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2020年01月

オーヘントッシャン 8年 1980年代流通 特級表記 43%

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AUCHENTOSHAN 
TRIPLE DISTILLED SINGEL LOWLAND MALT 
Aged 8 years 
1980's 
750ml 43% 

グラス:国際規格テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週刊程度
評価:★★★★★★(6)

香り:やや古酒感のあるアロマ。べっこう飴や乾いたザラメを思わせる甘いアロマに、やや醤油系のヒネ、干し草っぽさのあるドライなニュアンスを伴う。

味:スムーズだがハイトーン。エッジのたった口当たりに、きび糖のような雑味のある甘さ、微かにレーズンを混ぜたキャラメル、シェリー系の淡いアクセントが感じられる。
余韻はかりんとうやオールブランの軽い香ばしさとほろ苦さ、スパイシーな刺激を伴って長く続く。

3回蒸留らしくピリピリと尖ったような刺激が特徴的な香味構成があり、そこに素朴なモルティーさ、樽由来の甘味が合わさっている構成。少量加水すると、あまやかでコクとほろ苦い味わいがバランスよく延びるあたりに、ベース部分の良さ、時代を感じる。

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今回のボトルは、オーヘントッシャン蒸留所が1984年にモリソン・ボウモアに買収される直前の流通品。その後ボウモア社が1994年にサントリー傘下となったため、この辺りから日本市場との繋がりは強くなって色々リリースが増えていきます。
その反面、このモリソンボウモア買収前の時代は、日本市場では中々レアな銘柄だったのではないかと思います。

今このボトルがバックバーにあると、コアな愛好家が「オッ」と思うんでしょうけれど、1980年代前半頃は洋酒ブーム真っ只中とはいえ地味なラベルに誰も知らない(そもそもどのブレンドに使われているのかもわからない)オーヘントッシャンは、無名もいいところだったはず。
きっと売れなかったんだろうなぁと。ラベルにかかれた三回蒸留表記なんて、なんのこっちゃという感じだったんだろうなあと思われます。


さて、その3回蒸留の原酒ですが、特徴はプレーンでクリアな味わい・・・というよりは、クリーンな反面香味にあるトゲトゲしさ、エッジが立ったような刺激にあると感じます。(現行品のオフシャルスタンダードのオーヘントッシャンは、加水が効きすぎてこのシャープな部分がべったりとした感じに・・・。)
蒸留を繰り返すことで、丸かった酒質から香味、雑味が取り除かれ、シャープに削られていくことでそのような特徴が出るのではないかと予想。結果、その個性が良い方向に出ることもありますが、そもそも3回蒸留の原酒は樽と混ぜてもいまいち混ざりきらないというか、プレーンな樽で熟成させるならともかく、混ぜても何となく特異な質感が残るような印象があるのです。

酒質の引き算とも、あるいは鉛筆削りをしているようでもある三回蒸留ですが、これは昔の麦感が豊富で厚みのあった酒質では、プレーンな原酒を作る上で有効な手法だったのではとも感じています。
今回のボトルや、同銘柄の12年などを飲んで見ると、さすが70年代のまだ麦芽風味が強かった時期の作だなという麦芽風味が残っており、素朴な味わいを楽しむことができるのです。
少しばかり癖はありますが、これはこれで良いシングルモルトだと思いました。

グレンエイボン 25年 1990年代流通 40%

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GLEN AVON 
SINGLE HIGHLAND MALT 
Gordon & Macpahil 
Years 25 old 
1990 - 2000's 
750ml 40% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:サンプル@BAR 1two3
評価:★★★★★★(6)

香り:柔らかい香り立ち。カラメルソースとドライプルーンを思わせる色濃い甘さ。枯れたようなウッディネスに、煮出した紅茶のような濃厚でビターな印象も感じられる。

味:緩くスウィートな口当たり。カラメルソース、デーツやドライプルーンを潰して混ぜたような、ほろ苦く甘いダークフルーツ風味。ビターなウッディネスが余韻にかけて広がり、序盤の甘さを打ち消すように、タンニンが染み込む。

