸ニューボーン・モルト&グレーンの構成を香味から考察していくと、全体はしっかりとモルティーな仕上がりだと感じるフレーバー構成。実際メーカーサイトによると、60%以上がモルトとのことです。
香味には若さ故のネガティブな部分も見え隠れしますが、これはニューボーンなのだから当然で、あれこれ言っても仕方ありません。今の完成度より5年後どうなるかを、消える要素と育つ要素に分けて考えるのがニューボーンの楽しみ方であり、その視点からブレンドとしても素性は悪くないように思います。

原酒構成でメインに感じられるのはノンピートのモルト原酒。基本はバーボンとシェリー樽で、後はワインか。ミズナラは・・・ちょっとわからない。メーカーサイトではシェリー樽原酒がモルトの50%と書かれていますが、熟成期間の短さからこれまでのニューボーンでも感じられた、レモンや柑橘を思わせる酸味など原酒の香味が主となっており、そこまでシェリーシェリーした仕上がりにはなっていません。あくまで口当たりでの甘やかさに作用している程度、といった感じです。

そしてニューメイクから熟成しているというグレーンは、バーボン樽というか、リチャー感の残ったアメリカンオーク樽で熟成したものが含まれていると推察。加水と合わせて若いモルト原酒の荒さを包み込み、若いなりのバランスに寄与しているだけでなく。香味の面では焦げた樽感、バニラや蒸かした穀物を思わせる甘味に繋がっているように感じられました。

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(バーボン樽の木片を加工してチャーした、お手製ウッドスティック。樽を所有するのは難しいが、こういうアイテムでも由来する香味を学べる。今回のブレンドにも、この木片から香る要素と共通のものが感じられた。)

一方、厚岸蒸留所はハウススタイルとしてピーティーなアイラモルトを目指すなど、ピーテッドモルトに拘りがあることで知られています。
今回のブレンデッドはピーティーなタイプではなく、ほんの微かに潜む程度で、この点は少々意外でした。
それこそピーティーなほうが、若い原酒の嫌な部分のごまかしが効くため、完成度は上がりやすい傾向があります。それを選ばずあくまでバランス重視、多彩な系統に仕上げたのはそのほうがブレンドにおける原酒の働きが見えるからか。あるいは将来的にノンピート原酒はブレンデッドに、ピーテッド原酒はシングルモルトでメインに使っていくような計画で考えているのではと予想。
これまでいくつかの原酒を飲んだ上でのブレンデッドのニューボーンですから、今まで以上に考えるところがありますね。

2016年に創業した厚岸蒸留所は、今年2019年10月で蒸留開始からいよいよ3年となります。2020年初頭には、3年熟成のウイスキーがきっと市場で話題になることでしょう。
他方で3年熟成はゴールではなく、ウイスキーとしてのスタートラインです。そのゴールがどこにあるのかは原酒の性格と樽を含めた熟成環境次第ですが、少なくともこれまでのリリースや原酒サンプルを飲むかぎり、厚岸モルトのゴールが3年でないことは間違いなく。
まだ成長の途中、旅のと中である若い芽を同じ時間軸で見ていける楽しさを、引き続き感じていければいいなと思います。

厚岸蒸留所 ニューボーン 2019 ミズナラカスク 55% Foundations 3

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THE AKKESHI 
NEW BORN 2019 
HOKKAIDO MIZUNARA CASK 
Foundations 3 
Single Malt Spirit 
Non Peated 
200ml 55

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後数日以内
場所:自宅
評価:ー

香り:若さに通じる金柑などの柑橘や乳酸系の酸、乾いた木香と軽い香ばしさを伴う香り立ち。
スワリングするとバニラや蒸かしたサツマイモのような甘いアロマ。微かにニッキやハーブ、レモングラスなどのスパイス香、あるいは新しい和室を思わせるような要素が混じる。

味:荒さはあるが、熟成を考えればスムーズな飲み口。
香り同様軽い乳酸や柑橘の酸味。徐々にスパイシーでありながらクリーミーな舌当たり。薄めた蜂蜜、ほうじ茶や干し草、おがくずを思わせるビターなウッディネスが、ヒリヒリとした刺激と合わせて口内に残る。

使われた樽のサイズの関係か、樽由来の要素はそこまで過剰ではなく、酒質由来の若いニュアンスが主体で、ゆっくりと熟成が進んでいることを感じる。ボディは適度にあり、少量加水するとバッティングの影響か少し水っぽさが出るように感じられる一方、香味の酸や荒らさが落ち着き、微かにオーキーな要素があるようにも。
今まさに芽吹こうとする原酒のスタートライン。ストレート、または今の段階で楽しむならハイボールで。

