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2019年12月

ザ・ホイッスラー 10年 アイリッシュシングルモルト 46%

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THE WHISTLER 
IRISH SINGLE MALT WHISKY 
Aged 10 years 
Cask type Refill Bourbon Casks
Oloroso Sherry Cask Finish 
700ml 46% 

グラス:リーデルテイスティング
場所:BAR ROYAL MILE 
時期:不明
評価:★★★★★★(6)

香り:シェリー樽由来の要素を感じさせる、色濃い甘さ、ウッディネスを感じる香り立ち。オランジェット、キャラメルラテ、やや渋味を連想する要素もあるが、全体的には穏やか。

味:マイルドで整った口当たり。デーツやブラウンシュガー、柔らかいウッディネスが広がり、続いてオーク由来の華やかさと、アイリッシュ系統のフルーティーさがじわじわと感じられる。
余韻は程よくウッディで、薄めたキャラメルの甘味とフルーティーさの残滓、仄かにオーキーなニュアンスが鼻腔に抜ける。

バランスよく、程よいシェリー感。香りはシェリー感メインだが、味ではスウィートな香味の奥にアイリッシュトロピカル。ケミカルな要素がうまく軽減され、加水で整った飲み口から負担なく味わう事ができる。無名だがレベルの高いシェリー系アイリッシュモルト。

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アイルランドの新興ウイスキーメーカー、ボアン蒸留所のリリースする1本。先日紹介した、ブルーノート7年の上位グレードという位置付けになります。
ブルーノートに光るものを感じていたので、是非その他のラインナップも飲んでみたいと思っていたところ、先月のウイスキーフェスに続いてBAR飲みの機会にも恵まれました。

このボトルをリリースししているボアン蒸留所は、2016年に創業したばかりでまだ自社蒸留の原酒を販売する体制が整っていません。そのため現時点では原酒を他社から購入し、それを自社で調達したシェリーの古樽等で2~3年程度後熟させてリリースするという手法をとっています。
ただ、運営母体となる会社がアイルランド最大のアルコール飲料メーカーで、蒸留所の規模や設備が整っているだけでなく。樽もボデガでシェリー酒を長期間熟成していた古樽を確保してスタンダードリリースに使うという、平均的なクラフトメーカーでは考えられない贅沢な仕様を実現しています。

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(ホイッスラーのスタンダードラインナップ3種。左から、ブレンデッド、シングルモルト7年、10年。すべてオロロソシェリーカスクでフィニッシュされているのが特徴。ブレンデッドはエントリーグレードとなる位置付けだが、同じ販売価格帯のなかで最もシェリー感が備わった1本と言えるリッチな味わい。)

先月のウイスキーフェスでの試飲中、これは良いんじゃないかと注目した1本が、ホイッスラー10年でした。
ベースとなった原酒はクーリー蒸留所のもの(以前のレビュー時は香味の推察でしたが、フェスで間違いないことを確認)を、リフィルバーボンバレルで8年間熟成。ボアン蒸留所でオロロソシェリーバットに移して2年間フィニッシュした構成で、シェリー樽由来の甘味やウッディネスのなかに、アイリッシュモルト+バーボンオークの華やかなフルーティーさが感じられる二つの樽の良いとこ取り。バランスよく、変化を楽しめる1本に仕上がっています。

7年のほうはシェリー感がリッチでコスパに優れた構成ではあるのですが、10年と比較するとどうしてもシェリー感に若干の粗さが気になってしまう。また、ベースの原酒由来のフルーティーさも存在感を増していて、価格なりの完成度の差は感じられます。
それこそ、このシェリー樽仕上げアイリッシュウイスキーは、同じ販売価格帯のアイリッシュと比較しても劣っていないというか、ありそうでなかったバランスのウイスキーで、素直に良くできているなと感じました。
しいて言えば10年熟成表記という点が、他社の15年、16年クラスと並べた時に見劣りしますが、味重視だという人は是非試してほしいですね。

なお、こうしてフィニッシュに使ったシェリー樽は、現在ボアン蒸留所で作られている原酒を長期貯蔵するために使われると考えられ・・・。体制、販路、環境、贔屓目に見ても将来性抜群な蒸留所と言えるメーカーの製品なのです。
その評価は自社蒸留の原酒次第ではあり、まだ期待の域を出ませんが、同社の今後の製品に加え、5年後、10年後が今から楽しみです。

