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2025年04月

クロナキルティ ウイスキー ハイボール缶 & ジンソーダ缶

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クロナキルティ RTD (Ready To Drink)缶
・潮風感じる クロナキルティ ジンソーダ 7%
・潮風感じる クロナキルティ ハイボール 7%

※ご参考:KOTOコーポレーション公式リリース:https://www.atpress.ne.jp/news/434017

先日、クロナキルティ蒸溜所の1stリリース(自社蒸留原酒)であるクロナキルティ シングルポットスチルをレビューしたところ。
その翌日である4月22日、偶然にもクロナキルティから新リリースであるハイボール缶が公式発表、ローソン限定で発売されました。

いやいや、PBやるくらいの関係だし、くりりん知ってたんでしょ?と、言われそうですが。
本当に知らなかったんですよね。ハイボール缶出すという噂は耳にしていましたが、それ以上のことは。おそらくですが、ローソンという大手企業との絡みの関係上事前にオープンはできなかったのでしょう(そう信じたいw)

そんなわけで最寄りのローソンで早速捕鯨し、まっさらな状態からレビューを書いていきます。
ちなみに、ただレビューするのも面白くないので、行きつけのお店にお願いしてクロナキルティの既存リリースとの比較も行っていきます。
なおこのブログの読者層にクロナキルティの紹介は不要かと思いますが、すごく端的にお伝えするとアイルランド南部のダーンディディで9世代続く農家が2016年に設立、2019年に操業したアイリッシュウイスキーメーカー&蒸溜所がクロナキルティです。詳細は過去記事もご参照ください。

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・潮風感じる クロナキルティ ジンソーダ 7%

ミンクジンは、クロナキルティ蒸溜所で作られるスピリッツをベースとしたジン。スピリッツには同蒸留所の熟成庫と畑がある地域にある牧場産のホエイ(乳清)、またボタニカルの一つには同地域で取れるロックサンファイアを使っているとされています。
ともすると、どんな味なんだ?となりますが、基本的には、オーソドックスかつ王道的な柑橘やジュニパーの要素が主体となったドライジンです。

そのジンをベースとした缶の味はというと、これが非常にすっきりとしてドライ、そこに青みがかったジュニパーのジンらしいフレーバーが広がる、実に爽やかかつ本格的な味わいです。
「すっきり無糖、すっきりフローラル」と缶には書かれていますが、まさにですね。特にキンキンに冷やした状態で缶から直にグイッとやると、ドライな感じが強調され、後からジンらしいスパイスや柑橘、ジュニパーの風味が広がり、私はかなり好みでした。
食中酒として使っても、大概のジャンルに合わせられると思います。

一方で面白かったのが、実際のミンクジンから同じ度数設定でハイボールを作った場合、ミンクジンのほうは柑橘系のニュアンスが強く、缶のほうは青みがかったフローラルな要素が強く感じられた点です。また、香りも缶のほうが強かったように思います。
混ぜ方、度数の落とし方などの違いもあるのだと思いますが。今回は缶のレビューなので、缶の方が良かったと言えるのは歓迎です(笑)、何が違うのか、工夫があるのかは後で聞いてみたいと思います。

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※海辺に生える塩生植物のロックサンファイア。塩味と磯の香りのする草。もちろん食用。画像引用:https://girisyagohan.blog.jp/archives/50470899.html

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・潮風感じる クロナキルティ ハイボール 7%
クロナキルティで作られ、ブレンドしたアイリッシュウイスキーをベースにしたハイボール缶。
このリリースは、ベースとなるウイスキーがラベルデザインの似ているダブルオーク(右)かなと予想したのですが、飲み比べてみると全く味が違いました。おそらく、缶用のオリジナルレシピか国内未流通の商品をベースにしていると考えられます。