懐かしの典型的GMシェリー味。緩い口当たりであるが、独特の甘さと加水の緩さのあとから枯れて細いボディの印象があり、いまいち広がりに欠ける。過去何度か飲んだボトルだが、大体こういう系統だった。
この緩さはまるでXOクラスの量産コニャックを飲んでいるようなイメージで、そこからウッディでビターで、樽感全開。蒸留所の個性は見当たらないが。。。

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先日のジョン・グラント17年に続いて、bar 1two3の村田さんから頂いたサンプル。
グレンエイボン(というかGMのリリース)は1990年代後半からトールボトルにデザインが統一されているようなので、今回のボトルは1990年代の前半から中頃のものと推察。たまにオークションで「ウイスキー」表記のシールが張られた特級時代の名残を感じさせるボトルが出回ったりしています。

グレンエイボンの中身はグレンファークラスと言われていますが、仮にそうだとすると今回のボトルの香味でファークラスのオフィシャルで共通項があるのは、同じ流通時期である90年代のダンピーボトル25年。カラメルソースが混じったような、緩く甘くてウッディな・・・可もなく不可も無しというか、率直に言って面白味の少ない味わいと言えるボトルです。

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(角瓶からリニューアルした1990年代流通のオフィシャル・グレンファークラス。ネックの付け根部分の年数表記がポイント。この時代の30年は濃厚かつ香味の広がりもある美味なシェリー感を味わえるが、25年は今一つ締まりがない。)

ただ、今回のボトルはそんなオフィシャルに共通する緩い甘さに混じって、異なる個性が感じられるのがポイントだと思います。
それは線の細いボディ、枯れたようなウッディさ、ビターな余韻。これが良いか悪いかはさておき、原酒の傾向としては熟成年数表記以上の長い熟成期間を感じるものです。

おそらくですが、所有原酒の中でもピークを過ぎて微妙になってしまったものを、こうしたブレンドに回しているのではないかと推察。ボトラーズメーカーとして、シングルカスクだけでなく、シングルモルトやオリジナルブレンド銘柄等(さらには他社への原酒供給まで)手広く実施している準オフィシャルメーカーとも総合商社とも言えるようなメーカーがGMです。
グレンファークラスの場合は、蒸留所名は使えなかったようですが、良質なものは単一蒸留年表記のグレードに回したり・・・とか調整していたのではないでしょうか。

厳しめのレビューになりましたが、決して味が悪いわけではありません。ただなんというか面白味がないから、ちょっとネガな部分が目立ちやすいのが損なボトルなのです。

宮城峡 マンサニージャウッドフィニッシュ 2018年リリース 48%

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NIKKA WHISKY
MIYAGIKYO 
SINGLE MALT 
MANZANILLA WOOD FINISH 
Bottled in 2018 
700ml 48% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
場所:ジェイズバー
時期:不明
評価:★★★★(4ー5)

香り:ドライでかりんとうやアーモンドを思わせる香ばしい甘さがトップにあり、黒蜜と椎茸、デーツ、シェリーそのものが混じったようなアクセントから、ビターでサルファーなニュアンス。

味:ややベタつきのある口当たり。香り同様のシェリー感はチョコレートと椎茸出汁、微かにオランジェット。じわじわとウッディさが強く感じられる。若さはあまり目立たず、余韻はサルファリーさが漂うビターな風味。

宮城峡シェリー樽原酒らしい味と言えばらしい仕上がりだが、素性も香味も謎がある。マンサニージャの特徴?はさておき、何かシェリーそのものが混じったような仕上がりなのはフィニッシュの樽由来なのか。正直な話、良さを見つけづらい、閉口的一杯。

