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2021年06月

グレンマッスル No,7 NAGAHAMA BLEND 56.2% 発売情報とスペースの告知

カテゴリ:
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GLEN MUSCLE
No,7 "Episode 1/3" 
NAGAHAMA BLEND 
Peated Malt Japanese Whisky & Scotch Whiskies 
Aged 3 to 30 years old 
700ml 56.2% 

評価:★★★★★★(6)

香り:エステリーでスモーキー、焦げた木材、石炭のような香ばしさ、焦げ感を伴うピート香に、パイン飴のような人工的な要素も伴う黄色系のフルーティーな甘さと、鼻孔を刺激するドライなアタック。スワリングすると蜜入りの林檎、あるいは蜂蜜のような粘性をイメージする要素もあり、時間経過で馴染んでいく。

味:香りに反して柔らかい口当たりから広がる、骨格のはっきりした酒質。 アメリカンオークに由来するバニラ、黄色系フルーツ、そして酒質由来のエステリーさとフルーティーでケミカルな甘み。ピーティーでスモーキーな含み香。微かに海苔のような海藻を思わせる要素。余韻はオーキーな華やかさとほろ苦いピートフレーバー。麦芽風味の包み込むような柔らかさが、鼻孔に抜けるスモーキーさを残して穏やかに消えていく。

エステリーでフルーティーでスモーキーなブレンデッド。スモーキーフレーバーはライト~ミディアム程度で、強く主張せず香味の複雑さに繋がっている。注ぎたては少しばらつくような印象もあったが、グラスの中で加速的に馴染み、開いていく。多様な原酒を用いたカスクストレングスのブレンデッドの特徴とも言える変化であり、こうしたリリースの醍醐味と言える。
少量加水するとケミカルな甘さ、アメリカンオーク由来の熟した洋梨、微かにトロピカル要素を纏った香味がスモーキーフレーバーよりも前に出て、よりフルーティーな味わいへと変化する。

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長濱浪漫ビールから、2021年7月1日に発売される予定のグレンマッスル第7弾ブレンデッドウイスキー。グレンマッスルとは何か、についてはもう説明不要ですね。美味しいだけでなく、尖った面白さのあるウイスキーをコンセプトに、今回のリリースも監修・協力させて頂きました。

No,7の構成原酒は
・長濱蒸溜所で蒸留、3年熟成を経たピーテッドジャパニーズモルトウイスキー。
・スコットランドから調達した、20年熟成のグレーンウイスキー。
・同じくスコットランド産の10年~30年熟成のモルトウイスキー。
レシピを監修するにあたり、長濱蒸溜所から提供頂いた10種類以上の原酒の中からこれらを選定し、ブレンド比率を模索。表記や価格設定から、若い原酒やグレ―ンの比率が多いのではないかと思われるかもしれませんが、長濱モルトを軸に、20年熟成以上の原酒は全体の約半分。モルト比率も75%と、リッチな構成になっています。

※ご参考
本リリースの販売は、以下、長濱浪漫ビールオンラインショップにて行われます。
発売日:2021年7月1日 12:30~
価格:14850円(税込み)
ボトリング本数:200本
URL:長濱浪漫ビール オンラインショップ | (romanbeer.com)

※ご参考2
リリースに先立ち、メンバーによるtwitterスペースでのグレンマッスルNo,7に関する配信を行います。
開催日時:6月23日22:00~23:00
ホストアカウント:@koutetsuotoko
※スピーカーはメンバーに限りますが、質問時間は設定させて頂きます。DM等で質問頂いても問題ありません。


今回のリリースの特徴は、なんといっても3年熟成のジャパニーズウイスキーと、最長30年熟成のスコッチウイスキーという、異なる地域における熟成年数最大10倍違いの組み合わせです。情報がオープンになっている日本のリリースとしては、最も幅広い組み合わせのブレンドではないでしょうか。(非公開のものを含めるとわかりませんが。)
かつてはジョニーウォーカーブルーラベルや、フェイマスグラウスに見られたXX to XX years 表記を用いるのは、目指すブレンドの方向性示すため。原酒の組み合わせとしては、現時点では日本だからこそ実現できるものとも言えます。