プレーン寄りで軽やかな穀物風味、徐々にバニラのような優しい甘さが炭酸と共に広がる。使われている原酒の熟成は5〜7年くらいか。アイリッシュとしては若すぎず、樽感も穏やかでクロナキルティのスタイルの優しい甘さがよく表現されています。
余韻は炭酸に混じるほろ苦さ、ほのかにオーキー。基本的には軽やかでクセのないスッキリ系ながら、温度が上がると穀物風味の広がりも。

香味から推察するにグレーン比率が高く、おそらくグレーン7〜8割、モルト(シングルポット含む)2〜3割といったアイリッシュブレンデッドウイスキー。
コメントに記載した「クロナキルティのスタイルの優しい甘さ」を感じるあたり、軸となる原酒には、自社蒸留&熟成したリリースであるシングルポットスチルウイスキーが使われているのでは…。だとすると結構贅沢なハイボール缶ですね。
(関係者に確認したところ、ほとんど正解だそうです。5/3追記)

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※2024年11月にリリースされたシングルポットスチルウイスキー。ハイボールにすると素朴な麦芽風味の中に優しい甘さとほのかな酸味が引き立つ。今回のハイボール缶にフロートするのも面白い。

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※クロナキルティ蒸溜所の熟成庫。銘柄にもなっているギャレーヘッド灯台の近く(ダーンディディ)の高台にあり、眼下には大西洋が広がる。

さて、今回のリリースには共通して「潮風」という表現に加え、ハイボール缶には「程よいソルティ」という記載もあります。

アイリッシュウイスキーやジンでなぜ海や塩気をイメージする表現が…という疑問に答えると、ミンクジンについては使用されているボタニカルのロックサンファイアが塩生植物であり、塩茹でしないでもしょっぱいと感じるくらいに潮気や磯の香りを含んでいること。
そしてウイスキーについては、クロナキルティの熟成庫が上の写真にあるように海辺で潮風吹き付ける高台にあり、その影響を受けているためと考えられます。
そういわれると、そういう味がしてくるような…?

何れにせよ、ジンソーダはドライで本格的、ウイスキーハイボールは優しい甘さとプレーンでスッキリとした味わいが万人受けする構成。
ジンソーダはサントリーの翠ジン缶で物足りない人に刺さると思いますし、ウイスキーに関してはもっと癖が強いほうが好み!という人もいるでしょうけれど、アイリッシュって元々そういうクセの少ないスッキリとしたタイプですから。クロナキルティブランドの入門と考えても、広報的にもアリなリリースだと思います。

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ここ数年、RTD市場におけるハイボール缶の開発競走、リリース合戦が加速しています。缶のラインを持っている企業に販売プランが確立したためか、大手ビールメーカー所有以外のクラフト銘柄からもリリースが行われているところ。

今回のリリースがそうかはわかりませんが、他社の事例では1ロット10万本以上という話なので、限定で作るにしてもそれなりの販路が求められるものの、スーパーや酒販などのチェーン店であればやってやれない規模ではなく。。。
アイリッシュに限定するなら、昨年から今年にかけては上の写真にあるバスカーやイーガンズからのリリースが行われてきました。

バスカーは元々フルーティーさをウリにした銘柄だっただけに、6%のものは華やかでフルーティーな、8%は芯のある味わいの中に華やかさがあり。イーガンズは樽由来のフレーバーを複数重ね合わせて香味形成する傾向があることからか、このハイボール缶も樽由来の香味が複雑に主張してくる味わい。
お互いがちゃんとベースとなる銘柄、ブランドの個性を意識している点が違いに繋がって、お値段以上に楽しませてもらいました。

今後はRTDジャンルにどんなリリースが出てくるのか。先日は長濱蒸溜所からのAMAHAGANハイボール缶や、福島県内限定で福島県南酒販から963ハイボール缶もリリース、いずれもいい出来でした。そう言えば桜尾からジントニック缶が5月下旬にリリースされるというニュースもありました、これもたまたま4月21日発表なんですよね(笑)。
ハイボール缶戦争に加えてジン缶の仁義なき戦い。。。こちらも楽しみです。

