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オーヘントッシャン 22年 1998-2020 カーンモア for TWC 46.5%

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AUCHENTOSHAN 
CARN MOR 
Aged 22 years 
Distilled 1998/04/03 
Bottled 2020/07/06 
Cask type Bourbon #100697 
For THE WHISKY CREW 
700ml 46.5% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:少しハーブやスパイス、乾いた紙のようなアクセントを伴うオーキーさ。スワリングすると熟した洋梨、あんず、黄桃のシロップなどフルーティーな甘さと、ほのかにナッティーな熟成感のあるアロマが広がる。

味:口当たりはややドライでピリッとした刺激があり、香りで感じたフルーティーさ、特に洋梨を思わせる甘味と、甘栗や胡桃のような香ばしくほろ苦いフレーバー。徐々にウッディな渋みが口内に染み込み、ジンジンとした刺激を伴う長い余韻。

バーボンバレルの熟成だが、オーキーで華やかでドライな黄色系フルーツ…という典型的な構成ではなく。同じ黄色系でも蜜やシロップっぽいフルーティーな甘さが感じられるのが特徴。
酒質は3回蒸溜ということもあってシャープな質感があり、その片鱗は香味のなかで感じられるが、それ以上に若い原酒には出てこない熟成香が、いい意味で期待を裏切ってくれる。加水の変化も良好。


THE WHISKY CREW(TWC)向けのオーヘントッシャン。
 TWCクレジット入りカーンモアは、これまでクライヌリッシュ1993、グレンキース1992、そしてこのオーヘントッシャン1998と3種類リリースされていますが、どれも当たりなボトルだったと言えます。

選定者の好みなのか、少し枯れ気味な要素はこの3種に共通するところですが、それ以上にリッチで熟した果実を思わせるフルーティーさも共通項。このオーヘントッシャンも中々ですが、特にグレンキースがすごかったです。
また、リリース直後は「ちょっと高いよね」なんて言われて即完売はしないのですが、じわじわ口コミで広まって、買おうと思ったらなかった、なんてオチも2回続いているシリーズとなっています。

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(知人からブラインドで出題されたTWC向けのグレンキース1992。バーボン樽だがこの色合い。さながら10年くらい前にリリースが多かった1970キースを思わせる濃縮感、フルーティーさがあり、まさに当たりなカスクだった…。)


さて、オーヘントッシャンといえば3回蒸溜ですが、同蒸留所に限らず3回蒸溜した原酒はベース部分の香味が薄くなるためか、クリアな酒質…というよりはシャープで、トゲトゲしたような質感になる傾向があります。
熟成による経年を経ても2回蒸溜の原酒ほど角がとれないので、このオーヘントッシャンにも多少なり感じられる要素です。
そこがローランドらしさであり、口開けは「硬さ」として認識されるのではとも思いますが、ただ、上述の通り樽由来のフルーティーさ、熟成感が補って、個性として楽しむことができるクオリティに仕上がっているのも特徴です。

かつてスコッチウイスキーでは、クリアでブレンドの邪魔をしない原酒をと、いくつかの蒸留所で3回蒸溜が試みられた時期がありました。
しかし数年で2回蒸溜に変更されている事例が散見されるのは、効率の問題だけではなくこうした香味の問題もあったのかなと思うところです。

他方で、ブレンドではなくシングルモルトとしてみた場合、そうしたキャラクターも一つの個性となり得るところ。ブラインドでこれを飲んでオーヘントッシャンと答えられる人は変態だと思いますが、良質なスペイサイドを思わせるフルーティーさがありながら、製法由来の個性もある。
良いカスクを引いてきたなと、また同じ“オチ”を予想させるリリースです。

オーヘントッシャン 8年 1980年代流通 特級表記 43%

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AUCHENTOSHAN 
TRIPLE DISTILLED SINGEL LOWLAND MALT 
Aged 8 years 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週刊程度
評価:★★★★★★(6)

香り:やや古酒感のあるアロマ。べっこう飴や乾いたザラメを思わせる甘いアロマに、やや醤油系のヒネ、干し草っぽさのあるドライなニュアンスを伴う。

味:スムーズだがハイトーン。エッジのたった口当たりに、きび糖のような雑味のある甘さ、微かにレーズンを混ぜたキャラメル、シェリー系の淡いアクセントが感じられる。
余韻はかりんとうやオールブランの軽い香ばしさとほろ苦さ、スパイシーな刺激を伴って長く続く。

