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2019年02月

十年明 Half Decade 若鶴酒造 三郎丸蒸留所  40%

カテゴリ:
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WAKATSURU 
JUNENMYO 
Half Decade 
2019's 
700ml 40% 

グラス:テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:BAR LIVET 
評価:★★★★★(5)

香り:クリアで柔らかく、若さに通じる軽やかな酸と乾燥させた穀物っぽさ、根菜感を伴うピーティーな香り立ち。しっかりとしたスモーキーさ。

味:少し水っぽいがマイルドな飲み口。乾いた麦芽風味と、主張の強い香り同様のピートフレーバー。口当たりは角のとれた柔らかさで、余韻にかけてはややオイリーなコクも伴う。針葉樹を思わせるウッディさ、ほろ苦くスモーキーなフィニッシュ。

若さはあるが、嫌みな要素は少なくそれなりにバランスのとれたスモーキーなブレンデッド。主な樽はバーボンの古樽系と感じられ、あまり強い主張はない。値段なりと言えばそこまでだが、ハイボールやロックにしても、悪くなさそうな印象も感じられる。

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三郎丸蒸留所を操業する、若鶴酒造が北陸地方向けでリリースしたスモーキーなブレンデッドウイスキー。
Half Decade は5年間という意味がありますが、ブレンドそのものは蒸留所改装前に仕込まれた旧世代のモルト原酒に、自社貯蔵庫で熟成させていた5年熟成以上の輸入原酒をブレンドして仕上げたもの。体感の熟成年数は10年弱といったところで、主に使われているモルト、グレーンとも原酒のレンジはその辺りなのではないかと推察します。

構成としては、若さが多少残りつつもピートとグレーンがいい仕事をしていて、角がとれてバランスのいいブレンデッドウイスキーという感じですね。
若鶴酒造がリリースする普及価格帯の銘柄にはサンシャイン・ウイスキー(プレミアム)がありますが、スモーキーさは同様ながら、それよりマイルドな飲み口で、原酒の熟成期間が少し長いのかなとも。
値段なりと言えばそこまでですが、新興クラフトがリリースする地ウイスキーとしては、ブレンドのまとめ方が上手く、着実に経験を積んで来ているなと思います。

三郎丸は古くから50PPMのヘビーピート原酒を一貫して仕込んでおり、それは今も変わらないハウススタイルですが、かつての原酒は悪い意味で癖が強いものが多く、それ故に悪評もあったのは事実でした。
一方、2017年に蒸留所の改装が完了し、作り手も変わった新世代の原酒は愛好家から高い評価を受けつつあります。今回のリリースはその新生三郎丸がハウススタイルのまま、将来リリースするであろうウイスキーを、現在ある原酒で構築した予行演習のようなブレンドでもあるなと感じました。

ワイルドターキー トラディション 1990年代流通 50.5%

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WILD TURKEY 
TRADITION 
Kentucky Straight Bourbon 
1990's (1994's)
750ml 50.5% 

グラス:テイスティンググラス
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封当日
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライな香り立ち。干し草、ドライオレンジピール、微かなえぐみを伴うウッディネス。クッキーやキャラメルポップコーンのようなメローで軽い香ばしさに通じるアロマも感じられる。

味:パワフルな口当たり。乾燥した穀物やバニラウェハース、口内で転がすと微かにオレンジママレードやメープルシロップのアクセント。カカオのような苦味と焦げ感の伴うウッディさがあり、ドライでスパイシーなフィニッシュへと繋がる。

ドライでスパイシーなキャラクターが印象的なバーボン。時期が時期なのでえぐみのような要素は少なく、メローで適度なコクも備わっているが、濃厚な味わいという程ではない。加水するとマイルドだが穀物っぽさが強く、

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1990年代、輸出向けにリリースされていた銘柄のひとつ。(2009年に14年がリリースされていますが、これは時期も構成も別物。)
同時期では、先日記事にもしたワイルドターキー・ケンタッキーレジェンドが同じく輸出向けにラインナップされていましたが、香味が似通うことの多いバーボンにありながら、ドライでスパイシーな本銘柄と、リッチでメローなケンタッキーレジェンドとで明確な違いが感じられます。