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北海道、厚岸蒸留所シングルモルト、3年熟成への道。
今回のテイスティングは、その熟成過程でリリースされることが発表されている、4作のニューボーン(ウイスキースピリッツ)のサードリリースであり、北海道産ミズナラ樽で8ヶ月から23ヶ月熟成した原酒10樽をバッティングしたものです。

これまでの2作は蒸留所の酒質やハウススタイルの基準、原点を知ってもらうことを目的としたような、ノンピートとピーテッドモルトのバーボンカスク熟成品でした。
一方今回のリリースは少々位置付けが異なっており、使われた原酒の熟成期間が最長で2年弱に伸びたことによる熟成感の違いというよりは、今後北海道産のシングルモルトとして展開を予定している同地域産のミズナラ樽を用いた原酒の・・・言わば”樽香の原点”を知るリリースと言えるのではないでしょうか。

ウイスキーの最低熟成年数を3年。これを植物の成長に準えて芽吹きとすれば、今回のリリースはまだ土の中で種から根が少し伸びたぐらいの状態でしょう。その段階のものを知って、これからの成長と未来に想いを馳せながら楽しむ。
「ミズナラ樽は、伽羅や白檀などのオリエンタルフレーバーをもたらすと言われています。果たしてボトルの中の原酒は、双葉より芳しく香り立つことが出来ますでしょうか。」
というラベルに書かれた文面が、まさにこのリリースの位置付けを表しているように感じます。

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よって今回のレビューは、酒質部分よりも樽要素に重点を置いて考察していきます。
ミズナラ樽の香味と言えば、多くの消費者に求められるのが上記の文章にある伽羅や白檀のような。。。サントリーがリリースしている山崎のそれであるわけですが、現時点で厚岸に植えられた"種"から、その香りは感じられません。

ですが、これまで短期熟成から長期熟成、あるいはウッドチップまで、色々ミズナラに関する原酒を飲んできて感じるのは、ミズナラ樽で短期間の場合はスパイシーな香味のほうが強く出る傾向にあり、長期熟成の中で香木のようなアロマ、オーク樽らしい華やかさ、フルーティーな香味が、いわゆるオリエンタルな要素として徐々に濃くなってくる印象があります。
(そうした特性故、樽の使用状態や熟成環境のバランスが重要と考えられるだけでなく。あるいはバーボンバレルである程度熟成した原酒を新樽のミズナラ樽でフィニッシュすると、サントリー系の香味を擬似的に再現できたという事例もあります。)

したがって現時点の原酒でも、これはこれでミズナラ樽らしい特性が感じられる、可能性を秘めた種であると言えます。
今後この原酒が育った先にオリエンタルなフレーバーがあるかはまだわかりませんが、方向性としては、微かに日本家屋(和室)のような要素やクリーミーさが香味に混じるため、樽の要素が徐々に濃くなっていくなかで可能性は充分あると思います。
もちろん、そのためには3年だけでなく、5年、10年という時間が必要だとは思いますが・・・日本の環境でどこまで熟成を続けられるか。その点、今回のリリースによって生まれたリフィルのミズナラ樽10樽の存在も、長期熟成を目指したウイスキー作りの助けになると思います。

さて、気がつけば厚岸蒸留所創業の2016年から3年目となる2019年です。
ニューボーンのリリースも残すところあと1作。これはグレーン等の原酒を調達し、バーボン、シェリー、ミズナラ樽の各種厚岸原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーでリリースされるそうです。
そしてシングルモルト区分でリリースされる3年熟成の仕上がりは如何に。今年あるいは来年初頭の、楽しみなイベントの一つなのです。

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(厚岸蒸留所ニューボーン第1弾から第3弾。並べてみるとボトルやラベルの色合いだけでなく、箱のデザインも微妙に異なっており、ロゴがリリース毎に一つずつ増えていっている。今回のリリース、比較するなら第1弾と。)

厚岸蒸留所 ニューボーン2018 ピーテッド 58% FOUNDATIONS2

カテゴリ:
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AKKESHI NEW BORN 2018
"PEATED"
FOUNDATIONS 2
Single Malt Spirit
Bourbon Barrel
200ml 58%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封直後
評価:-

香り:フレッシュな香り立ち。シトラスやレモングラスを思わせる柑橘のアクセント、淡い潮気、酵母香と焼き上げたパイ生地のような香ばしい麦芽香。土っぽいピート香に穏やかなスモーキーさを伴う。

