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ベンリアック 39年 1976-2016 トゥニーポートフィニッシュ #5462 53.8%

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BENRIACH 
Aged 39 years 
Distilled 1976 
Bottled 2016 
Cask type Port Hogshead #5462
Tawny Port Finish 
700ml 53.8%

グラス:グレンケアン
場所:BAR Eclipse first
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(6ー7)

香り:かりんとうを思わせる香ばしさと上面に焦げたようなスモークが一瞬あり、色濃く甘いダークフルーツとウッディネス。ベリーのアクセント、あるいはモスカテル系の甘味と酸。奥にはらしいトロピカルフレーバーを伴う。

味:リッチでとろりとした口当たり。序盤は香り同様の樽感があり、色濃くウッディ。徐々にリンゴのカラメル煮や黄桃を思わせるフルーティーさ。
余韻にかけて土っぽいピート、オークフレーバーとトロピカルな要素もあるが、ほのかにサルファリーなアクセントが邪魔をしている。

ピーテッド仕様のベンリアックの長期熟成。樽が強く、いくつものレイヤーが重なりあっているような構成。上から順に、ポートの甘さと色濃いウッディさ、アメリカンオークの華やかさ、ピートのほろ苦さ、そしてベンリアックらしいフルーティーさ。これをあざといと感じるかは好みの問題だろうが、不思議とそこまでネガ要素はない。加水すると奥にある要素まで認識しやすくなり、オーキーでトロピカルなフルーティーさが開く

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一時期までは普通に飲めていたのに、もうすっかり絶滅危惧種になってしまった1976ベンリアック。このボトルは蒸留所が2016年にブラウンフォーマンに買収(ビリー・ウォーカーが手放したとも)された後、UK向けにリリースされたLimited Release Batch 13の2本のうちの1本です。

構成はポートホグスヘッドで熟成したピーテッド原酒を、さらにトゥニー・ポート樽でフィニッシュするというダブルポート仕様。基本的にはシェリー樽系統の香味ですが、なんとも濃厚で多層的に仕上がってます。同じ種類の樽だからか、フィニッシュながら上塗り感というか、酒質と馴染まないことからくるとってつけた感じがあまりないのも印象的です。
また、ベンリアックのピーテッド原酒は最近のものだとラフロイグのヨード抜きのようになるものが多いのですが、今回は土系統というか、かつてのモルトらしくフルーティーさを後押しするような構成になっていると感じられます。


こうしたフィニッシュやピート原酒を組み合わせたベンリアックは、過去複数回リリースされてきました。
誤解を恐れず言えば、それらは色物というか、余計なことしくさって(君は素直にトロピカル出しておけばエエんや)、と言うような愛好家の声も当時あったと記憶するところ。そのカスクですら今や高嶺の花なのですから、時代の変化は本当に読めないですね。

ただ、同時にBatch 13としてリリースされたシェリー樽&ピーテッドの1975(下写真)もそうなのですが、ピートが馴染んでいるというか、樽が濃厚でありながらフルーティーさが残っているというか。Batch 13の2本はどちらも色物扱いできない仕上がりだと思います。(1975のほうは文句なく美味。)
どちらも似た部分があり、ビリー・ウォーカーが使わない間に馴染んだのか、元々こうだったけど彼の好みに合わなかったのか。面白い傾向だなと感じました。

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(リミテッドエディションBatch 13として2016年にリリースされた1975 #7028。ウッディさは強いが、時間経過で昔ながらのシェリー感にピートのアクセント。そしてベンリアックらしいフルーティーさが楽しめる。)

シングルモルトとしてのリリースが多いこの半世紀の範囲で見てみると、ロングモーンしかり、ベンリアックしかり、1960~1970年代前半のスペイサイドモルトの多くがパイナップルやピーチなどに例えられるフルーティーさを備えており、それらが今絶滅危惧種となっています。
シェリー樽の復活も重要事項ですが、全ウイスキーの底上げに繋がる酒質部分の復活は同じくらい重要な要素。最近、100%アイラしかり、麦にこだわった仕込みのリリースが増えていますから、シングルモルトの需要が増えるなかでこの点についても蒸留所側の取り組みが増えていくことを期待したいです。

ベンリアック 12年 シェリーウッド 2018年リリース 46%

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BENRIACH 
SHERRY WOOD 
THREE WAY SHERRY MATURATION 
Aged 12 years 
2018-2019's 
700ml 46% 