中でもキーモルトである長濱モルトについては、我々から長濱蒸溜所に「是非使わせてほしい」と、お願いしていたもの。そのため、まず活かしたかったのは長濱モルトの個性です。多少若い要素はあるのですが、3年熟成とは思えない口当たりの柔らかさと、創業初期の原酒に比べて骨格のはっきりとした麦芽風味、柑橘、そしてじわじわと主張を強くするピートスモーク。熟成に使われた樽は、アイラ島の某蒸留所で使われていたクォーターカスクであり、まさに聖地からのギフトとして、ピートフレーバーをより複雑なものにしてくれている、将来が楽しみな原酒です。

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この原酒に対して何を合わせていくか。難しいのは、単に熟成年数が長い原酒を混ぜれば美味しくなるというわけではないことです。
例えばグレーン。前回のリリース(No,6 Nicebulk‼)で追いグレーンとして使った、38年熟成のグレーンも選択肢としてはあったのですが、この長熟グレーンはウッディなフレーバーが強く、色濃くメローな甘みもしっかりあるタイプで、少量でも全体のバランスに作用してしまいます。単体で飲んだり、”追い”で使うなら良いのですが、ブレンドの繋ぎとして必要な量を使うと、モルトの個性を潰してしまうだけでなく、ウッディさが目立って余韻が苦くなってしまうのです。

一方で、今回使用した20年熟成のグレーンは、単体ではそこまででもないのですが、適度にドライ、エステリーでフルーティーな甘みもあり、ウッディさも目立たない。潤滑油として実にいい仕事をしてくれました。
モルトも同様で、30年熟成のスコッチモルトは、ハイランドモルトの乾いた牧草や麦芽を思わせる垢抜けないキャラクターの中に、好ましいフルーティーさのある穏やかなタイプ。これも使いすぎるとメリハリのない味わいになってしまいます。あえて10年~30年という幅を持たせた組み合わせにしているのは、1番から9番まで4番打者を揃えるのではなく、逆に価格ありきで若い原酒を大量に使うのでもなく。適材適所で、主役を引き立てるために適切な分量で使っていくことが、多層的でバランスの取れた味わいを作るために必要だったのです。

こうして仕上がったブレンドを改めてテイスティングすると、3年の長濱原酒の個性を活かすというコンセプトもあるのですが、30年熟成を中心に、スコッチモルトにあるフルーティーな個性を長濱モルトの若さ、しっかりとした骨格で支えるような、2つのコンセプトが見えてくる味わいに仕上がったように感じています。
また、そこに合わさるスモーキーフレーバーも香味の複雑さに一役買っており、ブレンデッドウイスキーだからこそ造れる味わいの醍醐味に通じていると言えます。
若い原酒の良さ、長期熟成原酒の良さ、それぞれのネガ要素を打ち消して、良い部分を伸ばす。今回リリースするうえで、理想としたブレンド像に近づけることが出来たように思います。

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(左から、30年熟成スコッチモルト、38年熟成、20年熟成スコッチグレーン。ラベルは上の長濱3年も含め、テストプリントの名残。)

以上、今回も様々な原酒をテイスティングしましたが、ブレンドに使うだけではもったいないと感じた原酒が2つありました。
我々はその原酒をブレンドにおけるキーモルトとしつつ、あえてそのままでリリース出来ないかと考え…例によって長濱さんにワガママを言い(笑)。
サブタイトルとなっているNo,7 Episode 1/3は、グレンマッスルNo,7が3部作であり、今後は先の構成原酒を用いたリリースが2種類予定されていることを意味しています。リリース本数、時期についてはまだ正式に確定していませんが、飲み比べることでブレンドの奥深さと楽しさを一層感じて頂けるのではないかというのが、今回のGLEN MUSCLE No,7を通じた狙いでもあるのです。


最後に、今回のラベルは古典的なボトラーズリリースのデザインをイメージして仕上げました。
GLEN MUSCLEのラベルづくりは、方向性を決めるため、いくつか異なるデザインコンセプトで案を作り。そこから選ばれた案の中で複数パターン作り、何れも関係者間のアンケートで最終的なラベルを決定しています。
今作も方向性として案1,2,3と作ってみたのですが、一番手間のかかった案2が「バーボンっぽい」として一番不人気だったのが、いかにもデザインの世界らしいなぁと感じる出来事です(笑)。