味:香り同様にフレッシュな口当たり、ヒリヒリとした刺激から薄めた蜂蜜の甘み、レモンバウム、香ばしい麦芽風味。中間以降はピートフレーバーが存在感を出してきてほろ苦くスモーキー、塩水のコク、荒い刺激と微かなえぐみを伴うフィニッシュ。

要所要所でバーボン樽由来の淡くオーキーな香味がアクセントになり、甘みや柑橘感など、若いなりに飲めるまとまりのある香味に仕上がっている。加水すると一瞬香り立ちが荒くなるも口当たりのコクと塩気が感じやすく、ハイボールにするとピートフレーバーが引き立つ。スモーキーでソルティー、さっぱりとした味わいを楽しめる。


北海道、厚岸蒸留所のニューボーン第二弾。創業年である2016年と2017年に仕込まれたピーテッド原酒をバッティングしたもので、熟成期間はバーボンオークで7ヶ月から16ヶ月となっています。
発売は8月27日でつい2日前ですが、イベントなどで先行試飲もありましたし、既に飲まれている方は多いかなとも思います。

創業者である堅展実業の樋田社長は、かつてアードベッグ17年に衝撃を受け、アイラモルトのようなウイスキーを日本でも作りたいと、ウイスキーづくりに厚岸の地を選んだ経緯があります。
また、現在は自身が作ったウイスキーを牡蠣にかけて食べるという夢も持たれており、厚岸蒸留所が目指すハウススタイルはこれ以上解説するまでもなく「ピーティーなアイラモルト」なのです。

一方、先日リリースされたニューボーンの第一弾がノンピートだったことは記憶に新しいところ。
これはピートフレーバーは良い意味でも悪い意味でも、酒質のネガティブな部分をマスクするため、まずはノンピートで蒸留所として作り出せる酒質を確立することが重要であるとの考えから。厚岸蒸留所では1年間のスケジュールの中で、まずノンピートを仕込み、得られる酒質の状態を確認・調整した後で、ピーテッドの仕込みに入る流れを採用しています。

つまり我々飲み手側も、ノンピート原酒で素の酒質に触れて、第二弾としていよいよハウススタイルに掲げるピーテッド原酒をテイスティングする準備が整ったというわけです。
どちらもバーボン樽で熟成された原酒が使われており、同じ環境でほぼ同じ熟成期間、ピートの有無による影響の違いを感じやすいリリース順とも言えます。

(厚岸蒸留所のポットスチル(上)は、コントロールしやすさを狙ってラガヴーリン蒸留所(下)と同型のスチルが導入されている。ただラインアームの角度はフォーサイス社曰く水平から少し角度を下げれば皆同じとのことで、ラガヴーリンほどの角度はつけられていない。)

先日更新したニューボーン第一弾の記事では、初年度の試験的なニューメイクの仕込みで熟成に耐えるボディを出すために苦労をしたというエピソードを紹介しました。
そうした試行錯誤を経て仕込まれた2016年のピーテッド原酒は、厚みのあるボディとは行かずとも、クリアで綺麗な酒質にしっかりとしたピートフレーバーが感じられ、イメージとしてはラガヴーリンとキルホーマンを足したような印象。
以前ニューメイク単体をテイスティングし、初年度から洗練された味わいにびっくりしたのを覚えています。

このニューボーンもそうした特性を引き継ぎ、若いながらも樽香をアクセントにして5〜6年熟成くらいのアイラモルトを思わせるような仕上がりを感じます。
ピート由来か熟成場所の関係か、微かな塩気を伴うのも益々アイラらしく、コクがあってハウススタイルとして求める原酒が育っているようです。
いくつか加水のパターンを試したところ、45%くらいまで加水すると、その真価を感じやすいですね。他方、原酒の若さか、樽の処理の関係か、余韻に蓄積するようなえぐみが微かに感じられ、その点が今後熟成が進むことでどうなってくるかは気になる要素でもあります。

現時点ではトライ&エラーで調整する点も多く、仕込む原酒はノンピートの比率が高いそうですが、最終的には1年の仕込みの中で8割以上をピーテッド原酒に切り替えていくだけでなく、麦、ピート、樽、全てが現地産の原酒を仕込む目標も。
今作のニューボーンは、まさに厚岸蒸留所が目指すハウススタイルの産声。可能性を秘めた味わいを、先の姿を思い浮かべながら是非楽しんで欲しいですね。

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