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:BAR LIVET
暫定評価:★★★★★(5)

香り:カカオ多めのダークチョコレートを思わせるアロマ。おがくず、バニラ、オレンジピール、微かにハーブも伴うウッディネス。

味:ややドライでビターな口当たり。オールブランやかりんとう、序盤はほろ苦く甘い程度だが、徐々にカカオを思わせる苦味が強くなっていき、木材の焦げ感や若干の硫黄を伴うウッディでビターなフィニッシュへと繋がる。

香味とも色合い同様にシェリー樽系統の甘味や果実味はそこまで強くないが、余韻にかけて樽由来のビターなフレーバーのみ強くなっていく。加水しても同様であり、あまりバランスが良いとは言えず、もう少し甘味や果実味がほしいところ。

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スタンダード銘柄におけるシェリー樽熟成ウイスキーの代表とも言える、ベンリアック12年シェリーウッド。2017年、メーカー生産終了に伴って国内流通品も終売となりましたが、先日紹介したグレンドロナック15年リバイバル同様に、2018年末からリリースを再開していました。

ベンリアックは、グレンドロナックのように蒸留所の操業が途絶えていたということはないため、終売の経緯を短期間で復活したことから考えると、蒸留所が持つ原酒の使い方や、オフィシャルリリースの価格帯を整理するためだったのかもしれません。
旧ボトル(特にラベルに光沢がある初期リリース)はスタンダード品ながらしっかりとしたシェリー感が備わっていましたが、ロットおよびラベルチェンジを経る毎にシェリー感が薄くなっており、樽や原酒の確保に苦労しているという印象は兼ねてから受けていました。

今回のリリースからは、樽構成が最初からシェリー樽熟成(旧ラベルはオロロソシェリー40%、ペドロヒメネス60%)ではなく、シェリー樽で熟成した原酒に、なんの樽で熟成したものがベースかは不明ながらオロロソシェリー樽やペドロヒメネスシェリー樽でフィニッシュした原酒を加えた構成(THREE WAY SHERRY MATURATION
)に変更されています。

ただしそこまでリッチなシェリー系の味わいではないことから、ベースがリフィルやサードフィルのシェリーカスクなのではないかと考えられます。また、樽由来の苦味が余韻にかけて強いことを考えると、フィニッシュ用の樽がチャーされているのかもしれません。
復活は喜ばしいですが、内容は両手を上げて歓迎しがたい仕上がり。良質なシェリー樽の調達が難しいなかで、リリースを維持するために様々な工夫が行われているのだと、色々考えさせられるリリースです。

ベンリアック 50年 1966-2016 GMケルティックラベル 54.3%

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BENRIACH 
GORDON & MACPHAIL
Aged 50 Years
Distilled 1966
Bottled 2016
Cask Type 1st Fill American Hogshead #606
54.3% 700ml

グラス:木村硝子テイスティンググラス
量:30ml程度
場所:持ち寄り会@マッスルKさん
時期:開封後1ヶ月未満
暫定評価:★★★★★★★★(8)(!)

香り:ツンとした樽香とシナモンなどのスパイス、ハーブ。徐々に甘栗、ドライアプリコット、熟したパイナップル。最初はドライで香りが立たないが、ほんの数分でフルーティーさが充実してくる。

味:最初はドライな口当たりだが、徐々に甘みと粘性がひろがる。紅茶を思わせる心地よいタンニン、ピリピリとしたスパイシーさから舌の上で発散するフルーティーさ、熟した桃、アプリコットジャム、トロピカルフルーツ。ボディはしっかりして、生きている。
余韻はドライ、華やかなオークフレーバーが非常に長く残る。

最初はドライで樽のニュアンスが強いが、5分10分もすれば急速に香味が開き、甘み、フルーティーさが充実してくる。
今後開封後変化でさらに開く印象がある一方、加水するとボディが崩れ、一気に香味とも弱ってしまう。ストレートでじっくりと、時間をかけて半世紀に渡る時の流れを楽しみたい。
昨年リリースされたLMDWの60周年記念シリーズ。もっとも突き抜けたスペックであり、目玉とも言える1本が、このベンリアック50年GMケルティックラベルです。
ケルティックラベルは数年前に乱発されて以降、リリースされるのは久しぶりという印象がありますが、流石メゾン、そして流石GM。長熟原酒の枯渇が叫ばれる現代において、「奇跡」と言っても過言では無い、とんでもない樽を持っていました。