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ロングモーン 17年 2007-2024 伊藤若冲“老松孔雀図” 46.6% for 乾杯会

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LONGMORN 
Aged 17 years 
Distilled 2007 
Bottled 2024 
Cask type Bourbon Barrel #700016 
for Kanpaikai 
700ml 46.6% 

評価:★★★★★★(6-7)

香り:林檎のような白色果実やバニラの華やかさ、乾いた麦芽、微かにレモンピールを伴うオーク香。徐々に白葡萄を思わせるフルーティーさも開き、時間経過でクリーミーな質感に変化する。

味:序盤はソフトな麦芽風味から、ナッツ、そしてリンゴや白桃を思わせるフルーティーさ、華やかなオークフレーバーが広がり充実していく。
余韻は白桃を思わせるフルーティーさと軽やかな刺激が、じんわりと染み込むウッディネスを伴い長く続く。

モルティーかつフルーティーな香味が溶け込む充実した一本。46%台まで度数が落ちていることもあって主張は強くないが、それ故に香味のカドが取れ、各要素が馴染み、優しく包み込むような味わいは熟成の妙を感じさせてくれる。王道的なロングモーン。


乾杯会リリースの伊藤若冲ラベルシリーズ。乾杯会の代表である鄭さんが伊藤若冲好きということもあって、これまでもキルダルトンやアイリッシュとクオリティの高い原酒が詰められているところ。今回も熟成ロングモーン原酒がなかなか手に入らない中で、良い原酒を詰められてます。

ラベルに採用された伊藤若冲作「老松孔雀図」は、花王たる牡丹の間、岩の上に立つ白い孔雀と、松の老木が描かれた、落ち着いた華やかさ、格式の高さを感じさせる作品。
今回のロングモーンは、白色果実を中心としたフルーツと麦芽の白い部分を思わせる優しい甘さ、近年のロングモーン蒸留所の王道たる風味が牡丹と孔雀であり、古木のような落ち着きのあるオークフレーバー、ウッディネスが松の老木、まさに老松孔雀図を想起させる構成となっています。

近いリリースのイメージは、信濃屋さんが以前リリースしたOMCロングモーン15年 2000-2016 55.9%(以下写真)。乾杯会のロングモーンを飲んだ瞬間、このリリースが思い浮かんだんですよね。麦感がしっかりあって、それでいてナッティでフルーティー、樽感も華やか。今作はそれより落ち着きがある感じですが、いずれにしろ近年ロングモーンの中でも高い完成度であることは間違いありません。

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※先日乾杯会からリリースされた、ロングモーン1996-2014 ホグスヘッド 58.8% 金目猫ラベル。美味な一本だが、王道的なロングモーンとは異なる、華やかでフルーティーでグランシャンパーニュコニャックのような香味が特徴。


なお、乾杯会の鄭さんとは愛好家グループとして、あるいは酒販として乾杯会が立ち上げ前からの付き合いであり、何かとお手伝いをさせてもらっています。
今回のロングモーンも公式コメント等を書かせて貰いました。鄭さんは愛好家視点で自分の好みである原酒を引っ張ってくるので、コメント書くにしてもフォーカスするところがわかりやすいんですよね。あるいは「くりりんさん、これはちょっと違う個性かもしれない…、そこはわかるように描いて欲しい。」なんて言われる時も。

っていうか後発のボトラーズ(インポーター)でありながら、よくもここまで色々な原酒を引っ張ってこれるものだと、ただただ感心します。今、原酒を輸入してきてリリースするタイプのボトラーズは複数社国内にありますが、どこも原酒枯渇の影響を受けているのに…。聞けばアジア圏のグループ(The Lucky Choice)で原酒調達に動いている模様。いやはや本当にすごい。
リリースは4月29日、乾杯会のECサイトにて。またすでにいくつかのBARでもテイスティング出来るので、合わせてぜひ。

