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2023年06月

キャパドニック 22年 2000-2022 Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection 55.2%

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CAPERDONICH
Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection
Aged 22 years
Distilled 2000
Bottled 2022
Cask type Hogshead #29490 
700ml 55.2%

評価:★★★★★★(6)

香り立ちははっきりとした樽香、バニラや乾いた木材、新築家屋のようなアロマ。言い換えればバーボン的なニュアンスが感じられ、それがキャパドニックのソフトなモルティーさと混じり、スワリングしていると濃厚なフルーツ香へと変化する。

口に含むとバナナを思わせるクリーミーな甘さから、スライスアーモンド、焼き小麦菓子、ウッディなニュアンス。柔らかい麦芽風味を思わせるモルティーさを下地に、香り同様にはっきりとした樽由来の要素、エキスが口内に広がる。
余韻にかけては黄色系果実のほのかな酸味とウッディネス。華やかで甘いオーク香が鼻腔に抜け、ドライで長く続く。

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キャパドニックは基本的に線が細く、あるいはぼんやりとしている印象があり、特に2000年代のものはその傾向が強いと感じていました。
そこにホグスヘッド樽での熟成となると、まぁ軽やかな感じで後は華やかなオークフレーバー、ウッディな感じ・・・と予想していたのですが、このボトルは樽の系統が異なるのか、かなりはっきりと樽由来の要素が主張し、リッチな味わいを形成しています。

樽由来の要素を分解して考えると、バーボンの新樽系フレーバーと、オーソドックスなバーボン樽、つまりアメリカンオーク由来の黄色系フルーツ、オーキーな華やかさがそれぞれ混ざったと言える構成です。
濃厚さに繋がっているのは、前者のバーボン系フレーバー、新樽要素の存在。そこまで色が濃く出ているわけではないので、チャーリングしたものではないでしょう。 バーボンバレルをホグスヘッドへと組み替える際に、エキス分を多く残した樽材が使われたか、あるいはちょうどいいサイズの樽材が無かったとかで、樽材の一部が新樽に置き換わった樽なのではないかなと予想します。

こうした樽は頻繁に見られる訳ではありませんが、ボトラーズで内陸系原酒を飲んでいると、たまにこういうフレーバーのあるリリースに当たります。
中には、これほぼバーボンじゃんってレベルのものもありますが。今回はその新樽要素が、フルーティーさを後押しするように混ざり合う。注ぎたてはトップノートでバーボン系のフレーバーを強く拾いましたが、グラスの残り香からは、熟成したコニャックにも通じる甘さ、華やかさを感じる。濃厚な樽感が好みな方には、たまらない1本に仕上がっていると思います。

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なお、WDC3周年記念の3種リリースでは、飲む前はキャパドニックとグレンバーギーが同じような感じなのでは・・・と予想していましたが、飲んでみると全く異なる方向性でした。
カスクチョイスの意図を探るべく、ラベルのセンターに描かれたWDCのセバスチャン氏にフォーカスすると、
「our Man from the Black Forest, in front of the public, always in the front row and creating the buzz. Seb is our food hunter for liquid pleasure - no spot on earth remains undiscovered.」と紹介されているのですが・・・これはどんな意味が込められているんでしょう(笑)。

面識がないので想像でしかありませんが、WDCはスコッチウイスキー以外に、アメリカンウイスキー、ラムやコニャックなども扱われていて、それらかは並々ならぬこだわりが感じられます。
それらにあるWDCのメンバーが求めていると思われる共通した要素が、このキャパドニックにも備わっています。
バーボンのようであり、モルトであり、コニャックのようでもある。WDCの品質第一主義の水準を満たした1杯を楽しんでみてください。

グレンバーギー 27年 1995-2022 Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection 57.7%

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GLENBURGIE
Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection
Aged 27 years
Distilled 1995
Bottled 2022
Cask type Hogshead #6688
700ml 57.7%