他の銘柄を含めると50年オーバーのウイスキーはこれが初めてというわけではありませんが、総じて度数が低かったり、過熟気味のウッディーさが強かったりで「ピークを過ぎてるけど飲めるレベル」という仕上がりが多い印象。
それがこのベンリアック1966は、50年の時を越えてなお、枯れず、くすまず、54%と高度数を維持。酒質部分の香味はだいぶ削られてシャープになっている感じはありますが、樽感は華やかでフルーティー、過熟感のあまりないオークフレーバーが、舌の上で綺麗に発散していくのです。
これは長期熟成原酒にありがちな、40%前半まで度数が落ちてしまった、最初はフルーティーだけど後が続かないものとの大きな違いです。

樽は1st fillのアメリカンホグスヘッド。この時代ではシェリー樽だと思うのですが、明示的にこれがシェリーと言えるかは曖昧なフルーティーさ。何より1st fillのシェリーホグスヘッドであればもっと濃厚なシェリー感が備わっているところ、そういうニュアンスはありません。
ではバーボンホグスヘッドかというと、シェリーに比べて容量が小さい環境で50年も熟成させたら、もっとドライで渋みも強く出るはず。。。どちらの樽であっても、このベンリアックのフレーバーには繋がらないのです。(エンジェルズシェアをざっくり計算すると、どちらの樽でも一応今回ボトリングしている本数は得られる可能性はあり、足し合わせ等ではないようです。)

何かヒントはないかとメゾンのサイトを見ると、樽仕様が「Remade hogshead 1st fill」となっていました。
ホグスヘッドは基本組み直して作るものですから、リメードである事はおかしい事ではありません。
しかし使い古したアメリカンホワイトオークの樽を再加工して作ったリメードホグスヘッドを起点とし、そこに1度ウイスキーを熟成させた後の1st fillであれば、今回のような熟成感もある程度説明がつきます。

一方、樽は前述の通りであっても、度数に関しては高度数すぎるものを入れた感じでも無いので、純粋に一般的な度数で樽詰めされ、熟成環境が噛み合った結果と言う印象。
何れにせよ半世紀という時間をかけて作られた原酒を飲む事は、味わい以上に特別な想いがあります。まして今回のように、特別にバランスの取れたものは尚更です。
素晴らしいウイスキーをありがとうございました!

ベンリアック 12年 シェリーウッド ついに終売へ

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シングルモルトウイスキーの入門者向けとして、あるいは愛好者のデイリーユースとして親しまれてきた「ベンリアック12年シェリーウッド」が、メーカー生産終了に伴い、国内在庫限りで終売となるという知らせが先日届きました。

BENRIACH
Aged 12 Years
Matured in Sherry Wood
46% 700ml

【テイスティングノート】
ややドライでウッディーなニュアンスがあるが、スワリングしているとホットケーキシロップのような甘い香りに微かにレーズンを思わせる酸味が混じってくる。口に含むとキャラメルやカステラを思わせる甘み、ドライプルーン。ボディはやや軽めだが、度数があるので安定している。余韻は序盤の甘みに適度にウッディーな渋みを伴いゆっくりと消えていく。


ベンリアック蒸留所を買収したビリー・ウォーカー氏によるブランド一新の流れの中、シェリー樽100%の同銘柄が発売されたのは2009年のこと。
当時オフィシャルの同価格帯でシェリー系と言えばマッカラン、そしてグレンファークラスの12年。味が落ちたと評されて久しい両銘柄の"ポスト"として、時に比較されながら、らしい甘みとウッディーな香味で「コスパの良いシェリー系ウイスキー」の地位を確立していきました。

その後、2014年頃のラベルチェンジで、シェリー樽由来の甘みがドライでスパイシーな傾向に変化こそしましたが、それでも「初めに飲むならこの1本」と、オススメボトルの一つに挙げる愛好家も多かったと認識しています。
そんな人気ブランドが終売となる背景には、昨年の売却で経営母体が変わったことによる方針変更、あるいはシェリー樽の高騰・不足が顕著ということなのでしょうか。。。
まさに惜しまれつつ引退する名選手となってしまうわけですが、事実は受け止めるしかありません。この記事では今後愛好家が求める"ポスト・ベンリアック12年シェリーウッド"の候補となるボトルをいくつか書き出して、結びとします。 

