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2022年03月

ザ ラストピース ワールドエディション Batch No,1 50% T&T TOYAMA

カテゴリ:
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THE LAST PIECE 
T&T TOYAMA 
BLENDED MALT WHISKY 
World Edition Batch No,1 
Blender: T&T TOYAMA(INAGAKI TAKAHIKO, SHIMONO TADAAKI),KURIRIN  
One of 800 Bottles 
700ml 50% 

評価:―(!)

香り:華やかでナッティな香り立ち。アプリコットジャムや熟した林檎を思わせるフルーティーな甘み。オーキーで程よいウディネス、ハーブのアクセント、ほのかにスモーキー。

味:フルーティーでしっとりと甘い口当たり。林檎の蜜、甘栗やカステラ、麦芽風味。香り同様に熟成感があり、一本芯の通った複雑な味わい。余韻にかけて香味の広がりを感じられ、微かにピーティーで華やかなオーク香が鼻腔に抜ける。

香味とも華やかでフルーティーだが、キラキラと派手なタイプではなく、しっとりとして色濃く奥ゆかしいタイプ。奥には黄色系フルーツ、麦芽風味、特徴的なピートなど、クラフト原酒由来の個性も感じさせる。
イメージとしては、THE LAST PIECEのジャパニーズエディションに熟成感を増して、完成度を追求したレシピ。日本とスコットランドの個性が織りなす、日本だからこそ作ることができるウイスキー。ストレート、少量加水、あるいはロックでじっくりと楽しんで欲しい。

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先日、T&T TOYAMAから発表された「THE LAST PIECE」のワールドブレンデッド版です。
先日レビューを更新したジャパニーズエディションは、国内5ヶ所のクラフト蒸留所原酒100%のジャパニーズウイスキー。ワールドエディションは、構成比率の過半数以上がクラフト産原酒で、そこに輸入原酒をブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーとなります。

発売は若鶴酒造が運営する私と、ALC.を中心に、4月19日(火)から。
先行する形で、4月1日(金)から購入希望の抽選受付が開始されます。
「個性のジャパニーズ、完成度のワールド」、ブレンダーの一員として、その実現を目指したブレンドです。企画の背景、概要、販売方法に関する情報は以下をご参照ください。

公式プレスリリース:https://www.wakatsuru.co.jp/archives/3198
リリース告知記事:https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1080141305.html


※私と、ALC.抽選販売受付:2022年4月1日12:30〜2022年4月11日23:59

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090


改めて構成原酒を記載すると
・江井ヶ嶋蒸溜所 ライトリーピーテッド
・桜尾蒸溜所 ノンピートモルト
・三郎丸蒸留所 ヘビーピーテッドモルト
・長濱蒸溜所 ノンピートモルト
・非公開蒸留所 ノンピートモルト
・スコッチモルト(国内追加熟成)

クラフト原酒は全て3年熟成でバーボン樽熟成。スコッチモルトは熟成年数非公開ですが、バーボン樽以外に、シェリー樽、リフィル樽等での熟成品が用いられており、一部原酒は国内で追加熟成を行ったものが使われています。

追加熟成を経たスコッチモルトは、もともとあったスコッチモルトらしいまとまりのある穏やかな酒質に、日本的な樽感が加わって熟成感も増した仕上がり。こうした原酒の存在は、個性をまとめ上げる繋ぎとして有用である一方、その原酒に頼るだけではワールドの意味がありません。
国産原酒の個性を主として残しつつ、全体の完成度を高めるにはどうするべきか。正直、ジャパニーズのレシピ以上に悩ましく、かけた時間、試作数も多くなりました。
【補足】各原酒の個性はリリース告知記事の後半に記載→こちら

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しかしワールドブレンドというと、あまり良く無いイメージを持つ方もいらっしゃると思います。
それはブームに乗って利益を得るために、安価な輸入原酒で水増ししたリリース。つまりパッションやストーリーのない、嗜好品としての重要要素を満たさないリリース、というイメージに起因しているのでは無いでしょうか。

確かに、そうしたウイスキーの存在は否定できません。しかし本来スコッチウイスキーは美味しいものであり、日本では作り得ない原酒が数多くあります。(あるいは日本でも作れるかもしれないが、膨大なコストがかかるケース。)
例えば長期熟成原酒がそうです。
ワールドブレンドは、日本でしか作れない原酒と日本では作れない原酒、それらの良い点を引き出すことで、これまでにないウイスキーを作ることが出来る、可能性に満ちたジャンルでもあるのです。
活かすも殺すも、造り手次第というわけですね。

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THE LAST PIECEをリリースする、ボトラーズメーカー「T&T TOYAMA」は、日本のクラフト蒸溜所が、将来単独でリリースを行っていくのではなく、他の蒸留所と連携する可能性を見出せるよう、蒸留所間のハブとなることを目標の一つとしています。
一方で、同社はスコッチモルトも海外メーカーから買い付けてリリースしており、ニンフシリーズやワンダーオブスピリッツがその代表作です。つまり、日本、スコットランド、どちらにも繋がりを持つメーカーと言えます。

