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2020年03月

グレンスコシア 18年 2017~ 46%

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GLEN SCOTIA 
AGED 18 YEARS 
CLASSIC CAMPBELTOWN MALT 
AROMATIC & SPICE 
Cask type American Oak 
Finish Cask Oloroso Sherry Butts
700ml 46% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★★★(6)

香り:華やかなオーク香。ファイバーパイナップル、バニラや洋梨を思わせるオーキーなアロマがあり、合わせて若干焦げた炭のようなピート香。奥には干し草、ホワイトペッパー、微かにタイムのようなハーブ香を伴う。

味:オーキーでスムーズ。おしろい系の麦芽風味に香り同様に華やかなドライフルーツ。また熟したバナナ、薄めたキャラメルを思わせるような粘性のある甘味もあり、じわじわとビターでスパイシー。余韻にかけてはそれまでの樽感主体の味から分離したようで線が細い。刺激とともにニッキやガラムマサラのようなスパイス香、銀杏を思わせる苦味や灰っぽさのある微かなスモーキーフレーバーが感じられる。

香味ともトップにあるのはバーボンオークやリフィルホグスヘッド系のアメリカンオークの華やかさ。多少コクのある甘味を伴うのがフィニッシュの樽由来だろうか。露骨なシェリー感は感じられない。そこからやや野暮ったい癖のある麦芽風味と軽いピートという構成。樽感だけ見れば極めてまともで・・・綺麗に仕上げてあるのだが、樽と酒質が混ざりきらないような浮わついた印象も、ある意味でらしさである。

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キャンベルタウンに残る、2つ(グレンガイルを1とカウントすると3つ)の蒸留所のうちのひとつ。栄枯盛衰を経験済みなキャンベルタウンにおいてスプリングバンクも中々波乱万丈ですが、グレンスコシアはそれ以上。というのもここ5~6年程度の間、ラインナップがグレンスコシアほど大きく切り替わった蒸留所は、そうないと言えるからです。

2013年、それまでブレンド中心だったグレンスコシアの原酒をシングルモルトブランドとして売り込む大きな方針転換があり、緑に青に紫と、派手な色使いの特徴的な5種類のオフィシャルラインナップ(10、12、16、18、21年)が形成。前年比500%の成長と言う野心的な目標が掲げられたのが、この年のことです。

その目標が達成されたかは定かではありませんが、状況が変わったのが2014年。現在の親会社であるロッホローモンドグループがグレンスコシアを買収したのです。
新しいマネージャーの配属とともに、方針も切り替わったのか、上記のリリースは終売となり・・・。2015年頃からNASダブルカスク、15年、ビクトリアーナの3種類に集約され、次いで18年、25年が2017年に、そして限定品の45年が2019年にリリースされて現在に至っています。

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個人的に2015年にリリースされた3種は一通り試しましたが、樽使い、原酒構成としても定まっていない印象が拭えませんでした。
そもそも、強烈ではないが癖(個性)は独特のものがある一方で、スプリングバンク等と違って酒質のキャパシティの少ない印象のあるグレンスコシアが、ダブルカスクにしろ15年にしろあれこれ樽香を付与しても、あるいはビクトリアーナのように熟成感のあるフルーティーなタイプをベースにして、幅広い熟成年数の原酒をブレンドしても・・・それらがいまいち馴染んでいなかったように記憶しています。

もはや好みの問題とも言えますが、なにか事情でもあるのか、と思っていた中でリリースされた18 年は、近年多くのモルトで見られる王道的な構成かつ、グレンスコシアの中で最も親しみやすいと言える構成でした。
強めのアメリカンオークフレーバー、オロロソシェリーカスクフィニッシュといいつつ、そこまでシェリー感はなくコクを与える程度。華やかでフルーティーで、仄かにスパイシーな、バランスの良い仕上がり。まさにド定番系の流行ファッションに身を包んできたという感じです。

ただ、ベース部分にある個性は同じなので、どんなに着飾っても前半と後半の落差が変わらないのが、この蒸留所のさだめなのか。悲しいけど・・・これ、グレンスコシアなのよね。
「オッ、ハイランドモル・・・あれ?」となるような、そんなキャラクターを個性として愛してほしい1本です。