大谷ウイスキー 新潟亀田蒸溜所 No.1 Zodiac Sign Series “Pisces” 50%

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OHTANI WHISKY 
NIIGATA KAMEDA DISTILLERY 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
No,1 The Zodiac Sign Series “Pisces” 
700ml 50% 

評価:★★★★★(5)

香り:林檎や枇杷、品の良いフルーティーさを伴うトップノート。微かに青さを残した干し草やナッツ、軽やかにエステリーなアロマ。

味: 口当たりは軽やかな刺激、微かにニューメイク寄りの風味もあるが、乾いた麦芽と白色果実の風味、 余韻はウッディな木材の香りが鼻腔に抜け、おがくずのほろ苦さ、微かにオーキーな甘みを残して全体の香味がストンと消えていく。

バーボン樽熟成のノンピート原酒を主体に、パロコロタドシェリー樽とシェリーブランデー樽熟成の原酒等を加えた3年熟成程度のリリース。とはいえシェリー感はあまりなく、基本的にはバーボン樽由来のフレーバーがメイン、バーボン8、その他2くらいか、ボディの厚さ、香味の複雑さを補うためにシェリー樽系の原酒を加えたのだろう。品の良い甘さとエステリーさが好ましい一方、1ショット飲むと途中で余韻にかけての単調さを感じてしまう。まだ熟成の余地を残した仕上がりと言えるが、余韻の長いウイスキーとしてはもう一声欲しい。

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創業2021年、新潟亀田蒸溜所のシングルモルト。亀田蒸溜所からはこれまでもイベントなどでニューボーンが販売されていたり、またPBでシングルカスクの3年前後のものが限定販売されるなどしてきたところ。今作はオフィシャルスタンダードラインナップとしては初めてとなる、JWの基準に基づくシングルモルトとなります。

本シリーズについては公式にあまり情報が出ていませんので、知ってる限りの補足と予想を記載していきます。
大谷シングルモルトの“大谷”は、某野球で理解の及ばない活躍をしている選手のことではなく、新潟亀田蒸留所を操業する企業がハンコの”大谷”(※本記事最下部参照)という企業名からきていること。
ゾディアックシリーズについては、12星座にあてがわれた誕生月(期間)を厚岸の二十四節気のようにリリース時期とかけた、星座シリーズなのだと考えられます。

またラベルに描かれた女性は星座をイメージしたキャラクターとのことで、確かに髪を結んでいる飾りに魚座のロゴが描かれています。一説では奥様ではという話もありましたが、そこは未確認なので、ここではただのイメージキャラということにしておきます。
ただ、頬を赤らめて視点がやや定まっていない感じ、そこに魚座の配置が酔っ払ってポワポワしてしまっている漫画の描写に見えてしまうのは気のせいでしょうか、なんとも特徴的なラベルですよね。

一方でこのラベルについては、新潟でなぜ星座なのかとか、この女性は魚座の何をイメージしてデザインされたのかとか、疑問は残るところ。今後この点が亀田蒸溜所から、あるいは代表の堂田さんから解説されてくるであろうことを期待しています。

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※新潟亀田蒸溜所のポットスチル。初留と再留とで形状が異なっているのが特徴の一つ。

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※糖化時の清澄麦汁を確認する設備。配管を一部可視化して光の通り具合を確認している。

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※現在の熟成庫が完成する前、倉庫を改修したスペースで熟成中の原酒をテイスティング。カスクストレングスのものはエステリーでよりフルーティー、甘さと余韻の長さを兼ね備えていた。

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※コンテナを熟成庫として使用することで、高温環境での熟成を実施。ニューボーンリリースやフィニッシュなど短期間で仕上げることを想定した原酒を一時的に保管している。やりすぎるとエキス分が過剰になるが適度に使うには効果的。今回のリリースにはコンテナ熟成の原酒も一部使われていると予想。