であるならば、THE LAST PIECEのワールドエディションは、ジャパニーズの個性感じさせつつ、スコッチウイスキーのいいところも活かした、T&T TOYAMAらしいリリースに仕上げたい。
2つのリリースを飲みくらべることで、なるほどこれが日本の個性か、これがスコッチモルトの熟成感かと、愛好家に伝わるような美味しいウイスキーに仕上げたい。
果たしてその狙いは達成されたのか、限られた条件の中で可能な限り高い点数を目指したワールドエディション。楽しんで頂けたら幸いです。

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以下:余談
4月1日から開始される、私と、ALC.での抽選販売受付は、稲垣代表の趣味趣向が色濃く反映された、激ムズクイズが用意されています。
私と、ALC.抽選販売受付ページ:

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090


公開されている4蒸留所とT&T TOYAMAからそれぞれ1問、計5問が選択式で出題されます。
誤解のないように補足すると、正答率が高い人から抽選で選ばれるのではなく、正答率が高いと当たりやすくなる、当選確率がプラス補正されるものです。全問正解でもハズレる可能性があり、正答率が低くても当たる可能性があります。
そんなわけで、これはちょっとしたゲームです。各蒸留所について調べる機会だと捉えて頂き、ぜひ奮ってご参加いただければと存じます。(難しい問題と思うかもしれませんが、冷静に選択肢1つ1つを考えてみてくださいね。)

ロッホローモンド シグネチャー ブレンデッドウイスキー 40%

カテゴリ:
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LOCH LOMOND 
SIGNATURE 
SINGLE BLENDED SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★(5)(!)

香り:柔らかく香る甘く焦げたオークのウッディさ。キャラメルと微かにケミカル、ボール紙、軽い刺激とスパイシーなアロマを伴う。

味:口当たりは緩く、序盤にのっぺりした質感から徐々に焦げたウッディネス。フレーバーとしてはグレーンの緩やかで柔らかい甘味、らしいフルーティーさと麦芽風味。余韻は焦げたオークのほろ苦さとバニラを伴って、ケミカルな甘さが残る。

スムーズで柔らかく、あまり若さも感じないが、ストレートだとややプレーンな香味が中心。一方で、濃いめのハイボールにすると、余韻にジェネリックトロピカル系のフレーバーがあって好ましい。シングルブレンデッドという造りがロッホローモンドらしい面白さだが、それ以上に、このクオリティで2000円ちょっとという市場価格を実現出来る、ロッホローモンドの強みが光る1本。

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モルト、グレーン、構成原酒全てがロッホローモンド蒸留所産の単一蒸留所ブレンデッド(シングルブレンド)。
スコッチウイスキーでブレンデッドと言えば、各地にある蒸留所から原酒を調達し、様々な原酒を用いて作成するのが一般的であるところ。このロッホローモンド名義のブレンデッドは、全ての原酒を単一蒸留所で製造し、ブレンドしていることが最大の特徴となっています。

ロッホローモンド蒸溜所には
・様々な酒質のモルトウイスキーを作るための、2種類の蒸留器。(うち、一つは複数タイプの酒質の生産が可能なローモンドスチル)
・グレーンウイスキー用の設備は通常の連続式蒸留機と、カフェスチル。
・年間10000丁の樽を補修、生産可能な樽工場。
・生産したウイスキーのボトリング設備。
と、無いのはモルティング設備くらいという、ウイスキー生産に必要な全てを自社で賄えるだけの機能を有しています。

そうした機能を活用し、同社はこれまで
モルトウイスキー:
・スタンダードなロッホローモンド
・フルーティーなインチマリン
・ピーティーなインチモーン

グレーンウイスキー:
・シングルグレーン
・ピーテッドグレーン

大きく分けて以上5系統のリリースを、それぞれのブランド名で実施していたところ。昨年から方針を変更し、ブランド大項目を全て「ロッホローモンド」に統一しています。

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今回のレビューアイテムであるロッホローモンド・シグネチャーは、現地では2019年に販売を開始したもので、日本に入荷していなかっただけで時系列は前後しますが、現在はモルト、グレーン、ブレンド、全てが「ロッホローモンド」としてリリースされているというわけです。(※現地法律上は問題なし)

わかりにくい、と感じるかもしれませんが、それは同社の販売戦略であって、とにかく「ロッホローモンド」を認知させる戦略という観点からすれば正しい方法です。
というか、このリリース事態がすごいことなのです。ただでさえ一定品質以上のモルトとグレーンを低価格に抑えて量産出来る蒸溜所は限られているにも関わらず、ロッホローモンドの原酒は5年、8年熟成でも若さが目立たず甘みや麦芽風味、フルーティーさのある個性が特徴的です。