アンバサダー 1970年代流通 特級表記 43%

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Ambassador 
Deluxe Scotch Whisky 
1970's 
760ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:不明
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★(4ー5)

香り:ドライで微かにスモーキー、煎餅のような香ばしさと、淡いモルティーさ。ドライでプレーンで、あまり香りが立たない。

味:ほろ苦い穀物感と干し草、ザラメのような甘さとピリピリとした刺激を感じる口当たり。あまり洗練された感じはない。ほのかにハイランド系のモルティーさ、薄めたはちみつ。余韻はドライでスパイシー、あっさりとしている。

所謂ライト系統のブレンデッド。デラックス表記なのだが12年相当という構成ではなく、若いハイランドモルトを軸に、若いグレーンで合わせて、トップドレッシングに若干量熟成したモルトを加えて整えたレシピを思わせる。故に、ストレートでは変化に乏しく、飲み進めていくと若さと刺激が目立つ。同時期流通の12年との格差が激しい。ハイボール、コーラ割り等で。

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ラベルに「SCOTCH AT ITS LIGHTEST」と書かれているとおり、主に米国市場への輸出を意識して、当時売れ筋だったライトな味わいを目指して作られたブレンデッド。
ブランド解説は、以前60年代流通品のレビューでまとめているので簡単に触れる程度にとどめますが、当時のアンバサダーはバランタインらと同様にハイラムウォーカーの傘下にあり、一部共通する原酒(恐らくスキャパやハイランドバルク)が使われていたとされ、親戚のような位置付けにもあります。

この70年代のアンバサダーは、60年代に比べてさらに軽さが際立ってます。
軽いといっても、同時期の日本製ブレンデッドのように甲類アルコールを混ぜたような無味無臭というわけではなく、樽由来の味わい、熟成香、これらが乏しいところに若いモルトやグレーンの味わいが主体なので、厚みに欠けると言うのが正しいかもしれません。

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(アンバサダー1960年代流通。香味の系統は似ており熟成感は大差ないが、70年代に比べるとハイランドタイプのモルトの麦芽風味がわかりやすく、コクも感じられる。レビューはこちら。)

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同じ1970年代流通の上位グレード、アンバサダーロイヤル12年(写真右)と比較すると、熟成感の違いが如実にわかります。
方やはちみつ(古酒系に振れるとべっこう飴系の甘さになっているボトルもある)や、洋梨のような果実味を含む、熟成したモルトが纏う甘やかな味わいがある一方、それがない分プレーンな味わいが目立つデラックス。。。
キーモルトのひとつと言われるスキャパは、確かにそこまで厚みと洗練されたキャラクターではないので、違和感はありませんが、いまいち特徴が掴めないのもこのブレンデッドの特徴です。

とは言え、同じライト路線でアメリカ市場でライバルだったJ&B同様に、ストレートではなくハイボールや、あるいはコーラで割るような飲み方をするならこういうほうがむしろ良いとも言えます。
要するに使い方ですね。個人的な好みで整理するとストレートに向いているとは思えませんが、雑な飲み方をするならば、逆にこのプレーンさと適度にビターでスパイシーな味わいは、下手に樽が効いているものよりもプラスになると思います。

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今日のオマケ:コノスル レゼルバ エスペシャル ピノ・ノワール 2017

チリの高コスパ銘柄、コノスルのピノで、格付け的には下から2番目に当たるブランド。
レゼルバなんて名付けてるんで、値段もそれなりなんでしょうと思わせて、税込み1200円程度という超デイリー銘柄です。
(スペインだとレゼルバ表記は36ヶ月以上の熟成が必要ですが、チリは不要で製造元の判断という整理。)

開封直後は合革やゴムのようなアロマがありつつ、奥にチェリーやクランベリージャムのような甘い果実香。時間経過で開いてくる、少し安っぽい甘さを含んだ熟した赤い果実の新世界感。 味は香りに反して酸がしっかりあり、フレッシュな木苺やザクロ、若い苺を思わせる果実味からしっかりとタンニンが余韻に効いてくる。
開封直後は少し香りに癖があり、余韻のタンニンも目立つのですが、時間経過で果実香が開き、バキュバン2日目はこれらが良い具合に馴染んできます。