新潟亀田蒸溜所には過去2回訪問させていただいており、そこで見聞きし、経験してきた様々な要素から、蒸留所としてのポテンシャルとそのウイスキー作りは間違いないと確信しておりました。
清澄麦汁によるこだわりの糖化、プレス酵母をいち早く用いた発酵、そして冷温、常温、高温と温度環境にこだわった異なる熟成環境も整えたところ。
現地では、ピートにしろノンピートにしろ、これで3年程度!?という素晴らしい原酒をいくつもテイスティングさせてもらっており、この蒸留所の将来性は間違いないと、確信すらしていました。

だからこそ、率直に言えばこのファーストリリースは「あれ?」と思ってしまった訳です。 
 おそらく、設備の使い方、カットポイントや酵母の使い方など色々模索していた初期の原酒を中心にバッティングしているからだと思いますが。 余韻の長いウイスキーを目指したにも関わらずボディや余韻がストンと軽い。自分がテイスティングさせてもらった様々な樽出し原酒の風味に対して、後半の味がスッキリとしているというか、広がりや伸びがない、大谷(野球)にかけるなら伸びのない棒球なのです。 

香味から若さや嫌味な要素が目立たず、伸び代も十分ありますが、いやいや亀田ならもっとできたでしょ…と思ってしまうのです。 
同蒸留所では熟成環境が昨年にかけて整ってきただけでなく、その造りも2年目以降に酵母の使い方などで大きな変革が起こっていて、重ねて言いますが本当に期待している蒸留所の一つ。今作はその意味で最初の一歩というより次以降のリリースに、いい意味でのギャップを与えてくれるものと期待しています。 

特にピート原酒、ノンピートで3年だとバーボンオクタブ系の原酒ですかね。次あたりでとてつもない巻き返しがあるのでは…。大谷なら、大谷(堂田)さんなら…きっとやってくれるはず!

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追記:...なんとなくフェアじゃないというか、自分の気持ちが収まらないので、後日新潟亀田蒸溜所がいかに凄くて期待できるのか、記事にしたいと思います。

ロッホローモンド 12年 2011-2024 1st fill マディラホグスヘッド 54.8% 銀座777&渋谷313

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LOCH LOMOND
12 YEARS OLD 
Distilled 2011 
Bottled 2024 
Cask type 1st fill Madeira Hogshead 
Exclusive for Liquor Mountain GINZA777 & SHIBUYA313 
700ml 54.8% 

評価:★★★★★★(6ー7)(!)

香り:無花果やパイナップルのフルーツシロップのような甘いアロマ、微かにスパイス、バニラの要素もあるが、主たる要素はケミカルフレーバーに集約されている。

味:口当たりはとろりと粘性にある質感、フルーツ味の風邪薬シロップの甘さ、ビタミン剤、オレンジやマンゴー。余韻にかけて適度なウッディネスが染み込むように全体を引き締めていく。

あざといまでのケミカルトロピカル。 マディラ感と言われると難しいが、落ち着いた無花果のようなフレーバー、溶け込むフルーティーさがその辺り由来か。いずれにせよクオリティの高い一本。
ケミカルフレーバー好きには自信を持っておすすめ出来る。


リカーマウンテン渋谷店と銀座店向けの限定ボトル。自分の関わった渋谷店向けブレンドPBを先日紹介しましたので、こちらも紹介。

同店は関連会社かつインポーターである都光さんがロッホローモンドの輸入代理店になっているので、通常ラインナップの扱いはもとより、何かとロッホローモンドPBがリリースされています。
今回のはその中でも当たりな一本ですね。ロッホローモンドでマディラワイン樽熟成のリリースは過去にも出ていますが、熟成年数が若くてスパイシーすぎたり、フルーティーさが足りなかったりするものも。一方今作はこれぞ近年のロッホローモンドテイスト、通称ジェネリックトロピカルが炸裂しています。