【BAR訪問記】 &BAR Old⇔Craft (オールド・クラフト) @横浜 関内

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ウイスキー繋がりで、自分主催のイベントに参加いただいたり、あるいはサンプル交換をさせてもらっていた米本さんが、12月17日に関内にBAR「&BAR Old⇔Craft(オールド・クラフト)」をオープンされるとのご連絡。本当はレセプションデーに伺いたかったのですが、所用あって時間がとれず。。。
ならばとグランドオープン当日、訪問させてもらいました。

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&BAR Old⇔Craft 
住所:〒231-0013 横浜市中区住吉町3-36-5
※JR関内駅北口から徒歩5分程度 
TEL:045-264-6604
営業時間:16時~26時(暫くは不定休とのこと)

店主である米本さんは、羽田空港や横浜のBARで修行を積まれて独立。元々オールド系のウイスキーやリキュールに興味を持たれていたこともあって、お店もその色がかなり強く出ています。

店名の&BARの”アンド”は、他のお店で食事した次であるとか、仕事終わりの帰り道にとか。日常的な何かと寄り添えるような「~と」という意味。
Old⇔Craftの⇔は発音しませんが、OldとCraftがそれぞれのお酒の時間軸をイメージしていて、オールドだけでなく現在まさに作られたばかりのクラフトリリース、2つの異なる時代を行き来しながら、それぞれの魅力を楽しんでほしいという意味を込められているそうです。

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(オススメボトル。写真左からそれぞれ
・グレンドロスタン 21年1980年代流通
・イ モンクス 1970年代流通
・バランタイン 17年1970年代流通角瓶
・グレンロセス12年1980年代流通)

店内は奥行きのある落ち着いた内装で、まさにオーセンティックな雰囲気。写真のとおりずらりと並んだボトルが我々愛好家の興味を惹きます。(カメラの関係で背面のパネルが目立っていますが、実際はもう少し暗い色合い。)
ボトルのラインナップは、ウイスキーのオールドモルトやブレンドで70~80年代に国内流通の多かったものを中心に、ニューリリース、ジャパニーズクラフト、バーボンなどで目算300種類程度といったところ。まずはオススメのオールドをと聞くと、最近気に入っているものと、自信がオールドの道に入るきっかけになったとも言えるボトルを含めて並べて頂きました。

グレンドロスタンは、インバーゴードン系列の銘柄で、主たる原酒はブルイックラディやディーンストン。長期熟成のブレンデッドスコッチならではのソフトな口当たりから、当時らしいカラメルっぽい甘味が穏やかに感じられるタイプ。
一方でイモンクスはハイランドモルトを軸にした、短期熟成でありながらマイルドで、プレーンな味わい。
双方現代では無名なブランドですが、どちらも個性の強くない内陸系統の原酒を軸にしたブレンドであり、短塾にしても長熟にしても、それぞれの時間軸に穏やかな味わいがあるのが魅力といえます。

一方で、バランタイン17年は単に熟成感があるだけでなく、これぞスコッチと言えるフルーティーさ、内陸のピートフレーバーの共演。この辺は間違いなく旨いですね。ブレンドにおけるプロの技を感じるようでもあります。
またグレンロセスはリンゴや洋梨を思わせる品の良いフルーティーさの中にソフトな麦芽風味が心地よい。。。現代のモルトではなかなか得難い、オールドならではの魅力が感じられるチョイスです。

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続いてはクラフト側で新しいリリースを何か頂こうかなと、しかし酔いに任せてオススメを聞かず。バックバーから話題のニューリリース、キルケラン15年 オロロソシェリーウッドをチョイス。
これは見事な圧殺っぷり。10年間オロロソシェリー樽で熟成させた後、5年間リフィルバーボン樽でフィニッシュしているようですが、その影響がほとんどないと言えるほど。

ドライプルーンやチョコレートクリームなどを思わせる、濃厚なシーズニングシェリー系の甘い香味が主体。ウッディさはそれほど強くなく、度数に反して丸みとクリーミーさのある口当たりは、キルケランの酒質にある蝋っぽい麦芽風味がそうした系統の樽感と合わさった結果と感じます。
キャンベルタウンらしさは、余韻にかけて感じられる若干のピートフレーバーあたりでなんとか。。。