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2018年にリリースされた、シングルモルト余市・宮城峡の限定品(生産4000本のみ)。
今さら感のあるボトルですが、ちょうど2020年新作のアップルワイン樽熟成の情報が出始めているところであり、たまにはこういうのもいいかなと、レビューを投稿します。
なお、本リリースについては疑問点がいくつかあり、テイスティングで得られた情報からその点に関する考察、予想を以下にまとめます。

まずニュースリリース上でのメーカー公開情報。
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これだけ読むと気合いいれて樽調達してきたなぁ、と思うわけですが・・・ふと冷静になって、これがマンサニージャシェリーであることで、それって50年間も熟成できるのか?という疑問があります。

◼️疑問点(1)ソレラシステムの樽?
マンサニージャはフロール(酵母の膜)を形成して熟成させるため、基本あまり長期間熟成出来ない辛口シェリーです。
スタンダードなグレードでは平均5年程度とかそういうレベル。マンサニージャ・パサダという熟成タイプもありますが、フロールを維持出来る限界が10~15年とされていることもあり。。。
50年も熟成させたら、マンサニージャではなく違う分類のシェリー樽(アモンティリャードシェリーに近い?)になってしまうと考えられます。

まあ実際はソレラシステムで若い原酒を継ぎ足し、フロールを維持させながら熟成を継続するため、今回の樽もソレラ樽ということなのだと脳内保管。(後々、WMJの特集記事では、ニッカの佐久間チーフブレンダーがソレラシステムで使われていた樽だと説明されていましたのを発見しました。)
ただ、そうだとしてもマンサニージャで累計50年間以上ソレラを組み続けていられるのかは、自分のシェリー酒に関する知識ではわかりませんでした。

◼️疑問点(2)ベース原酒のレシピ
一方で、サルファリーさとシェリー樽原酒がそのまま混じったような椎茸っぽさのある、質が良いとは言い難い濃厚な味わいは、このウイスキーの大きな謎。
いやある意味で宮城峡らしいと言えばらしい樽感の一種なのですが、果たしてこれはベースになったシングルモルト由来か、フィニッシュで付与されたものなのかが疑問点なわけです。

公開されている情報では、ベースのウイスキーは通常のシングルモルト宮城峡と同じようなことが書かれています。
とすると、ノーマルな宮城峡にはここまでの濃厚さはありませんから、フィニッシュで付与された香味ということになります。
これがオロロソシーズニング樽でのフィニッシュなら違和感はないのですが、説明上はマンサニージャ。それもソレラで50年間使われ続けたという樽。この手の長期間使用樽は、1年そこいらならもっとクリアな感じになるはずで・・・。

例えば、殺菌のため硫黄を炊きつつ、樽輸送時に内部を保湿するために使われる保存液が残った状態で原酒突っ込んだりすれば、18ヶ月でこんな混ぜたような味と特徴的なウッディさ、サルファリーな感じになってもおかしくはない。あるいはベースの原酒が通常の宮城峡ではなく、シェリー樽比率多めで蒸留所で売ってるシェリー&スウィート的なモノだったとかなら、それはそれで違和感は無いんですけどね。

この香味が純粋に好みじゃない、という点はさておき、どーにも説明と中身が異なるというか、リンクしない1本でした。

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今日のオマケ:2020年3月発売予定の余市&宮城峡の限定リリース。アップルブランデーウッドフィニッシュについて。

毎年リリースされているシングルモルトのリミテッドエディション。今年はアップルブランデーを28年間熟成していた樽で6ヶ月間フィニッシュした、甘口タイプのウイスキーになるようです。

ニッカ味と言えば新樽風味ですが、2000年から2010年頃、シェリー樽原酒を使ったことがPRされている限定品のなかに(特に安価なものに)、シェリー?と、今回レビューしたリミテッド同様に疑問符がつく不思議な甘さのあるリリースがいくつかありました。
それはシェリー樽というより、実はアップルブランデーの樽由来なのでは?という仮説をたてたことがあったのですが、ニッカ関係者に確認するとブランデー樽は熟成に使っていない、という話だったのを覚えています。