この値段でこれなら申し分ないですね。
コノスルのピノは、1000円前後でいくつかあるところからスタートし、
・レゼルバ エスペシャル(1200円前後)
・ブロックNo,21(1900円前後)
・20バレル(2600円前後)
と、物凄く低価格でブランドの整理がされているのですが、どれもちゃんと香味や作りに違いがあるので面白い。また、そのどれも、類似の味の系統のワインと比較して、市場価格で1000円から2000円程度の価格差を感じてしまうようなクオリティであり、コスパの高さとはこういうことだと体現しているようです。

中でもウイスキー好きの知人複数名が、デイリーユースにしているのが今回のグレード。興味のある方は肉料理と共に是非!

クライヌリッシュ リザーブ ゲームオブスローンズ 51.2%

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CLYNELISH 
RESERVE 
GAME OF THRONES 
HOUSE TYRELL 
700ml 51.2% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:不明
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:やや発酵したような酸を伴う甘酸っぱいアロマ。樽感に多少の荒さはあるが、湿った木材、杏子や無花果、ブラウンシュガー。仄かにワクシーなニュアンスも感じられる。

味:スムーズで若干の水っぽさ、そこからクリーミーでワクシーな麦芽風味が感じられ、バニラやお粥、オーク由来の黄色系のフルーティーさをアクセントに、余韻にかけて荒さ、強さが口内を刺激していく。
余韻は麦芽由来の白系の甘味とほろ苦さ、籾殻を思わせるざらつき、ほのかなピートを伴う。

香味構成はオフィシャル14年のベクトルにあるが、先にあるのではなくそこまでの途中というモルト。麦芽風味のらしさに加え、バーボン樽だけでなく、複数の樽の個性を感じる。全体的に香味の強さはあるが、味のほうは立ち上がりでもたつく印象あり。ただし万人向けのリリースとして考えると、これくらいのほうが親しみやすいのかも。アクセルオンで即ドカンというピーキーな仕様では難しいか。。。ってなんの話だか(笑)。
こういうリリースを飲むと、通常の14年の完成度の高さがよくわかる。

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ディアジオ傘下の蒸留所ならびにブレンド銘柄と、大人気テレビドラマとのコラボレーションラベル。欧米市場や免税店向けの限定リリースです。
こうして画像をみると、全部限定品とか気合い入ってるなぁと思わせて、大半はオフィシャル既製品のラベル張り替えの模様。そのため、ドラマに興味がない自分は特に気にもしていなかったのですが・・・。クライヌリッシュとラガヴーリンはオリジナルリリースのようで、機会があれば飲んでみたいと思っていました。

現行クライヌリッシュでカスクストレングスと言えば、かつては蒸留所限定品があり(現在は48%加水仕様、写真下参照)、最近だとディアジオのスペシャルリリースで似た名前の「セレクト・リザーブ」があったところ(価格は天と地ほど違いますが)。どちらも良い出来だったので、正直このゲームオブスローンズ向けボトルにも相応のクオリティを期待していたのです。

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(現在販売されているクライヌリッシュの蒸留所限定品。同銘柄らしいワクシーな麦感と、オークフレーバーの華やかな熟成感のバランスが良い。限定品として申し分ない完成度の1本。ラベルも特別感あり。)

で、飲んでみるとどうも思っていたのと違う。バーボン樽系の原酒に加えて、リチャーオーク、または一部シェリー樽かワイン系の樽で熟成された原酒が使われているのか、香りにくぐもったような印象と、酸を伴う樽香が感じられます。若い原酒に樽を押し付けたような原酒に通じるところがあります。
また、中間以降に”らしい”麦芽風味、メーカーテイスティングコメントでみられるトロピカル表現(以下参照)に該当する、オークフレーバーもあるはありますが、これは公式が過剰に使いすぎ疑惑。フレッシュトロピカルでパパイヤでマンゴーは果たしてどうかと。。。
先に書いたように口に含んでももたつくところが、求めているのはもっとこう分かりやすい、パッと広がるような美味しさなんですよね。