ロッホローモンドのオフィシャルシリーズの中では、フルーティーさを出す製法をしているインチマリン表記のリリース、特に12年以上熟成しているリリースにこの手のフレーバーが強く出ており、今回のものもベースの製法はインチマリンでしょうか。(勿論ロッホローモンド表記のものでも最近のは総じてフルーティーです。)
加えて近年のロッホローモンドということもあって変に紙っぽさもなく、大概の人は好きでしょってヤツです。

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※ロッホローモンドの通常ラインナップの中で特におすすめがインチマリン12年。新ラベルは少々ドライな仕上がりだが、例のフルーティーさはしっかり備わっている。

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※ロッホローモンド蒸留所のスチル。様々な設備を保有する大規模工場だがメインは所謂ローモンドスチル。ネック部分の仕切りを変えることでフレーバーをコントロールしている。またクーパレッジも併設しており様々なカスクでの熟成が行われている。

なお、この手のケミカルフレーバーはアイリッシュでも出る…というかアイリッシュが元祖。ただし仮にアイリッシュのシングルカスクで今これが出たら、絶対この値段では買えないのも本リリースの魅力の一つ。
またアイリッシュと違うのが余韻のキレ、アイリッシュは味わいがソフトな分余韻にかけて少しぼやける感じがあるものが多いところ、ケミカルな甘さがそこまでしつこくなく余韻が引き締まるのが特長です。

過去の投稿でも何度か触れてますが、かつてのロッホローモンドは濡れたダンボールやユーカリ油といった、一般的にネガティブな個性が強く出ており、我々世代の飲み手にいいイメージを持っている人はほとんどいないと言っても過言ではありません。
以前、良くなったロッホローモンドをブログで評価したら、くりりんは買収されたかみたいなことを言われたりも。流石に美味しくないものを美味しいという、そこまで魂売るようなことはしませんって…。

ロッホローモンドは2003〜2004年ごろの仕込みから変わり、年々ネガが減って好ましいフルーティーなフレーバーが強く出るようになってきたのです。上記インチマリン12年は最たる事例で、2016年ごろの流通品を皮切りに、ラベルチェンジする毎に洗練されてケミカルフルーティー特化に。5000円台で買えるシングルモルトとしてはもっと評価されて良い、トップクラスにわかりやすいフルーティーさを備えています。勿論、今回のPBはさらに強いなわけですが。

同時期のロッホローモンドでは設備的な何かが変わったという記録は残っていないものの、この頃新しいマネージャーが着任しています。業界的にもシングルモルトにシフトしていく動きがあった中で、作り手の意識が変わり、そこから蒸留所本来のポテンシャルが引き出されたのかもしれません。
“かつて"紙"といわれた、ロッホローモンド蒸留所、新世紀の逆襲。飲めば未来が少し明るくなるような、南ハイランドの可能性。 ”
と書いたのが2016年のこと。あれから約10年。やっぱり間違いはなかったですね。

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余談:そのリカーマウンテンさんがGWと35周年記念でよくわからないレベルのセールをしています。モートラックとかアードベッグとか、10年くらい前の価格かなこれは(笑

リカーマウンテン SHIBUYA313 くりりん‘s Blend 60.7% ワールドブレンデッド

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KURIRIN’S BLEND 
World Blended Whisky 
Special Hand Fill 
For Liquor Mountain SHIBUYA 313 
500ml 60.7% 

評価:ー(自分の作品なので)

一言:リカーマウンテン渋谷店SHIBUYA313向けオリジナルウイスキーのブレンダーを務めさせて貰いました。

【テイスティングコメント(2024年12月リリース直後)】
香ばしい麦芽の風味とともに広がるシェリー樽由来のコクのある甘さとほのかな酸味、微かに感じられるケミカルなフルーティーさ。奥にはシトラスやグレープフルーツを思わせる柑橘感とスモーキーフレーバーが潜み、スパイシーでドライな余韻へと続く。