今思えば、何らかのバルクだったのかもしれませんが、この疑問点はともかくアップルブランデー樽がもたらす味わいには純粋に興味があります。今年のリミテッドリリースがどんな仕上がりか、今から楽しみです。


※身内の法事調整と、仕事の重要な会議が重なっており、作業に集中するためブログ&ネット断ちをこの週末からしていました。一応区切りをつけることができたので、今日からまたマイペースに再開です。






バーンスチュワート 21年 ブレンデッドウイスキー 43% 1990年代流通

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BURN STWART 
BLENDED SCOTCH WHISKY 
Aged 21 years 
1990's 
750ml 43% 

グラス:不明
場所:お酒の美術館 池袋店
時期:開封直後
評価:★★★★(4)

香り:注ぎたてはドライであまり香りが開かないが、徐々にフローラルでパフューミーなアロマが支配的に。ポプリ、香水、乾いた麦芽とバニラの甘さ。

味:口当たりは水っぽく、薄いような印象があるがワンテンポ置いてフローラルな含み香。ややカラメル系の甘味と乾いた麦芽のほろ苦さ。フィニッシュはパフューミーでドライ、長く支配的に残る。

評価についてはもはや単純に好みの問題であり、基準点から加点することは出来ない。この手のフレーバーが大丈夫という方は問題なく楽しむことができるであろう、比較的モルティーでリッチな香味の広がりがある。ただ、それが自分にとっては苦手以外の何物でもない系統であったということである。


オールドブレンデッドを探求していると、こんな銘柄があったのかと思うボトルに関わっている率が高いと感じる一つがバーンスチュワート社。先日も同社がリリースしていた時代のグレンエルグをレビューしたところですが、今回のボトルもほぼ同時期、1990年代に同社が外部調達した原酒を使って作られたとされるブレンデッドです。

バーンスチュワート社は、1948年に創業した蒸留所を持たない零細的なブレンデッドメーカーですが、1988年に買収されて経営者が変わった後、拡張路線を辿ります。
具体的には
1990年 ディーンストン蒸留所
1993年 トバモリー蒸留所
2003年 ブナハーブン蒸留所
をそれぞれ取得。ディーンストンとトバモリーはウイスキー不況を受けて1982年に閉鎖されていた蒸留所であり、それを再稼働させての事業拡張です。

単に再稼働といっても、電源を入れ直せば動くというものではなく、設備の修繕や改修、人員の配置など金も時間も当然かかります。特に1993年からの10年間はトバモリーの再興に尽力したようで、蒸留所の大規模な改修やレダイグブランドの復活など、近年のブランドの基礎を作ったと言っても過言ではありません。
2003年のブラックボトルブランドと、ブナハーブン蒸留所をエドリントンから取得した際は、閉鎖されていた蒸留所という訳ではなかったものの、その後ブナハーブンは順調に販売量を伸ばして現在に至っています。
(バーンスチュワート社そのものは、2002年と2013年の買収によって、それぞれ親会社が変わっている。)

さて、今回のボトルの流通時期は、同社がディーンストンとトバモリーを取得したあたり。ですが、このブレンドのキーモルトはこのどちらでもないと考えられます。
なにせ、テイスティングの通りとてつもなくパフューミーな香味であるため。両蒸留所とも癖のある原酒を作りますが、該当するフレーバーが出ていたことはなく、テイスティング前のこのどちらかが使われているのでは。。。という期待は脆くも崩れたわけです。

流通時期を1995年前後と考えると、原酒の仕込みは1970年代前半。ボウモアにしてはピーティーさが乏しいので、旧エドリントンあたりからグレンタレットの原酒でも調達したのではないでしょうか。
構成は比較的モルティーで、モルト6:グレーン4くらいか。加水の影響か少し口当たりで水っぽさはありますが、香味の広がりはしっかりとしていて、麦芽系の風味もパフュームライクな中に感じられます。