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(同時期流通のワイルドターキー・ケンタッキーレジェンド。メローなオークフレーバー、ほのかにベリーなどドライフルーツを思わせる酸味も混じるリッチな味わい。)

その背景には、熟成年数の違いがあるのではという印象。ちょっとライっぽい気もするので、通常のライ13%のマッシュビルとの違いもあるのかもしれませんが、同じ流通時期の8年50.5%と比較してもドライな構成であり、例えばケンタッキーレジェンドを10年程度の熟成とすると、今回のトラディションは6~8年、レアブリードの加水調整品的な位置付けと考えれば、しっくり来る気がします。

比較的種類のあるオールドターキーの中では、メローで濃厚、甘酸っぱい果実感に、熟成感も強いハイプルーフなものが高い評価を受けている現在の市場にあって、このトラディションはその逆をいくスタイル。当然、市場価格はそこまで高くなっておらず、5000円を下回ってリサイクルショップ等で販売されていることも珍しくありません。
確かにトレンドとは違っているのですが、ネガティブな要素が強い訳ではなく、特に現行品との比較ではそう悪くないとも感じられます。そういう系統のバーボンとして考えるなら、案外お買い得な1本かもしれません。

ボウモア 2002-2017 ボウバー & ターロギーソナ 共同プライベートボトル 53%

カテゴリ:
bowmore-bowbar-2002
BOWMORE 
Friendship Private Bottling 
The Bow Bar & Bar Tarlogie SONA 
Distilled 2002 
Bottled 2017 
Cask type Hogshed? #17014 
700ml 53% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:Bar Eclipse
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:シトラスなどの淡い柑橘香とピーティーなアロマ。紙っぽさに通じる乾いた麦芽香やウッディネスが、若干の荒さをもって感じられる。

味:フレッシュでクリア、アタックの強い口当たり。薄めたはちみつやグレープフルーツピール、乾いたウッディさ。奥には木材の燃えカスや魚介の出汁を思わせるニュアンスもある。
余韻はほろ苦くスパイシーで、エッジの鋭いアタックと塩気の刺激。華やかな淡いオークフレーバーがスモーキーさと共に感じられる。

爽やかな柑橘感を香味に備えた2000年代らしいボウモア。樽感は熟成年数に対して平均的というか、アタックのほうが強く、仕上がりはやや荒めでそれもまた蒸留時期を感じさせる。人によっては紙っぽさにも通じる要素もある。加水すると樽感が和らぐ反面、水っぽくなりやすいと感じた。


一時期に比べ、徐々にニューリリースを見ることが少なくなってきた、ボウモアのボトラーズリリース。それもそのはず、オフィシャルからの樽売りがかなり制限されているそうで、今後1990年代はおろか、2000年代すらリリースは危うくなってきていると聞きます。

現在の市場は強いコネクションを持つBARやインポーターの努力、あるいは既存ボトラーがストックとして保有していたものがなんとかリリースされている状況。直近リリースだとOMC 20周年あたりとかはまさにそれで、1990年代のボウモアが安定して購入できた4~5年前には考えられない状況に、ボトラーズ・ボウモアの数年先が見えるようでもあります。

となると、ボウモアのプライベートボトルなぞ中々リリース出来ない時代がまさに今。
今回の札幌・ボウバーさんと、大阪・ターロギー ソナさんの共同プライベートリリースは、そうした厳しい状況の中であえてのボウモア。プライベートボトルではボウモアの代用品を意識したような、別地域のピーテッドモルトがリリースされることも少なくない中で、両店の存在感を発揮したようなチョイスです。