評価:★★★★★★★(7)

トップノートはウッディさが強く感じられるが、徐々に林檎のコンポートや桃の缶詰、微かにナッツやハーブのニュアンスを伴う、華やかで艶やかな香りが開いていく。
口当たりはややドライ寄りだが、香り同様フルーティーでオーキーな華やかさが含み香で広がり、余韻はトロピカルなフルーティーさと共に、乾いたウッディネスとスパイシーなフィニッシュが長く続く。

序盤は樽感が強く感じられるかもしれないが、長期熟成のグレンバーギーとバーボンホグスヘッド樽の組み合わせに予想されるフレーバーがしっかりと備わった、期待を裏切らない1本!

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ウイスキー界のマトリックス、あるいはブルーマン、そんな呼び名があるとかないとか、Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection。WDCのメンバーで、Kyoto Fine Wine & Spiritsのオーナーである王子さんがセンターを飾るグレンバーギーは、これまでのKFWSのリリースでも複数見られた、多くの愛好家が好むフルーティーさを備えた、飲み応えのあるリリースです。

グレンバーギーと言えばバランタインの構成原酒。ロングモーンやベンリアック、とマーティンなどと比べると、あまり話題になってこなかったモルトですが、感覚的には今から10年くらい前あたりから、ボトラーズリリースのグレンバーギーで20年熟成超のものがフルーティーで美味いと評価され、人気を確立していった印象があります。

一口にフルーティーと言っても、ある程度ウイスキーの経験値を得た愛好家であれば、内陸のノンピートモルト+バーボン樽やボグスヘッド樽の組み合わせは、こうなるだろうという予想が立てられるところ。その中でもグレンバーギーは、酒質の関係か、華やかでありつつフルーティーさがトロピカル寄りに出るというか、一層好ましい仕上がりとなることが多いモルトの一つです。

その証拠という訳ではありませんが、先日、とある方から突然ブラインドを出題され、ノージングだけでグレンバーギーと熟成年数等の各要素を絞り込めた。それくらい、際だった要素を発揮する樽が見られます。

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“グレンバーギー 32年 Old & Rare 1988-2020 43.6%
ノージングでバーギーと答えたら変態扱いされたが、近年でここまで華やかでフルーティーなのは限られる。枯れ感ある華やかさ。ドライアップルや白葡萄、濃縮したオーキーなフレーバーが余韻まで続く。ピークの終わりの美味い酒“

今回の1本にも、そうしたグレンバーギーに求める良さ、愛好家がフルーティータイプのモルトに求める要素、高い品質がしっかりと備わっていることは、テイスティングノートで記載の通りです。

なお、WDCにおける王子さんの紹介文は、日本から来たサムライで、“グルメで品質に妥協のない男”であることが書かれています。
「our Man from Japan, the samurai, fearless and always on our side. Quality is at the top of the list for Taksad. He is our gourmet and convinces with his sensory skills.」
ともすれば、今回の王子さんをセンターに置いた本リリースが、WDCのコンセプトたる「高品質であること」を体現したリリースというのは、あながち思い込みではないと思えるのです。

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アンネームドアイラ 30年 1991-2022 WDC 3rd Anniversary Collection 51.4%

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UNNAMED ISLAY (Lapharoaig)
Wu Dram Clan 3rd Anniversary Collection
Aged 30 years
Distilled 1991
Bottled 2022
Cask type Bourbon barrel #2674
700ml 51.4%

評価:★★★★★★★(7)

ラベルの圧に反して、あるいは度数に反して香味は上品で複雑。穏やかな香り立ちから、華やかなオークとナッツ、乾いた麦芽に角の取れたスモーキーさ、柑橘やグレープフルーツ。
口当たりも同様に、じんわりと角の取れた柑橘感とオークフレーバー、ピートスモーク、海のアロマが混ざり合って広がる。
最初の一口も美味いが、二口目以降に複雑さが増してさらに美味い。熟成は足し算だけではない、引き算と合わさって作られる、上質な和食のような繊細さが熟成の芸術たる1本。