ただ、社名を掲げたブレンドで、こういうフレーバーを出すというのは、もう好みの違いとしか言えません。
当時のバーンスチュワート社の経営陣とブレンダーは、このフレーバーが良いと判断したということなのですから。
好みと思う方、我こそはと思う方は是非どうぞ。昨年話題になった言葉を借りれば「挑戦する勇者を止めはしない」です。

ニッカウイスキー 竹鶴 既存ラインナップ終売と 新竹鶴リリースに思うこと

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アサヒビール(ニッカウイスキー)から関係者向けに発表があり、ニュース等でも取り上げられた竹鶴シリーズの終売。今日はその終売発表と、後日予定されている新竹鶴リリースに関する予想、思うことをまとめていきます。

まず、報道に先だって展開されていた情報は、以下の資料に準ずるもの。既存竹鶴ラインナップ4種が、原酒確保困難を理由に2020年3月末をもって終売となることです。
※終売となる既存ラインナップ
・竹鶴ピュアモルト25年
・竹鶴ピュアモルト21年
・竹鶴ピュアモルト17年
・竹鶴ピュアモルトNAS

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(Twitter等SNSで出回っている、アサヒビール通信のキャプチャ画像。)

私の記憶が確かならば、2015年にニッカが既存ラインナップを大幅終売とした背景は、竹鶴等の看板銘柄の安定供給を続けるための原酒集約だったはずです。
それから4年、既存の竹鶴ラインナップ全てが終売となってしまうという一報は、「話が違うじゃないか?」よりも、「これでニッカは本当にブラックニッカ屋さんになってしまうのか?」という疑問。ニッカのウイスキー全ラインナップから熟成年数表記が消滅するという、原酒不足からくる栄枯盛衰の理を見るようで、なんとも複雑な心境でした。

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「竹鶴」3商品を販売終了 年代モノウイスキー消滅(2020/1/12 時事通信)

ニッカ、竹鶴17年など販売終了へ 原酒不足で(2020/1/12 日本経済新聞)

そして先日あった報道。例えば竹鶴17年は最近のロットで明らかに味が変わっていましたから、原酒の確保に苦労していたのは事実だと感じます。(個人的にこの変化はポジティブでしたが)
また、元々生産本数を絞っていて、店頭にあるのが珍しい状況でしたから、ここで生産本数をさらに少なくしてブランドを維持するのは逆にコストがかかるという、効率化に関する考えがあっても不思議ではありません。

一方、報道では竹鶴ピュアモルトNASは終売と合わせ、リニューアルして販売を継続するとも書かれています。
そういえば、同じ流れは余市と宮城峡でもありました。今回は3月末終売ですから、同時期あたりでフェードアウト、フェードインという情報も。。。
決まってしまった終売について、これ以上とやかく書いてもどうにもなりませんので、むしろ新しいリリースはどうなるのか、続いては個人的な予想を書くことにします。

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リニューアル・竹鶴ピュアモルト
発売日:2020年3月31日
価格:4000円(税別)
度数:43%
容量:700ml
販売数量:年間22000箱(264000本)
アサヒビールニュースリリースより

※この記事を投稿した1/15時点ではニューリリースの詳細情報はアサヒビールから発表されていませんでしたが、1/16に発表されています。以下は未発表時の予想となります。
(こんな間髪入れずに発表してくるとは思わなかったw)

◼️原酒構成はどうなるか
現在の竹鶴NASには、余市、宮城峡、そしてベンネヴィスが使われているというのが暗黙の了解としてあります。
私自身、輸入原酒を使うことは美味しさを追求する手段としてはアリだと言う立ち位置なので、むしろ情報を開示してバンバン使ってほしいとすら思います。(少なくとも、閉鎖されていた蒸留所を再稼働させた実績から、ニッカが使う分にはなんの異論もない。)

