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2023年11月

アラン 18年 46% 2023年流通ロット

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ARRAN 
Single Malt Scotch Whisky 
Aged 18 years old 
Lot 2023 
700ml 46%

評価:★★★★★★★(6-7)

香り:オーキーで華やか、りんごのカラメル煮や洋梨のタルト、紅茶、微かに桃の缶詰を思わせるしっとりとした甘さが混じる。

味:柔らかく甘い麦芽風味、ブラウンシュガー、濃く入れた紅茶を思わせるウッディネス。中間以降は黄色系フルーツを思わせるフルーティーで華やかな艶のあるフレーバーが開き、非常に好ましい構成。
余韻は香りで感じた桃のシロップの甘さから、果実の皮を思わせるほろ苦い味わいが染みるように長く続く。

アメリカンオーク、そしてリフィルシェリーバットで熟成されたアランの真骨頂とも言うべきフルーティーなスタイルが全面に出ている。広義な表現としてはトロピカルフレーバーと言っても差し支えないだろう。熟成感、ウッディさも適度でバランスが良く、香味は旧ボトルの18年と同傾向だが完成度はこちらが高い印象。
これを家飲み出来るならもう充分。黒化した18年も良いけれど、やはりアランはこの系統が心落ち着く。3本くらい欲しい(笑)。

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端的に言えば、旧ボトル時代のアラン18年が完成度を高め、より艶やかなフルーティーさを増して現代に戻ってきた。
先日都内某所で試飲し、アラン18年構成変わってる。見るからに色違うし、そして美味い。どこかでちゃんと飲める機会が欲しいと思っていたところ。10年ぶりに訪問した野毛・BARシープで、マスターのおすすめがこちらでした。
「最近良かったって思ったボトルはコレだよね。」
こういう偶然は、なんだか嬉しいものです。

2019年に現在のボトル、ラインナップに大規模リニュアルを行ったアランモルト。その中でも特に大きな変化があったのが、シングルモルト18年です。
黒い、南国のビーチにでも行ってきたのかというくらい黒い。元々アラン18年はシェリー樽原酒とバーボン樽原酒を構成原酒としていましたが、基本的にはシェリー樽がリフィルホグスヘッドなのか、今回紹介するロットのような色合いでした。
ただ、生産本数が1ロット9000本と限られており、2000年ごろのアラン蒸留所の生産規模もそこまで大きなわけでは無いことから、シェリー樽の比率、1st fill と2nd fillの比率が変わればこう言うことも起こり得ます。

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(2019年ロットのアラン18年。1st fillシェリー樽原酒の比率が高く、リッチでウッディな味わいの奥にはバーボン樽に由来するフルーティーさがアクセント。レベルの高い1本だったが、ここまで急激なイメチェンは想定外だった。)

一方、このリニューアル後の数年間でアランの人気が急激に高まり、最新ロットが入ってきても即完売という状況が続いていました。
アランは毎試合6回2〜3失点でゲームは作ってくれるレベルだけど、9回完封の絶対的エースでは無いんだよね。人気もそこそこだし。
なんて評価をしていたのが嘘のよう。
アラン抽選販売なんてビラを見かけては、え?アランってもっと気軽に飲めたボトルだったよね?
いつのまにかその人気がエース級になっていることについていけず、暫くロットの変化は見てませんでした。
ひょっとすると、2022年のロットでも同様の変化があったのかもしれません。

話を今年のボトルに戻すと、アラン18年が美味しい、完成度が上がったと感じる背景には、蒸留所としての純粋な成長があるのではと考えています。
アランの創業は1995年(1996って書いてましたスイマセン)。大手メーカー傘下ではなく独立した蒸留所です。日本のクラフトみても明らかなように、創業から数年単位で酒質は安定しませんし、樽の調達から仕込み全般、繋がり作りやトライ&エラーの積み重ねだったことと思います。

そうなると今回のロットに使われた原酒が仕込まれた2004-2005年は、いよいよ蒸留所として造りが安定し、熟成した原酒からのフィードバックも増える時期。シングルモルトブームも始まり、どんな樽のどんなウイスキーが評価されるか情報が入って熟成の方向性も定まってくる。
つまりアラン18年や21年などの熟成した原酒のロットは、これから一層期待出来るのでは…。
相変わらず店頭で見かけることは少ないですが、機会を見て定期的にテイスティングしたいと思います。