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香味の傾向から、おそらくラフロイグと思われる1本。
ラベルからイメージされるバッキバキでゴリゴリな味わい(失礼)ではなく、女性的というか紳士的というか、実に優雅でバランスが取れた長期熟成アイラモルトです。

バーボンバレルで30年も熟成したら、もっと樽感は強く、ウッディでオーク感マシマシな感じに仕上がりそうなものですが、熟成環境が冷涼で一定、それである程度湿度が高く、長期熟成期間中にタンニンが分解されていく過程を踏まえれば、こうしたリリースにもなりえるのか。
この淡い感じは、今回の原酒の供給もとであるシグナトリーのリリースを俯瞰した時に見られる特徴にも一致しており、同社の熟成間強によるものとも考えられます。

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Wu Dram Clanは、KFWSの王子さんを含む、ラベルに描かれている3名の愛好家で構成されるプライベートブランドです。既に数多くのリリースを手がけており、その全てが非常にクオリティの高いスピリッツであると、愛好家間では多少高くてもこのブランドなら、という指標の一つにも鳴っています。

今回のリリースは、同ブランド3周年を記念して、アイラモルト、グレンバーギー、キャパドニックの3種がリリースされたもの。
3名それぞれが酒類におけるスペシャリストと言えるレベルの愛好家であり、このリリースでラベルに大きく描かれたBoris氏は

「our Man from Munich, moving things in the background, hunting and analyzing in cold blood. No matter how tough the negotiations get, Boris will handle it. But in the end it has to be peated.(最終的にはピーテッド化する)」と紹介されるほど、高い交渉力と、ピーテッドモルトに対するこだわりがあるそうです。

その氏がセンターなラベルとあれば、とっておきとも言えるアイラモルトも納得ですね。古き良き時代を思わせる要素と、近年のトレンドを合わせたようなフレーバーのバランス感も、WDCやKFWSのリリースによく見られる傾向です。
改めて非常にレベルの高い1本でした。

AMAHAGAN×空挺ドラゴンズ 作者対談イベント(6月25日 14:00~)

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先日レビューした長濱蒸溜所と漫画:空挺ドラゴンズのコラボリリース。
同作の作者である桑原太矩氏と、その関係者らによる本ウイスキーリリースを記念したトークイベントが、6月25日(日)に池袋のミクサライブ東京にて開催されます。

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『空挺ドラゴンズ』ウイスキー発売記念トークイベント
6月25日(日)14時00分~16時00分
参加費:1650円(オンライン参加は1100円)
池袋 ミクサライブ東京(〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-14-3)
https://online.mixalivetokyo.com/blogs/information/driftingdragons

【登壇者】
桑原太矩 『空挺ドラゴンズ』著者
吉平 Tady 直弘(追加ゲスト)  アニメ『空挺ドラゴンズ』監督
橘 もも(追加ゲスト)  小説版『空挺ドラゴンズ』著者
講談社・髙橋正敏 『空挺ドラゴンズ』初代担当
講談社・寺山晃司 『空挺ドラゴンズ』現担当


自分は元々この原作を読んでいて、かつ何かと繋がりのある蒸溜所の1つである長濱蒸溜所の関連ということ。
そして自分がレビューしたボトルの、ウイスキー側ではなく原作側の記念イベントであるということ。ウイスキー側がイベントを実施した事例は数多あるんですが、原作側(今回は講談社)が主導したイベントはあまりなかったと思うんですよね。
ファン層はどんな感じだろうか。長濱のコラボリリースは次もあるし、近場だし、ウイスキーに比べりゃ参加費安いし(※ココ重要)、参加してみるか~と、お買い上げありがとうございま~す。

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てな感じで参加申し込みをしたのですが。
概要を見直してみると、トークイベントの中身は書かれているものの、ウイスキー関連のイベントなら間違いなくあるはずの”酒類提供”に関する記載が無い。
え、なにこれ、ひょっとしてこれってトークだけ?
現地参加とオンライン参加の差額は、ひょっとしてライブ会場の箱代だけ?
うそやん、そんなことある?

