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2019年03月

ワールドウイスキーアワード2019発表 日本は4部門で戴冠

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昨日、ウイスキーマガジン社主催のウイスキーの国際コンペ、ワールドウイスキーアワード2019の結果が発表されました。

このブログの読者の皆様は既にご存じかもしれませんが、今回のWWA2019では、テイスティング全15部門のうち、世界的に作り手がおり競争率の高い主要な区分といえる、ブレンデッド、シングルモルト、グレーンで設けられた7部門中、4部門で日本のウイスキーメーカーが世界一に輝くという、輝かしい結果となりました。
(15部門のなかには、バーボンや、カナディアン、アイリッシュなど、日本が参加できないものや、そもそも生産していないものがある。)


ワールドウイスキーアワード2019 テイスティング部門 主要7部門結果
◼️ブレンデッド(リミテッド)
イチローズモルト ジャパニーズブレンデッド リミテッドエディション2019

◼️ブレンデッド
サントリー 響21年

◼️ブレンデッドモルト
ニッカウイスキー 竹鶴ピュアモルト 25年

◼️シングルモルト(シングルカスク)
サリヴァンズコーヴ フレンチオーク TDo2017

◼️シングルモルト
ティーリング ウイスキー 24年 ヴィンテージリリザーブ

◼️グレーン
キリン 富士御殿場 シングルグレーン 25年 スモールバッチリリース

◼️ニューメイク
スタウニングウイスキー キュリアス ピートスモークドモルテッド ライ

参照:http://whiskymag.jp/wm_award2019/


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「日本のブレンド技術は世界一イィィィィ!!」
と、お約束のネタをつい口にしたくなるような結果です。
それも1社独占でなく、主要メーカーがすべて受賞。なかでも響や竹鶴、富士御殿場グレーンといった、WWAアワードの常連にして、戴冠することに疑問はないド本命な銘柄はさておき・・・。

サプライズはイチローズモルトのモルト&グレーンが、ブレンデッド(リミテッド)区分を2年連続で戴冠したことですね。
ブレンデッドモルトとシングルモルト部門はエントリーが多いだけでなく、各社力をいれてくるリミテッド区分で2年連続、その前のシングルモルトでの受賞を含めると3年連続というのはサントリー、ニッカらと肩を並べる快挙です。

ただ、このリリースは羽生モルトと川崎グレーンという、今はない遺産をメインに使っています。
昨年受賞したモルト&グレーンLE2018を飲んだ印象では、美味しいは美味しいのですが、羽生の特徴がかなり強く出て、長期熟成グレーンでそれを繋ぎ合わせているような構成。今回のリリースは多少秩父の特徴も出ていると言う話も聞きますが、軸になっている2つの原酒の在庫がほとんどない状況で、培ったブレンド技術をもって秩父の新しい原酒でどこまでやれるかが、今後の課題だと感じます。

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ジャパニーズウイスキー以外に目を向けると、シングルモルト部門ではティーリング24年が受賞。これまでのティーリングのリリースから香味を推察するに、アイリッシュ系のトロピカルなフルーティーさ、近年評価されているキャッチーな香味が備わっているものと思われます。
まあ妥当なとこですよねと。日本地区のWINNERは白州25年だったそうですが、ここまでくるとその時々の審査員の趣向の違いで片付けられる差ぐらいしかないんじゃないでしょうか。

一方で、シングルカスク部門が異端。
タスマニアの衝撃再び。オーストラリアンウイスキーのサリヴァンズコーブのフレンチオークカスクが再びの受賞です。
以前もサリヴァンズコーブはシングルモルトでアワードを受賞しており、どんなもんかと飲んでみましたが、世界一かと問われると返答に困る内容でした。
今回は違うのかもしれませんが・・・WWAはたまにこういうよくわからない受賞があるので、それが面白くもあり、疑問でもあるのです。(順当な結果ばかりじゃ面白くないのも事実です。)


この他、惜しくもアワードを逃した地区代表のウイスキーを見ていくのも、WWAの面白さです。
シングルモルト区分だと、スコッチは各地域の代表銘柄が選ばれていて、ローランド部門ではグランツの第4上流所であるアイルサベイが受賞していたり、キャンベルタウン部門はグレンスコシア25年、ハイランドはグレンモーレンジ1989・・・長期熟成のリリースが減ってきている昨今にあっても、やはり層が厚い。