ただ、このシーズニング系のシェリー感にしても、昔のものとはタイプの異なる、近年のトレンドのひとつであり、異なる時間軸にあります。その違いにフォーカスして楽しむのも、同BARが形にしたいウイスキーの楽しみ方と言えそうです。

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さて、&BAR Old⇔Craftはウイスキーをメインに据えたBARですが、カクテルも勿論オーダーできます。というか、上述のとおり他店で修行を積まれた上での独立ですから、普段ウイスキー関連だけでやり取りのなかったカクテルを締めに1杯。
ウイスキーベースで超オーソドックス、でありながらアレンジの幅が広い。作り手の個性が出るオールドファッションをオーダー。

ベースはメーカーズマーク。レシピや飾りに特別目立ったアレンジはありませんが、ベースの柔らかい味わいを生かした1杯。添えられたスペアミントが、メーカーズマークのミントジュレップやケンタッキーダービーのエピソードを連想させるアクセントとなって、楽しませてもらいました。
なお、今回は完全に自分の好みでオーダーしましたが、米本さんはオーソドックスなジンベースのカクテルが得意であるとのこと。バックバーには70年代前後のオールドジンもいくつかあり、次回はジンベースもオーダーしたいですね。

というところで、今回の訪問は終電時間。
関内は帰宅ルートから外れているため、ほとんど開拓出来ていませんでしたが、元々BAR文化の濃い横浜にあって、老舗から新規店まで、魅力的なお店は多くあるんですよね。
まさにOldとCraftが混ざりあって文化を作っているわけですが、そのなかで&BAR Old ⇔Craftがどのような色を出していくのか。
今はまだ試行錯誤の真っ只中という印象ですが、きっとこれから更に研鑽を積まれ、独自の色を濃くしていくのだと思います。
この度は、独立と開店おめでとうございます!

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余談:お店を出ると、目の前に青唐辛子麺が売りの「麺や勝治」が!!
同じような時間までオープンしてるので、&BARからの&ラーメンになってしまいそう。これは危険な立地、帰宅時は鋼の意思を持って(笑)

イチローズモルト モルト&グレーン ウィスキープラス5周年記念 59%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
Malt & Grain 
Single Cask Blended Whisky 
For THE WHISKY PLUS 5th ANNIVERSARY 
Cask type Bourbon barrel 
Botteled 2019 Aug 
700ml 59% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度 
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5)

香り:ドライでアメリカンウイスキーを思わせる穀物感。ペパーミントやハッカのようなスーッとする鼻腔への刺激に続いて、メローであまやかなオーク香が奥から広がる。若干青みがかったニュアンスもあり、青リンゴや瓜に似たフルーティーさも感じられる。

味:ドライでスパイシーな口当たり。一瞬メローなアメリカンウイスキー系の甘味があるが、出涸らしの茶葉を口に含んでいるような、ウッディでビターな渋味が強く感じられる。
余韻はウッディでビター。オレンジピールや和生姜、軽いえぐみを伴うスパイシーなフィニッシュ。

所謂ワールドブレンデッドタイプ。第一印象はアメリカンウイスキー系の味が強く、そこに混じる秩父原酒や内陸モルトのモルティーさ。ウッディさもさることながら、特に味に渋みが強い。ブレンドに使ったグレーンか、またはシングルカスクブレンデッドとしてマリッジに使ったバーボン樽から、そういうニュアンスが出てしまったのだろうか。少量加水すると馴染んで多少バランスが良くなる。

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先日、駒ケ岳を紹介した、池袋にあるエイコーンさんの直販店「ウイスキー・プラス」の開業5周年記念ボトリング。
順番が逆になりましたが、駒ケ岳よりも先に発売されていたのがイチローズモルトのモルト&グレーンのシングルカスクブレンデッドです。

テイスティングのとおり、アメリカンウイスキーの風味と秩父モルトの風味をあわせ持つ、なかなかに特殊な1本。前面にあるのはバーボン、奥から秩父モルトが顔をだすような・・・それだけなら過去のモルト&グレーンの限定品でも珍しくない作りですが、このボトルは特に樽由来の渋みが強く出ていて、グレーンとモルトの間をウッディな苦味や渋みが繋いでいるような、個性的な仕上がりとなっています。