で、調べました。
いきなり講談社に凸するのは気が引けるので、本リリースの販売を担当されている「WHISKY BAL」こと合同会社サカキさんに問い合わせたところ、サカキさんのサイトには、ちゃんと記載されていました。
どうやらイベントの主催側と販売側で持っている資格の関係で、主催側では酒類提供について記載できないようです。
なるほどよくわかりました、質問回答頂いたついでに、記事化しておきます。1600円でテイスティングセットとおつまみ付きトークショー、結果論ですが、お得でしたねw。

~~~以下、サイトから転載~~~~
【来場者サービス】
AMAHAGAN 空挺ドラゴンズver.の発売を記念いたしまして、弊社よりどちらか1セットをご提供させていただきます。こちらはトークショー中、お席にお持ち込みいただきご賞味いただけます。

『アルコールセット』
・空挺ウイスキー ハイボール(ハーフサイズ)
・空挺ウイスキー ストレート(15ml)
・じゃがスティック近江牛ステーキ味(長濱浪漫ビール)
・ミネラルウォーター

『ノンアルコールセット』
・キンキンに冷えた炭酸水
・じゃがスティック近江牛ステーキ味(長濱浪漫ビール)
・ミネラルウォーター

参考;http://whiskybal.co.jp/kodansha.html
~~~~~~~~~~~~~~

なるほど、肉に合うだから「じゃがスティック近江牛ステーキ味」か。
サイン用のボトル持って行った人は、おかわりで自分のボトルからついじゃダメなのかな?(笑)。

そんなわけで日曜日は、時間があったら池袋に行こうと思います。
なんか息子の習い事の検定試験の送迎が被っているようなので、自分が行くことになると…ひょっとしたら無駄になっちゃうかもですが。
まったく、妻子持ちの趣味活動は、こう言う時に辛いです。

長濱蒸溜所 アマハガン 空挺ドラゴンズVer. 47% ワールドブレンデッドウイスキー

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NAGAHAMA DISTILLERY 
AMAHAGAN 
World Blended Whisky 
空挺ドラゴンズ Ver. 
700ml 47% 

評価:★★★★★(5-6)

香り:トップノートはスパイシーで、軽くナッツや麦芽シリアルを思わせる香ばしさが心地よい。奥にはオーク樽の華やかさ、微かにケミカルな甘さ、スモーキーさも感じられる。

味:香りに反して味わいはプレーンで軽めな仕上がり。口当たりはマイルドで、クレープ生地のような素朴さを感じるモルトやグレーン由来の甘さ。そこにほのかな酸味とコク、後半につれてじんわりと広がるウッディさとピートフレーバー。余韻はほろ苦く、ほのかにスモーキー。

いつものアマハガン味ではなく、系統の違うプレーン寄りな原酒構成が主として感じられる。香りにあるナッティーで華やかなアロマは、中長熟の原酒でなければ出てこないフレーバーであり、構成的には3年熟成程度の長濱モルトに、5〜10年程度の南ハイランドモルト、そして最長20年熟成程度の内陸原酒を含む幅広い年数のブレンドが仕事をしているのではないだろうか。 樽感はワイン樽やシェリー樽、そしてアイラクオーターカスクを連想する複数の要素があっさりめの複雑さを形成している。

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単体としては香りが好ましく、一方で味は面白味は少ないが飲みやすい、バランスの取れた仕上がりである。ハイボールにすると軽やかな酸味が伸び、さっぱりと飲み進めることができる。
なおブレンドレシピのテーマである肉料理とは、麦芽風味と穀物風味主体の味わいが、さながら炭水化物的なペアリングを見せる。