一方で、ジャパニーズ区分を見ると、ブレンデッドでは若鶴酒造のムーングロウがカテゴリー別のWINNERを獲得していたり、次点以降には何かと話題になる倉吉の姿もあります。
日本産原酒が使われていないだろうリリースをジャパニーズと呼んで良いのか(実態はスコッチなのではないか)、という疑問はさておき、今回の結果は日本のウイスキー主要メーカーのブレンドに関する高い技術に加え、力を付けつつある新しい世代の存在も感じられた結果だったと思います。

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なお、コンペといえば、先日、ウイスキー文化研究所が日本初となる「東京ウイスキー&スピリッツコンペディション」を開催したところです。
今後発表される結果が、今回のWWAと比べてどうか。特に上記コンペは日本のテイスターが中心になって審査をしていますから、その違いを見るのも楽しみですね。

キャプチャー画像引用:http://www.worldwhiskiesawards.com/

ノッカンドゥ 21年 1990年蒸留 マスターリザーブ新ラベル 43%

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KNOCKANDO 
AGED 21 YEARS 
Master Reserve 
Distilled 1990 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1年程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:オーキーで干し草を思わせるウッディなニュアンス。おしろいっぽさのある麦芽香、微かに青みがかった甘みは瓜や青林檎。スワリングすると薄めたはちみつを思わせる甘い熟成香も伴う。

味:口当たりはスムーズで少し水っぽいが、麦芽風味とナッツ、徐々にドライで乾いた木材を思わせるほろ苦いウッディネス。厚みはそれほどでもなくややライト寄りで、樽由来の要素が強め。
余韻はドライで干し草やオレンジピール、香り同様若干の青さ、微かに内陸のピートも伴う。

樽の関係かトップノートや含み香に若干の青さを感じるが、それ以外はベースの麦感に、オーキーなウッディネスとフルーティーさが加わって、複雑さがありつつ安定して旨い内陸系モルト。

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一般的には無名だが、コアな愛好家からは評価されることの多いノッカンドゥ。J&Bの構成原酒。。。というのは現行品がアレなのであまり良い印象はないのですが、オフィシャル18年や21年は、それ以下の年数に感じられる若いニュアンスが熟成を経て穏やかになり、樽由来の甘味と華やかさなど複数の香味と合わさってバランスがとれてくる。まさに飲み頃なボトルという印象です。

元々ノッカンドゥのオフィシャルリリースは、熟成年数を表記せずピークを迎えた原酒を同じ蒸留年の中からバッティングしてリリースするという方針をとっていました。
その後、2000年代あたりから、12年、21年といった他社と同じ区分に統一してリリースが行われるようになりましたが、蒸留年表記はそのまま残って現在に至ります。(もっとも、熟成年数が表記される前も、リリースの区分は若いタイプが10~13年前後、長熟が20年前後と、大きな違いはなかったようですが。)

オールドと現行品の違いは、まず酒質由来のフルーティーさ、ボディの厚みにあります。昔の方が明らかにこの要素が強いですね。今回のラベルデザインは2011~12年頃にリニューアルされたものですが、旧ラベル時代に比べて香味にドライな要素や、青みがかったニュアンスが出てきており、それは直近日本で流通する新しいビンテージのものでも同様です。

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(旧ラベルで同じ1990年蒸留表記のマスターリザーブ。色合いから違っており、直接比較は出来てないが、傾向は同じであるものの、味わいにある甘味、ボディの厚みから異なっているように感じられた。)

21年の樽構成比率は、シェリー樽が10%、残りはバーボン樽とのこと。この手の青みがかった風味はリフィルのシェリーバットで熟成されたモルトに感じることが多く、使われているシェリー樽の系統、あるいはリフィルとファーストフィルの比率が変わった結果ではないかと推察します。
以前ほどの良さはないですが、このクオリティで1万円以内は近年の市場では充分な出来。家でじっくり飲むには申し分ない1本だと思います。

バランタイン 21年 ヨーロピアンオークエディション 40%

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BALLANTINES 
AGED 21 YEARS 
SIGNATURE OAK EDITION 
European Oak 
700ml 40% 

グラス:サントリーテイスティング
時期:開封後1ヵ月程度
場所:日比谷BAR
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:シーズニングシェリー系統の黒蜜やドライプルーン、湿ったウッディネス。時間経過で乾いた草や穀物など、奥に潜んでいた要素も感じられる。