大手メーカーの安定した造りも良いですが、中小規模蒸留所、クラフトメーカーの成長が見えるリリースも楽しいですね。

シングルモルト 三郎丸Ⅲ THE EMPRESS カスクストレングス 60% ヘビリーアイラピーテッド

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SABUROMARU 3 
THE EMPRESS 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY
Cask Strength
Heavily Islay Peated (45PPM) 
Distilled 2020 
Bottled 2023 
One of 1800 bottles
700ml 60% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:トップノートはレモンやグレープフルーツ、黄色を帯びた柑橘香、灰のような柔らかいスモーキーさ。微かに根菜、スパイス、オーク香。そして淡い薬品香を伴う。

味:コクのある口当たりから、グレープフルーツや柑橘、香ばしい麦芽風味、そしてピーティーなフレーバーがしっかりと広がる。中間以降は力強く、ジンジンとした刺激、奥にはバーボン樽由来のオークフレーバー。合わせて塩気やダシのような厚みがあり、ほろ苦くスモーキーなフィニッシュへとつながる。

今はまだ若さもあるが、全体的にネガティブなフレーバーが少なく、コクのある口当たりや柔らかいスモーキーさが女性的な印象も感じさせるモルトウイスキー。個人的な印象は、カリラとラガヴーリンに、少しアードベッグを加えたような…。
前半部分の口当たりの柔らかさやコク、雑味の少なさはZEMON由来、柑橘系のニュアンスは木桶発酵、そして余韻にかけての出汁感、繋がりのある味わいや柔らかく特徴的なスモーキーさはアイラピート由来と多くの新要素が感じられる。熟成感も過度に樽が主張しておらず、5年、10年後が楽しみな1本。

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年々進化を続ける若鶴酒造・三郎丸蒸留所。
今年については、映画「駒田蒸留所へようこそ」でも話題になっており、そのリリースにも注目が集まっているところ。いよいよ今年のシングルモルトリリース、三郎丸Ⅲ THE EMPRESS(女帝)が発売されました。

三郎丸蒸留所で、稲垣マネージャー主導で2016年から始まった大規模な再建計画と、三郎丸としてのブランドの立ち上げ。今回の原酒の仕込みの時期となる2020年は、その最終段階にして、若鶴酒造のウイスキーではなく、真に三郎丸蒸留所のハウススタイルやコンセプトを体現するウイスキーの仕込みが行われた年となります。
え、それはクラウドファンディング明けの2017年ではないのか、と思われるかもしれませんが、2017年〜2019年の仕込みは一部旧世代の設備等を用いているため、若鶴酒造のウイスキー事業として名もない蒸留棟だった旧時代から完全に切り替わったわけではありませんでした。

昨年リリースされたシングルモルト三郎丸Ⅱも、2019年に自社開発のポットスチルZEMONによって蒸留された原酒でリリースされていますが、2019年の蒸留の際に余溜として用いられたのは、前年2018年まで使用していた旧世代の改造ポットスチル時代のもの。
蒸留に難しさもあった2019年の原酒から、注意深くテイスティングすると旧世代の個性を感じるのはそのためです。

三郎丸蒸留所はコンセプトとして「THE ULTIMATE PEAT(ピートを極める)」とともに、目指すシングルモルトは「1970年代のアードベッグ」を掲げています。
2020年の仕込みからは、重要なポイントとなる“アイラ島で取れたピートで製麦したモルト”を原料に用いて蒸留することで、従来の内陸産ピート由来の野焼きのような強いスモーキーさから、柔らかく個性的なスモーキーさに変わり。
味わいへの影響としては、余韻にかけてダシっぽさやコク、あるいは塩味といったアイラモルトにも通じる個性が得られています。
また、これまでのリニューアルで手を入れられてこなかった発酵槽も新たに木桶を導入。これで原料、粉砕、糖化、発酵、蒸留、そして熟成。全ての行程が三郎丸仕様になり、目指すシングルモルトの姿に向け、大きな1歩を踏み出したのです。

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(アイラ島、ブルックラディ蒸留所近くのピートホグで採掘されたアイラピート。内陸ピートとは成分が異なり、アイラモルト特有とも言われるヨード香や塩気に由来すると考えられる。稲垣マネージャーが現地を訪問した際、自社の仕込みの量であれば契約可能であることが判明し、アイラピート麦芽の供給契約を締結。)

