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2018年09月

ブローラ 25年 1975-2001 プロヴェナンス 43%

カテゴリ:
BRORA
PROVENANCE
Aged 25 years
Distilled 1975
Bottled 2001
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:個人宅持ち寄り会
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:ややセメダイン系の刺激があるが、酸味のあるピート香、香ばしい麦芽、オレンジやグレープフルーツの皮を思わせる柑橘感。バーボンオークのバニラの甘みを伴うウッディさ。

味:コクのある口当たり。しっかりとピーティーで、ほろ苦く焦げたようなピートフレーバーから、蜂蜜レモン、ドライアップル、魚介、じわじわ乾いた麦芽風味とホワイトペッパー。
余韻はややドライ、おしろい系の麦芽風味の甘みとピーティーさ。張り付くような塩気、スモーキーフレーバーが長く続く。

独特の酸味を伴うピーティーさがブローラらしさ。樽はリフィルバーボン系で、ディアジオスペシャルリリース系統の酒質ベースの味わい。加水で香味とも飲みやすく仕上がっているが、余韻にかけてはややピート系のフレーバーが浮ついて感じられる部分も。単純に飲みやすく、個性があって美味しいモルトに仕上がっている。


今回のモルトの蒸留年である1975年は、"ブローラ"が個別の蒸留所として整理された年にあたります。
ブローラはクライヌリッシュの古い蒸留設備であることは広く知られていますが、ブローラという蒸留所名がつけられるまで、新クライヌリッシュの稼動から約8年の空白があるんですよね。
今日はちょうどその時期のモルトの紹介でもあるので、1975年のブローラ誕生まで、"代替用の蒸留所"としての経緯に触れていきます。
brora
image

現在のクライヌリッシュ蒸留所が稼働したのが1967年。これを受けて、"後のブローラにあたる古い設備"は一旦操業を休止します。
しかし翌年、当時DCL傘下だったグレンギリーが閉鎖(のちにモリソングループが買収)され、グレンギリーで作られていたブレンド用のピーティーな原酒を代替する目的で1969年に再稼働。
また、1972年にはカリラ蒸留所の大規模拡張工事が開始され、カリラでの蒸留が約2年間ストップ。その期間中のピーテッドモルトの生産も役割となり、名も無き古い蒸留棟は、クライヌリッシュBとして代替目的での稼働が続いていたようです。

そしてカリラが再稼働した翌年の1975年。DCLはこの古い蒸留設備を"ブローラ"と名づけます
この時点でカリラの生産能力が大幅に強化されていたため、原酒の代替が必要だったというより、クライヌリッシュとはキャラクターが違いすぎるし、かといって休ませとくのももったいないし、雇用の問題もある。。。なら業界が好調なうちは。。。当時を推察すると、おおよそこんな感じでしょうか。
実際、ブローラのキャラクターはウイスキーの不況が始まる1980年代にはピーティーさを弱め、クライヌリッシュに近いスタイルへ原点回帰していくこととなります。

サイトによっては、グレンギリー休止からカリラの工事が終わるまでの期間を、ヘビーピート時代とする見解をまとめるケースも見られます。
ただ、味わいで見ると1970年代はしっかりピートのニュアンスを感じる原酒づくりが続いており、今回の1本も同様。加水のマイナスを加味しても十分ピーティーな味わいで、酒質に対してピートが残り過ぎているようにも感じるほどです。

調べる限り、ブローラの原酒がその稼働中にリリースされたことはなく。大手グループ傘下の蒸留所ゆえ、個別のキャラクターが評価される前に、その方針に大きな影響を受けて姿を消したと言えます。ですが成長した先にあったその味わいは、現代のウイスキー愛好家の中で大きな価値を持っています。
2020年に再稼動するとされる新しいブローラは、ただのブレンド用蒸留所ではなく、蒸留所単体としてのストーリーを紡ぐことが出来るのでしょうか。 

フェイマスグラウス 1960年代流通 43%

カテゴリ:
THE FAMOUS GROUSE BRAND
BLENDED SCOTCH WHISKY
1960's
760ml 43%

グラス:リーデルコニャックテイスティング
時期:不明
場所:BAR Rosebank
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:古酒っぽさを伴うカラメル系の甘み、カステラの茶色い部分、奥には焦げたようなピーティーなスモーキーさがあり、どっしりとした存在感を感じさせる。