一方、クライヌリッシュ・リザーブは、日本だとなぜか強気の価格設定ですが、イギリス等ではオフィシャル14年とほぼ同額なリリースだったりします。
香味の印象に加え、外的要素からも推察すると、10年程度の若い原酒をベースに樽感でそこを補うように仕上げたカスクストレングス仕様ではないかと。ただし、最近オフィシャルでクライヌリッシュのカスクストレングスなんてモノはありませんでしたから、お土産用のボトルとしてなど、現地価格でならアリかなぁとも感じています。

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ハイランドパーク 21年 1972-1993 SMWS 55.2%

カテゴリ:
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HIGHLAND PARK 
THE SCOTCH MALT WHISKY SOCIETY 
No, 4.15
Distilled 1972 Feb 
Bottled 1993 Aug 
700ml 55.2% 

グラス:リーデル
場所:BAR Sandrie 
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★★(8)

香り:へたっておらず、しっかりと勢いがある香り立ち。ビターでスモーキー、土っぽさと葉巻を思わせるスモーキーさに、バタークッキー、色の濃い蜂蜜とイチジクジャム。時間経過で軽い香ばしさを含む麦芽の甘味と甘酸っぱさがさらに開く。

味:マイルドでコクのある口当たり。ドライアプリコットやイチジクジャム、そこからほろ苦く焙煎したような麦芽風味。ほんの微かに乾燥した植物や根菜の灰汁などの雑味が混じるが、多彩さに繋がっている。
余韻はパイナップルケーキのようなしっとりとしたオークフレーバーと、熟成したモルトの蜜のような甘味。ほろ苦いピート、沸き立つようなスモーキーフレーバーを戻りにともなって非常に長く続く。

まさに熟成のピークにあるモルトの風味を楽しめる1本。系統としてはオフィシャル25年の1990年代流通品のそれだが、シェリー感が控えめであることと、シングルカスクであることも手伝って、樽由来のフレーバーに邪魔されず、むしろ後押しにして突き抜けてくるハイランドパークの個性と美味しさに感動を覚える。願わくば開封直後を飲んでみたかった。。。

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自分が求めているハイランドパーク味。アメリカンオークのリフィルシェリーバットあたりと思われる熟成で、シェリー感はアクセント程度ですが、そのフレーバーに酒質ベースのドライフルーツや色の濃い蜂蜜を思わせる風味、ハイランドパークらしい乾燥した植物や土っぽさに通じるピート香が混ざりあって、実に魅力的な味わいを形成しています。

特に余韻が素晴らしいですね。20年という熟成期間がハイランドパークの酒質にとってベストだったのか、開封後の時間経過でこなれているにもかかわらず、2段階、戻りも含めて3段階まで伸びるフィニッシュ。度数が高く、それによって強い余韻のものはいくらでもありますが、まるで余韻だけ別にウイスキーを飲みなおしたように持続的かつ広がりのある点は、この時代のモルトの素晴らしさと言えるのです。

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(1990年代流通のハイランドパーク25年。小細工抜きに旨い1本。今回のボトルとはほぼ同じ蒸留時期にあることから、共通項があるのは当たり前かもしれないが、その美味しさを構成する一要素に特化したシングルカスクの魅力が今回のボトルには集約されている。)

なお、感じた余韻のなかに、ヘビーピートモルトのように過度に主張するような強さはないが、沸き立つように持続するピート香があり、これはフロアモルティングで仕込まれたモルトで度々見られる特徴であると感じます。

ハイランドパークは一部(約20%)のモルトを現在もフロアモルティングで仕込んでいるところ。同仕込み方法では、麦芽の状態が不均一になること(どんなに頑張ってひっくり返しても、火の通りが麦芽毎に異なる、それ故に香味の複雑さに繋がる)、そして現在のモルトスターでの方式に比べてじっくりと麦芽が乾燥させられるため、ピートが麦芽の奥まで染み込み、PPMは低くても、存在感のあるスモーキーさが沸き立つように出てくるのではないかと思えます。
この味わいの複雑さと余韻の長さは、そうした時代の麦芽、そして仕込み方法が影響していると考えると、効率化が全て正しいわけではないと、仕事のあり方も考えさせられてしまいますね。

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今日のおまけ:カレラ セントラルコースト ピノ・ノワール 2016