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(2020年から導入された木桶発酵槽。最初は1基だけだったが、のちに2基となった。96時間の発酵行程のうち、蒸留前の一定期間をホーローから木桶に移して実施する。これにより、乳酸発酵が促されて味わいの複雑さ、柑橘系のフレーバーが際立つ。)

三郎丸Ⅲ THE EMPRESSに関し、これまでのリリースからもう一つ変化があるのが、熟成における樽由来の成分の出方、樽感の濃さです。
過去のリリースと今作とで樽感を比較すると、三郎丸Ⅲのほうが淡く、スコッチウイスキー寄りのまとまり方をしている印象を受けます。
これは熟成期間のうち2022〜2023年の1年間、T&T TOYAMAの井波熟成庫に移して熟成をさせたため、その効果があったものと考えられます。
井波熟成庫は断熱を重視した部材、設計が用いられており、1年を通じて安定した熟成が可能となっています。

参考までに、以下写真の通り三郎丸ⅡとⅢの色合いを比較すると、Ⅱのほうが若干濃い色合いです。これが10年熟成原酒なら微々たる違いかもいれませんが、これらの原酒はまだ3年で、効果があったのはうちⅢの1年のみ。味についてもⅡの方が樽感がアバウトというか、濃くでた分原酒に馴染みきっていない印象を受けます。
一方で、樽感が若干淡くなったこともあり、今までより少し若いニュアンスが感じられるのも特徴かもしれません。しかし今回のリリースはあくまで3年熟成です。3年としては十分酒質は整っているのですが、樽感としても酒質としても、今後の伸び代が残されていると見ることが出来ます。

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以上のように、年々進化を重ねる三郎丸蒸留所のウイスキーの中でも、この2019年から2020年の間は、原料や設備のアップロードから非常に大きな変化があったことが感じられるリリース。少なくとも、これまでの三郎丸蒸留所のウイスキーと三郎丸Ⅲ THE EMPRESSとでは、全く違う印象を感じられると思います。

ちなみに、2020年の仕込みはアイラピートの他に、従来と同じ内陸産ピートでの仕込みも行われています。
稲垣マネージャーの話では、その原酒を用いたシングルモルトは2024年5月ごろ、「シングルモルト 三郎丸Ⅳ THE EMPEROR」としてのリリース予定とのこと。フェノール値はⅢが45、Ⅳが52でほぼ同じ。ピートフレーバーは熟成期間が長いほどこなれて馴染んでいくため、アイラピートと内陸ピートの個性の違いを学ぶという意味では、これ以上ないリリースになるかと。。。

それこそ今までは熟成環境由来とされていたアイラモルトの個性が、ピートに由来することが大きかったという事実から、ウイスキー愛好家として得られる経験値は大きいと思います。
言い換えるとアイラモルトを日本で作っただけでは?…ということもありません。オリジナルの蒸留器ZEMONは日本唯一です。
三郎丸蒸留所のファンは勿論、今までのリリースはあんまり…と言う方も、ぜひ飲んでみて欲しいですね。

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(三郎丸蒸留所限定で販売が始まった、三郎丸ランタン。ものづくり好きな稲垣マネージャーらしい公式グッズである。)

T&T TOYAMA ザ・バルク Vol.2 オーバークロック 45%

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T&T TOYAMA
THE BULK Vol.2 
BLENDED WHISKY OVER CLOCK 
Speyside Malt Whisky 12yo & Blended Scotch Whisky 5yo
Oloroso Spanish Oak Cask Finish
Selected by T&T with kuririn
One of 900 Bottles
500ml 45%

評価:★★★★★★(6)

香り:複雑でウッディなトップノート。複数のダークフルーツやカカオチョコレートを思わせる豊かなアロマ。色濃く濃厚な甘さの奥には焼き栗や焦げた木材、微かに樹液の要素が混じる。

味わい:まろやかで濃厚な口当たり。香り同様にダークフルーツ、ドライプルーンやブルーベリージャムを思わせる甘さと角の取れた酸味から、徐々にどっしりとしたウッディネス。ビターで煮だした紅茶、微かな刺激を伴う長いフィニッシュへと繋がる。