そして最後はテストプリントを繰り返し、実際に張り付けて外観をチェック。前作は蒸留所側とのやり取りが不足し、これが不十分でアンバランスな感じになってしまいました。ボトルは曲面なので、貼り付けてみてみると微妙にバランスが変わるんです。
こうして調整しては印刷し(カラープリンタ無いので近所のコンビニで)、セットとなった今回のラベル。ポットスチルの画像は、勿論長濱蒸溜所のものです。内外とも悩んで、苦労して、形になったものを飲む喜び。評価は自画自賛しても仕方ないので参考程度に★6としていますが、こればかりは何物にも替えられない達成感がありますね。

ブレンド監修では、長濱浪漫ビールさんに今回も本当に色々わがままを言って、無理を聞いて頂きました。改めて皆様に感謝申し上げます。
そして7月1日の発売後は、愛好家各位が本リリースを手に取って頂ければ幸いですし、あるいはBAR等でのテイスティングで楽しんでいただけたら、関わらせて頂いた一人として嬉しい限りです。

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※補足:リリースの監修にあたり、メンバー全員が監修料や販売金額の一部といった報酬の類は一切受け取っていません。また、本ボトルに関しても、一般ユーザー同様通常価格で長濱浪漫ビールから購入しております。

フォアローゼズ シングルバレル 50% ”4輪の薔薇の真実” Liqul掲載記事紹介

カテゴリ:
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FOUR ROSES 
SINGLE BARREL 
Kentucky Straight Bourbon Whiskey 
700ml 50% 

評価:★★★★★★(6)

香り:バニラやキャラメルに、華やかさの混じるウッディなトップノート。チェリー、林檎飴のフルーティーな甘さ。焦げた木材やパン酵母のような香りのアクセント。微かに溶剤系のスパイシーな刺激もあるが、全体的にはメローでリッチな構成。

味:飲み口は濃厚だが、度数に反して比較的マイルドで熟成感がある。新樽熟成に由来するキャラメル等のメローな甘みに混じる甘酸っぱさ、徐々にスパイシーな刺激、微かな香ばしさと焦げた木材のえぐみ。余韻は程よくウッディでドライ、スパイシーな刺激が心地よく続く。

まさに新樽熟成のバーボンらしさ。その中でもフォアローゼズのシングルバレルは華やかさ、フルーティーさ、そしてスパイシーな刺激が特徴的であり、他のバーボンと一線を画す個性として備わっている。これらはフォアローゼズのマッシュビルのライ麦比率の高さに由来すると考えられる一方で、7~9年というバーボンではミドルエイジ相当に当たる熟成を経たことと、50%への加水調整が全体をまろやかに、上手くまとめている。オススメはロックで。あるいは写真のようにアメリカンオークのウッドスティックを1週間程度沈めて、樽感を足してやるとなお良し。

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個人的に、バーボンウイスキーの現行品スタンダードラインナップの中で、一押しのブランドがフォアローゼズシングルバレルです。濃厚さ、甘さ、フルーティーさ。香味の複雑さと個性の強さとのバランス。特に5000円程度までという価格設定で考えたら、文句なくこの1本です。

その他の銘柄では、ノブクリーク・シングルバレル60%やエヴァンウィリアムズ12年等も候補。ただしノブクリークは比較するとえぐみが多少気になり、エヴァンウィリアムズ12年は近年香味の傾向が変わって、少々べたつくような質感が感じられること等から、熟成年数等に捕らわれず1杯の香味で考えると、やはり自分はフォアローゼズが一番好みです。(1万円台まで出すなら、現行品ではブラントンシングルバレルやスタッグJr等を推します)

■フォアローゼズ・シングルバレルの特徴
テイスティングノートでマッシュビル(原料比率)の話をしていますが、フォアローゼズ・シングルバレルは他のスタンダードなバーボンと異なり、ライ麦比率の高いレシピを用いていることが特徴としてあります。
一般的なバーボン。例えば上で候補として挙げたノブクリークは、コーン75%、ライ13%、モルト12%に対して、フォアローゼズ・シングルバレルはコーン65%、ライ35%、モルト5%と、明らかにライ麦の比率が高いのです。※補足:フォアローゼズは通常品のマッシュビルとして、コーン75%、ライ20%、モルト5%でも蒸留していますが、それでもライ麦比率が高い仕様です。