ブレンデッドウイスキーの王道とも言える複雑さを備えた、飲みごたえのある味わい。カスクストレングスでハイプルーフなので、それぞれのフレーバーの主張もわかりやすい状態。また、ややドライでスパイシーな余韻であり、これらは店頭での追加熟成を想定し、意識的に“伸びしろ”を残した構成。 

【テイスティングコメント(2025年3月時点)】
甘くコクがある麦芽風味、口当たりは丸みを帯びて度数も60%ほど感じないが相応の膨らみがあり、蜂蜜を思わせる甘さ、赤や黄色のケミカルなフルーティーさとほのかなスモーキーさ、程よくビターなフィニッシュへと滑らかにつながっていく。

追加熟成を経てリリース直後にあった凸凹感、そして余韻にかけてのドライな感じがなくなり、丸みを帯びたふくよかな味わいに変化。溌剌としたフレーバーの方が好みという方もいるだろうが、ストレート、ロック、ハイボールとなんでもござれのブレンデッドに。
いいじゃない、いいじゃないのあんた(自画自賛)

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酒販リカーマウンテン、その渋谷店(SHIBUYA 313)では、店頭で熟成中の樽からその場でボトリングして購入できる「ハンドフィルシリーズ」が8種程度販売されています。
このハンドフィルシリーズの1つに、光栄にも私がブレンドしたウイスキーを採用いただくことになり、滋賀県は長濱蒸溜所の保有する原酒を使ってブレンドを実施。昨年12月に無事?リリースされました。
500mlで6000円税別。カスクストレングス仕様のウイスキーとしては手に取りやすい設定に出来たと思います。

無事“?”という表現の経緯については追って説明させていただくとして、まずは今回のブレンドについての解説を。
キーモルトとなっているのは、長濱蒸溜所のシェリー樽原酒です。そこにバーボン樽やアイラクオーターカスクで追熟した輸入原酒を複数タイプブレンドしたワールドブレンデッドウイスキーであり、モルトだけでなくグレーンも含まれた構成になっています。

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長濱蒸溜所とのコラボはもう何度目かわからないほどやってますが、今回のブレンドでは、ブレンドレシピを作ったら後はボトリングして完成という従来のリリースとは異なり、ブレンド後に店頭で購入されるまでの間、オクタブカスクでの追加熟成期間があるということがポイントでした。

レシピとして完成直後が最も美味しいではなく、完成してからがスタート。例えばドラフト指名された高卒若手選手が、最初は荒削りながら溌剌としたいいプレーを見せてくれて、徐々に力をつけてプロ選手として大きく成長していくような…。リリース直後からいつ購入頂いても一定のクオリティがあり、その上で店頭での追熟を経てピークを迎えられるようなイメージで必要な原酒を選定し、レシピを構成しています。

そのため、気をつけたのがウッディさ、樽感です。シェリー樽熟成の原酒は美味しいだけでなく全体の繋ぎにもなるのでしっかり効かせたいところではありますが、入れすぎると追加熟成の際に出るオークエキスが加わる余地がなくなり、どんどん苦くなってしまいます。
また、口当たりについても最初から滑らかな状態では逆にウッディでドライな要素が目立つようになってきてしまいます。伸び代、削りしろを残しつつ、ピートや麦芽のある程度馴染んだ複数のフレーバーがさらに一体となっていくような。。。

そんな成長曲線をイメージしてブレンドしました。先月、3月に店頭で状態を確認したところ、上記コメントの通り想定通りにまとまってきており、後は夏場に向けてどうなっていくか。詰め替え分含めて作成されているので、状況によって継ぎ足しもあるようです。そこはまた定期的に様子を見に行きたいと思います。

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※昨年12月のリリース直後、店頭で状態確認をしていたところ、訪日観光客の方がご購入。初めてのハンドフィルを楽しんでいただけたようです。