ベースとなるウイスキー、THE BULK Vol.1が持っていた熟成感とシェリー樽由来の要素に、後熟したスパニッシュオークのフレーバー、シーズニングのシェリー感が加わって一層濃厚で甘酸っぱく、複雑な香味へと仕上がっている。
後熟期間も合わせてほぼ13年熟成シングルモルトと言えるブレンデッドウイスキーだが、この樽感を受け止められる酒質のキャパは流石というところか。開封直後は後熟に用いた樽感が若干浮ついて感じられるかもしれないが、時間経過で馴染み、某M蒸留所のリリースに求めたいリッチな味わいを楽しませてくれる。

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当方が関わらせてもらっている、T&T TOYAMAのTHE BULKシリーズから、第2弾となるVol.2 オーバークロックが2023年12月5日より発売されます。
本リリースは、メーカー間で主にブレンド用の原酒として取引されているバルクウイスキーの中でも、高品質なもの、面白い個性やメッセージ性のあるもの、そして手頃な価格で楽しめるものを個人向けにバラ売りする。いわばパソコン部品のバルク品から着想を得たリリースです。

前作Vol.1は、ほぼ●ッカランとされるバルクブレンデッドスコッチウイスキー。
スペイサイド地域のシェリー樽熟成で有名な某M蒸留所の、シェリー樽で12年間熟成されたシングルモルトウイスキーに、なんらかの事情によって5年熟成表記相当のブレンデッドウイスキーがごく僅かに混入してしまったもの。
表記上はブレンデッドウイスキーとなりますが、その香味はバランスの良いシェリー樽由来の要素と、シングルモルトとしか思えないほどはっきりとした個性があり、まずはそのままボトリングしました。※Vol.1の記事はこちら

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THE BULK Vol.1は、エピソードの面白さや、近年高騰を続けるシェリー樽熟成ウイスキーを手軽に楽しめるという位置付けもあって、愛好家の皆様からは想像以上の好評を頂いたところ。
THE BULK Vol.2 オーバークロックは、Vol.1でリリースしたバルクウイスキーを、スパニッシュオークのオロロソシーズニングカスクに詰めて、三郎丸蒸留所の熟成庫で約1年間後熟した、濃厚仕様のリリースです。

1年間の追熟とはいえ、明らかに濃く、やや赤みがかった色合いの変化から、外観の情報だけでも違いを感じて頂けると思います。
度数は1%落ちましたが、香味は濃厚なものとなっており、Vol.1で感じた以上のダークフルーツやカカオチョコレート、煮出した紅茶、ほのかに焦げた木材。。。といった、スパニッシュオーク由来のフレーバーがマシマシです。
ですが濃厚さと引き換えに多少ウッディさも強くなり、Vol.1と比較してアンバランスであるのも本リリースの特徴となっています。

これは本リリースのサブタイトルが“オーバークロック(Over Clock)”とあるように、ラベルデザインにもなっているパソコン部品のCPUで、安定性を犠牲にする可能性があるものの、本来の定格以上の性能を引き出す手法と掛けて表現しています。
Vol.1を企画した際、これはこれで美味しいのだけれど、ボトラーズリリースとしてはバランス寄りで、シェリー樽熟成には更なる濃厚さを求めるニーズもあるのではと感じており。全体のバランスを多少犠牲にしても、面白さや個性を強化したものをと、昨年から並行して仕込んでいたのがVol.2なのです。

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通常、フィニッシュで樽感を後付けしたウイスキーは、香味に多少のズレや違和感が生じることとなります。
今回のフィニッシュ用いた樽は、Vol.1の大多数を占めるわっからんなシングルモルトの熟成に用いられた樽と近い特性を持っていると思われるものを選んでいますが、熟成が途中でリセットされることで濃厚さに加えてウッディネス、渋みといった要素も新たに足されることとなり、リリースとして上手くまとまるかはチャレンジでもありました。

本品開封直後は多少その香味のズレが感じられるかもしれませんが、時間経過でまとまり、複雑さや良い部分が増していく印象。
実はカスクサンプル時点では「あれ?」と思う要素が強かったのですが、ボトリングしてみたら甘みと果実味が強くなって想像以上にいい具合。8月くらいにリリースしようかと話していましたが、引っ張って正解だったかもしれません。
やっと寒さの増してきた2023年年末。家でゆったり飲む1本にちょうどいいリリースだと思いますし、Vol.1が手元にある方は飲み比べてフィニッシュによる違い、オーバークロックによる進化を楽しんで貰えたら幸いです。

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グレンモーレンジ 18年 1990-2000年代流通 43%

