ポートエレン 37年 1979-2017 リミテッドエディション17th 51.0%
PORT ELLEN
Limited Edition 17th
Aged 37 years
Distilled 1979
Bottled 2017
Cask type Refill American Oak Hogsheads & butts
700ml 51.0%
グラス:木村硝子テイスティング
場所:Y's Land IAN
時期:開封後数日以内
暫定評価:★★★★★★★(7)
味:柔らかい口当たり、燻した麦芽とピートフレーバー。一瞬ソルティーなコクを感じるが、すぐに蜂蜜、熟した洋梨、香り同様の黄色い柑橘感。微かに湿ったような酸味。ボディはしっかりとしてバランスを取っている。
余韻はスパイシーでドライ、乾いた植物感、スモーキーで長く続く。
オークフレーバー由来の要素と、この時期のポートエレンのピーティーでクリアな酒質の融合。ディアジオのリミテッドらしい丁寧な作りが、長期熟成ならではのバランスの良さと高い完成度に繋がっている。
今回のスペシャルリリース最高価格にして、 モルトラインナップの中では最長熟成となるリリース。そのお値段たるや、初期リリースの10倍以上。っていうか当時は3万でも「高いけど希少だから仕方ないよね」と言われていたのに、17thまでリリースが続いて価格はあれですから、もうワケがわかりません。(補足:1stリリース約2〜3万円、17thリリース48万円・・・)
そのポートエレンもブローラ同様に再稼働に向けた調整を開始したことが宣言され、2018年のスペシャルリリースラインナップからも除外。閉鎖前の原酒としては、今作が最後のボトリングとも噂されています。
(約40年ぶりに稼働することとなったポートエレン。クリアでピーティーな味わいに期待したい。なお熟成庫にはラガヴーリンが詰まっているらしいが、熟成場所はどこに。。。Photo by T.Ishihara)
70年代のポートエレンの酒質はカリラと重複するところがあり、クリアで繊細、カスクストレングスではキレの良さ、なめし皮のようなニュアンスと、加水すると柔らかさが感じられる、少なくともラガヴーリンとは対極にある個性を持っていました。
しかし今回のボトルでもある70年代末期、特に80年代に入ってから1983年の閉鎖にかけてはピートと酒質が強く、キレと荒々しさを感じるボトルが見られます。
これが今回のボトルのように40年近い長期熟成に耐える要因の一つと考えられるわけですが、その他1980年代に閉鎖された蒸留所が、閉鎖間際は個性に乏しいプレーンな原酒を作っている傾向がある中、その流れに逆行する面白い事例だと思います。
元々、ポートエレン閉鎖の経緯は、ウイスキー不況における生産調整とグループ全体の効率化のためだったと言われています。
生産量のバランスの関係で、アイラ島の傘下蒸留所を一つ休止しなければならず、精麦工場を持つポートエレンは精麦に専念させて、ラガヴーリンとカリラを残したという話。この精麦工場における大規模なドラム式麦芽乾燥用設備が稼働し始めたのは1974年ごろ。以後、同工場はカリラやラガヴーリンにも麦芽を提供しているワケですが、上述の酒質の変化は、閉鎖前の時期は仕様を分けず、全体の仕込みの量を見ながら他と同じ麦芽を用いていたためではないかと推測しています。
仮にそうだとして、今はウイスキーブーム真っ只中。ブレンド以外にシングルモルト需要も非常に高い。調整が不要となった再稼働後のポートエレンは、果たしてどんな原酒を作っていくのか。
再稼働に向けては関係者間の調整に加え、各種工事もあって数年。少なくとも今すぐ再稼働とはいかないという話も伝え聞くところですが、ブローラ同様にその報せが届くことを楽しみに待ちたいと思います。