3回蒸留らしくピリピリと尖ったような刺激が特徴的な香味構成があり、そこに素朴なモルティーさ、樽由来の甘味が合わさっている構成。少量加水すると、あまやかでコクとほろ苦い味わいがバランスよく延びるあたりに、ベース部分の良さ、時代を感じる。

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今回のボトルは、オーヘントッシャン蒸留所が1984年にモリソン・ボウモアに買収される直前の流通品。その後ボウモア社が1994年にサントリー傘下となったため、この辺りから日本市場との繋がりは強くなって色々リリースが増えていきます。
その反面、このモリソンボウモア買収前の時代は、日本市場では中々レアな銘柄だったのではないかと思います。

今このボトルがバックバーにあると、コアな愛好家が「オッ」と思うんでしょうけれど、1980年代前半頃は洋酒ブーム真っ只中とはいえ地味なラベルに誰も知らない(そもそもどのブレンドに使われているのかもわからない)オーヘントッシャンは、無名もいいところだったはず。
きっと売れなかったんだろうなぁと。ラベルにかかれた三回蒸留表記なんて、なんのこっちゃという感じだったんだろうなあと思われます。


さて、その3回蒸留の原酒ですが、特徴はプレーンでクリアな味わい・・・というよりは、クリーンな反面香味にあるトゲトゲしさ、エッジが立ったような刺激にあると感じます。(現行品のオフシャルスタンダードのオーヘントッシャンは、加水が効きすぎてこのシャープな部分がべったりとした感じに・・・。)
蒸留を繰り返すことで、丸かった酒質から香味、雑味が取り除かれ、シャープに削られていくことでそのような特徴が出るのではないかと予想。結果、その個性が良い方向に出ることもありますが、そもそも3回蒸留の原酒は樽と混ぜてもいまいち混ざりきらないというか、プレーンな樽で熟成させるならともかく、混ぜても何となく特異な質感が残るような印象があるのです。

酒質の引き算とも、あるいは鉛筆削りをしているようでもある三回蒸留ですが、これは昔の麦感が豊富で厚みのあった酒質では、プレーンな原酒を作る上で有効な手法だったのではとも感じています。
今回のボトルや、同銘柄の12年などを飲んで見ると、さすが70年代のまだ麦芽風味が強かった時期の作だなという麦芽風味が残っており、素朴な味わいを楽しむことができるのです。
少しばかり癖はありますが、これはこれで良いシングルモルトだと思いました。

オーヘントッシャン 31年 1966-1999 #511 43.5%

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AUCHENTOSHAN
Aged 31 years
Distilled 1966
Bottled 1999
Cask type Hogshead #511
700ml 43.5%

グラス:木村硝子
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★(5-6)

香り:ややゴムっぽさの混じるウッディさ、熟したバナナの甘いアロマ、薄めたカラメルを思わせる古酒感、ヒネ。微かにパフュームっぽい要素も感じる。

味:唇をヒリヒリとした刺激。香り同様薄めたカラメルを思わせる古酒系の樽感、サトウキビ、ドライな麦芽風味。奥行きがあまりなくクリアなボディ感。
余韻はほのかな青さを伴う麦芽、あっさりとしている。

樽感が比較的強く味はしっかりとしているが、中間から軽いというかクリアというか、三回蒸留らしい個性的なボディ感がある。加水は樽感と酒質の分離が進みシャバシャバになってしまうのでNG。静かに個性的なモルト。


近年殆ど作り手のなくなってしまった、ローランド伝統の三回蒸留。オフィシャルボトルでカスクストレングス、単一年度というだけでも珍しいリリースですが、1960年代蒸留で30年を超える長期熟成モルトとあっては、ボトラーズリリースでも中々出会えない貴重な1本です。

今回のボトルはオーヘントッシャンが1994年にサントリー傘下となった後、複数種類リリースしたボトルであるため、日本国内でも正規品として購入することができました。
自分も1965年蒸留の同ボトルを購入し、家飲みしていましたが、その香味はやはり個性的。ピートのように存在を強く主張するものではなく、はっきりと目立たないがそれとわかる、ボディのクリアさと舌への鋭角な刺激があります。

(オーヘントッシャン蒸留所でオブジェとなっている、かつて使われていた蒸留器。今回のモルトの蒸留にも使われたのだろうか。Photo by K67)