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GLENMORANGIE 
YEARS 18 OLD 
SINGLE HIGHLAND RARE MALT SCOTCH WHISKY 
1990-2000’s 
750ml 43% 

評価:★★★★★★(6)

香り:甘やかで柔らかい香り立ち。ブラウンシュガー、キャラメル、微かにみたらしの要素も混じる色濃い甘さ。合わせて牧草、麦芽香もしっかりと感じられる。

味:香り同様に柔らかくしっとりとした口当たり。まずはシェリー樽熟成を思わせる色濃い甘さ、キャラメルや微かにダークフルーツ。そしてやや野暮ったさに通じる麦芽風味、バニラやパン生地の甘さ、徐々にほろ苦くビターなウッディネス。

現行18年の華やかさとも、1世代前の90年代初頭流通の陶酔感伴うシェリー系18年(写真下)とも異なる、2000年前後の緩やかで甘やか、そして少し植物感などが混じる野暮ったさ、牧歌的な麦芽風味の混じる癒し系。
洗練されても突き抜けてもいないがそれが良い、どこか安心感を感じてしまう、この流通時期らしいモーレンジの個性を味わえる1本。

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初めて飲んだというわけではなく、今まで何度も飲んでいるボトルですが、レビューしていなかったので掲載します。

バーボン樽や麦芽風味のフレーバーがメインにある10年と加えて、シェリー樽熟成原酒の要素を感じられるのが、1990年からリリースを開始したとされるグレンモーレンジ18年です。
ただ同じ18年といっても、時代によってフレーバーの方向性は変わっており、今回はその点を少し掘り下げていきます。

現行品の18年は、シェリー樽原酒こそ使われているものの役割は全体に厚みを出す程度。現行18年の象徴とも言える、ラグジュアリーな華やかさは、バーボン樽熟成原酒の役割となっています。
一方で、1990年のリリース当初の18年は、シェリー樽原酒の個性が強く出て、そのクオリティはまさに黄金時代。甘やかでフルーティーで艶やかで…陶酔感を感じさせるもの。
どちらのボトルもその流通時期を俯瞰して、ハイレベルな1本であることは間違いありません。

そして今回紹介する1990年代後半から2000年代流通のグレンモーレンジ18年は、属性としてはそのどちらにも属さない。
シェリー樽原酒は60−70年代の黄金時代とは言いがたく、バーボン樽原酒は近年の市場を抑えた華やかでフルーティーさを全面に出せるようなものでもない。この時期のグレンモーレンジらしい野暮ったさのある麦芽風味を主体として、華やかでもフルーティーでもない、甘やかさとウッディさが備わった味わいが特徴です。

シングルモルトウイスキー市場は2000年代以降に本格的に拡大してきた歴史があり、いわばそこまでは、どんな味わいが市場で評価されるのか各社手探り状態だったところ。シェリー樽の色濃い甘さやダークフルーツを思わせる果実感。バーボン樽の華やかで黄色系のフルーティーさを思わせるオークフレーバー。そしてトロピカルフルーツ。
この辺を意識して各社がリリースをし出したのは、まさに最近なんですよね。

そうした歴史から、今回のグレンモーレンジ18年は、ブレンデッドウイスキー全盛期からの過渡期の1本。18年だけでなく、同時期の10年も妙に野暮ったいフレーバーが目立つ構成となっています。
ただ、この野暮ったさが完全に悪かというと決してそうではないんです。都会に住んでいると田舎の空気に心が安らぐ瞬間があるような、洗練されていないものに味を感じるというか。。。
何れにせよ、今のウイスキーにはない魅力を持った1本であると言えます。

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今回のレビューアイテムは、御徒町にオープンした「リカースペース榊」でテイスティングしました。
チャージ2000円と、通常のBARに比べると高額なように感じますが、無料で飲めるボトルに加え、このモーレンジが1杯●00円など、基本的には原価に近い価格で提供。
また、強い匂いを出さないフードは持ち込み自由など、フリーな感じも面白い。
色々飲んで勉強してみたい方、おすすめのBARです。

福島県南酒販 963 AXIS ワールドブレンデッドウイスキー 46%

カテゴリ:
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963 
AXIS 
WORLD BLENDED WHISKY 
Produced by Fukushima kenan shuhan 
700ml 46% 

評価:★★★★★(5)