香味はまさに2000年代のボウモアらしい、ボディが少々軽くオークフレーバーの乗りも淡い、良くも悪くもフレッシュなタイプ。しかしオフィシャルのハイプルーフ品にあるような、溶剤や焦げた樹脂っぽいネガ要素が少ないのはポイントで、香味はクリア。紙っぽさもそこまで強くなく、1997年辺りのボトラーズボウモアのいくつかに共通するニュアンスもあるなと。
らしさに加えて若さと荒さがあり、突き抜けて高い完成度ではないですが、なるほどと思えるボウモアだと思います。


なおアイラモルト全体では、例えばキルホーマンやポートシャーロットなど、新興勢力から面白いリリースが増えてきています。
しかしボウモアフレーバーを備えたアイラモルトは、今のところボウモアのみです。
だからこそ、ボウモアはいつまでもボウモアとしてオフィシャル、ボトラーズとも市場にあってほしいものですが、今回のリリースを見るにそう簡単には行かないのも事実。。。

ここから先は市場在庫から、其の時点の相場と照らして良いものから順に消えていき、いつの日か記憶の中だけの存在になってしまうような。そんな一抹の寂しさを感じてしまったテイスティングでもあったのです。

ザ・ブレンド (ブレンドオブニッカ) モルトベースウイスキー 45% 

カテゴリ:
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THE BLEND OF NIKKA 
Maltbase Whisky 
NIKKA WHISKY 
2010's 
660ml 45% 

グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:BAR ゾートロープ
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ややドライだが新樽を思わせるメローなウッディネス。オールブラン、微かにオレンジ。合わせてしっかりとスモーキーで若干のヨードも伴う。

味:モルティーでリッチな口当たり。オールブランや麦パフを思わせる軽い香ばしさとほろ苦さのある麦芽風味と、薄めたはちみつやママレードを思わせるコク、ボリュームのある味わい。徐々にピーティーで、ほろ苦く微かに焦げたようなスモーキーさが鼻腔に抜けていく

ブレンデッドでありながら香ばしいモルティーさ、ピートフレーバーに存在感があり、モルトベースと銘打たれた構成の通りのリッチな味わい。熟成年数は12年程度だろうか。ただし、このピートは少々アイラ的なニュアンスも感じさせる。


ザ・ブレンドは、”竹鶴政孝が極めたブレンドの心と技”を受け継いで、余市、宮城峡らニッカが保有する原酒の個性を活かしつつ仕上げたブレンデッドウイスキーです。

”ブレンド”という広義な意味を持つ単語に”The”の定冠詞をつけた、ある意味で挑戦的なネーミングでありながら、外観は極めてシンプル。だからこそ感じるニッカらしさ。フロムザバレルといいピュアモルトシリーズといい、これがニッカ好きには堪らないのです。
シリーズとしては1986年にザ・ブレンドがリリースされた後、セレクション、17年、丸瓶及びニューブレンド丸瓶と拡張されていきますが、2015年に起こったニッカショックの際に全シリーズが終売となっています。
そういえば、この5銘柄のうち、ザ・ブレンド17年を飲むことがないまま今日に至ってしまいました。

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(1980年代後半、リリース初期のザ・ブレンド。ネック部分に特級表記があり、キャップはコルク仕様。香味はモルトの個性として余市系の樽感やスモーキーさがしっかりと備わっているが、全体としては少々野暮ったく、まとまりはもう一歩。★5ー6)

ザ・ブレンドのコンセプトである原酒の個性と、竹鶴政孝にフォーカスしたエピソードは、同じTHE付きのザ・ニッカよりも竹鶴ピュアモルトに通じるブランドの位置付けだと感じます。
香味も柔らかいコクと合わせ、存在感のある麦芽風味とピーティーさが感じられる味わいに仕上がっており、ザ・ニッカのそれとは異なるベクトル。特に上述の初期品は余市系のピートフレーバーが目立って感じられ、粗削りですが同時期のキングスランドより格上で、原酒の個性を打ち出そうとしていることが伝わって来ます。