味:口当たりはマイルド。オレンジママレード、カラメルソース、ビターでほろ苦く濃さを感じる構成。徐々に土っぽさを伴うピートフレーバー。余韻はややベタつくシェリー樽由来と思しき甘み、スモーキーで長く続く。

モルト比率が高いクラシックな構成。そのモルトはほぼハイランドパークじゃないか?という味わい。シェリーの効いたスムーズでメローな飲み口にオールドらしいピーティーなキャラクターが時代を感じさせる。


昨日はハイランドパークでしたから、その繋がりで今日は"あの有名な雷鳥"です。
オールド市場でも人気のあるフェイマスグラウスですが、現在の日本市場で見かけることが絶望的に少ないのが、今回のテイスティングアイテムである1960年代以前のロットです。

それは1974年にハマヤ株式会社が国内販売を開始する前だったという点に加え、フェイマスグラウスブランドとしても、拡張路線をとったのがハイランドディスティラリーズ傘下に入った1970年よりも後のことであるため。
この背景から、フェイマスグラウスの1960年代以前流通品は日本では貴重であり、ちょっと中古酒販やヤフオクで買い求めた程度では、まずバックバーに並ぶことがないボトルと言えます。

そんな貴重なボトルがしれっと置いてあるのが、BAR Rosebankさん。
ウイスキーブランドが拡張路線をとると味が落ちるのは、もはや自然な流れといっても過言ではないわけですが、このフェイマスグラウスも例外ではないと感じてしまいますね。
比較するには60年代以前の経験が少なすぎますが、少なくともこの1960年代のロットは、ハイランドパークそのものかと言えるようなモルティーさとピートフレーバーが備わっており、今まで飲んできた70年代、80年代流通との原酒の質の違いに驚かされました。

上述の理由から中々見かけないボトルですが、オールドブレンデッドラヴァーには是非試してもらいたい1本です。

ハイランドパーク 24年 1967-1991 オフィシャル 43%

カテゴリ:
HIGHLAND PARK
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY ORKNEY ISLANDS
Aged 24 years
Distilled 1967
Bottled 1991
700ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:持ち寄り会 KuMC@NS氏
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:カラメルソースの甘み、畑の野焼き後のようなスモーキーで土っぽいピーティーさ。徐々に妖艶さを伴うシェリーの甘みが、デラウェア、オレンジチョコを思わせるアロマを感じさせる。

味:マイルドな口当たり。香り同様に薄めたカラメルソースやココアクッキーを思わせる樽感と燻した麦芽風味。ボディは穏やかでミディアム、やや平坦。余韻にかけてママレードジャムのような粘性のある甘み、合わせてしっかりと染み込むようにピーティーさ、スモーキーな鼻抜けがほろ苦く長く続く。

加水による影響かボディが去勢されてる印象はあり、ここに状態の良し悪しが加わるオールドは賛否が別れそう。だがそれでも蒸留所のキャラクターに加え、時代の良さを感じることが出来る麦芽風味とピーティーな香味は健在。
このボトルは若干コルキーな要素が感じられたが、時間経過で気にならなく、むしろ香りは妖艶さを伴い本領発揮してくる。


日本には当時松下が輸入していたオフィシャルビンテージシリーズ。確か1967年蒸留は、バッティング加水の1991と1999が2種類リリースされているだけでなく、シングルカスクでは高い評価を受けるボトルが多くあります。
例えば日本向けの37年Cask No,10197とか、濃厚なシェリーとピートの素晴らしい味わいでした。

このボトルもオフィシャル的な整った味わいの中に、ヘザー系のピートを思わせる蒸留所としてのキャラクターがしっかり備わっていて、決してレベルは低くありません。
ただ、ビンテージを含めたスペックからの期待値が非常に高い分、もう少しシェリー感が強かったらとか、あるいはもう少しボディがあったらとか、たらればで無い物ねだりをされてしまう不遇なリリースではないかと感じます。