他方で近年、愛好家やウイスキー団体を中心としたジャパニーズウイスキーの定義に関する問題意識の高まりや、輸入原酒を使って作ったウイスキーに日本的な地名や単語等の表記をした、疑似ジャパニーズウイスキーに対する疑問の声が強く聞こえるようになってきています。

”暗黙の了解”が事実であれば、新竹鶴のレシピはその世論を意識したものになるのではないでしょうか。
つまり、余市、宮城峡らの原酒成分を高めて、ジャパニーズウイスキー100%としてくる可能性。またはその比率に限りなく近づけてくる(8~9割が2蒸留所の原酒を用いたブレンドになる)のではないかという予想です。

※1/16発表情報:ベンネヴィスに関しては触れられていませんが、余市モルトの比率を増やす事がニュースリリースで公開されました。

◼️価格や味わいはどうなるか
価格についてはシングルモルト余市、宮城峡での前例や、エントリーグレードにあるブラックニッカ軍団との差別化で考えると、4000円前後から5000円程度が現実的ではないかと予想しています。

しかし、味わいについてはなかなか予想が難しい。
例えば、ザ・ニッカ12年がNASテーラードになったような、熟成ウイスキーが原酒の幅を広げて若い原酒を使う場合とは異なり、今回リニューアル対象となっているのは、元々若い原酒が使われているNAS仕様の竹鶴です。
先に書いたように構成原酒の比率も大きく変わるとすると、それこそ余市に寄るか、宮城峡に寄るかで、かなり選択肢があります。

ただ、10年未満の若い余市や宮城峡は、どちらも樽感が乗り切らず、そして口内をヒリつかせるような強いアタックが傾向としてあります。(だからこそ熟成で輝くのですが・・・)
終売となる竹鶴NASはそこまでアタックの強い感じではありませんでしたが、リニューアル後のものは恐らくそれが強くなってくるのではないか。

幅広いレンジの原酒が使われるとなると、最近の17年にあるようなニッカらしい新樽香をトップに伴わせつつ、シェリー樽原酒で繋ぎを作り、モルティーでピーティーなフレーバーのなかにほんのりと21年系統のフルーティーさを隠し味にする。。。軸の部分は、余市等の若くハイトーンな、今後安定供給が見込めるブーム突入後の原酒(5~8年熟成)をメインに使って仕上げてくるのではないか、というのが現時点での予想です。
なおピートですが、ここはあまり効かせないライトな感じではとも思います
※2010年頃から増えているライトピート系の余市を使うかと思いましたが、発表された情報からするとピーティーな余市原酒の存在感を強めているようです。


終売となる竹鶴ブランドのなかでも17年、21年、25年の味わいは、サントリーの響17年~30年と合わせて世界のウイスキーでトップクラスに入るクオリティがあります。それは、様々な品評会のブレンデッドモルト部門で無双状態だったことからも明らか。
温暖な気候故の濃いめの樽感、メーカーの個性とも言える新樽やリメード樽由来のウッディネスとフルーティーさ。過度に主張はしないが、存在感のあるピート・・・。こんなウイスキーは他の国、他のブランドにはありません。
この個性は、可能な範囲で新竹鶴にも引き継いでもらいたいものです。

竹鶴ピュアモルトは、自分がウイスキーにハマるきっかけになったブランド。21年は就職してから初任給で買ったウイスキーのうちの1本。思い入れは深く、終売となるのはやはり残念の一言です。
ただしニッカウイスキーでの原酒の増産は継続中ですし、設備投資も行われています。日本のウイスキーの人気は衰えるどころか、アメリカ等でもブームが起こって衰え知らず。これが当たり前だと感じるような状況になりました。
このまま増産が続くことで、近い将来、増産後の原酒が熟成し、エイジングでの竹鶴ブランドが復活してくれることを願って、今日の記事の結びとします。

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