また、今回のリリースではブレンドの後のマリッジが600丁から形成されるオロロソシェリー樽とリチャーアメリカンオーク樽でのソレラシステムが特徴とされています。ここで使われる樽は樽の保守管理に加え、リチャーを自社の樽工場で行っているもので、シェリー感よりもチャーした樽の香ばしさ、ウッディさが香味のアクセントになっています。
ともするとプレーンな香味になりがちな若い原酒のブレンドに、香味の変化、幅を与えているのです。
ウイスキー市場を陰に陽に支えるロッホローモンド。今後も意欲的なリリースに期待しています。



以下、雑談。
ウイスキーの値上がりが複数社から発表され、我々サラリーマンの懐を直撃している昨今ですが。
そんな中でも2000円台のリリースにこのロッホローモンドシグネチャーに加え、面白いリリースが複数登場しています。

・アイリッシュウイスキー「バスカー」
・シングルモルト「グレングラント アルボラリス」
・シングルブレンデッドスコッチ「ロッホローモンド・シグネチャー」

これまで、2000円前後のスコッチウイスキーというと、バランタイン、ジョニーウォーカー、シーバスリーガル。。。などの有名ブランドの12年クラスが主流。
特にホワイトホース12年は、あまり知られていませんが昭和の洋酒ブーム時に発売された限定品をルーツとした、日本市場限定品。40年近く限定品としてリリースが継続されているベストセラーで、手軽に飲めるスモーキーなウイスキーの一つです。

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ここに殴り込みをかけてきたのが上述の3銘柄。
トロピカルフレーバーを”売り“にしたバスカーは、ブレンドは軽やかな飲み心地、先日発売されたシングルモルトが同じ価格帯でさらにしっかりとした味わいがある。
グレングラント アルボラリスは、10年、12年に通じるアメリカンオーク由来の華やかさがあり、ロッホローモンドは上述の通り。
全てハイボールにして飲むと、地域、樽、製法、それぞれ個性の違いが感じられ、いやいやウイスキー楽しいじゃ無いですかと思えるラインナップ。

これから暖かくなってきて、夏場のハイボール要員としてはなんぼあっても良いボトルですからね。今年は有名ブランド1つ、そして上記3銘柄をセットで充実した家飲みを楽しんでみてはいかがでしょうか。

ザ ラストピース ジャパニーズエディション Batch No,1 50% T&T TOYAMA

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THE LAST PIECE 
T&T TOYAMA 
BLENDED MALT JAPANESE WHISKY 
Japanese Edition Batch No,1 
EIGASHIMA, SAKURAO, SABUROMARU, NAGAHAMA…and SECRET DISTILLERY 
Blender: T&T TOYAMA(INAGAKI TAKAHIKO, SHIMONO TADAAKI),KURIRIN  
Cask type Bourbon Barrel 
One of 300 Bottles 
700ml 50% 

評価:―(!)

香り:トップノートは黄色系のフルーティーさ。注ぎたてはドライだが徐々にお香の煙のように柔らかく香る。パイナップルや柑橘、ハーブ、パンケーキを思わせる甘さと軽い香ばしさ。フルーティーさとモルティーな甘みにスモーキーなアロマがまじり、複層的なアロマを形成する。

味:膨らみがあってモルティーな口当たり。熟したパイナップルを思わせる甘み。合わせてほろ苦い麦芽風味とウッディネス、軽いスパイスと微かに干草。じわじわと存在感のあるピートフレーバーが顔を出し、スモーキーでビターなフィニッシュが長く続く。

熟成年数以上にまとまりがあり、若さを感じさせないフルーティーでスモーキーな構成。バーボン樽のオーキーなフレーバーと、各蒸留所の個性がパズルのピースのように組み合わさり、それぞれが主張しながらも1つにまとまっている。わずか3年熟成の原酒だけで、これだけのウイスキーを作ることができる、クラフトジャパニーズの将来に可能性を感じる1杯。テイスティンググラスでストレート、または少量加水をじっくりと楽しんでほしい。

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先日、T&T TOYAMAからリリースが発表された「THE LAST PIECE」。
世界初となる日本国内5か所のクラフト蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキーで、ジャパニーズ仕様とスコッチモルトを加えたワールド仕様、2つのリリースが予定されています。
本リリースは、2022年4月1日(月)から購入希望者の抽選受付を開始し、2022年4月19日(火)発売予定となります。企画の背景、概要、販売方法に関する情報は以下をご参照ください。

公式プレスリリース:https://www.wakatsuru.co.jp/archives/3198
リリース告知記事:https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1080141305.html


※私と、ALC.抽選販売受付:2022年4月1日12:30〜2022年4月11日23:59

https://wakatsuru.shop-pro.jp/?pid=167372090



日本国内の蒸留所の数は、建設が予定されているものを合わせると50か所、60か所と増え続けている一方で、単独で様々なウイスキーをつくるのは限界があります。
スコットランドでは、ブレンドメーカーやボトラーズメーカーが多数存在し、原酒のやり取りが当たり前にあり、中にはブレンド向け蒸留所として位置付けられている蒸留所もあります。それらが一般的ではない日本においては、今まさにその可能性が模索されている状況にあり、今回のリリースは日本のウイスキー産業に新しい事例、選択肢を作ることが出来たと言えます。