香り:プレーンでグレーンのクセの少ない穀物系の甘さ、ほのかに樽香。じわじわと内陸系モルトの酸や甘さを伴うフレッシュなアロマ。

味:口当たりはマイルドで、香り同様癖の少ないグレーン系の甘さが広がる。奥にはモルティーで、複数の樽香。古樽やバーボン樽のウッディネス、熟成した原酒の甘酸っぱさと若い原酒由来の酸味がグレーンベースなブレンドのアクセントとなっている。
余韻はややスパイシー、微かにウッディでほろ苦いフィニッシュがじんわりと続く、

ブレンド比率的にはグレーンウイスキーベースと思しきブレンデッド。ただし安ブレンドに使われるようなスカスカなグレーンではなく、コシの強いバーボンスタイルのグレーンに、同社が保有&熟成させた内陸モルトをブレンドしているのだろう。バランスが良く、若さや癖の少なさは万人向けの飲みやすさに通じている。ストレートはもちろん、ロックやハイボールなど、さまざまな飲み方で楽しむことができる。

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笹の川酒造の関連会社である、福島県南酒販がリリースするウイスキーブランドが、地元福島県郡山市の郵便番号963を銘柄名とした963ブレンデッドウイスキーです。これまで、963のスタンダードラインナップは、エントリーグレードの赤と黒、そしてミドルグレードのAXISとBONDSでしたが、その中でも価格的にボリュームゾーンに位置するAXISが大幅リニューアルしました。

963ブランドの構成原酒は基本的にはイギリスからの輸入原酒ですが、ウイスキー製造免許をもつ笹の川酒造(安積蒸留所)が製造元となることで、原酒のブレンドはもとより、追加熟成や自社蒸留の原酒などを確保した原酒をアレンジすることができる点に強みがあります。
安積蒸留所の熟成庫を見学しに行くと、樽の鏡板に「963」と書かれた樽を見かけることがあります。あれは今後使用するブレンド用に原酒を追熟、アレンジしたりしているためで、聞くところによれば県南酒販専用の熟成庫もあるのだとか。

日本の酒税法免許の整理では、蒸留設備を持ち、ウイスキー製造免許を持っていなければ輸入原酒であっても熟成、ブレンド、加水等のアレンジをすることはできません。
製造元との繋がりがあるからこそできるアレンジ力、原酒の活用が、963ブランドの強みとなっています。

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さて、今回リニューアルしたAXISですが、角瓶形状だったボトルやラベルデザインだけでなく、中身も大きくリニューアルしています。
この角瓶仕様が発売されたのは2019年、今から3年前。ブレンダーや保有原酒の変化もあるのでしょう。
以前のAXISや963関連の低価格帯リリースは、比較的若い内陸系の原酒を追熟させて、日本の温暖な熟成環境にありがちなウッディな樽感が加わったような構成でしたが、今回のAXISはそうした個性は控えめで、全体的にプレーンで癖のない甘みを感じさせる構成です。

その香味からコシの強いヘビータイプのグレーン、BSG(バーボンスタイルグレーン)をベースに、安積蒸留所で追加熟成した原酒をブレンドしてバランス良くまとめているのだと推察します。
グレーンというと安っぽい感じがするかもしれませんが、今の原酒市場においては、同じ価格帯で若くて荒々しいモルトを使われるより遥かにバランスよく仕上がるため、特にこうした晩酌や飲食店等で広く使われる間口の広いブレンドの場合、取りうる選択肢として充分アリだと思います。
下手に若さや個性の強いブレンドは、食事に合わせづらいんですよね。

また、その一方でちゃんと963らしさというか、旧世代のAXISにも通じる樽香も奥に感じられるため、ブランドの継承はされていると言うのもポイントだと思います。
今回のリニューアルでBONDSが休売となり、原酒をAXISに集約していくとのこと。原酒や資材の高騰、色々あるとは思いますが、競争の激しくなってきたウイスキー市場の中で一定のシェアを取れていることでもあり、縁のある地の企業の活躍に明るい気持ちにもなります。

近々ハイエンドブランドの963チェスナットウッドリザーブ25年もリリースされるとのこと。
リリース時期的に今年のウイスキーフェスのブースで提供もあるでしょうから、今回のリリースと合わせて、ブースで色々話を聞いてみたいと思います。

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(地味にグッズが多いのも963ブランドの面白さ。写真のスキットルはアウトドアで重宝しています。)

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