ラム麦比率が高いバーボンは、どのような特徴が表れるかと言うと、ライ麦パンのように香ばしさが強くなる…なんてことはなく。フルーティーでスパイシーな香味を感じやすくなる一方で、ドライな仕上がりにもなるという特徴があります。フォアローゼズ・シングルバレルに感じられる特徴ですね。
後は好みの問題ですが、ここにメローな新樽系の香味が熟成を経て上手く馴染むことで、飲み飽きない複雑さ、カドが取れて艶やかな甘みとフルーティーさが備わった、極上のバーボンに仕上がっていくわけです。

4輪の薔薇の真実とは?フォアローゼズ シングルバレル:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.12 | LIQUL - リカル -

そうした原酒は、シングルバレルの中でも”プライベートセレクション”などでリリースされる、ごく一部のカスクに備わっているものですが、通常品シングルバレル(本ボトル)もそのベクトル上にある、レプリカとして位置付ければ申し分ないクオリティがあります。
スタンダード品だからと侮るなかれフォアローゼズ。その楽しみ方含めて、詳しくは今月の酒育の会「Liqul」にコラム記事として掲載させてもらいました。一方で、本記事ではコラム上では書ききれなかった、フォアローゼズのブランドエピソードの考察”4輪の薔薇の真実”について、バトンを引き継いでまとめていきます。

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画像引用:エピソード|フォアローゼズについて|フォアローゼズ|キリン (kirin.co.jp)

フォアローゼズのブランドエピソードについて、ウイスキー愛好家なら一度は”ブランド創業者のプロポーズ説(上画像)”を聞いたことがあると思います。
ですが、”FOUR ROSES ”のルーツは諸説あるだけでなく、何より知られていないのがこれから記載する、創業者プロポーズ説に対する疑問と、プロポーズしたのは創業者じゃなかった話です。


■創業者プロポーズ説の疑問
それは、ブランド創業者であるポール・ジョーンズJr氏(1840-1895)が、生涯モルトヤm...じゃなかった、”生涯独身”だったということです。
ブランドエピソードが正しければ、同氏は絶世の美女と結ばれているはずです。プロポーズは成功したが、結局結婚に至らなかったという可能性は残りますが、そんな苦い記憶を果たして自社のブランドに使うでしょうか。

また、フォアローゼズのブランドが商標登録されるのは1888年ですが、プロポーズが行われた時期がはっきりしないのも理由の一つです。同氏の年齢は商標登録時で48歳。10年、20年寝かせるアイディアとは思えず、仮に5年以内だったとしても、40代です。現代ならともかく、当時としては結婚適齢期を逃した中で絶世の美女にアプローチをする。。。そして一時的には認められたものの、結局結婚に至らなかった。
いやいや、悲劇的すぎるでしょう(汗)。しかも同氏は1895年に亡くなられるのですから、なんというか救いがありません。

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※フォアローゼズ一族とも言える、ジョーンズ一族の家系図。

そうなると、フォアローゼズのルーツは他にあるのではないか。諸説ある中で、正史候補としてコラムで紹介したのが「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」です。
主役となるのは、フォアローゼズ創業者一族であり、ポール・ジョーンズJr氏の甥にあたる人物で、後に会社経営を引き継ぐローレンス・ラヴァレ・ジョーンズ氏(1860-1941)。この人物が、まさに意中の女性にプロポーズを行い、4輪の深紅の薔薇のコサージュで返事をもらった人物であることが、同蒸留所の歴史をまとめた著書”FourRoses”に、創業者一族へのインタビューを通じてまとめられています。