使われている原酒を香味から推察すると、グレーンは比較的穀物感残った、アメリカンウイスキータイプのもので10年熟成程度。秩父モルトは5年程度、そこにバルクのほぼノンピートの内陸原酒で10~15年程度のものをいくつかブレンドしたようなレシピでしょうか。比率としてはグレーンが多めのようにも感じます。
若さが目立つタイプではないですが、長期熟成というタイプでもなく。しかしながらレビューでも触れた渋み、苦味が強いのは、シングルカスクブレンデッドとして樽詰に用いたバーボンバレルから、その系統のフレーバーのみが強めに出てしまったのかもしれません。

ひょっとするとですが、カスクサンプルだとこのブレンドはもう少し甘味や果実感があったけれど、ボトリングしてみたら想定外に樽由来のタンニン系統のフレーバーが強かったというタイプなのかも。
バーボンやカナディアンもイケる方は許容できるかもしれませんが、自分はちょっとアンバランスに感じる仕上がりでした。

ラフロイグ 10年 カスクストレングス バッチ11 58.6%

カテゴリ:
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LAPHROAIG 
AGED 10 YEARS 
ORIGINAL CASK STRENGTH 
Batch No,011 
Bottled 2019 Mar 
700ml 58.6% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅@ブラインドサンプル・T氏
時期:開封1~2ヶ月程度
評価:★★★★★★(6)

【ブラインドテイスティング】
地域:アイラ
蒸留所:ラフロイグ
年数:12年程度
樽:バーボンバレル主体
度数:57%
その他:香りでウィリアムソンかその他ボトラーズかと思ったが、どうもオフィシャルくさい。カスクストレングスの新しいバッチとかか。

香り:ナッツを思わせる香ばしさと、甘いバニラやヨードをまとった強いスモーキーさ。合わせてグレープフルーツ、焦げた木材、樹脂っぽいような癖が仄かに感じられる。

味:口当たりはとろりとして柔らかいが、中間くらいからパワフルなアタックとピートの広がり、燻した麦芽のほろ苦さ。シトラスやグレープフルーツの柑橘系のフルーティーさと、奥にはオーキーなニュアンスも。若いモルトらしくしっかりとした骨格がある。
余韻はオイリーだが、スパイシーで酒精を感じさせるヒリつくような刺激があり、強いアイラピートと共に長く続く。

注いだ瞬間の香りでラフっぽいなと感じたサンプル。度数の高さ故にパワフルでピーティーで、オーク由来のバニラやフルーツのアクセント。微かにシェリー樽原酒と思われるコクのある甘味が、力強さを楽しめるバランスに整えている。
加水するとピートが焦げたようなニュアンス、塩素系の薬品香りがメインに出てくる。一方で味はオイリーな中に一体感が感じられ、悪くない。

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今年リリースされた、オフィシャルラフロイグのカスクストレングスの最新バッチ。
以前は日本でも正規品が販売されていたラインナップの一つですが、現在はイギリス、アメリカなど一部海外市場でのみ販売されており、日本では割高な並行品が流通している状況。それ故、日本のラフロイグ愛好家はTWEなど海外ショップから直接取り寄せる方法をとっているようです。

つまり、それくらいコアなファンから人気のある銘柄ということなのですが、蒸留所を傘下に持つサントリーのお膝元とも言える日本で流通のない不思議。。。(一般受けする銘柄ではないため、という理由のようですが)
今年のものは特に出来が良いとの前評判も聞いていたところ、どこかで飲もうとしていた時に、とあるサンプルのお礼にとブラインドでの出題をいただきました。
Tさん、ありがとうございます!


その感想は、若くてハイプルーフなラフロイグ。ほぼボトル指定ですね。
オフィシャル直系の味わいですが、現行品10年よりも樽感が豊かでボディもしっかりしており、特に燻したようなピーティーさが支配的な構成に仕上がっています。
アードベッグやラガヴーリン等から感じるシャープで乾燥したようなピートフレーバーとの違いは、今尚使われているとされるフロアモルティングでの精麦によるところか。キルホーマンの100%アイラでも感じましたが、口内でもくもくと煙が立ち、どっしりとした存在感があるスモーキーさは、オールドボトルに通じるところで。。。乾燥のさせ方の違いから来るものではないかと。(例えば弱火でじっくり、強火でカリっと、というような。)