リカーマウンテン渋谷店では、店内での有料試飲の実施に加え、コンセプト店舗として他のブランドとのコラボを定期的に実施しており、そのキャンペーンが店頭で展開されている他、冒頭記載の通り最大で8種類のウイスキーをハンドフィルで販売しています。
樽構成は、半分がブレンデッド、半分がジャパニーズシングルモルトで、後は売り切れたら別なブランドに入れ替わっていくという感じ。先日伺った際はどこの蒸留所か不明なシークレットジャパニーズや、バーボンが詰められている樽もありました。

このハンドフィルは、スコットランドの蒸留所ビジターセンターで実施されていたものに着想し、長濱蒸溜所で始めたものを店頭で出来るようにした、その一つがSHIBUYA 313のハンドフィルとなります。
酒税法上の扱いは、課税済みの商品が再度樽に入れられて量り売りをしているという整理なのですが、樽から直接ボトリングするのは特別感があり、スコットランドに倣って誰がいつ購入したかという記帳や、ラベルに日付などを記載するシステムもそのまま体験できるようになっています。

渋谷店以外のリカマン一部店舗でも少量のハンドフィルは実施されているようですが、この規模で実施しているのは渋谷店のみ。もし興味関心ございます方は渋谷店でぜひ、そしてあわよくば、私のブレンドも試していただけたら幸いです。(露骨なアピール)

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※スコットランド、クライヌリッシュ蒸留所のハンドフィルボトル。こういうのは味もさることながら、体験としてワクワクするんですよね。

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※同店舗ハンドフィルで販売されていた新潟亀田蒸留所のライトリーピーテッド仕様のシングルモルト。華やかでフルーティー、そして程よいスモーキーさで将来性抜群の1本。

最後に「無事?」と記載していた経緯について。
この企画をリカーマウンテンの伊藤社長から受けたのは、2024年の中頃でした。同店舗は6月にオープンしており、その後くらいだったと思います。
ブレンドしてレシピを作成したものの、リリース時期は正式に決まっておらず。実はこのハンドフィル用ブレンドの第一弾としてはyoutuberのせるじおさんがブレンドしたウイスキーが販売されており、その後でのリリースになると。

ただリリースの際には公式発表がありますし、PR用のテイスティングコメント等を記載する必要もあるので、リリース前にはサンプルを送っていただくことになっていました。
ところが、2024年 の年末になっても話がこない。来年のリリースだろうか?と思っていたところ、12月20日にウイスキー仲間から「リカマンSHIBUYA店のPBリリースおめでとう!」と突然メッセージ。
え?と思って調べてみると、渋谷店のXに掲載されていて、しかももう販売されている(笑)

どうやら連絡ミスで、店舗側がリカマンの公式発表前に出してしまったようです。これこの後どうすんの?と。
そこから慌ててプレスリリース原稿を書いたり、サンプルは自分で受け取りにいったりで、まあ師走は文字通り師走で慌ただしいなぁと。
酒の席のネタとしては美味しいんですけどね。って言うか他のコラボ先と比べて扱い雑すぎません?w
そんな出来事があったわけでございます。

あれから4ヶ月、先日確認しに行った限りでは、ブレンデッドのハンドフィルとしては他のブレンドと比較しても1番売れ筋のようでした。ありがたい限りです。
様子を見ていたら、シチリア島から来られたという訪日観光客の方がご購入。そう、結構海外の方が買われていくんです。挨拶したら、よくわかんないけど面白そうだからと。せっかくなので記念撮影。ようこそ日本へ!

ドタバタはありましたが…。リカーマウンテン様、長濱蒸溜所様、貴重な機会をいただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします!

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補足:いつもと同じくですが、本ウイスキーの作成・販売・情報公開等に関して当方は金銭の類、報酬は受け取っておりません。どのメーカーに対しても等しく趣味の活動として対応させてもらっています。

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