また、T&T TOYAMAはこちらも世界初であるジャパニーズウイスキーボトラーズであり、現在富山県内にウェアハウスの建設と、各蒸留所からの原酒の調達を進めています。
そのT&T TOYAMAとして初めてリリースされるジャパニーズウイスキーが「THE LAST PIECE」であり、まさにどちらも先駆者、世界初尽くしのリリースとなっています。

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今回、そんな記念すべきリリースにおいて、ブレンダーという大役を頂きました。
私はあくまで趣味としてウイスキーを楽しんでいる愛好家でしかありません。ならば、今回のブレンドはT&T TOYAMAの2名が生産者、販売者なら、自分は愛好家という立ち位置から求めている味わいを提案していこうと、原酒選定やレシピ構築のテイスティグ、ディスカッションに参加しています。

しかしこれまでブレンドレシピ構築は10リリース以上関わっていますが、今回はとにかく難しかったですね。
まず全ての原酒がバーボン樽熟成で、そしてどれも3年以上ながら短期間の熟成であったということ。
ブレンドにおいては、グレーン、あるいはシェリーやワインのような甘く濃い樽感など、モルト原酒の強い風味の間を繋ぐ要素の有無がポイントになります。
例えるなら、蕎麦打ちで言うところの小麦粉のような存在。今回はそれらの要素が一切無いなかで、バランスをとっていかなければなりませんでした。

また、今回使用した原酒と蒸溜所は
・江井ヶ嶋蒸溜所 ライトリーピーテッドモルト
・桜尾蒸留所 ノンピートモルト
・三郎丸蒸留所 ヘビリーピーテッドモルト
・長濱蒸溜所 ノンピートモルト
・非公開蒸留所 ノンピートモルト
という組み合わせ。
若い原酒であることも後押しして、それぞれがはっきりとした個性を持っていることも、各蒸留所においては強みである一方、ブレンドにおいては難しさに繋がりました。

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三郎丸のヘビーピートモルトのような、強い個性を主体としてブレンドを構築するのは解決策の一つなのですが、これはピートフレーバーで他の蒸溜所の個性を圧殺する構成であり、せっかく5か所の蒸留所の原酒をブレンドする意味がなくなってしまいます。
従って三郎丸蒸留所の原酒をガッツリ使うわけにはいかず、そうなると先に書いたようにバランスの問題が出てしまう…。

そうして調整を繰り返して仕上がったのが、今回のブレンドとなります。
三郎丸蒸留所のオイリーでどっしりとした酒質、ピートフレーバーを底支えにして、江井ヶ嶋蒸溜所の軽やかなスモーキーさ、桜尾蒸留所のフルーティーさ、長濱蒸溜所の柔らかいモルティーさ、そこに非公開蒸留所の個性と酒質がエッセンスとなったレシピ。

自分が”ジャパニーズブレンドらしさ”として考える、「十二単」のような艶やかで雅な雰囲気…とまではいかないものの、各蒸留所の個性が重なり合い、共演しつつも、まとまりのある味わい。パズルで最後のピースがはまり、一枚の絵画として新しい世界が広がった瞬間。まさに「THE LAST PIECE」の銘に相応しいリリースに仕上がったと感じています。

ちなみに、スコッチモルトを用いたワールド仕様のレビューも後日実施する予定ですが、そちらは純粋な美味しさ、ブレンドとしての完成度を見て貰えたらと思います。これも、様々な原酒を使うことが出来る日本のウイスキーだからできる、ウイスキー造りの方向性の1つです。
本リリースがジャパニーズウイスキーの将来に向け、新しい可能性に繋がることを期待しています。
→ワールドエディション Batch No,1のリリースレビューはこちら

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飛騨高山蒸溜所の挑戦 ~クラフトウイスキーで狙う地域産業と観光業活性化~

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岐阜県高山市、いわゆる飛騨高山と呼ばれ、知られる地域に、岐阜県初の蒸留所建設計画が始動しました。
同計画の開始にあたり、クラウドファンディングが3月25日から開始。リターンには酵母別のニューメイクや、1口カスクオーナー等、魅力的なプランがあり、目標額は開始から数分で達成。ロケットスタートを決めて、今なお伸び続けている状態にあります。(ブログ公開時点で約1600万円)

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クラウドファンディングページ:
https://www.makuake.com/project/whisky-hida/


飛騨高山蒸溜所については、そのオーナーとなる舩坂酒造の有巣社長と以前から繋がりがあり、今回の計画についても事前に伺っていたところ。クラファンの実施に当たっては、応援コメントを含めてちょっとだけ協力させてもらっていました。