味:スウィートで徐々にドライさを帯びる口当たり。ほのかな古酒感があり、黒砂糖、ドライプルーンやチョコウェハース、干し草のようなウッディさが後半にかけて感じられる。中間はやや単調気味だが余韻にかけてしっかりとスパイシーで程よいタンニンを伴う。

黒蜜系で圧殺にならない程よい濃さ、バランスのいいシェリー感が備わっている。ただし時間経過でシェリー感が抜けて乾いた草やグレーン感が顔を出す。また、少しオレンジ系のニュアンスも。序盤は★6台なのだが。。。
少量加水で刺激が和らぎバランスは多少整うが、これならストレートでも変わらない。

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バランタインから免税店向けにリリースされた、一つの樽の個性を際立たせたブレンデッド、シグネチャーオークエディション。
アメリカンホワイトオーク樽、ヨーロピアンオーク樽のものがそれぞれリリースされており、今回はヨーロピアンオークエディションをレビューします。

先日レビューしたアメリカンオークエディション(バーボン樽)は、オーキーなフレーバーが構成原酒に馴染みやすく、熟成期間もちょうどいい時期に当たる原酒が使えます。実際、らしいフルーティーさが備わっていて、美味しくバランスの良いブレンデッドでした。

一方で、このヨーロピアンオーク(メーカー情報ではシェリー樽)は、どこまで樽を効かせるか、加減が難しかったのではないかと推察します。
というのも20年程度の熟成なら、酒質部分のキャラクターが残りやすいバーボン樽に比べ、シェリー樽は文字通り酒質由来の香味を圧殺する恐れがあります。
真っ黒なバランタインも飲んでみたくはありますが、それはもはやバランタインなのかという疑問。逆に薄すぎると他の原酒の個性に負けてしまい、コンセプトに反するブレンドになってしまうのです。

その視点で今回のブレンドを見てみると、シェリー感は適度。通常のバランタイン21年に比べて黒糖系の甘味やダークフルーツの香味の備わったリッチな構成でありつつ、ハイランドモルトを軸にしたブレンデッドであることも感じられる。バランスの良い味わいに仕上がっています。
ただ惜しむらくは、樽由来の香味と酒質の軽くなったところが加水とチルフィルで整地され、単調さというか中途半端な印象も持ってしまうこと・・・ですね。
決して不味くはないのですが、この組み合わせの限界も見たように思います。

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以下、ウイスキーとほとんど関係ないスマホ雑談。
昨日HUAWEI社のスマートフォン最新モデル、P30シリーズが発表されました。
このシリーズはカメラ性能を最大の売りにしており、現在発売されているP20ですら下手なコンデジを凌駕して、全スマホ中最高レベルのカメラ性能と言われていたのですが。。。

新たに発表されたP30は、コンデジを凌駕っていうか、もはや駆逐しに来ましたね。そのまま一眼レフの領域まで踏み込んでいく勢い。
なんすか、ISO409600って(笑)。お馴染みのライカレンズのカメラは、メインが光学手ぶれ補正付きでf/1.6。ボトル撮影で活躍する望遠は光学5倍デジタル50倍ズームのf/2.4。イメージセンサのサイズは前作同様に1/1.7ですが、光を取り込む独自の工夫がマシマシ。
これってつまり、ハイエンドコンデジに最新のAI補正機能やらがついてポケットにすっぽり入るようなもんですよ。
手持ちで月が撮れるとか、その気になれば天の川まで撮れるとか、暗所に強いってレベルじゃない。ファーウェイまじハンパないって。

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https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1903/27/news056.html

なぜこのニュースに食いついてるかというと、自分が現行機種であるP20ユーザーであるため。
使っていたコンデジが古かったので、買い換えるか兼用狙いでスマホをカメラ重視にするか検討し、2月からP20(無印)に機種変したところ。使ってびっくり、暗いBARでもそれなりに奥行きや質感が出て、手軽に綺麗な写真が撮れてしまう。今やブログの写真は全部スマホ撮影です。
オーセンティックなお店でカメラ撮影って、許可してもらってても少々憚られるものですから、さっと出してフラッシュ無しですぐ撮れて、それでいて綺麗って、SNSやブログユーザー的には凄い付加価値だと思うんですよね。