かくいう自分も本音を言えば、樽感はともかくボディの厚み、香味の勢いが46%仕様だったらまた違ってたかなとか思ってしまったのも事実。。。いやなんとも贅沢な話です(汗)。

(ハイランドパークのフロアモルティング風景とオークニー島のピートホグ。ヘザーや植物由来の積層からなるピートが、ハイランドパークのピーティーさを構成している。)

このボトルは、ウイスキー仲間の集まりとして定期的に開催されている、国立(最近は恋ヶ窪)モルトクラブにて頂きました。
NSさん、いつも貴重なボトルのテイスティングの機会を頂き、ありがとうございます!

ロングロウ 18年 オフィシャル 46% ブラインド

カテゴリ:

LONGROW
Aged 18 years
Cask type Sherry
Release 2013
700ml 46%

【ブラインドテイスティング解答】
地域:キャンベルタウン
蒸留所:スプリングバンク(ロングロウ)
年数:12年程度
樽:シェリーを含むバッティング
度数:43%程度
仕様:オフィシャル、加水

グラス:木村硝子テイスティング
時期:不明
場所:自宅@ブラインドサンプル
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:蝋燭、生焼けホットケーキ生地とキャラメルが混じったような甘いアロマ。スワリングしているとウッディで黒砂糖を思わせるシェリー香とオレンジママレードを思わせる熟成感。

味:水っぽさのある甘い口当たりから、香り同様に蝋のような麦芽風味が主体。ほのかに粉末魚粉、奥には黒砂糖やカラメルソースを思わせるシェリー風味。ややべたつく甘みから、ほろ苦く土っぽいさ、若干の渋みを感じるドライな余韻。味の濃さの割に長くは続かない。

スプリングバンク蒸留所系列の独特の個性があり、関連するボトルであることは間違いない。ボディと個性はしっかりしているが、何処と無くシェリー感に混ざったような、あるいは水っぽさとも感じる。フレッシュシェリー樽的なモノが使われて、シェリーそのものが結構混じっているのだろうか。


ウイスキー仲間のぎんがさんからのブラインド出題、ラスト1本。このサンプルはここまでの2本(グレンカダム、ダラスデュー)とは異なり、個人的には非常にわかりやすい個性が備わっていて、ノージングで系列蒸留所、つまり近年のスプリングバンク仕込みであることは絞れました。

ウイスキーを飲むと、モルティング済みの麦芽の白い部分をかじったような・・・おしろいやお粥のような香味がする原酒があります。
近年のスプリングバンク系列の場合、その風味が濃いというか独特。自分の感覚では蝋燭っぽさだったり、ホットケーキミックスをこねた後のなま生地のような香味だと認識しています。
該当するのはヘーゼルバーン、スプリングバンク、ロングロウ、そしてキルケラン。前者の麦芽風味はハイランド地方を中心に多く見られますが、後者の香味が出ているのは近年のスプリングバンク系列以外で経験がありません。

そこにビターなくらい効いたピートとなれば、残るはスプリングバンクかロングロウです。
一方、口当たりで感じた樽感の緩さというか水っぽさ、そして中間から余韻にかけての樽感のベタつきが今回のアヤ。まだ若く樽感と酒質が一体化してないような。。。熟成年数が12〜15年くらいのオフィシャルシングルモルトで43%程度を想定しましたが、正解はどちらもそれより長く高い。開封後の時間経過によるものか、樽成分由来か、ただまあ冷静に考えると、予想したバンク系列の蒸留所の時点でオフィシャルは46%仕様でしたね(笑)。


そんなわけで、ノージングの段階である程度絞れていたブラインドでしたが、弾幕となったのが今回の出題意図。このサンプルに似てると思うと提示されていたのが、「スプリングバンク21年2018年リリース」。
まさか同じ系列の蒸留所を入れてくるか?と散々勝手に悩まされました。
ああ、全くなんて腹黒い出題者なんでしょう。