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Good!アフタヌーン誌で2016年から連載中の空挺ドラゴンズ。
アニメ化もされている人気作が、ウイスキー業界のコラボメーカー長濱蒸溜所と組んでリリースしたのが、今回レビューする「AMAHAGANワールドブレンデッドウイスキー 空挺ドラゴンズVer.」です。

空挺ドラゴンズは、空を飛ぶ龍を追い、それを捕って生計を立てる「龍捕り」の一団が主役の異世界冒険活劇。
同作における世界の雰囲気は、多くの人が知っている作品に例えるならラピュタに近い感じでしょうか。ストーリーは団員にまつわるエピソードと合わせて、龍を追うアドベンチャーパート、その龍を調理して食べる美食パートで展開されており、個性豊かな登場人物が織りなすストーリーを、異世界肉料理が彩る構成となっています。

今回のコラボは、長濱蒸溜所の屋久ブレンダーが原作のストーリー構成に倣って「肉料理に合う」ウイスキーとしてレシピを構成。
長濱蒸溜所のコラボリリースでは、過去に“まどろみバーメイド”でキャラクターに焦点を当てたレシピでのリリースが行われましたが、料理に合うというコンセプトは記憶している限り初めて。
いったいどんなレシピに仕上げてきたのか、どんな肉料理と合わせてみようか・・・と、作り手と原作、どちらも知っているだけに、ボトルを入手するまであれこれ予想する楽しさもありました。

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(長濱蒸溜所でのプライベートブレンド作成風景。原酒を確認する屋久ブレンダー。)

とは言え、一口に肉料理といっても、その肉の種類から調理法、味も薄味から濃いめまで千差万別です。
おそらく、屋久さんは長濱蒸溜所併設のレストランのメニューを使って検証しているはずだから(忙しくて自分で作ってる暇はないはずだ)、あれとあれと…なんて野暮な予想をすることもできるのですが、せっかくのコラボなだけに、原作の雰囲気は大事にしたい。

じゃあ原作の料理を再現しようとなるのですが、龍の肉を何で再現するかが問題です。
原作から考察すると、現実世界で海に住むクジラが空を飛ぶ龍の存在で、それを捕っていた漁師が龍捕りとして空を翔ける存在。龍から肉以外に油を捕ったり、香水に使われる成分が採られたりしているので、龍は鯨に近いと考察できますが、残念ながら 鯨肉は近場で手に入らないし、調理するにもちょっとハードルが高い。。。

悩んだ結果、第1話に登場する龍の尾身ステーキサンドを、牛のしっぽの付け根、お尻の部位であるイチボで代用することに。
原作の表現では、龍もその種類や形状によって鳥っぽいものや豚っぽいもの、いろいろな肉質があるような感じですし、うん、細かいことを気にしてはいけない!

というわけで、近所の肉屋で目的の肉を調達。
筋切りをして軽くたたき、下味をつけつつ肉の温度を常温に戻す。 牛脂をフライパンで溶かし表面を焼いたら一度休め、今度はじっくり火を入れていく…。
その間、グリルで硬めのカンパーニュをトースト。
仕上げにウイスキーでフランベ。原作はワインウォッカ、アニメだとグラッパだけど、ここはアレンジ。
厚めにカットして塩胡椒、レタス無用、パンにはさんで完成! 
はい、これは絶対美味しいやつ。

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一方で、肝心のウイスキーですが、結論から言えば今回作った再現料理とは良く合いました。
プレーン寄りでコクのある柔らかい味わい、主張しすぎないピートや樽感が、肉の旨味や下味に使ったスパイス、ニンニク、トーストの香ばしさと混ざり合う感じですね。
ハイボールなら、尚更組み合わせは選ばない。肉料理に合うというとヘビーピート仕様や、変化球でどっしり赤ワイン樽フィニッシュとかを予想しましたが、見事に外れ。それどころか、原酒の傾向、樽使い、これまでのアマハガンとは違う系統の仕上がりに驚かされました。