なお、HUAWEIのスマートフォンには”余計なものが見つかった”なんて報道があって、警戒している方もいると思いますが、以下のレポートにあるように、そんなものは存在しないと思います。
クラウド上のデータは、確かに中国というお国柄、国の要請で参照される可能性はありますが、それはアメリカとて同じこと。一般人が個人用途で使う分には、何ら問題はないわけです。

製品分解で探るアジアの新トレンド(34):“余計なもの”って何? 「Mate 20 Pro」の疑惑を晴らす。

明るいところで綺麗に撮れるスマホカメラはいっぱいあります。ただ条件が厳しい暗所に強いカメラを搭載したスマホとなると、他社製品ではiPhoneXsが筆頭ですが、iPhoneは価格が高いのと、P20で同格だったところにP30の発表で一歩先にいかれた感じが。。。
日本での実売想定価格はP30無印で7~8万くらい、Proで10万~。1年くらい経って値下がりしてきたら、今のP20から機種変しようかな。
あぁ、お金ためいなと(笑)。

963 ブレンデッドモルト 17年 ワインウッドリザーブ 46% 福島県南酒販

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963 
BLENDED MALT WHISKY 
AGED 17 YEARS 
WINE WOOD RESERVE  
Release 2019 
Bottled No, 547/634 
700ml 46% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかな香り立ち。トップノートは乳酸系の酸と、人工のオレンジシロップのようなケミカルさ。合わせてフレーバーティーを思わせる甘みとウッディネス。

味:ほのかな粘性とビターな口当たり。カカオをまぶしたバニラ、若い林檎、口内にとどめるとパイナップルシロップのような甘み。
余韻はウッディでドライ、オーキーな華やかさが鼻孔に抜け、ケミカルなフルーティーさと樽由来の渋味が長く残る。

加水が適度に効いて飲み口は柔らかく、ワインカスクらしい張り付くような色濃い甘みはそれほどないが、タンニン、ウッディネスは健在。酒質由来の香味としては、似たキャラクターではベン○ヴィス的な味わいでまとまっている。この一体感、ティースプーンモルトだろうか。

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意欲的に様々なリリースを行っている、笹の川酒造の関連会社、福島県南酒販のプライベートブランドである963シリーズから、バーボン樽熟成の原酒を国産ワイン樽でフィニッシュした、ワインウッドリザーブのリリースです。

これまで、963の17年熟成ブレンデッドモルトはミズナラ樽フィニッシュが2本リリースされていて、どちらもハイランドタイプで癖の少ない原酒がベース。バーボン樽由来の華やかなオークフレーバーとミズナラ樽のスパイシーさと合わさった、”愛好家に認知されているミズナラフレーバー”を擬似的に構成している面白いリリースでした。
そして今回のワインカスクリザーブも同様にバーボン樽原酒がベース。。。なのですが、バーボン樽由来のオークフレーバーもあるはあるものの、それ以上に所謂ジェネリックトロピカルに該当するケミカルなフルーティーさ、シロップのような甘みが樽由来のビターな味わいのなかで主張していて、原酒の構成からしてこれまでのリリースとは異なっていて少々驚かされました。

ばらつきの無い個性、ケミカルなフルーティーさから、ブレンドを構成している主たる原酒はハイランドモルトの"Bの辺り"と推察。国産原酒でこの系統はまだ無いですね。
ワイン感はワインそのものを思わせる酸味やハーブ系のニュアンスは少なく、コクがある程度。色も写真の通りでうっすら赤みがかった程度であるため、国産ワイン樽といってもワインがそう濃く無いタイプか、あまり長期間使っていない樽だったのかもしれません。

一方で樽材由来のウッディさ、渋味はそこそこ強く、ここはスコットランドでのバーボンバレルによる熟成感と異なるところ。
裏ラベルには「17年バーボンバレルで熟成し、最後にワイン樽で後熟」という説明で17年表記となってますので、ワイン樽の期間が1年未満のように読めますが、それでこの樽感は少々違和感あり。例えばティースプーンモルトの輸入原酒(バーボン樽ベース)を、安積蒸留所で再びバーボン樽に詰め、ワイン樽後熟含めて3~4年単位熟成して仕上げたとかなら。。。熟成感の違いも納得できます。

何れにせよ、このウイスキーに備わったフルーティーさは近年のトレンドのひとつであり、これもまた面白いリリースだと思います。
ここで後熟に使った樽は、また新たな熟成に使えますし、原酒の幅を広げて更なるリリースに繋げていってほしいと思います。