一方、今回のレビューのメインである2000年代に入ってからの同ブレンドは、引き続きピーティーですが全体的にバランスが向上しており、評価はギリギリ★6といったところ。今思えばこれが3000円台ってめっちゃコスパよかったな~なんて思うわけです。
また、改めて飲んでみると、その香味には微かにヨードのような、アイラ的なピートのキャラクターが感じられたのも印象的でした。

これは単に余市のヘビーピートモルト由来かもしれません。ただ、同時期のニッカがリリースするピュアモルトホワイトでは、カリラのようなキャラクターが感じられるものがあり、2000年代あたりは輸入原酒でこの辺が手に入りやすかったと聞いたことがありました。ひょっとするとザ・ブレンドの中にも同様に輸入された原酒が、バランスを維持する役割で加わっていたのかもしれません。
今となっては、真相は歴史の闇の中ですが・・・。





マッキンレーズ レガシー 21年 1990年代初頭流通 43%

カテゴリ:
mackinlay-legasy-12-years
MACKINLAY'S
LEGACY
21 Years Old
Blended Scotch Whisky
1990's
750ml 43%

グラス:テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:お酒の美術館 神田店
評価:★★★★★★(6)

香り:熟成したグレーンを思わせる色の濃い甘い蜂蜜や乾いた穀物のアロマ。キャラメルビスケット、カラメルソースにオレンジピールを思わせる甘い香りとビターなウッディネス。ほのかに腐葉土や粘土のような癖。グラスの中でスワリングしていると、とろりとした甘いアロマと奥にあるスモーキーさが一体となってくる。

味:角の取れた丸みのある口当たり。直後にウッディさとピートの苦味を強く感じるが、これも徐々にこなれてきてカラメル系のシェリー感とアーモンド、穀物由来の甘み。中間から余韻にかけて程よいコクを伴うようになる。フィニッシュは強いウッディネスとピート、その奥にはりんごのカラメル煮のようなフルーティーさも潜んでいる。

注がれた直後は苦味が強く、グレーン感も目立っていて、飲み口と余韻までの香味を繋ぐ要素が開ききっていないようなチグハグな印象を受けたが、徐々にこなれてきて長熟ブレンドらしいコクのある甘み、熟成感が感じられるようになってくる。少量加水してもいいが、ストレートでじっくりと楽しみたい。

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かつては南極探検隊のウイスキーとして、そしてブレンドの名門として知られたマッキンレー社。
1980年代後半から1990年代にかけ、スコッチウイスキーメーカー各社がリリース戦略を見直し、イメージ向上などのため12年表記をつけたり、あるいは15年、20年熟成以上の長期熟成レンジのリリースに舵を切る中で、マッキンレーブランドからリリースされたのがハイエンドとなる今回の21年です。(該当するレンジでは、ほかにレガシー12年や17年もリリースされていました。)

当時のマッキンレー社はインバーゴードン傘下にあったことから、構成原酒はグレーンがインバーゴードン。モルトはすでに閉鎖されてはいたもののグレンモールとグレンアルビン、そして1963年に再稼動したジュラの最長期熟成原酒に、ダルモアなどでしょうか。比較的グレーンが目立っており、比率はグレーンが5~6割くらいという印象でもありますが、そこにモルトの個性としてしっかりとした熟成感と内陸系のピーティーさがあり、これが構成原酒を紐解くヒントになりそうです。

たとえば、ピーティーさとあわせて粘土っぽい癖がジュラに通じるところですし、ダルモアやグレンモールら内陸の原酒も、控えめですが存在感のあるピートフレーバーを感じられるモルトです。
古いマッキンレーズのブレンドは中々に通好みな組み合わせで知られますが、熟成したそれは贅沢とも感じます。

このボトルがリリースされていた当時、日本での販売価格は2万円(洋酒辞典1991年)だったそうです。現地での価格がどうだったかは、今となっては知る由もありませんが、この時期のハイエンドブレンドも今の市場ではそれなりに手の届く価格のものが多く。経年劣化も少ないため、普段飲みに使いやすいなとも思います。

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