まず同系列のグレンドロナック12年。ペドロヒメネス樽を使っている関係か、甘みが強く少し椎茸っぽいニュアンスが混じるようにも感じますが、紹介するまでも無く鉄板です。
後はシェリー樽100%ではないものの良い仕事をしているダルモア12年、飲みごたえは少し緩いですがシェリー樽の香味が豊富なアベラワー12年、タムデュー10年がその次点に続く。
また、ベンリアックのポストというには多少癖がありますが、クリーミーさが魅力のエドラダワー10年も悪くない。ブレンデッドではネイキッドグラウス12年もオススメです。

もし上記のボトルの経験が無いという方は、ベンリアックの在庫を買い求める以外に新しい発見のきっかけとして、色々試して見る良い機会ではないかと思います。


ベンリアック 40年 1975-2016 ピーテッド 53% #7028

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BENRIACH
Limited 1975 Release
Peated
Aged 40 Years
Distilled 1975/12 
Bottled 2016/06 
Cask type Sherry Butt #7028 
700ml 53%

グラス:テイスティンググラス(名称不明)
量:30ml以上
場所:BAR飲み(個人持参ボトル)
時期:開封後1週間程度
評価:★★★★★★★(7ー8)

ベンリアックのピーテッドモルトのシェリーカスク。今年5月に突如起こったブラウンフォーマン社によるグループ買収劇の後、時期的には新しい体制のベンリアックからリリースされた1975ビンテージです。
近年の60-70年代蒸留ベンリアックの高騰からすれば、470ポンドという価格は良心的にも思えてしまう値付け。気になっていたボトルでもありました。

この頃のベンリアックは桃やトロピカルフルーツにも例えられるフルーティーさが特徴で、それが当時のシェリー樽との組み合わせとあっては、期待せざるを得ません。
ただ、いかにシェリーバットと言っても40年の熟成でカスクストレングス511本のボトリングはエンジェルズシェアが130リットルしか発生していないことになり(ドロナックの700本よりはマシですが)、これは原酒の継ぎ足しというか、カスクマネジメント、所謂ビリーの遺産なのかなあとも。

そんなボトルを、持ち主S兄さんのご好意で口開けだけでなく、開封後1週間強経過した時点の2度、テイスティングの機会を頂きました。
その変化の大きさは驚きの一言。最初は内陸系のピーティーさが強く、無骨とも言えるようなビターな樽感もあって、フルーティーさは奥の方に潜んでしまっている状況で、初見はブラインドで出されたのですが、ジャパニーズかと思ってしまったほどです。
それがグラスの中で徐々に開いていき、30分〜1時間くらいでフルーティーさが明確に拾えるくらいになってきました。

そして1週間後の再会、もう待つまでもなく注ぎ立てからまるで濃く入れたピーチティーを思わせるフレーバーが全開で、口開けに主張していたピートがもはや隠し味レベル。
シェリー感はやや作為的な感じはあるものの、煮込んだダークフルーツ、イチジクやリンゴのカラメル煮を思わせるフルーティーかつ濃厚な甘さは、近年のそれとは全く違う系統で、口の中でとろりととろけるような美味しさ。
そこに1975ビンテージのベンリアックらしい桃や少しケミカルなフルーティーさが広がり、最後はほどよくタンニンが渋みと苦味で口の中をキュッと引き締めています。

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さて、不快に思う方も居るかもしれませんが・・・今回はこのボトルで狂気の挑戦、ブレンデッドモルト作りをしました。
以前スパニッシュオークバリバリの特濃ロングモーンを記事にした際、これはブレンデッドのベースにすると輝くとは確かに書きましたが、それらの持ち主だったS兄さんが「だったらクイーンアン作ろうゼ」と、ベンリアック1975、そして信濃屋さんがリリースした1976を持って宣言。(クイーンアンはベンリアックとロングモーンをキーモルトとしたブレンデッドウイスキー。)

やってみると長熟原酒だけでは案外まとまらず、バランスをとるには個性の強い若い原酒も必要だということなど、勉強になることも多々ありました。
っていうかベンリアックの個性が強すぎて、入れすぎると最後はただのベンリアック味になるし、一番まとまりが良かったのはオード28年を加えた時だったという。

この経験、何処で生きるかはわかりませんが、ブレンドは作ってみて初めてわかることもあるので、貴重な経験に感謝です。
このレシピはクイーンアンピュアモルト改め、クリリンアンとしたいと思います(笑)

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