概要だけ列記しますと
・蒸溜所名は飛騨高山蒸溜所。現地にある廃校を改修して蒸溜所とする。
・ウイスキーのタイプはノンピートモルトがメイン。いずれ地元産の麦芽も使用したい。
・蒸留設備は、三郎丸蒸留所に導入されている国産の鋳造ポットスチルZEMON…もとい、製造者である老子製作所が、これまでの稼働データをもとに改修したZEMON(改)を軸とした設備。
・操業にあたってはT&T TOYAMAの稲垣氏と下野氏がコンサルを、そして元キリンのチーフブレンダーだった鬼頭氏が製造をサポートする。
・リニューアルした廃校は、ウイスキー製造のみならず、各種ウイスキー関連の「学び」を得る場として活用する、
・舩坂酒造を傘下とするアリスグループは市内に旅館を2軒営業するなど、旅館業としても現地と繋がりが深く、ウイスキーツアーの充実を狙う。
・高山市とも協力し、クラフトウイスキーによる地域産業の再興も推進する。(クラファンには、高山市長からのコメント有り)


という感じでですね…。
これまでウイスキー関連でのクラウドファンディングは色々ありましたが、ここまで調整されていて、実績と具体性のあるプランは見たことがありません。もし興味のある方は上記リンク先で、詳細を確認頂ければと思います。

有巣さんは自分と同世代、同い年。蒸留所のコンサルティングを手掛けるT&T TOYAMAの2人も同世代なんですが・・・本当に同じ時間を生きてきた人なんだろうかと、複雑な想いも感じてしまいました。
え、これ手を入れるところなんかあるの?と、プラン概要を見て突っ込んでしまったほどです。

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一方で、蒸留所の創業者となる企業については、ウイスキー愛好家の方々にはなじみがないと思うので補足をさせて頂きます。蒸溜所のオーナーとなり、創業者となるのは、同地で200年以上の歴史を持つ酒造「舩坂酒造」と旅館業を営むアリスグループです。

同社は元々高山市で飲食・旅館業を中心としていた企業ですが、代表である有巣氏は、紆余曲折あって2009年から事業承継した舩坂酒造を立て直し、地域の魅力を形成する一つの要素として飛騨高山の日本酒を盛り上げていこうと様々な取り組みを進められてきました。
※当時の詳細については、こちらの特集記事にまとめられています。

そんな中、飛騨高山にもっと魅力と活気のある産業を呼び込みたい。
観光資源の充実はもとより、地元産のモノが世界にから求められるような、飛騨高山のプライドとなる商品を造りたい。
新しいプランを模索していた際、若鶴酒造で三郎丸蒸留所が造るウイスキーに出会い、その可能性に感銘を受けたのだそうです。

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こうして始まったのが、今回の飛騨高山におけるウイスキー蒸留計画となります。
私自身、クラウドファンディングに寄稿させて頂いた応援コメントの通り、今回計画されている内容は実現性が高いと考えています。ZEMONにしても、廃校を用いたウイスキー造りにしても、協力体制が見込める先駆者の存在があり、サポートする人材と自社が持つ観光業等の基盤があり、決して無謀な計画とは思えません。

「ウイスキーは情熱があれば造ることはできる。しかし魅力的な商品を開発し、販路を開拓できるかは別次元の問題である。」というのは某蒸留所社長の言葉ですが、今回はコンサルティングを引き受けているT&T TOYAMAによる市場との繋ぎも期待できるだけでなく、製造面でのサポート体制も充実していると言えます。

また、先に触れたように同社は旅館業も営み、観光業という点で地域と深く関わっています。
モデルケースは秩父でしょうか。魅力的なウイスキーがあり、酒があり、環境があり、観光資源があり、日本中、世界中から人が集まり、地域経済の循環と外部からの流入が起こり、新しい産業が生まれ好循環サイクルにつながる。。。
その期待値は、クラウドファンディングの支援が集まるスピードを見れば明らかです。

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一部の愛好家の間では、既に創業が待ち焦がれる飛騨高山蒸溜所。それは三郎丸での実績から、ZEMONによって造られるまろやかで厚みのある酒質が、ノンピートスタイルでどのようなウイスキーに仕上がるかという期待に加え、同じポットスチル等設備を用いて、異なる環境で造られるウイスキーが、将来両者にもたらす相乗効果も期待されているということでもあります。

作り手の技量としては、舩坂酒造は日本酒業界では高い評価を受ける酒造の1つです。大吟醸四つ星等、同酒造の代表的な銘柄を飲みましたが、流行りの吟醸マシマシあるいはフルーティー系というよりは、雑味も少なく丁寧なつくりが伺える堅実な酒という感じで、高い技量も伺えました。
そしてウイスキー蒸留については、記載の通り心強いサポートが見込めるというのもあります。

こうした諸条件から、体制的にも製法的にも期待できると言える飛騨高山蒸溜所。
現時点でクラウドファンディングのリターンプランは、カスクオーナー制度と、ネタ枠だと思っていた木製発酵槽の名づけプランが24時間経たずに売り切れてしまいましたが、幸いなことに、愛好家向けプランとも言える1口カスクオーナー制度は一定数の枠がある状態です。