長濱蒸溜所のAMAHAGAN(アマハガン)は、国産原酒と輸入原酒のブレンドです。原酒の傾向は、今まではある程度決まっていて、メインにケミカルなフルーティーさが必ずあったところ。
今作は、乾いた麦芽風味にプレーン寄りなフレーバーが主体。馴染み深い“AMAHAGANらしさ”も若干香味の奥に感じられるのですが、明らかに主体は異なるウイスキー、異なる原酒の使い方をしている印象を受けます。
比率としては、今までと同様の原酒が1〜2、長濱原酒が2、異なる原酒が6〜7くらいではないでしょうか。おそらく15〜20年クラスの長期熟成を含むプレーンなブレンドが6〜7割と大多数を締めることで、ノーマルなアマハガンとは異なる仕上がりになっているように感じます。

また、もう一つ今までと違う樽感、原酒の仕上げ方も感じられました。
それはフィニッシュです。これまでもピートフレーバーは、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクでフィニッシュした原酒を使うことで、複雑さや奥行きを出す方法は取られてきたところ。一方で、ワインやシェリーについては、長濱原酒は温暖な環境で3年以上熟成させることから樽感が強くなりがちでしたが、今回のリリースでは樽感が控えめながらも複雑さがある。

確認したところ、輸入原酒をシェリー樽やワイン樽などに入れて短期間フィニッシュし、ボディが軽めの原酒に適度な厚みを持たせつつ、樽感をコントロールして使用しているのだそうです。
こうした手法で仕上げた原酒を使うのは、厳密には初めてではなく、今までのリリースでも多少なり使われてきたものとは思いますが、個人的には今回のコラボリリースで明確な違いを感じられました。

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(長濱蒸溜所の熟成庫、AZAI FACTORYで熟成されている樽の一部。管理シートを見るとAMAHAGANベースの表記があり、この輸入原酒の後熟仕様が今回のブレンドでも使用されていると予想。)

元々、AMAHAGANはシングルモルトをリリースする前段階で、ブレンド技術を高めることを目的の一つとした試験作でした。
それがあれよあれよと、とんでもない数がリリースされるに至ったわけですが。その要因の一つが
、今回のコラボリリースも該当する、プライベートボトル(PB)リリースです。

AMAHAGANの発表された2018年当時は、PBと言えばシングルカスクが基本。カスクサンプルを取り寄せて、その中から選んでリリースするのが一般的でした。
そんな中で、ブレンドで PBをやれないかと、ブレンドはカスク選定と違ってレシピでコンセプトを作れるので、様々なリリースができるはずだと長濱蒸溜所に相談して、結果2019年から何種類かリリースをさせてもらいましたが、ブレンドPBがここまで広まるとは思いませんでした。
それも長濱蒸溜所の懐の深さと、仕事の手広さ(主に社長)があってこその成長だと思います。

そうして多くのリリースを経験した長濱蒸溜所のブレンド力は、実績でいえばクラフト界隈随一。直近数年間の新規リース数だけでいえば、間違いなくウイスキー業界でトップクラスです。
今回のリリースでは、輸入原酒のフィニッシュという、長濱蒸溜所の新たな引き出しも見ることができました。

自分にコメントの依頼をいただいたモノだと、次は人気コメディ漫画の「小林さんちのメイドラゴン」とのコラボリリースが控えています。先日は、攻殻機動隊とのコラボも発表されていました。
いやどんだけリリースするねん、って感じもしますが、それぞれ単体としても面白いブレンドだと思いますし、原作に思い入れがあれば、なおさら楽しめるリリースだと思います。

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よし、龍(メイドラゴン)を獲って食べよう!

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