一方でラフロイグやボウモアと言えば、ピートと共にトロピカルなフルーティーさのあるタイプが好まれますが、今回のボトルは柑橘系のニュアンスがメイン。バーボンオーク由来のトロピカル系統に通じるオークフレーバーはピートに燻された味わいの奥にあり、時折じわりと感じられる程度です。
樽構成はバーボン樽(リフィル含む)が主体と思われますが、恐らくシェリー樽も少量使われているのでしょう。比率は1割程度かそれ未満か。。。ですがそのシェリー感が繋ぎとなり、オーキーさを突出させない分、全体を整えてバランスをとっているように感じられました。

なお、2011年にラフロイグはBeam社の傘下となっているだけでなく、世界的にウイスキーブームが起こった時期に突入していくわけで、これまで以上に大量生産時代の仕込みに突入します。
製造法方等にどんな変化があるのか。樽についてもどのような違いが出てくるかは、いよいよ違いが出始めるスケジュール。既に全体的に軽くなりつつある銘柄が多い中で、ラフロイグも焦げた樹脂のようなネガ要素が若干感じられるなど、近年必ずしもポジティブな話題ばかりではなく。その変化は要チェックです。

アラン 20年 トリロジー 1st 1998-2018 52.3%

カテゴリ:
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The ARRAN Malt 
ARRAN JAPAN 20TH ANNIVERSARY 
"TRILOGY" 
FIRST EDITION 
Aged 20 years 
Distilled 1998 
Boottled 2018 
Cask type Sherry Puncheon #82 
700ml 52.3% 

グラス:グレンケアン
時期:不明
場所:BAR Eclipse 
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオーキー、紅茶のような甘味と微かにナッツを思わせるウッディさ。ややドライな印象がある香り立ち。

味:香りに反してとろりとした甘味。バニラや熟したバナナ、微かにイチジクのような甘酸っぱさ、アーモンドナッツを思わせる軽い香ばしさとほろ苦いウッディネス。
余韻にかけてトロピカルなオークフレーバーが広がり、ドライ過ぎずフルーティーで好ましい要素が詰まったフィニッシュが長く続く。

シェリー樽表記ながら、シェリー感よりもアメリカンオークの華やかさ、フルーティーさが主体。シェリー2のオーク8くらいのイメージ。安定のアラン味で、特に余韻にかけてウッディさに邪魔されない、熟成のピークを迎えた"らしい"キャラクターがしっかり感じられる。この余韻は秀逸。

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アランジャパン社が1998年に設立(2000年にウィスク・イーに社名等変更)してから、20周年を記念した3部作リリースの第一弾。
第一弾:シェリーパンチョン
第二弾:ホグスヘッド
第三弾:バーボンバレル
それぞれ1998年蒸留2018年ボトリングで、20年熟成されたシングルカスク・カスクストレングスでリリースされています。

第一弾は、ウィスク・イーのスタッフが満場一致で選んだサンプルとのこと。
シェリーパンチョン樽熟成表記なので、ダークフルーツやブラウンシュガーを思わせるそれ系統な仕上がりかと思いきや。その味わいはシェリー感よりオークフレーバーがメイン。恐らくアメリカンオークのシェリーカスクで、鏡板が新樽。ベースとなった組み直し前のシェリー樽も、オロロソとは違う淡いタイプのものだったのではないでしょうか。(フィノ。。。まではいかないと思いますが、単にシーズニング期間の浅いシェリー樽とも思えません。そうであればもっと生っぽい感じ出るでしょうし。)

バーボンバレルだと同じようなフルーティーさはあっても、サイズの小ささから余韻がウッディーでドライになりがちです。
一方でパンチョン樽は約2倍のサイズであることからか、特殊な樽感とは言え余韻にかけてのウッディさが強く出ておらず、シェリー樽由来のとろりとした質感に、フルーティーさが綺麗に広がるのがポイント。らしい味と言ってしまえばそこまでですが、これは多くの飲み手が好む仕上がりだと思います。


先日レビューしたアラン18年にも、こうした内陸の原酒を適齢期まで熟成させたようなフルーティーさはあり、それを構成する原酒の一部に同じようなカスクが使われているのだと推察。
アランの場合当たり前過ぎて特別感が薄れている気がしますが、その"普通に美味しい"アランを構成する1ピースにして、それが流通する起点となるウィスク・イーの記念ボトル。下手に濃厚こってりシェリーなリミテッドより、この味わいの方が同社の20周年を祝う特別なボトルにふさわしい1本だと感じました。
他の2本も是非飲んでみたいですね。

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