3回蒸留は、主にブレンド向けの原酒づくりに用いられてきた過去があります。
当時の原酒は麦やピートの香味が強かったので、2回蒸留ではそれらが残りすぎる。飲みやすく柔らかいブレンドを作るため、3回蒸留して個性を薄め、原酒のバランスをとろうとしたのではないでしょうか。
その結果、確かに香味は薄くなったのですが、単体で飲むと違う要素も抱えることとなった。。。その一つが、このオーヘントッシャンで感じられる特徴だと思います。

短熟の原酒では樽感の少なさや若さ、あるいは加水されていたりで目立たないのですが、長期熟成になってもそのキャラクターは消えず。むしろ樽感との対比でそれがわかりやすい。
好き嫌いが割とはっきり分かれるボトルだと思いますが、美味しさというより経験値を得ることができるボトルですね。

オーヘントッシャン 12年 40% オフィシャル ブラインド

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オーヘントッシャン12年
AUCHENTOSHAN
Aged 12 years
The Triple Distilled
700ml 40%

【ブラインドテイスティング】
地域:ローランド(オーヘントッシャン)
熟成年数:15年程度
度数:40%
熟成樽:シェリー樽を含む複数樽バッティング
暫定評価:★★★★(4ー5)

香り:ライ麦パンやアーモンドを思わせるやや酸を感じる樽香。使い古した油、微かに湿布のような薬っぽさ。奥から乾燥した植物っぽさ、エスニックスパイスを思わせる独特の癖。

味:軽い口当たり。パン、黒砂糖、若干の古酒っぽさを伴う甘み。サトウキビのような植物感、錠剤の薬のようなニュアンス。奥行きはあまりなく、すぐに余韻にある樽由来の苦味へと繋がる。
余韻はビター、チクチクとスパイシーな刺激が蓄積する。

使い古した油のような癖に、やや強めの樽感。その上で軽さが目立つ不思議なウイスキー。ローランドモルトだろうか。樽香は近年寄りで、昨年信濃屋からリリースされたOMCオーヘントッシャン2000と同じベクトルのアロマがあった。 


(今回のブラインドは、後述するウイスキーショップ・ドーノックの協力で実施。色の濃いほうがオーヘントッシャン。薄い方のコメントはまた後日。)

ローランドモルト伝統の3回蒸留を今に伝える蒸留所、オーヘントッシャン。
3回蒸留を行ったモルトの特徴は、香味成分がその分少なくなることに起因しての奥行きの軽さ、ツンとした刺激を伴う口当たりでしょうか。
今回のブラインド含め、これまで飲んできた3回蒸留のモルトには類似の点があるように感じます。
悩ましい出題でしたが、テイスティングの中でその要素に気がつけたのが今回の大きな収穫だったと思います。

ローランドモルト(3回蒸留)のルーツは、アイリッシュウイスキーにあると言われています。
ローランド地方はウイスキーが消費される都市圏にほど近い立地から、かつてウイスキーの一大産地としてブームを呼び、アイルランドやスコットランド全域から移民があった中で、アイリッシュの3回蒸留もまたローランド地域に持ち込まれたのだとか。 ただ、考えてみるとオーヘントッシャン以外で3回蒸留をしていたローズバンクやセントマグデランらは既に閉鎖。ボトルがリリースされる機会も少なくなってきました。

近年ではダフトミルなどの新しい蒸留所で3回蒸留が行われているようですが、オフィシャルボトルが一般に出回らない限り、ローランドモルト=3回蒸留とは言い難い状況です。
ではローランドらしさはどこにあるのか。「軽い味わいにある」なんて言い切ってしまうのも、ただ軽いだけならスペイサイドやハイランドの一部蒸留所も近年は軽さが目立っており、少々強引であるような気がします。
とすると蒸留所を取り巻く気候が影響もしての樽由来の香味や発酵への影響を考えるのが妥当か・・・テイスティングを通じてあーだこーだと考えてしまいました。


さて話は変わりますが、自分はブラインドテイスティング推進派です。
テイスティングスキルの向上はもとより、関連情報に左右されない素のウイスキー評価に繋げるため、積極的にブラインドを取り入れています。
ブラインドテイスティングは一人では出来ません。この点については行き着けのBARはもとより、ウイスキー仲間から現在進行形で多くの出題を頂いているわけですが、さらに「純粋なブラインドテイスティング」を行うため、酒販店にサンプルの選定をお願いしてみることにしました。

ドーノックブラインド

この依頼を引き受けてくださったのは、50mlの小瓶販売に特化したウイスキー販売店「ドーノック」。
「たくさんの人にウイスキーを楽しんでもらいたい」「ウイスキーファンを増やしたい」という考えから、昨年末に福井県にショップを立ち上げたばかりで、ショップページは徐々に内容を充実させているところだそうですが、既に様々なコンテンツが公開されており、見応えのあるサイトとなっています。