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飛騨高山の地は山間にあって、蒸留所が操業する廃校は更に山の奥のダムの傍という、隠れ家的な場所にあります。スコットランドで例えると、スペイサイド地域を思わせるような環境とも言えるわけですが、そこでZEMONで蒸留される厚みのある原酒が、熟成を経ていくことで仕上がる味わいが楽しみであるのは勿論。
今回のプランで面白いと思うのが、舩坂酒造のメンバーが三郎丸蒸留所でウイスキー研修を受けた際に蒸留した原酒を、飛騨高山蒸溜所に移して熟成するというもの。ノンピートとピーテッド、2つのプランがあるということで、三郎丸ファンにとっても激しく興味を惹かれるのではないかと思います。

本企画に小指の先くらい突っ込ませてもらった当方としても、飛騨高山蒸溜所の状況はもとより、これらの原酒の成長については可能な範囲でフォローできればと思いますが、例えば一口オーナーで高山に集って、ウイスキー祭り(あるいはオフ会)的な催しなんてやったら最高に楽しそうですよね。

夢のある話は、さらに夢が広がっていくもの。
ただそれを夢で終わらせないためにも、有巣さんをはじめ舩坂酒造の皆様には形になるエールを送りたい。
日本のクラフトウイスキー、世界が注目する領域に新しい挑戦が形になることを願って、本記事の結びとします。

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ザ ラストピース ブレンデッドモルトのリリースとスペース放送告知(4/1~ 抽選受付)

カテゴリ:
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ジャパニーズウイスキーボトラーズT&T TOYAMAから、世界初となる国内5箇所のクラフトウイスキー蒸留所の原酒を用いたブレンデッドモルトウイスキー「THE LAST PIECE」がリリースされます。

THE LAST PIECE 
BLENDED MALT WHISKY 
Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)

Blender: TAKAHIKO INAGAKI, TADAAKI SHIMONO, KURIRIN 
Bottled By T&T TOYAMA 
発売時期:2022年4月19日(火)予定

※公式ニュースリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000052.000031708.html

※リリース記念スペース放送
3月28日(月)21:00〜
配信URL:https://twitter.com/i/spaces/1lPKqmZeDanKb
スピーカー:T&T TOYAMA(稲垣貴彦、下野孔明)、くりりん
参考資料:本記事後半に記載

・江井ヶ嶋蒸溜所
・桜尾蒸溜所
・三郎丸蒸留所
・長濱蒸溜所
・非公開の国産蒸留所
世界初となる計5蒸留所の原酒を用いた、ブレンデッドモルト ジャパニーズウイスキーです。
また、これらの原酒に国内で追加熟成したスコッチモルトを加えた、ワールドブレンドも同時にリリースされます。販売は若鶴酒造のALCで、抽選販売(4月1日12:30受付開始、クイズ有り)を中心に行われる予定です。

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※3月25日に行なわれた記者会見風景。ニュース動画はこちら

公式発表にもありますように、くりりんがブレンダーの一員として参加させていただきました。(これまで同様に、監修料や販売にかかる利益等報酬は受け取っておりません。)
計画自体は1年以上前からT&Tの2名を中心に動いており、それこそ交換する原酒の選定などにも関わらせて頂いたところです。
ブレンダーとしての参加は、自分のテイスティング能力とこれまでのリリース実績等を評価いただいたとのことですが、本当に凄い経験をさせて貰いました。

リリースにあたっては、タイトルにもあるようにT&T TOYAMAの2名と当方でスペース放送を実施して、改めて企画の説明や狙い、そして裏話等をさせて頂きます。
例えば、ブランド名であるTHE LAST PIECEの由来にもなっている、ブレンドのトライ&エラーです。

今回の原酒は全て光るものがあり、今後の成長も見込めるものでした。しかしそれはあくまでシングルモルト、シングルカスクとしてリリースする場合であり、今回のようにブレンドするとなると、豊かな個性は必ずしもプラスにならない場合があります。
しかもジャパニーズエディションの構成原酒は、全て3年熟成でバーボン樽原酒です。シェリー樽の濃厚な香味でバランスをとるような事も出来ません。かといって、ピートを強くしすぎると他の原酒の個性が死んでしまう。とにかくバランスをとるのが難しかったですね。

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(ブレンド風景。ジャパニーズ、ワールドとも日本のクラフト蒸留所のポテンシャルを感じる事ができるレシピに仕上がった。)

THE LAST PIECEは、各蒸留所の個性をパズルのピースに例え、パズルが1枚の絵画となる瞬間、全く新しい魅力をもったウイスキーが誕生することをイメージしています。
各蒸留所の原酒の個性、混ぜ合わせたときの表情、ブレンドにおける最後の1ピースはどこにあるのか…。リリースを楽しみにしてもらえるようなエピソードを、スペースやブログ記事を通じて紹介していきたいと思います。

なお、本日3月25日はリリースに向けての記者発表が行われたわけですが。3月26日、27日のウイスキーフェスティバルでは、ブレンド直後のサンプルをT&T TOYAMAブースで同プレミアム会員のみに試飲提供するそうです。
気になる方は、ピンバッチをお忘れなく!