ローレンス氏の恋は一目惚れではなかったことや。奥手だったローレンス氏は何度もアプローチをかけ、最後に12輪の深紅の薔薇と共にプロポーズをしたことなど。広く知られているエピソードとは若干異なるのですが。それくらいの誇張は…まあ広報戦略の中ではよくあることです。
また、真紅の薔薇についても、なぜ12輪でプロポーズして、返事は4輪のコサージュだったのか。別途調べてみると、この薔薇の数にも意味があり、時代背景と合わせて表立って語られない、より情熱的で奥ゆかしい、そんなバックストーリーがあることがわかってきたのです。(詳しくはLiqulの記事を参照ください。)

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■ローレンス氏プロポーズ説の疑問
一方で、「プロポーズしたのは創業者じゃなかった説」にも疑問点があり、この話が正史だと断定しづらい要素となっています。
まず、ローレンス氏は若くして才気があり、会社を継いでいく人間として期待されていました。
ローレンス氏がプロポーズしたのは、1880年代中頃。(仮に1885年としましょう。)
”フォアローゼズ”が、ポール氏の手で商標登録されたのは1888年です。
これだけ見れば、結婚から商標登録まで約3年。今後会社を継ぐ甥っ子のエピソードを、世代交代後に向けて商標登録したと整理できるので、何ら違和感はありません。

ですが、ポール氏はローレンス氏の結婚に大反対していたのだそうです。
最終的に結婚は認められますが、会社分断の危機に発展するなど紆余曲折あり、ローレンス氏が意中の女性と結婚出来たのは1894年。プロポーズから10年弱の時間が経過していることになります。
著書FourRosesにまとめられた内容をそのまま記載するなら、これはひとえに、結婚して家庭を持つことで、ローレンス氏のビジネスマンとしての才能が潰れてしまうことを危惧したためだったとか。しかし、思い出してほしいのが、結婚に大反対しているはずのポール氏が、1888年にフォアローゼズを商標登録しているのです。

かたや反対、かたや商標登録。なんなの?人格破綻者なの?と思わず突っ込みたくなる所業。
日本人的感覚で強引に結びつけるなら、ポール氏は結婚を内心認めつつも、反骨精神か、あるいは本気度を見るために反対し、一方で将来会社を継ぐエースのために準備はしていたと。ドラマの脚本にありそうな、不器用な愛情らしきものがあるとしか解釈できません。
なお、ローレンス氏の結婚が認められた1894年の翌年、1895年にポール氏は55歳と言う若さで亡くなるのですが、原因は腎臓の炎症、ブライト病とされたものの、前兆はなく普通に仕事をしている最中だったそうです。なんとなくですが、TVドラマにありがちな景色が頭の中に再生されてくるようです。

以上のように、2人の関係のこじれについて、強引な解釈をする必要があることから100%この説が正しいとは言い切れないのですが、創業者一族へのインタビューや事実関係、時系列で考えると、少なくとも生涯独身の創業者がプロポーズしたというよりも、あるいは「メーカーのお祭りで踊った女性4人の胸元に薔薇のコサージュがあったから」という何の厚みもない説よりも、ローレンス氏のプロポーズ説は確度が高く、お酒を美味しくしてくれるエピソードとして歓迎できるものだと感じています。
正直なところ、この手のブランドエピソードは多少誇張や改変があるのが当たり前で、もう1世紀以上も前の話なのだから何でもいいという感情があるのも事実です。ただし、それがあることでお酒が美味しくなるなら。あるいは今回のように考察の余地があり、あれこれ考える楽しみが残るなら、支持すべきは間違いなく”ロマン”のあるほうでしょう。

フォアローゼズに限らず、これと知られているエピソードも、調べてみると実は違っていたり、疑問が残っていることは少なくありません。ウイスキー片手にその領域に踏み込んでみる楽しさは、さながら歴史学者になった気分です。一部地域に住む方々は、まだ大手を振って夜の街にとは言い難い状況。ならば夜のひと時を、時間の流れを遡って、あれこれ考えて楽しんでみてはいかがでしょうか。
趣味の時間として、充実のひと時をもたらしてくれることと思います。

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(禁酒法があけた1935年に登場する、フォアローゼズのPR広告。この時点でポール氏が舞踏会でプロポーズするエピソードが使われている。今ほど情報確度が高くなく、大らかだった時代の産物が、80年以上経った現代まで使われ続けているのは興味深い。)

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