株式会社ドーノック

サンプルは写真の通り50ml。解答は糊付けで厳封された封筒に入って届くため、開封するまで判りません。 ボトルも1本1本シールで封止されていて、非常に丁寧な仕事です。(業界法の関係から背面に中身に関するラベルが貼られていますが、到着時に第三者に剥がして貰っています。)
通常商品の購入以外に、例えば何かのイベントやテイスティングスクールなどで使うアイテムの相談をすることも出来そうです。

今回は自分が参加しているウイスキーの勉強会、The Whisky Diversの中で有志を募って実施。第一回目ということで試験的に実施して見たところ、「出題者が見えない」このブラインドはことのほか面白く、良い刺激となりました。 
改善点等踏まえ、今後もテイスティングサンプルをお願いしていく予定です。

オーヘントッシャン 17年 (1997-2015) BARマッシュタン & 信濃屋 ボトリング

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今回のボトルは11/6で11周年を迎える目黒の名店、BARマッシュタンの記念ボトルです。OMCから信濃屋さんとジョイントでボトリングしています。
マスターの鈴木さんが、味もさることながらコスパも重視して選んだという1本。紆余曲折、様々なご苦労あったとのことですが、近年オーヘントッシャンらしいローランド感のあるフルーティーさにオークフレーバーのマッチした1杯です。

OLD MALT CASK
AUCHENTOSHAN
Aged 17 Years
Distilled 1997
Bottled 2015
700ml 57.3%
Selected & bottled exclusively for
The MASH TUN TOKYO 
& SHINAOYA

暫定評価:★★★★★★(6)

香り:アルコール感と微かなケミカル香を伴うオーク香。少し粉っぽさもある。奥から熟したフルーツ、バニラ、ハーブ、微かに和紙のニュアンス。

味:華やかでオイリーだが粉っぽい舌触りも感じる口当たり。ドライパイナップル、バニラ、麦芽。オーク系のフレーバーが先に広がる。
鼻抜けに乾いたオーク材の華やかな香りと微かに紙っぽさ。後半から余韻にかけてローランドらしい熟したフルーツ感(洋梨や林檎)、ドライでスパイシー。

最初は樽の風味、そこからローランドらしいフルーティーさと2段階の広がりがある。
近年流通の多い1980年代後半から1990年代前半のリトルミルを試して違和感がないなら、このボトルも美味しくいただけるのではないでしょうか。

オーヘントッシャンのみならず、リトルミル等のローランドモルト、その近年モノは独特なフルーティーさを感じるボトルが多くあります。
自分は熟しすぎたフルーツ感、風邪薬シロップなんて言ったりしますが、フルーティーさで連想するスペイサイドやハイランドの王道的なそれとはキャラクターが異なる。どちらかと言えばアイリッシュ系であり、蒸留方法が影響しているのかなと感じるところです。
では1970年代や1960年代の蒸留はどうだったかというと、試した中では今ほどそうしたフルーツ感は・・・なんですよね。年代で考えればバーボン樽が普及し始める時期と重なるため、この違いがキャラクターに変化をもたらしたのではないかと感じています。

昨今、有名蒸留所の原酒枯渇が激しく、それほど人気ではないローランドであっても1990年代原酒の確保が困難という話。相次ぐ値上げの中で、飲み手だけではなく酒販業界全体が苦労を重ねています。
その時その時のクオリティに対する相場的な概念があるといっても、結局は安くて美味しいほうが良いんです。(かつては安くなってブランドイメージが崩壊し、ウイスキーブームが完全終焉した日本という国ではあるんですが。)
多くのユーザーが限りある資金をやりくりしているのですから、値上げ先行の今の市場、その影響が酒販業界に無い訳がありません。
さしたる競争もなく1万円台で1960~1970年代を確保できた時代は終わってしまった。
海外でのブームに押され、日本市場の優先度はどんどん下がっている。
その中で、惰性ではなく独自の工夫で価値創造を重ねられている関係者の方々には本当に頭が下がる思いです。

マッシュタンでは今回のオーヘントッシャン以外に、リンクウッド、スプリングバンクをダンカンテイラー経由でボトリングしてリリース。(こちらも相当苦労されたとか。)
どちらも近年モノとしては酒質、樽感ともレベルの高い出来栄え。コネクションがあるからこそ出来るリリースですね。
BARマッシュタン様、11周年、おめでとうございます。

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