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※以下、スペース放送用参考資料※
THE LAST PIECE の紹介と、構成原酒を提供頂いた蒸留所に関する所感を以下の通りまとめます。
共通しているのが、若い原酒ながら熟成年数以上にまとまりがあり、どれもレベルが高いということです。
「またまた、忖度してるんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、厳しめに見たとしても、どの蒸溜所の原酒もスコッチウイスキーで言うところの10~15年熟成程度のクオリティはあるものと感じています。

放送では、それぞれの原酒に感じた印象、ブレンドに使ってみた際の変化等も伺ってみたいと思います。そのため、原酒調達にあたって各蒸留所を回られたT&T TOYAMAの2人に私が色々質問をして、話を聞いていくような流れをイメージしています。


■THE LAST PIECEについて
ブランドネーミングの由来は上記の通りですが、少し異なる視点の話を記載します。
2021年にジャパニーズウイスキーボトラーズ事業を始めたT&T TOYAMAは、日本のウイスキー産業においてハブとなる存在を目指すという目標を持っています。
ジャパニーズウイスキー約100年の歴史(山崎の創業を起点とした場合)のなかで、日本には作り手がおり、蒸留所があり、それをリリースする酒販店も充実しています。しかし、スコットランドのように各蒸留所と繋がりのあるブレンドメーカー、ボトラーズメーカーが存在せず、また法律的な制限もあって、それらは非常に縦割り的で、組織を越えた横の繋がりは殆どありません。

これまでの時代であれば大手3社を中心に様々なウイスキーがリリースされ、少数のクラフトメーカーが尖ったリリースで愛好家を賑わす、そんなビジネスモデルが成立したところ。しかし今やそのウイスキーメーカーの数は創業予定のものを含めると60社を超える状況です。

如何に複雑な香味を持つウイスキーと言えど、そこまで多様性のあるものは出来ませんし、商品の製造だけでなく販売、広報にかかるコストは馬鹿になりません。
共存共栄を図って日本のウイスキー産業を更に大きなものとしていくためには、各社の間を繋ぎ、リリースを通じたPRも行う”ハブとなるメーカー”、つまりブレンドメーカーやボトラーズメーカーが業界におけるラストピースとなっています。

T&T TOYAMAには4月上旬完成予定の熟成庫があり、ここで原酒の熟成は行われていきます。
そして各クラフト蒸留所と連携し、交換、調達した熟成原酒を用いたリリースの第一歩が、「THE LAST PIECE」。彼らが目指す日本のウイスキー産業に込められた想いが結実した、ブレンデッドウイスキーであると言えるのです。

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Japanese Edition Batch No,1 700ml 50% (限定300本)
各クラフト蒸留所、3年以上熟成原酒をバッティング。

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World Edition Batch No,1 700ml 50% (限定800本)
各クラフト蒸留所の原酒を構成比率で半分以上使用。スコッチモルトは日本国内で追熟したものをブレンド。

■ラベルデザインについて
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ラベルデザインは、各蒸留所の個性がつながり、調和することをイメージして、日本の伝統工芸の一つである組子(くみこ)をモチーフに使用しています。
また、その組子の配置は細胞やDNAをイメージさせるようでもあり、これもまた繋がりと、そしてその繋がりが増えていくことで、新しい日本のウイスキーを形成することも意味として込められているそうです。

最初はパズルのピースでラベル案を作ったんですが、気がついたらめちゃくちゃスタイリッシュでカッコ良くなってました。やはりプロの技術は凄いですね。
組子は様々なデザインがあるので、今後リリースが続く場合はラベルは色違いだけでなく、異なる組子のデザインを用いていくそうです。

■構成原酒と蒸留所について
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①江井ヶ嶋蒸溜所
蒸留時期:2018年6月
度数:62.8%
系統:ライトリーピーテッド
樽:バーボンバレル

軽やかな麦芽風味にピリッとした舌への刺激、柑橘系のフルーティーさ、オークフレーバー、そしてじわじわと土っぽくピーティーな余韻。
同蒸留所の特徴として、ヘビーでフレーバーの力強い原酒とは対極にある、ライトで柔らかく、それでいて適度なコクのある原酒という印象。かつてはコシのないペラくて雑味の強い蒸留所という印象が、こうして単品で飲んでみるとその変化に改めて驚かされました。
先日リリースされた、三郎丸蒸留所とのコラボリリースFAR EAST OF PEATでも同様の役回りでしたが、今回のブレンドにおいても全体の繋ぎ、底支えとしていい仕事をしていると思います。


②桜尾蒸溜所
蒸留時期:2018年8月
度数:60.8%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

ブレンドに向けてテイスティングをした際、いい意味で一番驚きがあったのがこの原酒でした。
個人的に桜尾蒸留所の原酒は、例えるならスコットランドのグレンマレイのように、プレーンで軽やか、しかし樽感を受け止めてフルーティーに仕上がる近年のスペイサイドモルトのようだと感じています。正直、もっと評価されていい蒸留所ですね。
今回の原酒はしっかりとオーキーなアロマ。軽やかでフルーティーかつナッティーな広がり。余韻がウッディでドライ寄りでもあったので、使う量には注意しなければなりませんでしたが、ジャパニーズ、ワールドともフルーティーな香味を形成する役割を担っています。