2019-2020年時点で市場に流通している、セントラルコーストの現行ロット的なボトル。カリピノらしく熟した赤系の果実を思わせる風味は健在ですが、数年熟成させたものに比べて少し酸が固め。ただ、カレラはその果実感に艶があるというか、どことなく良いブルゴーニュワインに通じるようなニュアンスもあるのが魅力だと思います。

それっぽく言うと、気品というかエレガント?
そのまま飲んで良し、熟成させて良し。国内だと大手酒販最安値はリカマンで、税込み3600円くらいだったはず。新世界ピノは似たような香味のものも少なくないですが、この価格帯では頭一つ抜けてますね。
ウイスキー好きが好む果実味もあり、この辺は是非一度試してほしいです。

ウシュクベ オールドレア ストーンフラゴン 1980年代流通 43%

カテゴリ:
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USQUAEBACH 
OLD RARE 
The Grand Whisky OF THE HIGHLANDS 
Blended Scotch Whisky 
1980's 
750ml 43% 

グラス:リーデル
場所:BAR Sandrie 
時期:不明
暫定評価:★★★★★★(5ー6)

香り:ドライな要素があり、ザラメやビスケットを思わせる甘いアロマ。ローストした麦芽、微かに酸味、若干の植物感。奥には存在感のあるスモーキーさも感じられる。オールドスタイルなハイランドモルトに通じる素朴なイメージ。

味:スムーズでメロー、モルティーな味わい。序盤は薄めたキャラメルを思わせる甘さでやや単調だが、砂糖控えめのビスケットのようなほろ苦い麦芽風味から、じわじわと土っぽいピートが開いてくる。
余韻は軽いスパイシーさとオールブランを思わせるほろ苦いフィニッシュ。ピートフレーバーと共に染み込むように長く続く。

オフフレーバーの少ない、状態の良いウシュクベ・ストーンフラゴン。まるで麦茶のようにスムーズで素朴、どこか親しみのある味わいが魅力。当時のハイランドモルトがベースというのも納得だが、当時の特徴としてもうひとつ、柔らかい飲み口の後にじわじわと内陸系のピート香が備わっており、全体のメリハリに繋がっている。

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ゲール語で命の水を指すブレンド、ウシュクベのオールドボトル。
裏ラベルの通り、ダグラスレイン社にブレンドとボトリングを委託していた時代のもので、この整理については以前同銘柄のリザーブの記事で紹介していますので、ここではざっくりと。

ウシュクベをリリースするTwelve Stone Flagons社は、1974年から1990年代初頭まではダグラスレイン社に。その後はホワイト&マッカイ社にブレンドの製造を外注しており、ボトルの表記を見ることでリリース時期の線引きが可能となっています。
また、ストーンフラゴンには、表ラベルに「Over 210 Years of」とする年数がかかれていて、これも流通時期によって変わる要素のひとつです。
210年の次は225年、ベースとなる数字はブランドのルーツである1768年の発売開始にあり、つまり今回のラベルだと1978年~1992年の間に製造されたボトルであることがわかります。

オールドレア(ストーンフラゴン)は、ウシュクベシリーズのハイエンド。同ブランドの特徴であるモルト比率の高さは健在で、レシピは最長27年以上熟成させたモルト40種類を85%にグレーンは15%。また、マリッジはシェリー樽で18ヶ月、というのが近年公開されている現行品に関する情報ですが、恐らくこのレシピはリリース初期から変わっていないのでしょう。モルティーでしっかりとした味わいに、昔のシェリー樽の1種を思わせる柔らかい甘さから、その繋がりを感じることができます。

なお、このウシュクベ・ストーンフラゴンは陶器ボトルとコルク栓という組み合わせからか、状態のあまり良くないボトルが多く見られます。
特に抜け気味なボトルが多いので敬遠していましたが、今回はマスターのお墨付きをいただいて1杯。モルトの主体は熟成したハイランドタイプであり、突き抜けて美味しいわけでも、鮮烈なピート香やら濃厚なシェリーやら、特筆するなにかがあるわけでもありません。
しかし、ゆったりとして素朴な味わいにホッとするというか、逆にそれが良いのだと楽しませてもらいました。

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