ロングモーン 43年 1965-2009 GMケルティック 44.4%

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LONGMORN 
GORDON & MACPHAIL 
Aged 43 years 
Distilled 1965 
Bottled 2009 
Cask type Refill Sherry Hogshead #68 
For JAPAN IMPORT SYSTEM 
700ml 44.4% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:自宅
時期:開封後数年程度
評価:★★★★★★★★(8)

香り:キャラメリゼを思わせる甘味、枝付きレーズンやオランジェット、リンゴのカラメル煮などのフルーティーさ。古びたウェアハウスを思わせる落ち着いた樽香とかすかな土っぽさ、そしてしっとりとした果実香を伴うアロマ。

味:ややドライでオレンジやベリーなど、いくつかのドライフルーツを伴うウッディネス。ボディは弱くはないがへたらないギリギリのところ。すぐにロングモーンらしいトロピカルなフルーティーさが口内から鼻孔に抜けていく。
余韻はドライで軽くスパイシーな刺激、紅茶葉やくるみの皮のタンニン、適度に枯れたビターなフィニッシュ。

長期熟成で度数は落ち気味というスペックらしく、樽由来のウッディネスは多少強く尖ったようなスパイシーさも感じられる。シェリー感はバランスがとれて透明感あり。1960年代のロングモーンらしい熟した果実の発するある種のフェロモンのような、魅惑的な要素を充分感じることができる。


かつてGMブランドの最高峰としてリリースされていたケルティックシリーズ(実は特に基準はなく、インポーターでラベルを選べたという話も。。。)
1965ロングモーンだけで、度数違いが3種類ありましたでしょうか。そうしたリリースの中で比較すると、このボトルは突き抜けて素晴らしいわけではありませんが、それは全て高いレベルでの話であり、美味しい長熟ロングモーンであることに違いはありません。

テイスティングの通り適度なシェリー感と合わせて、ロングモーンらしい酒質由来のフルーティーさも伴うバランスの良さ。そして長期熟成だからこその枯れたニュアンスと、角のとれたタンニンが染み込むように残り、まさにGMとしてもロングモーンとしても、王道的な1本であると言えます。

使われた樽は、おそらく今のように最初からホグスヘッドで組まれたシーズニング樽ではない、バットで使われていたものの組み直しのホグスヘッド。
こうしたホグスヘッド樽は隙間が出来やすいのか、度数が下がりやすい傾向があると感じられますが、このリリースについては40年以上熟成していますから度数が下がるのも当然といえば当然です。一方で、その度数落ちギリギリのところと、リフィルらしくシェリー感に透明感があり、そこまで強く出ていないところが、フルーティーさを潰さずに長期熟成という枠の中でのバランスの良さに繋がっているように感じます。

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こうしたケルティックシリーズの長熟は、どれも共通の枯れたニュアンスがあり、若いモルトにどれだけ樽を効かせても再現できない要素のひとつです。上の写真は先日開催された、ウイスキー仲間のSさん主催のテイスティング会でのワンシーン。この辺のボトルにはだいたいそのニュアンスが備わっています。

テイスティング会では事前に共有されたリストを見るとGMケルティックがいっぱい。せっかく仲間内で飲むんだし、なにか持っていきますかと差し入れしたうちの1つが今日のテイスティングアイテムです。
自分にとっては、なんか飲み始めの頃にタイムスリップしたような懐かしいラインナップの会でした(笑)。

それにしてもほんの10年前ですが、GMの当時の大盤振る舞いは本当に凄まじかった。
保有原酒が熟成のピークを過ぎかけて焦ったのか、他がない中でJISさんが引いてくれるんで売り時と思ったのか。日本市場にGMケルティックがバンバンリリースされてて、酒販やBARの棚がこんな感じで並んでたってのも珍しい光景じゃなかったんですけどね。

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この日はスタートは串揚げ、間にウイスキーはGMケルティックの飲み比べを中心に長期熟成を何本も味わい、そして締めはラーメン。
上述の"枯れ"を伴うフルーティーな熟成感をケルティックシリーズ含めて長期熟成ラインナップで堪能しただけでなく、全体的に10年前に戻ったかのような完璧にやりきった休日でした。いやーたしかなまんぞく!(笑)


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