③三郎丸蒸留所
蒸留時期:2018年7月、8月
度数:63.1%、62.3%
系統:ヘビーピーテッド
樽:バーボンバレル

今回、三郎丸からは2種類の原酒が用意されていました。
どちらも三郎丸らしくどっしりとした重みのあるフレーバー構成は共通で、
63.1%のほうはモルティーで香ばしく、そして焦げたような強いスモーキーさ。
62.3%のほうはオイリーで微かにハーバル、スモーキーさの中に癖を残したような構成。
ピートフレーバーは前者のほうが素直で、一層際立っているのですが、今回のブレンドでは、後者62.3%の原酒をどう使いこなすかがポイントだったように思います。
三郎丸の原酒はとにかく強いので、使いすぎると全てのフレーバーを圧殺してしまいます。しかし、大黒柱となる存在が無いとブレンドは成り立たず、それぞれの個性が分解してしまいます。
いかにしてバランスをとっていくか…造り手に似てじゃじゃ馬です(笑)。

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④長濱蒸溜所
蒸溜時期:2018年7月
度数:59.9%
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

長濱蒸溜所の個性がしっかり出ていると言える原酒です。
香りはモルティーで微かにモロミの香り、穏やかな酸味とオーク香。味わいも柔らかくコクがある麦芽風味を主体として、余韻はほろ苦く軽い香ばしさが混じる。
バーボンバレル特有の華やかさはまだそれほど強くないため、5蒸留所の原酒の中では最も中立的なキャラクターと言えるかもしれません。まさに各蒸留所の繋ぎ役ですね。
今回はバーボン樽原酒ですが、くりりんは個人的に別リリース関連でワイン樽やシェリー樽原酒を使ったところ、どれも非常にいい仕事をしていました。


⑤非公開の国産蒸留所X
蒸留時期:2018年
度数:非公開
系統:ノンピート
樽:バーボンバレル

蒸留所側の希望により、完全非公開となります。私も一切コメントできません。
ただ、この蒸留所の原酒なくして、今回のブレンドレシピは成り立ちませんでした。
蒸留所の個性としてはジャパニーズ、ワールド、どちらのブレンドからでも感じることが出来ると思います。テイスティングに当たっては、各蒸留所の個性を紐解きつつ、どこの蒸留所かを予想しながら楽しんで貰えたらと思います。


⑥スコッチモルト各種
熟成年数:非公開
系統:ノンピート、ピーテッド
樽:シェリー樽、バーボン樽、ウイスキー樽

ワールド仕様のレシピに使われた、輸入スコッチ原酒です。(同仕様では、構成比率51%以上がジャパニーズ原酒です。)
国内で追加熟成された原酒が用いられ、かなりこなれているもの、日本的な個性・樽感が付与されているものがあり、ジャパニーズという枠を超えて可能性を感じるものでした。
今回のリリースでは、各蒸留所の個性と将来性を感じられるリリースがジャパニーズだとすれば、ワールドは日本だからこそ作ることが出来るウイスキーとしての可能性を感じられると思います。

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最後に、本リリースに関わったブレンダーの一人としての感想を。
日本のウイスキーはスコットランドをルーツにしていますが、現代においてはそれを完全に再現するのではなく、蒸留所毎に発酵や蒸留、そして熟成等で工夫し、各地の環境にアジャストして独自の個性を生み出しています。

例えば、温暖な日本においては樽感が強く出るため、基本的には熟成期間を短く設定しなければなりませんが、その分、長期熟成では失われてしまう原酒の個性が強く残ります。
結果、シングルモルトではそうした個性が強みとなり、現在進行形で評価を高めているわけですが。規模の限られるクラフト蒸留所単体で作る事が出来る原酒の種類、香味の幅には限界があります。
T&T TOYAMAが進めている各種プロジェクトは、まさに日本のウイスキー産業の将来を見据えたものと言えるわけです。

ただ…記事中にも書いたとおり、個性豊かなクラフト原酒のブレンドは、想像以上に難しかったですね(笑)。
これはリリースコンセプトというより、自分個人の想いとなりますが、今回のブレンドで表現したかったジャパニーズウイスキー観は「十二単」です。熟成を経たことで得られる重厚なウッディさと個性、これらが重なり合うことで生まれるウイスキーを、雅で艶やかな日本の着物独特の雰囲気に重ねています。

結果、十二単というよりは、単に着物の重ね着のような感じかもしれませんが、それぞれの原酒の個性が色彩となり、重なりあうことでこれまでにない味わいに仕上がったと思います。
最初の1杯は、是非テイスティンググラスでじっくりと、各蒸留所に思いを馳せながら楽しんでいただけたら幸いです。

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