自分は今年のスブリングバンク21年は飲めていないため、この構成についてコメントできないですが、2017年リリースの21年は先日飲む機会があり、やはり先に述べたように麦芽風味に独特の個性が感じられます。
ピートの有無、発酵層や蒸留器、そして麦芽の品種。これらが入れ替わっても該当するフレーバーは替わらないため、これはスプリングバンクのフロアモルティング由来と考えるのが妥当。。。ただ、実際のところどうなのかはわかりません。
しかし近年、様々な蒸留所で酒質が細くなりつつある中、こうした樽でもピートでもない小手先だけではない個性は得がたいもの。蒸留所として高い評価を受けているのも、納得出来ると感じています。


以上で今回のブラインド出題の解答は終了です。
テイスティングの経験を得られるだけでなく、その独特な出題方法から、サンプルに対する認識のキャッチボールをしているような興味深いブラインドでした。ぎんがさん、改めて出題ありがとうございました!

マッカラン 12年 43% 1990年代流通

カテゴリ:
MACALLAN
Years 12 old
Matured in Sherry Wood
1980-1990's
750ml 43%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人主催テイスティング会@YMC
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★(6-7)

香り:黒蜜とドライプルーンを思わせる甘く濃厚なアロマ、ほのかにキャラメルアーモンドの香ばしさと苦味。しっとりとしたウッディネスと、奥にはツンとした刺激もある。

味:スムーズで引っかかりの少ない口当たり。香り同様に黒蜜を思わせる甘み。プルーンやイチヂクのドライフルーツ、キャラメリゼ、甘みとビターでウッディーな変化がある。
余韻は少しべたつく印象があるものの、ピリピリとスパイシーな刺激、ほろ苦く長く続く。

しっかり濃厚なシェリー感で、黒蜜やドライフルーツを思わせるスウィートな構成。加水で整ったボディと合わせてマイルドな味わい。 ★6と固定するには惜しいが、しかし7には届かない。


前回の更新でシェリー感に関する話が出たので、シェリー樽と言えば。。。の代表格であるオフィシャルマッカランです。
今回のボトルは蒸留をざっくり80年ごろとすると、マッカラン蒸留所のシェリー樽工場(1973〜)が稼働し、少なくともスタンダード用の樽の多くがシーズニングに切り替わったであろう時期のもの。
近年流通マッカランのはしりと言える時期のボトルと認識しています。

香味はウッディなスパニッシュ系のニュアンスが、濃さこそ違えど現行品12年シェリーオークに通じる、同系統の要素も感じます。当時のGM系のカラメルっぽいシェリー感でもなく、グレンドロナックのベリーっぽい感じでもない、黒蜜っぽさのあるマッカランのシーズニング味。
同じ時期の10年熟成と比較すると、そのシェリー感と酒質の乖離。言い換えれば酒質の荒さが少なくなって、飲み口はより一層マイルドになってますね。
マッカランは加水しない素の酒質が比較的パワフルなので、シェリー樽熟成と加水前提で最低12年以上。理想的には18年は熟成期間が欲しいと感じる点が、このキャラクターにあります。

(今回のボトルとほぼ同時期蒸留に当たる18年。香味の傾向は当然似ているが、余韻にかけての一体感、さらにスムーズでスウィートな口当たりに仕上がっている。万人が飲んで美味いと言うウイスキー。)

酒質の部分にフォーカスすると、現行品のマッカランが薄く軽いと言われる点は、シェリー感もさることながらボディが加水にどれだけ耐えられるかでもあります。
オフィシャルスタンダードのシェリー感は年代ごとに徐々に薄く、荒くなっているので、ついつい樽の問題だけと思いがち。確かにそれもそうなんですが、先入観を取っ払って飲んでみると、少なくとも1990年代以降のそれらは近いニュアンスが感じられる部分もあり、案外良くできているんです。

樽感に輪をかけて変わっているのはベースの部分です。短熟での仕上がりやすさを重視してるのか、軽く樽を受け止められない近年のそれ。先日完成したという新しい蒸留棟では、さらに軽くなったという声も聞きます。
今回のボトルは60年代より淡麗気味になりつつありますが、まだ加水を受け止めてまとまる厚みが、香味の広がりを後押ししているのです。

あれ?シェリーの話で始めたつもりが、いつの間にか酒質のボディの変化になってる。。。(笑)。


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